人体検知装置
【課題】ドアの開閉を伴う場合がある使用者の行動態様とドアを開放したままトイレから退出する場合の使用者の行動形態をさらに正確に検知する。
【解決手段】人体に向けて伝播波を放射する伝播波発信部と、人体と人体以外の移動体によって反射された伝播波を受信する伝播波受信部と、伝播波発信部によって放射された伝播波及び伝播波受信部によって受信された伝播波に基づいてドップラー信号を生成するドップラー信号生成部と、ドップラー信号生成部が生成したドップラー信号に基づいて、人体の行動を判定する判定部と、を備えた人体検知装置で人体の退去動作を判定する。判定部は、ドップラー信号が第一閾値を越えると人体有りと判定し、第一閾値を越えたドップラー信号に基づいて人体の行動を判定するものであり、この行動判定においてドアの開閉を判定すると、人体の退去を判定する。
【解決手段】人体に向けて伝播波を放射する伝播波発信部と、人体と人体以外の移動体によって反射された伝播波を受信する伝播波受信部と、伝播波発信部によって放射された伝播波及び伝播波受信部によって受信された伝播波に基づいてドップラー信号を生成するドップラー信号生成部と、ドップラー信号生成部が生成したドップラー信号に基づいて、人体の行動を判定する判定部と、を備えた人体検知装置で人体の退去動作を判定する。判定部は、ドップラー信号が第一閾値を越えると人体有りと判定し、第一閾値を越えたドップラー信号に基づいて人体の行動を判定するものであり、この行動判定においてドアの開閉を判定すると、人体の退去を判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定方向に伝播波を送り出すことで使用者の存在を検知する人体検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波ドップラーセンサーなどのドップラーセンサーを用いて人体を検知することが行われている。マイクロ波ドップラーセンサーは、マイクロ波を伝播波として送信し、対象物によって反射したマイクロ波を受信することにより、対象物の動きを検出するものである。
【0003】
マイクロ波ドップラーセンサーは、センサーから送信するマイクロ波の周波数と、センサーから送信したマイクロ波が人体などの対象物によって反射してセンサーにより受信される信号の周波数との差分信号からドップラー信号を生成するものである。このドップラー信号は、対象物の動き(例えば、対象物の接近や対象物の離反)を表す信号である。従って、このドップラー信号から対象物の動きを検出することができる。
【0004】
下記特許文献1に記載の技術では、使用者が検知領域内にいるか否かを判定し、更に使用者が便座に着座したか否かを判定するものが開示されている。具体的には、ドップラーセンサーと、このドップラーセンサーから出力されたセンサー出力原信号を異なる増幅率で増幅する複数の信号処理部と、信号処理部で第一増幅率に基づいて増幅された第一出力信号を入力として人体検知を行う人体状況判定部と、信号処理部で第二増幅率に基づいて増幅された第二出力信号を入力として着座検知を行う着座状態判定部と、を備える人体検知装置(下記特許文献1では、多機能トイレ装置)である。
【0005】
このような装置においては、マイクロ波ドップラーセンサーなどで検出したセンサー出力を異なる増幅率で増幅し、それぞれに判断閾値を設定しておき、着座と人体検知とをそれぞれ判断するようにしている。このように信号振幅を利用し、微小な動きでの誤判断を無くすことで、例えばトイレ内で使用者が静止したのか、トイレから退去したのかといった対象物の動きを判断することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−70119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、信号振幅だけで対象物の動きを判断する場合、例えばトイレの出入り用ドアの設置場所によっては、退去前でも大きな信号振幅が生じる場合があり、これに起因して判断の精度が下がることがある。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ドアの開閉を伴う場合がある使用者の行動態様とドアを開放したままトイレから退出する場合の使用者の行動形態をさらに正確に検知することが可能な人体検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するべく本発明者は、ドアの開閉およびこれに伴い検知される信号(ドア開閉に伴う差分ドップラー信号)に着目して種々検討した。一般的に、ドップラーセンサーは、使用者が接近して大きな振幅信号を検出すると人体有りと判定するが、その後に小さな振幅信号となっても、静止状態である場合があるので、人体無しとなったことを速やかに判定することが難しい。また、ドップラーセンサーから出力されたセンサー出力原信号を異なる増幅率で増幅する複数の信号を用いる場合、使用者のゆっくりとした動き(揺らぎ)を正確に判断することが難しい場合があり、これにドアの開閉動作が加わるとなおさらである。そこで、発明者は、開き戸や引き戸のようなドアの開閉の際のドップラー信号の特徴に着目し、動きが速く(ドップラー信号の周波数が高い)、振幅強度も大きい人の移動による動きやそれ以外の人の動き(体の揺らぎや腕などの動き)との切り分け(判別)についてさらに検討を重ねた。また、使用者の実際の動きについても検討してみると、ドアを開けたまま退去するようなこともあるため、こういった実情にも着目して検討を重ね、当該課題の解決に結び付く知見を得るに至った。
【0010】
本発明はかかる知見に基づくものであり、人体に向けて伝播波を放射する伝播波発信部と、人体と人体以外の移動体によって反射された伝播波を受信する伝播波受信部と、伝播波発信部によって放射された伝播波及び伝播波受信部によって受信された伝播波に基づいてドップラー信号を生成するドップラー信号生成部と、ドップラー信号生成部が生成したドップラー信号に基づいて、人体の行動を判定する判定部と、を備えた人体検知装置において、判定部は、ドップラー信号が第一閾値を越えると人体有りと判定し、第一閾値を越えたドップラー信号に基づいて人体の行動を判定するものであり、この行動判定においてドアの開閉を判定すると、人体の退去を判定することを特徴とする。
