説明

交通流計算装置及びプログラム

【課題】精度よく交通流を計算することができるようにする。
【解決手段】交通流シミュレーション部20によって、複数の個人交通需要データに基づいて、道路ネットワークにおける交通流を計算し、経験情報生成部22によって、計算された交通流に基づいて、各個人について、目的地までの旅行時間を含む走行経験情報を生成する。ドライバ判断部25によって、各個人について、走行経験情報に基づいて目的地までの旅行時間が閾値以上であると判定された回数が、所定回数以上である場合、個人の個人交通需要データの経路又は出発時刻を変更する。交通流シミュレーション部20によって、変更された個人交通需要データを更に用いて道路ネットワークにおける交通流を計算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通流計算装置及びプログラムに係り、特に、複数の個人に対する交通需要データに基づいて、道路ネットワークにおける交通流を計算する交通流計算装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、利用者から道路利用予定を収集して交通需要を予測し、予測交通需要に基づいて、渋滞予測情報を求め、渋滞予測情報が更新された場合、既に提供済みの道路利用予定を変更するか否かを利用者に対して確認して、予測交通需要に反映する交通情報提供システムが知られている(特許文献1)。
【0003】
また、有料道路の管理サーバーに利用者がアクセスして予約し、予約件数が少ないほど利用料金が少なくなるように制御する有料道路管理システムが知られている(特許文献2)。
【0004】
また、ドライバの経験回数を用いて、交通流の情報を考慮した旅行計画を作成し、OD交通量に反映させる交通状況予測装置が知られている(特許文献3)。この交通状況予測装置では、ドライバの経験回数に基づき情報信頼度を求めて翌日に走行する、といった繰り返し計算を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4098526号公報
【特許文献2】特開2002−24982号公報
【特許文献3】特開2007−164262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1、2に記載の技術では、ユーザから直接、自動車利用予定を収集して交通状況を予測している。しかしながら、ユーザから直接予定を聞いた場合、ユーザの現在の意向しか分からず、精度のよい将来予測ができない、という問題がある。また、サーバーやシステムにアクセスするユーザの自動車利用予定だけを収集するために、サンプルに偏りが出てしまう。
【0007】
また、上記の特許文献3に記載の技術では、本来、旅行時間への反映や満足/不満足の判断に用いられるトリップ経験を、情報信頼度を求めるためだけに用いているため、トリップ経験が、精度の良い交通流の計算に寄与していない、という問題がある。
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、精度よく交通流を計算することができる交通流計算装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために本発明に係る交通流計算装置は、道路ネットワークを表わす道路ネットワークデータを記憶した道路ネットワーク記憶手段と、複数の個人に対する、出発時刻、出発地、目的地、及び前記道路ネットワーク上の前記出発地から前記目的地までの経路を表わす複数の個人交通需要データを記憶した交通需要記憶手段と、前記複数の個人交通需要データに基づいて、前記道路ネットワークにおける交通流を計算する交通流計算手段と、前記交通流計算手段により計算された交通流に基づいて、各個人について、目的地までの旅行時間を含む走行経験情報を生成する経験情報生成手段と、各個人について、前記走行経験情報に基づいて、目的地までの旅行時間が所定時間以上である場合、又は前記走行経験情報から算出される経路コストが所定値以上である場合、前記個人の個人交通需要データを変更する変更手段と、を備え、前記交通流計算手段は、前記変更手段により変更された前記個人交通需要データを更に用いて前記道路ネットワークにおける交通流を計算することを特徴としている。
【0010】
本発明に係るプログラムは、道路ネットワークを表わす道路ネットワークデータを記憶した道路ネットワーク記憶手段と、複数の個人に対する、出発時刻、出発地、目的地、及び前記道路ネットワーク上の前記出発地から前記目的地までの経路を表わす複数の個人交通需要データを記憶した交通需要記憶手段とを含むコンピュータを、前記複数の個人交通需要データに基づいて、前記道路ネットワークにおける交通流を計算する交通流計算手段、前記交通流計算手段により計算された交通流に基づいて、各個人について、目的地までの旅行時間を含む走行経験情報を生成する経験情報生成手段、及び各個人について、前記走行経験情報に基づいて、目的地までの旅行時間が所定時間以上である場合、又は前記走行経験情報から算出される経路コストが所定値以上である場合、前記個人の個人交通需要データを変更する変更手段として機能させ、前記交通流計算手段は、前記変更手段により変更された前記個人交通需要データを更に用いて前記道路ネットワークにおける交通流を計算することを特徴としている。
【0011】
本発明によれば、交通流計算手段によって、複数の個人交通需要データに基づいて、道路ネットワークにおける交通流を計算し、経験情報生成手段によって、交通流計算手段により計算された交通流に基づいて、各個人について、目的地までの旅行時間を含む走行経験情報を生成する。
【0012】
そして、変更手段によって、各個人について、走行経験情報に基づいて、目的地までの旅行時間が所定時間以上である場合、又は走行経験情報から算出される経路コストが所定値以上である場合、個人の個人交通需要データを変更する。交通流計算手段によって、変更手段により変更された個人交通需要データを更に用いて道路ネットワークにおける交通流を計算する。
【0013】
このように、各個人について、目的地までの旅行時間が所定時間以上である場合、又は経路コストが所定値以上である場合、個人交通需要データを変更して、道路ネットワークにおける交通流を計算することにより、精度よく交通流を計算することができる。
【0014】
本発明に係る経験情報生成手段は、各個人について、目的地までの旅行時間及び目的地までの各リンクのリンク旅行時間を含む走行経験情報を生成し、変更手段は、各個人について、目的地までの旅行時間が所定時間以上である場合、又は経路コストが所定値以上である場合、走行経験情報に含まれる各リンクのリンク旅行時間を用いて、経路コストを最小にする経路を探索して、個人交通需要データの経路を、探索された経路に変更するようにすることができる。
【0015】
また、上記の変更手段は、各個人について、目的地までの旅行時間が所定時間以上である場合、又は経路コストが所定値以上である場合、走行経験情報に含まれる各リンクのリンク旅行時間を用いて経路コストを最小にする経路を探索し、探索された経路に対する経路コストが、所定値以上である場合、個人の個人交通需要データの出発時刻を所定時間だけ変更したときの経路コストを最小にする経路を更に探索し、個人交通需要データの経路を、探索された経路のうち経路コストが小さい経路に変更するようにすることができる。
【0016】
上記の変更手段は、各個人について、目的地までの旅行時間が所定時間以上である場合、又は経路コストが所定値以上である場合、走行経験情報に含まれる各リンクのリンク旅行時間を用いると共に、走行経験情報に含まれていないリンクのリンク旅行時間として、予め求められたリンク旅行時間を用いて、経路コストを最小にする経路を探索して、個人交通需要データの経路を、探索された経路に変更するようにすることができる。
【0017】
また、上記の変更手段は、各個人について、個人に交通流の情報が提供される場合には、提供される交通流の情報から得られる各リンクのリンク旅行時間を更に用いて、経路コストを最小にする経路を探索して、個人の個人交通需要データの経路を、探索された経路に変更するようにすることができる。
【0018】
