説明

人体検知装置及び表示装置

【課題】 一つの焦電型赤外線センサで、人体検知機能と非接触入力機能とを両立することが可能な赤外線式の人体検知装置を提供する。
【解決手段】 人体検知装置1は、焦電型赤外線センサ10と、照度センサ12と、人の有無及び非接触の操作入力の有無を検知する信号処理ユニット20とを備えている。信号処理ユニット20は、焦電型赤外線センサ10から出力される検出信号を増幅する増幅率可変の増幅部21、焦電型赤外線センサ10から出力される検出信号に基づいて人の有無を検知する人体検知モードと、人体の動きによる非接触の操作入力を検知する非接触入力モードとを取り得る検知部23、及び、照度センサ12から出力される検出信号に応じて、明るさが低下したと判断された場合に、増幅部21の増幅率を人体検知モードの場合よりも低下させて、検知部23の動作モードを人体検知モードから非接触入力モードに切替える切替部24を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線式の人体検知装置、及び該人体検知装置を用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人体などの赤外線放射体から入射される赤外線の変化量に応じた電気信号を出力する焦電型赤外線センサを利用して、人体などの有無や移動方向を検知する赤外線式人体検知装置が従来から知られており、例えばセキュリティや家電製品などの分野において使用されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。ここで、特許文献1には、赤外線センサを利用した人体検知機能を有するデジタルフォトフレームが開示されている。このデジタルフォトフレームは、赤外線センサを用いて付近に人がいるか否かを判断して、人がいるときには写真を表示し、人がいないときには電力供給を停止する節電モードに移行する。
【0003】
また、特許文献2には、デュアル素子の焦電型赤外線センサを用いた非接触入力装置が記載されている。この非接触入力装置では、デュアル素子の焦電型赤外線センサから出力される信号について正極性信号と負極性信号のどちらが先に出力されたかを判定することにより、非接触入力の有無に加え、人体(例えば掌など)の移動方向を検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−169381号公報
【特許文献2】特開2006−277626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、周囲の人の有無を検知する人体検知機能では、比較的長い検知距離(数m程度)が要求される。そのため、特許文献1記載の人体検知に適した感度の赤外線センサを用いて人の掌などによる非接触入力を検知しようとすると、掌以外の動き、例えば、入力を行っている人の後ろにいる関係の無い人の動きにも反応してしまい、誤入力を生じるおそれがある。一方、掌などによる非接触の操作を検知する非接触入力機能では、上述したような誤入力を防止する観点から、検知距離は比較的短い(数cm〜数十cm程度)ことが望ましい。そのため、特許文献2記載の非接触入力装置を人体検知に利用しようとすると、人の有無を検知できる検知範囲が狭くなり、例えば、部屋の中で数m離れた所にいる人を検知できないおそれがある。このように、従来、一つの焦電型赤外線センサで、人体検知機能と非接触入力機能とを両立することは困難であった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、一つの焦電型赤外線センサで、人体検知機能と非接触入力機能とを両立することが可能な赤外線式の人体検知装置及び該人体検知装置を用いた表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る人体検知装置は、赤外線の変化量に応じた検出信号を出力する焦電型赤外線センサと、周囲の明るさに応じた検出信号を出力する光センサと、焦電型赤外線センサから出力される検出信号に基づいて人の有無を検知する人体検知モードと、当該検出信号に基づいて人体の動きによる非接触の操作入力を検知する非接触入力モードとを取り得る検知手段と、光センサから出力される検出信号の変化に応じて、検知手段の動作モードを切替える切替手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る人体検知装置によれば、光センサの検出信号の変化に応じて、人体検知機能を発揮する人体検知モードと非接触入力機能を発揮する非接触入力モードが切替えられる。よって、光センサにより検知される明るさを変化させることにより、2つの動作モード、すなわち人体検知モードと非接触入力モードとを切替えることができる。その結果、一つの焦電型赤外線センサで、人体検知機能と非接触入力機能とを両立することが可能となる。