【0011】
人体無しの場合におけるドップラー信号は、人体無しの状態において存在するノイズ(本明細書では暗ノイズと呼ぶ)に基づき、振幅強度が極めて小さくある一定の周波数をもった信号となる。本発明では、このような暗ノイズに基づく第一閾値を用いて人体の有無ないしは行動を判定し、さらに、ドアの開閉を判定し、当該ドア開閉の判定結果をも踏まえて人体の退去を判定することとしている。このような判定結果に基づけば、ドアの開閉を判定した際にはトイレ等が使用状態から非使用状態へ移行したとして判定を変更することができる。また、ドアを開けたまま人が退去したときは、人が居なくなったときに生じる暗ノイズの特徴を使って退去を判断することができる。
【0012】
この人体検知装置では、人体有りと判定している場合にドアの開閉があると判定した場合には、当該ドアで仕切られたスペースから退出するための人体の退去と判定することができる。このような判定を行うことで、使用者が不在となる(ドップラー信号が第一閾値を下回る)前にそのスペースの使用が終了したことを速やかに判定することが可能である。
【0013】
また、人体検知装置は、ドップラー信号が、第一閾値より小さく、周波数が第一周波数よりも高い期間が所定時間継続すると人体無しへと判定を変更するものでもよい。この場合には、人体が確実に遠ざかり、暗ノイズを検知することで、退去の有無に係わらず、人体無しとなったことを確実に判定することができる。
【0014】
また、人体検知装置において、ドアの開閉は、ドップラー信号の振幅が、第一閾値以上であって、第二閾値よりも小さく、その周波数が所定周波数より高い期間が所定時間継続したことによって判定することとしてもよい。ドア開閉時のドップラー信号は人体移動に比して振幅強度が小さく周波数が高い。本発明によれば、振幅が小さいことからすれば遠くの物体の移動であって、周波数からすれば人の移動より速いという特徴を組み合わせることで、ドアの開閉と人の移動とを切り分け、ドアの開閉を確実に判定することができる。
【0015】
また、人体検知装置は、行動判定において、ドップラー信号の振幅が、センサー近傍での人体の動きによる所定閾値を越えてから、所定時間内に第一閾値を下回り、その周波数が第一周波数よりも高いものであることを検知すると、人体の退去と判定するものであることも好ましい。一般に、横スライドドアのような横入りドアは、ドップラーセンサーの電波を横切るドア面積が狭いのでドア開閉が検知し難いが、本発明によれば、人体の動きを検知した後で突然に使用者の存在が検知できなくなって暗ノイズ状態となると、横入りドアからの退去があり当該スペースの使用が終了したと判定することができる。
【0016】
また、人体検知装置は、退去と判定しただけでは、人体有りとして行動判定を継続し、人体無しと判定すると、人体の接近有無の判定から再び実行することも好ましい。これによれば、退去動作後に使用者が当該スペースに戻ったような場合に、速やかに行動判定を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ドアの開閉を伴う場合がある使用者の行動態様とドアを開放したままトイレから退出する場合の使用者の行動形態をさらに正確に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】人体検知装置の機能的な構成を示すブロック構成図である。
【図2】検知領域における使用者の存在有無を判定するためのフローチャートである。
【図3】伝播波の送信態様とデータ取得態様の一例を示す図である。
【図4】伝播波の送信態様とデータ取得態様の一例を示す図である。
【図5】使用者が近接静止するまでの判定を行うフローチャートである。
【図6】伝播波の送信態様とデータ取得態様の一例を示す図である。
【図7】伝播波の送信態様とデータ取得態様の一例を示す図である。
【図8】手洗器に用いた場合の、使用状況の判定を行うフローチャートである。
【図9】大便器に用いた場合の、使用状況の判定を行うフローチャートである。
【図10】使用者が退去するまでの判定を行うフローチャートである。
【図11】大便器に使用者が近づく際の差分ドップラー信号の例を示す図である。
【図12】本発明の一実施形態を示すフローチャートである。
【図13】本発明の一実施形態を示すフローチャートである。
【図14】本発明の一実施形態を示すフローチャートである。
【図15】本発明の一実施形態を示すフローチャートである。
【図16】人体の接近時の差分ドップラー信号の波形を示す図である。
【図17】人体の移動接近時と立位静止時の差分ドップラー信号の波形を示す図である。
【図18】人体の着座動作時の差分ドップラー信号の波形を示す図である。
【図19】人体の離座動作時の差分ドップラー信号の波形を示す図である。
【図20】人体移動およびドア開閉時の差分ドップラー信号の波形を示す図である。
【図21】横入りドアからの人体退去時およびその後の差分ドップラー信号の波形を示す図である。
【図22】暗ノイズの波形を示す図である。
【図23】人体の静止時および離反動作時の差分ドップラー信号の波形を示す図である。
【図24】人体の着座静止状態におけるモコン操作時の差分ドップラー信号の波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0020】
本発明の実施形態に係る人体検知装置について図1を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係る人体検知装置1の機能的な構成を示すブロック構成図である。図1に示すように、人体検知装置1は、伝播波送信部2と、伝播波受信部3と、ドップラー信号生成部4と、ドップラー信号算出部5と、行動判定部6(判定部)と、を備えている。
【0021】
