説明

人体検知センサ

【課題】マン・マシン・インタフェースとして使いやすい人体検知センサを提供する。
【解決手段】送信波を発生する発振回路と、前記送信波を放射し、前記送信波の物体によ
る反射波を受信波として受信するアンテナと、前記受信波を検知する検波回路と、前記検
波回路に含まれるドップラー信号に基づいて被検知体の検知の有無を判定する制御判断回
路と、を備え、前記制御判断回路は、前記アンテナから放射される電波の方向を変化させ
つつ被検知体の接近を検知する人体検知モードと、前記アンテナから放射される電波の方
向をひとつの方向に維持させつつ前記被検知体が前記アンテナの前で実行する動作を検知
するスイッチ入力モードと、を実行可能であり、前記人体検知モードを実行中に被検知体
を検知すると、前記人体検知モードを終了して前記スイッチ入力モードを実行することを
特徴とする人体検知センサが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体検知センサに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波などが人体にあたると反射波あるいは透過波を生じる。この反射波または透
過波を受信し人体の有無を検出するのが人体検知センサであり、自動ドア、機器のリモー
トコントロール、便器洗浄装置などに使用できる。さらに、移動物体を検出する人体検知
センサもあり、例えば水洗便器の自動洗浄などに有用である。
【0003】
人体を含む移動物体を検知するには、ドップラー効果を利用することができる。すなわ
ち、電波や音波が移動物体に当たり反射すると、反射波の周波数がドップラーシフトする
。反射波及び送信波の差分周波数スペクトラムを求めることにより移動物体が検知される
。さらにドップラー周波数は物体の移動速度に比例するので、移動速度を知ることもでき
る。
【0004】
送信波として電波を用いる場合、センサを構成するアンテナからの電波放射方向を目的
物に向けて精度良く制御することが重要である。給電素子及びこれを取り囲む無給電素子
をパッチ電極で構成し、高周波スイッチにより電気的にスキャンを行うアンテナにおいて
は、高周波スイッチのオン及びオフを切替えるために設ける制御線が、アンテナの接地特
性に影響を及ぼし、電波ビームの放射方向を精度良く制御することを困難にすることがあ
る。
【0005】
無給電素子が基板内のスルーホール式の制御線を通じて基板の背面上に設けられた高周
波スイッチに接続され、電波ビームの放射方向を切替えるマイクロストリップアンテナ及
びこれを用いた高周波センサに関する技術開示例がある(特許文献1)。電波ビームの放
射方向をスキャンさせると、例えば人体検知センサのアンテナに向かって人がどの方向か
ら接近してきたかなどを検知することができる。
【特許文献1】国際公開番号WO2006/035881A1号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、人体検知センサの前にいる人の動きはさまざまである。従って、人体検知セ
ンサのアンテナから放射する電波ビームの方向をスキャンさせる場合、スキャンの速度に
よっては、人や手などの動きが検出できない場合もあり得る。例えば、スキャンの速度が
早すぎると、高齢者のように歩行速度が遅い人や、手の動きが遅い場合などの検知が困難
となることもあり得る。
すなわち、高齢者がゆっくりと近づいてくる場合と、子供が走って近づいてくる場合と
、では、接近速度にかなりの差がある。複数のエリアに電波ビームを順次スキャンさせる
場合、速度の大きい被検知体がどのエリアにいるかを見極めるためには、それぞれのエリ
アを検知する時間を短くし、電波ビームを速くスキャンさせる必要がある。一方、電波ビ
ームの方向をあまり早く切り替えると、ゆっくり近づいてくる高齢者の検知信号(ドップ
ラー信号)が半波長分も得られなくなり、速度情報のみならず、移動しているのかそれと
も静止しているのかも判別が困難となる場合もあり得る。
【0007】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、高周波センサに対して種
々の速度で接近してくる被検知体の接近情報をアナログ的に検知可能とすることにより、
マン・マシン・インタフェースとして使いやすい人体検知センサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、送信波を発生する発振回路と、前記送信波を放射し、前記送
信波の物体による反射波を受信波として受信するアンテナと、前記受信波を検知する検波
回路と、前記検波回路に含まれるドップラー信号に基づいて被検知体の検知の有無を判定
する制御判断回路と、を備え、前記制御判断回路は、前記アンテナから放射される電波の
方向を変化させつつ被検知体の接近を検知する人体検知モードと、前記アンテナから放射
される電波の方向をひとつの方向に維持させつつ前記被検知体が前記アンテナの前で実行
する動作を検知するスイッチ入力モードと、を実行可能であり、前記人体検知モードを実
行中に被検知体を検知すると、前記人体検知モードを終了して前記スイッチ入力モードを
実行することを特徴とする人体検知センサが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、マン・マシン・インタフェースとして使いやすい人体検知センサが提供
される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる人体検知センサのブロック図である。
人体検知センサは、高周波部10と制御部20とを有する。高周波部10は、給電素子
102及び無給電素子104、106などからなるアンテナ100と、高周波回路12と
、を有する。高周波回路12には、送信波を発生する発振回路14と、受信波からドップ
ラー信号を取り出す検波回路16と、が設けられている。
【0011】
アンテナ100から放射された送信波は、人体などの物体に当たり反射波を生じ、給電
素子102で受信される。アンテナ100は送受信共用でもよいし、送信用と受信用とを
別にしてもよい。人体検知用の人体検知センサにおいて使用可能な送信波の周波数は、国
毎に異なる場合もあるが、概ね5〜30GHzである。
【0012】
移動物体の場合、ドップラー信号が高周波部10の検波回路16から出力される。この
ドップラー信号は、制御部20の増幅器22を介して制御判断回路26へ入力される。ま
た、増幅器22の他の出力は、比較器24を介して制御判断回路26へ入力される。その
出力は、負荷制御回路30へ入力される。また、制御判断回路26は、無給電素子104
、106の電波ビームの放射方向を変える制御信号を出力する。
図2は、本実施形態の人体検知センサに設けられるマイクロストリップアンテナの一例
を表す平面図である。
また、図3は、図2のA−A断面図である。なお、図2以降の図については、既出の図
