交通規制情報定義装置および交通規制情報定義方法
【課題】複雑な複合交差点においても効率よく規制情報の付与を行い、かつ、記憶容量を低減する技術を提供する。
【解決手段】 本発明は、選択された交差点に対応するノードおよびダミーノードの数とこれらに接続する交差点内リンクおよびダミーリンクの数とに基づいて、前記交差点が基本規制情報対象交差点か否かを判定し、前記交差点に対応するノードと道路リンクとの接続関係を加味して、前記交差点が個別規制情報対象交差点か否かを判定し、判定結果に応じた基本規制情報および個別規制情報を、前記交差点に付与することを特徴とする。
【解決手段】 本発明は、選択された交差点に対応するノードおよびダミーノードの数とこれらに接続する交差点内リンクおよびダミーリンクの数とに基づいて、前記交差点が基本規制情報対象交差点か否かを判定し、前記交差点に対応するノードと道路リンクとの接続関係を加味して、前記交差点が個別規制情報対象交差点か否かを判定し、判定結果に応じた基本規制情報および個別規制情報を、前記交差点に付与することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差点の交通規制に基づいた規制情報を、対応する道路ネットワークデータ上に表現する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子地図データは、例えば、ユーザーに指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索や、経路を案内する経路案内に利用されている。この電子地図データには、経路探索用に道路をリンク、ノードで表現した道路ネットワークデータと、地図表示用のデータとが用意されている。リンクおよびノードには、それぞれ道路の通過点に対応する緯度、経度などの位置情報が付与されている。
【0003】
道路ネットワークデータは、より高精度・高精細に作られることが求められており、地図上の道路に対応する道路リンクも幅を表現する必要がある。そのため、地図上では1本の道路として表現されている道路リンクも上り車線と下り車線とが分離した状態のそれぞれ独立したリンクとして記憶されている。これに従い、地図上の各交差点に対応するノードも、分離されたそれぞれの道路リンクと接続できるように複数のノードで表現されている。この複数のノードを用いて現実の交通規制情報を表現するために、同一交差点に対応するノード間に交差点内リンクと呼ばれる仮想リンクを設けている。また、道路ネットワークデータにおける交通規制の表現において、交差点内リンクが設定されていない十字路のような単純交差点に対応する箇所は、交通規制を「道路リンクB→道路リンクCは通行不可能」等のように2つのリンクを用いた2リンク規制で表現している。しかし、交差点内リンクを有する複雑な交差点に対応する箇所は、交差点内の交通規制を「道路リンクA→交差点内リンクB→道路リンクCは通行不可能」等のように3つのリンクを用いて表現する3リンク規制で与えられることとなる。このような場合、仮想リンクであるダミーリンクおよび仮想ノードであるダミーノードを設け、2リンク規制で表現する技術が提供されている。このように2リンク規制で交通規制を表現することによって、複雑な交差点においても、十字路のような単純交差点と同じデータ構造で交通規制を設定することができる。
【0004】
2リンク規制を用いて交通規制を表現する場合、地図データ生成の際に3リンク規制の内容に応じた2リンク規制を付与する必要が生じる。しかし、交通規制情報定義を手動で行うと、実際の交通規制と一致しない規制情報や、同様の形状・規制を有する交差点でもオペレータによって異なる規制情報を付与してしまうという問題が生じるおそれがある。そこで、交差点形状および3リンク規制の内容を規制パターンとし、全ての規制情報パターンを記憶させる技術が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−256402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
交差点の形状および規制内容ごとに全ての規制情報パターンを記憶させると、単純な十字交差点等であれば、一つの形状に対する規制情報の種類は数パターンとなるので、他の交差点の交通規制情報定義に利用できる場合もある。しかしながら、例えば、複合交差点のような複雑な交差点においては、一つの形状に対して規制情報の種類が膨大になり、また、時間進入規制等も考慮すると、全ての規制情報パターンを記憶しても、他の交差点の交通規制情報定義に利用できることも少なく、記憶容量が増大するという問題も生じる。特に、台湾等では交差点が複雑な複合交差点である場合が多く、このような場合は特に上記問題が顕著となる。
【0007】
そこで、本発明は、複雑な複合交差点においても効率よく交通規制情報の設定を行い、かつ、道路ネットワークデータ記憶容量を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の交通規制情報定義装置は、地図上の道路を表す道路リンクおよび該道路リンクの端部に位置するノードを有する道路ネットワークデータであって、交差点に対応するノードを複数に分離して得られる交差点ノードと、交差点ノード間を仮想リンクで結ぶことによって得られる交差点内リンクと、通行規制を2リンク規制で表現するために交差点ノード間に仮想的に接続されるダミーリンクおよびダミーノードと用いて、現実の交差点の交通規制に基づいた規制情報を表現する交通規制情報定義装置において、任意の交差点に対応する交差点ノードおよびダミーノードの数とこれらに接続する交差点内リンクおよびダミーリンクの数とに基づいて、前記交差点が、構造上必要な一般的な規制情報である基本規制情報を付与する対象である基本規制情報対象交差点であるか否かを判定する基本規制情報対象交差点判定部と、前記交差点が前記基本規制情報対象交差点であると判定された場合、前記交差点の基本形に応じて、基本規制情報を決定する基本規制情報決定部と、前記交差点を構成する交差点ノードと道路リンクとの接続関係から、前記基本規制情報対象交差点が、個別の交通規制に従った個別規制情報を付与する対象である個別規制情報対象交差点であるか否かを判定する個別規制情報対象交差点判定部と、前記基本規制対象が前記個別規制情報対象交差点であると判定された場合、個別規制情報の入力を受け付けることで、前記基本規制情報を補充する個別規制情報入力受付部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の交通規制情報定義装置によると、任意の交差点に対応するネットワークデータの構造に基づいて基本形および基本規制情報を選択し、個別規制情報はオペレータにより規制情報の入力を受け付けることで、交差点に規制を付与することが可能となる。本発明の装置を用いて交通規制定義処理を行うことによって、複雑な複合交差点においても効率よく正確な規制情報の付与を行い、かつ、記憶容量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の構成を示す概略図。
