説明

交通騒音を減衰させるための音響遮蔽デバイス

本発明は、騒音、特に道路交通、鉄道交通及びそれらと同様のものから生じるようなノイズを減衰させるための音響遮蔽デバイス(1)であって、コンクリート製であることが好ましいフレーム構造体(2)と、該フレーム構造体の表面に配置され、好ましくは前記フレーム構造体(2)に対して密接して取り付けられた吸音材(3)と、を備えており、前記吸音材が、吸音マット(13)を備えた交換可能なカセット3のように構成されている音響遮蔽デバイス(1)に関する。本発明は、前記吸音マット(13)と前記フレーム構造体(2)との間にエアギャップ(15)が形成されるように、エアギャップ形成材(14)が前記吸音マット(13)の裏側に前記カセット(3)と一体に配置されており、前記エアギャップ形成材(14)は、多数の小部屋(16)又は区画を形成するように前記吸音マット(13)と前記フレーム構造体(2)との間に配置されており、前記小部屋(16)又は区画は実質的に閉じた空気体積を形成するように配置され、前記吸音マット(13)は、少なくともある程度だけ、ノイズ及び空気を通すことができるように配置されていることに基づいて達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、騒音、特に道路交通、鉄道交通及びそれらと同様のものから発生するノイズのような騒音を減衰させるための音響遮蔽デバイスに関する。特に、本発明は、好ましくはコンクリート造のフレーム構造体(framework)と、その表面に配置された吸音カセットと、からなるモジュールとして構成された音響遮蔽デバイスに関する。複数のモジュールは、完成体である音響遮蔽デバイス又は塀を作成することを目的として次々に一列に設置される。
【背景技術】
【0002】
道路及び鉄道の交通騒音は、現代社会において増加の一途を辿る問題になっており、周囲への影響、特に地域住民にとって、明らかで著しく騒がしい場合が多い。したがって、市民又は関係当局者から有効な打開策が求められている。騒がしい高騒音レベルは効果的に減衰される必要があり、現在、様々な技術が既に使用されている。例えば、ノイズを減衰させる盛土を築造するのに掘削土が使用されており、そして、道路や鉄道に沿って騒音を遮蔽するのに木造又はコンクリート造の建造物が多く使用されている。しかしながら、それらの手段によるノイズ保護には限界がある。ノイズ測定及び計算によって、遮蔽物のうちのノイズ源に面する部分に吸音材料を備え付けると音響遮蔽デバイスがより効果的であることが示されている。このような効果的な吸音材料は、ミネラルウール若しくはそれと同様のもの、又は連続気孔を有する発泡プラスチックによって構成されているが、それらの材料は、例えば道路沿いや鉄道沿い等のような屋外や汚い環境下での使用にあまり適していない。また、前記建造物は、騒音を減衰させる以外にも、当然に耐候性を有し、清掃され、様々な気候の中でも機能しなければならない。
【0003】
このように、道路や鉄道の騒音を減衰させるための技術が既に知られており、その中の一部には特許による保護もされている。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、例えば細かく切断されると共に結合剤と混合された廃タイヤゴムで作られた吸音及び/又は振動減衰ユニットを製造する方法が開示されている。前記ユニットは、道路や鉄道と平行してノイズ遮蔽物として用いることができ、それが固化する前に保持要素/つり上げ要素が材料の中に埋め込まれている。これらのユニットでは、手頃な費用で道路や鉄道に沿って安定的及び効果的な音響遮蔽デバイスを配置することに関連する全ての問題のうちの一部が解決されない。
【0005】
下記引用文献2には、コンクリート製のフレーム構造体であって、その一方側でメッシュがコンクリートで成型(cast)されたフレーム構造体で構成された音響遮蔽デバイスが開示されている。前記メッシュは、ノイズ減衰材と一体になっている。この建造物の欠点は、とりわけ、吸音材が損傷したときに交換できないことである。また、この音響遮蔽デバイスの減衰能力は、吸音材の構造形状によって制限される。また、コンクリート断面の幅は、騒音源から十分に近いところに音響遮蔽デバイスを配置可能にするのを困難にする。
【0006】