に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0013】
このアンテナは、セラミックスや樹脂などの絶縁性の材料からなる基板101の前面に
矩形状の導電体薄膜からなる3つのアンテナ素子102、104、106が一直線上に併
設された構造を有する。中央のアンテナ素子102は、マイクロ波信号源から直接的に(
すなわち、電線を通じて)マイクロ波電力の供給を受ける給電素子である。給電素子10
2の両側に設けられた2つのアンテナ素子104、106は、直接的な給電は受けない無
給電素子である。給電素子102の励振方向は、図2において上下の方向であり、3つの
アンテナ素子104、102、106の配列方向は励振方向と直交する方向とされている
。この実施例では一例として左右の無給電素子104、106は、中央の給電素子102
を中心として線対象の位置、すなわち給電素子102から等距離の位置に配置されており
、サイズも同一とされている。無給電素子104、106のサイズは、給電素子102の
サイズとほぼ同一とすることができるが、異なるものとしてもよい。なお、励振方向にみ
た長さは、用いるマイクロ波の波長に応じて最適な範囲があるので変えることができる範
囲は狭いが、励振方向に対して垂直な方向の長さはより広い範囲で変えることができる。
【0014】
給電素子102の背面の所定箇所(以下、「給電点」という)に給電線108の一端が
接続されている。図3に表したように、給電線108は、基板101を貫通する導電線で
あり、給電線108の他端は、基板101の背面上に位置された高周波回路12のマイク
ロ波出力端子に接続されている。なお、高周波回路12は、例えばワンチップICとして
形成することができる。給電素子102は、高周波回路12に設けられた発振回路14(
図1参照)から出力される特定周波数(例えば、10.525GHz、24.15GHz
、または76GHzなど)のマイクロ波電力を給電点に受けて励振される。
【0015】
図3に表したように、基板101は多層基板であり、その内部には1つの層として、薄
膜状のアース電極116が、基板101の全面にわたって設けられている。アース電極1
16は、接地線115を介して高周波回路12のグランド端子に接続されている。
【0016】
図2及び図3に表したように、無給電素子104、106のそれぞれの背面の所定箇所
(以下、「接地点」という)にも、制御線110、112の一端がそれぞれ接続されてい
る。制御線110、112の他端は、基板101の背面上に配置されたスイッチ120、
124の一側端子にそれぞれ接続されている。スイッチ120、124の他側端子は、接
地線118、122をそれぞれ介して、アース電極116に接続されている。スイッチ1
20、124は個別にオン・オフ操作が可能とされている。左側のスイッチ120のオン
・オフ操作により、左側の無給電素子104がアース電極116に接続されるか、フロー
ティング状態になるかが切り替えられる。右側のスイッチ124のオン・オフ操作により
、右側の無給電素子106がアース電極116に接続されるか、フローティング状態にな
るかが切り替えられる。
【0017】
スイッチ120、124には、高周波スイッチを用いることが望ましいが、使用するマ
イクロ波周波数に対するインピーダンスが所定の適正値に調整されている必要は特になく
、高周波信号を遮断するスイッチのオフ特性(アイソレーション)が良好であればよい。
図2に表したように、給電素子102の給電点の位置は、一例として、給電素子102
の励振方向(上下方向)において、使用するマイクロ波の基板101上での波長λgに応
じた最適アンテナ長 (ほぼ、λgである)だけ給電素子102の下側エッジ(または上
側エッジ)から上側(または下側)に離れた位置であって、励振方向(上下方向)と直交
する方向(左右方向)において、給電素子102の中央位置とされている。一方、無給電
素子104、106のそれぞれの接地点の位置は、一例として、励振方向(上下方向)に
おいて、各無給電素子104、106の中央を中心とした幅L/2の範囲より外側の位置
であって、直交する方向(左右方向)において、それぞれの無給電素子104、106の
中央の位置とされている。ここで、Lは、無給電素子104、106の励振方向にみた長
さである。
【0018】
このように構成されたマイクロストリップアンテナにおいて、スイッチ120、124
を操作して無給電素子104、106をアース電極116に接続(接地)するかを切り替
えることにより、このマイクロストリップアンテナから出力されてる電波ビームの放射方
向を複数の方向のいずれかに切り替えることができる。給電素子102と無給電素子10
4、106との位置関係により放射方向が決定されるため、波長よりも極端に短い給電線
108を介して給電素子102と高周波回路12とを接続することが可能であり、よって
、伝送損失が少なく効率がよい。また、制御線に接続されるスイッチが1つで電波ビーム
の放射方向を変化させることができるため、このマイクロストリップアンテナは基板サイ
ズ小型化や製造の低コスト化に適している。
【0019】
図4は、スイッチ120、124の操作による電波ビームの放射方向の変化を表す模式
図である。
図4において、楕円は放射される電波ビームを模式的に表し、横軸の角度は基板101
の主面101S(図2、図3参照)に対して垂直な方向からみた電波ビームの放射方向の
角度(放射角度)を表し、プラスの角度は放射方向が図2において右側に傾いていること
を表し、マイナスの角度は左側に傾いていることを表す。
【0020】
図4に表したように、両方のスイッチ120、124がオンの場合(すなわち、両方の
無給電素子104、106が接地されている場合)、電波ビームは点線で表したように、
基板101の主面に対して垂直な方向に放射される。両方のスイッチ120、124がオ
フの場合(すなわち、両方の無給電素子104、106がフローティング状態の場合)も
、電波ビームは一点鎖線で表したように、基板101の主面に対して垂直な方向に放射さ
れる。
【0021】
一方、左側のスイッチ120がオンで右側のスイッチ124がオフの場合(すなわち、
左側の無給電素子104だけが接地されている場合)は、電波ビームは破線で表したよう
に、左側(位相条件によっては右側)に傾いた方向に放射される。また、左側のスイッチ
120がオフで右側のスイッチ124がオンの場合(すなわち、右側の無給電素子106
だけが接地されている場合)は、電波ビームはもうひとつの破線で表したように、右側(
条件によっては左側)に傾いた方向に放射される。なおここで、それぞれのスイッチ状態
において、電波ビームが左側に傾くか、それとも右側に傾くかは、給電素子102から放
射される電波の位相と、無給電素子104、106から放射される電波の位相と、の位相
差により決定される。
このように、接地される無給電素子104、106を選択することにより、電波ビーム
の放射方向を変えることができる。