【図2】道路ネットワークデータ記憶部2に記憶されている交差点の一例を示す図。
【図3】道路ネットワークデータ記憶部2に記憶されている交差点の一例を示す図。
【図4】交通規制を有する交差点の一例を示す図。
【図5】基本規制情報対象交差点の一例を示す図。
【図6】個別規制情報対象交差点の他の一例を示す図。
【図7】個別規制情報対象交差点の一例を示す図。
【図8】非個別規制情報対象交差点の一例を示す図。
【図9】非個別規制情報対象交差点の他の一例を示す図。
【図10】基本規制情報の一例を示す図。
【図11】個別規制情報の一例を示す図。
【図12】選択された交差点と通行規制とを示す図。
【図13】本実施例の処理を示すフローチャート。
【図14】基本規制情報を示す図。
【図15】通行規制とそれに対応する個別規制情報とを示す図。
【図16】定義される基本規制情報および個別規制情報を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施例1)
図1に示すように、交通規制情報定義装置1は、道路ネットワークデータ記憶部2、交差点選択部3、基本規制情報対象交差点判定部4、基本規制情報決定部5、個別規制情報対象交差点判定部6、および個別規制情報入力受付部7を備えている。
【0012】
道路ネットワークデータ記憶部2には、道路ネットワークデータが記憶されている。道路ネットワークデータにおいて、各道路は、その通過点の位置座標で定義される道路リンクで表される。また各道路リンクの交点は、その位置座標で定義されるノードで表される。位置座標は、緯度、経度を用いることも、地図の左下を原点Oとする直交座標X,Yを用いることも可能である。
【0013】
道路ネットワークデータはテーブル形式など、種々の構造を採ることができる。道路リンクデータは、地図上の各道路を、交差・分岐・合流する点など複数の地点で分割したときの地点間を結んだリンクに関するデータである。リンクデータは、リンクを特定する固有のID番号、リンクの長さを示すリンク長、リンクの始端及び終端に存在するノードの緯度・経度座標、リンクにおける複数地点の緯度・経度座標、道路名称、道路種別、道路幅員、車線数、右折・左折専用車線の有無とその専用車線の数、及び制限速度等の各種データを属性情報として有する。一方、ノードデータは、地図上の各道路が交差、合流、分岐する地点や、道路の属性が変更される地点等に付されるノードに関するデータである。ノードデータは、ノードを特定する固有のID番号、ノード座標、ノード名称、ノードに接続するリンクのリンクIDが記述される接続リンクID、交差点種類等の各種データを属性情報として有する。
【0014】
地図上の道路が上り車線と下り車線とが分離した上下線分離道路である場合、対応する道路リンクは、上下線がそれぞれ異なる独立した道路リンクで表現されている。また、地図上の交差点に対応する道路ネットワークデータ(以下、単に「交差点」とする。)は、対応するノードをそれぞれ複数に分離して得られる交差点ノードとして表現している。そして、交差点には、交差点ノード間を仮想リンクで結ぶことによって得られる交差点内リンクと、通行規制を2リンク規制で表現するために交差点ノード間に仮想的に接続されるダミーリンクおよびダミーノードとが設定されている。
【0015】
例えば、図2において、道路リンクL1およびL2は、上下線分離道路における上り線および下り線にそれぞれ対応している。また、これら道路リンクL1、L2それぞれの一端に接続される交差点ノードN1、N2と、道路リンクL5、L6それぞれの一端に接続される交差点ノードN3、N4とは同一交差点内に存在している。
【0016】
また、上述のように同一交差点内に複数の交差点ノードN1〜N4が存在する場合、道路リンクの他に、これらの交差点ノードN1〜N4をそれぞれ接続するための交差点内リンクIL1〜IL4およびダミーリンクDL5、DL6が付与されている。この交差点内リンクIL1〜IL4およびダミーリンクDL5、DL6は、例えば、3リンク規制を2リンク規制で表現するために使用される。3リンク規制とは、一方通行等の道路交通規制を道路ネットワークデータに記憶させる際に、例えば、「リンクA→リンクB→リンクCは通行不可能」のように3つのリンクを用いて表現する方法である。また、2リンク規制とは、交通規制を「リンクA→リンクBは通行不可能」のように2つのリンクを用いて記憶する方法である。本発明の道路ネットワークデータは交通規制を2リンク規制で記憶している。3リンク規制及び2リンク規制についての詳細は後述する。なお、本実施例では、交通規制を2リンク規制で表現した道路ネットワークデータを例に説明を行うが、本発明は、2リンク規制で表現された道路ネットワークデータへの適用に限定されない。例えば、3リンク規制や4リンク規制で表現した道路ネットワークデータに適用することもできる。
【0017】
3リンク規制と2リンク規制との関係について、図3および図4を用いて説明する。図3に示すように、道路リンクL11→交差点内リンクIL11→道路リンクL14を通る経路Aの通行を禁止する3リンク規制が存在する。この場合において、図4に示すように、ダミーリンクDL12、DL13およびダミーノードDN11を新たに設けるとともに、下記のような2リンク規制で表現する。
道路リンクL11から交差点内リンクIL11への通行を禁止する;
ダミーリンクDL13と道路リンクL14とは両方向の通行を禁止する;
道路リンクL12からダミーリンクDL12への通行を禁止する;
道路リンクL13からダミーリンクDL13への通行を禁止する;
交差点内リンクIL11とダミーリンクDL12とは両方向の通行を禁止する;
交差点内リンクIL11とダミーリンクDL13とは両方向の通行を禁止する;
【0018】
上記2リンク規制によれば、道路リンクL11→交差点内リンクIL11→道路リンクL14を通る経路Aの3リンク規制または道路リンクL11→ダミーリンクDL12→ダミーリンクDL13→道路リンクL14を通る経路を探索することは実現し得なくなる。また、それと同時に、交差点内リンクIL11、ダミーリンクDL12またはDL13を通行する経路を探索することにより、上記3リンク規制「道路リンクリンクL11→交差点内リンクIL11→道路リンクL14」で禁止された経路以外については、支障なく探索することが可能となる。
【0019】
このように、3リンク規制が与えられた場合、その内容に応じて交差点内リンクおよびダミーリンクを追加し、2リンク規制を付すことによって、3リンク規制と同等の内容を2リンク規制のみで実現することが可能となる。
【0020】
交差点選択部3は、道路ネットワークデータ記憶部2に記憶されている道路ネットワークデータから、任意の交差点を選択する。
【0021】
