説明

人体器官の形態および感触を有する縫合練習用模造器官およびその製造方法

【課題】 ヒトの諸器官の皮膚組織の形態および感触に酷似した層構造を有し、かつ、食品素材の使用により環境にも優しい縫合練習用模造器官およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】 食品素材からなる原材料を水と混和して調製した食物性の粘稠液1がゲル化して、人体の所要器官を擬した形状に成形されている一方、
表面に人体の皮膚様の皮膜3が形成されており、人体の所要器官の形態および感触を有するゲル強度および針入抵抗が肉体に近似した程度に調整されているように構成するという技術的手段を採用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縫合練習用の模造器官の改良、更に詳しくは、ヒトの諸器官の皮膚組織の形態および感触に酷似した層構造を有し、かつ、食品素材の使用により環境にも優しい所要の人体器官の形態および感触を有する縫合練習用模造器官およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医師を目指す学生や、経験が少なくて技術の未熟な医師にとって、外傷による傷口の縫合のような外科手術の練習が必要である。そして、そのような練習用材としては、ヒトの器官(頬、口、鼻、耳、手、指など)を模造したシリコーンゴム製の縫合パッドが知られている。
【0003】
しかしながら、かかるシリコーンゴム製の縫合パッドは、死後硬直した皮膚組織のような硬さと弾力性を呈しており、生きたヒトの組織の質感とは大きく懸け離れているので、生体の手術の練習用としては適していない。
【0004】
さらにこの製品は、縫合段差防止練習や、鍵状やY字状などの任意の形の創傷縫合練習ができないという問題があった。
【0005】
また、シリコーンゴム、ウレタンエラストマー、スチレンエラストマー等からなる器官模造品も開示されているが(例えば、特許文献1参照)、素材に撥水性を有するために親水性を有する本物の人体とは異なるし、切開感や感触などの質感も生体とは大きく異なるという不満があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−241988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の縫合練習用の模造器官に上記のような問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、ヒトの諸器官の皮膚組織の形態および感触に酷似した層構造を有し、かつ、食品素材の使用により環境にも優しい所要の人体器官の形態および感触を有する縫合練習用模造器官およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者が上記技術的課題を解決するために採用した手段を、添付図面を参照して説明すれば、次のとおりである。
【0009】
即ち、本発明は、食品素材からなる原材料を水と混和して調製した食物性の粘稠液1がゲル化して、人体の所要器官を擬した形状に成形されている一方、
表面に人体の皮膚様の皮膜3が形成されており、人体の所要器官の形態および感触を有するゲル強度および針入抵抗が肉体に近似した程度に調整されているように構成するという技術的手段を採用したことによって、所要の人体器官の形態および感触を有する縫合練習用模造器官を完成させた。
【0010】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、成形品の硬さおよび緩和量をそれぞれ35〜60g/mmおよび4万〜50万エルグ(erg)の範囲にして、人体の所要器官の形態及び感触に近くするという技術的手段を採用することができる。
【0011】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、粘稠液1の食品素材を、穀粉、澱粉、加工澱粉、セルロースの少なくとも1種にするという技術的手段を採用することができる。
【0012】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、粘稠液1の食品素材にゲル化剤を配合するという技術的手段を採用することができる。
【0013】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、粘稠液1に、器官の色、色相、明度及び彩度を似せるための着色料、使用期限を延長させるための保存料または殺菌剤、または、澱粉の老化による弾力性低下現象を防ぐための加工澱粉または糖類、水分の揮散を防ぐに塩化カルシウム、グリシンベタイン、糖類などの保湿剤の少なくとも一つを添加するという技術的手段を採用することができる。
【0014】
また、本発明は、食品素材からなる原材料を水と混和して食物性の粘稠液1を調製する一方、この粘稠液1を加熱して表面に人体の皮膚様の皮膜3を形成させると共にゲル化させた後、
