説明

交通管制システム、該システムに用いられる誤発声検出報知方法及び誤発声検出報知プログラム

【課題】管制担当者が管制指示を行う対象の無線呼出符号(航空機識別名)を誤って発声した場合に、誤りの検出が可能な航空管制システムなどの交通管制システムを提供する。
【解決手段】誤発声検出報知手段(航空管制指示対象航空機選択手段21、マイク22、送信機23、音声認識装置24、航空機識別名抽出手段25、航空機識別名比較手段26、警報出力手段27、スピーカ28)により、管制対象表示手段(航空管制情報処理システム10)に表示されている管制対象情報から、管制担当者(管制官M)が現時点で管制指示の対象とする管制対象を選択し、管制指示用音声を発声して無線通信により管制指示を行うとき、同管制担当者の管制指示用音声が解析され、この解析結果が、選択されている管制対象と異なることを示す場合、管制担当者に対して誤発声である旨が報知される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、交通管制システム、該システムに用いられる誤発声検出報知方法及び誤発声検出報知プログラムに係り、たとえば、航空機などに対して管制官が無線システムを介した音声による管制指示を行う場合に用いる交通管制システム、該システムに用いられる誤発声検出報知方法及び誤発声検出報知プログラム関する。
【背景技術】
【0002】
航空管制システムが設けられている環境で管制官が航空機に対して管制指示を行う場合、無線システムを介した音声により行われている。しかしながら、管制官が過負荷な状態や、複数の航空機(例えば、接近している航空機)に対して同時に注意喚起しているとき、管制官の音声による管制指示では、管制指示の対象の航空機の識別名を管制官が誤って発声し、その誤りに管制官及び航空機のパイロットが共に気付かないことがあり、航空交通の安全性に重大な影響を及ぼす可能性がある。このため、管制官が音声による管制指示を行う場合でも、航空交通の安全性が確保される航空管制システムが要求されている。
【0003】
この種の関連技術としては、たとえば、特許文献1に記載された管制官訓練装置がある。
この管制官訓練装置では、シナリオ編集部により、航空機の発生、飛行ルート、時間又は気象状況のシナリオがあらかじめ編集されて作成される。また、シミュレーション演算部により、シナリオに設定された条件で、航空機の発生、移動、消滅又は訓練環境が模擬映像データとして演算及び生成される。音声認識部により、訓練管制官からの音声が認識され、音声合成部により、シミュレーション演算部で演算された応答が訓練管制官に報告される。これにより、訓練管制官は、パイロットの援助なしに訓練を行うことができる。
【0004】
また、特許文献2に記載された飛行場運航票管理システムのユーザインタフェース装置では、情報取得手段により、各管制業務に必要な運航票管理情報が取得される。情報処理手段により、得られた運航票管理情報が各管制業務に応じて入力装置からの指示内容にしたがって編集処理される。情報出力手段により、入力装置からの指示にしたがって運航票管理情報が管制席の情報表示装置に表示されると共に、関連する管制業務の運航票管理情報が同一画面上に表示される。
【0005】
また、特許文献3に記載された航空管制指示誤り訂正装置では、管制官の管制指示が音声認識装置によって解析され、データ照合警告装置により、航空管制情報管理装置から得た航空管制情報に、管制官が発した航空機識別名がない場合に、スピーカと情報表示装置に警告情報が出力される。これにより、航空交通の安全性を高めることができる。
【0006】
また、特許文献4に記載された管制用通信システムでは、通信切換部において、音声通信送受信部及びデータリンク通信送受信部の受信信号から、通信手段(音声通信か、又はデータリンク通信か)が認識され、通信手段が自動又は手動で切り換えられる。音声通信使用時では、データリンク通信系が休止状態となり、音声通信の場合、管制指示は、現状と同様に音声にて行われる。一方、データリンク通信の場合、送受信メッセージ管理部にて代表的な送信メッセージ候補から選択されるか、あるいは、音声認識部の音声認識機能を用いて音声通信と同様に音声にて行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−347558号公報