本発明に係る道路ネットワーク記憶手段は、道路ネットワークデータを記憶すると共に、鉄道及びバスの公共交通ネットワークを表わす公共交通ネットワークデータを記憶し、交通需要記憶手段は、出発時刻、出発地、及び目的地と共に、車、鉄道、バスのうちの少なくとも1つの交通手段及び経路の組み合わせを表わす個人交通需要データを複数記憶し、交通流計算手段は、複数の個人交通需要データに基づいて、道路ネットワーク及び公共交通ネットワークにおける交通流を計算するようにすることができる。
【0019】
上記の道路ネットワーク及び公共交通ネットワークにおける交通流を計算する本発明において、個人交通需要データは、各交通手段に対する利用度合いを更に表わし、経路コストは、各交通手段に対する利用度合いを用いて算出され、交通流計算手段は、第1期間の単位で、交通流を繰り返し計算し、経験情報生成手段は、交通流計算手段により第1期間の単位で交通流が計算される毎に、各個人について、走行経験情報を生成し、第1期間より長い第2期間の単位で、各個人について、変更手段により個人交通需要データを変更した回数、目的地までの旅行時間が所定時間以上であった回数、又は経路コストが所定値以上であった回数に基づいて、個人の個人交通需要データの各交通手段に対する利用度合いを変更する利用度変更手段を更に含み、利用度変更手段によって各交通手段に対する利用度合いが変更された個人について、個人交通需要データの交通手段及び経路の組み合わせは、変更された各交通手段に対する利用度合いを用いて算出される経路コストを最小にする交通手段及び経路の組み合わせに変更され、交通流計算手段は、交通手段及び経路の組み合わせが変更された個人交通需要データを更に用いて道路ネットワーク及び公共交通ネットワークにおける交通流を計算するようにすることができる。
【0020】
また、上記の利用度変更手段は、各個人について、変更手段により個人交通需要データを変更した回数が所定回数以上であった場合、目的地までの旅行時間が所定時間以上であった回数が所定回数以上であった場合、又は経路コストが所定値以上であった回数が所定回数以上であった場合、個人の個人交通需要データの車に対する利用度合いを小さくするように変更するようにすることができる。
【0021】
上記の道路ネットワーク及び公共交通ネットワークにおける交通流を計算する本発明において、交通流計算手段は、第1期間の単位で、交通流を繰り返し計算し、第1期間より長い第2期間の単位で、交通流計算手段により計算された交通流に基づいて、道路ネットワーク上の渋滞が発生するリンクを特定し、特定されたリンクをオペレータに提示する提示手段と、特定されたリンクを提示したときに、交通施策を導入した場合の道路ネットワークデータのパラメータ又は公共交通ネットワークデータのパラメータの、オペレータによる入力を受け付ける受付手段と、受付手段によって受け付けた道路ネットワークデータのパラメータ又は公共交通ネットワークデータのパラメータに応じて、道路ネットワーク記憶手段に記憶された道路ネットワークデータ又は公共交通ネットワークデータを変更するネットワーク変更手段と、を更に含み、交通流計算手段は、ネットワーク変更手段により変更された道路ネットワークデータ又は公共交通ネットワークデータを更に用いて道路ネットワーク及び公共交通ネットワークにおける交通流を計算するようにすることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明の交通流計算装置及びプログラムによれば、各個人について、目的地までの旅行時間が所定時間以上である場合、又は経路コストが所定値以上である場合、個人交通需要データを変更して、道路ネットワークにおける交通流を計算することにより、精度よく交通流を計算することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る交通流計算装置を示すブロック図である。
【図2】個人交通需要データの例を示す図である。
【図3】初期経路の作成を説明するための図である。
【図4】トリップ目的に応じた経路選択の基準を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る交通流計算装置におけるシミュレーション処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る交通流計算装置におけるシミュレーション処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る交通流計算装置における代替案検討処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図8】個人交通需要データの例を示す図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係る交通流計算装置を示すブロック図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る交通流計算装置におけるシミュレーション処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る交通流計算装置におけるシミュレーション処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図12】本発明の第3の実施の形態に係る交通流計算装置における重み変更処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第3の実施の形態に係る交通流計算装置における交通施策導入処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図14】車に対する効用と、車保有をやめる確率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0025】
図1に示すように、第1の実施の形態に係る交通流計算装置10は、CPU、ROM、RAM、HDDを備えたコンピュータで構成され、各個人(ドライバ)について、個人交通需要データを作成する交通需要作成部12と、作成された各個人の交通需要データを記憶する交通需要データベース14と、交通環境データを作成する交通環境作成部16と、作成された交通環境データを記憶する交通環境データベース18と、交通流をシミュレートする交通流シミュレーション部20と、各個人の走行経験情報を生成する経験情報生成部22と、交通情報を各個人に提供する交通情報提供部24と、を備えている。
【0026】
交通需要作成部12は、旅行に関するアンケート調査結果や実測交通調査結果(例えば道路交通センサス)に基づき、複数の個人の各々について、図2に示すような、ID、出発日時、出発地、目的地、トリップ目的、及び経路が含まれる個人交通需要データを作成し、交通需要データベース14に格納する。
【0027】
個人交通需要データに含まれる初期経路は、図3に示すように、個人情報(ID、トリップ日時、出発地、目的地、トリップ目的)および道路ネットワークを入力データとして、トリッププラン機能により作成される。初期経路の作成では、例えばダイクストラ法を用いて、経路上のリンクコストの合計が最小となる経路を得る。リンクコストは、車両が該当リンクを走行するときの負担を表し、例えば、以下の(1)式によって計算される。
【0028】
【数1】

【0029】
ここで、CIDは、リンクコストであり、Tは、リンク旅行時間である。また、Fは、通行料金であり、wID,1、wID,6は、重み係数である。
【0030】
なお、初期経路作成時にはリンク旅行時間が分からないため、固定時速(たとえば30km/h)とリンク長とから予め算出されたリンク旅行時間を用いる。重み係数wID,1、wID,6は、図4に示すように、各ドライバのトリップ目的に応じた経路選択の基準に基づいて、決定される。たとえば、トリップ目的が自由(観光などの非日常的な行動)の場合は、通行料金Fの係数wID,6の値が小さくなる。
【0031】
交通環境作成部16は、地図データや信号データに基づき、交通流シミュレーション部20の入力フォーマットに合わせて、道路ネットワークデータを含む交通環境データ(例えば、リンク、ノード、信号の有無・現示など)を作成する。
【0032】
交通流シミュレーション部20は、交通需要データベース14に記憶された各個人の個人交通需要データと、交通環境データベース18に記憶された交通環境データとに基づいて、起点から終点まで、時間の経過に伴う道路ネットワーク上の交通流を、1秒毎に計算し、1日分になるまで繰り返し計算する。また、交通流シミュレーション部20は、1日分について、各個人の車両の走行経路および旅行時間、さらに各道路の交通量および渋滞長を算出する。