当該キャスティング・ダイ2から脱型して、人体の所要器官の形態および感触を有するゲル強度および針入抵抗を肉体に近似した程度に調整するという技術的手段を採用したことによって、所要の人体器官の形態および感触を有する縫合練習用模造器官の製造方法を完成させた。
【0015】
また、本発明は、食品素材からなる原材料を水と混和して食物性の粘稠液1を調製する一方、この粘稠液1を人体の所要器官を擬したキャビティを有するキャスティング・ダイ2に注入し、このキャスティング・ダイ2に注入された粘稠液1を加熱してゲル化させた後、
当該キャスティング・ダイ2から脱型して、この中間成形物Gの表面を乾燥させ、この表面に人体の皮膚様の皮膜3を形成すると共に、
人体の所要器官の形態および感触を有するゲル強度および針入抵抗を肉体に近似した程度に調整するという技術的手段を採用したことによっても、所要の人体器官の形態および感触を有する縫合練習用模造器官の製造方法を完成させた。
【0016】
更にまた、本発明は、食品素材からなる原材料を水と混和して食物性の粘稠液1を調製する一方、この粘稠液1を人体の所要器官を擬したキャビティを有するキャスティング・ダイ2に注入し、このキャスティング・ダイ2に注入された粘稠液1を加熱してゲル化させた後、
当該キャスティング・ダイ2から脱型して、この中間成形物Gに粘稠液1を吹き付けまたは浸漬または塗布により付着せしめて、表面を乾燥させることによって、この表面に皮膜3を形成すると共に、
人体の所要器官の形態および感触を有するゲル強度および針入抵抗を肉体に近似した程度に調整するという技術的手段を採用したことによっても、所要の人体器官の形態および感触を有する縫合練習用模造器官の製造方法を完成させた。
【0017】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、熱風または過熱水蒸気に晒すことによってキャスティング・ダイ2から脱型した成形品の表面を加熱するという技術的手段を採用することができる。
【0018】
更にまた、本発明は、食品素材からなる原材料を水と混和して食物性の粘稠液1を調製する一方、
人体の所要器官を擬したキャビティを有するキャスティング・ダイ2の内側面に皮膜3を付着せしめた後、前記粘稠液1をキャスティング・ダイ2の内側面に付着した皮膜3の中空内部に注入して加熱し、ゲル化後、キャスティング・ダイ2から脱型して、この表面に人体の皮膚様の皮膜3を形成すると共に、
人体の所要器官の形態および感触を有するゲル強度および針入抵抗を肉体に近似した程度に調整するという技術的手段を採用したことによっても、所要の人体器官の形態および感触を有する縫合練習用模造器官の製造方法を完成させた。
【0019】
更にまた、本発明は、食品素材からなる原材料を水と混和して食物性の粘稠液1を調製する一方、
人体の所要器官を擬したキャビティを有するキャスティング・ダイ2を加熱してこのキャスティング・ダイ2の内側面に粘稠液1を付着せしめて硬化させて皮膜3を形成する一方、この皮膜3の中空内側に、加熱を続けながら粘稠液1を注入してゲル化した後、キャスティング・ダイ2から脱型することによりこの表面に人体の皮膚様の皮膜3を一体成形することによって、
人体の所要器官の形態および感触を有するゲル強度および針入抵抗を肉体に近似した程度に調整するという技術的手段を採用したことによっても、所要の人体器官の形態および感触を有する縫合練習用模造器官の製造方法を完成させた。
【0020】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、キャスティング・ダイ2として耐熱性プラスチックシート2Pを用いて、
このキャスティング・ダイ2(2P)を加熱しつつ内側面に皮膜3を設けた後、加熱を続けながら前記耐熱性プラスチックシート2Pの内側面に粘稠液1を注入してゲル化させることにより、成形品を当該耐熱性プラスチックシート2Pにより包装するという技術的手段を採用することができる。
【0021】
更にまた、本発明は、食品素材からなる原材料を水と混和して食物性の粘稠液1を調製する一方、
人体の所要器官を擬したキャビティを有する皮膜3の中空内部に前記粘稠液1を注入し、これらを加熱してゲル化させて表面に人体の皮膚様の前記皮膜3を一体成形することによって、
人体の所要器官の形態および感触を有するゲル強度および針入抵抗を肉体に近似した程度に調整するという技術的手段を採用したことによっても、所要の人体器官の形態および感触を有する縫合練習用模造器官の製造方法を完成させた。
【発明の効果】
【0022】
本発明にあっては、食品素材からなる原材料を水と混和して調製した食物性の粘稠液がゲル化して、人体の所要器官を擬した形状に成形されている一方、表面に人体の皮膚様の皮膜が形成されていると共に、人体の所要器官の形態および感触を有するゲル強度および針入抵抗を肉体に近似した程度に調整したことにより、所要の人体器官の形態および感触を有する縫合練習用模造器官が構成され、ヒトの諸器官の皮膚組織の形態および感触に酷似した層構造を有し、かつ、食品素材の使用により環境にも優しい。