【0009】
本発明に係る人体検知装置では、上記切替手段が、光センサから出力される検出信号に応じて、明るさが低下したと判断された場合に、検知手段の動作モードを人体検知モードから非接触入力モードに切替えることが好ましい。
【0010】
このようにすれば、例えば、ユーザが自分の掌を光センサにかざすことにより、光センサによって検知される明るさを低下させて、動作モードを非接触入力モードに切替えることができる。
【0011】
本発明に係る人体検知装置は、増幅率を可変することができ焦電型赤外線センサから出力される検出信号を増幅する増幅器を備え、上記切替手段が、動作モードを非接触入力モードに切替える際に、増幅器の増幅率を人体検知モードの場合よりも低下させることが好ましい。
【0012】
この場合、動作モードが非接触入力モードに切替えられる際に、増幅器の増幅率が下げられる。そのため、検出感度が低下し、焦電型赤外線センサの検出距離が人体検知モードよりも短くなる。よって、焦電型赤外線センサの検出距離を、離れた人体の影響を受けることがない非接触入力に適した距離に切替えることができる。一方、人体検知モードでは、増幅器の増幅率が非接触入力モード時よりも大きいため、検出感度が高くなる。よって、焦電型赤外線センサの検出可能距離が非接触入力モード時よりも長く、人体検知に適した距離となる。
【0013】
また、本発明に係る人体検知装置では、検知手段が、焦電型赤外線センサから出力される検出信号が所定の閾値を超えるか否かによって人体及び操作入力の有無を検知し、切替手段が、動作モードを非接触入力モードに切替える際に、上記所定の閾値を、人体検知モードの場合よりも大きくすることが好ましい。
【0014】
この場合、動作モードが非接触入力モードに切替えられる際に、人体及び操作入力の有無を判断する際の閾値が大きくされる。そのため、検出感度が低下し、焦電型赤外線センサの検出信号が大きい人体(人体の一部を含む)、すなわち焦電型赤外線センサに近い人体のみが検知される。よって、焦電型赤外線センサから離れた人体の影響を受けることなく、誤入力を防止することが可能となる。一方、人体検知モードでは、閾値が非接触入力モード時よりも小さいため、検出感度が高くなる。よって、焦電型赤外線センサの検出可能距離が非接触入力モードよりも長く、人体検知に適した距離となる。
【0015】
本発明に係る人体検知装置では、上記焦電型赤外線センサが、極性が逆になるように直列に接続された2つの焦電素子を有するデュアルタイプの焦電型赤外線センサであることが好ましい。
【0016】
デュアルタイプ焦電型赤外線センサは、赤外線放射体の移動方向が逆になると検出信号の極性が反転するという特性を有している。そのため、本発明に係る人体検知装置によれば、人体(人体の一部を含む)の有無に加え、人体の移動方向も判別することができる。よって、非接触の操作の有無に加え、移動方向の情報も含んだ操作入力を得ることが可能となる。
【0017】
本発明に係る人体検知装置では、焦電型赤外線センサと光センサとが、互いに並んで配置されていることが好ましい。このようにすれば、並んで配置されている光センサから焦電型赤外線センサにかけて、例えば掌を動かすことにより、動作モードの切替え及び非接触での入力操作を一つの連続動作で行うことが可能となる。そのため、ユーザに対し面倒な印象を与えることがない。
【0018】
本発明に係る人体検知装置は、非接触入力モードにおいて、光センサ及び焦電型赤外線センサそれぞれの検出信号が出力される順序に基づいて、人体の移動方向を判断する判断手段をさらに備えることが好ましい。
【0019】
このようにすれば、原理が異なる2つのセンサを利用することにより、非接触の操作入力の誤検知を低減することができる。また、光センサ及び焦電型赤外線センサそれぞれの配置と、各センサから出力される検出信号の出力順序とを対応付けることにより、デュアルタイプの焦電型赤外線センサを用いることなく人体(人体の一部を含む)の移動方向を判別することが可能となる。
【0020】
本発明に係る表示装置は、上記いずれかの人体検知装置と、データを表示する表示手段と、人体検知モードにおいて検知された人の有無に基づいて表示手段をオン・オフするとともに、非接触入力モードにおいて検知された操作入力に基づいて表示手段を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0021】