基本規制情報対象交差点判定部4は、交差点選択部3によって選択された交差点を構成している交差点ノード、ダミーノード、交差点内リンクおよびダミーリンクの数に基づいて、選択された交差点が基本規制情報を付与する基本規制情報対象交差点であるか否かを判定する。基本規制情報とは、ダミーリンクおよびダミーノードを設定したことによって経路探索を行う際に生じる種々の問題を防止するために、交差点の構造上必要となる一般的な規制情報である。種々の問題としては、例えば、図4に示すように交差点ノードN11から交差点ノードN12へ到達する経路が複数存在するという問題や、ダミーリンクDL12、ダミーリンクDL13、交差点内リンクIL11といった、経路がループするという問題がある。基本規制情報対象交差点判定部4は、交差点の構成およびそれに対応する交差点の基本形を予め道路ネットワークデータ記憶部2に記憶しておく。そして、選択された交差点が記憶されたデータに該当する構成であれば、基本規制情報対象交差点判定部4は、選択された交差点を基本規制情報対象交差点であると判定する。選択された交差点が記憶されたデータに該当する構成でない場合は、基本規制情報対象交差点判定部4は、選択された交差点を基本規制情報対象交差点ではない非基本規制情報対象交差点であると判定する。
【0022】
道路ネットワークデータ記憶部2に記憶される道路ネットワークデータの構成としては、以下のようなものが挙げられる。例えば、交差点の構成が「交差点ノードの数がn+1個、ダミーノードの数がn個、交差点内リンクの数がn個およびダミーリンクの数が2n個」であれば、基本規制情報対象交差点判定部4は、選択された交差点を基本形の交差点であると判定する。そして、選択された交差点のネットワーク構成におけるnの数を確認し、例えば、n=1であれば第一の基本形の交差点、n=2であれば第二の基本形の交差点であると判定する。ここで、第一の基本形の交差点とは、図5に示すように、交差点ノードN41、N42、ダミーノードDN41、ダミーリンクDL41、DL42、交差点内リンクIL41で表現される交差点である。また、第二の基本形の交差点とは、図6に示すように、交差点ノードN51〜N53、ダミーノードDN51およびN52、ダミーリンクDL51〜DL54、交差点内リンクIL51およびIL52で表現される交差点である。
【0023】
また、交差点の構成が「交差点ノードの数が2n+2個、ダミーノードの数がゼロ個、交差点内リンクの数が3n+1個およびダミーリンクの数が2n個」であれば、基本規制情報対象交差点判定部4は、選択された交差点を基本形の交差点であると判定する。そして、選択された交差点のネットワーク構成における「n」の数を確認し、例えば、n=1であれば第三の基本形の交差点、n=2であれば第四の基本形の交差点であると判定する。ここで、第三の基本形の交差点とは、図2に示すように、交差点ノードN1〜N4、ダミーリンクDL5およびDL6、交差点内リンクIL1〜IL4で表現される交差点である。また、第四の基本形の交差点とは、図7に示すように、交差点ノードN71〜N76、ダミーリンクDL71〜DL74、交差点内リンクIL71およびIL76で表現される交差点である。
【0024】
このように、基本規制情報対象交差点判定部4は、選択された交差点が基本規制情報対象交差点であるか否かを判定するとともに、交差点の構成と交差点基本形とを対応付ける。そして、対応付けた結果を道路ネットワークデータ記憶部2に記憶する。
【0025】
基本規制情報決定部5は、選択された交差点が基本規制情報対象交差点であると判定された場合、その交差点の基本形に応じて、基本規制情報を決定する。基本規制情報決定部5は、各基本形に対応する基本規制情報を記憶しており、選択された交差点の基本形に応じて基本規制情報を決定する。交差点の基本形に対応する基本規制情報の例としては、図6に示す第二の基本形の場合は、図10に示す基本規制情報T1が選択される。
【0026】
個別規制情報対象交差点判定部6は、基本規制情報対象交差点を構成する交差点ノードと交差点ノードに接続する道路リンクとの接続関係から、基本規制情報対象交差点を個別規制情報の付与対象となる交差点を表す個別規制情報対象交差点であるか否かを判定する。例えば、判定対象交差点が第一の基本形および第二の基本形の交差点である場合であって、交差点を形成する交差点ノードのうち端部に位置する交差点ノードにおいて交差点内リンクに対して水平方向の道路リンクがそれぞれ1本以下、かつ、端部に位置する交差点ノード以外の交差点ノードに接続している道路リンクが2本以下であるという条件を満たせば、個別規制情報対象交差点判定部6は、該当する交差点を個別規制情報対象交差点であると判定する。例えば、図6に示す交差点の場合、交差点ノードN51には、交差点内リンクIL51に対して水平方向の道路リンクL51が接続しており、交差点ノードN53には、交差点内リンクIL52に対して水平方向の道路リンクL54が接続している。また、交差点ノードN52には、2本の道路リンクL52、L53が接続している。したがって、個別規制情報対象交差点判定部6は、図6に示す交差点を個別規制情報対象交差点であると判定する。
【0027】
これに対して、判定対象の交差点が、上記条件を満たさない場合、個別規制情報対象交差点判定部6は、該当交差点を個別規制情報の付与対象外の交差点を表す非個別規制情報対象交差点であると判定する。例えば、図8に示す交差点において、交差点ノードN63には、交差点内リンクに対して水平方向に2本の道路リンクL64、L65が接続されている。また、交差点ノードN62には3本の道路リンクL61〜L63が接続されている。つまり、図8に示す交差点の例は、個別規制情報対象交差点に該当しない。したがって、個別規制情報対象交差点判定部6は、図8に示す交差点を非個別規制情報対象交差点であると判定する。
【0028】
また、例えば、判定対象交差点が第三の基本形および第四の基本形の交差点である場合であって、判定対象交差点を形成する交差点ノードのうち端部に位置する交差点ノードに接続している道路リンク数が2本以下であり、かつ、端部に位置する交差点ノード以外の交差点ノードに接続している道路リンク数が1本以下であるという条件を満たせば、個別規制情報対象交差点判定部6は、該当する交差点を個別規制情報対象交差点であると判定する。例えば、図7に示す交差点の場合、N71、N73、N74およびN76に接続している道路リンク数がそれぞれ2本であり、かつ、交差点ノードN72およびN75に接続している道路リンク数がそれぞれ1本である。したがって、個別規制情報対象交差点判定部6は、図7に示す交差点を個別規制情報対象交差点であると判定する。
【0029】
これに対して、例えば、図9に示す交差点において、交差点ノードN81には道路リンクL81〜L83の3本が接続している。つまり、図9に示す交差点の例は、個別規制情報対象交差点に該当しない。したがって、個別規制情報対象交差点判定部6は、図9に示す交差点を非個別規制情報対象交差点であると判定する。
【0030】
個別規制情報入力受付部7は、選択された交差点が個別規制情報対象交差点であると判定された場合、選択された交差点の個別の交通規制に従った個別規制情報の入力を受け付け、基本規制情報決定部5によって決定された基本規制情報の補充を行う。個別規制情報とは、例えば、進入禁止規制が挙げられるが、該当する進入リンクと退出リンクとを指定して規制を付与するだけでなく、付与した規制が適用される月日、曜日および時間帯等の時間情報も指定できる。例えば、図2に示す形状の交差点における個別規制情報の一例としては、図11に示すような規制が挙げられる。図11に示すように、例えば、道路リンクL8から道路リンクL3への通行が規制されている場合、道路ネットワークデータに、L8からIL1への通行を制限する規制を設けることで、上記通行規制を実現できる。