【0033】
また、交通流シミュレーション部20は、所定期間(例えば1ヶ月)経過するまで、1日分の交通流を繰り返し計算する。
【0034】
シミュレーションモデルは、スキャニングインターバル(=1秒)ごとに車両を移動させる交通流モデルで構成される。交通流モデルは、各個人の個人交通需要データの経路情報に従って、各車両をネットワーク上で移動させ、各リンクの旅行時間を計算し出力する。
【0035】
経験情報生成部22は、交通流シミュレーション部20によって計算された交通流に基づいて、各個人について、目的地までの経路の旅行時間及び経路上の各リンク旅行時間を含む走行経験情報を生成する。
【0036】
交通情報提供部24は、交通情報を受信する一部の個人を決定する。例えば、トリップ目的別に入力した交通情報の利用割合に応じて、乱数で交通情報を受信する個人を決定する。交通情報提供部24は、交通情報を、決定された個人に対してのみ提供する。なお、本実施の形態では、交通情報を受信可能な個人が、Webpage、ラジオ、他の利用経験者の意見などで、区間の所要時間を表わす交通情報を得ると仮定している。
【0037】
交通情報を受信すると決定された個人に対してのみ、交通需要作成部12における経路決定時に、提供された交通情報から得られる区間旅行時間を利用する。提供される交通情報の区間旅行時間は、交通流シミュレーション部20で得た区間旅行時間を用いる。交通情報を得たユーザは、上記(1)式の該当リンクの旅行時間の値を、交通情報の区間旅行時間から得られるリンク旅行時間の値に変更して再探索を行う。
【0038】
なお、交通情報を受信しない個人は、他の個人からの意見により交通情報を得るとしてもよい。ただし、他の利用者からの情報の場合は、それに誤差を含める。
【0039】
また、交通流計算装置10は、更に、走行経験情報に基づいて、走行経路の代替案を検討するドライバ判断部26と、代替案に基づいて交通需要データベースの個人交通需要データを修正する交通需要修正部28とを備えている。なお、ドライバ判断部26及び交通需要修正部28は、変更手段の一例である。
【0040】
ドライバ判断部26は、各個人について、目的地までの旅行時間が、自由走行速度での旅行時間より、所定時間(T分/km×目的地までの距離)以上多くかかったか否かを判定する。また、ドライバ判断部26は、各個人について、上記の判定結果が肯定された回数が、所定回数以上であるか否かを判定する。
【0041】
ドライバ判断部26は、旅行時間に関する判定結果が所定回数以上肯定された個人について、以下に説明するように、走行経路の代替案を検討する。
【0042】
まず、走行経験情報を用いて、上記(1)式による最小コスト経路を探索する(経路Aとする)。例えば、走行経験情報から得られるリンク旅行時間を、上記(1)式のリンク旅行時間Tに反映させて上記(1)式を計算する。そのとき、経験には個人の誤差があるために誤差を含んだ値にする。また、交通情報が提供される個人である場合には、交通情報から得られるリンク旅行時間を、上記(1)式のリンク旅行時間Tに反映させて上記(1)式を計算する。交通情報が得られない場合、走行経験したリンク以外については、リンク旅行時間として、固定時速とリンク長とから予め算出された予測時間を用いて、上記(1)式を計算する。
【0043】
そして、経路Aのコストが個人の予め定めた限界値Cmax以上であるか否かを判定し、限界値Cmax未満であれば、経路Aを代替経路とする。一方、限界値Cmax以上である場合には、次に、出発時刻を所定時間だけずらすように変更した場合のコスト計算を行い、最小コスト経路を決定する(経路Bとする。)
そして、経路Bのコストが個人の予め定めた限界値Cmax以上であるか否かを判定し、限界値Cmax未満であれば、経路Bを代替経路とする。一方、限界値Cmax以上である場合には、当該個人のトリップ目的が観光目的であれば、外出しないことを決定する。観光目的でなければ、経路Aと経路Bを比較し、コストが小さいほうを、代替経路として選択する。
【0044】
なお、出発時刻を時間変更した場合の再経路探索では、変更後の時刻のリンク旅行時間を用いて、上記(1)式を計算する。また、交通情報が受信可能な個人である場合には、交通情報から得られるリンク旅行時間を用いて上記(1)式を計算し、交通情報が受信不能な個人である場合には、固定時速から算出されるリンク旅行時間を用いて上記(1)式を計算する。
【0045】
次に、第1の実施の形態に係る交通流計算装置10の動作について説明する。
【0046】
オペレータによって、シミュレーションの開始指示が入力されると、交通流計算装置10において、図5、6に示すシミュレーション処理ルーチンが実行される。
【0047】
まず、ステップ100において、経路情報を除く、各個人の個人交通需要データを作成して、交通需要データベース14に格納する。また、全ての個人の中から、交通情報を受信可能な個人を決定する。そして、ステップ102において、時間超過回数をカウントする変数Kid(id=0,・・・,N−1)の初期化と、日にちの設定を行う。
【0048】
そして、ステップ104において、処理対象の個人を決定し、ステップ106において、処理対象の個人の個人交通需要データに基づいて、上記ステップ102又は後述するステップ138で設定された日にちが、処理対象の個人のトリップ予定日であるか否かを判定する。トリップ予定日でない場合には、ステップ116へ移行するが、一方、トリップ予定日である場合には、ステップ108で、個人交通需要データにおいて、経路情報が作成済みであるか否かを判定する。経路情報が作成済みである場合には、ステップ112へ移行するが、一方、経路情報がまだ作成されていない場合には、ステップ110において、固定速度から予め求められたリンク旅行時間を用いて、最小コスト経路を探索して、初期経路を作成し、個人交通需要データの経路情報として格納し、ステップ116へ移行する。
【0049】
ステップ112では、処理対象の個人が、交通情報を受信可能であるか否かを判定し、交通情報を受信不能である場合には、ステップ116へ移行するが、一方、交通情報が提供される個人として決定されている場合には、ステップ114において、前回のステップ118で計算された交通流に基づいて提供される交通情報から得られるリンク旅行時間を用いて、最小コスト経路を再探索して、目的地までの経路を作成し、個人交通需要データの経路情報として格納し、ステップ116へ移行する。
【0050】
ステップ116では、全ての個人について、上記ステップ104〜ステップ114の処理を終了したか否かを判定し、全ての個人について終了したと判定された場合には、ステップ118へ進む。一方、上記ステップ104〜ステップ114の処理が終了していない個人が存在する場合には、ステップ104へ戻り、当該個人を、処理対象の個人として設定する。
【0051】
ステップ118では、交通需要データベース14に記憶された各個人の個人交通需要データ、及び交通環境データベース18に記憶された交通環境データに基づいて、1日分の交通流を計算する。
【0052】
そして、ステップ120において、上記ステップ118で計算された交通流に基づいて、各個人について、目的地までの旅行時間、及び経路上の各リンク旅行時間を含む走行経験情報を生成する。
【0053】
次のステップ122では、現在の日にちが、最終日(例えば、1ヶ月を経過した日)であるか否かを判定する。最終日である場合には、シミュレーション処理ルーチンを終了する。一方、最終日でない場合には、ステップ124において、処理対象の個人を決定する。
【0054】
そして、ステップ126において、処理対象の個人の走行経験情報に基づいて、目的地までの旅行時間が、閾値(自由走行速度での旅行時間より、所定時間(T分/km×目的地までの距離)多い時間)以上であるか否かを判定する。閾値以上である場合には、ステップ128において、処理対象の個人に対する変数Kidをインクリメントして、ステップ130へ移行する。一方、上記ステップ126において、閾値未満である場合には、ステップ130へ移行する。
【0055】
ステップ130では、処理対象の個人に対する変数Kidが、閾値(例えば、3)以上であるか否かを判定する。閾値未満である場合には、ステップ136へ移行するが、一方、閾値以上である場合には、ステップ132において、処理対象の個人の経路について、代替案を検討して、個人交通需要データの経路情報を変更し、ステップ134で、処理対象の個人に対する変数Kidを初期化する(Kid=0)。