本発明に係る表示装置によれば、上記いずれかの人体検知装置を備えているため、一つの焦電型赤外線センサで表示手段の自動的なオン・オフ、及び、該表示手段の非接触操作を行うことが可能となる。より具体的な例を挙げると、表示手段が例えばデジタルフォトフレームである場合には、該デジタルフォトフレームの電源の自動的なオン・オフ、及び表示写真の非接触操作による変更などを行うことができる。また、表示装置が例えばテレビジョンであるときには、該テレビジョンの電源の自動オン・オフ、及びチャンネルの非接触切替えなどを行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、光センサの検出信号の変化に応じて人体検知モードと非接触入力モードとを切替える構成としたので、一つの焦電型赤外線センサで、人体検知機能と非接触入力機能とを両立することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態に係る人体検知装置の構成を示すブロック図である。
【図2】照度センサと焦電型赤外線センサの配置を示す図である。
【図3】第1実施形態に係る人体検知装置による動作モード切替処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】第2実施形態に係る人体検知装置の構成を示すブロック図である。
【図5】照度センサと焦電型赤外線センサとを組合せて用いた移動方向の判別方法を説明するための図である。
【図6】実施形態に係る人体検知装置を用いた表示装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0025】
[第1実施形態]
まず、図1を用いて、第1実施形態に係る人体検知装置1の構成について説明する。図1は、人体検知装置1の構成を示すブロック図である。
【0026】
人体検知装置1は、人の有無を検知する人体検知機能と、人体の動きによる非接触の操作入力を検知する非接触入力機能とを有する装置である。そのために、人体検知装置1は、入射される赤外線の変化量に応じた電気信号(検出信号)を出力する焦電型赤外線センサ10と、周囲の明るさに応じた電気信号(検出信号)を出力する照度センサ(特許請求の範囲に記載の光センサに相当)12と、焦電型赤外線センサ10、照度センサ12から出力された検出信号を処理して、人の有無及び人体の動きによる非接触の操作入力を検知する信号処理ユニット20とを備えている。この信号処理ユニット20は、増幅部21、A/D変換部22、検知部23、切替部24、及び信号出力部25を有している。以下、各構成について詳細に説明する。
【0027】
焦電型赤外線センサ10は、強誘電体セラミック(焦電素子)の焦電効果を利用して人体(掌などの人体の一部を含む)などから入射される赤外線の変化量に応じた検出信号を出力する。焦電型赤外線センサ10は信号処理ユニット20に接続されており、焦電型赤外線センサ10から出力された検出信号は信号処理ユニット20に入力される。なお、本実施形態では、焦電素子が1つのシングルタイプ焦電型赤外線センサを用いたが、極性が逆になるように直列に接続された2つの焦電素子を有するデュアルタイプ焦電型赤外線センサを用いてもよい。デュアルタイプ焦電型赤外線センサは、2つの焦電素子それぞれに入射される赤外線の変化量の差動信号を検出信号として出力する。そのため、デュアルタイプ焦電型赤外線センサは、人体の移動方向が逆になると検出信号の位相が反転するという特性を有している。よって、デュアルタイプ焦電型赤外線センサを用いた場合には、人体の有無に加え、プラス側とマイナス側のどちらの人体検知信号が先に出力されたかによって人体の移動方向を判別することができる。
【0028】
照度センサ12は、周囲の明るさに応じた検出信号を出力するものであり、例えば、電流アンプを内蔵したフォトICが好適に用いられる。なお、本実施形態では、デジタル出力タイプの照度センサを用いた。ここで、照度センサ12と焦電型赤外線センサ10の配置を図2に示す。図2に示されるように、照度センサ12は、焦電型赤外線センサ10の左横に並べて配置されている。照度センサ12も信号処理ユニット20に接続されており、照度センサ12から出力された検出信号は信号処理ユニット20に入力される。
【0029】
信号処理ユニット20は、照度センサ12から入力される検出信号の変化に応じて切替えられる2つの動作モード、すなわち、人の有無を検知する人体検知モードと、掌などの人体の動きによる非接触の操作入力を検知する非接触入力モードとを取り得るように構成されており、人体検知モードにおいて、焦電型赤外線センサ10から入力される検出信号に基づいて人の有無を検知し、非接触入力モードにおいて、人体の動きによる非接触の操作入力を検知する。
【0030】