【0023】
また、形態及び感触を鼻、耳、頬、口(唇)、手、指などの器官に似せた本発明の縫合練習用の模造器官を使用することにより、外皮が硬く中身が軟らかい本物の皮膚構造に酷似した層構造を有しているので、実際の手術と同様の状況と感触に即した縫合練習、即ち従来品ではできない鍵状、Y字状及びデブリードマン創縁状などの任意の傷を作って縫合練習並びに縫合段差及びドッグイヤーを防ぐ縫合練習ができるので、医師を目指す学生及び経験の浅い医師の技量向上に貢献できて有用である。
【0024】
更にまた、シリコンゴムに比べて環境に負荷をかけない食品素材を使用しているので、安価で経済的負担を軽減するだけでなく使用後の廃棄が通常の生ごみとして処分することができて便利である。
【0025】
更にまた、生きたヒトの皮膚組織に限りなく近い硬さと弾力性を持たせることにより、縫合感触が近く、かつ、縫合段差防止練習および任意の形の創傷縫合練習にも適していることから、産業上の利用価値は頗る大きいと云える。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態における模造器官の製造工程を表す概略図である。
【図2】本発明の実施形態における模造器官の製造工程を表す概略図である。
【図3】本発明の実施形態における模造器官の製造工程を表す概略図である。
【図4】本発明の実施形態における模造器官の製造工程を表す概略図である。
【図5】本発明の実施形態における模造器官の製造工程を表す概略図である。
【図6】本発明の実施形態における模造器官の製造工程を表す概略図である。
【図7】本発明の実施形態における模造器官の製造工程を表す概略図である。
【図8】本発明の実施形態における模造器官の製造工程を表す概略図である。
【図9】本発明の実施形態における模造器官の製造工程を表す概略図である。
【図10】本発明の実施形態における模造器官の製造工程を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明を実施するための形態を、具体的に図示した図面に基づいて、更に詳細に説明すると、次のとおりである。
【0028】
『第1実施形態』
本発明の第1実施形態について以下に説明する。図中、符号1で指示するものは粘稠液であり、また、符号2で指示するものはキャスティング・ダイ、符号3で指示するものは皮膜である。
【0029】
しかして、本実施形態を構成するにあっては、まず、食品素材からなる原材料を水と混和して食物性の粘稠液1を調製する。
【0030】
本実施形態の縫合練習用模造器官を製造するための粘稠液1の食品素材としては、小麦粉、上新粉、糯粉、大麦粉などの穀粉、小麦、馬鈴薯、甘藷、トウモロコシ、タピオカ、サゴヤシなどの澱粉、リン酸化、有機酸エステル化、ヒドロキシプロピルエーテル化、カルボキシメチルエーテル化、架橋化、α化などの処理を施された加工澱粉、コンニャク粉、グルコマンナン、ガラクトマンナン、ペクチン、カラギーナン、寒天、グアーガム、ローストビーンガム、タマリンドガム、キサンタンガム、カードラン、アルギン酸及びその塩、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びその塩などの乳化剤及びゲル化剤を含む増粘多糖類、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン及びその塩、卵白、全卵、小麦タンパク、大豆タンパク、魚肉及び畜肉すり身などのゲル化タンパクなどが挙げられ、単一若しくは組み合わせて用いることができる。
【0031】
また、セルロース、大豆タンパク及び小麦タンパクは、粉末状、繊維状、シート状、布状及び膜(フィルム)状、コラーゲンは粉末状、膜状及びスポンジ状として使用することができる。必要ならば、感触を調整するためにトランスグルタミナーゼなどで架橋することによりゲル強度を高くすることができる。
【0032】
なお、前記粘稠液1は、必要に応じて加温して流動性を調節することができる。また、適宜、粘稠液1の食品素材にゲル化剤を配合することもできる。
【0033】
次いで、この粘稠液1を人体の所要器官(例えば、鼻、耳、頬、口(唇)、手、指など)を擬したキャビティを有するキャスティング・ダイ2に注入し、このキャスティング・ダイ2に注入された粘稠液1を加熱してゲル化させる。この際、ゲル化させる温度は、澱粉及び穀粉を使用する場合はα化温度以上、タンパクを使用する場合は熱変性温度以上であり、増粘多糖類を使用する場合は水に溶ける温度以上である。必要ならば、コンニャク粉及びグルコマンナンの場合は炭酸ナトリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ化合物、アルギン酸及びその塩の場合は塩化カルシウム、乳酸カルシウムなどのカルシウム塩を適宜添加する。
【0034】
また、カードランの場合は水に分散化、更に水酸化ナトリウム、りん酸ナトリウムなどの水溶液を加えて溶解させて使用することができ、加熱温度を調整してゲル強度を調節することができる。
【0035】