人体検知装置1は、所定方向に伝播波を送り出すことで使用者の存在及び行動態様を検知する装置である。人体検知装置1は、使用者の存在及び行動態様を検知しようとする検知領域に伝播波を送信して人体検知を行うものである。例えば、人体検知装置1が、手洗器に設置される場合には、使用者が手洗器を使用する際の立ち位置を含む領域に、伝播波としてのマイクロ波を送信する。例えば、人体検知装置1が、大便器に設置される場合には、使用者が大便器を立位使用する際の立ち位置及び着座使用する際の着座位置を含む領域に、伝播波としてのマイクロ波を送信する。
【0022】
続いて、各機能部分について説明する。伝播波送信部2は、使用者の存在を検知しようとする検知領域に伝播波を送信する部分である。伝播波送信部2は、送信した伝播波の情報をドップラー信号生成部4に出力する。
【0023】
伝播波受信部3は、使用者によって反射された伝播波を受信する部分である。伝播波受信部3は、受信した伝播波の情報をドップラー信号生成部4に出力する。
【0024】
ドップラー信号生成部4は、伝播波送信部2によって送信された伝播波と、伝播波受信部3によって受信された伝播波とに基づいてドップラー信号を生成する部分である。ドップラー信号生成部4は、生成したドップラー信号をドップラー信号算出部5に出力する。
【0025】
ドップラー信号算出部5は、ドップラー信号生成部4が生成したドップラー信号に基づいて、差分ドップラー信号を生成する。ドップラー信号算出部5は、差分ドップラー信号を生成しない場合は、ドップラー信号生成部4が生成して出力したドップラー信号を、そのまま行動判定部6に出力する。ドップラー信号算出部5は、差分ドップラー信号を生成する際には、時系列に沿った少なくとも一対のドップラー信号の差を取り、差分ドップラー信号を生成する。
【0026】
行動判定部6は、ドップラー信号生成部4が生成したドップラー信号又はドップラー信号算出部5が算出した差分ドップラー信号に基づいて、使用者の状況を判定する部分である。行動判定部6は、ドップラー信号又は差分ドップラー信号に基づいて、使用者の存在及び行動態様を判定する部分である。
【0027】
続いて、所定方向に伝播波を送り出すことで使用者の存在を検知するフローについて、図2を参照しながら説明する。図2は、検知領域における使用者の存在有無を判定するためのフローチャートである。
【0028】
ステップS01では、センサー駆動周期を1s(第一周期)と設定する。ステップS02では、センサー駆動時期か否かを判断する。センサー駆動時期であれば、伝播波送信部2と、伝播波受信部3と、ドップラー信号生成部4とを駆動する。センサー駆動時期でなければ、ステップS02の処理を繰り返す。
【0029】
センサー駆動時期において具体的には、図3に示すように、1000msec(1s)間隔で、伝播波送信部2が駆動される。伝播波送信部2は、1000msec(1s)間隔で、15msecの間伝播波を送信する。伝播波受信部3は、伝播波送信部2が送信して反射された伝播波を受信し、ドップラー信号生成部4に出力する。ここで例として時間を示しているのは、マイクロ波センサーとして、周波数10.525GHzを使用したときの数値例である。マイクロ波センサーの周波数が異なれば、それに応じた時間間隔でのセンサーの駆動制御が必要になる。
【0030】
ステップS03では、ドップラー信号算出部5が、12msec(第二周期)間隔でドップラー信号を一対形成して検出値A,Bとし、行動判定部6に出力する。なお、具体的な、検出値A,Bとしては、時系列に沿った一対のドップラー信号の差を取った差分ドップラー信号とすることが好ましい。一例として、図7(A)にその手法を示す。図7(A)に示す例では、電波送信を35msec行っている。その電波送信を行っている間に、20msecの間隔で取得されたA1とA2のドップラー信号に基づいて、A2−A1の差分ドップラー信号を検出値Aとし、同じく20msecの間隔で取得されたB1とB2のドップラー信号に基づいて、B2−B1の差分ドップラー信号を検出値Bとすることで、検出値A,Bを差分ドップラー信号とすることができる。
【0031】
ステップS04では、行動判定部6が、検出値A,Bいずれかが第一閾値以上となっているか否かを判断する。検出値A,Bのいずれかが第一閾値以上となっていればステップS05の処理に進み、検出値A,Bのいずれもが第一閾値以上となっていなければステップS06の処理に進む。
【0032】
ステップS05では、行動判定部6が、検知領域に使用者が存在するものと判断し、行動態様を判定するためのフロー(後述する)に移行する。
【0033】
ステップS06では、行動判定部6が、検出値A,Bいずれかが第二閾値以上となっているか否かを判断する。第二閾値は、第一閾値よりも小さい値となるように設定されている。検出値A,Bのいずれかが第二閾値以上となっていればステップS07の処理に進み、検出値A,Bのいずれもが第二閾値以上となっていなければステップS02の処理に戻る。
【0034】
ステップS07では、センサー駆動周期を100msec(第三周期)と設定し、カウンターNを0に設定する。ステップS08では、センサー駆動時期か否かを判断する。センサー駆動時期であれば、伝播波送信部2と、伝播波受信部3と、ドップラー信号生成部4とを駆動する。センサー駆動時期でなければ、ステップS08の処理を繰り返す。
【0035】
具体的には、図4に示すように、センサー駆動時期によらず連続的に伝播波送信部2が駆動される。伝播波送信部2は、連続して伝播波を送信する。伝播波受信部3は、伝播波送信部2が送信して反射された伝播波を受信し、ドップラー信号生成部4に出力する。ドップラー信号生成部4は、100msec周期且つ12msec(第四周期)間隔でドップラー信号を一対形成する。
【0036】
ステップS09では、ドップラー信号生成部4が、12msec間隔でドップラー信号を一対形成して検出値A,Bとし、行動判定部6に出力する。
【0037】
ステップS10では、行動判定部6が、検出値A,Bいずれかが第一閾値以上となっているか否かを判断する。検出値A,Bのいずれかが第一閾値以上となっていればステップS11の処理に進み、検出値A,Bのいずれもが第一閾値以上となっていなければステップS12の処理に進む。
【0038】