【0056】
ステップ136では、全ての個人について、上記ステップ124〜ステップ134の処理を終了したか否かを判定し、全ての個人について終了したと判定された場合には、ステップ138へ進む。一方、上記ステップ124〜ステップ134の処理が終了していない個人が存在する場合には、ステップ124へ戻り、当該個人を、処理対象の個人として設定する。
【0057】
ステップ138では、現在の日にちを次の日に更新して、上記ステップ104へ戻る。
【0058】
上記のように、シミュレーション処理ルーチンが実行されることにより、例えば1ヶ月分の交通流が計算される。
【0059】
上記ステップ132の処理は、図7に示す代替案検討処理ルーチンによって実現される。
【0060】
まず、ステップ140において、処理対象の個人が、交通情報を受信可能であるか否かを判定し、交通情報が提供される個人として決定されている場合には、ステップ142において、提供される交通情報、及び処理対象の個人の走行経験情報を用いて、最小コスト経路である経路Aを探索する。一方、処理対象の個人が、交通情報を受信不能である場合には、ステップ144において、処理対象の個人の走行経験情報を用いて、最小コスト経路である経路Aを探索する。
【0061】
次のステップ146では、上記ステップ142又は144で探索された経路Aのコストが閾値(限界値Cmax)以上であるか否かを判定する。経路Aのコストが閾値未満である場合には、ステップ160へ移行する。一方、経路Aのコストが閾値以上である場合には、ステップ148において、出発時刻を所定時間だけずらすように変更して、最小コスト経路である経路Bを探索する。なお、処理対象の個人が、交通情報を受信可能である場合には、提供される交通情報のリンク旅行時間を用いて、最小コスト経路である経路Bを探索する。
【0062】
次のステップ150では、経路Bのコストが閾値(限界値Cmax)以上であるか否かを判定する。経路Bのコストが閾値未満である場合には、ステップ158へ移行する。一方、経路Bのコストが閾値以上である場合には、ステップ152において、処理対象の個人の個人交通需要データに基づいて、トリップ目的が、観光目的であるか否かを判定する。観光目的である場合には、ステップ154において、処理対象の個人の個人交通需要データを、外出しないように変更して、代替案検討処理ルーチンを終了する。一方、上記ステップ152で、観光目的でないと判定された場合には、ステップ156において、経路Aのコストより、経路Bのコストの方が小さいか否かを判定する。経路Bのコストの方が小さい場合には、ステップ158において、処理対象の個人の個人交通需要データについて、経路Bに変更すると共に、上記ステップ148で変更した出発時刻に変更して、代替案検討処理ルーチンを終了する。
【0063】
上記ステップ156で、経路Aのコストが、経路Bのコスト以下である場合には、ステップ160へ移行する。ステップ160では、処理対象の個人の個人交通需要データについて、経路Aに変更して、代替案検討処理ルーチンを終了する。
【0064】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る交通流計算装置によれば、各個人について、走行経験情報に基づいて目的地までの旅行時間が閾値以上であると判定された回数が、所定回数以上である場合、個人交通需要データの経路又は出発時刻を変更して、道路ネットワークにおける交通流を計算することにより、個人の経験に応じたトリップ計画を反映することができ、精度よく交通流を計算することができる。
【0065】
また、交通需要を個人毎にID形式でデータを持たせ、交通流シミュレーション部により渋滞などの動的な状況を再現し、トリップ経験で得た旅行時間に基づいて、個人の短期(例えば、1日)トリップの満足度(旅行時間が閾値未満であること)を判定する。その判定結果をもとに、経路の変更、又は出発時間の変更を行って、次のトリップを計画する。それらを繰り返すことにより、個人の行動が明確になり、全体としてより実際に近い交通状況の再現が可能となる。また、従来技術のように交通需要を、集合として定義するのではなく、個人の属性や経験に応じた扱いにし、個人の満足度を取り入れることにより、精度の良い将来の交通予測が可能である。また、現在のみならず将来の予測を全ユーザに対して偏りなく予測することが可能である。
【0066】
なお、上記の実施の形態では、上記(1)式を用いてリンクコストを計算する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、以下の式を用いて、リンクコストCIDを計算するようにしてもよい。
【0067】
【数2】

【0068】
ここで、Tはリンク旅行時間、Lはリンク長、Rは道路種別、Rは車線数である。また、Dは右左折の有無、Fは通行料金、wID,1,・・・,wID,6は重み係数である。
【0069】
次に、第2の実施の形態について説明する。なお、第2の実施の形態に係る交通流計算装置は、第1の実施の形態と同様の構成であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0070】
第2の実施の形態では、道路ネットワークと共に公共交通ネットワークの交通流を計算している点と、コストを最小にする、経路と、公共交通(徒歩や、鉄道、バス)を含む交通手段との組み合わせを探索するようにしている点とが、第1の実施の形態と主に異なっている。
【0071】
第2の実施の形態に係る交通流計算装置の交通需要作成部12は、複数の個人の各々について、図8に示すような、ID、出発日時、出発地、目的地、トリップ目的、各交通手段(例えば、車、徒歩、鉄道、バス)に対する、利用度合いを示す重み、及び経路と交通手段との組み合わせが含まれる個人交通需要データを作成し、交通需要データベース14に格納する。本実施の形態における交通需要作成部12では、車を保有しない個人(ドライバでない個人)についても、個人交通需要データを作成し、個人交通需要データには、更に、車の保有状況(車の有無)が含まれる。
【0072】
個人交通需要データに含まれる初期の経路及び交通手段の組み合わせは、個人情報(ID、トリップ日時、出発地、目的地、トリップ目的、各交通手段に対する重み)、道路ネットワーク、及び公共交通ネットワークを入力データとして、トリッププラン機能により作成される。
【0073】
初期の経路及び交通手段の組み合わせの作成では、例えばダイクストラ法を用いて、経路上のリンクコストの合計が最小となる経路及び交通手段の組み合わせを得る。リンクコストは、人が該当リンクを移動するときの負担を表し、例えば、以下の(2)式によって計算される。
【0074】
【数3】

【0075】
ここで、CIDは、リンクコストであり、Tは、リンク旅行時間である。また、Fは、通行料金、利用料金、ガソリン代であり、Sは、乗車外時間であり、Rは、乗り換え回数である。また、wID,1、wID,6、wID,8、wID,9は、重み係数である。
【0076】
作成される経路及び交通手段の組み合わせでは、経路上のリンク単位で、複数の交通手段の何れか1つが定められており、リンク単位で、交通手段の切り替わりが表わされる。
【0077】
交通環境作成部16は、地図データや、信号データ、及び公共交通機関データに基づき、交通流シミュレーション部20の入力フォーマットに合わせて、道路ネットワークデータを含む交通環境データ、及び公共交通ネットワークを含む公共交通データ(例えば、鉄道ネットワーク、バスネットワーク、鉄道やバスのダイヤ、利用料金)を作成して、交通環境データベース18に格納する。
【0078】
交通流シミュレーション部20は、交通需要データベース14に記憶された各個人の個人交通需要データと、交通環境データベース18に記憶された交通環境データ及び公共交通データとに基づいて、起点から終点まで、時間の経過に伴う道路ネットワーク上の交通流及び公共交通ネットワーク上の交通流を1秒毎に計算し、1日分になるまで繰り返し計算する。また、交通流シミュレーション部20は、1日分について、各個人の移動経路および旅行時間、待ち時間、さらに各道路の交通量、渋滞長、及び公共交通の混雑度を算出する。
【0079】
交通流シミュレーション部20は、所定期間(例えば1ヶ月)経過するまで、1日分の交通流を繰り返し計算する。