そして、図3の(c)工程に示すように、前記キャスティング・ダイ2から脱型してゲル状の成形物を得ることができ、この表面に人体の皮膚様の皮膜3を形成することができる。
【0036】
本実施形態では、必要に応じて、図4の(d)工程に示すように、脱型後の中間成形物Gの表面を乾燥させることができる。本実施形態では、熱風または過熱水蒸気に晒すことによってキャスティング・ダイ2から脱型した成形品の表面を積極的に乾燥および/または加熱することができる。
【0037】
このようにして、この表面に人体の皮膚様の皮膜3を形成することができる(図5(e)工程参照)。こうすることによって、人体の所要器官の形態および感触を有するゲル強度および針入抵抗を肉体に近似した程度に調整することができるのである。
【0038】
本実施形態では、成形品の硬さおよび緩和量をそれぞれ35〜60g/mmおよび4万〜50万エルグ(erg)の範囲にして、人体の所要器官の形態及び感触に近くすることができる。ここで、「硬さ」及び「緩和量」は、レオメーター(FUDOHレオメーター:レオテック社製、以下同じ)に応力緩和試験用の直径3mmの進入度短針アダプターを装着して測定するとき、表皮と真皮からなる厚さ0.4〜1.5mmの正常層構造の皮膚及び皮下組織部位を縫合針で刺す際の抵抗及び弾力性を、類似度の指標として表すものである。
【0039】
また、ここにおける「硬さ」とは、試料台上昇速度、即ち、圧縮速度1mm/秒で測定したときの応力(圧縮)最大値を圧縮距離で除した値(単位:g/mm)のことであり、35〜60g/mmの範囲が好ましい。また、「緩和量」とは、応力を縦軸、時間(圧縮距離)を横軸としたグラフの最大値を基点に終了時間まで水平に線を引き、その終点からグラフ線まで垂直に引いた線で囲まれる面積(単位:エルグ(erg))のことであり、4万〜50万ergの範囲が好ましい。
【0040】
本実施形態では、前記皮膜3を、大豆タンパク、小麦タンパク、卵タンパク、乳タンパク、魚肉及び畜肉タンパク、コラーゲン、多糖類などの厚さ0.1〜2mmのフィルムまたはシートにすることができる。
【0041】
なお、必要ならば、器官の色、色相、明度及び彩度を似せるための着色料、使用期限を延長させるための保存料及び殺菌剤及び澱粉の老化による弾力性低下現象を防ぐための加工澱粉及び糖類などを配合することができる。更に、水分の揮散を防ぐに塩化カルシウム、グリシンベタイン、糖類などの保湿剤を添加することもできる。
【0042】
また、上記のようにして製造した縫合練習用模造器官は、耐熱性プラスチック袋または容器に入れて密封し、更に必要に応じて、使用期限を延長させるためにレトルト殺菌処理することもできる。
【0043】
また、本実施形態では、粘稠液1に、器官の色、色相、明度及び彩度を似せるための着色料、使用期限を延長させるための保存料または殺菌剤、または、澱粉の老化による弾力性低下現象を防ぐための加工澱粉または糖類、水分の揮散を防ぐに塩化カルシウム、グリシンベタイン、糖類などの保湿剤の少なくとも一つを添加することもできる。
【0044】
『第2実施形態』
本発明の第2実施形態の製造方法を以下に説明する。本実施形態では、まず、第1実施形態と同様に、食品素材からなる原材料を水と混和して食物性の粘稠液1を調製する一方、この粘稠液1を人体の所要器官を擬したキャビティを有するキャスティング・ダイ2に注入し、このキャスティング・ダイ2に注入された粘稠液1を加熱してゲル化させた後、当該キャスティング・ダイ2から脱型する(図1〜図3の工程(a)〜(c))。
【0045】
そして、図5の(e)工程に示すように、この中間成形物Gの表面に粘稠液1を付着せしめて、表面を乾燥させることによって、この表面に人体の皮膚様の皮膜3を形成する。
【0046】
この際、粘稠液1を付着させる手段としては、例えば、この中間成形物Gに粘稠液1を吹き付けまたは浸漬または塗布により付着せしめることができる。
【0047】
本実施形態においても、人体の所要器官の形態および感触を有するゲル強度および針入抵抗を肉体に近似した程度に調整した所要の人体器官の形態および感触を有する縫合練習用模造器官を製造することができる。
【0048】
『第3実施形態』
本発明の第3実施形態の製造方法を以下に説明する。本実施形態では、食品素材からなる原材料を水と混和して食物性の粘稠液1を調整する一方、図6の(f)工程に示すように、人体の所要器官を擬したキャビティを有するキャスティング・ダイ2の内側面に皮膜3を付着せしめる。
【0049】
そして、前記粘稠液1をキャスティング・ダイ2の内側面に付着した皮膜3の中空内部に注入して加熱し、ゲル化後、キャスティング・ダイ2から脱型して、加熱または乾燥などにより、この表面に人体の皮膚様の皮膜3を形成する。
【0050】
本実施形態においても、人体の所要器官の形態および感触を有するゲル強度および針入抵抗を肉体に近似した程度に調整した所要の人体器官の形態および感触を有する縫合練習用模造器官を製造することができる。
【0051】
『第4実施形態』