ステップS11では、行動判定部6が、検知領域に使用者が存在するものと判断し、行動態様を判定するためのフロー(後述する)に移行する。
【0039】
ステップS12では、カウンターNをカウントアップする。ステップS13では、カウンターNが3となっているか否かを判断する。カウンターNが3となっていなければステップS08の処理に戻り、カウンターNが3となっていればステップS01の処理に戻る。以上のセンサー駆動方法は、便器や水栓などを利用目的で近づいて来る速度の遅い使用者のドップラー信号の特徴を使った駆動方法である。利用目的で接近してくる使用者(利用者)は利用するために静止する必要があるので、必ず移動速度は遅くなる。このときのドップラー信号を見逃さずに探索する方法が以上説明した方法で、常時ドップラーセンサーを駆動することなく、間引き駆動で済むために省エネ化できるという利点がある。また、単にマイクロ波センサーを駆動するだけなら、図6の方法による常時駆動でもよい。
【0040】
続いて、所定方向に伝播波を送り出すことで使用者の行動態様を検知するフローについて、図5を参照しながら説明する。図5は、検知領域における使用者の行動態様を判定するためのフローチャートであって、使用者が近接静止するまでの判定を行うフローチャートである。図5に示すフローは、図2を参照しながら説明したフローによって、使用者が検知領域内に入ったことを検知した後のフローである(図2のステップS05、ステップS11)。
【0041】
ステップS21では、センサー駆動周期を4msec(第五周期)と設定する。具体的には、図6に示すように、センサー駆動時期によらず連続的に伝播波送信部2が駆動される。伝播波送信部2は、連続して伝播波を送信する。伝播波受信部3は、伝播波送信部2が送信して反射された伝播波を受信し、ドップラー信号生成部4に出力する。ドップラー信号生成部4は、4msec(第五周期)間隔でドップラー信号を生成する。ドップラー信号生成部4は、生成したドップラー信号をドップラー信号算出部5に出力する。
【0042】
ドップラー信号算出部5は、時系列に沿った一対のドップラー信号の差を取った差分ドップラー信号を生成する。一例としては、図7(B)に示すように、A,B,C,Dそれぞれのドップラー信号に基づいて、C−Aの差分ドップラー信号、D−Bの差分ドップラー信号を生成する。このように算出することで、4msec間隔の差分ドップラー信号が生成される。尚、差分ドップラー信号の生成にあたっては、データを間引いて例えば12msec間隔の差分ドップラー信号を生成することも好ましいものである。
【0043】
ステップS22では、生成した差分ドップラー信号が、判断開始閾値を超えたか判断する。差分ドップラー信号が判断開始閾値を超えていればステップS23の処理に進み、差分ドップラー信号が判断開始閾値を超えていなければステップS22の処理を繰り返す。
【0044】
ステップS23では、行動判定部6が差分ドップラー信号の振幅強度を算出する。ステップS24では、行動判定部6が差分ドップラー信号の周波数を算出する。
【0045】
ステップS25では、差分ドップラー信号の振幅強度が第一行動閾値を超え、且つ差分ドップラー信号の周波数が第一周波数閾値より高い期間が第一所定時間を超えたか否かを判断する。差分ドップラー信号の振幅強度が第一行動閾値を超え、且つ差分ドップラー信号の周波数が第一周波数閾値より高い期間が第一所定時間を超えていれば、ステップS26の処理に進む。差分ドップラー信号の振幅強度が第一行動閾値を超え、且つ差分ドップラー信号の周波数が第一周波数閾値より高い期間が第一所定時間を超えていなければ、ステップS23の処理に戻る。
【0046】
ステップS26では、検知領域内の所定位置に対する使用者の移動であると判定し、使用者が接近中であると判定する。
【0047】
ステップS27では、差分ドップラー信号の振幅強度が第一行動閾値よりも大きな第二行動閾値を越えたか否かを判断する。差分ドップラー信号の振幅強度が第一行動閾値よりも大きな第二行動閾値を越えていれば、ステップS28の処理に進む。差分ドップラー信号の振幅強度が第一行動閾値よりも大きな第二行動閾値以下であれば、退去判断に進む(図10のステップS63)。
【0048】
ステップS28では、差分ドップラー信号の振幅強度が第一行動閾値を下回った状態が、所定期間続いたか判断する。差分ドップラー信号の振幅強度が第一行動閾値を下回った状態が、所定期間続いた場合には、ステップS29の処理に進む。差分ドップラー信号の振幅強度が第一行動閾値を下回った状態が、所定期間続いていない場合には、ステップS28の処理を継続する。
【0049】
ステップS29では、検知領域内の所定位置に使用者が静止したと判定する。尚、使用者の静止を判定するにあたっては、使用者の移動距離を累積算出し、この移動距離に基づいて判定することも好ましい。行動判定部6は、差分ドップラー信号の振幅強度が第一行動閾値を超えている期間において、差分ドップラー信号の周波数に基づいて使用者の移動距離を算出し、その算出した移動距離が所定距離を上回った場合に、検知領域内の所定位置に使用者が静止したと判定する。
【0050】
続いて、所定位置に使用者が静止した後の行動態様を検知するフローについて、図8及び図9を参照しながら説明する。図8は、静止した使用者の行動態様を判定するためのフローチャートであって、使用者が手洗器を利用する際の判定を行うフローチャートである。図9は、静止した使用者の行動態様を判定するためのフローチャートであって、使用者が大便器を利用する際の判定を行うフローチャートである。図8及び図9に示すフローは、図5を参照しながら説明したフローによって、使用者が検知領域内で静止したことを検知した後のフローである(図5のステップS29)。
【0051】
まず図8を参照しながら、使用者が手洗器を利用する際の判定について説明する。
【0052】
ステップS41では、差分ドップラー信号の振幅強度が第二行動閾値よりも小さな第三行動閾値を越え、差分ドップラー信号の周波数が第一周波数閾値を超えているか判断する。差分ドップラー信号の振幅強度が第二行動閾値よりも小さな第三行動閾値を越え、差分ドップラー信号の周波数が第一周波数閾値を超えていれば、ステップS42の処理に進む。差分ドップラー信号の振幅強度が第二行動閾値よりも小さな第三行動閾値を越え、差分ドップラー信号の周波数が第一周波数閾値を超えていなければ、退去判断に進む(図10のステップS61)。ステップS42では、使用者が吐水装置に向けて手を差し出したと判定する。