【0031】
個別規制情報入力受付部7が入力を受け付ける個別規制情報の形式としては、例えば、2リンク規制の進入リンクおよび退出リンクの入力を受け付けることができる。また、個別規制情報入力受付部7は、各基本形における3リンク規制のパターンと対応する2リンク規制とを予め道路ネットワークデータ記憶部2に記憶しておき、規制したい経路の進入リンクおよび退出リンクの入力を3リンク規制の形式で受け付けることで、対応する2リンク規制を判定することもできる。
【0032】
次に、以上の構成を有する交通規制定義装置1の動作を、図12に示す複合交差点C1を例に説明する。なお、本実施例における交通規制定義装置1は、図2および図5〜図8に示す第一〜第四の基本形と、これらに対応する基本規制情報とを予め記憶しており、交差点C1は、通行規制A1を有している。図13は、本実施例における図1に示す交通規制定義装置によって実現される交通規制定義処理を示すフローチャートである。
【0033】
まず、交差点選択部3は、道路ネットワークデータから、任意の交差点C1に対応するデータを選択する(ステップS20)。次に、基本規制情報対象交差点判定部4は、選択された交差点C1に対応する道路ネットワークデータの構成を確認し、交差点C1が基本規制情報対象交差点であるか否かを判定する(ステップS21)。交差点C1に対応する道路ネットワークデータは、交差点ノードの数が6個、ダミーノードの数がゼロ個、交差点内リンクの数が7個およびダミーリンクの数が4個で構成されている。したがって、交差点C1は第四の基本形であり、基本規制情報対象交差点判定部4は、交差点C1を基本規制情報対象交差点であると判定する。
【0034】
基本規制情報決定部5は、基本規制情報対象交差点であると判定された交差点C1の基本形を決定する(ステップS22)。上述のように、交差点C1は第四の基本形であるため、基本規制情報決定部5は、道路ネットワークデータ記憶部2に記憶されている基本規制情報から図14に示す第四の基本形に対応する基本規制情報T10を選択する。
【0035】
個別規制情報対象交差点判定部6は、基本規制情報対象交差点と判定された交差点C1に対応する道路ネットワークデータの交差点ノードと道路リンクとの接続関係を確認し、交差点C1が個別規制情報対象交差点であるか否かを判定する(ステップS23)。交差点C1に対応する道路ネットワークデータの交差点ノードN21、N23、N24およびN26は、いずれも接続している道路リンク数が2本ずつであり、交差点ノードN22およびN25は、いずれも接続している道路リンク数が1本ずつである。したがって、個別規制情報対象交差点判定部6は、交差点C1を個別規制情報対象交差点であると判定する。
【0036】
個別規制情報入力受付部7は、個別規制情報対象交差点であると判定された交差点C1が有している通行規制の入力を受け付ける(ステップS24)。図12に示すように、交差点C1は通行規制A1を有しており、図15に示すように、オペレータが通行規制A1の進入リンクAS1および退出リンクAE1を指定すると、個別規制情報入力受付部7は、これに対応する個別規制情報T20を選択し、図16に示すように基本規制情報T10の補充を行う。
【0037】
本実施例によれば、選択された交差点の基本形パターンを認識することで対応する基本規制情報を決定し、またオペレータにより個別規制情報の入力を受け付けることで、複雑な複合交差点においても効率よく規制情報の付与を行い、かつ、記憶容量を低減することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 階層設定装置
2 道路ネットワークデータ記憶部
3 交差点選択部
4 基本規制情報対象交差点判定部
5 基本規制情報決定部
6 個別規制情報対象交差点判定部
7 個別規制情報入力受付部
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差点の交通規制に基づいた規制情報を、対応する道路ネットワークデータ上に表現する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子地図データは、例えば、ユーザーに指定された出発地から目的地までの経路を探索する経路探索や、経路を案内する経路案内に利用されている。この電子地図データには、経路探索用に道路をリンク、ノードで表現した道路ネットワークデータと、地図表示用のデータとが用意されている。リンクおよびノードには、それぞれ道路の通過点に対応する緯度、経度などの位置情報が付与されている。
【0003】
道路ネットワークデータは、より高精度・高精細に作られることが求められており、地図上の道路に対応する道路リンクも幅を表現する必要がある。そのため、地図上では1本の道路として表現されている道路リンクも上り車線と下り車線とが分離した状態のそれぞれ独立したリンクとして記憶されている。これに従い、地図上の各交差点に対応するノードも、分離されたそれぞれの道路リンクと接続できるように複数のノードで表現されている。この複数のノードを用いて現実の交通規制情報を表現するために、同一交差点に対応するノード間に交差点内リンクと呼ばれる仮想リンクを設けている。また、道路ネットワークデータにおける交通規制の表現において、交差点内リンクが設定されていない十字路のような単純交差点に対応する箇所は、交通規制を「道路リンクB→道路リンクCは通行不可能」等のように2つのリンクを用いた2リンク規制で表現している。しかし、交差点内リンクを有する複雑な交差点に対応する箇所は、交差点内の交通規制を「道路リンクA→交差点内リンクB→道路リンクCは通行不可能」等のように3つのリンクを用いて表現する3リンク規制で与えられることとなる。このような場合、仮想リンクであるダミーリンクおよび仮想ノードであるダミーノードを設け、2リンク規制で表現する技術が提供されている。このように2リンク規制で交通規制を表現することによって、複雑な交差点においても、十字路のような単純交差点と同じデータ構造で交通規制を設定することができる。
【0004】
2リンク規制を用いて交通規制を表現する場合、地図データ生成の際に3リンク規制の内容に応じた2リンク規制を付与する必要が生じる。しかし、交通規制情報定義を手動で行うと、実際の交通規制と一致しない規制情報や、同様の形状・規制を有する交差点でもオペレータによって異なる規制情報を付与してしまうという問題が生じるおそれがある。そこで、交差点形状および3リンク規制の内容を規制パターンとし、全ての規制情報パターンを記憶させる技術が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−256402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
