説明

人体ダスト検出方法

【課題】人体ダストなどの生物由来物質の検出において、顕微鏡下で探索すべき視野を容易に認識でき、酸を使わない方法を提供する。
【解決手段】撥水性と親水性を併せ持つ捕集媒体を、調査すべき場所に放置した後、回収し、赤色キサンテン系色素水溶液を滴下する。捕集媒体表面にタンパク質が捕集されていれば、赤色検出液と反応して、鮮明な赤色に着色するので、顕微鏡下で容易に識別できる。また、赤色検出液としてキサンテン系色素溶液を使用すれば、タンパク質を染色する場合、塩酸を添加する必要がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、人体ダスト検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大気中のダスト等を除去したクリーンルームは、半導体製造のキーテクノロジーであったが、今では、様々な産業分野に広く普及している。クリーンルームで発生するダストは、機械装置由来などの内部で発生するものや、外部から侵入するものがある。中でも、人体由来のものは、発生源が動きまわることと、人体が絶えざる発生源であることから、注意して管理するべきものと考えられている。
この人体ダストを検出する方法としては、SEM−EDXや光散乱を使った方法などがある。しかし、SEM−EDXは、高価格であり、熟練オペレーターが必要である。また、光散乱で検出する方法には、人体由来のものを識別することはできないという問題点がある。
これらの問題点を解決するために、ブロモクロロフェノールブルーを用いる人体ダスト検出方法(特願2005−179957)が提案された。これは、ダストを捕集する媒体に、塩酸とブロモクロロフェノールブルーを滴下し、黄色く発色したダストを顕微鏡下で検出するものである。しかし、この方法にもつぎのような問題点が認められた。それは、試薬を滴下した部分の色調が青色であり顕微鏡下での視認性が低下すること、及び、プロトン付加剤としての塩酸などの酸が必要となり簡便性を損なうこと、である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ダストを捕集した媒体に試薬を滴下する検出方法において、媒体に滴下した試薬の範囲が不明瞭であれば、顕微鏡下で検索するべき範囲が判りにくくなり、検出に時間がかかることになる。また、塩酸などを使用することは、取扱上の負担を増加させる。
したがって、ダストを捕集した媒体に試薬を滴下したときに、顕微鏡下でも滴下範囲が明瞭で、塩酸などの酸を使用せずに検出できることは、重要な課題である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
撥水性と親水性を併せ持つシートを捕集媒体とし、赤色のタンパク質検出液(以下「赤色検出液」)を滴下することにより、課題が解決できる。
【発明の効果】
【0005】
撥水性と親水性を併せ持つシートを捕集媒体として利用することにより、滴下した赤色検出液は、周囲への拡散が少ないまま、シートの厚さ方向に浸透する。この様子を図2に示す。一方、そのような性質を持たないシートを捕集媒体とした場合の滴下後の様子を図3に示す。したがって、本発明の捕集媒体を使用すると、顕微鏡で検索するべき視野が広がることはない。また、浸透した部分の色は赤色なので、顕微鏡下でも認識することが容易である。一方、捕集媒体表面にタンパク質が捕集されていれば、赤色検出液と反応して、鮮明な赤色に着色するので、顕微鏡下で容易に識別できる。また、赤色検出液としてキサンテン系色素溶液を使用すれば、タンパク質を染色する場合、塩酸を添加する必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
撥水性と親水性を併せ持つ捕集媒体を、調査すべき場所に放置した後、回収し、赤色キサンテン系色素水溶液を滴下する。10分〜15分後に、40倍実体顕微鏡で観察し、赤い点を人体ダストと判定する。
【実施例】
【0007】
捕集媒体をクリーンルームに2か月間放置した後、回収して、赤色検出液としてキサンテン系色素水溶液を滴下し、10分〜15分後に、40倍実体顕微鏡で観察した結果を図1に示す。つぎに、撥水性と親水性を併せ持つシートを捕集媒体としたときの、赤色検出液滴下後の拡散の様子を図2に示す。一方、撥水性と親水性を併せ持たない場合の、滴下後の拡散の様子を図3に示す。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】クリーンルームに2か月放置した場合の検出例である。
【図2】撥水性と親水性を併せ持つ捕集媒体を使用した場合の赤色領域の拡散の様子である。
【図3】撥水性と親水性を併せ持たない捕集媒体を使用した場合の赤色領域の拡散の様子である。
【符号の説明】
【0009】
1 検出されたダスト
2 撥水性と親水性を併せ持つ捕集媒体における赤色領域の外縁
3 撥水性と親水性を併せ持たない捕集媒体における赤色領域の外縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撥水性と親水性を併せ持つ捕集媒体を用いて、大気中の微小固体を捕集したあと、赤色のタンパク質検出液を滴下することにより、生物由来物質を検出する方法。
【請求項2】
検出液体として、キサンテン系色素溶液を利用した請求項1に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−197365(P2010−197365A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72742(P2009−72742)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(508372412)サトダサイエンス合同会社 (9)
【Fターム(参考)】