【0053】
ステップS43では、差分ドップラー信号の振幅強度が第三行動閾値を下回った期間が、所定期間連続したか否かを判断する。差分ドップラー信号の振幅強度が第三行動閾値を下回った期間が、所定期間連続していれば、ステップS44の処理に進み、差分ドップラー信号の振幅強度が第三行動閾値を下回った期間が、所定期間連続していなければ、ステップS43の処理を継続する。ステップS44では、使用者が吐水装置から手を引き離したと判定する。
【0054】
続いて図9を参照しながら、使用者が大便器を利用する際の判定について説明する。
【0055】
ステップS51では、ステップS29において使用者が静止したと判断する前に、差分ドップラー信号の振幅強度が第一行動閾値よりも小さな第四行動閾値を下回った後、第一所定時間よりも短い第二所定時間内(換言すれば、ステップS29において使用者が静止したと判断する前)にその振幅強度が第四行動閾値を上回り、更に、差分ドップラー信号の周波数が第一周波数閾値より高い期間が第一所定時間を超え、その後、前記差分ドップラー信号の振幅強度が前記第四行動閾値を所定期間下回ったか否かを判断する。この条件を満たせば、ステップS52の処理に進み、この条件を満たさなければ、ステップS53の処理に進む。
【0056】
ステップS51の処理は、図11に示すように、使用者が大便器に近づくと、差分ドップラー信号の振幅強度が増大し、そこで脱衣行動していると差分ドップラー信号の振幅強度が大きいものの、使用者が大便器に着座する場合には、着座体勢に移行する着座準備のための短い時間において使用者の動きが一時的に止まり、着座するための動きにより差分ドップラー信号の振幅強度が大きくなった後、着座が完了すると再度差分ドップラー信号の振幅強度が小さくなることを利用するものである。
【0057】
ステップS52では、使用者が大便器に着座して排便を行うと判定する。この判定には、図18に示す着座動作に特有のドップラー信号の特徴を利用する。図18の着座動作のドップラー信号を更に詳細に示したのが図11である。すなわち、着座動作の場合、便器前の立位位置から便座である着座位置までの距離はある範囲内に限定されるために、ある一定距離の移動範囲の信号が現れるという特徴がある。また、この判断には本着座部分のドップラー信号の特徴をパターン認識する方法で処理してもよい。尚、行動判定部6は、使用者が大便器に着座して排便を行うと判定した後に、差分ドップラー信号の振幅強度が第四行動閾値を上回った期間が第三所定時間を超えないか、又は差分ドップラー信号の周波数が第一周波数閾値よりも低い場合に、使用者が大便器に着座しながらその一部を動かしたものと判定することも好ましい。
【0058】
ステップS53では、行動判定部6が、検知領域内の所定位置に対する使用者の移動であると判定した後において、使用者が大便器に着座して排便を行うと判定しない場合であるので、使用者が大便器に着座しないで排便を行うと判定する。これは使用者が大便器に着座せずに排便を行う場合、図17に示すようなドップラー信号となり、大便器前での静止状態は着座か立位静止かであり、この両者のどちらかを判断するうえで、着座動作基準であるステップS61を満たしていなければ立位と判断している。
【0059】
ステップS54では、着座中の利用者の離座判断を行う。離座動作時のドップラー信号は図19に示すような信号を示す。離座は着座と逆の行為であり、着座動作信号を時系列に逆転したような信号となる。離座信号は初め振幅が大きく、その後振幅が小さくなる特徴がある。これは離座動作により体の位置がセンサーから離れるためである。この離座信号も、離座移動距離がある移動範囲内に限定される。この判定にもステップS52で説明したと同様に離座動作に特有のドップラー信号の特徴を利用したり、パターン認識を利用しても良い。差分ドップラー信号の振幅強度が第四行動閾値を上回った期間が第三所定時間を超え、差分ドップラー信号の周波数が第一周波数閾値よりも高いか否かを判断する。差分ドップラー信号の振幅強度が第四行動閾値を上回った期間が第三所定時間を超え、差分ドップラー信号の周波数が第一周波数閾値よりも高い場合にはステップS55の処理に進み、そうでない場合はステップS54の処理を継続する。ステップS55では、使用者が大便器から離座したものと判定する。
【0060】
続いて図10を参照しながら、使用者が退去する際の判定について説明する。図10は、使用者が退去する際の判断フローを示したフローチャートである。
【0061】
ステップS61では、差分ドップラー信号の振幅強度が第一行動閾値を上回り、且つ差分ドップラー信号の周波数が第一周波数閾値よりも高い期間が第四所定時間を超えたか否かを判断する。差分ドップラー信号の振幅強度が前記第一行動閾値を上回り、且つ前記差分ドップラー信号の周波数が前記第一周波数閾値よりも高い期間が第四所定時間を超えていれば、ステップS62の処理に進み、その条件を満たさなければ、図8のステップS41又は図9のステップS51の処理に戻る。ステップS62では、検知領域内の所定位置からの使用者の移動であると判定する。
【0062】
ステップS63では、差分ドップラー信号の振幅強度が前記第一行動閾値を下回る期間が所定期間続いたか否かを判断する。差分ドップラー信号の振幅強度が前記第一行動閾値を下回る期間が所定期間続いていなければ、ステップS63の処理に戻る。差分ドップラー信号の振幅強度が前記第一行動閾値を下回る期間が所定期間続けば、ステップS64の処理に進む。ステップS64では、振幅強度が最後に第二行動閾値を越えた時点から使用者が第一距離閾置以上進んでいるかを判定し、その条件を満たしていればステップS65に進み、人がいなくなったと判定する。このS64の処理によって、使用者が接近している状態で移動開始したことを、差分ドップラー信号の振幅強度が第一行動閾値よりも大きな第二行動閾値を越えたことで判断し、その後使用者が少し遠ざかって振幅強度が第二行動閾値を下回ると、その時点からの移動距離によって使用者がどの程遠ざかったのかを正確に算出して、使用者の接近状態から十分に遠ざかった位置に移動したことを正確に判断することができる。なお、移動距離の算出は、差分ドップラー信号の周波数から求められる使用者の移動速度と時間との積を積分することから算出することが可能である。S64の条件を満たしていなければ、図5のステップ29に進む。