【特許文献2】特開平07−311899号公報
【特許文献3】特開2004−145566号公報
【特許文献4】特開2000−182200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記関連技術では、次のような課題があった。
すなわち、特許文献1に記載された管制官訓練装置では、訓練管制官の単独訓練が可能となるが、この発明とは構成が異なり、上記の問題点を改善するものではない。
【0009】
特許文献2に記載されたユーザインタフェース装置では、管制官の負担が軽減され、より的確で迅速な指示が行われ、さらにパイロットと管制官との意思疎通が、音声のみならず視覚的に伝達可能となるが、この発明とは構成が異なり、上記の問題点を改善するものではない。
【0010】
特許文献3に記載された航空管制指示誤り訂正装置では、管制官が実際に管制していない航空機の無線呼出符号(航空機識別名)を使用して航空機に指示を出した場合には、その誤りを検知することができるが、当該管制官が管制している他の航空機の無線呼出符号(航空機識別名)を誤って発声した場合には、その誤りを検知できないため、管制官が航空機に航空管制指示を行う際に、無線呼出符号(航空機識別名)を誤って発声しても、その誤りを完全には検知できないという課題がある。
【0011】
特許文献4に記載された管制用通信システムでは、音声通信とデータリンク通信との両方が用いられる過渡的な状況において、通信が効率的に行われるが、この発明とは構成が異なり、上記の問題点を改善するものではない。
【0012】
この発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、管制官が航空管制指示を行う対象の航空機の無線呼出符号(航空機識別名)を誤って発声した場合に、誤りの検出が可能な交通管制システム、該システムに用いられる誤発声検出報知方法及び誤発声検出報知プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、この発明の第1の構成は、交通管制指示の対象となる管制対象に対応する管制対象情報を一覧表示する管制対象表示手段を有する交通管制システムに係り、前記管制対象表示手段に表示されている前記管制対象情報から、管制担当者が現時点で管制指示の対象とする管制対象を選択し、管制指示用音声を発声して無線通信により管制指示を行うとき、前記管制担当者の前記管制指示用音声を解析し、この解析結果が、選択されている前記管制対象と異なる場合、誤発声である旨を報知する誤発声検出報知手段が設けられていることを特徴としている。
【0014】
この発明の第2の構成は、交通管制指示の対象となる管制対象に対応する管制対象情報を一覧表示する管制対象表示手段を有する交通管制システムに用いられる誤発声検出報知方法に係り、誤発声検出報知手段が、前記管制対象表示手段に表示されている前記管制対象情報から、管制担当者が現時点で管制指示の対象とする管制対象を選択し、管制指示用音声を発声して無線通信により管制指示を行うとき、前記管制担当者の前記管制指示用音声を解析し、この解析結果が、選択されている前記管制対象と異なる場合、誤発声である旨を報知する誤発声検出報知処理を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
この発明の構成によれば、管制担当者の管制指示用音声の解析結果が、選択されている管制対象と異なることを示す場合、同管制担当者に対して誤発声である旨を報知でき、管制担当者が音声による管制指示を行う場合でも、交通の安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の一実施形態である交通管制システムの要部の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】図1中の航空管制指示対象航空機選択手段21の動作を説明するフローチャートである。