【0080】
経験情報生成部22は、交通流シミュレーション部20によって計算された交通流に基づいて、各個人について、目的地までの経路の旅行時間、及び経路上の各リンク旅行時間と交通手段との組み合わせを含む走行経験情報を生成する。
【0081】
ドライバ判断部26は、各個人について、目的地までの旅行時間が、自由走行速度での旅行時間より、所定時間(T分/km×目的地までの距離)以上多くかかったか否かを判定する。また、ドライバ判断部26は、各個人について、上記の判定が肯定された回数が、所定回数以上であるか否かを判定する。
【0082】
ドライバ判断部26は、上記の判定が所定回数以上肯定された個人について、以下に説明するように、移動経路及び交通手段の組み合わせの代替案を検討する。
【0083】
まず、上記(2)式における最小コストとなる経路及び交通手段の組み合わせを決定する(経路/手段Aとする)。ただし、経路走行経験があるために、その経験したリンク旅行時間及び交通手段の組み合わせを、上記(2)式のリンク旅行時間Tに反映させて計算する。また、交通情報が提供される個人である場合には、交通情報のリンク旅行時間を、上記(2)式の、車によるリンク旅行時間Tに反映させて計算する。交通情報が得られない場合には、経験していないリンクについて、車によるリンク旅行時間として、固定時速から算出される予測時間を用いて上記(2)式を計算する。また、経験していないリンクに対する、公共交通によるリンク旅行時間として、ダイヤから算出される予測時間を用いて上記(2)式を計算する。
【0084】
そして、経路/手段Aのコストが、予め定めた限界値Cmax以上であるか否かを判定し、限界値Cmax未満であれば、経路/手段Aを、移動経路及び交通手段の組み合わせの代替案とする。一方、限界値Cmax以上である場合には、次に、出発時刻を所定時間だけ変更した場合のコスト計算を行い、最小コストとなる経路及び交通手段の組み合わせを決定する(経路/手段Bとする)。
【0085】
そして、経路/手段Bのコストが予め定めた限界値Cmax以上であるか否かを判定し、限界値Cmax未満であれば、経路/手段Bを、移動経路及び交通手段の組み合わせの代替案とする。一方、限界値Cmax以上である場合には、観光目的であれば、外出しないことと決定する。観光目的でなければ、経路/手段Aと経路/手段Bを比較し、コストが小さいほうを選択する。
【0086】
なお、出発時刻を時間変更した場合の再経路探索では、変更後の時刻のリンク旅行時間を用いて、上記(2)式を計算する。また、交通情報が得られれば、交通情報から得られる、車によるリンク旅行時間を用いて上記(2)式を計算し、交通情報が得られなければ、固定時速から算出される予測時刻を、車によるリンク旅行時間として用いて上記(2)式を計算する。
【0087】
なお、第2の実施の形態に係る交通流計算装置の他の構成及び作用は、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0088】
以上説明したように、第2の実施の形態に係る交通流計算装置によれば、各個人について、走行経験情報に基づいて目的地までの旅行時間が閾値以上であると判定された回数が、所定回数以上である場合、個人交通需要データの経路及び交通手段の組み合わせ又は出発時刻を変更して、道路ネットワーク及び公共交通ネットワークにおける交通流を計算することにより、個人の経験に応じたトリップ計画を反映することができ、精度よく交通流を計算することができる。
【0089】
また、個々人の経験や情報をフィードバックすることにより、より実際に近い交通状況を再現でき、公共交通との分担をより正確に再現できる。交通需要を集合として定義するのではなく、個人の属性や経験に応じた扱いにすることにより、現在の状況だけでなく、将来の交通予測及び機関分担予測が可能である。
【0090】
また、自動車だけでなく、バスや鉄道などの公共交通も取り入れ、各個人の交通手段に対する重み(価値観)などを用いて、経路コストを計算し、機関分担を行う。これにより、公共交通のあり方やパークアンドライドなどの車と公共交通の組み合わせた施策の評価が可能となる。
【0091】
また、自動車及び公共交通シミュレーション機能により、渋滞、混雑や待ち時間などの動的な状況を再現し、トリップ経験で得た旅行時間に基づいて、各個人の短期(1日)トリップの満足度(旅行時間が閾値未満であること)を判定する。その判定結果をもとに、経路の変更、出発時間の変更、又は交通手段の変更を行って、次のトリップを計画する。それらを繰り返すことにより、個人の行動が明確になり、全体としてより実際に近い交通状況が再現可能となる。
【0092】
なお、上記の実施の形態では、上記(2)式を用いてリンクコストを計算する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、以下の式を用いて、リンクコストCIDを計算するようにしてもよい。
【0093】
【数4】

【0094】
ここで、Tはリンク旅行時間、Lはリンク長、Rは道路種別、Rは車線数である。また、Dは右左折の有無、Fは、通行料金、利用料金、ガソリン代、Jは混雑度である。また、Sは待ち時間、E(・)は疲労、eは年齢である。また、wID,1,・・・,wID,9は重み係数である。
【0095】
なお、混雑度、車線数、右左折回数などの値は、交通シミュレーション実行時に、各リンクで時間平均値として保持しておいたものを用いればよい。渋滞や混雑など、平均から乖離がある状況の場合は、各個人交通需要データに保存し、その値を用いてもよい。あるいは、旅行時間だけでなく、混雑度や、待ち時間、疲労を、個人の走行経験情報に反映させて、リンクコストの計算に用いるようにしてもよい。
【0096】
次に、第3の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態及び第2の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0097】
第3の実施の形態では、走行経験情報に基づいて、各交通手段に対する重みを変更している点と、交通施策の導入によるパラメータの変更を受け付けている点とが、第2の実施の形態と主に異なっている。
【0098】
図9に示すように、第3の実施の形態に係る交通流計算装置310は、交通需要作成部12と、交通需要データベース14と、交通環境作成部16と、交通環境データベース18と、交通流シミュレーション部20と、経験情報生成部22と、交通情報提供部24と、ドライバ判断部26と、交通需要修正部28と、経験情報生成部22によって生成された走行経験情報、及びドライバ判断部26による代替案の検討履歴を蓄積する経験データベース330と、所定期間分(例えば、1ケ月分)の代替案の検討履歴に基づいて、各個人について、各交通手段に対する重みを変更する手段重み変更部332と、交通流シミュレーション部20により計算された交通流から得られる交通情報を、過去の交通状況として蓄積する過去状況データベース333と、交通施策を導入した場合の道路環境データ及び公共交通データのパラメータを受け付けて、道路環境データ及び公共交通データのパラメータを変更する交通施策導入部334とを備えている。なお、手段重み変更部332は、利用度変更手段の一例であり、交通施策導入部334は、提示手段、受付手段、及びネットワーク変更手段の一例である。
【0099】
交通需要作成部12、交通需要データベース14、交通環境作成部16、交通環境データベース18、交通流シミュレーション部20、経験情報生成部22、交通情報提供部24、ドライバ判断部26、及び交通需要修正部28は、第2の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0100】
なお、交通流シミュレーション部20で繰り返し計算される1日分の交通流は、第1期間の単位で計算される交通流に対応する。
【0101】
手段重み変更部332は、以下に説明するように、各個人について、各交通手段に対する重みを変更する。
【0102】
まず、1ヶ月間に、例えば10日以上(10回以上)、代替案の検討を行ったか否かを判定し、10日以上、代替案の検討を行った場合には、現況トリップの不満が大きいと判断し、各交通手段に対する重みを変更する。
【0103】
例えば、車が主の交通手段である場合、1ヶ月に10日以上、代替案の検討を行ったときには、(現在の車に対する重み−0.1ポイント)に、車に対する重みを変更する。