下記引用文献3には、例えば道路、鉄道及びそれらと同様のものから発生するノイズなどの騒音を減衰させるための音響遮蔽デバイスであって、望ましくコンクリートからなるフレーム構造体と、その表面に配置された吸音材と、からなるデバイスが開示されている。前記吸音材は、フレーム構造体の表面に交換可能に配置されていると述べられている。吸音材の裏側には、吸音材とフレーム構造体との間に一定のエアギャップが形成されるように、スペーサー要素が配置されている。エアギャップは10〜50mmの間にすることができるが、通常は20mmである。吸音材は、実質的に平坦な面の上にコンクリート要素に対して嵌合されている。吸音材の前面/外面は、コンクリート要素の前方リミット面に対して実質的に密接して配置されている。吸音材は、基本的に、例えばセメント、又は、セメント、ケイ酸塩若しくはそれらと同様の公知の物質を含む無機結合剤の混合物等のような結合剤で集成された木片で作られていると共に、前方の波形部分と後方の平坦部分とで構成されていると述べられている。吸音材は、前方側が波形であるその形状の効果で、ノイズを吸収することを目的としているが、プレートの裏側のエアギャップを騒音や空気が通過することを明確に意図していない。組み込まれた材料の特性の結果、プレートを介して流れ抵抗を制御又は調整することは不可能である。プレートを通過する空気の流れもまたほとんど不可能であり、それ故に吸音材とならないであろう。プレートが木部繊維を含むことは、耐候性がほとんどないことを意味しており、それ故に屋外での使用にあまり適していない。さらに、木部繊維材料は、とても堅く、とりわけ、セメントを含むので、比較的に扱いにくい。また、吸音材は、機械的に脆弱であると述べられており、吸音材料を貫通するネジを用いて嵌合されている。前記デバイスは、カセットにエアギャップ形成材が全く一体化されていないし、実質的に閉鎖した多数の気泡がエアギャップに形成されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】瑞典特許第513102号明細書
【特許文献2】国際公開第2005/033412号パンフレット
【特許文献3】仏国特許第2683368号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本願の中の先行技術は、順応性があって効果的な方法、且つ手頃な費用で交通騒音を減衰させるという問題を解決していない。
【0009】
本発明の1つの目的は、上記した問題を解決することであり、冒頭で述べたタイプのデバイス、つまり少数の構成部品で音響遮蔽デバイスを設けることであり、簡素で小型で比較的安価なユニットで構成させることができ、該ユニットが道路や鉄道の交通騒音を効果的に減衰させることである。
【0010】
本発明の別の目的は、屋外環境に設置することができ、様々な気候条件に耐え、容易に汚れを落とすことができる音響遮蔽デバイスを提供することである。
【0011】
本発明の更なる目的は、騒音の発生源の近くに設置することができるが、それにも関わらず、道路や鉄道の通常のメンテナンスを可能することができる音響遮蔽デバイスを提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、吸音材が損傷したり、ある区間でノイズ減衰特性を変更することが望まれたり、その他の理由で置き換える必要があったりした場合に、その吸音材を容易に交換できるようにすることである。
【0013】
さらに、本発明の別の目的は、建造物が安価に建造され、設置され、維持されるようにすることである。
【0014】
これら及び更なる目的並びに効果は、最初の特許請求項の特徴部分に記載された際立った特徴を備えるデバイスによる発明に従って達成される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、本発明は、騒音、特に道路交通、鉄道交通及びそれらと同様のものから生じるようなノイズを低減させるための音響遮蔽デバイスであって、コンクリート製であることが好ましいフレーム構造体と、該フレーム構造体の表面に配置された吸音材と、を備える音響遮蔽デバイスに関する。本発明は、前記吸音マットと前記フレーム構造体との間にエアギャップが形成されるように、エアギャップ形成材が前記吸音マットの裏側に前記カセットと一体に配置されており、前記エアギャップ形成材は、多数の小部屋又は区画を形成するように前記吸音マットと前記フレーム構造体との間に配置されており、前記小部屋又は区画は実質的に閉じた空気体積を形成するように配置され、前記吸音マットは、少なくともある程度だけ、ノイズ及び空気を通すことができるように配置されていることを特徴としている。
