説明

人体の生理学的特性を検出し、治療効果を達成するシステムおよび方法

【課題】 現在の複雑な機器よりもいっそう高いレベルの機能のために作られた、より故障しにくい医療機器を提供する。
【解決手段】 人体内、表面、および周囲で生理学的特性を検出し、それに基づいて治療効果を達成するためのシステムおよび方法である。さまざまなレベルのコンポーネントデバイスからなるネットワークがデータを検出し、処理し、対応するコンポーネントデバイスの間で伝達し、コンポーネントデバイスからなるピアグループの階層構造に自動的になって、さまざまな下位レベルのコンポーネントデバイスのタスクまたは機能を完了することによって治療効果のタスクまたは機能を実行する。全体ピアグループが、中にコンポーネントデバイスを有する、さまざまな下位レベルのピアグループを包含している。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、一般に、人体の生理学的特性を検出し、このように検出した情報にしたがって治療効果を達成するシステムおよび方法に関するものである。より具体的には、本発明は、複数のデバイスを使って生理学的特性を検出し、治療効果を達成するシステムおよび方法であって、その複数のデバイスが、動的に、デバイスのネットワークを自己組織し、これらのデバイスが互いに通信を行って、デバイスのネットワーク全体の機能を最適化するために、個々のデバイスの機能を調整するシステムおよび方法に関する。本発明のシステムおよび方法によれば、デバイスのネットワークを構成している個々のデバイスは、患者の体内に埋め込むまたは体表に張り付けてもよく、患者の体外の環境にあってもよく、これらの何らかの組み合わせとなっていてもよい。
【0002】
〔発明の背景〕
人の体内で起こっている生理学的な状態、またはその人体がおかれている環境で生じている他の状態を検出すること、および、得られた検出情報にしたがってその人体との治療上の相互作用を調整することは、一般に、複雑な医療機器で行われている。このような医療機器は、通常、検出モジュール、計算モジュール、通信モジュール、および補足的なモジュールを内蔵しており、これらのモジュールは、得られた検出情報に基づいて、適切な治療上の応答を決め、送達する役割を担う。例えば、植え込み型電気除細動器は、患者における心臓活動に関する情報を得るために、また、適切な応答を伝達して患者に完璧に正常な心臓活動を促進するために、これらの機能を1つのデバイスに全て収める。
【0003】
場合によっては、このような医療機器のさまざまな機能を異なるデバイスの間で分割することができる。例えば、センサーを体の一部に埋め込んで検出機能および通信機能を行うことができ、治療用デバイスを体の別の一部に埋め込んで通信機能、計算機能、および治療機能を実行することができる。このような場合、検出ユニットは、おそらくは所定の物理的、化学的または生物学的な体の特性を測定し、この情報を治療ユニットに送信する。これに対して、治療ユニットは、検出ユニットから受信したデータを分析し、治療ユニットで行ったデータ分析の結果にしたがって治療動作を行う。あるいは、計算およびデータ解析は、検出ユニットで行うこともある。
【0004】
上記のいずれの場合でも、医療機器は一般に非常に複雑である。このように複雑であるため、デバイスは故障する可能性が高い。このように複雑な医療機器は、例えば、検出、計算、通信、または治療動作のいずれのモードでも故障しうる。これらのモードのいずれか1つでも故障すると、重大な機能停止、そして治療動作の停止が生じることがあり、このため、患者の健康を危険にさらすことがある。このことは、1つのデバイスのみが十分な治療効果を維持する役割を担っている場合に、特に問題となる。このように、たった1つのデバイスが機能しなくなると、患者の健康に重大な負の影響があり、場合によっては、死の危険さえもありうる。
【0005】
さらに、多くのデバイスの治療効果は、単一のデバイスが伝達できる治療の最小値および最大値の範囲に限定される。したがって、単一のデバイスから伝達できる治療効果は、例えば両極端の値(最小および最大)の間で調整することはできるが、検出ユニットが測定したために必要となった場合であっても、最大値を超えることはできない。このような場合のデバイスは、より大きな最大性能を有する他のデバイスと交換しなければならない。このような置換を行うには、少なくともヘルスケアプロバイダー(health care provider)を訪れなければならず、また、性能の低い医療用デバイスを取り除いて、性能の高いデバイスを埋め込む侵襲処置がさらに必要となることもある。
【0006】
単一のデバイスの他の限界は、そのデバイスの検出機能および治療機能が局所的なものとなりうることである。例えば、このようなデバイスは、生理学的な特性または他の特性を患者の1つの場所で測定し、それに応じて1つの特定の血管に薬物を送達することがある。これは、局所的な状態が局所的な治療に値する場合に効果的であろうが、複数の場所で特性を検出し、同様に複数の場所に治療効果を伝達することが必要である場合もある。
【0007】
これらの全ての知見に鑑みて、現在の複雑な機器よりもいっそう高いレベルの機能のために作られた、より故障しにくい医療機器に対する要求がある。このようにより故障しにくい医療機器は、デバイスのネットワークを構成する複数のデバイスから構成されており、各デバイスはより簡単な機能を有しており、他のデバイスとネットワークを組んだ場合に、個々に達成できるよりも、あるいは、従来の医療機器が達成できるよりも複雑な機能を提供する。より故障しにくいデバイスは、このようにして患者の局所または複数箇所において検出機能と治療機能とを同時に提供し、実際の必要性に合わせることができる幅広い範囲の治療効果を融通することが理想的である。
【0008】
〔発明の概要〕
本発明のシステムおよび方法は、複数のデバイスを使用するものであり、これらのデバイスは、患者の体内に埋め込まれている、患者の体の外部に取り付けられている、あるいは、患者の体が置かれている環境に配置されている、または、これらの何らかの組み合わせとなっている。複数のデバイスは、患者に対して希望通りに配置すると、デバイスの動的ネットワークを自動的に組織して、個々におよび集まって機能することができる。最低限、各デバイスは、少なくとも1つの他のデバイスと互いの通信範囲内で通信する。各デバイスは、その通信範囲内で他のデバイスと通信したり、データを計算および格納したり、データを分配したり、治療効果を伝達したり、場合によっては、その通信範囲を超えて複数のデバイスと適当な通信プロトコルを用いて通信することもできる。
【0009】
各コンポーネントデバイスは、本明細書で「デバイス」または「ピアデバイス」とも言うが、患者の体内、体表、または周囲に希望通りに配置された後に、その通信範囲内に配置されている他のコンポーネントデバイスと通信リンクを確立する。ネットワーク内のデバイスのいくつかは、互いに直接つながっており、直接データを交換できる。ネットワークの他のデバイスは直接つながっておらず、このため、データ交換または通信をメッセージホッピングにより間接的に行う、つまり、適当な通信プロトコルを使用して、一連の中間コンポーネントデバイスを介して、またはパイプライン・オペレーションによってメッセージを送受信する。直接的なまたは間接的な通信プロトコルのいずれかでリンクされている全てのコンポーネントデバイスは、同じネットワーク、つまり、同じデバイスの配列に属するさまざまなコンポーネントデバイスを介して、互いにメッセージを送受信できる。
【0010】
各コンポーネントデバイスは、単一の機能または複数の機能の組み合わせを有する。例えば、1つのコンポーネントデバイスがネットワークでの検出ユニットとして主に作用して、治療効果が全くないことであってもよい。このような検出ユニットは、患者の体、または患者がいる環境の物理的、化学的、生物学的、または他の生理学的特性をその測定範囲内で測定する役割を主に担う。この検出ユニットは、次に、得られた測定データをネットワークの他のコンポーネントデバイスに伝達し、この他のコンポーネントデバイスは、このデータを処理して、必要であれば、他のコンポーネントデバイスに機能させ始める。別のコンポーネントデバイスは、検出機能と計算機能を組み合わせた機能を有していてもよく、検出した生データにその場で何らかの処理を施す能力を有していてもよい。コンポーネントデバイスに実装する機能の他の組み合わせも考えられる。もっとも、各コンポーネントデバイスは、ネットワーク内、すなわち、コンポーネントデバイスの配列内で、少なくとも基本的な通信機能(例えば、コマンドを送受信する能力)を有することが好ましく、また、医療機器を構成するデバイスのネットワークは、機械的補助、作用、薬物送達、電気的刺激等の治療効果を少なくとも与え、患者のためになる。
【0011】
ネットワーク内のコンポーネントデバイス間の通信リンクは、ネットワーク内のコンポーネントデバイス間でデータを伝えるのに役立ち、また、検出した、患者または患者が置かれている環境の生理学的特性にしたがってさまざまなコンポーネントデバイスの機能を制御するのに役立つ。このようなデータ伝達により、さまざまなタスクをコンポーネント間に割り当てることができる。ネットワークとの関連においてさまざまなデバイスの間にタスクを割り当てると、デバイスのネットワークで、複雑な計算、通信、エネルギー管理、治療、または他の機能を、個々のデバイスの機能上の能力ではそのように複雑なものを行えない場合であっても、実行可能になる。例えば、十分に多い数のコンポーネントデバイスの間で計算タスクを割り当てることにより、各々のコンポーネントデバイスが内蔵する計算能力が非常に限定的なものであっても、複雑なタスクを遂行することができる。同様に、個々のデバイスの治療能力(例えば、1つのデバイスから放出できる薬物の量)が限られていても、大きな治療効果が達成できる(例えば、十分に多い量の薬物を送達できる)。
【0012】
デバイスのネットワークにおけるタスクの割り当ては、患者または患者が置かれている環境の動的に変化する状態および生理学的特性に合わせるために、動的なプロセスとなっている。所定のコンポーネントデバイスが完全にもしくは部分的に機能しなくなる、破壊されるもしくは除去される、または、新しいデバイスがネットワークに導入されると、ネットワークのコンポーネントデバイスを自動的に組織化することで、現在動作可能なデバイスの間でのタスクの割り当てを新しいネットワークの構成およびネットワーク内で実際に得られるリソースに合わせ、意図したタスク、サブタスク、その他を適時かつ効率的な方法で達成する。本明細書で記載するような、ネットワーク内コンポーネントデバイスの自動組織化方式は、検出、計算、コンポーネントデバイス間でのデータ通信、および、患者のための治療的な機能の送達に関する医療機器全体の順応性を高める。
【0013】
コンポーネントデバイスへのタスク、サブタスク等の割り当ては、通信プロトコルでガイドすることが好ましく、この通信プロトコルは、ネットワークの効率に関してタスクの割り当てを、このようなネットワークを構成している単純なコンポーネントデバイスの配列を考慮して、確実に最適化する。このため、場合によっては、他のデバイスを除外できるようにコンポーネント間で指向性の通信を行える通信プロトコルが用意される。例えば、あるコンポーネントデバイスは、その通信範囲内において、特定のコンポーネントデバイスにメッセージを送ることができ、意図する他のピアデバイスに呼びかけるために、全てのメッセージをネットワーク全体にブロードキャストしなければならないということはない。このようなネットワーク全体へのブロードキャストプロトコルは、明らかに効率が悪く、この非効率は本発明のシステムおよび方法のピア特定通信プロトコル(peer-specific communication protocols)により最小限に抑えられる。このようなピア特定通信プロトコルは、好ましくは、各コンポーネントデバイスについて仮想識別子を用い、この識別子は、匿名性およびアカウンタビリティ(accountability)を非常に必要とする。
【0014】
このため、本発明のシステムおよび方法による医療機器全体のデバイスからなるネットワークを構成するコンポーネントデバイスは、好ましくは、ネットワーク内に通信パイプラインをも組み立て、さまざまなコンポーネントデバイスの各々への個々のタスクの割り当てを伝える。さらに、コンポーネントデバイスは、その通信範囲外にいる他のコンポーネントデバイスにメッセージを送ることができる。あるコンポーネントデバイスから、その発信元のコンポーネントデバイスの通信範囲を越えたところにある1つ以上のコンポーネントデバイスへ、一連の中間コンポーネントを介してメッセージを送ることができる。したがって、ネットワークはメッセージで溢れることはなく、メッセージは、意図する受信コンポーネントデバイスに確実に届くようになっている。コンポーネントデバイスは、好ましくは、局所的な通信のスケジューリングをも行い、このスケジューリングにより、同じ通信リンクを使用する意図したコンポーネントデバイスの間で衝突のない直接通信が可能となるように保証される。このために、メッセージを送る送信側のコンポーネントデバイスが使用するのと同じチャネルで受信側のコンポーネントデバイスが受信を行うように、デバイス間の通信リンクを割り当てることが好ましい。さらに、同じチャネルを使用するコンポーネントデバイスの通信は、好ましくは、メッセージが衝突する可能性を最小にするように、つまり、2つ以上のコンポーネントが同じチャネルに同時にメッセージを送る可能性を最小にするようにスケジュールしなければならない。このように、コンポーネントデバイスは、好ましくは、タスクが確実に適切なコンポーネントデバイスに割り当てられるようにタスクの割り当ておよびスケジューリングをも行い、各コンポーネントデバイスは、意図するタスクがサービス品質要件およびリスク推定(risk estimations)にしたがって可能な限り少ないリソースで達成されるように自身のタスクのスケジューリングを行う。コンポーネントデバイスはまた、好ましくは、エネルギー消費および重要なリソースの使用が最小となるようにタスクの割り当ておよびスケジューリングを行い、これにより、本発明のシステムおよび方法による医療機器を稼働させる総「費用」を減らす。
【0015】