【0104】
また、1ヶ月の走行経験情報や、交通情報、車の本体価格、公共交通の利用料金を更に考慮して、各交通手段に対する重みを変更するようにしてもよい。
【0105】
なお、1ヶ月単位で、各交通手段に対する重みを変更することは、第2期間の単位で、各交通手段に対する利用度合いを変更することに対応している。
【0106】
交通施策導入部334は、まず、過去状況データベース333に1ヶ月分蓄積された交通情報に基づいて、主要路線の総渋滞長が所定距離以上あるか、あるいは、現況交通に不満を持つ個人が所定割合以上いるかを判定し、どちらも該当しなければ、交通施策の導入は行わない。交通施策導入部334は、交通施策を行う場合には、過去状況データベース333に1ヶ月分蓄積された交通情報に基づいて、渋滞が発生しているリンクを特定し、特定されたリンクを、オペレータに対して提示すると共に、交通施策候補を導入した場合の交通環境データ又は公共交通データのパラメータ値を設定する画面を表示する。交通施策候補には、ロードプライシング、P&R、カーシェアリング、渋滞情報提供などが挙げられ、それらの交通施策を反映した、パラメータ値(例えば、料金)がオペレータによって設定される。
【0107】
交通施策導入部334は、設定画面を介してオペレータから入力されたパラメータを受け付けて、交通環境データベース18の交通環境データ又は公共交通データのパラメータ値を変更する。
【0108】
なお、1ヶ月単位で、交通施策を導入した場合の道路環境データ及び公共交通データのパラメータを受け付けて変更することは、第2期間の単位で、交通施策を導入した場合の道路ネットワークデータ及び公共交通ネットワークデータのパラメータを受け付けて変更することに対応している。
【0109】
次に、第3の実施の形態に係るシミュレーション処理ルーチンを、図10、11を用いて説明する。なお、第1の実施の形態と同様の処理となる部分については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0110】
まず、ステップ100において、経路及び交通手段の組み合わせを示す経路/手段情報を除く、各個人の個人交通需要データを作成して、交通需要データベース14に格納する。また、全ての個人の中から、交通情報を受信可能な個人を決定する。そして、ステップ102において、時間超過回数をカウントする変数Kid(id=0,・・・,N−1)の初期化と、日にちの設定を行う。
【0111】
そして、ステップ104において、処理対象の個人を決定し、ステップ106において、処理対象の個人の個人交通需要データに基づいて、上記ステップ102又は後述するステップ138で設定された日にちが、トリップ予定日であるか否かを判定する。トリップ予定日でない場合には、ステップ116へ移行するが、一方、トリップ予定日である場合には、ステップ108で、個人交通需要データにおいて、経路/手段情報が作成済みであるか否かを判定する。経路/手段情報が作成済みである場合には、ステップ112へ移行するが、一方、経路/手段情報がまだ作成されていない場合には、ステップ350において、固定速度から予め求められた車によるリンク旅行時間や公共交通のダイヤから予め求められた公共交通によるリンク旅行時間を用いて、最小コストとなる経路及び交通手段の組み合わせを探索して、初期経路及び交通手段の組み合わせを作成し、個人交通需要データの経路/手段情報として格納し、ステップ116へ移行する。
【0112】
ステップ112において、処理対象の個人が、交通情報を受信可能であるか否かを判定し、交通情報を受信不能である場合には、ステップ116へ移行するが、一方、交通情報が提供される個人として決定されている場合には、ステップ352において、前回のステップ118で計算された交通流に基づいて提供される交通情報の車によるリンク旅行時間を用いて、最小コストとなる経路及び交通手段の組み合わせを再探索して、目的地までの経路及び交通手段の組み合わせを作成し、個人交通需要データの経路/手段情報として格納し、ステップ116へ移行する。
【0113】
ステップ116では、全ての個人について、上記ステップ104〜112、350、352の処理を終了したか否かを判定し、全ての個人について終了したと判定された場合には、ステップ118へ進む。一方、上記ステップ104〜112、350、352の処理が終了していない個人が存在する場合には、ステップ104へ戻り、当該個人を、処理対象の個人として設定する。
【0114】
ステップ118では、交通需要データベース14に記憶された各個人の個人交通需要データと、交通環境データベース18に記憶された交通環境データ及び公共交通データに基づいて、道路ネットワーク及び公共交通ネットワークにおける1日分の交通流を計算する。
【0115】
そして、ステップ120において、上記ステップ118で計算された交通流に基づいて、各個人について、目的地までの旅行時間と、経路上の各リンク旅行時間及び交通手段の組み合わせを含む走行経験情報を生成して、経験データベース330に記憶させる。
【0116】
次のステップ122では、最終日(例えば、6ヶ月を経過した日)であるか否かを判定する。最終日である場合には、シミュレーション処理ルーチンを終了する。一方、最終日でない場合には、ステップ354において、所定期間(例えば、1ヶ月)経過したか否かを判定する。処理開始日から1ヶ月経過した場合、又は、前回1ヶ月経過した日から再び1ヶ月経過した場合には、ステップ356において、各個人について、交通手段に対する重みを変更する。次のステップ358では、交通施策を導入した場合のパラメータを設定して、ステップ138へ移行する。
【0117】
一方、上記ステップ354において、所定期間経過していないと判定された場合には、ステップ124において、処理対象の個人を決定する。
【0118】
そして、ステップ126において、処理対象の個人の走行経験情報に基づいて、目的地までの旅行時間が、閾値(自由走行速度での旅行時間より、所定時間(T分/km×目的地までの距離)多い時間)以上であるか否かを判定する。閾値以上である場合には、ステップ128において、処理対象の個人に対する変数Kidをインクリメントして、ステップ130へ移行する。一方、上記ステップ126において、閾値未満である場合には、ステップ130へ移行する。
【0119】
ステップ130では、処理対象の個人に対する変数Kidが、閾値(例えば、3)以上であるか否かを判定する。閾値未満である場合には、ステップ136へ移行するが、一方、閾値以上である場合には、ステップ132において、処理対象の個人の経路及び交通手段の組み合わせについて、代替案を検討して、個人交通需要データの経路/手段情報を変更し、ステップ134で、処理対象の個人に対する変数Kidを初期化する(Kid=0)。
【0120】
ステップ136では、全ての個人について、上記ステップ124〜ステップ134の処理を終了したか否かを判定し、全ての個人について終了したと判定された場合には、ステップ138へ進む。一方、上記ステップ124〜ステップ134の処理が終了していない個人が存在する場合には、ステップ124へ戻り、当該個人を、処理対象の個人として設定する。
【0121】
ステップ138では、日にちを次の日に更新して、上記ステップ104へ戻る。
【0122】
上記のように、シミュレーション処理ルーチンが実行されることにより、例えば1ヶ月分の交通流が計算される度に、交通手段に対する重みの変更や、交通施策の導入によるパラメータ変更が行われる。また、例えば6ヶ月分の交通流が計算される。
【0123】
上記ステップ132の処理は、上記図7に示す代替案検討処理ルーチンにおいて、上記(2)式を用いて経路/手段A、経路/手段Bを探索するように置き換えた処理により、実現される。また、各個人について、上記ステップ132により代替案が検討された回数が、カウントされる。
【0124】
上記ステップ356は、図12に示す重み変更処理ルーチンによって実現される。
【0125】
まず、ステップ360において、処理対象の個人を決定し、ステップ362において、処理対象の個人について、代替案の検討回数が閾値以上であるか否かを判定する。代替案の検討回数が閾値以上である場合には、ステップ364において、例えば、車に対する重みを小さくするように、個人交通需要データの各交通手段に対する重みを変更する。次のステップ366では、個人交通需要データの経路/手段情報を消去して、ステップ370へ移行する。