信号処理ユニット20は、入力インターフェースとしての増幅部21、並びにA/D変換部22、及び、A/D変換部22を介して入力される検出信号に対して演算処理を行うマイクロプロセッサ、該マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラムやデータを記憶するROM、演算結果などの各種データを一時的に記憶するRAM、及びデータがバックアップされているバックアップRAMなどにより構成されている。信号処理ユニット20では、ROMに記憶されているプログラムが、マイクロプロセッサによって実行されることにより、検知部23、切替部24、及び信号出力部25の機能が実現される。なお、増幅部21、A/D変換部22、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどはそれぞれ独立したチップから構成されていてもよいし、これらが1つのチップに収められたマイクロコンピュータ(マイコン)により構成されていてもよい。
【0031】
増幅部21は、焦電型赤外線センサ10から入力される検出信号を増幅するものであり、動的に増幅率(ゲイン)を変えることができるプログラマブル・ゲイン・アンプが好適に用いられる。増幅部21は、特許請求の範囲に記載の増幅器に相当する。ここで、外付けのプログラマブル・ゲイン・アンプを用いる場合には、設定を受け付けるために設けられているアンプ側の入力ポートと、マイクロプロセッサの出力ポートとを接続し、読み込まれた照度センサ12の検出信号の値に応じてマイクロプロセッサのポート出力(Hi,Lo)を制御することにより、増幅率を切替える。一方、マイコン内蔵型のプログラマブル・ゲイン・アンプを用いる場合には、読み込まれた照度センサ12の検出信号の値に応じて、マイコンのレジスタ(設定)をソフト的に変えることで、増幅率を変更する。なお、増幅部21で増幅された検出信号は、バンドパスフィルタ等で不要な周波数成分(ノイズ成分)が除去された後、A/D変換部22に出力される。
【0032】
A/D変換部22は、A/Dコンバータにより構成され、入力される検出信号(アナログ信号)を所定のサンプリング周期でデジタルデータに変換する。デジタル変換された検出信号は、検知部23に出力される。
【0033】
検知部23は、2つの動作モード、すなわち、人の有無を検知する人体検知モードと、人体の動きによる非接触の操作入力を検知する非接触入力モードとを取り得る。なお、初期状態では、検知部23は、人体検知モードに設定される。人体検知モードにおいて、検知部23は、デジタル変換された焦電型赤外線センサ10の検出信号の値と、予め設定された所定の第1閾値とを比較し、検出信号の値が該第1閾値よりも大きい場合に、人が検知されたことを示す人体検知信号を信号出力部25に出力する。同様に、非接触入力モードにおいて、検知部23は、デジタル変換された検出信号の値と、予め設定された所定の第2閾値とを比較し、検出信号の値が該第2閾値よりも大きい場合に、操作入力が検知されたことを示す操作入力検知信号を信号出力部25に出力する。すなわち、検知部23は、特許請求の範囲に記載の検知手段として機能する。
【0034】
切替部24は、照度センサ12から入力される検出信号の変化に応じて、検知部23の動作モードを切替える。すなわち、切替部24は、特許請求の範囲に記載の切替手段として機能する。より詳細には、まず、切替部24は、検知部23が人体検知モードにあるときに、照度センサ12により検出される周囲の明るさ(照度)を取得する。そして、切替部24は、照度センサ12から出力される検出信号に応じて、明るさが急激に低下したと判断した場合に、検知部23の動作モードを人体検知モードから非接触入力モードに切替える。そのため、ユーザは、例えば照度センサ12に入る光をさえぎるように掌を照度センサ12にかざすことによって、照度センサ12より検出される明るさを低下させ、動作モードを人体検知モードから非接触入力モードに切替えることができる。なお、切替部24は、非接触入力モードにおいて、所定時間(例えば3分間)継続して操作入力がなかった場合に、動作モードを非接触入力モードから人体検知モードに切替える。
【0035】
ここで、切替部24は、動作モードを人体検知モードから非接触入力モードに切替える際に、上述した増幅部21の増幅率を人体検知モードの場合よりも低下させる(すなわち検出感度を低下させる)。ところで、焦電型赤外線センサ10から出力される検出信号の波形は、人体とセンサとの距離などの条件によって変化する。すなわち、焦電型赤外線センサ10から出力される検出信号の波形は、人体とセンサとの距離が離れるほど出力波形の振幅が小さく(ピークが低く)なり、逆に、人体とセンサとの距離が近付くほど出力波形の振幅が大きく(ピークが高く)なる傾向がある。よって、非接触入力モードでは、人体検知モード時よりも増幅率を下げて検出感度を低下させることにより、検出可能距離がより短く、例えば20cm程度にされる。逆に、人体検知モードでは、非接触入力モード時よりも増幅率を上げて検出感度を上げることにより、検出可能距離がより長く、例えば5m程度にされる。
【0036】