コンポーネントデバイスのネットワークは、さまざまなレベルの、ピアデバイスのピアグループからなる階層構造を一般に含んでおり、このピアグループの階層構造が全体ピアグループを構成しており、全体ピアグループがさらに本発明のシステムおよび方法による医療機器を構成している。各ピアグループレベルには、実行すべきタスクまたは機能が割り当てられている。ピアグループ内のピアデバイスは、サブピアグループにさらに形成されることができ、このサブピアグループはサブピアデバイスから構成されており、このサブピアデバイスは、サブタスクまたはサブファンクションを解決して、最終的に全体ピアグループのタスクをより効率的に実行する。サブピアグループにおけるサブピアデバイスは、さらにサブサブピアグループを形成してもよく、このサブサブピアグループはサブサブピアデバイスを有し、このサブサブピアデバイスは、サブサブタスクまたはサブサブファンクション等を実行して、最終的に全体ピアグループの意図したタスクまたは機能が実行されるようにする。さまざまなレベルのピアグループは、要するにデバイスの論理的なグループであり、この論理的なグループは、データを検出、伝達、計算および分配し、ならびに、このようなデータに基づいて治療効果を送達するために、患者の体内、体表、または周囲に創設することができる。当業者には分かるはずであるが、ピアグループ(Peer Group)とは医療機器の全体ピアグループを意味し、一方、ピアグループ(peer group)、サブピアグループ(sub-peer group)、またはサブサブピアグループ(sup-sub-peer group)等は、それらに関連するそれぞれのタスクもしくは機能、サブタスクもしくはサブファンクション、または、サブサブタスクもしくはサブサブファンクション等を本明細書で記載する医療機器の関連の範囲内で実行するためのデバイス、サブデバイス、またはサブサブデバイス等のさまざまなレベルを、本明細書でそのさまざまなレベルに特に繰り返し言及しない場合であっても、含むものと理解されている。
【0016】
同じピアグループにあるピアデバイスは、互いに物理的に近くにいる必要はなく、(検出、治療効果等のような)同様の能力を有する必要もないが、普通、ピアグループ内に少なくとも一連のピアデバイスを有し、この一連のピアデバイスを介してタスクまたは機能をピアグループのピアデバイスの間で伝えることができる。さらに、普通、好ましくは、求められている各々のピアグループのタスクまたは機能のためのピアグループに、所与の能力を有する2つ以上のピアデバイスがある。ここで、タスクおよび機能は、任意の行為であってよく、1つのピアデバイスから他のピアデバイスにデータを伝える、データに何らかの特定の計算を施す、何らかの特性を検出する、または、何らかの治療効果を施すなどであってもよい。ピアグループのピアデバイス、サブピアグループのサブピアデバイス等は、本明細書で詳述するさまざまなタスクまたは機能を行うために患者の体内、体表、または周囲に配置することができる。さまざまなタスクまたはサブタスク等の全てが、全体ピアグループ内のさまざまなレベルのピアグループのうちで適切に対応するピアデバイス、サブピアデバイス等に受け入れられ、実行されると、全体ピアグループのタスクの実行が開始可能となる。全体ピアグループのタスクを実行する前にさまざまなタスクを包括的に割り当てることで、全体ピアグループのタスクが最終的に実行される前に、全体ピアグループ内のさまざまなレベルのピアデバイスの間で少なくとも最低限の信用および信頼性が確実に得られる。ピアグループ(peer group)のタスクを実行する前にタスクを包括的に割り当てることでも、適切に割り当てられたタスクを効率よく実行する性能およびリソースを有するさまざまなコンポーネントデバイスの間でさまざまなタスクを一定の順序に配列することにより、ピアグループが割り当てられたさまざまなタスクを実行する効率が上がる。よって、いったんピアグループ(peer group)のタスクを実行する用意ができたら、ピアデバイスまたはサブピアデバイス等は、予め定められた、最適化してある順序およびスケジュールにしたがってデータを受信し、処理することにより、割り当てられたタスクまたは機能等への取り組みを開始して、意図する治療効果を達成することができる。よって、各デバイスには、データ、アルゴリズムおよび/またはプロトコルが入っていて、これらにより、デバイスは、ネットワーク内に分散しているデータの一部または全てを処理して、データの一部または全てを交換、変更、または再構成することができ、また、ネットワーク内のさまざまなデバイスからのデータ格納、計算、通信、エネルギー供給、タイミング、検出および/または治療効果送達を自律的に割り当てることができる。
【0017】
デバイスのさまざまなレベルにおけるタスク、サブタスク等は、まれに1回だけ行うタスクであることもあれば、所与のリスタート時間で繰り返し実行できるタスクであることもある。前者の場合、タスクは、ピアのチェーン1つだけで解決することができ、このピアのチェーンでは、各ピアがその後継ピアを信用する。しかし、1つのデバイスが故障するとそのチェーンが壊れ、そのチェーンが修復されるまでタスクの実行が止まる。他方、後者の場合、ピアデバイスのチェーンが1つだけでは、タスクのリスタート前に、割り当てられた時間内に意図したタスクを実行するには不十分である。もっとも、コンポーネントデバイス間のパイプライン通信では、下流のコンポーネントデバイスで意図したタスクの実行を続けられるようにしつつ、同じタスクの実行を上流のコンポーネントデバイスでリスタートすることで、この欠点は克服することができる。後者の状況は、例えば、一部のピアデバイスで1ms毎に検出した検出情報に基づいて、一部のピアデバイスが1ms毎に計算された量の薬物を送達する場合に起こることがある。しかし、送達すべき薬物の量の計算は、得られた検出情報に基づいて1msより長い時間をかけて行う。このような場合、タスクはパイプラインタスクと呼ばれる。パイプラインタスクは、パイプライン・オペレーションで実行するのが一番よく、このパイプライン・オペレーションは、別の同様なタスクが開始されていても、現在のタスクを実行することを可能にする。
【0018】
サバイバブル・パイプライン・プロトコル(Survivable Pipeline Protocols)(SPP)は、このようなパイプラインタスクまたはオペレーションの達成をフレームワークを与えることにより容易にするものであり、このフレームワークは、さまざまなレベルのピアグループを組織、かつ、維持して、デバイスのネットワークに中央コーディネーター(central coordinator)がない状態でこのようなパイプラインタスクを実行する。よって、SPPにより、例えば、タスクが実行される患者の体内、体表、または周囲において起るピアデバイスの利用可能性における変化、例えばあるピアデバイスが故障したり、新しいピアデバイスがネットワークに導入されたりした場合などに、ピアグループが適応することができる。このように、SPPプロトコルは、ピアデバイスのネットワークに中央コーディネーターがない状態でデバイスのピアグループを加える、取り去る、および/または再組織化するためのフレームワークを提供する。このようにして、ピアデバイスのネットワーク等は、さまざまなレベルのピアデバイス等の利用可能性、性能および信頼性の変化、新しく導入されたピアデバイスの利用可能性、または、処理速度のようなタスクの要件、タスクの実行順序、治療効果の量等の変化に、中央コーディネーターデバイスに頼ることなく、継続的に適応する。中央コーディネーターデバイスを導入すると、ネットワークは脆弱になり、存続しにくくなる。これは、中央コーディネーターが機能しなくなると、ネットワーク全体が混乱し、機能しなくなる可能性があるからである。
【0019】
一般に、全体ピアグループ内のさまざまなレベルのピアグループのタスクもしくは機能、またはサブタスクもしくはサブファンクション等の全てが実行されたときに、全体ピアグループのタスクが完了する。タスクの実行の後、タスクの実行に従事したピアデバイス等は、他のピアデバイスとの間の関係を更新することができる。もちろん、実行したタスクが完了したら、サブピアデバイス等の間の関係についての同じような更新が同様に行われる。
【0020】
理想としては、コンポーネントデバイスは、ピアデバイスのどれにでもタスクまたはタスクの一部を割り当てることに伴うリスクを評価できるように備えられている。これにより、コンポーネントデバイスは、所与のタスクを首尾よく達成することが最もできそうな一組の他のコンポーネントデバイスを選択し、このピアデバイスのサブセットにタスク関連メッセージを送ることができる。
【0021】
コンポーネントデバイスは、無線チャネルのような安全性のない媒体で相互に通信することであってもよい。しかし、デバイス間で交換する情報には個人的な秘密データが含まれているかも知れないので、データの保全性および機密性に関する基本的な安全行為に加えて、通信プロトコルにある程度の匿名性およびアカウンタビリティ(accountability)があることが好ましい。匿名性では、コンポーネントデバイスが情報を送信した後に特定されないこと(例えば、情報を、それを発信したデバイスまで遡ることができない)、および、仮想識別子(例えば、デバイスからの通信に含まれている識別子コード)を、それを発信したデバイスとリンクしたり、そのデバイスまで遡ったりできないことを要する。このように匿名性は、ネットワーク内のデバイス間で伝えられる情報に対する安全についてのさらに別の層を与え、ネットワーク内の個々のコンポーネントデバイスをターゲットとした攻撃を行うことをより困難にする。他方、アカウタビリティ(accountability)では、ネットワークの規則および動作手順にしたがって機能を停止したコンポーネントデバイスを特定することができ、ネットワークにおける残りのコンポーネントデバイスの有効性を損なうことなく、ネットワークから追放する、すなわち、接続を切ることができる必要がある。匿名性およびアカウンタビリティは、結局互いに相いれない要件である。もっとも、これらの要件を部分的に融和させることも可能であり、また、本明細書ではそれを考えている。よって、匿名性とアカウンタビリティは、コンポーネントデバイス、患者および介護人を含む、ネットワークの全ての構成要素に広めることができる。
【0022】
ピアデバイス間の直接通信は、非対称および対称暗号法に基づいて行われる。最初に非対称暗号法を用いて信用を確立し、ピア間の通信チャネルを確保する。一方、対称暗号法は、その後、データの通信中に使用する。プリティ・グット・プライバシー(Pretty Good Privacy)プロトコルは、メッセージの保全性、機密性、認証、否認防止、匿名性、およびアクセスコントロールを与える非対称および対称暗号方法の一例である。もう一つの例は、アノニュモス・バット・アカウンタブル・セルフオーガナイジング・コミュニティ(Anonymous But Accountable Self Organizing Communities)であり、これは、先ほどのリストを責任をもって広める。非対称および対称暗号法に基づいた非常に多くの他の方法も同様に公知である。
【0023】
したがって、共通のピアグループ、サブピアグループ等の中にある対応するレベルのピアデバイスは、暗号関係を使って互いに通信して、ネットワーク内のデバイス間に信用のウェブを確立し、また、ピアグループ内のデバイスで優先順位が付けられたタスクまたは機能を実行、維持し、また、デバイス間の信用関係を更新するためにサバイバブル・パイプライン・プロトコル(Survivable Pipeline Protocols)を用いて自動組織型デバイスの階層をさまざまなレベルで確立する。その後、全体ピアグループがその意図するタスクまたは機能を実行する。意図するタスクまたは機能とは、検出した生理学的特性に基づいた1つ以上の薬物の送達または刺激の送達等であってもよいし、全体ピアグループにおけるさまざまなレベルのデバイスおよびピアグループの中で生じたデータの通信および計算であってもよい。このように、暗号法およびサバイバブル・パイプライン・プロトコルは、本発明のシステムおよび方法による医療機器のネットワークにおける少なくとも1つの全体ピアグループ内のさまざまなレベルの自動組織型ピアデバイス間でのデータの通信を調整するのに用いられる。
【0024】
デバイスの間である程度のレベルの匿名性およびアカウンタビリティを提供する簡単なプロトコルは、プリティ・グッド・プライバシー(PGP)である。PGPは、ピアデバイス、サブピアデバイス等の間の公開キー秘密キー暗号法によって確保された関係に基づいたものである。秘密キーは、データが関連する発信元ピアデバイス、サブピアデバイス等を認証する。一方、公開キーは、与えられたピアデバイスをアイデンティティーデータ(identity data)で符号化する。これにより、与えられたピアデバイスの同一性を確認することができ、与えられたピアデバイスに伝達しようとしているデータを承認する権限を与えるのに必要な秘密キーをその与えられたピアデバイスが所有しているかどうかを確かめることができる。
【0025】
PGPでは、各ピアデバイス、サブピアデバイス等の公開キーに、少なくとも1つの他のピアデバイス、サブピアデバイス等の秘密キーで署名し、これにより、それらのピアデバイス、サブピアデバイス等の間で信用を生む。したがって、1つ以上の公開キーの署名の期限が切れるまで、または、ピアデバイス、サブピアデバイス等が不適切に実行されるまでは、信用がこれらのデバイス間で維持される。さらに、PGPを使うと、発信元ピアデバイス、サブピアデバイス等は、他のピアデバイス等と先に詳述したように直接通信することもできるし、あるいは、発信元ピアデバイスも、他のピアデバイスも、互いに直接信用した公開キーを有していなくても、中間のピアデバイスの公開キーが発信元のピアデバイスおよび他のピアデバイスで信用されていれば間接的に通信することもできる。このような信用のウェブは成長して、医療機器のネットワーク内のさまざまなピアデバイス等をつなぐことができ、これにより、最終的に各ピアデバイス等がチェーン内の直接的または間接的に信用された各ピアデバイス等と通信することが、どれか1つのピアデバイス等にネットワーク内のさまざまなピアデバイス等の全ての公開キーおよび秘密キーに関する情報を格納させることなく行うことができる。よって、パブリック・キー・インフラストラクチャー(Public Key Infrastructure)のような信用できる第3者機関は、もはや必要ない。