【0022】
図5は、本実施形態の人体検知センサにおいて実行される動作を表すフローチャートで
ある。
また、図6は、このフローチャートに対応したドップラー信号の波形や信号のタイミン
グなどを表すグラフ図である。
また、図7及び図8は、人体検知センサの動作を説明するための模式図である。
【0023】
本実施形態においては、まず、図5に表したように、人体検知センサは人体検知モード
を実行する(ステップS102)。これは例えば、図7(a)〜(c)に表したように、
アンテナ100から放射する電波ビームの方向を順次切り替えて走査(スキャン)させる
モードである。図7(a)〜(c)に表した具体例の場合、電波ビームD1→D3→D1
→D3・・の順に交互に切り替えてスキャンしている。なお、この際のスキャンの速度は
、人の動きを検知するために適した速度であることが望ましく、例えば、それぞれの周期
d1、d2を10〜50ミリ秒程度とすることができる。
【0024】
そして、例えば、図7(b)に矢印Aで表したように、アンテナ100から向かって右
側から被検知体900が接近し、図7(c)に表したように電波ビームD3による検知範
囲内にはいると、図6に表したようにドップラー信号Aが生ずる。すると、制御判断回路
26は、被検知体900を検知する(ステップS104:yes)。なお、図6に表した
具体例の場合、電波ビームD3を放射する期間d1と電波ビームD1を放射する期間d2
とが交互に繰り返され、期間d1におけるドップラー信号Aが閾値を越えるとともに、期
間d2におけるドップラー信号Bよりも大きい。制御判断回路26は、このように各期間
に得られるドップラー信号の振幅により、被検知体900がどちらの方向に存在するかを
特定することができる。
【0025】
被検知体900を検知すると(ステップS104:yes)、制御判断回路26は、ス
イッチ入力モードを開始する(ステップS106)。スイッチ入力モードにおいては、ま
ず制御判断回路26は、制御信号を出力して電波ビームのスキャンを停止させ、電波ビー
ムを被検知体900の方向に固定させる。この状態で、被検知体900は、例えば、図8
に表したように右手を前方に伸ばすことによりスイッチ入力を実行できる(ステップS1
08:yes)。すなわち、被検知体900の動きに応じて、図6に表したようにドップ
ラー信号Cが発生する。制御判断回路26は、このドップラー信号Cを検知し、その波形
に応じた情報を判定し、負荷制御回路30を介して外部に所定のスイッチ信号(制御信号
)をアナログ的に出力することができる。
【0026】
ドップラー信号Cに基づく、アナログ的なスイッチ信号の生成の方法としては、後に詳
述するように、例えば、ドップラー信号Cの周波数が所定値以上であり且つドップラー信
号Cの振幅が所定の閾値を越えるたびにパルス信号を出力する方法がある。または、ドッ
プラー信号Cの振幅が所定の期間内に所定の閾値を超えた回数に基づいてパルス信号を出
力してもよい。または、ドップラー信号Cの周波数が所定値以上の時に、その周波数に基
づいて信号を出力してもよい。
【0027】
ドップラー信号Cが検出され、波形に応じた情報に基づいて外部にスイッチ信号を出力
した後に、例えば、ドップラー信号の周波数が所定値を下回ったり、あるいはドップラー
信号の振幅が所定値を下回ったような場合に、スイッチ入力モードを終了して人体検知モ
ード(ステップS102)に戻る。
また、スイッチ入力モードが実行されている時に、人体検知センサまたはこれに接続さ
れた機器から被検知体900に対して、スイッチ入力が可能であることを知らせる報知信
号を出力してもよい。報知信号としては、例えば、音や光、またはディスプレイへの表示
や、人体検知センサにより制御される機器の所定の動作などを挙げることができる。使用
者である被検知体900は、この報知信号により、人体検知センサに情報を入力可能であ
ることを確認できる。
【0028】
図9及び図10は、本実施形態の人体検知センサの動作のもうひとつの具体例を表す模
式図である。
本具体例においても、人体検知モード(ステップS102)においては、人体検知セン
サから放出される電波ビームは、図9(a)〜(c)に表したようにD1→D3→D1・
・と順次切り替えてスキャンしている。そして、被検知体900が接近し、左手を伸ばし
て、これが電波ビームD3による検知範囲内にはいると、ドップラー信号が発生し検知が
確定される(ステップS104:yes)。すると、スイッチ入力モード(ステップS1
06)が開始され、電波ビームがD3に固定される。しかる後に、図10に矢印Bで表し
たように、被検知体900が左手を左から右に振ると、この動作に応じたドップラー信号
C(図6)が発生し、その動作に応じた所定の情報を入力することができる。
【0029】
このようにしてスイッチ入力が実行されると(ステップS108:yes)、再び人体
検知モードに戻る(ステップS102)。人体検知モードにおいては、スイッチ入力はで
きないので、被検知体900が例えば別の目的で手などを動かしても、その動作により人
体検知センサが誤検知をすることを防止できる。
【0030】
本実施形態によれば、例えは、人体検知センサを部屋の壁などに設置し、照明や窓の開
閉を制御することができる。すなわち、使用者である被検知体900が人体検知センサの
前に近づき、手を振ると、その方向に応じて照明の照度が変化したり、窓が開閉するよう
に制御できる。また、例えば、自動ドアを開閉させることもできる。
【0031】
そして、本実施形態によれば、スイッチ入力モードにおいて、電波ビームを被検知体9
00に向けて固定することにより、被検知体900のスイッチ入力動作を確実に検知する
ことが可能となる。特に、被検知体900の動作が遅いような場合、電波ビームをスキャ
ンさせていると確実に検知できない場合もありうる。これに対して、本実施形態において
は、電波ビームを被検知体900の方向に固定してその動作を検知するので、ゆっくりと
した動作でも確実に検知することが可能となり、マン・マシン・インタフェースとして使
いやすい人体検知センサを実現できる。
【0032】
なお、本実施形態において、人体を検知した(ステップS104:yes)後、制御判
断回路26は、直ちにスイッチ入力モードを開始するのではなく、所定時間(例えば、1
〜5秒間)の経過後に電波ビームの走査(スキャン)を停止して電波ビームを固定するよ
うにしてもよい。所定時間の経過を待つのは、その間に使用者である被検知体900が入
力のための準備をする場合があるからである。例えば、被検知体900が右手を右側から
左側に振る動作により人体検知センサに情報を入力しようとする時に、その入力動作に先
だって、右手を側方に持ち上げたりする場合がある。このような準備動作を誤検知しない
ためである。
【0033】
なお、このような誤検知を防止する方法としては、本具体例のように電波ビームのスキ
ャンの停止を遅延させる方法の他にも、例えば、トリガー信号と同時に電波ビームは固定