【0016】
本発明のさらなる際立った特徴及び効果は、下記のさらなる本発明の詳細な説明に加えて、添付図面及び特許請求の範囲などに基づいて明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明は、添付図面に基づいて、下記のいくつかの好適な実施形態に更に詳しく記載されている
【0018】
【図1】図1は、独創的なモジュール及び該モジュールの前方側に取り付けられた吸音材の断面図を示している。
【図2a】図2aは、前方側から見た独創的な吸音カセットをより詳細に示している。
【図2b】図2bは、前記カセットのギャップ形成メッシュをより詳細に示している。
【図3】図3は、図2aのカセットの断面図を示している。
【図4】図4は、図2及び3に示したカセットの部分を後方側からより詳細に示している。
【図5】図5は、エアギャップ形成材の詳細図を示しており、それの壁構造は湾曲した区画形成面を有しており、該区画形成面によって吸音材が「局所反応タイプ(locally reacting type)」の吸音材となっている。
【図6】図6は、線路と平行して砂利/割石の基盤の上に設置された図1の独創的なモジュールを示している。
【図7】図7は、いわゆる吸音特性といわれる、周波数の関数である吸音率のグラフを示している。
【図8】図8は、多数の独創的なモジュールを組み合わせて遮音塀を形成する方法を示している。
【図9】図9は、 線路の側部の傍に並設された遮音塀についてより詳細に示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、例えば道路交通、鉄道交通、或いはそれらと同様のものからの騒音を遮蔽及び吸収するためのモジュール状の独創的な音響遮蔽デバイス1を横から示している。特に、本発明は、好ましくは繊維強化コンクリート造のフレーム構造体2と、その表面に取り付けられたカセット状の吸音材3と、で構成された音響遮蔽デバイス1に関する。前記モジュールは、完成体である音響遮蔽デバイスを形成するために複数のユニットを次々に一列に設置することができるように設計されている。繊維強化材は、フレーム構造体2内に導電性材料が存在しないようにするために、合成プラスチック繊維で構成されていることが好ましく、それによって、前記モジュールの電気的なアース対策が十分に取られるのでそれを省くことができる。そうしないとアースコネクタを通常の期間毎に点検及びメンテナンスを行わなければならなくなるので、それ故に将来のメンテナンス要因が排除される。
【0020】
カセット3も、非導電性材料だけで構成されている。カセット3は、例えば釘銃によって打たれる絶縁釘等で、フレーム構造体2の前方側、すなわち、騒音源の方に向けるつもりのモジュールの側面に嵌合されている。
【0021】
横から見ると、音響遮蔽デバイス1は、基部4と、中間部5と、上部6と、を備えている。基部4又は地盤支持部は小型で重い部分であり、例えば通過する列車や車からの強力な風圧にもかかわらずその音響遮蔽デバイス1を適所に保持するためのものである。前記風圧の力は、列車の前面が受ける圧力によって引き起こされる、線路から外側に出るものと、列車が通過した後に生じる吸引力による、線路側に向かうものと、が概ね同じくらいの大きさである。したがって、モジュール1は、列車が通過したときにその位置から動かされることがないように、重くて相当安定している。仮に音響遮蔽デバイス1が動いたら、重大な事故の危険が引き起こされる。列車は時速250kmを越えるスピードで通過することが可能でなければならず、音響遮蔽デバイス1も、例えば台風時の風に耐えられるように、様々な気象現象に耐えると共に考えられる全ての天気状況で安定することができなければならない。最大の安定性を達成するために、フレーム構造体2の重心は、できるだけそれの幾何学的中心の近くに位置すべきである。
【0022】
中間部5は、カセット3をノイズ源の近くに配置できるように、基部4の前方縁部7の上又はその近くに位置づけられている。特に、カセット3は、絶縁ボルトを用いて取り付けられているが、当然に、別の手段でも取り付け可能である。音響遮蔽デバイス1の前方側が実質的に平坦であると共に突出した部分が全くないことによって、モジュールは、既に知られた音響遮蔽デバイスよりも簡単に適所に設置される。したがって、吸音カセット3の前方側は、実質的に基部4の前方縁部7及び上部6の前方縁部8と一致して配置されている。これはモジュールが現場で場所を取らないことを意味し、これは鉄道盛土の上に設置されたときに有利である。