【0026】
ピアデバイス等がコミュニティの規則に従って作動しなかった場合には、他のピアデバイス等は、先の署名の期限が切れた後に、この悪意のピアデバイスの公開キーに署名をしない。この悪意のピアデバイス等は、信用のウェブにおけるピアデバイス間ではもはや信用されず、それ故に、デバイスのネットワークから排除される。2つのピアデバイス等が互いに通信することに同意、つまり、信用を確立したら、信用したピアデバイス間の通信を行うのにこれから使用する対称キーを生成することができる。この後、ピアデバイスは、より面倒な公開キー秘密キー関係の代わりに、その対称キー関係を使ってデータを符号化、復号化する。いったん確立されれば、対称キー関係は、ピアデバイスに要求する計算量が少ないが、通信が継続している間、同等またはよりいっそうの安全性を保証する。
【0027】
このように、本発明のシステムおよび方法は、患者の体内、体表、または周囲の生理学的特性を検出し、機能的に頑丈な医療機器を使って患者に対する治療効果を達成する手段を提供するものである。医療機器が機能的に頑丈であるのは、この医療機器が比較的簡単なコンポーネントデバイスのネットワークとして構成されていて、そのデバイスが、動的な共同階層構造を自動的に組織することができさまざまなレベルのタスクおよび機能を達成するからである。よって、いずれか1つのコンポーネントデバイスが故障してもネットワークの性能に大きな影響はなく、医療機器のネットワーク全体の機能的な能力がほんの少し低下するだけである。それ故に、理論上は、ネットワークを構成するコンポーネントデバイスの1つまたはいくつかが故障した場合でも、医療機器は機能を完全に失うことはない。各コンポーネントデバイスは、比較的安価で簡単な構造を有することができ、この構造は、個別には単純な機能を実行するが、集合的には、ネットワーク内でまとめると、より複雑な機能の実行に寄与することができる。コンポーネントデバイスが小さいので、患者の体に埋め込んだり、取り付けたりした場合に患者に侵入する体積が小さくなっている。コンポーネントデバイスが小さいので、体の全体へのデバイスの分散にも適応し、複数の場所で同時に、かつ、共同して検出し、または、治療効果を達成する。
【0028】
さまざまな新規な構造上の詳細および部品の組み合わせを含む本発明の上記の特徴および他の特徴を添付図面および特許請求の範囲を参照しながら以下により詳細に記載する。当然のことながら、本明細書に記載した本発明のさまざまな典型的な実施形態は、説明のためだけに示されたものであり、限定するものとして示したものではない。本発明の原理および特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、さまざまな代替実施形態に利用することができる。
【0029】
本発明の装置および方法のこれらのおよび他の特徴、態様、ならびに利点は、以下の記載、添付した特許請求の範囲、添付図面を考慮すればよりよく理解できる。
【0030】
〔発明の詳細な説明〕
本明細書で説明する本発明のシステムおよび方法は、例えば生き物の1つまたは複数の解剖学的な臓器の細胞構造をまねることを意図した医療機器を含むものである。この医療機器は、2つ以上の比較的簡単なコンポーネントデバイスから構成されていて、これらコンポーネントデバイスは、さまざまなレベルに自動的に組織されて、コンポーネントデバイスのネットワークを階層状に配列する。階層構造のネットワークは、この階層状ネットワークのさまざまなレベルに対応付けられたタスクまたは機能を完了させることにより、患者に治療効果を送達するなどの医療に関連したタスクまたは機能を実行する。このため、各デバイスには、データ、アルゴリズムおよび/またはプロトコルが入っていて、これらによりデバイスは、ネットワーク内で検出し、格納し、分散させたデータまたは情報の一部または全てを処理して、データの一部または全てを交換、変更または再構成でき、また、ネットワーク内のさまざまなデバイスから送達されたデータストレージ、計算、通信、エネルギー供給、タイミング、検出および/または治療的な効果を自律的に割り当てることができる。
【0031】
ネットワークに設けるコンポーネントデバイスのレベルの数はいくつであってもよいが、本明細書の説明では、ネットワーク内に2つまたは3つのレベルを有するネットワークに概して言及する。そのようなレベルは、だいたい、全体ピアグループ(overall Peer Group)、サブサブピアグループ(sub-sub-peer groups)を含む一組のサブピアグループ(sub-peer groups)を含み、所望の一群のコンポーネントデバイスが各レベルに対応している。もちろん、当業者にはすぐわかるように、ネットワークは、さらに別の全体ピアグループと、付随する、サブピアグループ、サブサブピアグループ、およびコンポーネントデバイスからなる複数のレベルをさらに含んでいてもよいが、本明細書の非限定的な説明では、概して、ただ1つの全体ピアグループと、その全体ピアグループに付随するさまざまなレベルについて述べる。1つのコンポーネントデバイスは、いくつかのピアグループに同時に関与することができる。さらに、1つのコンポーネントデバイスは、ピアグループ、サブピアグループ、サブサブピアグループ等のレベルの機能の実行に寄与しうる。これは、デバイスの階層構造が特にあるタスクのために設けられたものであり、他の階層構造が他のタスクを実行する立場となりうるからである。
【0032】
コンポーネントデバイスの少なくとも1つは、検出ユニットである。デバイスのこのようなネットワークが主に検出ユニット型のコンポーネントデバイスから構成されている場合、このネットワークは主に検出機能を遂行する。このネットワークで取得された検出情報は、次に他の医療機器または医療関係者に送られる。デバイスのネットワークの他の実施形態では、少なくとも1つのコンポーネントデバイスが主に検出機能を実行し、少なくとも1つの他のコンポーネントデバイスが治療エフェクターユニット(therapeutic effector unit)である。この治療エフェクターユニットからは、検出ユニットからネットワークを通って治療エフェクターに伝えられたデータに応じて、患者に意図した治療効果が送達される。検出ユニットおよび治療エフェクターユニットとは異なる、同様なタスクもしくは機能または他のタスクもしくは機能を実行するさらに別のコンポーネントデバイスもまた、本発明のシステムまたは方法によるコンポーネントデバイスのネットワークを構成することができる。
【0033】
図1は、サブピアグループPG11、PG12、およびPG13からなる全体ピアグループPG1を形成するデバイスネットワークを模式的に図示している。全体ピアグループPG1が実行すべき具体的なタスクまたは機能は、サブピアグループPG11、PG12、PG13に割り当てられている。各サブピアグループPG11、PG12、PG13は、(PG111、PG112のような)サブサブピアグループおよび/またはコンポーネントデバイス(例えばD1からD4;D2、D4、D5;D3、D5、D6)からさらに構成されている。各コンポーネントデバイスD1からD6が全体ピアグループPG1の階層構造の異なる複数のレベルに属することができるように、各コンポーネントデバイスD1からD6は、全体ピアグループPG1内の1つ以上のサブピアグループPG11、PG12、PG13に属することができる。各サブピアグループPG11、PG12、PG13には、生理学的特性を検出する、データを計算する、または治療効果を患者に送達するといった実行すべきサブピアグループのタスク(サブタスク)または機能(サブファンクション)が割り当てられている。各コンポーネントデバイスD1からD6は、それが関連付けられているサブピアグループまたはサブサブピアグループという状況内で実行するコンポーネントデバイスのタスクまたは機能、例えば、患者または患者が置かれている環境の生理学的特性を検出する、データを計算する、データを分配する、データを他のコンポーネントデバイスに送るなどといった、タスクまたは機能を割り当てられている。よって、コンポーネントデバイスD1からD6、ピアグループPG11、PG12、PG13およびサブピアグループPG111、PG112のネットワークは、全体ピアグループPG1のさまざまなレベルを形成する。このさまざまなコンポーネントデバイスD1からD6は、サブピアグループまたはサブサブピアグループに関連付けられた、対応するタスクまたは機能の実行に貢献するとコンポーネントデバイスが決めたら、ピアグループのいずれかのレベル、つまりサブピアグループまたはサブサブピアグループに参加する。1つのサブピアグループのタスクが、1つのコンポーネントデバイスまたは1つのサブピアグループで効果的に実行するにはあまりに複雑である場合、そのタスクをもっと小さい部分(サブサブタスクまたはサブサブファンクション)に分解して、コンポーネントデバイスが入っている(PG111やPG112のような)サブサブピアグループを作り、対応するサブサブタスクまたはサブサブファンクションを実行することができる。全体ピアグループPG1、サブピアグループPG11、PG12、PG13、サブサブピアグループPG111、PG112、およびコンポーネントデバイスD1からD6は、典型例にすぎず、本発明のシステムおよび方法によるデバイスのネットワークが、少なくとも2以上のコンポーネントデバイスからなる少なくとも1つの全体ピアグループをいくつでも含むことができることは、当業者には分かるはずである。さらに、さまざまなピアグループのレベル、つまりサブピアグループ、サブサブピアグループ等のいずれも、または全ては、図1に示すように、さらに下位のレベルからさらに構成されていてもよいことも当業者には容易に分かるはずである。図1では、例えば、サブピアグループPG11がさらにサブピアグループPG111、PG112から構成されている。もちろん、設けられていれば、ピアグループの各レベルには、対応する、実行すべきレベルのタスクまたは機能を有するであろう。
【0034】
一般に、上位レベルのタスクまたは機能は、下位レベルのタスクまたは機能が全て完了するまでは実行されない。よって、理論的には、サブピアグループのサブタスクまたはサブファンクションのそれぞれが完了すると、全体ピアグループを構成するさまざまなレベルのコンポーネントデバイスおよびピアグループにより検出され、計算され、また、その間で伝達された生理学的特性に基づいて、ネットワークが意図する治療効果を患者に送達しおえている。
【0035】
再び図1を参照すると、例えば各コンポーネントデバイスD1からD6は、少なくとも1つのコンポーネントデバイス・タスクまたは機能を実行する。よって、個々のデバイスと、さまざまなレベルのピアグループ、つまり、サブピアグループ、サブサブピアグループ等とが、より大きな全体ピアグループ内で、まとまって作業を行い、より複雑なタスクまたは機能を実行するように、各コンポーネントデバイスは、最低限、ネットワーク内の少なくとも1つの他のコンポーネントデバイスと通信を行う。したがって、各コンポーネントデバイスは、生理学的特性または他の特性を検出する、データを計算し格納する、データを分配する、ネットワーク内の1つ以上の他のデバイスと通信するなど、1つ以上の機能を実行する。コンポーネントデバイス間の通信は、コンポーネントデバイスがデータ信号またはメッセージの受信または送信のどちらかを行うが、送信および受信の機能の両方を行わない範囲の一方向のものであってもよいし、あるいは、コンポーネントデバイスがデータ信号またはメッセージを少なくとも1つの他のコンポーネントデバイスとで送信および受信するような、相互通信(reciprocal)、または双方向通信あってもよい。
【0036】
患者、患者の周囲、またはこれらの何らかの組み合わせにコンポーネントデバイスを設置することで、患者の体内、体表または周囲のさまざまな場所で比較的簡単なタスクおよび機能を実行することが可能になる。コンポーネントデバイス間の通信リンクは、信用を確立するのに役立ち、また、ネットワークのそれぞれのピアグループ内のさまざまなレベルのコンポーネントデバイスの間でさまざまなタスクまたは機能を割り当て、優先順位を付けるのに役立つ。よって、ネットワーク内のコンポーネントデバイスは、コンポーネントデバイス間に存在する通信リンクにより組織化される。デバイス間の通信は、信用されたコンポーネントデバイス間の非対称または対称暗号によるリンクを使った直接的なものであってもよいし、暗号化したリンクとパイプラインプロトコル(pipeline protocol)を用いた中間コンポーネントデバイスを使った間接的なものであってもよい。いずれにしても、それぞれのレベルのピアグループを構成するコンポーネントデバイス間で実行される簡単なタスクまたは機能のコミュニケーションにより、コンポーネントデバイスのネットワークでより複雑な医療機能を実行することが可能となる。より複雑な医療機能とは、器官の機能を人工的に模倣または制御することや、化学的または電気的刺激で神経、筋骨格または他の器官の機能における制御を誘発すること、あるいは、ネットワークのコンポーネントデバイスが検出、処理および伝達した生理学的特性に基づく応答性のよいモニタリングをいう。もちろん、全体ピアグループが2つ以上設けられている場合には、ピアグループ間で同様に通信を行ってもよい。
【0037】
コンポーネントデバイスが互いの通信範囲内にある場合、これらのコンポーネントデバイス間に張られた範囲内通信のリンクにより、コンポーネントデバイスが互いに直接通信可能になる。このことは、図2に示されており、図2ではコンポーネントデバイスの対D1からD2と対D2からD3が、それぞれ互いの通信範囲内にあることから、互いに直接通信するができる。ここで、D1を包含する通信範囲は点線の円で示されており、D3を包含する通信範囲は2点鎖線で示されている。実線の円は、デバイスD2の通信範囲を表している。なおも図2を参照すると、D1とD3が互いに直接通信できないことが明らかである。これは、D1とD3の各々が、他方の通信範囲の外にいるからである。コンポーネントデバイス間の範囲内直接通信では、前述した非対称および対称暗号化方式を使用する。これらの暗号化方式は、プリティ・グット・プライバシィー(Pretty Good Privacy 、PGP)プロトコルおよびアノニュモス・バット・アカウンタブル・セルフオーガナイジング・コミュニティーズ(Anonymous but Accountable Self-Organizing Communities、AASOC)プロトコルのようなプロトコルで行うことができる。このような方式およびプロトコルは、コンポーネントデバイス間で信用を確立するのに役立ち、また、互いの通信範囲内にあるコンポーネントデバイス間で任意のデータを確実に送信することに役立つ。