するが、制御判断回路26において検知信号を無効とするような方法であってもよい。ま
た、このような所定の待ち時間を設けず、スイッチ入力モードが開始されると、直ちにス
イッチ入力が可能とされてもよい。
【0034】
ここで、スイッチ入力モードにおける信号の入力の方法としては、例えば、ドップラー
信号の周期から信号を得る方法がある。図6に表した具体例の場合、ドップラー信号Cが
所定の基準値(振幅の中心値)からみてプラス側にある期間をハイレベル(H)とするパ
ルスを生成して、これを判定信号として出力する。この判定信号に基づき、人体検知セン
サに接続された機器をアナログ的に制御することが可能となる。
【0035】
例えば、図9及び図10に表した具体例において、アンテナ100の前の被検知体90
0が左手を差し出すと、電波ビームD3がこれを検知しスキャンが停止されて電波ビーム
が固定される。ここで例えば、人体検知センサが部屋の照明を制御するものとすると、電
波ビームD3により被検知体900を検知した場合には照度を上げるスイッチ入力を可能
とし、電波ビームD1により被検知体900を検知した場合には、照度を下げるスイッチ
入力を可能とすることができる。
【0036】
そして、例えば図10に表したように被検知体900が左手を右に振った時、その速度
に応じて照度の増加量を制御してもよい。例えば、被検知体900が左手を振る速度が高
い場合には照度の増加量を大きくし、速度が低い場合には照度の増加量を小さくすること
などが可能となる。左手の速度が高い場合には、ドップラー信号の周波数が高くなるので
、例えば図6に表した判定信号のパルス数が大きくなる。したがって、判定信号のパルス
数により、被検知体900の動作の速度を判定することができる。そして、判定信号のパ
ルス数やパルス長などに応じて、外部の機器をアナログ的に制御することが可能となる。
人間の手の動く速度は、通常、300Hz(=3.3ミリ秒の周期)以下である。従って
、判定信号をパルス信号で出力する場合、1ミリ秒以下のパルス長で出力すれば良い。
【0037】
なおここで、図9(c)〜図10(b)に表した一連の動作は、使用者が連続的に実行
することができる。つまり、使用者が図9(c)に表したように左手を差し出して右方向
に振る動作を連続的に実行した場合に、本実施形態の人体検知センサは、この動作を人体
検知モードとスイッチ入力モードのそれぞれにおいて連続的に検知することができる。
【0038】
図11は、スイッチ入力モードにおけるドップラー信号の処理のもうひとつの方法を表
すグラフ図である。
本具体例においては、電波ビームを固定してスイッチ入力モードに入った後に得られた
ドップラー信号Cについて、所定の基準値(振幅の中央値)からみてマイナス側からプラ
ス側に遷移した瞬間にパルスを生成する。このようにして得られたパルスの数または間隔
に基づいて、アナログ的な制御信号を生成することができる。例えば、所定の時間間隔に
おけるパルスの数が多いほど、アナログ制御信号を大きくするような制御が可能となる。
また例えば、パルスの間隔が短いほどアナログ制御信号を大きくしてもよい。
【0039】
またここで、例えば、被検知体である人体がアンテナの前で手を横に振った場合やアン
テナに対して手を差し出した場合など、アンテナに対する手の相対的な動作としては、ア
ンテナに対して手が近づく接近動作と、アンテナから遠ざかる離遠動作とがある。そして
、一般的に、アンテナから遠い位置においては相対的な速度は大きくなり、アンテナに近
づくほど相対的な速度は小さくなる。つまり、ドップラー信号Cの周波数は、最初は高く
、その後低下し、その後再び高くなる傾向がある。
【0040】
そして、一般に、タッチレス型の入力装置に対して使用者が手を振って情報を入力する
ような場合には、入力装置(すなわち、アンテナ)に対して手を近づける動作により入力
するほうがより自然な入力が可能である。つまり、入力装置から手を遠ざける動作まで入
力の対象に含めたくない場合が多い。
【0041】
そこで、このような場合には、手が接近する動作のみを抽出するためには、ドップラー
信号Cの前半の部分のみに基づいて制御信号を出力すればよい。このようにすれば、周波
数が低下する前のドップラー信号Cに基づいて、接近動作のみを抽出できる。あるいは、
スイッチ入力モードにおけるドップラー信号Cの周波数が所定値以下となったら、その後
のドップラー信号は無効とし、振幅が閾値を越えても周波数が所定値以上になっても制御
信号を出力しないようにしてもよい。
【0042】
図12は、スイッチ入力モードにおけるドップラー信号の処理のもうひとつの方法を表
すグラフ図である。
本具体例においては、所定の閾値を設定し、ドップラー信号がこの閾値を越えた期間を
ハイレベル(H)とする閾値判定信号を生成し、閾値判定信号のそれぞれのハイレベルに
対応したパルス信号を生成する。パルス信号を構成するパルスのパルス長は、同一とされ
ている。このようなパルス信号を用いても、アナログ的な制御を実行することが可能であ
る。なお、閾値判定信号のハイレベルとパルス信号のパルスとは必ずしも一致させる必要
はなく、例えば、図13に表したように、閾値判定信号のハイレベル2回毎にひとつのパ
ルスを生成してもよい。またさらに一般的に、閾値判定信号のハイレベルの回数をJとし
て(J×n:nは整数)回毎にひとつのパルスを生成してもよい。
【0043】
図14は、スイッチ入力モードにおけるドップラー信号の処理のもうひとつの方法を表
すグラフ図である。
本具体例においては、ドップラー信号の振幅の中心値を基準値として、ドップラー信号
がこの基準値をマイナス側からプラス側に越える毎にパルスを生成して閾値判定信号を生
成し、閾値判定信号の間隔Tが所定の幅よりも小さい時に、パルスを生成する。つまり、
ドップラー信号の周波数が所定値よりも大きい場合に、パルス信号を生成する。このよう
にすれば、被検知体のスイッチ入力の動作の速度が大きいほどパルス数が増加し、これに
対応してアナログ的な制御が可能となる。
なお、本具体例においてパルスを生成する際に、ドップラー信号の振幅が所定値以上で
ないとパルスを生成しないようにしてもよい。また、より単純に、ドップラー信号の周期
をTとして、(T×n:nは整数)回毎にひとつのパルスを生成してもよい。
【0044】
図15は、スイッチ入力モードにおけるドップラー信号の処理のもうひとつの方法を表
すグラフ図である。
本具体例においては、ドップラー信号の振幅の中心からみてプラス側とマイナス側にそ
れぞれ閾値R1、R2を設定し、ドップラー信号がこれらの閾値を越える毎にパルスを生
成して閾値判定信号を生成する。そして、閾値判定信号の間隔T1に対応するパルス長を
有するパルス信号を生成する。つまり、ドップラー信号の周波数が低いほど、パルス長の
長いパルス信号を生成する。このようなパルス信号を用いても、被検知体のスイッチ入力
の動作の速度に応じてアナログ的な制御が可能となる。
【0045】