交差点の形状および規制内容ごとに全ての規制情報パターンを記憶させると、単純な十字交差点等であれば、一つの形状に対する規制情報の種類は数パターンとなるので、他の交差点の交通規制情報定義に利用できる場合もある。しかしながら、例えば、複合交差点のような複雑な交差点においては、一つの形状に対して規制情報の種類が膨大になり、また、時間進入規制等も考慮すると、全ての規制情報パターンを記憶しても、他の交差点の交通規制情報定義に利用できることも少なく、記憶容量が増大するという問題も生じる。特に、台湾等では交差点が複雑な複合交差点である場合が多く、このような場合は特に上記問題が顕著となる。
【0007】
そこで、本発明は、複雑な複合交差点においても効率よく交通規制情報の設定を行い、かつ、道路ネットワークデータ記憶容量を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の交通規制情報定義装置は、地図上の道路を表す道路リンクおよび該道路リンクの端部に位置するノードを有する道路ネットワークデータであって、交差点に対応するノードを複数に分離して得られる交差点ノードと、交差点ノード間を仮想リンクで結ぶことによって得られる交差点内リンクと、通行規制を2リンク規制で表現するために交差点ノード間に仮想的に接続されるダミーリンクおよびダミーノードと用いて、現実の交差点の交通規制に基づいた規制情報を表現する交通規制情報定義装置において、任意の交差点に対応する交差点ノードおよびダミーノードの数とこれらに接続する交差点内リンクおよびダミーリンクの数とに基づいて、前記交差点が、構造上必要な一般的な規制情報である基本規制情報を付与する対象である基本規制情報対象交差点であるか否かを判定する基本規制情報対象交差点判定部と、前記交差点が前記基本規制情報対象交差点であると判定された場合、前記交差点の基本形に応じて、基本規制情報を決定する基本規制情報決定部と、前記交差点を構成する交差点ノードと道路リンクとの接続関係から、前記基本規制情報対象交差点が、個別の交通規制に従った個別規制情報を付与する対象である個別規制情報対象交差点であるか否かを判定する個別規制情報対象交差点判定部と、前記基本規制対象が前記個別規制情報対象交差点であると判定された場合、個別規制情報の入力を受け付けることで、前記基本規制情報を補充する個別規制情報入力受付部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の交通規制情報定義装置によると、任意の交差点に対応するネットワークデータの構造に基づいて基本形および基本規制情報を選択し、個別規制情報はオペレータにより規制情報の入力を受け付けることで、交差点に規制を付与することが可能となる。本発明の装置を用いて交通規制定義処理を行うことによって、複雑な複合交差点においても効率よく正確な規制情報の付与を行い、かつ、記憶容量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の構成を示す概略図。
【図2】道路ネットワークデータ記憶部2に記憶されている交差点の一例を示す図。
【図3】道路ネットワークデータ記憶部2に記憶されている交差点の一例を示す図。
【図4】交通規制を有する交差点の一例を示す図。
【図5】基本規制情報対象交差点の一例を示す図。
【図6】個別規制情報対象交差点の他の一例を示す図。
【図7】個別規制情報対象交差点の一例を示す図。
【図8】非個別規制情報対象交差点の一例を示す図。
【図9】非個別規制情報対象交差点の他の一例を示す図。
【図10】基本規制情報の一例を示す図。
【図11】個別規制情報の一例を示す図。
【図12】選択された交差点と通行規制とを示す図。
【図13】本実施例の処理を示すフローチャート。
【図14】基本規制情報を示す図。
【図15】通行規制とそれに対応する個別規制情報とを示す図。
【図16】定義される基本規制情報および個別規制情報を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施例1)
図1に示すように、交通規制情報定義装置1は、道路ネットワークデータ記憶部2、交差点選択部3、基本規制情報対象交差点判定部4、基本規制情報決定部5、個別規制情報対象交差点判定部6、および個別規制情報入力受付部7を備えている。
【0012】
道路ネットワークデータ記憶部2には、道路ネットワークデータが記憶されている。道路ネットワークデータにおいて、各道路は、その通過点の位置座標で定義される道路リンクで表される。また各道路リンクの交点は、その位置座標で定義されるノードで表される。位置座標は、緯度、経度を用いることも、地図の左下を原点Oとする直交座標X,Yを用いることも可能である。
【0013】
道路ネットワークデータはテーブル形式など、種々の構造を採ることができる。道路リンクデータは、地図上の各道路を、交差・分岐・合流する点など複数の地点で分割したときの地点間を結んだリンクに関するデータである。リンクデータは、リンクを特定する固有のID番号、リンクの長さを示すリンク長、リンクの始端及び終端に存在するノードの緯度・経度座標、リンクにおける複数地点の緯度・経度座標、道路名称、道路種別、道路幅員、車線数、右折・左折専用車線の有無とその専用車線の数、及び制限速度等の各種データを属性情報として有する。一方、ノードデータは、地図上の各道路が交差、合流、分岐する地点や、道路の属性が変更される地点等に付されるノードに関するデータである。ノードデータは、ノードを特定する固有のID番号、ノード座標、ノード名称、ノードに接続するリンクのリンクIDが記述される接続リンクID、交差点種類等の各種データを属性情報として有する。
【0014】
地図上の道路が上り車線と下り車線とが分離した上下線分離道路である場合、対応する道路リンクは、上下線がそれぞれ異なる独立した道路リンクで表現されている。また、地図上の交差点に対応する道路ネットワークデータ(以下、単に「交差点」とする。)は、対応するノードをそれぞれ複数に分離して得られる交差点ノードとして表現している。そして、交差点には、交差点ノード間を仮想リンクで結ぶことによって得られる交差点内リンクと、通行規制を2リンク規制で表現するために交差点ノード間に仮想的に接続されるダミーリンクおよびダミーノードとが設定されている。
【0015】
例えば、図2において、道路リンクL1およびL2は、上下線分離道路における上り線および下り線にそれぞれ対応している。また、これら道路リンクL1、L2それぞれの一端に接続される交差点ノードN1、N2と、道路リンクL5、L6それぞれの一端に接続される交差点ノードN3、N4とは同一交差点内に存在している。
【0016】