【0038】
コンポーネントデバイスの通信範囲は、予め定めることもできるし、医療機器全体の条件にしたがって動的に合わせることもできる。例えば、あるコンポーネントデバイスが(例えば、予め定められたデバイス数より少ない)ほんのわずかの他のデバイスとしか直接通信できない場合、そのデバイスの最大通信範囲を広げることができる。これに対して、あるデバイスが(例えば、予め定められたデバイス数より多い)多くの他のデバイスと直接通信できる場合、そのデバイスの通信範囲を縮小して、通信距離を短くすることによりエネルギーを節約することができる。図3aは、コンポーネントデバイスD1が、その通信範囲を元の範囲(実線)から新しいより広い通信範囲(点線)に広げるべきである場合の一例を示している。通信範囲をこのように広げることは、求められる範囲内の装置の数が少なくとも2つであるが、3つ以上の装置と通信を行うとネットワーク全体の効果と感度が向上するときに、多くの場合、適切となる。図3bは、コンポーネントデバイスD1がその通信範囲を元の範囲(実線)から新しいより狭い通信範囲(点線)に縮小すべき場合の一例を示している。通信範囲をこのように縮小することは、範囲内のデバイスの数が例えば5つもあるが、通信をもっと少ないデバイスに制限することにより、ネットワークの効果および感度が向上するときに適当となりうる。実際の通信範囲は、通信を行っているコンポーネントデバイスの物理的な特性、および/または、その通信に特有の特性によっても決まるものであり、このような特性としては、通信媒体(無線周波数、赤外線、有線等)、通信用のハードウェア(アンテナ、ワイヤ、IRセンサーの種類等)、通信に利用できるエネルギー(利用できるエネルギーが少ないと、一般に、通信範囲が狭いことが好ましいことを意味する)、許容される最大伝達誤りビットレート(maximal transmission error bit rate)等、または、関係するさまざまなコンポーネントデバイスの他の特性がある。コンポーネントデバイスの通信範囲は、例えば、通信電力を増減することにより、用いる通信形態を変更することにより、デバイスの物理的な位置を変えることにより、または本明細書で検討する他の特性を変えることにより、変更することができる。
【0039】
再び図2を参照すると、コンポーネントデバイスD1およびD3の対が互いの通信範囲外にある場合、そのコンポーネントデバイス間で範囲外通信またはマルチホップ通信を行って、さもなければ範囲外であるコンポーネントデバイスD1およびD3を互いにつなげる。コンポーネントデバイスD1およびD3の間の範囲外通信は、例えば、1つ以上の中間コンポーネントデバイスを介して行われる。中間コンポーネントデバイスは、この場合はD2であるが、さもなければ範囲外であるコンポーネントデバイスD1およびD3を互いにつなげる。コンポーネントデバイス間の範囲外通信は、SPPのようなパイプラインプロトコルでネットワーク内に構成かつ維持することができる。
【0040】
一般にコンポーネントデバイスは、同じピアグループ、つまり、PG11またはPG12にいれば、互いに通信することができる。もっとも、1つのネットワーク内にある全てのコンポーネントデバイスは、メインである全体ピアグループ(図1のPG1)内にある。したがって、全てのコンポーネントデバイスは、理論上、全体ピアグループ内で全ての他のコンポーネントデバイスと直接的に、または間接的に通信することができる。しかしながら、ネットワークの効率をできるだけ良くするには、コンポーネントデバイス間の通信を局所に限定することが好ましい。コンポーネントデバイスの通信を局所に限定するには、理論上は、デバイスがネットワークの階層構造における最も低い共通レベルのピアグループ内で通信しなければならない。そこで、図4は、コンポーネントデバイスD1およびD2が全体ピアグループPG1ではなく、サブピアグループPG11を介して互いに通信することを示している。サブピアグループPG11は、コンポーネントデバイスD1およびD2が共有しているピアグループで最も低いレベルであるので、コンポーネントデバイスD1およびD2は、サブサブピアグループPG111またはPG112を介して互いに通信することが、例えそれらのサブサブピアグループも全体ピアグループPG1の一部を構成しているとしてもできない。したがって、どのような場合であっても、通信を可能な限り局所に限定し、効率よくするには、コンポーネントデバイスD1およびD2がPG1を介してではなく、PG11を介して通信をしなければならない、
【0041】
非対称暗号法は、一般に、それぞれのピアグループ内にあるコンポーネントデバイス間での信用を確立するのに対して、対称暗号法は、一般に、最初に非対称暗号法を使ってコンポーネントデバイス間の信用を確立した後に、それぞれのピアグループ内のコンポーネントデバイス間でデータを交換する権限を与える。他方、サバイバブル・パイプライン・プロトコル(Survivable Pipeline Protocols、SPP)は、ネットワーク内で優先順位が付けられたタスクまたは機能、およびコミュニケーションパイプラインを適切に実行、維持するのに用いられ、また、自動組織型コンポーネントデバイスの階層構造を確立することにより(さまざまなレベルのピアグループからなる階層構造を作り、他のコンポーネントデバイスについての局所情報(local information)を保持することにより)、コンポーネントデバイス間の信用関係を更新するのに用いられる。それぞれのレベルのピアグループ内のコンポーネントデバイスがそれぞれのタスクまたは機能を遂行し終えたら、それぞれのピアグループタスクは実行されたことになる。通信の安全性および匿名性は、本発明のシステムおよび方法による医療機器のネットワークで利用する、PGP、AASOCに基づいた暗号通信法により向上している。
【0042】
PGP暗号法によれば、例えば図5に示すように、コンポーネントデバイスD1は公開キーK1aおよび秘密キーK1bが与えられていて、デバイスD2は公開キーK2aおよび秘密キーK2bが与えられている。K1aがK2bの上にあり、デバイスD2からデバイスD1へ向かっている矢印で明示したように、例えばコンポーネントデバイスD1の公開キーK1aにコンポーネントデバイスD2の秘密キーK2bで署名がされると、コンポーネントデバイスD2からD1に対する信用が確立される。同様に、K2aがK1bの上にあり、コンポネートデバイスD1からD2へ向かっている矢印で明示するように、コンポーネントデバイスD2の公開キーK2aにコンポーネントデバイスD1の秘密キーK1bで署名がされた場合には、コンポーネントデバイスD1からD2に対する信用が確立される。このようにコンポーネントデバイス間で信用が確立されると、コンポーネントデバイスD1とD2の間の双方向通信が容易に認証される。他のコンポーネントデバイスも、その間で信用と通信の関係を確立するために、同様の公開キーと秘密キーとが対応付けられている。医療機器の、信用されたコンポーネントデバイスからなるネットワークは、コンポーネントデバイスがそれら自身の秘密キーを使って、信用したコンポーネントデバイスの公開キーに署名をすることで、同様に確立される。
【0043】
デバイス間で公開キー秘密キー関係が確立されたら、コンポーネントデバイス間で通信を行うために、図5に示すように、コンポーネントデバイスD1とD2の間で生成された対称キーK1−2のような対称キーを生成することができる。対称キーは、生成されれば、信用されたデバイスの間でより高速、簡単、安全な通信を可能にし、これにより、コンポーネントデバイスが、全体ピアグループPG1内のあらゆる他の信頼されたコンポーネントデバイスと通信をすることができる。対称キーを用いたメッセージの暗号化と復号化は、コンポーネントデバイスに入っている公開キー/秘密キーアルゴリズム、暗号法またはプロトコルを使ったメッセージよりも、通常、コンポーネントデバイス間でより簡単、効率的に処理され、これにより、いったん対称キーの準備ができたら、コンポーネントデバイス間の通信の効率が上がる。
【0044】
次に、図6を参照すると、例えばピアグループPG12が点線で示されていて、コンポーネントデバイスD4とD5は対称キーK4−5を有しているように示されていて、デバイスD4とD5の間で信用が確立されていて、通信可能であることが示されている。同様に、コンポーネントデバイスD5およびD2は対称キーK5−2を有するとして示されていて、その間に信用が確立されていて、通信が可能であることを示している。他方、コンポーネントデバイスD4とD2は、公開キー/秘密キー関係(K4aおよびbとK2aおよびb)を使ってその間を通信可能としていることが示されている。ただし、この場合、デバイスD2の公開キーK2aはデバイスD4の秘密キーK4bで署名されておらず、また、公開キーK4aは秘密キーK2bで署名されていない。にもかかわらず、コンポーネントデバイスD2−D4間の信用は、矢印K4−K2で示すように推定することができる。これは、コンポーネントデバイスD4がD5を信用しており、コンポーネントデバイスD2がD5を信用しており、D5がD4とD2の両方を信用しているからである。したがって、D4とD2は、秘密キーK5bによる公開キーK4aとK2aのそれぞれの署名に基づいて、コンポーネントデバイスD2とD4が互いに信用できると結論することができる。よって、コンポーネントデバイスD4とD2の間で前述したように公開キー/秘密キー関係を用いて十分な信用が確立されたら、コンポーネントデバイスD4とD2の間に対称キーK2−4が生成される。このように間接的に(「推論して」)信用を確立することにより、コンポーネントデバイスによっては、他の全てのコンポーネントデバイスの公開キーに署名し、格納することを控えつつも、あるデバイスとの間での信用確立に関与することができ、一方、頻繁に通信を行うコンポーネントデバイスのみは、他のコンポーネントデバイスの公開キーの署名、格納に至る。
【0045】
ネットワークのピアグループを構成するさまざまなコンポーネントデバイスにPGP暗号法とAASOCを使用すると、コンポーネントデバイス間で伝達されたデータの対内的および対外的なアカウンタビリティをさらに保証するのに役立ち、コンポーネントデバイス間で伝達されたデータのプライバシーを維持し、秘密保持を守るのに役立つ。センサーのネットワークは、特に医療の応用分野において、患者や周囲から、個人的かつ機密性の高い多くの情報を収集するので、ネットワークに格納される情報の保護と、ネットワークでの通信の安全および匿名性とが強く望まれる。さらに、悪意のあるユーザーおよびデバイスに対するアカウンタビリティが設けられていることもそれ故に好ましい。
【0046】
ネットワーク内のコンポーネントデバイスは比較的簡単なものであり、(例えばPC、PDAまたは携帯電話と比べると)演算能力が比較的低く、エネルギー供給も比較的限られているので、ネットワークを安全にするためにデバイスが利用するいかなるアルゴリズムも、エネルギー消費と、演算のためのリソース要求を最小にするように選択し、実行することが理想的である。PGP暗号法は、先に詳述した非対称・対称キー暗号法によるアプローチを用いてこれらの目的を達成するのに役立つものである。PGP暗号法では、非対称な公開キー秘密キー関係によりデバイス間の信用関係が始まり、この関係は、一般により高速で効率的である対称キーと、それに付随するアルゴリズムとに、その後、置き換えられる。コンポーネントデバイスの秘密キーで他のコンポーネントデバイスの公開キーにした署名は、このようなデバイスおよびデバイス間で伝達される情報およびデータの同一性および安全性を保証するのに役立ち、ネットワーク全体の信頼性と効率を向上させる。したがって、デバイス間の信用が崩壊した場合のように、ネットワークと医療機器が故障する恐れは、必要に応じて、コンポーネントデバイスの能力に合わせて作成した、より高価で、より巧妙に演算を行うアルゴリズムを実行することによりさらに減らすことすらできる。
【0047】
次に図7を参照すると、医療機器のタスクまたは機能の実行方法と、作られたさまざまなレベルのピアグループであって、そのタスクまたは機能の実行に寄与するものが示されている。全体ピアグループは、PG1である。機能1は、サブピアグループPG11に割り当てられたものとして示されている。機能1のサブファンクション2は、サブピアグループPG112に割り当てられたものとして示されている。サブピアグループPG11は、サブサブピアグループPG111とPG112からさらに構成されており、サブサブピアグループPG112は、さらに、サブサブサブピアグループPG1121、PG1122、PG1123、およびPG1124から構成されている。機能1には、円OP1からOP5で示されている5つのオペレーションが含まれている。第1のオペレーションOP1(例えば、何らかの生理学的な特性を検出)を実行した後に、その結果は、PG1121に送られ、第2のオペレーションOP2に導入される。OP2が実行された後、その結果はPG1122に送られてOP3に導入され、同時に、PG1123に送られてOP4に導入される。OP3およびOP4を実行した後、その結果はPG1124に送られ、OP5に導入される。OP1からOP5を実行している間に、患者に治療効果を送達できる。治療効果とは、患者の体のいずれかの場所に送達された所定量の薬、作用または刺激であってもよい。送達する量および送達の場所は、機能の先行するオペレーションの結果に依存しうる。その後、割り当てられた機能が行われたことを示すフィードバックがデバイスD1、つまり、「管理者」デバイスに送られる。「管理者」デバイスは、コンポーネントデバイスD1からD3の全てがそれぞれのタスクまたは機能を実行して、機能1の最初のオペレーションを完全に実行するように調整をし、スケジューリングする役割を担う。(「管理者」デバイスの概念については、後により詳細に検討する。)依然として図7を参照すると、太い矢印がコンポーネントデバイス間および医療機器を構成しているさまざまなレベルのピアグループの間を伝搬するデータを表している。ここで、全体ピアグループPG1は、最も大きい四角形で表されており、サブピアグループPG11は、2番目に大きい四角形で表されており、サブサブサブピアグループPG111は、より小さい内部の四角形として表されており、これら全ては、オペレーションOP1に対応している。サブサブピアグループPG112は、色を濃くした内部四角形として表されている。サブサブピアグループPG112は、一連のサブサブサブピアグループPG1121、PG1122、PG1123、およびPG1124からさらに構成されており、これらのサブサブサブピアグループは、色を濃くしたサブサブピアグループPG112の四角形の内側の小さな四角形として表されている。コンポーネントデバイスD1からD9は、図7の最も小さな四角形として表されている。図7に描かれているさまざまなレベルのピアグループの中で、PG1およびPG11は、サブファンクション2が完了したら、結果として行われる機能1の実行を組織する役割を担う。一方、PG111、PG112、およびPG1121からPG1124は、OP1からOP5の具体的なオペレーションと、医療機器の全体的な機能1の一部を構成するサブファンクション2を実行する役割を担う。