【0023】
少しだけ前方側(図1における左側)に突出した基部4を有するフレーム構造体2の構造は、例えば鉄道盛土内における音響遮蔽デバイス1のための土台を従来の可能なものよりも僅かに遠くに線路の外側へ設置させることができることを意味する。これは、音響遮蔽デバイス1又はその土台に影響を与えることなく、とりわけ鉄道盛土上で度々実施する必要があるメンテナンス作業を、とりわけ割石プラウと呼ばれるものを用いて、行うことを可能にする。したがって、前記モジュールを鉄道交通からの騒音を減衰するのにより効果的に用いることが可能である。音響遮蔽デバイス1の前面は、フレーム構造体2の前方縁部7が、カセット3の前方面及び上部6の前方縁部8と実質的に同じ平面(level)に位置することによって、実質的に平坦及び鉛直である。
【0024】
基部4の上面において、中間部5の後側に、吊りヨーク(lifting yoke)又はそれと同様のもののための取付具9を、例えば筒状のロッドアンカー(sleeve rod anchor)などのこれのために設けられた凹部に設置することができる。
【0025】
音響遮蔽デバイス1は、例えば前記モジュールにねじ込まれたアイレット(eyelet)に引っ掛けられた2本の吊り具(slings)を用いて並設することが可能であり、アイレットは組立後にモジュールから取り外される。したがって、前記モジュールを扱うのに特別な揚重機は必要なく、つり上げ装置の最大能力が例えばつりヨーク等の重量によって減少されないことを意味する。
【0026】
図2aは、吸音カセット3を前方からより詳細に示している。カセット3は、例えばプラスチック製の外側フレーム11で構成されている。カセット3の前方側、すなわち、後で音響遮蔽デバイス1のフレーム構造体2に嵌合される、ノイズ源の方を向いている側の表面には、好ましくは同じくプラスチック材料で形成された格子又はメッシュ12(図2bを参照。)が配置されている。メッシュ12の中または表面には、例えばゴム材料等の吸音材料が適切に配置されている。吸音材料は、メッシュ12で補強することを目的として、例えば、メッシュ12と一体にしたり、メッシュ12を成型したり、接着若しくは別の方法でメッシュ12を貼り付けたりすることができ、まさに薄いマット13を使用することができる。仮にマット13が十分に剛性を有する場合には、それをメッシュ12の裏側にゆるく(loose)設置することができる。カセット3は、フレーム構造体の中間部5の前方側に取り付けられていると共に、例えばフレーム構造体2の上部6の突出部分によって上端で雨から保護されている(図1を参照。)。
【0027】
図3は、図2に示すA−A線に沿った、独創的なカセット3の断面を示している。フレーム11には、メッシュ12と、マット13状の吸音材と、エアギャップ形成材14とが配置されている。
【0028】
マット13の吸音材料は、例えば再生ゴムの細かい顆粒で少なくとも部分的に構成されており、細粒は、この目的向けの結合剤によって結合している。当該結合材は、二成分ポリウレタン接着剤にすることができ、硬化してもマット13に柔軟性(flexible)及び弾力性(resilient)を持たせる。マット13は、それが小さい連通孔又は連通チャンネルを含むことによって少なくとも一部の空気を通すことが可能であり、それにより、マット13において流れ抵抗が生じる。また、マット13の材料は、耐久性があると共に、例えば、吸音効果が影響を受けたり損なわれたりせずに水洗いに耐えられる。粒径及び圧縮度は流れ抵抗に影響を及ぼすと共に異なる適用に応じて順応させることができる。鉄道からの交通ノイズを減衰させる場合には、約3mm径の粒が用いられると共に、マット13は約650kg/mの密度にする。約10mmの厚さのマットでは、その重量は約6.5kg/mである。
【0029】