本発明の第4実施形態の製造方法を以下に説明する。本実施形態では、食品素材からなる原材料を水と混和して食物性の粘稠液1を調製する一方、図7の(g)工程に示すように、人体の所要器官を擬したキャビティを有するキャスティング・ダイ2を加熱してこのキャスティング・ダイ2の内側面に粘稠液1を付着せしめて硬化させて皮膜3を形成する。
【0052】
然る後、この皮膜3の中空内側に、加熱を続けながら粘稠液1を注入してゲル化した後、キャスティング・ダイ2から脱型することによりこの表面に人体の皮膚様の皮膜3を一体成形する。
【0053】
本実施形態においても、人体の所要器官の形態および感触を有するゲル強度および針入抵抗を肉体に近似した程度に調整した所要の人体器官の形態および感触を有する縫合練習用模造器官を製造することができる。
【0054】
なお、上記第3実施形態および第4実施形態の変形例として、図8の(h)工程に示すように、キャスティング・ダイ2として耐熱性プラスチックシート2Pを用いて、このキャスティング・ダイ2(2P)を加熱しつつ内側面に皮膜3を設けた後、加熱を続けながら前記耐熱性プラスチックシート2Pの内側面に粘稠液1を注入してゲル化させることにより、図9の(i)工程に示すように、成形品を当該耐熱性プラスチックシート2Pにより包装するように構成することも可能である。この際、耐熱性プラスチックシート2Pを中空成形するためには、公知の延伸法やブロー成形などを採用することができる。
【0055】
『第5実施形態』
本発明の第5実施形態の製造方法を以下に説明する。本実施形態では、食品素材からなる原材料を水と混和して食物性の粘稠液1を調製する一方、図10の(j)工程に示すように、人体の所要器官を擬したキャビティを有する皮膜3の中空内部に前記粘稠液1を注入し、これらを加熱してゲル化させて表面に人体の皮膚様の前記皮膜3を一体成形する。
【0056】
本実施形態においても、人体の所要器官の形態および感触を有するゲル強度および針入抵抗を肉体に近似した程度に調整した所要の人体器官の形態および感触を有する縫合練習用模造器官を製造することができる。
【実施例】
【0057】
本発明における形状や粘稠液1(食品素材)の配合例、成形温度などの諸条件を具体的に示す種々の実施例について以下に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0058】
<実施例1:頬形>
タピオカ澱粉100部(重量部:以下同じ)、強力小麦粉50部、トレハロース20部、パラオキシ安息香酸プロピル1部、適量のカロテン及び適量のクチナシ色素の混合粉と水110部を混ぜ合わせて得られる粘性のある液を、165〜175℃に加熱した頬形のキャスティング・ダイに充填後、2分間加熱成形して頬形模造器官を製造した。
【0059】
本実施例品を進入度短針アダプターを装着したレオメーターで測定するとき、硬さ54.7g/mm及び緩和量5.86万ergであり、ヒトの「頬」の感触に酷似していた。
【0060】
<実施例2:頬形>
タピオカ加工澱粉100部、コーンスターチ20部、馬鈴薯加工澱粉11部、粉末セルロース40部、適量のカロテン及び適量のクチナシ色素の混合粉をかき混ぜながら楮繊維10部及び10%塩化ベンザルコニウム液2.7部を含む水140部の懸濁液に加えて得られる粘性のある液を、薄くて丈夫な目の細かい紙を張って165〜175℃に加熱した頬形のキャスティング・ダイに充填後、2分間加熱成形して頬形模造器官を製造した。
【0061】
本実施例品を進入度短針アダプターを装着したフドーレオメーターで測定するとき、硬さ41.5g/mm及び緩和量6.6万ergであり、ヒトの「頬」の感触に酷似していた。
【0062】
<実施例3:唇形>
豆乳を140〜160℃に加熱した唇型に吹き付けて薄い表皮を形成させ、次いで、糯粉100部及び適量のクチナシ色素の混合粉に10%塩化ベンザルコニウム液3部を含む水90部を加え、捏ねてから蒸気加熱して餅とした後、加熱水飴100部を加えて十分に練り合わせて得られる流動性の餅を流し入れ、冷却して唇形模造器官を製造した。
【0063】
本実施例品を進入度短針アダプターを装着したレオメーターで測定するとき、硬さ38.8g/mm及び緩和量8.9万ergであり、ヒトの「唇」の感触に酷似していた。
【0064】
<実施例4:手形>
ワキシコーンスターチ100部、粉末セルロース60部、キサンタンガム2部、アルギン酸ナトリウム2部、パラオキシ安息香酸プロピル1部、適量のカロテン及び適量のクチナシ色素の混合粉を水200部に分散させた後、かき混ぜながら加熱して得られる粘性のある液を、手袋状に加工した薄いセロファン膜の中に注入後、2%塩化カルシウム溶液中に3時間浸漬して手形模造器官を製造した。
【0065】
本実施例品を進入度短針アダプターを装着したレオメーターで測定するとき、硬さ50.6g/mm及び緩和量26.8万ergであり、ヒトの「手指」の感触に酷似していた。
【0066】
<実施例5:耳形>