【0048】
依然として図7を参照すると、ピアグループを構成しているコンポーネントデバイスは、3つの異なる役割のうちのいずれかを果たすことができる。例えば、コンポーネントデバイスは、「ワークホース」デバイス、「維持」デバイス、「管理者」デバイス、または、これらの何らかの組み合わせ、のいずれかとなっている。「ワークホース」コンポーネントデバイスは、それぞれのピアグループで処理すべきデータを受け取ったら、それぞれのピアグループに割り当てられたタスクを実行する役割を担う。ピアグループにあるどのコンポーネントデバイスも「ワークホース」デバイスとしてふるまうことができる。「維持」デバイスは、先行するオペレーションからデータを受け取り、データが処理されるようにピアグループにある1つ以上の次の「ワークホース」デバイスにデータを分配し、また、ピアグループ内の役割を維持する。「管理者」デバイスは、ピアグループ内のデータの割り当ておよび処理をスケジューリングすること、必要に応じて新しいデバイスを補充してピアグループに割り当てられたタスクの実行を支援すること、および、ピアグループ内におけるさまざまなレベルのコンポーネントデバイスのうちの他の「管理者」デバイスに次のタスク(またはオペレーション)の割り当てを計画することをも行う「維持」デバイスである。とりわけ、「管理者」デバイスは、例えば図7のオペレーションOP5のように、複数の先行するオペレーションまたはサブタスクから入力データを受け取った場合に、あるレベルから他のレベルへデータを伝送することを簡単にするのに役立つ。このような場合、対応するデータパッケージを処理のためにピアグループ内の同じ「ワークホース」デバイスに送る必要があり、この場合、そのパッケージは、処理を開始する前に統合されるのが普通である。
【0049】
図8aは、ピアグループ内に十分な数の「維持」デバイスがあり、データを適時に処理するよう効率的にデータを受け取り「ワークホース」デバイスに分配することを保証するプロセスを示している。ピアグループ内のタスクの信頼性用件を間違いなく満たす十分な「維持」デバイスがピアグループ内にない場合、ピアグループ内から「ワークホース」デバイスを調達して「維持」デバイスにする。「ワークホース」デバイスをピアグループ内から調達することができない場合には、そのピアグループに割り当てられたタスク、機能、またはオペレーションの実行がそのピアグループで現在入手できるデバイスでは保証できない旨の通知がそれぞれのピアグループの「管理者」デバイスに送られる。図8bは、従来の「管理者」デバイスが適切に応答または機能しない場合に、利用できる「維持」デバイスの中から補足的な「管理者」デバイスを調達するプロセスを示している。
【0050】
図9は、タスクまたは機能の準備がどのように始められるかを示すフローチャートである。以下、タスクという用語のみを使用するが、当然のことながら、本明細書に記載する説明は、機能やさまざまなレベルのタスク、オペレーション、または機能を網羅するものである。コンポーネントデバイスからなるネットワークで準備し、実行すべきタスクは、ネットワーク内で通告される。ステップ1000では、通告されたタスクの記述を、ネットワークのさまざまなコンポーネントデバイスが受信する。通告されたタスクの記述にはそのタスクを実行するのに必要なオペレーション、オペレーション間の好ましいデータ経路、信頼性の要件、必要な実行時間(例えば、遅延およびリスタート時間)に関する記述が含まれている。ステップ1100では、1つのコンポーネントデバイスがこのような通告を受け取り、通告されたタスクを受理するか否かを決定する。デバイスが通告を受理すると決定した場合、ステップ1200において、受理をしたデバイスが通告されたタスクを受理しその実行を準備する意向の通知をその通告が発信されたコンポーネントデバイスに送る。いくつかのコンポーネントデバイスがその通告されたタスクを実行可能であろうから、いくつかの受理する旨の通知が、さまざまな、実行できるコンポーネントデバイスから来るであろう。しかしながら、1つのタスクは1つのピアグループに割り当てることが好ましいので、1つのコンポーネントデバイスのみに通告したタスクを準備する権限を最終的に与えることが好ましく、最初にタスクを通告したコンポーネントデバイスは、タスクを受理する旨の通知のいずれを受理すべきか、そしてこれによってどのコンポーネントデバイスに通告したタスクの準備をする権限を最終的に与えるかを決定する。この決定は、タスクの詳細と、このタスクに志願した各コンポーネントデバイスの同様なタスクに関する過去の功績に基づいて行われる。ステップ1300では、発信元のデバイスがどの装置に通告したタスクの受理と準備の権限を与えるかを決定する。コンポーネントデバイスが通告を行ったデバイスから通告したタスクの開始および準備をする権限を与えるメッセージを受信すると、ステップ1400で、権限を与えられたデバイスは、通告されたタスク(すなわち、サブタスク)の実行の準備を開始しなければならない。タスクの実行の準備における最初のステップは、結果として行う、通告されたタスク(またはサブタスク)の実行の役割を担う適当なレベルのピアグループを作ることである。
【0051】
タスクを直接実行するためにピアグループを作った場合には、そのタスクの実行に関するリソースの要件を通告する。作ったピアグループレベルで行うオペレーションは、単一のオペレーションであってもよいし、連続的なオペレーションであってもよい。いずれにしても、創設したピアグループによるリソース要件の通告には、前述したタスクの記述にあるのと同じまたは同様の情報が入っている。これは、複数のデバイスに通告に応答させ、ピアグループに参加させるようにするためである。図10は、コンポーネントデバイスが通告されたタスクを実行できるか否かをリソース要件を考慮しながら決定し、かつ、それに関連づけられたタスクの実行の権限を与えられた、創設されたレベルのピアグループに参加すべきか否かを決定する場合を図示したフローチャートである。図10に示すように、タスクを実行するためのリソースの要件の記述が記載されている通告が、ステップ2000において、コンポーネントデバイスによって受信される。次に、ステップ2100において、コンポーネントデバイスは、通告されたリソース要件で説明されている目標とする信頼性および頻度の条件でタスクの実行に寄与できるか否かを決定する。できる場合には、次にステップ2200において、コンポーネントデバイスは、そのタスクを実行する権限を与えられている、創設されたピアグループに参加する。できない場合には、通告したリソース要件を考慮してコンポーネントデバイスをさらに調達することが必要である。ピアグループは、いったん創設されたら、必要なオペレーションを全て実行して、目標とする信頼性と頻度の条件でタスク全体を完了するのに、十分な量のコンポーネントデバイスを必要とする。コンポーネントデバイスで先行するデータを完全に処理される前に、同じコンポーネントデバイスで処理すべきさらに別のデータが発生した場合には、不適切な信頼性と頻度の影響を伴うデータおよび処理のバックログが生じうる。このような場合、先行するタスク、機能、またはオペレーションの処理が進行中であっても、コンポーネントデバイス間でパイプライン処理を用いて、後から発生したデータの処理を続けることができる。このようなパイプライン処理を使用するということは、あるタスクを実行するために創設、かつ、権限を与えられた共通レベルのピアグループに属するデバイスが、先行するデータが完全に処理されていない間であっても、後続のデータの処理を始めることができるということを意味する。パイプライン・オペレーションを行うと、処理するデータ量を増やす必要があるコンポーネントデバイスの数が減る。
【0052】
図11は、ピアグループに任せられたタスクの管理方法を図示するフローチャートである。ピアグループの「管理者」デバイスは、図11のタスク管理フローチャートにあるステップを定期的に実行する。ステップ3000では、「管理者」デバイスは、タスクが確実に実行されているかどうか、すなわち、ピアグループ内に存在している現在のコンポーネントデバイスで、タスクを実行すべきタイミングの制約が満たされていないかどうか、を決定する。タスクが確実に、または適切な時間に実行されていなければ、ステップ3100で、「管理者」デバイスが、その管理者デバイスに関連づけられているウェブログからさらに別のコンポーネントデバイスを選択する。このウェブログについては、図13との関連でより詳細に後述するが、これは、ランク付けされている、すなわち、所与のタスクを実行する信頼性に基づいて並べられたコンポーネントデバイスのリストである。このさらに別のコンポーネントデバイスは同じピアグループのものではないことが好ましく、このため、別のコンポーネントデバイスを調達することにより、ピアグループ全体のリソースおよび能力が向上する。追加する信頼性のあるコンポーネントデバイスを選択した後、ステップ3200において、「管理者」デバイスは、このピアグループのタスクをステップ3300から3370で、新しく調達したコンポーネントデバイスが、既存のピアグループ内の既存のデバイスと共同して、直接実行すべきであるのか、または、このピアグループのタスクをステップ3400から3470でバラバラにする、すなわち、より小さなサブタスクに分解すべきであるのかを決定する。タスクを既存のピアグループで直接実行すべきである場合には、ステップ3300において、そのタスクを実行するためのリソース要件がさまざまなデバイスに通告される。そのピアグループのタスクを分解すべきである場合、ステップ3400において、そのピアグループのタスクがそのピアグループ内で選択したデバイスに通告される。直接実行する場合、ステップ3310において、「管理者」デバイスが通告に対する利用可能なデバイスからの応答を待つ。管理者デバイスが、ステップ3320において、所与の時間間隔内でさまざまなコンポーネントデバイスから満足がいく応答を受信した場合には、ステップ3330において、応答したさまざまなコンポーネントデバイスがピアグループに参加して、そのピアグループの意図するタスクの実行を支援する。一方、ステップ3320で不満足な応答が得られた場合には、ステップ3340において、実行すべき意図したタスクのリソース要件を全体ピアグループにある全てのデバイスに通告する。ステップ3350において、ステップ3340のリソース要求の通告に対する満足な応答が受信された場合には、ステップ3360において、応答したコンポーネントデバイスをピアグループにある他のデバイスに加えて、意図するピアグループのタスクの実行を支援させる。他方、ステップ3350において不満足な応答を取得し続けた場合には、ステップ3370において、「管理者」デバイスがタスクを準備することができない、または実行することができない旨の通知を送信する。この通知は、このタスクに関する通告を元々送信したコンポーネントデバイスに送信される。タスクを実行する前に、タスクをさらに分解する場合には、ステップ3410において、「管理者」デバイスがそのウェブログから選択した利用可能なコンポーネントデバイスからの通告に対する応答を待つ。ステップ3420において、「管理者」デバイスがさまざまなコンポーネントデバイスから所与の時間間隔以内に満足な応答を受信した場合には、ステップ3430において、その応答したさまざまなコンポーネントデバイスをピアグループに受け入れ加え、そのピアグループの意図したタスクの実行を支援させる。一方、ステップ3420において、不満足な応答が得られた場合には、ステップ3440において、実行すべき意図したタスクが全体ピアグループにあるデバイスの全てに通告される。ステップ3450において、ステップ3440におけるタスクの通告に対する満足な応答が得られた場合には、ステップ3460において、その応答したコンポーネントデバイスを受け入れ、ピアグループの他のデバイスに加え、ピアグループの意図したタスクの実行を支援させる。他方、ステップ3450において、不満足な応答が得られ続ける場合には、ステップ3470において「管理者」デバイスがタスクを準備できないまたは実行できない旨の通知を送る。前述したのと同様に、この通知は、このタスクの通告の発信元のコンポーネントデバイスに送られる。
【0053】
