説明

交通量調査装置、交通量調査方法および記録媒体

【目的】 自動販売機にセンサーを取り付け、機前交通量を調査する装置を提供することである。
【構成】 土地定着物に固定されるとともに、その土地定着物の周囲の交通量を計測する交通量センサーと、その交通量センサーから入力される交通量データを一次加工するデータ加工装置と、そのデータ加工装置が加工した一次加工データを、通信回線を介して送信するデータ送信装置と、そのデータ送信装置が送信してきた一次加工データを、交通量解析用の二次加工データへ加工するデータ解析装置である。データ解析装置は、一次加工データと土地定着物の位置を含む地理データとを用いて、地理データと交通量データとを把握できる地図対応交通量データへ加工可能である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】この発明は、土地定着物に備えたセンサーを用いることによって、交通量に関するデータを集計できる技術に関するものである。
【0002】
【先行技術】ある特定地点の交通量を測定し、そのデータを集計、分析することによって、新規出店を計画したり、各種統計を作成するといったことは、従来から行われてきた。そして、その測定作業に関しては、人間がカウンターを押してゆく、という手作業で行われるのが一般的であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来の交通量の測定作業を機械化したいという要請は潜在的に存在していたと考えられるが、以下のような問題の存在により、実現しなかった。その理由のひとつとしては、そのような目的に使用するに適したセンサーが存在しなかった。また、センサーのように、データを集計する装置を設置する場所がなかった。つまり、道路交通法や都道府県条例などで、公道における「障害物」となるからである。
【0004】ところで、自動販売機など、公道へ合法的に設置された土地定着物は、多数存在する。そのような自動販売機などの土地定着物を利用して、交通量を自動的に調査するシステムがあれば、上記の課題は解決するものと考えられる。それが、本発明が解決すべき課題である。請求項1記載の発明の目的は、交通量を調査できるセンサーを土地定着物に固定して交通量を測定する装置を提供することである。
【0005】請求項2記載の発明の目的は、加えて、調査した交通量と地理的なデータとを融合した見やすいデータへの加工が可能な装置を提供することである。請求項3記載の発明の目的は、交通量を調査できるセンサーを土地定着物に固定して交通量を測定する方法を提供することである。請求項4記載の発明の目的は、交通量を測定し、地理的なデータと融合させるコンピュータプログラムを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記した目的を達成するためのものである。
(請求項1)請求項1記載の発明は交通量調査装置に係り、土地定着物に固定されるとともに、その土地定着物の周囲の交通量を計測する交通量センサーと、その交通量センサーから入力される交通量データを一次加工するデータ加工装置と、そのデータ加工装置が加工した一次加工データを、通信回線を介して送信するデータ送信装置と、そのデータ送信装置が送信してきた一次加工データを、交通量解析用の二次加工データへ加工するデータ解析装置とを備えたことを特徴とする。
【0007】(用語説明)「土地定着物」とは、合法的に公道へ設置固定されたもの、たとえば、郵便ポストや自動販売機などをいう。ここで「自動販売機」とは、消費者が紙幣または補助貨幣を投入し、所定の操作を行うと所望する商品またはサービスを入手できる、無人の販売装置である。入手できる商品またはサービスとしては、タバコ、飲料、旅客サービスの引換券(いわゆる切符)など、様々なものを含む。
【0008】「交通量センサー」とは、人間や自動車など、特定個所の交通量を把握することができるセンサーをいう。光電スイッチ式、超音波式、赤外線式、微小圧力など、設置場所、環境などを考慮して適切な方式を選択する。例えば、屋外で使用する場合には、天候の違い、捉える人数、センシングの方向などを考慮したセンサーとなる。センサーにつき、「土地定着物に対して、当該土地定着物が占める領域を越えないように固定する。土地定着物からの突出部分が、道路交通法および都道府県条例に違反しないようにするためである。