また、上述のように同一交差点内に複数の交差点ノードN1〜N4が存在する場合、道路リンクの他に、これらの交差点ノードN1〜N4をそれぞれ接続するための交差点内リンクIL1〜IL4およびダミーリンクDL5、DL6が付与されている。この交差点内リンクIL1〜IL4およびダミーリンクDL5、DL6は、例えば、3リンク規制を2リンク規制で表現するために使用される。3リンク規制とは、一方通行等の道路交通規制を道路ネットワークデータに記憶させる際に、例えば、「リンクA→リンクB→リンクCは通行不可能」のように3つのリンクを用いて表現する方法である。また、2リンク規制とは、交通規制を「リンクA→リンクBは通行不可能」のように2つのリンクを用いて記憶する方法である。本発明の道路ネットワークデータは交通規制を2リンク規制で記憶している。3リンク規制及び2リンク規制についての詳細は後述する。なお、本実施例では、交通規制を2リンク規制で表現した道路ネットワークデータを例に説明を行うが、本発明は、2リンク規制で表現された道路ネットワークデータへの適用に限定されない。例えば、3リンク規制や4リンク規制で表現した道路ネットワークデータに適用することもできる。
【0017】
3リンク規制と2リンク規制との関係について、図3および図4を用いて説明する。図3に示すように、道路リンクL11→交差点内リンクIL11→道路リンクL14を通る経路Aの通行を禁止する3リンク規制が存在する。この場合において、図4に示すように、ダミーリンクDL12、DL13およびダミーノードDN11を新たに設けるとともに、下記のような2リンク規制で表現する。
道路リンクL11から交差点内リンクIL11への通行を禁止する;
ダミーリンクDL13と道路リンクL14とは両方向の通行を禁止する;
道路リンクL12からダミーリンクDL12への通行を禁止する;
道路リンクL13からダミーリンクDL13への通行を禁止する;
交差点内リンクIL11とダミーリンクDL12とは両方向の通行を禁止する;
交差点内リンクIL11とダミーリンクDL13とは両方向の通行を禁止する;
【0018】
上記2リンク規制によれば、道路リンクL11→交差点内リンクIL11→道路リンクL14を通る経路Aの3リンク規制または道路リンクL11→ダミーリンクDL12→ダミーリンクDL13→道路リンクL14を通る経路を探索することは実現し得なくなる。また、それと同時に、交差点内リンクIL11、ダミーリンクDL12またはDL13を通行する経路を探索することにより、上記3リンク規制「道路リンクリンクL11→交差点内リンクIL11→道路リンクL14」で禁止された経路以外については、支障なく探索することが可能となる。
【0019】
このように、3リンク規制が与えられた場合、その内容に応じて交差点内リンクおよびダミーリンクを追加し、2リンク規制を付すことによって、3リンク規制と同等の内容を2リンク規制のみで実現することが可能となる。
【0020】
交差点選択部3は、道路ネットワークデータ記憶部2に記憶されている道路ネットワークデータから、任意の交差点を選択する。
【0021】
基本規制情報対象交差点判定部4は、交差点選択部3によって選択された交差点を構成している交差点ノード、ダミーノード、交差点内リンクおよびダミーリンクの数に基づいて、選択された交差点が基本規制情報を付与する基本規制情報対象交差点であるか否かを判定する。基本規制情報とは、ダミーリンクおよびダミーノードを設定したことによって経路探索を行う際に生じる種々の問題を防止するために、交差点の構造上必要となる一般的な規制情報である。種々の問題としては、例えば、図4に示すように交差点ノードN11から交差点ノードN12へ到達する経路が複数存在するという問題や、ダミーリンクDL12、ダミーリンクDL13、交差点内リンクIL11といった、経路がループするという問題がある。基本規制情報対象交差点判定部4は、交差点の構成およびそれに対応する交差点の基本形を予め道路ネットワークデータ記憶部2に記憶しておく。そして、選択された交差点が記憶されたデータに該当する構成であれば、基本規制情報対象交差点判定部4は、選択された交差点を基本規制情報対象交差点であると判定する。選択された交差点が記憶されたデータに該当する構成でない場合は、基本規制情報対象交差点判定部4は、選択された交差点を基本規制情報対象交差点ではない非基本規制情報対象交差点であると判定する。
【0022】
道路ネットワークデータ記憶部2に記憶される道路ネットワークデータの構成としては、以下のようなものが挙げられる。例えば、交差点の構成が「交差点ノードの数がn+1個、ダミーノードの数がn個、交差点内リンクの数がn個およびダミーリンクの数が2n個」であれば、基本規制情報対象交差点判定部4は、選択された交差点を基本形の交差点であると判定する。そして、選択された交差点のネットワーク構成におけるnの数を確認し、例えば、n=1であれば第一の基本形の交差点、n=2であれば第二の基本形の交差点であると判定する。ここで、第一の基本形の交差点とは、図5に示すように、交差点ノードN41、N42、ダミーノードDN41、ダミーリンクDL41、DL42、交差点内リンクIL41で表現される交差点である。また、第二の基本形の交差点とは、図6に示すように、交差点ノードN51〜N53、ダミーノードDN51およびN52、ダミーリンクDL51〜DL54、交差点内リンクIL51およびIL52で表現される交差点である。
【0023】
また、交差点の構成が「交差点ノードの数が2n+2個、ダミーノードの数がゼロ個、交差点内リンクの数が3n+1個およびダミーリンクの数が2n個」であれば、基本規制情報対象交差点判定部4は、選択された交差点を基本形の交差点であると判定する。そして、選択された交差点のネットワーク構成における「n」の数を確認し、例えば、n=1であれば第三の基本形の交差点、n=2であれば第四の基本形の交差点であると判定する。ここで、第三の基本形の交差点とは、図2に示すように、交差点ノードN1〜N4、ダミーリンクDL5およびDL6、交差点内リンクIL1〜IL4で表現される交差点である。また、第四の基本形の交差点とは、図7に示すように、交差点ノードN71〜N76、ダミーリンクDL71〜DL74、交差点内リンクIL71およびIL76で表現される交差点である。
【0024】
このように、基本規制情報対象交差点判定部4は、選択された交差点が基本規制情報対象交差点であるか否かを判定するとともに、交差点の構成と交差点基本形とを対応付ける。そして、対応付けた結果を道路ネットワークデータ記憶部2に記憶する。
【0025】
基本規制情報決定部5は、選択された交差点が基本規制情報対象交差点であると判定された場合、その交差点の基本形に応じて、基本規制情報を決定する。基本規制情報決定部5は、各基本形に対応する基本規制情報を記憶しており、選択された交差点の基本形に応じて基本規制情報を決定する。交差点の基本形に対応する基本規制情報の例としては、図6に示す第二の基本形の場合は、図10に示す基本規制情報T1が選択される。
【0026】