図16は、本実施形態の変型例を説明するための模式図である。
本変型例においては、スイッチ入力モードにおいてタイマT1による時間管理を実行す
る。すなわち、スイッチ入力モード(ステップS106)が開始されると、まずタイマT
1がカウントを開始する(ステップS110)。そして、スイッチ入力の判定(ステップ
S108)の後に、時間T1が経過したか判断し、経過した場合(ステップS112:y
es)には、スイッチ入力モードを終了して自動的に人体検知モード(ステップS102
)に戻る。このようにすれば、スイッチ入力モードの時間を制限でき、その後に使用者で
ある被検知体900が意図しない動作をした場合でも誤検知されることを防止できる。な
お、本変型例において、時間T1は、人体検知センサの使用態様により適宜決定すること
ができるが、例えば10〜60秒程度に設定することができる。
【0046】
図17は、本実施形態の第2の変型例を説明するための模式図である。
本変型例においては、スイッチ入力モードにおいて、タイマT1とともにタイマT2に
よる時間管理も実行する。すなわち、スイッチ入力が実行されると(ステップS108:
yes)、タイマT2のカウントが開始される。そして、時間T2が経過すると、スイッ
チ入力モードは終了し、人体検知モード(ステップS102)に自動的に戻る。
このようにすれば、時間T1の経過前であっても、スイッチ入力が実行された後に所定
時間T2が経過すれば、スイッチ入力モードを終了できる。その結果として、例えば、ス
イッチ入力をしたと安心した使用者である被検知体900が意図しない動作をしたような
場合でも、誤検知されることを防止できる。なお、本変型例においても、時間T2は、人
体検知センサの使用態様により適宜決定することができるが、例えば1〜10秒程度に設
定することができる。
【0047】
図18は、ドップラー信号の処理のもうひとつの方法を表すグラフ図である。
人間の手の接近速度に応じてアナログ制御をする場合、手が接近し始める速度が例えば
200Hzや100Hz、あるいは50Hzと違いがあっても、アンテナに近づくほど周
波数は同程度に低下する傾向がある。そのため、手が接近し始めてから所定の周波数(例
えば10〜30Hz)以下になるまでの時間とそのときの速度を抽出し、手の移動距離を
算出すれば、アナログスイッチ(人体検知センサ)を操作(接近)する手の速度や移動時
間が使用者により異なっていても、変化させたい物理量の増加減を同一に揃えることがで
きる。
【0048】
しかし、手の動きが小さく移動時間が短いと電波方向を固定した後に判定信号が出力さ
れないケースが生じる。これに対して、電波の放射方向が固定されてからのドップラー信
号の状態だけで判定するのではなく、人体検知した時からドップラー信号が所定の周波数
以下(所定の周期以上)になるまでの時間と、その間の速度と、から移動距離を算出すれ
ば手が接近する動作が小さく移動時間が短い場合でも移動距離を認識でき、応答性に優れ
たアナログ的な制御ができる。つまり、図18に表したように、人体検知モードにおいて
所定の閾値を超えた検知信号が得られた時点から、ドップラー信号が所定の周波数以下に
なるまでの期間を「判定期間」として、この間の被検知体(例えば、手である)の速度に
基づいて、被検知体の移動距離を特定できる。
【0049】
一方、人体検知センサのアンテナに対する手の動作には、アンテナに近づく接近動作、
アンテナから遠ざかる離遠動作とがある。これら動作のうちで、接近動作のみを抽出した
い場合には、スイッチ入力モードにおいて、「電波スキャン待機時間」を設けるとよい。
電波スキャン待機時間は、ドップラー信号によるスイッチ入力を無効(あるいは無視)と
して人体検知モードを再開するまで待機する期間である。つまり、スイッチ入力モードに
入り、電波の放射方向が固定され、ドップラー信号の周波数が所定の周波数(例えば、1
0〜30Hz)以下になった後、電波スキャンを再開するまでの所定期間(例えば、10
0ミリ秒〜1秒)「電波スキャン待機時間」として、その期間のドップラー信号は判定せ
ず、その経過後に電波スキャン(人体検知モード)を再開するようにすれば、手の接近方
向に応じて接近の動作だけを抽出しアナログ制御できる。
【0050】
また、スイッチ入力モードに入り、電波の放射方向が固定され、且つドップラー信号の
周波数が所定の周波数以下となった時に判定信号を出力する「判定信号出力期間」を設け
、図6〜図15に関して前述したような方法によりドップラー信号の周波数(周期)をも
とにパルス出力するようにしてもよい。このようにすると、変化させたい物理量の増加減
だけでなく、増加減させるときの速度も同時に制御可能となりスイッチを操作する使用者
の意思に連動したアナログ的な制御ができる。判定信号出力期間は、電波スキャン待機時
間と同じ、またはその時間内に設定すれば良い。
【0051】
図19は、負荷制御回路から出力されるスイッチ信号の出力の態様を例示する模式図で
ある。
本具体例においては、自動ドア300の開閉を制御する人体検知センサが設けられてい
る。人体検知モードにおいて、人体検知センサのアンテナ100からは、互いに放射方向
が異なる電波ビームD1、D2、D3が順次放射されている。そして、図19(a)に表
したように、被検知体900が電波ビームD3の検知領域に接近した場合、制御判断回路
26(図1参照)はこれを検知し、スイッチ入力モードに切り替える。
【0052】
その後、被検知体900が自動ドア300(アンテナ100)に接近を続けると、制御
判断回路は、この動作に基づいて負荷制御回路30から所定のスイッチ信号(制御信号)
を自動ドア300の駆動装置に出力する。自動ドア300は、このスイッチ信号に基づい
て開く。
【0053】
一方、図19(c)に表したように、被検知体900が電波ビームD3の検知領域にお
いて、自動ドア300に接近せず、自動ドア300の前を横切ることもある。このような
場合、スイッチ入力モードに切り替えた後に、被検知体の接近動作に対応するドップラー
信号が得られないため、制御判断回路26は、スイッチ入力がないものと判断する。する
と、負荷制御回路30は、自動ドア300に対して、スイッチ信号を出力せず、自動ドア
300は閉じたままの状態を維持する。つまり、被検知体900が自動ドア300の前を
横切るような場合に、自動ドア300が無駄に開く動作を回避できる。
【0054】
本具体例においては、被検知体900が自動ドア300の前を横切るような動作をした
場合に、スイッチ入力モードにおいてスイッチ入力がないものと判定し、これに対応して
、負荷制御回路30からはスイッチ信号を出力しないようにすれば、自動ドア300の側
において複雑な判定機構が不要となる。つまり、スイッチ入力モードにおいて所定のスイ
ッチ入力がされた場合のみ、負荷制御回路30が外部にスイッチ信号(制御信号)を出力
するようにすれば、高周波センサにより制御される機器のシステムを簡易に構成できる。
本具体例においては、自動ドア300は、負荷制御回路30からスイッチ信号が出力され