なお、増幅部21の増幅率を変更することに代えて、又は加えて、上述した検知部23の第1閾値及び第2閾値の大小関係が、「第2閾値>第1閾値」となるように設定することにより動作モードを切替えてもよい。この場合、非接触入力モードでは、人体検知モード時よりも閾値が大きく(第2閾値)されて検出感度が下げられることにより、検出可能距離がより短く(例えば20cm程度)される。逆に、人体検知モードでは、非接触入力モード時よりも閾値が小さく(第1閾値)されて検出感度が上げられることにより、検出可能距離がより長く(例えば5m程度)される。
【0037】
信号出力部25は、人の有無を示す人体検知信号、操作入力の有無を示す操作入力検知信号、及び、周囲の明るさを示す照度信号等を接続されている電子機器等(図示省略)に出力する。なお、焦電型赤外線センサ10として、デュアルタイプ焦電型赤外線センサを用いた場合には、人体検知信号及び操作入力検知信号に加えて、掌などの人体の移動方向(操作方向)を示す信号も信号出力部25から出力される。
【0038】
次に、図3を参照しつつ、人体検知装置1の動作について説明する。図3は、人体検知装置1による動作モード切替処理の処理手順を示すフローチャートである。なお、本処理は、信号処理ユニット20において、所定のタイミングで実行される。
【0039】
まず、ステップS100では、増幅部21の増幅率が高増幅率側に変更されることにより、検出感度が高レベル側に切替えられる。これにより、検知部23の動作モードが、検知距離の長い人体検知モードに設定される(ステップS102)。
【0040】
次に、ステップS104では、増幅部21で増幅され、A/D変換部22を介して読み込まれた焦電型赤外線センサ10の検出信号が上記第1閾値よりも大きいか否か、すなわち、人が検知されたか否かについての判断が行われる。ここで、人が検知された場合には、ステップS106に処理が移行する。一方、人が検知されていないときには、人が検知されるまで、本ステップが繰り返して実行される。
【0041】
ステップS106では、人が検知されたことを示す人体検知信号が信号出力部25から出力される。続くステップS108では、照度センサ12から出力された、周囲の明るさに応じた検出信号が読み込まれる。続いて、ステップS110では、ステップS108で読み込まれた照度センサ12の検出信号に応じて、明るさが急激に低下したか否かについての判断が行われる。ここで、明るさが急激に低下した場合には、ステップS112に処理が移行する。一方、明るさが低下していないとき、又は低下量が少ないときには、ステップS104に処理が移行し、明るさの急激な低下が検出されるまで、上述したステップS104〜S110の処理が繰り返して実行される。
【0042】
照度が急激に低下した場合には、例えば、ユーザが掌などを照度センサ12にかざしたと判断されるため、ステップS112において、増幅部21の増幅率が低増幅率側に変更されることにより、検出感度が低レベル側に切替えられる。これにより、検知部23の動作モードが、検知可能距離の短い非接触入力モードに切替えられる(ステップS114)。
【0043】
次に、ステップS116では、非接触入力モードにおいて操作入力が検知されなくなってからの経過時間を計測するためのタイマが起動される。続いて、ステップS118では、増幅部21で増幅され、A/D変換部22を介して読み込まれた焦電型赤外線センサ10の検出信号が上記第2閾値よりも大きいか否か、すなわち、非接触の操作入力が検知されたか否かについての判断が行われる。ここで、操作入力が検知された場合には、ステップS120において、操作入力が検知されたことを示す操作入力検知信号が信号出力部25から出力される。そして、その後ステップS116に処理が移行し、上述したステップS116,S118の処理が再度実行される。一方、非接触の操作入力が検知されていないときには、ステップS122に処理が移行する。
【0044】
ステップS122では、操作入力が検知されなくなってからの経過時間を計測するためのタイマの値に基づいて、操作入力がなくなってから所定時間(例えば3分間)経過したか否かについての判断が行われる。ここで、まだ所定時間経過していない場合には、ステップS118に処理が移行し、上述したステップS118の処理が再度実行される。一方、所定時間経過したときには、ステップS100に処理が移行し、動作モードが人体検知モードに切替えられ、上述したステップS100以降の処理が繰り返して実行される。
【0045】
本実施形態によれば、照度センサ12の検出信号の変化に応じて、人体検知機能を発揮する人体検知モードと非接触入力機能を発揮する非接触入力モードが切替えられる。よって、照度センサ12により検知される明るさを変化させることにより、人体検知モードと非接触入力モードとを切替えることができる。その結果、一つの焦電型赤外線センサ10で、人体検知機能と非接触入力機能とを両立することが可能となる。