個別規制情報対象交差点判定部6は、基本規制情報対象交差点を構成する交差点ノードと交差点ノードに接続する道路リンクとの接続関係から、基本規制情報対象交差点を個別規制情報の付与対象となる交差点を表す個別規制情報対象交差点であるか否かを判定する。例えば、判定対象交差点が第一の基本形および第二の基本形の交差点である場合であって、交差点を形成する交差点ノードのうち端部に位置する交差点ノードにおいて交差点内リンクに対して水平方向の道路リンクがそれぞれ1本以下、かつ、端部に位置する交差点ノード以外の交差点ノードに接続している道路リンクが2本以下であるという条件を満たせば、個別規制情報対象交差点判定部6は、該当する交差点を個別規制情報対象交差点であると判定する。例えば、図6に示す交差点の場合、交差点ノードN51には、交差点内リンクIL51に対して水平方向の道路リンクL51が接続しており、交差点ノードN53には、交差点内リンクIL52に対して水平方向の道路リンクL54が接続している。また、交差点ノードN52には、2本の道路リンクL52、L53が接続している。したがって、個別規制情報対象交差点判定部6は、図6に示す交差点を個別規制情報対象交差点であると判定する。
【0027】
これに対して、判定対象の交差点が、上記条件を満たさない場合、個別規制情報対象交差点判定部6は、該当交差点を個別規制情報の付与対象外の交差点を表す非個別規制情報対象交差点であると判定する。例えば、図8に示す交差点において、交差点ノードN63には、交差点内リンクに対して水平方向に2本の道路リンクL64、L65が接続されている。また、交差点ノードN62には3本の道路リンクL61〜L63が接続されている。つまり、図8に示す交差点の例は、個別規制情報対象交差点に該当しない。したがって、個別規制情報対象交差点判定部6は、図8に示す交差点を非個別規制情報対象交差点であると判定する。
【0028】
また、例えば、判定対象交差点が第三の基本形および第四の基本形の交差点である場合であって、判定対象交差点を形成する交差点ノードのうち端部に位置する交差点ノードに接続している道路リンク数が2本以下であり、かつ、端部に位置する交差点ノード以外の交差点ノードに接続している道路リンク数が1本以下であるという条件を満たせば、個別規制情報対象交差点判定部6は、該当する交差点を個別規制情報対象交差点であると判定する。例えば、図7に示す交差点の場合、N71、N73、N74およびN76に接続している道路リンク数がそれぞれ2本であり、かつ、交差点ノードN72およびN75に接続している道路リンク数がそれぞれ1本である。したがって、個別規制情報対象交差点判定部6は、図7に示す交差点を個別規制情報対象交差点であると判定する。
【0029】
これに対して、例えば、図9に示す交差点において、交差点ノードN81には道路リンクL81〜L83の3本が接続している。つまり、図9に示す交差点の例は、個別規制情報対象交差点に該当しない。したがって、個別規制情報対象交差点判定部6は、図9に示す交差点を非個別規制情報対象交差点であると判定する。
【0030】
個別規制情報入力受付部7は、選択された交差点が個別規制情報対象交差点であると判定された場合、選択された交差点の個別の交通規制に従った個別規制情報の入力を受け付け、基本規制情報決定部5によって決定された基本規制情報の補充を行う。個別規制情報とは、例えば、進入禁止規制が挙げられるが、該当する進入リンクと退出リンクとを指定して規制を付与するだけでなく、付与した規制が適用される月日、曜日および時間帯等の時間情報も指定できる。例えば、図2に示す形状の交差点における個別規制情報の一例としては、図11に示すような規制が挙げられる。図11に示すように、例えば、道路リンクL8から道路リンクL3への通行が規制されている場合、道路ネットワークデータに、L8からIL1への通行を制限する規制を設けることで、上記通行規制を実現できる。
【0031】
個別規制情報入力受付部7が入力を受け付ける個別規制情報の形式としては、例えば、2リンク規制の進入リンクおよび退出リンクの入力を受け付けることができる。また、個別規制情報入力受付部7は、各基本形における3リンク規制のパターンと対応する2リンク規制とを予め道路ネットワークデータ記憶部2に記憶しておき、規制したい経路の進入リンクおよび退出リンクの入力を3リンク規制の形式で受け付けることで、対応する2リンク規制を判定することもできる。
【0032】
次に、以上の構成を有する交通規制定義装置1の動作を、図12に示す複合交差点C1を例に説明する。なお、本実施例における交通規制定義装置1は、図2および図5〜図8に示す第一〜第四の基本形と、これらに対応する基本規制情報とを予め記憶しており、交差点C1は、通行規制A1を有している。図13は、本実施例における図1に示す交通規制定義装置によって実現される交通規制定義処理を示すフローチャートである。
【0033】
まず、交差点選択部3は、道路ネットワークデータから、任意の交差点C1に対応するデータを選択する(ステップS20)。次に、基本規制情報対象交差点判定部4は、選択された交差点C1に対応する道路ネットワークデータの構成を確認し、交差点C1が基本規制情報対象交差点であるか否かを判定する(ステップS21)。交差点C1に対応する道路ネットワークデータは、交差点ノードの数が6個、ダミーノードの数がゼロ個、交差点内リンクの数が7個およびダミーリンクの数が4個で構成されている。したがって、交差点C1は第四の基本形であり、基本規制情報対象交差点判定部4は、交差点C1を基本規制情報対象交差点であると判定する。
【0034】
基本規制情報決定部5は、基本規制情報対象交差点であると判定された交差点C1の基本形を決定する(ステップS22)。上述のように、交差点C1は第四の基本形であるため、基本規制情報決定部5は、道路ネットワークデータ記憶部2に記憶されている基本規制情報から図14に示す第四の基本形に対応する基本規制情報T10を選択する。
【0035】
個別規制情報対象交差点判定部6は、基本規制情報対象交差点と判定された交差点C1に対応する道路ネットワークデータの交差点ノードと道路リンクとの接続関係を確認し、交差点C1が個別規制情報対象交差点であるか否かを判定する(ステップS23)。交差点C1に対応する道路ネットワークデータの交差点ノードN21、N23、N24およびN26は、いずれも接続している道路リンク数が2本ずつであり、交差点ノードN22およびN25は、いずれも接続している道路リンク数が1本ずつである。したがって、個別規制情報対象交差点判定部6は、交差点C1を個別規制情報対象交差点であると判定する。
【0036】
個別規制情報入力受付部7は、個別規制情報対象交差点であると判定された交差点C1が有している通行規制の入力を受け付ける(ステップS24)。図12に示すように、交差点C1は通行規制A1を有しており、図15に示すように、オペレータが通行規制A1の進入リンクAS1および退出リンクAE1を指定すると、個別規制情報入力受付部7は、これに対応する個別規制情報T20を選択し、図16に示すように基本規制情報T10の補充を行う。
【0037】
本実施例によれば、選択された交差点の基本形パターンを認識することで対応する基本規制情報を決定し、またオペレータにより個別規制情報の入力を受け付けることで、複雑な複合交差点においても効率よく規制情報の付与を行い、かつ、記憶容量を低減することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 階層設定装置
2 道路ネットワークデータ記憶部