ワキシコーンスターチ100部、コーンスターチ200部、グルコマンナン70部、粉末セルロース100部、パラオキシ安息香酸イソプロピル1部、適量のカロテン及び適量のクチナシ色素の混合粉を水3000部に分散させ、加温して十分膨潤させた後、水酸化カルシウム6部を含む水100部の懸濁液を加えてよく練り合わせてから耳形のキャスティング・ダイに充填し、100℃で3分間加熱してゲル化させた後、過熱水蒸気処理により表面に膜を形成させて耳形模造器官を製造した。
【0067】
本実施例品を進入度短針アダプターを装着したレオメーターで測定するとき、硬さ58.9g/mm及び緩和量32.8万ergであり、ヒトの「耳」の感触に酷似していた。
【0068】
<実施例6:鼻形>
糯粉100部、粉末セルロース50部、トレハロース30部、寒天2部、パラオキシ安息香酸イソプロピル1部、適量のカロテン及び適量のクチナシ色素の混合粉を水200部に分散させ、かき混ぜながら沸騰するまで加熱を続けて粘稠液とした。鼻型に加工したポリプロピレン製シートに10%乾燥卵白溶液を均一に吹き付け、100℃の熱風で乾燥して皮膚様の皮膜を形成させた後、得られた粘稠液を注入すると同時にもう一方の片面にポリプロピレン製シートを融着させて鼻形模造器官を製造した。
【0069】
シートから取り出した本実施例品を進入度短針アダプターを装着したレオメーターで測定するとき、硬さ50.9g/mm及び緩和量48.8万ergであり、ヒトの「鼻」の感触に酷似していた。
【0070】
<実施例7:耳形>
薄力小麦粉100部、ワキシコーンスターチ30部、ゼラチン2部、パラオキシ安息香酸プロピル1部、適量のカロテン及び適量のクチナシ色素の混合粉を水150部に分散させ、かき混ぜながら加熱した。生じた粘性のある液を冷却してからトランスグルタミナーゼ(アクティバTGS)0.5部を加えてよく混合後、耳形のキャスティング・ダイに充填し、20℃で17時間静置してゲル化させた。このゲルを150℃の熱風に30秒間晒して表面に膜を形成させて耳形模造器官を製造した。
【0071】
本実施例品を進入度短針アダプターを装着したレオメーターで測定するとき、硬さ50.2g/mm及び緩和量43.9万ergであり、ヒトの「耳」の感触に酷似していた。
【0072】
<実施例8:唇形>
タピオカ加工澱粉100部、粉末グルテン60部、上新粉30部及び適量のクチナシ色素の混合粉に10%塩化ベンザルコニウム液5部を含む水300部を加え、捏ねて得られる伸びのあるペースト状物を、140〜150℃に加熱した唇形のキャスティング・ダイに充填し、2分間加熱後、キャスティング・ダイから外し、140℃の熱風に1分間晒して表面に膜を形成させて唇形模造器官を製造した。
【0073】
本実施例品を進入度短針アダプター装着したレオメーターで測定するとき、硬さ42.8g/mm及び緩和量13.9万ergであり、ヒトの「唇」の感触に酷似していた。
【0074】
<実施例9:手形>
150℃に加熱した手型を温めた豆乳に20秒間浸して取り出し、型の表面に形成した手の形の薄膜を製造した。ワキシコーンスターチ100部、コーンスターチ40部、カードラン1.5部、適量のカロテン及び適量のクチナシ色素の混合粉を、10%塩化ベンザルコニウム液3部を含む水150部にかき混ぜながら加えた。得られた粘性のある液を前記手の形の薄膜(皮膜)内に注入し、100℃の蒸気で20分間加熱して手形模造器官を製造した。
【0075】
本実施例品を進入度短針アダプター装着したレオメーターで測定するとき、硬さ45.2g/mm及び緩和量41.8万ergであり、ヒトの「手指」の感触に酷似していた。
【0076】
<実施例10:鼻形>
2級すり身100部、小麦澱粉7部,タピオカ加工澱粉5部、食塩3部、パラオキシ安息香酸プロピル0.7部、適量のカロテン、適量のクチナシ色素及び氷水70部をフードプロセッサーで処理して得られるすり身ペーストを鼻形のキャスティング・ダイに充填し、90℃の蒸気で20分間加熱後、140℃の熱風に30秒間晒して表面に膜を形成させて鼻形模造器官を製造した。
【0077】
本実施例品を進入度短針アダプターを装着したレオメーターで測定するとき、硬さ49.4g/mm及び緩和量48.8万ergであり、ヒトの「鼻」の感触に酷似していた。
【0078】
<実施例11:指形>
中力小麦粉100部、タピオカ澱粉80部、粉末セルロース50部、適量のカロテン及び適量のクチナシ色素の混合粉に10%塩化ベンザルコニウム液5部を含む水150部を加え、捏ねて得られる伸びのあるペースト状物を、筒状のセルロース製不織布を入れた指キャスティング・ダイに注入して100〜110℃に4分間加熱して成形後、キャスティング・ダイから外して指形模造器官を製造した。
【0079】
本実施例品を進入度短針アダプターを装着したレオメーターで測定するとき、硬さ46.7g/mm及び緩和量18.3万ergであり、ヒトの指の感触に酷似していた。
【0080】
<実施例12:唇形>
タピオカ加工澱粉100部、粉末グルテン40部、糯粉40部及び適量のクチナシ色素の混合粉に10%塩化ベンザルコニウム液5部を含む水300部を加え、捏ねて得られる伸びのあるペースト状物を140〜150℃に加熱した唇形のキャスティング・ダイに充填し、2分間加熱して成形後、キャスティング・ダイから外し、卵白及び卵黄混合物(5:1)に浸して前面に付着させ、140℃の熱風に1分間晒して表面に膜を形成させて唇形模造器官を製造した。