【0009】「土地定着物」および「交通量センサー」は、単数であっても複数であってもよい。「一次加工」とは、センサーが計測したいわゆる生のデータを、通信回線を用いて送信可能な状態のデータとするまでの加工をいう。生データについて、交通量に関する補正などの段階を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0010】「通信回線」とは、公衆電話回線のほか、専用回線でもよい。「データ解析装置」は、前記「土地定着物」とは物理的に離れている。
(作用)交通量センサーを土地定着物へ固定して、その土地定着物の周囲の交通量を、その交通量センサーが計測する。計測した交通量データは、データ加工装置によって一次加工されて送信可能となる。
【0011】送信可能となった一次加工データは、データ送信装置によって、通信回線を介してデータ解析装置へと送られる。データ解析装置へと送られた一次加工データは、二次加工データへ加工され、交通量を解析するために用いられる。
(請求項2)請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明に係る交通量調査装置を限定したものであり、データ解析装置は、一次加工データと土地定着物の位置を含む地理データとを用いて、地理データと交通量データとを把握できる地図対応交通量データへ加工可能としたことを特徴とする。
【0012】(用語説明)「地理対応データ」とは、地図たる図形データと交通量たる数値データとを関連付けてデータベース化したデータをいう。
(作用)データ解析装置は、一次加工データと、別途用意した土地定着物の位置を含む地理データとを、地理データと交通量データとを把握できる地図対応交通量データへ加工する。
【0013】(請求項3)請求項3記載の発明は、土地定着物の周囲の交通量を計測する交通量測定手順と、計測した交通量データを送信可能であるように一次加工する一次加工手順と、その一次加工データを、通信回線を介して送信するデータ送信手順と、送信された一次加工データを、交通量解析用の二次加工データへ加工する二次加工手順とを備えたことを特徴とする交通量調査方法に係る発明である。
【0014】(請求項4)請求項4記載の発明は、交通量を計測して得られた交通量データを、通信回線を介して受信するデータ受信手順と、受信した交通量データと交通量を計測した地点を含む地理データとを用いて、地理データと交通量データとを把握できる地図対応交通量データへ加工する地図対応データ加工手順とを実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に係る発明である。
【0015】(用語説明)「記録媒体」とは、プログラムを記録でき、且つコンピュータ読み取り可能な媒体であり、たとえば、フロッピーディスク、CD−ROM、ハードディスク、MO、PD、通信媒体などである。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施の形態及び図面に基づいて、更に詳しく説明する。ここで使用する図面は、図1ないし図2である。図1は、本願発明の実施の形態を示す概念図である。図2は、入力データの解析の理論を示す概念図である。 図3は、地図データに対し、交通量データを加え、新たに交通量が一目で分かる地理的データベースを作成する際の概念図を示したものである。まず、この実施の形態の構成について説明する。
【0017】図1に示す交通量調査装置は、公道(歩道)に面した自動販売機と、その自動販売機に対して、当該自動販売機が占める領域を越えないように、当該販売機の上面へ固定された人感センサーと、その人感センサーから入力される入力データをデータ管理本部へ送信するデータ送信装置とを備えている。自動販売機は、特許請求の範囲でいう「土地定着物」である。自動販売機の種類としては、タバコの自動販売機である。設置場所が多数あるので、交通量の測定には便利である。
【0018】人感センサーは、自動販売機が面している公道を通過する歩行者の姿を捉えることができるものであって、超音波式のものである。超音波の発射口は、自動販売機を利用する消費者に向かうようになっており、且つセンサーが作動している旨を、自動販売機利用者にさりげなく知られるように、ランプがつくようにしている。これによって不正使用の未然防止が図れるとともに、不正使用が起きた場合に犯人逮捕の手がかりの情報も得ることができる。放射角度Aおよび放射到達距離Lは、歩道の幅、交通量などに応じて調整できるようにしてあり、測定誤差を図りながら、微調整する。