【0063】
続いて、図12〜図24を参照しながら、ドア付きの部屋から使用者が退去する際の判定の一例を説明する。図12〜図15は、使用者がドア付きの部屋から退去する際の判断フローを示したフローチャートである。また、図16〜図24は、使用者の移動や姿勢、ドアの動きなどに応じた各信号(差分ドップラー信号)を例示した波形図である。ここでは差分ドップラー信号を示しているが、ドップラー信号も同様の信号パターンとなる。ドア付きの部屋とは、例えば、大便器が設置され、壁とドア(開き戸や引き戸)とで区画されたトイレなどのことである。
【0064】
図12でドアの動きを考慮に含めた退去判定の行動判定フローを開始したら(ステップS501)、差分ドップラー信号における差分値が閾値51以上かどうか判定する(ステップS502)。閾値51は利用者の体全体の動きに伴うドップラー信号の振幅強度の下限値を設定したものである。利用者が便器利用のために静止または着座後離座した状態の場合、体の動きのドップラー信号は比較的大きな値となる。差分ドップラー信号が閾値51以上でなければ当該ステップS502を繰り返す一方、51以上であれば次のステップへ進む。
【0065】
次ステップ以降では、差分ドップラー信号の振幅強度を計算し(ステップS503)、周波数を計算してから(ステップS504)、振幅強度が第一所定値(第一閾値)より大きく、尚かつ周波数が第一周波数より高い期間が所定期間以上継続したかどうか判断する(ステップS505)。所定期間以上であれば、人(例えばトイレの使用者)が移動接近中であると判定し、人体F(人体有無のフラッグ)を「有り」にする(ステップS506)。一方、所定期間以上でなければステップS503に戻り、振幅強度計算から繰り返す。これは、人が移動する場合、比較的大きな信号振幅のドップラー信号が一定距離以上継続することを利用して判断している。例えば、図24に示すように着座中にリモコン操作したり、着座中にトイレットペーパーを取ったり、操作リモコンに手を伸ばしたり、お尻拭き動作をしたりしている場合は、大きなドップラー信号が出なかったり、一定期間以上大きい信号が継続しない。
【0066】
ここで、振幅強度の第一所定値(第一閾値)は、人がいない場合におけるノイズ(暗ノイズ)を基準にした値(例えば、暗ノイズの振幅よりも僅かに大きな振幅値)に設定されている(図22参照)。また、第一周波数は、人の移動速度を基準にして設定されている(図17参照)。
【0067】
次に、差分ドップラー信号の振幅強度が第二所定値(第二閾値)以下であり、尚かつ周波数が第三周波数より高い期間が所定期間以上継続したかどうか判断する(ステップS507)。振幅強度の第二所定値(第二閾値)は、ドア移動の際に生じる振幅を基準にした値(例えば、人体検知装置1からみてドアがトイレの中のもっとも遠方に配置されている場合において、ドア移動の際に生じる振幅よりも僅かに小さい振幅値)に設定されている(図20参照)。この第二所定値は、上述した第一所定値よりも大きな値となる。また、第三周波数は、ドアの移動速度を基準にして設定されているもので、一般には人の移動時の差分ドップラー信号よりも高い周波数となる(図20参照)。なお、人体検知装置1からみてドアがトイレの中の最も遠方でなく、遠方へ到達する途中のトイレ壁面に配置されている場合においても、図20に示すようなドアの動きに伴うドップラー信号が現れる。
【0068】
ステップS507にてYESであれば、当該トイレのドアの動作を検知したこととなる(ステップS508)。ここでは、ドア開閉時の差分ドップラー信号は人体移動に比して振幅強度が小さく周波数が高いという特徴に着目し(図20参照)、これら特徴を組み合わせることで、ドアの開閉態様と使用者の移動態様とを切り分け、ドアの開閉を確実に判定できるようにしている。ドア動作を検知したら、状態判定F(フラッグ)を「退去」にする(ステップS509)。
【0069】
続いて、差分ドップラー信号の振幅強度が、上述の第一所定値(第一閾値)より小さく、尚かつ周波数が第一周波数より高い期間が所定期間以上継続したかどうか判断する(ステップS510)。YESであれば、人体無しであるとして不在であると判断し、判定を「人体無し」へと変更する(ステップSP511)。ここでは、人体が確実に遠ざかったことを検知することで、退去の有無に係わらず、人体無しとなったことを確実に判定する。不在判断を下したら、人体検知フラッグおよび人の行動状態を示すフラッグである状態判定フラッグをそれぞれ初期値にリセットし、人体フラッグを無(ゼロ)とし、状態判定フラッグを非使用状態として(ステップS512)、一連のフローの最初(ステップS501)に戻る。このように、本実施形態では、退去と判定した場合(ステップS509)、人体有りとして行動判定を継続し、人体無しと判定すると(ステップS511、S512)、人体の接近有無の判定から再び実行するようにしているので(ステップS501)、退去動作後に使用者がトイレに戻った場合に、速やかに行動判定を行うことができる。また、ドア動作を検知したときの移動距離と差分ドップラー信号の振幅強度が、上述の第一所定値(第一閾値)より小さく、尚かつ周波数が第一周波数より高い期間が所定期間以上継続したときの移動距離が予め設定した距離以下の短い距離のときだけ不在判断をすることも好ましい。このようにすればトイレ空間内で、ドアの動作以外の何らかの動作でドアの開閉信号に類似したドップラー信号が発生した場合、ドアの動作との判断ができ、正確に不在判断ができる。
【0070】