【0126】
上記ステップ362において、代替案の検討回数が閾値未満であると判定された場合には、ステップ370へ移行する。
【0127】
ステップ370では、全ての個人について、上記ステップ360〜ステップ366の処理を終了したか否かを判定し、全ての個人について終了したと判定された場合には、重み変更処理ルーチンを終了する。一方、上記ステップ360〜ステップ366の処理が終了していない個人が存在する場合には、ステップ360へ戻り、当該個人を、処理対象の個人として設定する。
【0128】
例えば1ヶ月単位で、上記の重み変更処理ルーチンが実行されることにより、現況のトリップに不満を持つ個人について、各交通手段に対する重みを変更することができる。
【0129】
上記ステップ358は、図13に示す交通施策導入処理ルーチンによって実現される。
【0130】
まず、ステップ380において、過去状況データベース333に記憶された1か月分の交通情報に基づいて、予め求められた主要路線について、総渋滞長を算出し、主要路線の総渋滞長が閾値以上であるか否かを判定する。主要路線の総渋滞長が閾値以上である場合には、ステップ384へ移行するが、一方、主要路線の総渋滞長が閾値未満である場合には、ステップ382において、代替案の検討回数が所定回数(例えば10回)以上となる個人の割合が、閾値以上であるか否かを判定する。代替案の検討回数が所定回数以上となる個人の割合が、閾値以上である場合には、ステップ384へ移行するが、代替案の検討回数が所定回数以上となる個人の割合が、閾値未満である場合には、ステップ392へ移行する。
【0131】
ステップ384では、過去状況データベース333に記憶された1か月分の交通情報に基づいて、渋滞が発生する問題のリンクを特定し、特定されたリンクを示す画面を、交通流計算装置310に接続された表示装置(図示省略)に表示させる
そして、ステップ386において、交通環境データ及び公共交通データのパラメータを設定するための設定画面を、表示装置に表示させる。
【0132】
次のステップ388では、上記ステップ386で表示した設定画面を介して、オペレータによるパラメータの入力を受け付けたか否かを判定し、パラメータの入力を受け付けると、ステップ390へ進み、上記ステップ388で入力されたパラメータを反映するように、交通環境データベース18の交通環境データ又は公共交通データを変更する。
【0133】
そして、ステップ392では、各個人に対する、代替案の検討回数をリセットして、交通施策導入処理ルーチンを終了する。
【0134】
例えば1ヶ月単位で、上記の交通施策導入処理ルーチンが実行されることにより、問題リンクの渋滞を解消するような交通施策を導入して、交通環境データ又は公共交通データを変更することができる。
【0135】
以上説明したように、第3の実施の形態に係る交通流計算装置によれば、短期予測(自動車および公共交通シミュレーション機能)により、渋滞や、混雑、待ち時間などの動的な状況を再現し、その経験をもとに、次のトリップを計画し、長期で、交通手段に対する重みを検討する。それらを繰り返すことにより、個人の行動が明確になり、全体としてより実際に近い交通状況が再現可能となる。また、従来技術のように、交通需要を集合として定義するのではなく、個人の属性や経験に応じた扱いにし、個人の価値観や満足度を取り入れることにより、将来の交通及び機関分担予測が可能であり、また、現行にない交通施策や新しいモビリティの導入に対する効果を評価することができる。
【0136】
また、交通需要データを個人毎にID形式でデータを持たせ、短期(1日)でトリップの満足度(旅行時間が閾値未満であること)を判定し、さらに長期(1ヶ月)で、経験の蓄積や交通手段に対する重みを求める。これによって、現在のみならず将来の予測を全ユーザに対して偏りなく精度良く予測することが可能である。
【0137】
なお、上記の実施の形態では、1ヶ月間での代替案の検討回数に基づいて、交通手段に対する重みを変更する場合を例に説明したが、更に、長期(数ヶ月〜1年)で、収入減か、車検時か、自宅周辺の公共交通の整備状況が変化したか、生活環境が変化したか、などを判定し、判定結果に基づいて、交通手段に対する重みを変更するようにしてもよい。
【0138】
また、長期で、車に対する効用を算出し、車の保有状況を検討するようにしてもよい。例えば、車に対する効用のプラス要因として、収入、利用距離、価値観があり、マイナス要因として、車の保有年数、公共交通の整備状況、車以外の手段の価値観が挙げられ、以下の式に従って、車に対する効用を計算する。
【0139】
車に対する効用=F(収入(+)、車の利用距離(+)、車の保有年数(−)、公共交通の整備状況(−)、車の価値観(+)、車以外の手段の価値観(−))
計算された車に対する効用を用いて、例えば図14に示すように定義された車保有の確率に基づいて、車保有を継続するか、やめるかを判断して、個人交通需要データの車の保有状況を変更する。
【0140】
また、交通施策の導入に応じて、交通環境データ及び公共交通データのパラメータを変更する場合を例に説明したが、更に、新しいモビリティの導入に応じて、交通環境データ及び公共交通データのパラメータを変更するようにしてもよい。
【0141】
また、交通施策や新モビリティの導入に応じて、各交通手段に対する重みを変更するようにしても良い。例えば、交通施策や新モビリティ導入に応じて、利用料金などを変更し、以下の式に従って、各交通手段に対する重みを求めるようにしても良い。
【0142】
各交通手段に対する価値観=F(走行経験情報、現在の各交通手段に対する重み、交通情報、本体価格、利用料金)
例えば、ロードプライシングであれば車の利用料金が上がり、上記の式により、車に対する価値観が下がる。
【0143】
また、交通施策として、カーシェアリングを導入する場合には、各個人について、カーシェアリング会員になるか否かの判断を行うと共に、交通環境データ及び公共交通データのパラメータを変更するようにすればよい。カーシェアリング会員になるか否かの判断では、収入減、車の利用距離が小さい、車検時である、デポからの距離が小さい、車に対する重みが小さいときに、カーシェアリングの会員になると判断すればよい。
【0144】
また、代替案の検討回数が閾値以上である場合に、交通手段に対する重みを変更する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、1ヶ月間における、目的地までの旅行時間が閾値以上となった累積回数が、閾値以上である場合に、交通手段に対する重みを変更するようにしてもよく、また、1ヶ月間における、走行経験情報に基づいて算出される経路コストが閾値以上となった累積回数が、所閾値以上である場合に、交通手段に対する重みを変更するようにしてもよい。
【0145】
また、上記の第1の実施の形態〜第3の実施の形態において、目的地までの旅行時間が閾値以上となった回数が、所定回数以上である場合に、経路の代替案を検討する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、走行経験情報に基づいて算出される経路コストが閾値以上となった回数が、所定回数以上である場合に、経路の代替案を検討するようにしてもよい。また、走行経験情報に基づいて、目的地までの旅行時間が閾値以上となった場合に、経路の代替案を検討するようにしてもよく、また、走行経験情報に基づいて経路コストが閾値以上となった場合に、経路の代替案を検討するようにしてもよい。
【0146】
また、経路探索では、ダイクストラ法により、リンクコストの合計が最小となる経路を探索する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、予め複数の経路候補を用意しておき、経路候補に対してコスト計算して、経路候補の中から最小コスト経路を選択するようにしてもよい。複数の経路候補を用意する手法として、ダイクストラ法により経路コストが最小の経路からk番目までの経路を選定する方法を用いればよい。あるいは、実際の走行履歴データやアンケート調査した結果を用いて、複数の経路候補を用意するようにしてもよい。
【0147】
また、短期を1日、長期を1ヶ月とした場合を例に説明したが、それぞれの期間の長さを限定するものではない。
【符号の説明】
【0148】
10、310 交通流計算装置
12 交通需要作成部