【0046】
より具体的には、本実施形態によれば、照度センサ12から出力される検出信号に応じて、明るさが低下したと判断された場合に、検知部23の動作モードが人体検知モードから非接触入力モードに切替えられる。そのため、ユーザは、例えば自分の掌を照度センサ12にかざすことにより、照度センサ12によって検知される明るさを低下させて、動作モードを非接触入力モードに切替えることができる。
【0047】
本実施形態によれば、動作モードが非接触入力モードに切替えられる際に、増幅部21の増幅率が下げられる。その結果、検出感度が低下し、焦電型赤外線センサ10の検出距離が人体検知モードよりも短くなる。すなわち、焦電型赤外線センサ10の検出距離を、離れた人体の影響を受けることがない非接触入力に適した距離に切替えることができる。一方、人体検知モードでは、増幅部21の増幅率が非接触入力モード時よりも大きいため、検出感度が高くなる。よって、焦電型赤外線センサ10の検出可能距離が非接触入力モード時よりも長く、人体検知に適した距離となる。
【0048】
また、本実施形態によれば、動作モードを非接触入力モードに切替える際に、増幅部21の増幅率の切替えに代えて、又は加えて、人や操作入力の有無を判断する際の閾値を大きくすることもできる。この場合、検出感度が低下し、焦電型赤外線センサ10の検出信号が大きい人体(掌などの人体の一部を含む)、すなわち焦電型赤外線センサ10に近い人体のみが検知される。よって、焦電型赤外線センサ10から離れた人体の影響を受けることなく、誤入力を防止することが可能となる。一方、人体検知モードでは、閾値(第1閾値)が非接触入力モード時よりも小さいため、検出感度が高くなる。よって、焦電型赤外線センサの検出可能距離が非接触入力モードよりも長く、人体検知に適した距離となる。
【0049】
本実施形態によれば、焦電型赤外線センサ10と照度センサ12とが、左右に並んで配置されているため、照度センサ12から焦電型赤外線センサ10にかけて掌を動かすことにより、動作モードの切替え及び非接触での入力操作を一つの連続動作で行うことが可能となる。そのため、ユーザに対し面倒な印象を与えることがない。
【0050】
[第2実施形態]
次に、図4を用いて、第2実施形態に係る人体検知装置3の構成について説明する。図4は、人体検知装置3の構成を示すブロック図である。なお、図4において第1実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号が付されている。
【0051】
人体検知装置3は、上述した信号処理ユニット20に代えて、信号処理ユニット30を備えている点で、人体検知装置1と異なっている。この信号処理ユニット30は、信号処理ユニット20の構成に加え、移動方向判定部31をさらに有している点で、信号処理ユニット20と異なっている。その他の構成は、上述した人体検知装置1と同一または同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0052】
移動方向判定部31は、非接触入力モードにおいて、照度センサ12及び焦電型赤外線センサ10ぞれぞれの検出信号が出力される順序に基づいて、人掌などの体の移動方向を判断する。すなわち、移動方向判定部31は、特許請求の範囲に記載の判断手段として機能する。
【0053】
ここで、図5を参照しつつ、非接触入力モードにおける、照度センサ12と焦電型赤外線センサ10とを組合せて用いた移動方向の判別方法について説明する。図5は、照度センサ12と焦電型赤外線センサ10とを組合せて用いた移動方向の判別方法を説明するための図である。図5(a)(b)それぞれには、上から順に、両センサの配置に対する掌Hの移動方向、焦電型赤外線センサ10の出力波形、及び、照度センサ12の出力波形が示されている。
【0054】
図5(a)に示されるように、照度センサ12の右横に焦電型赤外線センサ10が配置されているときに、両センサの配列方向と並行な方向に、左側から右方向に、すなわち、照度センサ12、焦電型赤外線センサ10の順で掌Hを移動させた場合、先に照度が低下して照度センサ12の出力が一時的に低下し、その後、焦電型赤外線センサ10による掌Hの検出信号が出力される。一方、図5(b)に示されるように、右側から左方向に、すなわち、焦電型赤外線センサ10、照度センサ12の順で掌Hを移動させた場合、先に焦電型赤外線センサ10による掌Hの検出信号が出力され、その後、照度が低下して照度センサ12の出力が一時的に低下する。
【0055】