た場合のみ、開動作および/または閉動作を実行すればよい。
【0055】
次に、接近と離遠とを判別可能な高周波センサについて説明する。
図20は、本具体例の高周波センサの構成の一部を例示するブロック図である。
すなわち、本具体例においては、第1の検波回路16Aと、第2の検波回路16Bと、
が設けられている。これらの検波回路に入力される線路は、線路波長λgの1/4の線路
長差を有する。つまり、第1の検波回路16Aに入力される電波信号に対して、第2の検
波回路16Bに入力される電波信号は、1波長の1/4の位相差を有する。
【0056】
図21は、これら検波回路16A、16Bにおいて検知される電波の位相の関係を概念
的に表すグラフ図である。ここで、横軸は、アンテナ100からの距離であり、縦軸は反
射波の強度を表す。
同じ移動体からの反射信号のうち、第2の検波回路16Bにおける検知信号S2と、第
1の検波回路16Aにおける検知信号S1とは、位相がずれている。地点Aを基準にして
アンテナ100に被検知体が近づく場合は、検知信号S1の位相が進んでおり、一方、地
点Aを基準にして被検知体がアンテナ100から遠ざかる場合は、検知信号S2の位相が
進んでいる。
【0057】
この原理を利用して、検知信号S1の位相が進んでいる時をアンテナ100への接近と
判断し、すなわちスイッチ入力する意思に基づく人体の動きと判断することができる。一
方、検知信号S2の位相が進んでいる場合には、アンテナ100から遠ざかる動作と判断
し、すなわち、スイッチ入力する意思のない動作であると判断することができる。
【0058】
一例を挙げると、被検知体である使用者が高周波センサに対して所定の入力動作をした
後に、元の状態に戻るための反復運動をする場合がある。具体的には、図9(c)〜図1
0(b)に関して前述したように、使用者が左手を右に振ってスイッチ入力をした後に、
左手を左側に戻す動作をする場合がある。このような場合に、本具体例によれば、左手を
戻す動作をスイッチ入力であると誤検知することがなくなる。また、反復動作を無視する
ようにすれば、制御判断回路が次のスイッチ入力までの間に所定の待ち時間を設ける必要
もなくなる。その結果として、使用者が次のスイッチ入力動作を行う際に、待ち時間のな
い使い勝手の良いスイッチ(人体検知センサ)を提供できる。
【0059】
次に、互いに交差する複数の方向に電波ビームをスキャン可能とした高周波センサにつ
いて説明する。
図22は、本具体例におけるアンテナ100の構成を例示する平面図である。
図22(a)に表した具体例の場合、基板101の中心付近に給電素子102が設けら
れ、その上下左右に無給電素子103、105、104、106がそれぞれ配置されてい
る。
また、図22(b)に表した具体例の場合、基板101の中心付近に給電素子102が
設けられ、その左上、右下、左下、右上に無給電素子103、105、104、106が
それぞれ配置されている。
【0060】
これにいずれの場合も、図2〜図4に関して前述した具体例と同様に、無給電素子10
3、105、104、106に接続されたスイッチ(図示せず)をオン・オフしてアース
電位またはフローティング状態とすることにより、アンテナ100から放射される電波ビ
ームの方向を基板101の主面101Sに対して傾斜させることができる。
【0061】
図23は、図22(a)に例示したアンテナ100から放射される電波ビームの強度分
布を基板101の正面側から表した模式図である。
無給電素子103、105、104、106のスイッチをそれぞれ制御することにより
、基板101の主面101Sに対して略垂直な方向に電波ビームを放射(図23において
中央部の分布)することもでき、また、上下左右及び斜め方向の8方向に傾斜させること
もできる(図23における周囲の分布)。
【0062】
このように、電波ビームを互いに相反する複数の方向(例えば、左右方向と上下方向、
または右下−左上方向と右上−左下方向など)にスキャンすると、被検知体の位置ばかり
でなく、大きさなども判別可能となる。
【0063】
図24は、本具体例の高周波センサにより制御される自動ドアを表す模式図である。
すなわち、自動ドア300は、矢印300Sの方向に開閉する。そして、自動ドア30
0の近傍に、高周波センサのアンテナ100が設置されている。アンテナ100からは、
矢印で表したように、左右方向と、斜め方向にそれぞれ電波ビームがスキャン可能とされ
ている。
【0064】
図25は、一例として大人900Aと子供900Bとを判別する場合について説明する
ための模式図である。
本具体例によれば、左右方向のスキャンで被検知体が左右のどちらのエリアにいるかを
検知できる。また、斜め方向(上下方向)のスキャンで、被検知体が大人900Aである
かそれとも子供900Bであるを判別できる。
【0065】
例えば、被検知体が子供900Bの場合は自動ドア300を開かなかったり、開く時間
を長くしたりすることで安全性を高くすることができる。
【0066】
また、例えば、高周波センサを天井に設置した場合には、通過/横切りだけでなくクロ
スする人の動きまで捉えられ、情報量の増加に応じた繊細な設備の駆動制御に役立つ。ま
た、スイッチ入力の手段としては、入力できるパラメータ(機能)を増やしたり、異なる
アクチュエータ(被制御体)を複数大小切替えられるメリットがある。
次に、本実施形態の高周波センサにより制御される自動水栓について説明する。
図26は、自動水栓を例示する模式図である。
自動水栓400は、洗面ボール420と、洗面ボール420の奥側に設けられた水栓装
置410と、水栓装置410の奥の壁の裏側に設けられた高周波センサのアンテナ100
と、を有する。アンテナ100の横には、水栓装置410から吐水される水の状態を示す
、水栓状態表示部430が設けられ、流量と吐水温度とを報知する。
【0067】
図27は、本具体例の自動水栓の要部構成を例示するブロック図である。
人体検知センサは、送受信一体のアンテナ100と、人体(手)からの反射信号を受信し
、送信波との差分により検波する検波回路16と、検波回路による信号を識別し、その情
報を基に人体が水栓装置に接近したのを検知すると、電波放射方向を切替え放射する制御
を行う制御判断回路26と、制御判断回路26にて検知エリアの情報に基づきスイッチ信
号(制御信号)出力する負荷制御回路30と、を有する。
【0068】
負荷制御回路30からのスイッチ信号は、水栓制御部440に入力される。水栓制御部
440は、コントローラ442と、これにより制御される流量調整弁444、温度調整弁
446、水栓状態表示部430、を有する。
【0069】
図28は、自動水栓を正面(図26におけるP方向)から眺めた模式図である。
【0070】
また、図29は、自動水栓を側面(図26におけるQ方向から眺めた模式図である。
【0071】
本具体例の自動水栓においては、アンテナ100から4つの方向に電波ビームが放射可