【図3】、図1中の音声認識装置24及び航空機識別名抽出手段25の動作を説明するフローチャートである。
【図4】図1中の航空機識別名比較手段26の動作を説明するフローチャートである。
【図5】図1中の警報出力手段27の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上記誤発声検出報知手段が、上記管制対象情報から上記管制担当者が選択した上記管制対象に対応する管制対象選択情報を出力するための管制対象選択手段(航空管制指示対象航空機選択手段)と、上記管制担当者が発声した上記管制指示用音声を音声信号に変換する音声信号変換手段(マイク)と、同音声信号変換手段で変換された上記音声信号を無線通信により上記管制対象へ送信する送信手段(送信機)と、上記音声信号変換手段で変換された上記音声信号を解析する音声信号解析手段(音声認識装置)と、同音声信号解析手段による解析結果に基づいて、上記管制指示用音声に対応する管制対象情報を抽出して管制対象抽出情報として出力する管制対象情報抽出手段(航空機識別名抽出手段)と、上記管制対象選択手段から出力された上記管制対象選択情報と上記管制対象情報抽出手段で抽出された上記管制対象抽出情報とを比較し、異なる場合に警報要求を出力する管制対象情報比較手段(航空機識別名比較手段)と、同管制対象情報比較手段から上記警報要求が出力されたとき、上記誤発声である旨を報知する報知手段(警報出力手段、スピーカ、警報表示)とから構成されている交通管制システムを実現する。
【0018】
また、上記管制対象表示手段は、上記報知手段から誤発声である旨が報知されたとき、警報を表示する警報表示手段が設けられている。また、上記報知手段は、上記管制対象情報比較手段から上記警報要求が出力されたとき、上記管制対象情報抽出手段で抽出された上記管制対象抽出情報に対応する管制対象情報が上記管制対象表示手段に表示されている場合、当該管制対象情報を強調表示する構成とされている。また、上記管制対象情報は、当該管制対象を表す識別情報である。
【実施形態】
【0019】
図1は、この発明の一実施形態である交通管制システムの要部の電気的構成を示すブロック図である。
この形態の交通管制システムは、同図に示すように、航空管制システムであり、航空管制情報処理システム10と、航空管制指示対象航空機選択手段21と、マイク22と、送信機23と、音声認識装置24と、航空機識別名抽出手段25と、航空機識別名比較手段26と、警報出力手段27と、スピーカ28とから構成されている。航空管制情報処理システム10は、飛行計画情報表示装置11と、レーダ情報表示装置12とを備えている。飛行計画情報表示装置11は、たとえば液晶表示装置などで構成され、航空管制(交通管制)指示の対象となる複数の航空機(管制対象)に対応する運航票表示da(管制対象情報)を一覧表示すると共に、警報出力手段27から管制官M(管制担当者)による誤発声の旨が報知されたとき、警報表示dbを表示する。上記運航票表示daでは、たとえば、便名“XXX YYY ZZZ ,…”が表示されている。
【0020】
レーダ情報表示装置12は、たとえば液晶表示装置などで構成され、航空管制指示の対象となる複数の航空機に対応する管制機リスト表示ea及びレーダシンボル表示eb(管制対象情報)を一覧表示すると共に、警報出力手段27から管制官Mによる誤発声の旨が報知されたとき、警報表示ecを表示する。上記管制機リスト表示eaでは、たとえば、便名“AAA BB,…”が表示されている。また、レーダシンボル表示ebでは、便名、高度、速度、関連情報などが表示されている。
【0021】