よって、移動方向判定部31は、照度センサ12、焦電型赤外線センサ10の順番で検出信号が入力された場合には、掌Hが左側から右方向に動かされたと判定する。一方、焦電型赤外線センサ10、照度センサ12の順番で検出信号が入力された場合、移動方向判定部31は、掌Hが右側から左方向に動かされたと判定する。なお、移動方向判定部31により判定された移動方向を示す信号は、操作入力検知信号と併せて信号出力部25から接続されている電子機器等(図示省略)に出力される。
【0056】
本実施形態によれば、原理が異なる2つのセンサを利用することにより、操作入力の誤検知を低減することができる。また、照度センサ12及び焦電型赤外線センサ10それぞれの配置と、各センサから出力される検出信号の出力順序とを対応付けることにより、デュアルタイプの焦電型赤外線センサを用いることなく掌などの人体の移動方向を判別することが可能となる。
【0057】
[第3実施形態]
上述した人体検知装置1は、例えばデジタルフォトフレームやテレビジョン等の表示装置に適用することができる。次に、図6を用いて、人体検知装置1を搭載した表示装置5について説明する。図6は、人体検知装置1を搭載した表示装置5の構成を示すブロック図である。なお、図6において上述した人体検知装置1と同一又は同等の構成要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0058】
表示装置5は、人体検知装置1と、画像データを表示する液晶パネル51(特許請求の範囲に記載の表示手段に相当)と、液晶パネル51を統括的に制御する制御部(特許請求の範囲に記載の制御手段に相当)52とを備えている。なお、人体検知装置1に代えて上述した人体検知装置2を用いてもよい。
【0059】
液晶パネル51は、公知の透過型カラーLCD(Liquid Crystal Display)であり、例えば、ガラス板やアクリル板からなる平行に設けられた2枚の透明基板の間に、液晶が充填されたものである。それぞれの透明基板の内面にはマトリクス状に配置された複数の透明電極が設けられており、対向する透明電極の間に映像信号に基づく印加電圧が加えられることにより液晶の配列方向が制御され、映像信号に応じた映像が表示される。
【0060】
制御部52は、人体検知装置1の信号出力部25と接続されており、信号出力部25から出力された、人の有無を示す人体検知信号、操作入力の有無を示す操作入力検知信号、及び、周囲の明るさを示す照度信号等を受信する。そして、制御部52は、人体検知信号に基づいて液晶パネル51をオン・オフする信号を生成するとともに、操作入力検知信号に基づいて液晶パネル51の表示を切替える信号を生成する。また、制御部52は、照度信号に基づいて液晶パネル51の輝度を調節する信号を生成する。
【0061】
より詳細には、制御部52は、人の存在が検知されたとき(例えば人が部屋に入ってきたとき)に、液晶パネル51の電源を自動的にオンし、人がいないとき(例えば人が部屋から出て行ったとき)には、液晶パネル51の電源を自動的にオフする。また、制御部52は、人の掌などの動きを検知して、非接触で、液晶パネル51の表示画像や表示チャンネル等を変更する。さらに、制御部52は、周囲(部屋)が明るいときには液晶パネル51の輝度を上げ、周囲が暗いときには液晶パネル51の輝度を下げる。
【0062】
なお、人体検知装置1と制御部52、液晶パネル51とは分離されていてもよく、また、1つの筐体の中に一体となって収められていてもよい。また、人体検知装置1と制御部52、液晶パネル51とが一体となって構成されている場合、人体検知装置1を構成する信号処理ユニット20と制御部51とは、1つのマイクロコンピュータにより構築されていてもよい。
【0063】
表示装置5によれば、上述した人体検知装置1を備えているため、一つの焦電型赤外線センサ10で液晶パネル51の電源の自動的なオン・オフ、及び、該液晶パネル51の非接触操作を行うことが可能となる。ここで、人体検知装置1が適用される表示装置5としては、例えば、デジタルフォトフレーム、テレビジョン、パーソナルコンピュータのモニタ等が挙げられる。例えば、表示装置5がデジタルフォトフレームである場合には、該デジタルフォトフレームの電源の自動的なオン・オフ、及び表示写真の非接触操作による変更などを行うことができる。また、表示装置が例えばテレビジョンであるときには、該テレビジョンの電源の自動オン・オフ、及びチャンネルの非接触切替えなどを行うことができる。
【0064】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、照度センサ12としてデジタル出力タイプのフォトICを用いたが、アナログ出力タイプのフォトICとA/D変換器とを組み合わせて用いる構成としてもよい。また、フォトICに代えて、フォトダイオードやフォトトランジスタ等を用いてもよい。さらに、照度センサに代えて、赤(R)・緑(G)・青(B)のそれぞれの色の波長に感度を持つ3つのフォトダイオードが1つのパッケージに収められたカラーセンサを用いることもできる。