また、ステップS507にてNOの場合(差分ドップラー信号の振幅強度が第二所定値(第二閾値)以下であり、尚かつ周波数が第三周波数より高い期間が所定期間以上継続していない場合)には、使用者の着座パターンを検知したかどうか、判断する(ステップSP513)。着座パターン検知は、着座動作時における差分ドップラー信号の波形(図18参照)に基づき、上述の実施形態にて説明したごとく行うことができる。
【0071】
ステップS513でYESの場合はステップS523(図14参照)に進む一方で、NOの場合は、差分ドップラー信号の振幅強度が第四所定値より大きいかどうかを判断する(ステップS514)。第四所定値は、便器の近傍から電波の放射方向に対して横へ移動する人体を検知する際の閾値となるもので、ある程度の強い振幅が短時間出た後、人がすぐに居なくなって暗ノイズになるという傾向ないし特徴に基づき設定されている(図21参照)。ステップS514にてYESであれば、人が退去した可能性があるとして、次のステップ(ステップS515)に進む。逆にNOであれば、ステップS507へ戻る。
【0072】
ステップS515では、差分ドップラー信号の振幅強度が第五所定値より小さい期間が所定値以上継続したかどうかを判断する(ステップS515)。第五所定値は、暗ノイズより大きいが、人がセンサー前で動いたときの信号に比べて小さな値であり、静止か退去(離反)のときには差分ドップラー信号の振幅強度が小さくなることに基づき設定されている(図23参照)。ステップS515にてYESであれば、人が退去した可能性があるとして、次のステップ(ステップS516)に進む。逆にNOであれば、ステップS507へ戻る。
【0073】
ステップS516では、差分ドップラー信号が、所定閾値である第四所定値よりも大きな振幅強度になった時点から所定時間内に振幅強度が第一所定値(第一閾値)を下回り、その周波数が第一周波数より高くなったかどうかを判断する(ステップS516)。ステップS516にてYESであれば、人が退去した可能性があるとして、次のステップ(ステップS517)以降に進む。逆にNOであれば、使用者が立位小便姿勢(立位静止状態)にあると判断する(ステップS522)。ステップS516では、立位小便姿勢にある場合、使用者は身体が揺らぎ、この揺らぎに起因して、差分ドップラー信号が、移動接近時等に比べて周波数と振幅強度がきわめて低い揺らぎ状態になることに基づいて判断を行う(図17参照)。立位小便姿勢にあると判断したら、後述するステップS550(図15参照)へ進む。
【0074】
ステップS517では、上述した一連の判断(特に、ステップS513〜S516の判断)の結果に基づき、横入りドア(トイレの側方に配置されており、トイレに対して横から出入りするようになっているドア)の動作を検知したこととする(ステップS517)。一般に、横スライドドアのような横入りドアは、トイレの外側に開閉する開き戸やドアとセンサーの間に人体が入って開閉するドアを開けたまま退去するとき、ドアの開閉が検知し難いが、本実施形態では、人体の動きを検知した後で、突然に暗ノイズ状態となると、横入りドアからの退去と判定することで、トイレの使用終了と判定することができる。ドア動作を検知したら、状態判定フラッグを「退去」としてから(ステップS518)、上記ステップS516における差分ドップラー信号の周波数が第一周波数より高い状態が所定期間以上継続したかどうか判断する(ステップS519)。YESであれば、トイレ内は人体無しであるから不在であると判断する(ステップS520)。一方、NOであればステップS507に戻る。
【0075】
ステップS520で不在判断を下したら、前述のS512と同じように初期値をリセットし、人体フラッグを無(ゼロ)とし、状態判定フラッグを非使用状態として(ステップS521)、一連のフローの最初(ステップS501)に戻る。このように、本実施形態では、退去と判定した場合(ステップS518)、人体有りとして行動判定を継続し、人体無しと判定すると(ステップS520、S521)、人体の接近有無の判定から再び実行するようにしているので(ステップS501)、退去動作後に使用者がトイレに戻った場合に、速やかに行動判定を行うことができる。
【0076】
また、上述のステップS513にてYES(着座パターンを検知した)であれば、差分ドップラー信号の振幅強度が第一所定値より大きく第五所定値より小さい期間が所定時間以上継続したかどうか判断する(ステップS523)。上述したとおり、振幅強度の第一所定値は、人がいない場合におけるノイズ(暗ノイズ)を基準にした値(例えば、暗ノイズの振幅よりも僅かに大きな振幅値)であり、ここで第一所定値より大きいかどうかを判断することは、着座時に暗ノイズが生じやすい場合があることに基づく。また、第五所定値は、上述したステップS515における第五所定値と同じものであり、静止か退去のときには差分ドップラー信号の振幅強度が小さくなることに基づき、暗ノイズより大きく、尚かつ人がセンサー前で動いたときの信号に比べて小さな値に設定されている。ここで、YESであれば、着座動作時の差分ドップラー信号の波形に基づき、使用者が着座したと判断することができる(ステップS524)ステップS524で使用者が着座したと判断したら、状態判定フラッグを「離」にし、ステップS550へ進む(図15参照)。一方、NOであれば、ステップS507へ戻る。
【0077】
ステップS550では、差分ドップラー信号の振幅強度が第六所定値以上かどうかを判断する。第六所定値とは、センサー(人体検知装置1)に対して使用者がより近づいたことを検知するための閾値であり、本実施形態における振幅の閾値としては最大のものである(図16参照)。これは、例えば、便器の水タンク上やトイレ側壁などに配置された手洗いを利用する際、使用者の身体が当該センサー(人体検知装置1)に近づく場合には当該行動に基づいて判断するものである。差分ドップラー信号の振幅強度が第六所定値以上であれば、手洗いをしていると判断し、状態判定フラッグを「手洗い」として(ステップS552)、ステップS507へ戻る。一方、差分ドップラー信号の振幅強度が第六所定値以上でなければ、手洗い判断することなくステップS507へ戻る。
【0078】