航空管制指示対象航空機選択手段21は、航空管制情報処理システム10の飛行計画情報表示装置11又はレーダ情報表示装置12に表示されている上記管制対象情報から管制官M(管制担当者)が選択操作することにより、現時点で管制指示の対象とする航空機(管制対象)に対応する無線呼出符号sa(管制対象選択情報)を出力する。また、航空管制指示対象航空機選択手段21は、管制官Mが飛行計画情報表示装置11又はレーダ情報表示装置12のいずれの表示から上記管制対象を選択したかを示す選択ソースsbを出力する。マイク22は、管制官Mが発声した管制指示用音声をアナログの音声信号vsに変換する。送信機23は、マイク22で変換された音声信号vsを無線通信により航空機(管制対象)へ送信する。音声認識装置24は、マイク22で変換された音声信号vsを解析する。航空機識別名抽出手段25は、音声認識装置24による音声信号vsの解析結果を示す音声情報vdに基づいて、管制官Mの管制指示用音声に対応する管制対象を表す管制対象情報を抽出して管制対象抽出情報veとして出力する。
【0022】
航空機識別名比較手段26は、航空管制指示対象航空機選択手段21から出力された管制対象に対応する無線呼出符号sa(管制対象選択情報)と航空機識別名抽出手段25で抽出された管制対象抽出情報veとを比較し、異なる場合に警報要求arを出力する。警報出力手段27は、航空機識別名比較手段26から警報要求arが出力されたとき、上記誤発声である旨を報知するための報知信号sjを、スピーカ28へ送出すると共に、航空管制指示対象航空機選択手段21からの選択ソースsbに基づいて飛行計画情報表示装置11又はレーダ情報表示装置12へ出力する。
【0023】
また、警報出力手段27は、航空機識別名比較手段26から警報要求arが出力されたとき、航空機識別名抽出手段25で抽出された管制対象抽出情報veに対応する管制対象情報が航空管制情報処理システム10の飛行計画情報表示装置11又は/及びレーダ情報表示装置12に表示されている場合、当該管制対象情報を強調表示(たとえば、明るく表示する、太く表示するなど)する。スピーカ28は、報知信号sjに基づいてアラーム音を発生する。上記管制対象情報は、当該管制対象を表す識別名などの識別情報である。また、上記航空管制指示対象航空機選択手段21、マイク22、送信機23、音声認識装置24、航空機識別名抽出手段25、航空機識別名比較手段26、警報出力手段27及びスピーカ28により、誤発声検出報知手段が構成され、同誤発声検出報知手段は、誤発声検出報知プログラムに基づいて機能するコンピュータで制御される。
【0024】
図2は、図1中の航空管制指示対象航空機選択手段21の動作を説明するフローチャート、図3は、図1中の音声認識装置24及び航空機識別名抽出手段25の動作を説明するフローチャート、図4は、図1中の航空機識別名比較手段26の動作を説明するフローチャート、及び図5が、図1中の警報出力手段27の動作を説明するフローチャートである。
これらの図を参照して、この形態の航空管制システムに用いられる誤発声検出報知方法の処理内容について説明する。
この航空管制システムでは、誤発声検出報知手段(航空管制指示対象航空機選択手段21、マイク22、送信機23、音声認識装置24、航空機識別名抽出手段25、航空機識別名比較手段26、警報出力手段27、スピーカ28)により、管制対象表示手段(航空管制情報処理システム10)に表示されている管制対象情報から、管制担当者(管制官M)が現時点で管制指示の対象とする管制対象を選択し、管制指示用音声を発声して無線通信により管制指示を行うとき、同管制担当者の管制指示用音声が解析され、この解析結果が、選択されている管制対象と異なることを示す場合、管制担当者に対して誤発声である旨が報知される(誤発声検出報知処理)。
【0025】
誤発声検出報知処理では、以下の各処理が行われる。
すなわち、管制対象選択手段(航空管制指示対象航空機選択手段21)により、航空管制情報処理システム10に表示されている管制対象情報から管制官Mが選択した管制対象に対応する管制対象選択情報が出力される(管制対象選択処理)。音声信号変換手段(マイク22)により、管制官Mが発声した管制指示用音声が音声信号vsに変換される(音声信号変換処理)。送信手段(送信機23)により、マイク22で変換された音声信号vsが無線通信により管制対象へ送信される(送信処理)。音声信号解析手段(音声認識装置24)により、マイク22で変換された音声信号vsが解析される(音声信号解析処理)。
【0026】