【0065】
また、上記実施形態では、プログラマブル・ゲイン・アンプを利用して増幅率(ゲイン)を切替えたが、プログラマブル・ゲイン・アンプの増幅率の設定は、2段階に限られることなく、3段階以上に変更できるように設定されていてもよい。
【0066】
上記実施形態では、焦電型赤外線センサ10の左横に照度センサ12を配置したが、照度センサ12と焦電型赤外線センサ10の配置はこの配置には限られない。例えば、照度センサ12を焦電型赤外線センサ10の右横、又は、上側或いは下側に配置してもよい。また、用途によっては、照度センサ12を焦電型赤外線センサ10と離れた場所に配置してもよい。
【0067】
上記実施形態では、照度センサ12の検出信号が低下したとき、すなわち周囲の照度が低下したときに、検知部23の動作モードを人体検知モードから非接触入力モードに切替える構成としたが、逆に、照度センサ12の検出信号が上昇したとき、すなわち周囲の照度が上昇したときに、検知部23の動作モードを人体検知モードから非接触入力モードに切替える構成としてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1,3 人体検知装置
5 表示装置
10 焦電型赤外線センサ
12 照度センサ
20,30 信号処理ユニット
21 増幅部
22 A/D変換部
23 検知部
24 切替部
25 信号出力部
31 移動方向判定部
51 液晶パネル
52 制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線の変化量に応じた検出信号を出力する焦電型赤外線センサと、
周囲の明るさに応じた検出信号を出力する光センサと、
前記焦電型赤外線センサから出力される検出信号に基づいて人の有無を検知する人体検知モードと、当該検出信号に基づいて人体の動きによる非接触の操作入力を検知する非接触入力モードとを取り得る検知手段と、
前記光センサから出力される検出信号の変化に応じて、前記検知手段の動作モードを切替える切替手段と、を備えることを特徴とする人体検知装置。
【請求項2】
前記切替手段は、前記光センサから出力される検出信号に応じて、明るさが低下したと判断された場合に、前記検知手段の動作モードを前記人体検知モードから前記非接触入力モードに切替えることを特徴とする請求項1に記載の人体検知装置。
【請求項3】
増幅率を可変することができ、前記焦電型赤外線センサから出力される検出信号を増幅する増幅器を備え、
前記切替手段は、前記動作モードを前記非接触入力モードに切替える際に、前記増幅器の増幅率を前記人体検知モードの場合よりも低下させることを特徴とする請求項1又は2に記載の人体検知装置。
【請求項4】
前記検知手段は、前記焦電型赤外線センサから出力される検出信号が所定の閾値を超えるか否かによって人体及び操作入力の有無を検知し、
前記切替手段は、前記動作モードを前記非接触入力モードに切替える際に、前記所定の閾値を、前記人体検知モードの場合よりも大きくすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の人体検知装置。
【請求項5】
前記焦電型赤外線センサは、極性が逆になるように直列に接続された2つの焦電素子を有するデュアルタイプの焦電型赤外線センサであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の人体検知装置。
【請求項6】
前記焦電型赤外線センサと前記光センサとは、互いに並んで配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の人体検知装置。
【請求項7】
前記非接触入力モードにおいて、前記光センサ及び前記焦電型赤外線センサそれぞれの検出信号が出力される順序に基づいて、人体の移動方向を判断する判断手段をさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の人体検知装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載された人体検知装置と、
データを表示する表示手段と、
前記人体検知モードにおいて検知された人の有無に基づいて前記表示手段をオン・オフするとともに、前記非接触入力モードにおいて検知された操作入力に基づいて前記表示手段を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−127915(P2011−127915A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284082(P2009−284082)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)