フレーム11の幅寸法が約40mmである場合、約30mm幅のエアギャップ15がマット13の裏側に形成される、すなわち、マット13とモジュールのコンクリート製のフレーム構造体2との間隔が約30mmとなる。ここで、エアギャップ15の幅は、例えばプラスチック材料製のエアギャップ形成材14によって得られ、該エアギャップ形成材14は、小部屋又は区画を形成すると共に「局所反応吸音材(locally reacting absorber)」の特性を達成する吸音材を構成する。エアギャップ15の幅及び小部屋16の大きさは、ノイズが最も効果的に吸収される周波数帯域になるように決定される。エアギャップ15の幅は、変化されるフレーム11及びエアギャップ形成材14の幅によって、さもなければ、フレーム構造体2の中間部5からの一定の距離をおいて配置されたマット13によって、修正及び順応させることができる。また、トータルの吸音効果は、吸音マット13の空気流れ抵抗とエアギャップ15の幅との組み合わせによって決定される。吸音材料における流れ抵抗は、エアギャップと組み合わされて、RC回路と呼ばれる音響的な等価電気回路を形成する。
【0030】
したがって、吸音材又はカセット3は、既に知られたシステムよりもより調整可能及び順応可能であり、なかでも、従来のシステムよりもより簡単に、周波数帯域を騒音の特性に適合させることができ、その周波数帯域を減衰させ、それによって、dB(A)を単位として、最大限の減少を達成することができる。吸音材/カセット3が何らかの損傷を受けたら、それを新しいカセット3に交換することは容易である。既に知られた代案では、例えばコンクリートブロック全体の交換する必要がある。
【0031】
図4は、マット13の裏面及びそこに設置されたエアギャップ形成材14を示しており、エアギャップ形成材14には多数の実質的に円形の小部屋16又は区画が構成されている。組み立てられた状態では、それにより、小部屋16は、マット13とコンクリート製のフレーム構造体2との間に多数の閉じた体積(volumes)を形成する。また、小部屋16は、当然に、図示された形状以外の形状にすることも可能である。各小部屋16がいくらかのノイズを受け取り、エアギャップ形成材14の壁構造が曲面を有し、それによって得られた剛性のおかげで前記壁構造によってエアギャップ15内のノイズの拡散が防止され、小部屋間のノイズ伝達が最小限に抑えられる。したがって、ノイズは、まず始めに、各小部屋16で個別に吸収される。このタイプの吸音材は、「局所反応型の吸音材」と呼ばれている。この吸音材タイプは、吸収率が吸収極大においてより高くなると同時に、吸収極大における周波数を好ましい周波数帯域により簡単に適合させることができることを特徴としている。
【0032】
図5は、エアギャップ形成材14の一部をより詳細に示しており、ここで、エアギャップ形成材14はプラスチック製であり、その壁部17は高剛性を有する曲面を有していると共に閉じられた小部屋16を形成しており、また、エアギャップ形成材は、ギャップを形成すると同時に、「局部反応吸音材」と呼ばれる吸音材も構成する。これにより、マット13の一箇所から入るノイズが吸音材3内で横方向に拡散されることがエアギャップ形成材14によって防止される。反射されたノイズは、直ちに、それが吸音材3の中へ入るのと同じ経路に沿って抜け出るはずである。このように、吸音材3は局部反応である。局部反応吸音材によれば、吸収極大をdB(A)単位数で最大限の減少を引き起こす周波数帯域に制御しやすい。斜めに入ってくるノイズでさえ、マット13の厚さと、固体の壁まで、ここでは例えばコンクリート製のフレーム構造体までのエアギャップの幅と、によって決定される周波数からそれの吸収ピークが見つけ出されるであろう。
【0033】
図6は、枕木20上に設置された線路19と平行して砂利/割石の基盤18上に設置された図1の独創的な音響遮蔽デバイス1を示している。鉄道盛土21は通常、粗い割石で構成されている。材料の粗さによって、ノイズを通過させることができるが、平滑化することができない。したがって、音響遮蔽デバイス1は、細かい材料の基盤18上に設置することが好ましく、一例として、望ましくない範囲にノイズを通過させないようにするために、締め固めて平滑化することもできる。この細かい材料は、例えばジオテキスタイル22を用いて割石と分離された状態にしてある。
【0034】