管制対象情報抽出手段(航空機識別名抽出手段25)により、音声認識装置24による音声信号vsの解析結果に基づいて、管制官Mの管制指示用音声に対応する管制対象情報が抽出されて管制対象抽出情報として出力される(管制対象情報抽出処理)。管制対象情報比較手段(航空機識別名比較手段26)により、航空管制指示対象航空機選択手段21から出力された管制対象選択情報と航空機識別名抽出手段25で抽出された管制対象抽出情報とが比較され、異なる場合に警報要求arが出力される(管制対象情報比較処理)。報知手段(警報出力手段27)により、航空機識別名比較手段26から警報要求arが出力されたとき、上記誤発声である旨が報知される(報知処理)。
【0027】
また、警報表示手段(警報表示db,ec)により、警報出力手段27から誤発声である旨が報知されたとき、警報が表示される(警報表示処理)。また、航空機識別名比較手段26から警報要求arが出力されたとき、航空機識別名抽出手段25で抽出された管制対象抽出情報veに対応する管制対象情報が管制対象表示手段(航空管制情報処理システム10)に表示されている場合、警報出力手段27により、当該管制対象情報が強調表示される。また、上記管制対象情報は、当該管制対象を表す識別情報である。
【0028】
すなわち、管制官Mは、航空機に航空管制指示を行う前に、図2に示すように、航空管制指示対象の航空機を飛行計画情報表示装置11又はレーダ情報表示装置12の表示内容から選択する(ステップA1)。この場合、管制官Mは、レーダ情報表示装置12に表示されているレーダシンボル表示ebから航空管制指示対象の航空機を選択する場合、ポインティングデバイス(たとえば、マウス、トラックボールなど)、又はファンクションキィなどで対象の航空機を選択する(ステップA2)。また、管制官Mは、レーダ情報表示装置12に表示されている管制機リスト表示eaから航空管制指示対象の航空機を選択する場合、ポインティングデバイス(マウス、トラックボールなど)、又はファンクションキィなどで対象の航空機を選択する(ステップA3)。また、管制官Mは、飛行計画情報表示装置11に表示されている運航票表示daから航空管制指示対象の航空機を選択する場合、ポインティングデバイス(マウス、トラックボールなど)、又はファンクションキィなどで対象の航空機を選択する(ステップA4)。
【0029】
管制官Mが発声した管制指示用音声は、マイク22により音声信号vsに変換される。音声信号vsは、図3に示すように、送信機23により航空機に無線送信されると共に、音声認識装置24にも入力される。音声信号vsは、音声認識装置24で音声認識されてデジタルの文字列で構成される音声情報vsに変換され、航空機識別名抽出手段25に送出される(ステップB1)。航空機識別名抽出手段25では、音声認識装置24から送出された音声情報vsから航空機の無線呼出符号(航空機識別するための便名、デジタルの文字列)が抽出され、この無線呼出符号が管制対象抽出情報veとして航空機識別名比較手段26に送出される(ステップB2)。
【0030】
航空機識別名比較手段26では、図4に示すように、航空管制指示対象航空機選択手段21から出力された無線呼出符号saが入力され(ステップC1)、また、航空機識別名抽出手段25から送出された管制対象抽出情報ve(無線呼出符号)とが入力されて両者の一致/不一致が判定され(ステップC2,C3)、不一致の場合に警報要求arが警報出力手段27へ出力される(ステップC4)。
【0031】
警報出力手段27では、図5に示すように、航空機識別名比較手段26から警報要求arが入力され(ステップD1)、スピーカ28に警報に対応する報知信号sjが出力される(ステップD2)。また、警報出力手段27では、航空管制指示対象航空機選択手段21から選択ソースsbが入力される(ステップD3)。選択ソースsbがレーダ情報表示装置12を示す場合、同レーダ情報表示装置12に警報表示ecが表示される(ステップD4,D5)。また、選択ソースsbが飛行計画情報表示装置11を示す場合、同飛行計画情報表示装置11に警報表示dbが表示される(ステップD4,D6)。また、警報出力手段27では、報知信号sjが出力されたとき、航空機識別名抽出手段25で抽出された管制対象抽出情報ve(無線呼出符号)と一致する航空機の情報が、飛行計画情報表示装置11の運航票表示da、レーダ情報表示装置12の管制機リスト表示ea又はレーダシンボル表示ebに表示されている場合、当該情報の表示を強調表示する。