3 交差点選択部
4 基本規制情報対象交差点判定部
5 基本規制情報決定部
6 個別規制情報対象交差点判定部
7 個別規制情報入力受付部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図上の道路を表す道路リンクおよび該道路リンクの端部に位置するノードを有する道路ネットワークデータであって、交差点に対応するノードを複数に分離して得られる交差点ノードと、交差点ノード間を仮想リンクで結ぶことによって得られる交差点内リンクと、通行規制を2リンク規制で表現するために交差点ノード間に仮想的に接続されるダミーリンクおよびダミーノードと用いて、現実の交差点の交通規制に基づいた規制情報を表現する交通規制情報定義装置において、
任意の交差点に対応する交差点ノードおよびダミーノードの数とこれらに接続する交差点内リンクおよびダミーリンクの数とに基づいて、前記交差点が、構造上必要な一般的な規制情報である基本規制情報を付与する対象である基本規制情報対象交差点であるか否かを判定する基本規制情報対象交差点判定部と、
前記交差点が前記基本規制情報対象交差点であると判定された場合、前記交差点の基本形に応じて、基本規制情報を決定する基本規制情報決定部と、
前記交差点を構成する交差点ノードと道路リンクとの接続関係から、前記基本規制情報対象交差点が、個別の交通規制に従った個別規制情報を付与する対象である個別規制情報対象交差点であるか否かを判定する個別規制情報対象交差点判定部と、
前記基本規制情報対象が前記個別規制情報対象交差点であると判定された場合、個別規制情報の入力を受け付けることで、前記基本規制情報を補充する個別規制情報入力受付部と、
を備えることを特徴とする交通規制情報定義装置。
【請求項2】
地図上の道路を表す道路リンクおよび該道路リンクの端部に位置するノードを有する道路ネットワークデータであって、交差点に対応するノードを複数に分離して得られる交差点ノードと、交差点ノード間を仮想リンクで結ぶことによって得られる交差点内リンクと、通行規制を2リンク規制で表現するために交差点ノード間に仮想的に接続されるダミーリンクおよびダミーノードと用いて、現実の交差点の交通規制に基づいた規制情報を表現する交通規制情報定義方法において、
任意の交差点に対応する交差点ノードおよびダミーノードの数とこれらに接続する交差点内リンクおよびダミーリンクの数とに基づいて、前記交差点が、構造上必要な一般的な規制情報である基本規制情報を付与する対象である基本規制情報対象交差点であるか否かを判定する基本規制情報対象交差点判定工程と、
前記交差点が前記基本規制情報対象交差点であると判定された場合、前記交差点の基本形に応じて、基本規制情報を決定する基本規制情報決定工程と、
前記交差点を構成する交差点ノードと道路リンクとの接続関係から、前記基本規制情報対象交差点が、個別の交通規制に従った個別規制情報を付与する対象である個別規制情報対象交差点であるか否かを判定する個別規制情報対象交差点判定工程と、
前記基本規制情報対象が前記個別規制情報対象交差点であると判定された場合、個別規制情報の入力を受け付けることで、前記基本規制情報を補充する個別規制情報入力受付工程と、
をコンピュータが実行することを特徴とする交通規制情報定義方法。
【請求項1】
地図上の道路を表す道路リンクおよび該道路リンクの端部に位置するノードを有する道路ネットワークデータであって、交差点に対応するノードを複数に分離して得られる交差点ノードと、交差点ノード間を仮想リンクで結ぶことによって得られる交差点内リンクと、通行規制を2リンク規制で表現するために交差点ノード間に仮想的に接続されるダミーリンクおよびダミーノードと用いて、現実の交差点の交通規制に基づいた規制情報を表現する交通規制情報定義装置において、
任意の交差点に対応する交差点ノードおよびダミーノードの数とこれらに接続する交差点内リンクおよびダミーリンクの数とに基づいて、前記交差点が、構造上必要な一般的な規制情報である基本規制情報を付与する対象である基本規制情報対象交差点であるか否かを判定する基本規制情報対象交差点判定部と、
前記交差点が前記基本規制情報対象交差点であると判定された場合、前記交差点の基本形に応じて、基本規制情報を決定する基本規制情報決定部と、
前記交差点を構成する交差点ノードと道路リンクとの接続関係から、前記基本規制情報対象交差点が、個別の交通規制に従った個別規制情報を付与する対象である個別規制情報対象交差点であるか否かを判定する個別規制情報対象交差点判定部と、
前記基本規制情報対象が前記個別規制情報対象交差点であると判定された場合、個別規制情報の入力を受け付けることで、前記基本規制情報を補充する個別規制情報入力受付部と、
を備えることを特徴とする交通規制情報定義装置。
【請求項2】
地図上の道路を表す道路リンクおよび該道路リンクの端部に位置するノードを有する道路ネットワークデータであって、交差点に対応するノードを複数に分離して得られる交差点ノードと、交差点ノード間を仮想リンクで結ぶことによって得られる交差点内リンクと、通行規制を2リンク規制で表現するために交差点ノード間に仮想的に接続されるダミーリンクおよびダミーノードと用いて、現実の交差点の交通規制に基づいた規制情報を表現する交通規制情報定義方法において、
任意の交差点に対応する交差点ノードおよびダミーノードの数とこれらに接続する交差点内リンクおよびダミーリンクの数とに基づいて、前記交差点が、構造上必要な一般的な規制情報である基本規制情報を付与する対象である基本規制情報対象交差点であるか否かを判定する基本規制情報対象交差点判定工程と、
前記交差点が前記基本規制情報対象交差点であると判定された場合、前記交差点の基本形に応じて、基本規制情報を決定する基本規制情報決定工程と、
前記交差点を構成する交差点ノードと道路リンクとの接続関係から、前記基本規制情報対象交差点が、個別の交通規制に従った個別規制情報を付与する対象である個別規制情報対象交差点であるか否かを判定する個別規制情報対象交差点判定工程と、
前記基本規制情報対象が前記個別規制情報対象交差点であると判定された場合、個別規制情報の入力を受け付けることで、前記基本規制情報を補充する個別規制情報入力受付工程と、
をコンピュータが実行することを特徴とする交通規制情報定義方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−237486(P2010−237486A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85934(P2009−85934)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(597151563)株式会社ゼンリン (155)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(597151563)株式会社ゼンリン (155)
【Fターム(参考)】
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