図12は、後継タスク(successor task)の維持および準備を図示したフローチャートを示している。後継タスクとは、要求された先行タスクの全てが完了した後に実行される次のタスクであると理解される。図11によれば、ピアグループは、ある特定のタスクを実行するために創設され、その役割を担う。通常、このようなタスクは、何らかのより大きなタスクの下位のレベルを構成し、このより大きなタスクは、医療機器における次のピアグループ、すなわち、より高いレベルのピアグループ、または全体ピアグループで実行される。したがって、下位ピアグループのタスクの実行が成功すると、より大きなタスクの実行は、下位ピアグループのタスクが実行された後に失敗しない可能性が増大する。下位のタスクが完了しても、下位のピアグループは、後継タスクの最初の部分の準備および維持を開始するコンポーネントデバイスを見つける責任がさらにある。換言すれば、下位ピアグループは、後継タスクの全体を準備する責任はない。むしろ、(このピアグループを創設した目的のタスクを実行すること以外での)唯一の義務は、後継タスクの何らかの最初の部分が確実に実行されるように準備を行う他のデバイスを調達し、通信をすることである。これにより、デバイスのネットワークおよびタスク・アロケーション・モジュール(task allocation modular)が分散され、堅固なものとなる。このように、デバイスのネットワークでタスクの実行をたった1つのデバイスに頼るということは決してない。図12のフローチャートにおけるステップ4000に示すように、「管理者」デバイスは、後継タスクのある最初の部分が確実かつ適時に実行されていることを定期的に確認する。確認できなかった場合、または後継タスクを確実に準備または実行できないとの通知を受けた場合には、ステップ4100において、「管理者」デバイスがそのウェブログからいくつかの後継デバイスを選択し、ステップ4200において、その後継タスクをウェブログで特定したコンポーネントデバイスに対して通告する。ステップ4300では、「管理者」デバイスが、通告に関する後継デバイスからの応答を待つ。「管理者」デバイスが、ステップ4400において、容認できる応答を受信すると、ステップ4500において、後継デバイスが容認され、後継タスクの実行が準備され、後継タスクの実行が始められる。一方、「管理者」デバイスが、ステップ4400の通告に対し満足な応答を受信しなかった場合には、ステップ4600において、全体ピアグループにある全てのデバイスに対して通告が送られる。「管理者」デバイスが、ステップ4700において、通告に対する満足な応答を受信したら、ステップ4800において、後継デバイスが容認され、後継タスクの最初の部分の準備および実行が開始される。しかしながら、「管理者」デバイスが、ステップ4700において、通告に対する満足な応答をまだ受信しなかった場合には、ステップ4900において、「管理者」デバイスがタスクの記述を受け取った元々のデバイスに対して、「管理者」デバイスが、後継タスクのある最初の部分の準備および実行が「管理者」デバイスによって確実に手配することができない旨の通知を送る。発信元のデバイスは、その通知を受けると、他のデバイスを調達し、後継タスクの準備および実行を手配しなければならない。
【0054】
次に図7に戻ると、医療機器の機能の準備を説明するのに役立つ一例として、D1が機能1の記述を受信し、これにより調達されてその機能の準備を開始した。D1は、ピアグループPG11を創設し、OP1は、D1自身が直接実行することができないと判断した。このために、D1はPG111を創設し、自身のウェブログからいくつかのパートナーデバイスを選択して、それらのデバイスにOP1のリソース要件を送った。さらに、D1は、機能1をさらに分解する必要があると判断し、このために残りのタスク(OP2からOP5)にピアグループGP11が割り当てられているという事実とともに通告した。必要であれば、D1は、その通告を全体ピアグループPG1にある他の全てのデバイスに送った。最終的にD5とD6がピアグループPG111に加わり、D1がピアグループPG111の「管理者」デバイスになった。この間に、D2は、D1のタスク通告に関し、後継タスクの全部を準備する意図でD1に対し応答した。D1は、D2の意図を容認し、このためD2がピアグループPG112を創設した。D2は、OP2をD2自身が直接実行することができないと判断し、このためにPG1121を創設し、いくつかのパートナーデバイスを選択して、OP2のリソース要件を通告した。D2は、タスクOP2の他の部分をさらに分解しなければならないとも判断し、このために、残りのタスクをピアグループPG112が割り当てられているという事実とともに通告した。同様に、D3、D4、およびD5は、OP3、OP4、およびOP5を実行する準備をし、他のデバイスは、創設されたピアグループに加わった。最後に、機能全体がこれらのデバイスによって、SPPプロトコルを使って、確実かつ適時に実行され、かつ、維持される。
【0055】
1つのデバイスが故障したり、何らかの理由でネットワークとの接続が断絶したりすると、タスクを実行するのにそのデバイスのリソースに頼っていた他のデバイスがそのことに気がつく。デバイスが自身が故障しそうであることを検出することができた場合には、例えば故障しそうである旨、またはエネルギー源が底をつきかけている旨の通知を他のデバイスに送らなければならない。ある装置がメッセージに対して応答しない場合には、その装置は動作していないとみなされ、他の装置は、その装置がメッセージに応答するようになるまで、その装置を考慮しない。
【0056】
新しいデバイスがネットワークに導入された場合には、そのデバイスは、通告したタスクを確実に実行する、または準備を開始するためにリソースが必要であるいずれのピアグループに加わることもできる。システムに求められている安全性を保証するために、また、悪意の侵入を防止するために、その新しいデバイスは、デバイスのネットワークに加わる権利を証明する必要があるであろう。さらに、例えばAASOCシステムでは、その医療機器全体の規則に従って動作しないデバイスから資格を剥奪するための手順が通常存在している。これにより、悪意の装置に対してさえもその医療機器の安全性がさらに向上する。
【0057】
図13は、コンポーネントデバイスD1からD3の通信およびタスク実行信頼性パターンの自己編成式の順位付けを模式的に示している。信頼性パターンは、本発明のシステムおよび方法による各コンポーネントデバイスのウェブログ(W)に保持されているものとして図示されている。図13に示すように、信頼性のあるコンポーネントデバイスのウェブログ(W)は、前述したようにデバイス間で確立された公開キー、秘密キー関係または対称キー関係に基づいて各デバイスによって保持されている。したがって、他のデバイスのウェブログ(W)に列挙されている各デバイスは、対応するコンポーネントデバイスとの間で、通信およびタスク実行に関してある程度の信頼性を有している。ただし、各デバイスのウェブログ(W)は、最も信頼性のあるデバイスが最初に列挙され、最も信頼性のないデバイスがウェブログ(W)内の最後に列挙されるように信頼性のあるデバイスのリストに優先順位を付ける。よって、より信頼性の低いデバイスは、それぞれのデバイスのウェブログのリストにおいて、最初に列挙されたデバイスと最後に列挙されたデバイスとの間で、連続した順番に列挙される。
【0058】
実際には、依然として図13を参照すると、コンポーネントデバイスD1のためのウェブログWが示されている。ピアデバイスD2がデバイスD1から受理したタスクを完了した後、D1によるD2についての信頼性は増すであろう。その信頼性は、デバイスD1のウェブログWでは、デバイスD2をD1のウェブログW内で最初の位置に配置することで表す。その間、デバイスD3がデバイスD1から受理したタスクの実行に失敗すれば、D1によるD3についての信頼性は低下するであろう。この結果、デバイスD3は、D1のウェブログWにおいてデバイスD2の下に配置される。もしD3がD1から送られたタスクの実行に失敗し続ければ、D3はデバイスD1のウェブログWからいつかは除去され、この結果、この場合には、D1がタスクの通告をD3に直接送ることがなくなる。信用したさまざまなデバイスをデバイスの信用度または信頼性で列挙することにより、医療機器のネットワークによるデータの処理および通信の効率を高めることができる。さらに、もしデバイスのリソースが(例えばメモリーが)もっと多くのウェブログの格納および更新を許せば、そのデバイスは、タスクおよび/または通信の種類毎に別個のウェブログを有することができ、必要な場合にデバイスを適切なウェブログから選択することができる。
【0059】
図14は、本発明のシステムおよび方法によるピアグループ123内のコンポーネントデバイス間の局所的な通信方式の実施形態を図示している。図14に説明されている通信方式には、ピアデバイスD1からD4が図示されている。デバイスD1およびD2は、(それぞれC1およびC2である)互いの通信範囲内にいるので、互いに直接通信することを好む。なお、通信範囲は、(物理的な概念であるので、)論理的に存在しているピアグループによって制限されるものではない。図14は、この概念をD1およびD2がピアグループPG123内にあるのに対して、D3およびD4がピアグループPG123内にないことで図示している。その代わり、D3およびD4は、ピアグループPG12内にある。それにもかかわらず、D3およびD4は、各々、通信範囲C1およびC2の一方に入っており、通信範囲C1およびC2は、D1およびD2をも含んでいる。デバイス間の通信の干渉を回避するために、デバイス間の通信は、お互いの通信範囲(C1およびC2)に入っている2つのデバイスが特定のチャネル、例えばチャネル1を使って直接通信を行う場合、それらの装置の通信範囲(C1およびC2)に入っている他のデバイスが同じチャネルを使用しないようにスケジューリングすることが好ましい。
【0060】
例えば、依然として図14を参照すると、デバイスD1およびデバイスD2は、通信範囲C1およびC2内でチャネル1を介して互いと直接に通信する。このため、デバイスD3は、D1がD2と通信をしている間は、どのデバイスともチャネル1を使って通信を行うことができない。これは、D3もまた通信範囲C1およびC2の中にいるからである。D3はD1およびD2の両方の通信範囲の中にいるので、D1およびD2のいずれも、通信の干渉を回避しやすいように、直接D3とともに通信をスケジューリングすることができる。一方、D4は、D2の通信範囲の外にあり、したがってD2は、通常、D4がD1と干渉しうることをすら知らない。しかし、D2およびD4は、D1に対して同じチャネルを使って同時に通信を行うことはできない。さらに、D1がチャネル1を使って通信を行っていれば、その間、D4はどのデバイスに対してもチャネル1を使って通信を行うことができない。これは、そのようにすれば、D1の通信と干渉するからである。したがって、D4は、例えばD2がD1とチャネル1で通信を行っているときには、チャネル1を使わずに通信をするようにスケジューリングしなければならない。例えば、SPPを用いてさまざまなレベルのコンポーネントデバイスにタスクを割り当て、スケジューリングしたのと同様の方法で通信をスケジューリングし、割り当てれば、通信の干渉を最小にすることができる。例えば図7および図14に図示したように、このような通信方式を用いると、デバイス間でより信頼性のある通信を行いつつ、それらの間の干渉を最小にすることができる。この結果、それぞれのピアグループのコンポーネントデバイスが引き受けるべきタスクやファンクションがより確実に実行されるようになる。
【0061】
図15は、本発明のシステムおよび方法による、コンポーネントデバイスD1からコンポーネントデバイスD8にデータを伝達するためのルーティング方法の一実施形態を図示している。図15において、デバイスD1からD8は、円で表された通信範囲を有している。D1およびD8は、実線の対称な円で表された互いの通信範囲の外にいる。デバイスD2からD4の通信範囲は点線の円で表されており、デバイスD6からD7の通信範囲は2点鎖線の円で表されている。図15には、3つのピアグループPGC18、PGC28、PGC58があり、各ピアグループは通信を行うタスクのための創設されている。大きな四角形はピアグループPGC18を表している。ピアグループPGC18は、デバイスD1およびD8の間の通信のために創設されている。2つの、手書きによる太線は、ピアグループPGC28およびPGC58を表している。ピアグループPGC28およびPGC58は、それぞれ、D2およびD8間の通信、ならびに、D5およびD8間の通信用に創設されている。
【0062】
依然として図15を参照すると、D1はD8との通信を望んでいるが、D1およびD8は、互いの通信範囲の外にいる。よって、D1がD1およびD8の間の通信を局所に限定するためにピアグループPGC18を創設する。これにより、このピアグループに参加しているデバイスのみが通信に関与できる。D1は、D8までの経路を全く知らないので、この通信タスクを全てのデバイスに通告する。デバイスD2およびD5は、D8への経路を知っているので、その通告に返答する。D1は、これらの応答を受理する。これにより、D2およびD5は、D8との通信を局所に限定するために、ピアグループPGC28およびPGC58を創設し、D8までの経路にいるデバイスに通信のためのリソース要件の通告を送る。つまり、D2は通告をD3およびD4に送り、一方、D5は通告をD6およびD7に送る。最後に、D4およびD7がD8と通信範囲内(実線による対称な円)にいる。よって、D8は、D4およびD7を介して、D1がD8と通信を望んでいることを通知される。これでデバイスD1およびD8は、前述したようにその公開−秘密キーの対を使って互いの間に信用を確立することができる。よって、実際には、本発明のシステムおよび方法による種々のコンポーネントデバイス(D1〜D8)から構成されたさまざまなレベルのピアグループ(PG1、PG11、・・・・、PGC18、PGC28、・・・・)からなるネットワークから構成されている医療機器は、検出した生理学的特性に関するデータをこのように伝達し、これらのデータを計算、格納、または分配し、これらのデータに対する応答を開始して、ネットワーク内の通信の交換に基づいて患者の健康状態に取り組む、すなわち治療を行う。
【0063】
前述したサバイバブル・パイプライン・プロトコル(Survivable Pipeline Protocols)に関しては、デバイスネットワークが共同すると、リソースの割り当てやスケジューリングに難しい問題が生じる。例えば、図14に関連して前述した、コンポーネントデバイスの通信における干渉がもたらす難問は、例えば、指定する低帯域幅RFチャンネルを使って、ネットワークにおけるコンポーネントデバイス間に、すなわち、さまざまなレベルのコンポーネントデバイス間に検出情報を分配することで解決することができる。各段階で得られた情報またはデータを分散して前処理することにより、コンポーネントデバイス間またはコンポーネントデバイスのさまざまなレベル間で伝達されている情報量を減らし、必要に応じて、コンポーネントデバイス間およびネットワークのレベル間の通信をより効率的にすることができる。この場合、恐らくは種類が異なり、それぞれの演算能力が限られているであろうコンポーネントデバイスの前処理タスクは、ネットワークを作動させるためには完了されていなければならないであろう。さらに、距離が離れているコンポーネントデバイス間のマルチホップ式通信チャネルは、ネットワークの効率を上げるために維持されることが好ましい。本発明のシステムおよび方法にしたがって使用されるサバイバブル・パイプライン・プロトコル(SPP)は、本発明のシステムおよび方法による複数のコンポーネントデバイスからなるネットワークで構成された医療機器のためのマルチホップ・メッセージ・ルーティング(multi-hop message routing)、局所的な通信、タスクの割り当て、およびスケジューリングを実行するためのアルゴリズムの枠組みをコンポーネントデバイス内に与える。