【0032】
以上のように、この実施形態では、管制官Mの管制指示用音声の解析結果が、選択されている管制対象と異なることを示す場合、同管制官Mに対して誤発声である旨がアラーム音及び警報表示により報知されるので、同管制官Mに注意喚起される。また、誤発声に対応する管制対象情報が強調表示されるので、管制官Mは、誤りに気付き、誤った航空管制指示の取り消し及び変更を行うことが可能となり、航空管制の安全性が向上する。
【0033】
以上、この発明の実施形態を図面により詳述してきたが、具体的な構成は同実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更などがあっても、この発明に含まれる。
たとえば、上記実施例では、航空管制情報処理システム10に、飛行計画情報表示装置11とレーダ情報表示装置12とが設けられているが、いずれか一方のみの構成でも良い。
また、レーダ情報表示装置12に、管制機リスト表示eaとレーダシンボル表示ebとが設けられているが、いずれか一方のみの構成でも良い。
【産業上の利用可能性】
【0034】
この発明は、航空管制システムに限らず、交通管制指示の対象となる管制対象、たとえば、船舶、鉄道車両、自動車などに対する交通管制システム全般に適用できる。
【0035】
(付記1)
コンピュータを、この発明の交通管制システムを構成する誤発声検出報知手段として機能させる誤発声検出報知プログラム。
【符号の説明】
【0036】
10 航空管制情報処理システム(管制対象表示手段、警報表示手段)
11 飛行計画情報表示装置(管制対象表示手段、警報表示手段)
12 レーダ情報表示装置(管制対象表示手段、警報表示手段)
21 航空管制指示対象航空機選択手段(誤発声検出報知手段の一部、管制対象選択手段)
22 マイク(誤発声検出報知手段の一部、音声信号変換手段)
23 送信機(誤発声検出報知手段の一部、送信手段)
24 音声認識装置(誤発声検出報知手段の一部、音声信号解析手段)
25 航空機識別名抽出手段(誤発声検出報知手段の一部、管制対象情報抽出手段)
26 航空機識別名比較手段(誤発声検出報知手段の一部、管制対象情報比較手段)
27 警報出力手段(誤発声検出報知手段の一部、報知手段の一部)
28 スピーカ(誤発声検出報知手段の一部、報知手段の一部)
da 運航票表示(管制対象情報)
ea 管制機リスト表示(管制対象情報)
eb レーダシンボル表示(管制対象情報)
db,ec 警報表示(報知手段の一部)
M 管制官(管制担当者)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交通管制指示の対象となる管制対象に対応する管制対象情報を一覧表示する管制対象表示手段を有する交通管制システムであって、
前記管制対象表示手段に表示されている前記管制対象情報から、管制担当者が現時点で管制指示の対象とする管制対象を選択し、管制指示用音声を発声して無線通信により管制指示を行うとき、前記管制担当者の前記管制指示用音声を解析し、この解析結果が、選択されている前記管制対象と異なる場合、誤発声である旨を報知する誤発声検出報知手段が設けられていることを特徴とする交通管制システム。
【請求項2】
前記誤発声検出報知手段は、
前記管制対象情報から前記管制担当者が選択した前記管制対象に対応する管制対象選択情報を出力するための管制対象選択手段と、
前記管制担当者が発声した前記管制指示用音声を音声信号に変換する音声信号変換手段と、
該音声信号変換手段で変換された前記音声信号を無線通信により前記管制対象へ送信する送信手段と、
前記音声信号変換手段で変換された前記音声信号を解析する音声信号解析手段と、
該音声信号解析手段による解析結果に基づいて、前記管制指示用音声に対応する管制対象情報を抽出して管制対象抽出情報として出力する管制対象情報抽出手段と、