【0081】
本実施例品を進入度短針アダプターを装着したレオメーターで測定するとき、硬さ45.9g/mm及び緩和量8.0万ergであり、ヒトの「唇」の感触に酷似していた。
【0082】
<実施例13:指形>
粉末セルロース100部、薄力小麦粉80部、α化澱粉70部、パラオキシ安息香酸プロピル6部、適量のカロテン、適量のクチナシ色素及びトランスグルタミナーゼ(アクティバTG−B)3部の混合物を、ゼラチン20部を溶かした水1000部の液に加えてよく混合した後、指状に成形したセルロース製不織布の中に入れて20℃で16時間静置した。生じたゲル状物を指形のキャスティング・ダイに移して90℃で10分間加熱して調整後、キャスティング・ダイから外して指形の模造器官を製造した。
【0083】
本実施例品を進入度短針アダプターを装着したレオメーターで測定するとき、硬さ50.2g/mm及び緩和量26.5万ergであり、ヒトの「指」の感触に酷似していた。
【0084】
<実施例14:頬形>
大豆タンパク(フジプロFM)100部、乾燥卵白100部、ワキシコーンスターチ100部、粉末セルロース30部、パラオキシ安息香酸プロピル10部、適量のカロテン及び適量のクチナシ色素の混合粉を、キサンタンガム7部及び食塩7部を溶かした水1450部の液にかき混ぜながら加えて得られる粘性のある液を頬形のキャスティング・ダイに充填し、90〜95℃に5分間加熱後、キャスティング・ダイから外し、150℃の熱風に50秒間晒して表面に膜を形成させて頬形模造器官を製造した。
【0085】
本実施例品を進入度短針アダプターを装着したレオメーターで測定するとき、硬さ42.8g/mm及び緩和量9.7万ergであり、ヒトの「頬」の感触に酷似していた。
【0086】
(参考比較例)
上記実施例における本発明品の物性との比較として、市販食品を進入度短針アダプターを装着したレオメーターで測定したとき、コンニャクでは硬さ15.1g/mm及び緩和量0.9万erg、蒲鉾では硬さ15.1g/mm及び緩和量0.9万erg、外郎では硬さ2560g/mm及び緩和量602万erg、コンニャクゼリーでは硬さ1150g/mm及び緩和量618万erg、胡麻豆腐では硬さ385g/mm及び緩和量206万ergであり、ヒトの皮膚組織とは大きく異なる感触であった。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明によると、鼻、耳、頬、口(唇)、手、指などの器官の形態及び感触に似せた縫合練習用模造器官は、実際上頻度の高い鍵状、Y字状及びデブリードマン創縁状の傷の手術と同様の状況と感触に即した縫合練習並びに縫合段差及びドッグイヤーを防ぐ縫合練習に使用できるので、医師を目指す学生及び経験の浅い医師の技量向上に役立って有用である。また、材料が食品素材なので安価で経済的であると同時に通常の生ごみとして廃棄できるので、経済力の小さい学生や医師にとっても便利である。
【符号の説明】
【0088】
1 粘稠液
2 キャスティング・ダイ
G 中間成形物
2P 耐熱性プラスチックシート
3 皮膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品素材からなる原材料が水と混和して調製された食物性の粘稠液(1)がゲル化して、人体の所要器官を擬した形状に成形されている一方、
表面に人体の皮膚様の皮膜(3)が形成されており、人体の所要器官の形態および感触を有するゲル強度および針入抵抗が肉体に近似した程度に調整されていることを特徴とする所要の人体器官の形態および感触を有する縫合練習用模造器官。
【請求項2】
成形品の硬さおよび緩和量が、それぞれ35〜60g/mmおよび4万〜50万エルグ(erg)の範囲であって、ヒトの器官の形態及び感触に近くしたことを特徴とする請求項1記載の所要の人体器官の形態および感触を有する縫合練習用模造器官。
【請求項3】
粘稠液(1)の食品素材が、穀粉、澱粉、加工澱粉、セルロースの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2記載の所要の人体器官の形態および感触を有する縫合練習用模造器官。
【請求項4】
粘稠液(1)の食品素材にゲル化剤が配合されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の所要の人体器官の形態および感触を有する縫合練習用模造器官。
【請求項5】
粘稠液(1)に、器官の色、色相、明度及び彩度を似せるための着色料、使用期限を延長させるための保存料または殺菌剤、または、澱粉の老化による弾力性低下現象を防ぐための加工澱粉または糖類、水分の揮散を防ぐに塩化カルシウム、グリシンベタイン、糖類などの保湿剤の少なくとも一つが添加されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の所要の人体器官の形態および感触を有する縫合練習用模造器官。