図7は、吸音マット13を有する独創的な吸音材/吸音カセット3のいわゆる吸音特性といわれる、周波数の関数である吸音率のグラフを示しており、前記吸音マット13は、約10mmの厚さがあると共に、マット13とコンクリート製のフレーム構造体2との間に約30mmのエアギャップ15を有している。ここで、700〜1050Hzの周波数帯域の範囲内のノイズのために、0.9を超える吸音率が達成されており、上記周波数帯域は、鉄道交通からのノイズの最適な減衰に特に適している。エアギャップ15の幅を増減させると、例えば鉄道ノイズと比較してやや低いノイズ吸収極大の周波数が求められる例えば道路交通ノイズのように、他のタイプの騒音に関する他の周波数帯域の範囲内でさらに効果的なノイズ減衰が得られる。グラフにおける破線の曲線は、「非局部反応タイプ」と呼ばれるものである場合に得られる吸音率を示しており、前記非局部反応タイプは、吸音材が、エアギャップ形成材を用いない、すなわち、ギャップ内が空気だけであって局所の小部屋16が無いタイプである。黒実線の曲線から、エアギャップ幅を修正することで例えば道路交通や鉄道交通等の特定のノイズ源タイプに容易に適合させることができる、より適格なノイズ吸収極大が、エアギャップ形成材及び「局部反応性」の吸音によって得られることが分かる。
【0035】
図8は、複数の独創的なモジュールを組み合わせて、線路の片方の側部に沿って遮音塀を設置する方法を示している。上記モジュールの上部6には、実質的に平坦な上面10が設けられており、この上面10は、例えば、接触事故、機械的な不良、火事、又はそれらと同様の事が原因で列車が線路上で停車し、その列車から避難/離れなければならない人が踏むことができるようになっている。また、上部6の上面10に、例えば、縞板模様などのような滑り止めパターンを設けることも可能であり、これにより、踏みやすくすると共に滑る危険性を低減する。適切な非導電性材料による適切な滑り止め保護を、上部6の上面10の上に取り付けることができる。また、パターニングは、列車と音響遮蔽デバイス1との間に逃げるノイズ伝搬への一定の影響を持つことができる。また、モジュールは、中間部5の後面にステップ23を設けることも可能であり、ステップ23によって避難者が鉄道盛土に容易に降りられる。
【0036】
また、前記モジュールは、避難扉24を備えて提供することも可能である。この場合、前記モジュールには、フレーム構造体2の中間部5及び上部6を貫通する凹所/開口部25が設けられる。開口部25は扉24によって閉鎖されており、この扉24は例えばバネ作用(図示しない)によって自動に閉まると共に閉じた状態で施錠されており、これにより、例えば列車からの風圧によって扉24が誤って開けられて、それによって音響遮蔽デバイス1のノイズ減衰効果が低減することを防止する。例えば扉24の上端に対する垂直圧によって前記施錠を解除してドア24を開けることができる。
【0037】
図9は、遮音塀をより詳細に示していると共に、モジュールの開口部25に配置されたドア24によって線路領域からのスタッフの避難を可能にする方法を示している。
【0038】
音響遮蔽デバイス1の端部に設置されたモジュールは、前記塀における他所のモジュールよりもかなり大きい力に耐えると共に、好ましくは傾斜した上面(図示しない)を持つように構成されている。これらのモジュールにも、カセット/吸音材3を設けることが可能である。
【0039】
このように本発明によれば、少ない構成部品で音響遮蔽デバイス1を構成することが可能であり、しかも簡素で小型で安価なユニットであって道路又は鉄道からの騒音を効果的に減衰させるユニットである。また、本発明に係る音響遮蔽デバイス1は、その構成によって、様々な気候条件に耐えられると共に例えば水などを使って容易に汚れを落とすことができる。本発明に係る音響遮蔽デバイス1は、基部4(地盤支持部)が実質的にフレーム構造体2の後側に位置付けられていることによって、騒音源の近くに配置することができ、それ故に、客車(rail coach)の底面及び客車の側面によって形成されたボギースペース(bogie space)と音響遮蔽デバイスとの間から抜け出るノイズを顕著に防ぐことができ、それにも関わらず線路の通常のメンテナンスを可能にする。
【0040】
音響遮蔽デバイス1が線路の相当近くに設置されることは、「プラットホーム近く(platform-close)」の隙間における、遮蔽物が客車の本体縁部の底縁から抜け出るノイズのためのシールを形成することを意味する。客車の底面は、底縁の内側に引き降ろされた本体側部と共に、いわゆるボギースペースを形成することによって新しいタイプの減衰が得られ、これは、バラストも一定の騒音吸収をもたらすことに基づいてチャンバー減衰と呼ばれている。また、音響遮蔽デバイス1は、本体側部と共に、いわゆるチャンネル減衰を与える。
【0041】
カセット3の形をした吸音材を持つ構成のおかげで、損傷したり疲弊したりした場合に、ノイズ減衰特性を適合させるために、これを交換することが可能である。この構成は、全体として、生産、組み込み、メンテナンスするのに比較的に安価である。