前記管制対象選択手段から出力された前記管制対象選択情報と前記管制対象情報抽出手段で抽出された前記管制対象抽出情報とを比較し、異なる場合に警報要求を出力する管制対象情報比較手段と、
該管制対象情報比較手段から前記警報要求が出力されたとき、前記誤発声である旨を報知する報知手段とから構成されていることを特徴とする請求項1記載の交通管制システム。
【請求項3】
前記管制対象表示手段は、
前記報知手段から誤発声である旨が報知されたとき、警報を表示する警報表示手段が設けられていることを特徴とする請求項2記載の交通管制システム。
【請求項4】
前記報知手段は、
前記管制対象情報比較手段から前記警報要求が出力されたとき、前記管制対象情報抽出手段で抽出された前記管制対象抽出情報に対応する管制対象情報が前記管制対象表示手段に表示されている場合、当該管制対象情報を強調表示する構成とされていることを特徴とする請求項2又は3記載の交通管制システム。
【請求項5】
前記管制対象情報は、
当該管制対象を表す識別情報であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の交通管制システム。
【請求項6】
交通管制指示の対象となる管制対象に対応する管制対象情報を一覧表示する管制対象表示手段を有する交通管制システムに用いられる誤発声検出報知方法であって、
誤発声検出報知手段が、前記管制対象表示手段に表示されている前記管制対象情報から、管制担当者が現時点で管制指示の対象とする管制対象を選択し、管制指示用音声を発声して無線通信により管制指示を行うとき、前記管制担当者の前記管制指示用音声を解析し、この解析結果が、選択されている前記管制対象と異なる場合、誤発声である旨を報知する誤発声検出報知処理を行うことを特徴とする誤発声検出報知方法。
【請求項7】
前記誤発声検出報知処理では、
管制対象選択手段が、前記管制対象情報から前記管制担当者が選択した前記管制対象に対応する管制対象選択情報を出力する管制対象選択処理と、
音声信号変換手段が、前記管制担当者が発声した前記管制指示用音声を音声信号に変換する音声信号変換処理と、
送信手段が、前記音声信号変換手段で変換された前記音声信号を無線通信により前記管制対象へ送信する送信処理と、
音声信号解析手段が、前記音声信号変換手段で変換された前記音声信号を解析する音声信号解析処理と、
管制対象情報抽出手段が、前記音声信号解析手段による解析結果に基づいて、前記管制指示用音声に対応する管制対象情報を抽出して管制対象抽出情報として出力する管制対象情報抽出処理と、
管制対象情報比較手段が、前記管制対象選択手段から出力された前記管制対象選択情報と前記管制対象情報抽出手段で抽出された前記管制対象抽出情報とを比較し、異なる場合に警報要求を出力する管制対象情報比較処理と、
報知手段が、前記管制対象情報比較手段から前記警報要求が出力されたとき、前記誤発声である旨を報知する報知処理とを行うことを特徴とする請求項6記載の誤発声検出報知方法。
【請求項8】
管制対象表示手段に警報表示手段が設けられ、該警報表示手段が、前記報知手段から誤発声である旨が報知されたとき、警報を表示する警報表示処理を行うことを特徴とする請求項7記載の誤発声検出報知方法。
【請求項9】
前記管制対象情報比較手段から前記警報要求が出力されたとき、前記管制対象情報抽出手段で抽出された前記管制対象抽出情報に対応する管制対象情報が前記管制対象表示手段に表示されている場合、前記報知手段が、当該管制対象情報を強調表示することを特徴とする請求項7又は8記載の誤発声検出報知方法。
【請求項10】
前記管制対象情報は、当該管制対象を表す識別情報であることを特徴とする請求項6、7、8又は9記載の誤発声検出報知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−150435(P2011−150435A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9546(P2010−9546)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】