能とされている。これら4つの方向の電波ビームは、それぞれ検知エリアA〜Dを形成す
る。
【0072】
これら電波ビームの方向は、水栓装置410と干渉しないように設定することが望まし
い。例えば、アンテナ100の取付角度として、垂直方向に角度θを設け、アンテナ10
0の法線方向100Vを水平方向より上方側に設置し、下方向の検知エリアCが水栓装置
410よりも上側になるようにすることかできる。このようにすれば、水栓装置410か
ら吐水される水で手洗いなどする際に、この手洗いの動作により誤ってスイッチ入力がさ
れることを防止できる。
【0073】
以下、本具体例の自動水栓の動作について説明する。
制御判断回路26は、まず電波方向を検知エリアCに設置しており、自動水栓400に
近づく人がいないかどうかを監視する。
そして、利用者が洗面ボール420に近づいたことを制御判断回路26が識別すると、
人体を検知したことを負荷制御回路30から水栓制御部のコントローラ442にスイッチ
信号を出力する。そして、コントローラ442は、設定吐水温度を水栓状態表示部430
に表示する。
【0074】
利用者が設定温度を変更するのか、現在の吐水温度のまま吐水を開始するのかを識別す
るために、4つの検知エリアA,B,C,Dに順に電波方向を順次切替えてスキャンする

例えば、利用したい水の温度を変更するために、検知エリアBに利用者が手を接近させ
ると、設定水温を下げ、逆方向の検知エリアDに手を近づけると設定水温を上昇させる。
この検知エリアB,Dの検知状態に基づき、負荷制御回路30からエリア情報を出力する
。その情報をコントローラ442が識別すると共に、水栓状態表示部430の表示を変更
する。
【0075】
一方、使用者が検知エリアAに向かって手を近づけると、制御判断回路26がその状態
を検知し、負荷制御回路30からエリア情報を出力し、コントローラ442により、水栓
状態表示部430に吐水状態とその際の流量情報を表示すると共に、表示している温度状
態に、温調調整弁446を設定し、流量調整弁444に吐水指令を出し、水栓装置410
から吐水を開始する。
【0076】
利用者が、上述した温調の操作を行った場合は,水栓状態表示部430の表示を変更す
ると共に、温度調整弁446をその温度に変更する。また、検知エリアCに手を近づけた
場合は、流量調整弁444を止水状態にすると共に、水栓状態表示部430の流量を非表
示にする。
【0077】
そして、本具体例によれば、使用者の手の動く速度に応じて、吐水量や吐水温度の変化
量を制御することができる。
すなわち、人が手の動きにより情報を入力する場合、大まかに操作する場合と、微調整
する場合とでは、手の動きすなわちハンドアクションが異なる。
【0078】
図30は、アンテナ100に向かって手による入力操作をした時の周波数特性を例示し
たグラフ図である。
図30(a)は、微調整、図30(c)は、大まかな操作、図30(b)は、その間の
操作をした場合を表す。図30(a)〜(c)の左側は、高周波センサによる検知波形の
生データのグラフ図であり、横軸は時間で縦軸は信号強度を表す。また、図30(a)〜
(c)の右側は、検知波形の最初の部分(初速)だけを取り出したグラフ図であり、横軸は
周波数で縦軸は信号強度を表す。
【0079】
図30(a)〜(c)から分かるように、1回のハンドアクションにおいても、大まか
な制御をしたい場合には初速が速く、微調整の場合は初速が遅くなる。
このような動作の特性を考慮し、上述した操作手順において検知エリアA、B、Dにお
ける手を接近する速度をも検知すると、検知エリアAおいては、吐水を開始すると共に、
その速度(移動量)によって、流量をも変えたり、検知エリアBでは、一気に低温(水道水
に近い温度)に低下させたりすることが可能になる。
【0080】
実際の手順の一例を説明すると以下の如くである。
・まず、検知エリアA,B,C,Dに電波を順次スキャンする(人体検知モード)。
・利用者が検知エリアAに手を近づけると、制御判断回路26にて、エリアAに手が近
づいたことを検知すると同時に、電波方向をエリアA方向に固定する(スイッチ入力モー
ド)。
・エリアAに近づく手の動く速度に応じた周波数の信号を検波回路16が出力する。
・制御判断回路26は、検波回路16からの出力により、移動量である速度成分を識別
する。
・負荷制御回路30からエリアA情報と、移動量として、周波数をパルス信号として出
力する。
・コントローラ442は、エリア情報とパルス信号とを入力し、パルス信号に応じた設
定流量をあらかじめ決定しておき、その量に応じて流量調整弁444を制御する。

以上説明したように、電波スキャンを、手が近づいた検知エリアに固定することで、手
の動く速度成分を正確に識別できる。そのため、ハンドアクションから吐水開始の情報だ
けでなく、吐水する流量の情報をも識別できる。その結果として、利用者に複数のアクシ
ョンをさせることなく、簡単な操作で入力可能となり、利用者の意図を確実に感じ取つて
動作する自動システムを提供することができる。
【0081】
以上、説明したいずれの具体例においても、電波の放射方向を切替える際にスイッチン
グノイズが生ずることがある。スイッチングノイズの発生時間を考慮しないで被検知体の
検知判定をすると誤検知につながる。これに対しては、電波の放射方向が切り替わった瞬
間からのドップラー信号をもとに被検知体の検知判定をするのではなく、スイッチングノ
イズの発生時間を考慮して検知判定までに「待ち時間」を設けるとよい。この場合、電波
の放射方向を切り替えるタイミング(速度)は、検知判定までの「待ち時間」と被検知体
の検知判定に要する時間とで決まる。被検知体の検知判定に要する時間は、人体や手の移
動速度を考慮すると1ミリ秒〜50ミリ秒とすることが望ましく、例えば、10ミリ秒に
設定すれば、50Hz(=半周期10ミリ秒)以上の動きに対して精度良く人体や手を検
知できる。
【0082】
以上、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。
しかし、本発明はこれらの実施形態に限定されない。人体検知センサを構成するアンテ
ナ、高周波スイッチ、発振回路、検波回路、制御部などの形状、サイズ、配置などに関し
て当業者が設計変更を行ったものであっても本発明の主旨を逸脱しない限り本発明の範囲
に包含される。また、前述した各具体例のふたつまたはそれ以上を技術的に可能な範囲で
組み合わせたものも、本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施の形態にかかる人体検知センサのブロック図である。
【図2】本実施形態の人体検知センサに設けられるマイクロストリップアンテナの一例を表す平面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】スイッチ120、124の操作による電波ビームの放射方向の変化を表す模式図である。