【0064】
SPPには、SPPを本発明のネットワーク型医療機器での使用に適応させる複数の利点がある。例えは、SPPは:
・コンポーネントデバイスを種類が異なり、処理能力が低いユニットの集団で徴収し、このようにしなければ個々のユニットの能力を超えるような複雑でエネルギー消費量の多いタスク(例えば高い安全性のためのメッセージの暗号化/復号化)を遂行する。
・通信能力(例えばRF通信)があるコンポーネントデバイスで、通信のスケジューリングを効果的に行うことにより、干渉の低減を可能にする。
・通信すべきデータの前処理を分散させることにより、通信量を減らす。
・距離が離れているコンポーネントデバイス間のマルチホップ式通信チャネルを支援する。
・ユニットの喪失または導入により生じた、または、個々のユニットの性能の変化により生じたデバイス数における動的な変化に適応する。
【0065】
本発明の好ましい実施形態と考えられるものを示し、説明したが、当然のことながら、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態および細部にさまざまな修正および変更を容易に行うことができると理解される。したがって、本明細書に記載または図示した厳密な形態に本発明を限定することは意図されておらず、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲に含まれうる全ての変更が包含されると解さなければならない。
【0066】
〔実施の態様〕
(1) 治療効果を伝達するためのシステムにおいて、
デバイスのネットワークを含む2つ以上のコンポーネントデバイスであって、各デバイスがセンサー、通信機、計算器、データ分配器、エネルギー源、または、治療効果器としての機能を1つ以上有し、かつ、前記ネットワーク内で、さまざまなレベルのデバイスの階層構造を自動的に組織し、
前記デバイスは、人体の中に埋め込まれている、人体表面に配置されている、中に人体が置かれている環境内に配置されている、または、前記人体の中、前記人体表面、および前記環境内の任意の組み合わせに分散されている、
コンポーネントデバイスと、
暗号化および通信プロトコルを介しての前記デバイス間の直接通信用リンク、または、中間デバイスを介しての前記デバイス間の間接通信用リンクの少なくとも一方であって、
前記デバイスの各々は、データ、アルゴリズム、およびプロトコルを含み、かつ、
−生理学的特性を検出する機能、
−前記システムに分散しているデータを処理する機能、
−前記システムにおけるデータ、アルゴリズム、およびプロトコルを交換、変更、再構成する機能、
−前記システムの前記デバイスの間でデータ格納、演算、通信、エネルギー供給、検出、および治療のタスクを自律して割り当てる機能、
の少なくとも1つの機能を実行する、
直接通信用リンクまたは間接通信用リンクの少なくとも一方と、
を備え、
前記治療効果器は、前記ネットワークのデバイスの下位レベルのタスクまたは機能が完了したら意図する治療効果を伝達する、
システム。
【0067】
(2) 実施態様1記載のシステムにおいて、
前記意図する治療効果とは、機械的補助、電気的刺激、化学的刺激、動作および薬物送達のいずれかである、システム。
(3) 医療機器において、
患者の体内、体表、および周囲に設けられており、匿名であって責任ある通信能力を有するさまざまなレベルの自動組織型デバイスの階層構造ネットワークであって、各デバイスは、少なくとも1つのタスクを割り当てられており、前記さまざまなレベルの自動組織型デバイスに割り当てられた前記タスクが完了すると、前記ネットワークが治療効果を提供する、
医療機器。
【0068】
(4) 実施態様3記載の医療機器において、
前記タスクは、生理学的データの検出、データの計算、データの分配、通信、エネルギー管理、タスクの割り当ておよびスケジューリング、ならびに医療効果の伝達のいずれかである、医療機器。
(5) 実施態様4記載の医療機器において、
前記通信能力には、デバイス間の直接的な対称および非対称暗号法、中間デバイスを介しての間接通信、およびパイプラインプロトコルが含まれる、医療機器。
【0069】
(6) 医療機器において、
患者に治療効果を伝達するネットワークであって、前記ネットワークは自動組織型コンポーネントデバイスを含み、前記コンポーネントデバイスは、階層構造的にさまざまなレベルのピアグループに整理されていて、1つ以上の全体ピアグループを形成しており、各全体ピアグループは、対応するピアグループを含む前記コンポーネントデバイスの前記さまざまなレベルのピアグループの下位のタスクまたは機能が完了したら実行するタスクまたは機能を有し、各ピアグループの前記タスクまたは機能が完了すると前記ネットワークが前記治療効果を伝達するようになっている、ネットワークと、
所定の通信範囲内にある前記コンポーネントデバイス間の範囲内通信用リンクと、
前記所定の通信範囲外にある前記コンポーネントデバイス間の範囲外通信用リンクと、
を備える、医療機器。
【0070】
(7) 実施態様6記載の医療機器において、
前記治療効果は、機械的補助、電気的刺激、化学的刺激、動作および薬物送達のいずれかである、医療機器。
(8) 実施態様7記載の医療機器において、
前記コンポーネントデバイスの各々は、生理学的データの検出、データの計算、データの分配、通信、タスクの割り当ておよびスケジューリング、ならびに、治療効果の伝達というタスクまたは機能の少なくも1つを可能にするデータ、アルゴリズム、またはプロトコルを含む、医療機器。
(9) 実施態様8記載の医療機器において、
前記範囲内通信リンクは、対称および非対称暗号法をさらに含む、医療機器。
【0071】
(10) 実施態様9記載の医療機器において、
前記非対称暗号法は前記コンポーネントデバイス間に信用を確立し、前記対称暗号法は前記コンポーネントデバイスのうちで信用されたコンポーネントデバイスの間に通信の権限を与える、医療機器。
(11) 実施態様9記載の医療機器において、
前記範囲外通信は、中間コンポーネントおよびパイプラインプロトコルを介しての通信を含む、医療機器。
(12) 実施態様11記載の医療機器において、
前記階層構造的にさまざまなレベルに整理されたコンポーネントデバイスは、優先順位が付けられたタスクまたは機能を実行し、コンポーネントデバイス間の関係を更新して、下位のタスクおよび機能が完了した後の前記ネットワークによる前記治療効果の伝達に適応する、医療機器。
【0072】
(13) 実施態様12の医療機器において、
前記範囲内通信用リンクの各々は、チャネルをさらに含んでおり、2つ以上の前記コンポーネントデバイスの間の通信は、前記範囲内コンポーネントデバイス間の通信に同じチャネルを割り当てることにより、通信の干渉を回避できるようにスケジューリングする、医療機器。
(14) 実施態様13記載の医療機器において、
前記コンポーネントデバイス間のタスクの割り当ては、対応するタスクが割り当てられた前記コンポーネントデバイスの効率にしたがって優先順位を付けて行う、医療機器。
(15) 実施態様6記載の医療機器において、
それぞれの全体ピアグループ内に一連のコンポーネントデバイスをさらに備えている、医療機器。
【0073】
(16) 実施態様15記載の医療機器において、
1つのピアグループ内の少なくとも2つのコンポーネントデバイスの間に少なくとも1つの共通のタスクまたは機能をさらに含む、医療機器。
(17) 実施態様16記載の医療機器において、
ピアグループは、前記ピアグループを含むコンポーネントデバイスのさまざまな下位レベルのピアグループの前記タスクまたは機能が完了すると、そのピアグループのタスクまたは機能を実行する、医療機器。
(18) 実施態様6記載の医療機器において、
1回限りのタスクまたは機能をさらに備えており、前記さまざまなレベルの、コンポーネントデバイスのピアグループが、次のレベルまたはコンポーネントデバイスに、前記1回限りのタスクまたは機能のうちの先行する1つが完了したら前記次のレベルまたはコンポーネントデバイスのタスクまたは機能を実行する権限を与える、医療機器。
【0074】
(19) 実施態様6記載の医療機器において、
反復可能なタスクまたは機能をさらに備えており、前記さまざまなレベルのコンポーネントデバイスは、前記コンポーネントデバイスの一部または全ての間にパイプライン通信を含む、前記反復可能なタスクまたは機能の他の1つが開始された場合であっても、前記反復可能なタスクまたは機能の1つを、処理を継続できるようにしている、医療機器。
(20) 実施態様19記載の医療機器において、
前記ネットワークは、対応するピアグループ内の前記さまざまなレベルのコンポーネントデバイスを、前記対応するピアグループ内の前記コンポーネントデバイスにおける変化にしたがって、または、前記タスクもしくは機能の要件における変化にしたがって、再組織化する、医療機器。
【0075】
(21) 実施態様20記載の医療機器において、
前記さまざまなレベルのコンポーネントデバイスは、タスクまたは機能が完了、前記コンポーネントデバイスのいずれかが実行を失敗、または、コンポーネントデバイスを前記ネットワークに追加あるいは削除すると、互いに更新する、医療機器。
(22) 実施態様6記載の医療機器において、
前記通信用リンクはワイヤレスである、医療機器。
(23) 実施態様22記載の医療機器において、
前記コンポーネントデバイスによって伝達されたデータは、仮想識別子が埋め込まれた情報を含んでいる、医療機器。
【0076】
(24) 実施態様23記載の医療機器において、
前記コンポーネントデバイスは、前記ネットワーク内で使用される前記暗号法または他のプロトコルにおいてアカウンタビリティ・アスペクト(accountability aspect)をさらに備えている、医療機器。
(25) 実施態様6記載の医療機器において、
対応するピアグループレベルの各々の前記コンポーネントデバイスの中からの管理者デバイスをさらに含み、前記管理者デバイスは、前記対応するピアグループを含む前記コンポーネントデバイスの信頼性を継続的に評価して、下位のレベルのタスクまたは機能が確実かつ適時に実行されることを保証している、医療機器。
【0077】
(26) 実施態様6記載の医療機器において、
ピアグループを含む前記コンポーネントデバイスは、対応するピアグループに該当する意図したタスクまたは機能を、前記タスクまたは機能を実行するために前記意図したタスク、機能またはリソース要件を記述した通告に対する応答を受け取ると、実行するように組織され、権限を与えられている、医療機器。
【0078】
(27) 治療効果を患者に送達する方法において、
2つ以上のコンポーネントデバイスのネットワークを前記患者の体内、体表、または周囲に配置する段階であって、各コンポーネントデバイスが検出、データの計算、データの分配、通信、タスクの割り当ておよびスケジューリング、ならびに、治療効果の送達のうちの少なくとも1つを実行する、段階と、
2つ以上のコンポーネントデバイスの前記ネットワークをさまざまなレベルのピアグループに階層構造的に整理する段階であって、前記さまざまなレベルのピアグループおよびコンポーネントデバイスが全体ピアグループを含み、各ピアグループレベルが実行すべきタスクまたは機能を割り当てられている、段階と、
全てのピアグループレベルが割り当てられたタスクまたは機能を実行するまで、下位のタスクまたは機能が完了したことを1つのピアグループレベルから次のピアグループレベルへ伝達し、これにより前記全体ピアグループが前記患者に意図した治療効果を伝達する、段階と、
を含む、方法。
【0079】
(28) 実施態様27記載の方法において、
前記治療効果は、機械的補助、電気的刺激、化学的刺激、動作および薬物送達のいずれかである、方法。
(29) 実施態様28記載の方法において、
対応するピアグループレベルの前記タスクまたは機能が前記対応するピアグループを含む権限を与えられているコンポーネントデバイスにより直接実行される、方法。
(30) 実施態様28記載の方法において、
対応するピアグループレベルの前記タスクおよび機能がより小さなタスクまたは機能に分解されて、さらに別のコンポーネントデバイスを含むさらに別のレベルのピアグループを形成し、前記さらに別のピアグループレベルのタスクまたは機能は、元々の前記対応するピアグループレベルより先に実行される、方法。
【0080】
(31) 実施態様29記載の方法において、
各ピアグループレベルは、前記対応するピアグループレベルが実行すべき前記タスクまたは機能を記述した通告に、前記通告されたタスクまたは機能を実行するのに最も信頼できる前記コンポーネントデバイスが前記ピアグループを含むように応答することで形成される、方法。
(32) 実施態様30記載の方法において、
各ピアグループレベルは、前記対応するピアグループレベルが実行すべき前記タスクまたは機能を記述した通告に、前記通告されたタスクまたは機能を実行するのに最も信頼できる前記コンポーネントデバイスが前記ピアグループを含むように応答することで形成される、方法。
【0081】
(33) 実施態様31記載の方法において、
対応するピアグループレベルを含む前記コンポーネントデバイスの中から管理者デバイスを指定する段階をさらに含み、前記管理者デバイスは、前記対応するピアグループレベルにおける前記コンポーネントデバイスの信頼性を継続的に評価しており、かつ、前記対応するピアグループレベルにおけるコンポーネントデバイスを変更するか、またはコンポーネントデバイスを追加して、前記信頼性を維持している、方法。