【請求項6】
食品素材からなる原材料を水と混和して食物性の粘稠液(1)を調製する一方、この粘稠液(1)を加熱して表面に人体の皮膚様の皮膜(3)を形成させると共にゲル化させた後、
当該キャスティング・ダイ(2)から脱型して、人体の所要器官の形態および感触を有するゲル強度および針入抵抗を肉体に近似した程度に調整することを特徴とする所要の人体器官の形態および感触を有する縫合練習用模造器官の製造方法。
【請求項7】
食品素材からなる原材料を水と混和して食物性の粘稠液(1)を調製する一方、この粘稠液(1)を人体の所要器官を擬したキャビティを有するキャスティング・ダイ(2)に注入し、このキャスティング・ダイ(2)に注入された粘稠液(1)を加熱してゲル化させた後、
当該キャスティング・ダイ(2)から脱型して、この中間成形物(G)の表面を乾燥させ、この表面に人体の皮膚様の皮膜(3)を形成すると共に、
人体の所要器官の形態および感触を有するゲル強度および針入抵抗を肉体に近似した程度に調整することを特徴とする所要の人体器官の形態および感触を有する縫合練習用模造器官の製造方法。
【請求項8】
食品素材からなる原材料を水と混和して食物性の粘稠液(1)を調製する一方、この粘稠液(1)を人体の所要器官を擬したキャビティを有するキャスティング・ダイ(2)に注入し、加熱してゲル化させた後、
当該キャスティング・ダイ(2)から脱型して、この中間成形物(G)に粘稠液(1)を吹き付けまたは浸漬または塗布により付着せしめて、表面を乾燥させることによって、この表面に皮膜(3)を形成すると共に、
人体の所要器官の形態および感触を有するゲル強度および針入抵抗を肉体に近似した程度に調整することを特徴とする所要の人体器官の形態および感触を有する縫合練習用模造器官の製造方法。
【請求項9】
熱風または過熱水蒸気に晒すことによってキャスティング・ダイ(2)から脱型した成形品の表面を乾燥することを特徴とする請求項7または8記載の所要の人体器官の形態および感触を有する縫合練習用模造器官の製造方法。
【請求項10】
食品素材からなる原材料を水と混和して食物性の粘稠液(1)を調製する一方、
人体の所要器官を擬したキャビティを有するキャスティング・ダイ(2)の内側面に皮膜(3)を付着せしめた後、前記粘稠液(1)をキャスティング・ダイ(2)の内側面に付着した皮膜(3)の中空内部に注入して加熱し、ゲル化後、キャスティング・ダイ(2)から脱型して、この表面に人体の皮膚様の皮膜(3)を形成すると共に、
人体の所要器官の形態および感触を有するゲル強度および針入抵抗を肉体に近似した程度に調整することを特徴とする所要の人体器官の形態および感触を有する縫合練習用模造器官の製造方法。
【請求項11】
食品素材からなる原材料を水と混和して食物性の粘稠液(1)を調製する一方、
人体の所要器官を擬したキャビティを有するキャスティング・ダイ(2)を加熱してこのキャスティング・ダイ(2)の内側面に粘稠液(1)を付着せしめて硬化させて皮膜(3)を形成する一方、この皮膜(3)の中空内側に、加熱を続けながら粘稠液(1)を注入してゲル化した後、キャスティング・ダイ(2)から脱型することによりこの表面に人体の皮膚様の皮膜(3)を一体成形することによって、
人体の所要器官の形態および感触を有するゲル強度および針入抵抗を肉体に近似した程度に調整することを特徴とする所要の人体器官の形態および感触を有する縫合練習用模造器官の製造方法。
【請求項12】
キャスティング・ダイ(2)として耐熱性プラスチックシート(2P)を用いて、
このキャスティング・ダイ(2(2P))を加熱しつつ内側面に皮膜(3)を設けた後、加熱を続けながら前記耐熱性プラスチックシート(2P)の内側面に粘稠液(1)を注入してゲル化させることにより、成形品を当該耐熱性プラスチックシート(2P)により包装することを特徴とする請求項10または11記載の所要の人体器官の形態および感触を有する縫合練習用模造器官の製造方法。
【請求項13】
食品素材からなる原材料を水と混和して食物性の粘稠液(1)を調製する一方、
人体の所要器官を擬したキャビティを有する皮膜(3)の中空内部に前記粘稠液(1)を注入し、これらを加熱してゲル化させて表面に人体の皮膚様の前記皮膜(3)を一体成形することによって、
人体の所要器官の形態および感触を有するゲル強度および針入抵抗を肉体に近似した程度に調整することを特徴とする所要の人体器官の形態および感触を有する縫合練習用模造器官の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−15789(P2013−15789A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150437(P2011−150437)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(391012040)株式会社ホソダSHC (14)
【出願人】(504145320)国立大学法人福井大学 (287)
【Fターム(参考)】