【図5】本実施形態の人体検知センサにおいて実行される動作を表すフローチャートである。
【図6】ドップラー信号の波形や信号のタイミングなどを表すグラフ図である。
【図7】人体検知センサの動作を説明するための模式図である。
【図8】人体検知センサの動作を説明するための模式図である。
【図9】本実施形態の人体検知センサの動作のもうひとつの具体例を表す模式図である。
【図10】本実施形態の人体検知センサの動作のもうひとつの具体例を表す模式図である。
【図11】スイッチ入力モードにおけるドップラー信号の処理のもうひとつの方法を表すグラフ図である。
【図12】スイッチ入力モードにおけるドップラー信号の処理のもうひとつの方法を表すグラフ図である。
【図13】スイッチ入力モードにおけるドップラー信号の処理のもうひとつの方法を表すグラフ図である。
【図14】スイッチ入力モードにおけるドップラー信号の処理のもうひとつの方法を表すグラフ図である。
【図15】スイッチ入力モードにおけるドップラー信号の処理のもうひとつの方法を表すグラフ図である。
【図16】本実施形態の第2の変型例を説明するための模式図である。
【図17】本実施形態の第3の変型例を説明するための模式図である。
【図18】ドップラー信号の処理のもうひとつの方法を表すグラフ図である。
【図19】負荷制御回路から出力されるスイッチ信号の出力の態様を例示する模式図である。
【図20】高周波センサの構成の一部を例示するブロック図である。
【図21】検波回路16A、16Bにおいて検知される電波の位相の関係を概念的に表すグラフ図である。
【図22】本発明の具体例におけるアンテナ100の構成を例示する平面図である。
【図23】図22(a)に例示したアンテナ100から放射される電波ビームの強度分布を基板101の正面側から表した模式図である。
【図24】本発明の具体例の高周波センサにより制御される自動ドアを表す模式図である。
【図25】一例として大人900Aと子供900Bとを判別する場合について説明するための模式図である。
【図26】自動水栓を例示する模式図である。
【図27】本発明の具体例の自動水栓の要部構成を例示するブロック図である。
【図28】自動水栓を正面(図26におけるP方向)から眺めた模式図である。
【図29】自動水栓を側面(図26におけるQ方向から眺めた模式図である。
【図30】アンテナ100に向かって手による入力操作をした時の周波数特性を例示したグラフ図である。
【符号の説明】
【0084】
10 高周波部、 12 高周波回路、 14 発振回路、 16 検波回路、 20 制御部、
22 増幅器、 24 比較器、 26 制御判断回路、 30 負荷制御回路、100 アン
テナ、101 基板、102 アンテナ素子(給電素子)、103、104、105、10
6 アンテナ素子(無給電素子)、108 給電線、110 制御線、115 接地線、11
6 アース電極、118 接地線、120、124 スイッチ、130、132 無給電素子
、300 自動ドア、400 自動水栓、410 水栓装置、420 洗面ボウル、43
0 水栓状態表示部、440 水栓制御部、442 コントローラ、444 流量調整弁
、446 温度調整弁、900 被検知体、SW1〜SW4 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信波を発生する発振回路と、
前記送信波を放射し、前記送信波の物体による反射波を受信波として受信するアンテナ
と、
前記受信波を検知する検波回路と、
前記検波回路に含まれるドップラー信号を判定する制御判断回路と、
を備え、
前記制御判断回路は、前記アンテナから放射される電波の方向を変化させつつ被検知体
の存在を検知する人体検知モードと、前記アンテナから放射される電波の方向をひとつの
方向に維持させつつ前記被検知体が前記アンテナの前で実行する動作を検知するスイッチ
入力モードと、を実行可能であり、
前記人体検知モードを実行中に被検知体を検知すると、前記人体検知モードを終了して
前記被検知体を検知した方向に前記電波の方向を維持しつつ前記スイッチ入力モードを実
行することを特徴とする人体検知センサ。
【請求項2】
前記制御判断回路からの出力に基づいて外部に制御信号を出力する負荷制御回路をさら
に備え、
前記負荷制御回路は、前記スイッチ入力モードにおいて検知された前記被検知体の動作
に対応した制御信号のみ出力することを特徴とする請求項1記載の人体検知センサ。
【請求項3】
前記負荷制御回路は、前記スイッチ入力モードにおいて得られたドップラー信号の周波
数に応じてパルス信号を出力することを特徴とする請求項2記載の人体検知センサ。
【請求項4】
前記負荷制御回路は、前記スイッチ入力モードにおいて得られたドップラー信号の振幅
に応じてパルス信号を出力することを特徴とする請求項2記載の人体検知センサ。
【請求項5】
前記負荷制御回路は、前記人体検知モードから前記スイッチ入力モードに切り替わった
直後から所定時間または前記ドップラー信号の振幅が所定の値を下回るまでの間、前記ド
ップラー信号に応じた前記パルス信号を出力することを特徴とする請求項3または4に記
載の人体検知センサ。
センサ。
【請求項6】
前記制御判断回路は、前記スイッチ入力モードにおいて、ドップラー信号の振幅が所定
の値を下回り所定の時間が経過したら、前記スイッチ入力モードを終了して前記人体検知
モードを実行することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の人体検知センサ

【請求項7】
前記検波回路は、位相が異なる2つの受信波をそれぞれ検波可能であり、
前記制御判断回路は、前記スイッチ入力モードにおいて、前記2つの受信波にそれぞれ
含まれる2つのドップラー信号の位相が反転すると、前記スイッチ入力モードを終了して
前記人体検知モードを実行することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の人
体検知センサ。
【請求項8】
前記制御判断回路は、前記人体検知モードにおいて、前記人体検知センサの検知領域を
横切る第1の電波スキャン方向と、前記第1の電波スキャン方向と交差する第2の電波ス
キャン方向と、に前記アンテナから放射される電波の方向を切り替えることを特徴とする
請求項1〜7のいずれか1つに記載の人体検知センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2008−191162(P2008−191162A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−57626(P2008−57626)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【分割の表示】特願2007−183294(P2007−183294)の分割
【原出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】