【0042】
上述した説明は、第一に、発明の理解を容易にすることを目的としている。本発明は、当然に、特定の実施形態に限定されず、むしろ本発明の他の変更は、同様に可能であって発明の趣旨の範囲および下記の特許請求の範囲の保護の範囲の中で考え得ることである。
【符号の説明】
【0043】
1・・・音響遮蔽デバイス
2・・・フレーム構造体
3・・・吸音材(カセット)
7、8・・・前方リミット面
10・・・上面
13・・・吸音マット
15・・・エアギャップ
16・・・小部屋
24・・・避難扉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
騒音、特に道路交通、鉄道交通及びそれらと同様のものから生じるようなノイズを減衰させるための音響遮蔽デバイス(1)であって、
コンクリート製であることが好ましいフレーム構造体(2)と、
該フレーム構造体の表面に配置され、好ましくは前記フレーム構造体(2)に対して密接して取り付けられた吸音材(3)と、を備えており、
前記吸音材が、吸音マット(13)を備えた交換可能なカセット(3)のように構成されている音響遮蔽デバイス(1)において、
前記吸音マット(13)と前記フレーム構造体(2)との間にエアギャップ(15)が形成されるように、エアギャップ形成材(14)が前記吸音マット(13)の裏側に前記カセット(3)と一体に配置されており、
前記エアギャップ形成材(14)は、多数の小部屋(16)又は区画を形成するように前記吸音マット(13)と前記フレーム構造体(2)との間に配置されており、前記小部屋(16)又は区画は実質的に閉じた空気体積を形成するように配置され、
前記吸音マット(13)は、少なくともある程度だけ、ノイズ及び空気を通すことができるように配置されていることを特徴とする、音響遮蔽デバイス(1)。
【請求項2】
前記吸音材(3)が、ゴム顆粒からなるマット(13)で構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の音響遮蔽デバイス(1)。
【請求項3】
前記マット(13)に、空気を通すことができる孔又はチャンネルが形成されるように、前記ゴム顆粒が前記マット(13)に結合されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の音響遮蔽デバイス(1)。
【請求項4】
前記吸音材(3)は、実質的に平らなコンクリート面に対して取り付けられていることを特徴とする、請求項1から3の何れか一項に記載の音響遮蔽デバイス(1)。
【請求項5】
前記エアギャップ(15)が10〜60mm幅であることを特徴とする、請求項1から4の何れか一項に記載の音響遮蔽デバイス(1)。
【請求項6】
前記エアギャップ(15)が好ましくは30mm幅であることを特徴とする、請求項1から5の何れか一項に記載の音響遮蔽デバイス(1)。
【請求項7】
前記吸音材(3)の前面が、前記フレーム構造体(2)の前方リミット面(7、8)と実質的に同じ平面に配置されていることを特徴とする、請求項1から6の何れか一項に記載の音響遮蔽デバイス(1)。
【請求項8】
コンクリート造の前記フレーム構造体(2)の上面(10)は、線路上で臨時停車することになった列車から乗客が速やか且つ容易に避難することができる高さに位置することを特徴とする、請求項1から7の何れか一項に記載の音響遮蔽デバイス(1)。
【請求項9】
線路領域に居るスタッフが速やか且つ容易に避難できるように、コンクリート造の前記フレーム構造体(2)に避難扉(24)が配置されていることを特徴とする、請求項1から8の何れか一項に記載の音響遮蔽デバイス(1)。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−526221(P2012−526221A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509765(P2012−509765)
【出願日】平成22年5月4日(2010.5.4)
【国際出願番号】PCT/SE2010/050490
【国際公開番号】WO2010/128937
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(511266531)セータ−ブロック・インターナショナル・アーベー (1)
【Fターム(参考)】