【0019】「データ送信装置」は、入力データを送信用にデータ変換し、通信回線を用いて、データ管理本部のホストコンピュータへ送信する。送信されたデータ管理本部では、データの収集および解析を行う。交通量の解析の基本モデルは、図2に示す「マルコフ連鎖モデル」である。マルコフ連鎖モデルとは、i1からN0に入っても、i2からN0に入っても、O1に向かう確率は同じであるとして、解析を行うモデルである。
【0020】近接する複数箇所のタバコの自動販売機にすべて、上記のような交通量調査装置を設置し、入力データを収集すれば、自動販売機の最適配置に関するデータも得ることができる。地図データに対し、交通量データを加え、新たに交通量が一目で分かる地理的データベースを作成する様子を、図3とともに説明する。
【0021】販売機Aおよび販売機Bはともに、人感センサーを備え、それぞれ、販売機前の人通りの交通量を、データとして取り込んでいる。そして、そのデータを送信用に一次加工し、データ管理本部のホストコンピュータへ送信する。ホストコンピュータは、販売機Aおよび販売機Bの地理的位置のデータと、それぞれの交通量データとを取り込む。そして、予め用意していた地図データベースのデータと組み合わせて、地図対応交通量データへ加工する。この様子を図3の下半分に表している。
【0022】
【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、交通量を調査できるセンサーを土地定着物に固定して交通量を測定する装置を提供することができた。請求項2記載の発明によれば、加えて、調査した交通量と地理的なデータとを融合した見やすいデータへの加工が可能な装置を提供することができた。
【0023】請求項3記載の発明によれば、交通量を調査できるセンサーを土地定着物に固定して交通量を測定する方法を提供することができた。請求項4記載の発明によれば、交通量を測定し、地理的なデータと融合させるコンピュータプログラムを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の実施の形態を示す概念図である。
【図2】入力データの解析の理論を示す概念図である。
【図3】地図データに対し、交通量データを加え、新たに交通量が一目で分かる地理的データベースを作成する際の概念図を示したものである。
【符号の説明】
N0 測定ポイント
i1 ある地点から測定ポイントN0へ向かう確率
i2 他のある地点から測定ポイントN0へ向かう確率
O1 測定ポイントN0からある地点からへ向かう確率
O2 測定ポイントN0から他のある地点からへ向かう確率
O3 測定ポイントN0からまた別のある地点からへ向かう確率

【特許請求の範囲】
【請求項1】土地定着物に固定されるとともに、その土地定着物の周囲の交通量を計測する交通量センサーと、その交通量センサーから入力される交通量データを送信可能であるように一次加工するデータ加工装置と、そのデータ加工装置が加工した一次加工データを、通信回線を介して送信するデータ送信装置と、そのデータ送信装置が送信してきた一次加工データを、交通量解析用の二次加工データへ加工するデータ解析装置とを備えたことを特徴とする交通量調査装置。
【請求項2】データ解析装置は、一次加工データと土地定着物の位置を含む地理データとを用いて、地理データと交通量データとを把握できる地図対応交通量データへ加工可能としたことを特徴とする請求項1記載の交通量調査装置。
【請求項3】土地定着物の周囲の交通量を計測する交通量測定手順と、計測した交通量データを送信可能であるように一次加工する一次加工手順と、その一次加工データを、通信回線を介して送信するデータ送信手順と、送信された一次加工データを、交通量解析用の二次加工データへ加工する二次加工手順とを備えたことを特徴とする交通量調査方法。
【請求項4】交通量を計測して得られた交通量データを、通信回線を介して受信するデータ受信手順と、受信した交通量データと交通量を計測した地点を含む地理データとを用いて、地理データと交通量データとを把握できる地図対応交通量データへ加工する地図対応データ加工手順とを実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【公開番号】特開平11−353578
【公開日】平成11年(1999)12月24日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−160035
【出願日】平成10年(1998)6月9日
【出願人】(000155469)株式会社野村総合研究所 (1,067)