(34) 実施態様32記載の方法において、
対応するピアグループレベルを含む前記コンポーネントデバイスの中から管理者デバイスを指定する段階をさらに含み、前記管理者デバイスは、前記対応するピアグループレベルにおける前記コンポーネントデバイスの信頼性を継続的に評価しており、かつ、前記対応するピアグループレベルのコンポーネントデバイスを変更するか、またはコンポーネントデバイスを追加して、前記信頼性を維持している、方法。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明によるシステムおよび方法による少なくとも1つのピアグループを形成するコンポーネントデバイスからなるネットワークを示す図である。
【図2】コンポーネントデバイスの直接(範囲内)通信と、マルチホップ(範囲外または間接)通信を示す図である。
【図3a】コンポーネントデバイスがその通信範囲を変更しなければならない例を示す図である。
【図3b】コンポーネントデバイスがその通信範囲を変更しなければならない例を示す図である。
【図4】全てのデバイスが全体ピアグループPG1を介して通信可能であるにもかかわらず、デバイスが可能な限り最も近い(または最も低い)ピアグループを介して通信しなければならないことを示す図である。
【図5】本発明のシステムおよび方法によるコンポーネントデバイスの間の直接的な、暗号化通信方式を一般的に示す図である。
【0083】
【図6】コンポーネントデバイス間での信用の伝搬を示す図であり、これにより信用されたコンポーネントデバイスのチェーンを介して2つのコンポーネントデバイスの間の信用を確立できる。
【図7】医療機器の機能を実行している一組のコンポーネントデバイスを示す図であり、機能を実行、維持するために創設された典型的なピアグループ階層構造もまた示されている。
【図8a】ピアグループで十分な「維持」デバイスが利用できることを保証し、ピアグループ内に「管理者」デバイスがいて、ピアグループ内のデバイス間の通信、データ処理および他の機能的なスケジュールを管理することを保証するプロセスを示す図である。
【図8b】ピアグループで十分な「維持」デバイスが利用できることを保証し、ピアグループ内に「管理者」デバイスがいて、ピアグループ内のデバイス間の通信、データ処理および他の機能的なスケジュールを管理することを保証するプロセスを示す図である。
【図9】デバイスのネットワークが実行する必要があるタスクに関する通告に対してコンポーネントデバイスがどのように反応するかを示す図である。
【図10】デバイスのネットワークが実行する必要があるサブタスクに関するリソース要件の通告に対してコンポーネントデバイスがどのように反応するかを示す図である。
【図11】ピアグループ内のサブタスクのリソーシング(resourcing)および実行を「管理者」デバイスがどのように監督するかを示す図である。
【図12】「後継サブタスク」がその後継サブタスクを実行する役割を担う他のコンポーネントデバイスにどのように割り当てられるかを示す図である。
【図13】本発明のシステムおよび方法によるコンポーネントデバイスのウェブログ順位を示す図である。
【図14】本発明のシステムおよび方法により、コンポーネントデバイス間で干渉が最小となるように通信をスケジュールする局所的な通信方式を示す図である。
【図15】本発明のシステムおよび方法により、中間コンポーネントデバイスを使用してデータを1つのコンポーネントデバイスから他のコンポーネントデバイスに伝えるためのルーティング方式を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療効果を伝達するためのシステムにおいて、
デバイスのネットワークを含む2つ以上のコンポーネントデバイスであって、各デバイスがセンサー、通信機、計算器、データ分配器、エネルギー源、または、治療効果器としての機能を1つ以上有し、かつ、前記ネットワーク内で、さまざまなレベルのデバイスの階層構造を自動的に組織し、
前記デバイスは、人体の中に埋め込まれている、人体表面に配置されている、中に人体が置かれている環境内に配置されている、または、前記人体の中、前記人体表面、および前記環境内の任意の組み合わせに分散されている、
コンポーネントデバイスと、
暗号化および通信プロトコルを介しての前記デバイス間の直接通信用リンク、または、中間デバイスを介しての前記デバイス間の間接通信用リンクの少なくとも一方であって、
前記デバイスの各々は、データ、アルゴリズム、およびプロトコルを含み、かつ、
−生理学的特性を検出する機能、
−前記システムに分散しているデータを処理する機能、
−前記システムにおけるデータ、アルゴリズム、およびプロトコルを交換、変更、再構成する機能、
−前記システムの前記デバイスの間でデータ格納、演算、通信、エネルギー供給、検出、および治療のタスクを自律して割り当てる機能、
の少なくとも1つの機能を実行する、
直接通信用リンクまたは間接通信用リンクの少なくとも一方と、
を備え、
前記治療効果器は、前記ネットワークのデバイスの下位レベルのタスクまたは機能が完了したら意図する治療効果を伝達する、
システム。
【請求項2】
請求項1記載のシステムにおいて、
前記意図する治療効果とは、機械的補助、電気的刺激、化学的刺激、動作および薬物送達のいずれかである、システム。
【請求項3】
医療機器において、
患者の体内、体表、および周囲に設けられており、匿名であって責任ある通信能力を有するさまざまなレベルの自動組織型デバイスの階層構造ネットワークであって、各デバイスは、少なくとも1つのタスクを割り当てられており、前記さまざまなレベルの自動組織型デバイスに割り当てられた前記タスクが完了すると、前記ネットワークが治療効果を提供する、
医療機器。
【請求項4】
請求項3記載の医療機器において、
前記タスクは、生理学的データの検出、データの計算、データの分配、通信、エネルギー管理、タスクの割り当ておよびスケジューリング、ならびに、医療効果の伝達のいずれかである、医療機器。
【請求項5】
請求項4記載の医療機器において、
前記通信能力には、デバイス間の直接的な対称および非対称暗号法、中間デバイスを介しての間接通信、およびパイプラインプロトコルが含まれる、医療機器。
【請求項6】
医療機器において、
患者に治療効果を伝達するネットワークであって、前記ネットワークは自動組織型コンポーネントデバイスを含み、前記コンポーネントデバイスは、階層構造的にさまざまなレベルのピアグループに整理されて、1つ以上の全体ピアグループを形成しており、各全体ピアグループは、対応するピアグループを含む前記コンポーネントデバイスの前記さまざまなレベルのピアグループの下位のタスクまたは機能が完了したら実行するタスクまたは機能を有し、各ピアグループの前記タスクまたは機能が完了すると前記ネットワークが前記治療効果を伝達するようになっている、ネットワークと、
所定の通信範囲内にある前記コンポーネントデバイス間の範囲内通信用リンクと、
前記所定の通信範囲外にある前記コンポーネントデバイス間の範囲外通信用リンクと、
を備える、医療機器。
【請求項7】
請求項6記載の医療機器において、
前記治療効果は、機械的補助、電気的刺激、化学的刺激、動作および薬物送達のいずれかである、医療機器。
【請求項8】
請求項7記載の医療機器において、
前記コンポーネントデバイスの各々は、生理学的データの検出、データの計算、データの分配、通信、タスクの割り当ておよびスケジューリング、ならびに、治療効果の伝達というタスクまたは機能の少なくも1つを可能にするデータ、アルゴリズム、またはプロトコルを含む、医療機器。
【請求項9】
請求項8記載の医療機器において、
前記範囲内通信リンクは、対称および非対称暗号法をさらに含む、医療機器。
【請求項10】
請求項9記載の医療機器において、
前記非対称暗号法は前記コンポーネントデバイス間に信用を確立し、前記対称暗号法は前記コンポーネントデバイスのうちで信用されたコンポーネントデバイスの間に通信の権限を与える、医療機器。
【請求項11】
請求項9記載の医療機器において、
前記範囲外通信は、中間コンポーネントおよびパイプラインプロトコルを介しての通信を含む、医療機器。
【請求項12】
請求項11記載の医療機器において、
前記階層構造的にさまざまなレベルに整理されたコンポーネントデバイスは、優先順位が付けられたタスクまたは機能を実行し、コンポーネントデバイス間の関係を更新して、下位のタスクおよび機能が完了した後の前記ネットワークによる前記治療効果の伝達に適応する、医療機器。
【請求項13】
請求項12の医療機器において、
前記範囲内通信用リンクの各々は、チャネルをさらに含んでおり、2つ以上の前記コンポーネントデバイスの間の通信は、前記範囲内コンポーネントデバイス間の通信に同じチャネルを割り当てることにより、通信の干渉を回避できるようにスケジューリングする、医療機器。
【請求項14】
請求項13記載の医療機器において、
前記コンポーネントデバイス間のタスクの割り当ては、対応するタスクが割り当てられた前記コンポーネントデバイスの効率にしたがって優先順位を付けて行う、医療機器。
【請求項15】
請求項6記載の医療機器において、
それぞれの全体ピアグループ内に一連のコンポーネントデバイスをさらに備えている、医療機器。
【請求項16】
請求項15記載の医療機器において、
1つのピアグループ内の少なくとも2つのコンポーネントデバイスの間に少なくとも1つの共通のタスクまたは機能をさらに含む、医療機器。
【請求項17】
請求項16記載の医療機器において、
ピアグループは、前記ピアグループを含むコンポーネントデバイスのさまざまな下位レベルのピアグループの前記タスクまたは機能が完了すると、そのピアグループのタスクまたは機能を実行する、医療機器。
【請求項18】
請求項6記載の医療機器において、
1回限りのタスクまたは機能をさらに備えており、前記さまざまなレベルの、コンポーネントデバイスのピアグループが、次のレベルまたはコンポーネントデバイスに、前記1回限りのタスクまたは機能のうちの先行する1つが完了したら前記次のレベルまたはコンポーネントデバイスのタスクまたは機能を実行する権限を与える、医療機器。
【請求項19】
請求項6記載の医療機器において、
反復可能なタスクまたは機能をさらに備えており、前記さまざまなレベルのコンポーネントデバイスは、前記コンポーネントデバイスの一部または全ての間にパイプライン通信を含み、前記反復可能なタスクまたは機能の他の1つが開始された場合であっても、前記反復可能なタスクまたは機能の1つを、処理を継続できるようにしている、医療機器。
【請求項20】
請求項19記載の医療機器において、
前記ネットワークは、対応するピアグループ内の前記さまざまなレベルのコンポーネントデバイスを、前記対応するピアグループ内の前記コンポーネントデバイスにおける変化にしたがって、または、前記タスクもしくは機能の要件における変化にしたがって、再組織化する、医療機器。
【請求項21】
請求項20記載の医療機器において、
前記さまざまなレベルのコンポーネントデバイスは、タスクまたは機能が完了、前記コンポーネントデバイスのいずれかが実行を失敗、または、コンポーネントデバイスを前記ネットワークに追加あるいは削除すると、互いに更新する、医療機器。
【請求項22】
請求項6記載の医療機器において、
前記通信用リンクはワイヤレスである、医療機器。
【請求項23】
請求項22記載の医療機器において、
前記コンポーネントデバイスによって伝達されたデータは、仮想識別子が埋め込まれた情報を含んでいる、医療機器。
【請求項24】
請求項23記載の医療機器において、
前記コンポーネントデバイスは、前記ネットワーク内で使用される前記暗号法または他のプロトコルにおいてアカウンタビリティ・アスペクト(accountability aspect)をさらに備えている、医療機器。
【請求項25】
請求項6記載の医療機器において、
対応するピアグループレベルの各々の前記コンポーネントデバイスの中からの管理者デバイスをさらに含み、前記管理者デバイスは、前記対応するピアグループを含む前記コンポーネントデバイスの信頼性を継続的に評価して、下位のレベルのタスクまたは機能が確実かつ適時に実行されることを保証している、医療機器。
【請求項26】
請求項6記載の医療機器において、
ピアグループを含む前記コンポーネントデバイスは、対応するピアグループに該当する意図したタスクまたは機能を、前記タスクまたは機能を実行するために前記意図したタスク、機能またはリソース要件を記述した通告に対する応答を受け取ると、実行するように組織され、権限を与えられている、医療機器。
【請求項27】
治療効果を患者に送達する方法において、
2つ以上のコンポーネントデバイスのネットワークを前記患者の体内、体表、または周囲に配置する段階であって、各コンポーネントデバイスが検出、データの計算、データの分配、通信、タスクの割り当ておよびスケジューリング、ならびに、治療効果の送達のうちの少なくとも1つを実行する、段階と、
2つ以上のコンポーネントデバイスの前記ネットワークをさまざまなレベルのピアグループに階層構造的に整理する段階であって、前記さまざまなレベルのピアグループおよびコンポーネントデバイスが全体ピアグループを含み、各ピアグループレベルが実行すべきタスクまたは機能を割り当てられている、段階と、
全てのピアグループレベルが割り当てられたタスクまたは機能を実行するまで、下位のタスクまたは機能が完了したことを1つのピアグループレベルから次のピアグループレベルへ伝達し、これにより前記全体ピアグループが前記患者に意図した治療効果を伝達する、段階と、
を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−80253(P2007−80253A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−211161(P2006−211161)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【出願人】(500304486)ニチノル・デベロップメント・コーポレーション (18)
【氏名又は名称原語表記】Nitinol Development Corporation
【住所又は居所原語表記】47533 Westinghouse Drive, Fremont, California 94539, U.S.A.
【Fターム(参考)】