14 交通需要データベース
16 交通環境作成部
18 交通環境データベース
20 交通流シミュレーション部
22 経験情報生成部
24 交通情報提供部
26 ドライバ判断部
28 交通需要修正部
330 経験データベース
332 手段重み変更部
334 交通施策導入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路ネットワークを表わす道路ネットワークデータを記憶した道路ネットワーク記憶手段と、
複数の個人に対する、出発時刻、出発地、目的地、及び前記道路ネットワーク上の前記出発地から前記目的地までの経路を表わす複数の個人交通需要データを記憶した交通需要記憶手段と、
前記複数の個人交通需要データに基づいて、前記道路ネットワークにおける交通流を計算する交通流計算手段と、
前記交通流計算手段により計算された交通流に基づいて、各個人について、目的地までの旅行時間を含む走行経験情報を生成する経験情報生成手段と、
各個人について、前記走行経験情報に基づいて、目的地までの旅行時間が所定時間以上である場合、又は前記走行経験情報から算出される経路コストが所定値以上である場合、前記個人の個人交通需要データを変更する変更手段と、を備え、
前記交通流計算手段は、前記変更手段により変更された前記個人交通需要データを更に用いて前記道路ネットワークにおける交通流を計算する
ことを特徴とする交通流計算装置。
【請求項2】
前記経験情報生成手段は、各個人について、前記目的地までの旅行時間及び前記目的地までの各リンクのリンク旅行時間を含む前記走行経験情報を生成し、
前記変更手段は、各個人について、前記目的地までの旅行時間が所定時間以上である場合、又は前記経路コストが所定値以上である場合、前記走行経験情報に含まれる各リンクのリンク旅行時間を用いて、前記経路コストを最小にする経路を探索して、前記個人交通需要データの経路を、前記探索された経路に変更する請求項1記載の交通流計算装置。
【請求項3】
前記変更手段は、各個人について、前記目的地までの旅行時間が所定時間以上である場合、又は前記経路コストが所定値以上である場合、前記走行経験情報に含まれる各リンクのリンク旅行時間を用いて前記経路コストを最小にする経路を探索し、前記探索された経路に対する経路コストが、前記所定値以上である場合、前記個人の個人交通需要データの出発時刻を所定時間だけ変更したときの前記経路コストを最小にする経路を更に探索し、前記個人交通需要データの経路を、前記探索された経路のうち前記経路コストが小さい経路に変更する請求項2記載の交通流計算装置。
【請求項4】
前記変更手段は、各個人について、前記目的地までの旅行時間が所定時間以上である場合、又は前記経路コストが所定値以上である場合、前記走行経験情報に含まれる各リンクのリンク旅行時間を用いると共に、前記走行経験情報に含まれていないリンクのリンク旅行時間として、予め求められたリンク旅行時間を用いて、前記経路コストを最小にする経路を探索して、前記個人交通需要データの経路を、前記探索された経路に変更する請求項2又は3記載の交通流計算装置。
【請求項5】
前記変更手段は、各個人について、前記個人に交通流の情報が提供される場合には、前記提供される前記交通流の情報から得られる各リンクのリンク旅行時間を更に用いて、前記経路コストを最小にする経路を探索して、前記個人の個人交通需要データの経路を、前記探索された経路に変更する請求項2〜請求項4の何れか1項記載の交通流計算装置。
【請求項6】
前記道路ネットワーク記憶手段は、前記道路ネットワークデータを記憶すると共に、鉄道及びバスの公共交通ネットワークを表わす公共交通ネットワークデータを記憶し、
前記交通需要記憶手段は、出発時刻、出発地、及び目的地と共に、車、鉄道、バスのうちの少なくとも1つの交通手段及び経路の組み合わせを表わす前記個人交通需要データを複数記憶し、
前記交通流計算手段は、前記複数の個人交通需要データに基づいて、前記道路ネットワーク及び前記公共交通ネットワークにおける交通流を計算する請求項1〜請求項5の何れか1項記載の交通流計算装置。
【請求項7】
前記個人交通需要データは、各交通手段に対する利用度合いを更に表わし、
前記経路コストは、各交通手段に対する利用度合いを用いて算出され、
前記交通流計算手段は、第1期間の単位で、前記交通流を繰り返し計算し、
前記経験情報生成手段は、前記交通流計算手段により前記第1期間の単位で前記交通流が計算される毎に、各個人について、前記走行経験情報を生成し、
前記第1期間より長い第2期間の単位で、各個人について、前記変更手段により前記個人交通需要データを変更した回数、目的地までの旅行時間が所定時間以上であった回数、又は前記経路コストが所定値以上であった回数に基づいて、前記個人の個人交通需要データの各交通手段に対する利用度合いを変更する利用度変更手段を更に含み、
前記利用度変更手段によって各交通手段に対する利用度合いが変更された前記個人について、前記個人交通需要データの前記交通手段及び経路の組み合わせは、前記変更された各交通手段に対する利用度合いを用いて算出される記経路コストを最小にする前記交通手段及び経路の組み合わせに変更され、
前記交通流計算手段は、前記交通手段及び経路の組み合わせが変更された前記個人交通需要データを更に用いて前記道路ネットワーク及び前記公共交通ネットワークにおける交通流を計算する請求項6記載の交通流計算装置。
【請求項8】
前記利用度変更手段は、各個人について、前記変更手段により前記個人交通需要データを変更した回数が所定回数以上であった場合、目的地までの旅行時間が所定時間以上であった回数が所定回数以上であった場合、又は前記経路コストが所定値以上であった回数が所定回数以上であった場合、前記個人の個人交通需要データの車に対する利用度合いを小さくするように変更する請求項7記載の交通流計算装置。
【請求項9】
前記交通流計算手段は、第1期間の単位で、前記交通流を繰り返し計算し、
前記第1期間より長い第2期間の単位で、前記交通流計算手段により計算された交通流に基づいて、前記道路ネットワーク上の渋滞が発生するリンクを特定し、特定されたリンクをオペレータに提示する提示手段と、
前記特定されたリンクを提示したときに、交通施策を導入した場合の前記道路ネットワークデータのパラメータ又は前記公共交通ネットワークデータのパラメータの、前記オペレータによる入力を受け付ける受付手段と、
前記受付手段によって受け付けた前記道路ネットワークデータのパラメータ又は前記公共交通ネットワークデータのパラメータに応じて、前記道路ネットワーク記憶手段に記憶された前記道路ネットワークデータ又は前記公共交通ネットワークデータを変更するネットワーク変更手段と、を更に含み、
前記交通流計算手段は、前記ネットワーク変更手段により変更された前記道路ネットワークデータ又は前記公共交通ネットワークデータを更に用いて前記道路ネットワーク及び前記公共交通ネットワークにおける交通流を計算する請求項6〜請求項8の何れか1項記載の交通流計算装置。
【請求項10】
道路ネットワークを表わす道路ネットワークデータを記憶した道路ネットワーク記憶手段と、複数の個人に対する、出発時刻、出発地、目的地、及び前記道路ネットワーク上の前記出発地から前記目的地までの経路を表わす複数の個人交通需要データを記憶した交通需要記憶手段とを含むコンピュータを、
前記複数の個人交通需要データに基づいて、前記道路ネットワークにおける交通流を計算する交通流計算手段、
前記交通流計算手段により計算された交通流に基づいて、各個人について、目的地までの旅行時間を含む走行経験情報を生成する経験情報生成手段、及び
各個人について、前記走行経験情報に基づいて、目的地までの旅行時間が所定時間以上である場合、又は前記走行経験情報から算出される経路コストが所定値以上である場合、前記個人の個人交通需要データを変更する変更手段
として機能させ、
前記交通流計算手段は、前記変更手段により変更された前記個人交通需要データを更に用いて前記道路ネットワークにおける交通流を計算する
ことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−43095(P2012−43095A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182339(P2010−182339)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】