ここまで説明したように、ドア付きの部屋から使用者が退去する際、以上の退去判断フローに基づいて判断を実施する本実施形態の人体検知装置1によれば、ドア開閉に伴う差分ドップラー信号を利用し、ドアの開閉を判定すると使用状態から非使用状態へと判定を変更し、ドアの開閉を伴う使用者の行動態様をさらに正確に検知することが可能である。
【0079】
また、従来は、ドップラーセンサーから出力されたセンサー出力原信号を異なる増幅率で増幅した複数の信号を用いる際、使用者のゆっくりとした動き(揺らぎ)を正確に捉えることが難しい場合があったが、本実施形態の人体検知装置1によればこのような際にも使用者の動きを捉え(ステップS515、ステップS523参照)、トイレの使用状態や使用者の有無状態をより正確に判断することが可能となる。
【0080】
また、上述のごとき退去判断を行う人体検知装置1によれば、使用者がドアを開けたままで閉めずにトイレから退去してしまうという態様に対しても、使用者がいなくなったときに生じる暗ノイズの特徴を使って退去行動を正確に判断することが可能である。別言すれば、本実施形態の人体検知装置1によるドア開閉判定は、ドアが開けられたままで閉められない場合にも対応することができる。
【0081】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【0082】
以上について例示すれば、例えば本実施形態では、本発明に係る人体検知装置1を、大便器が設置され、壁とドア(開き戸)とで区画されたトイレに適用した場合について説明したが、これは人が出入りする行動の検知が行われるドア付きスペースの好適例に過ぎず、本発明がこの他のスペースや部屋などにおいても適用可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0083】
1:人体検知装置
2:伝播波送信部
3:伝播波受信部
4:ドップラー信号生成部
5:ドップラー信号算出部
6:行動判定部(判定部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定方向に伝播波を送り出すことで使用者の存在を検知する人体検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波ドップラーセンサーなどのドップラーセンサーを用いて人体を検知することが行われている。マイクロ波ドップラーセンサーは、マイクロ波を伝播波として送信し、対象物によって反射したマイクロ波を受信することにより、対象物の動きを検出するものである。
【0003】
マイクロ波ドップラーセンサーは、センサーから送信するマイクロ波の周波数と、センサーから送信したマイクロ波が人体などの対象物によって反射してセンサーにより受信される信号の周波数との差分信号からドップラー信号を生成するものである。このドップラー信号は、対象物の動き(例えば、対象物の接近や対象物の離反)を表す信号である。従って、このドップラー信号から対象物の動きを検出することができる。
【0004】
下記特許文献1に記載の技術では、使用者が検知領域内にいるか否かを判定し、更に使用者が便座に着座したか否かを判定するものが開示されている。具体的には、ドップラーセンサーと、このドップラーセンサーから出力されたセンサー出力原信号を異なる増幅率で増幅する複数の信号処理部と、信号処理部で第一増幅率に基づいて増幅された第一出力信号を入力として人体検知を行う人体状況判定部と、信号処理部で第二増幅率に基づいて増幅された第二出力信号を入力として着座検知を行う着座状態判定部と、を備える人体検知装置(下記特許文献1では、多機能トイレ装置)である。
【0005】
このような装置においては、マイクロ波ドップラーセンサーなどで検出したセンサー出力を異なる増幅率で増幅し、それぞれに判断閾値を設定しておき、着座と人体検知とをそれぞれ判断するようにしている。このように信号振幅を利用し、微小な動きでの誤判断を無くすことで、例えばトイレ内で使用者が静止したのか、トイレから退去したのかといった対象物の動きを判断することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−70119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、信号振幅だけで対象物の動きを判断する場合、例えばトイレの出入り用ドアの設置場所によっては、退去前でも大きな信号振幅が生じる場合があり、これに起因して判断の精度が下がることがある。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ドアの開閉を伴う場合がある使用者の行動態様とドアを開放したままトイレから退出する場合の使用者の行動形態をさらに正確に検知することが可能な人体検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するべく本発明者は、ドアの開閉およびこれに伴い検知される信号(ドア開閉に伴う差分ドップラー信号)に着目して種々検討した。一般的に、ドップラーセンサーは、使用者が接近して大きな振幅信号を検出すると人体有りと判定するが、その後に小さな振幅信号となっても、静止状態である場合があるので、人体無しとなったことを速やかに判定することが難しい。また、ドップラーセンサーから出力されたセンサー出力原信号を異なる増幅率で増幅する複数の信号を用いる場合、使用者のゆっくりとした動き(揺らぎ)を正確に判断することが難しい場合があり、これにドアの開閉動作が加わるとなおさらである。そこで、発明者は、開き戸や引き戸のようなドアの開閉の際のドップラー信号の特徴に着目し、動きが速く(ドップラー信号の周波数が高い)、振幅強度も大きい人の移動による動きやそれ以外の人の動き(体の揺らぎや腕などの動き)との切り分け(判別)についてさらに検討を重ねた。また、使用者の実際の動きについても検討してみると、ドアを開けたまま退去するようなこともあるため、こういった実情にも着目して検討を重ね、当該課題の解決に結び付く知見を得るに至った。
【0010】
本発明はかかる知見に基づくものであり、人体に向けて伝播波を放射する伝播波発信部と、人体と人体以外の移動体によって反射された伝播波を受信する伝播波受信部と、伝播波発信部によって放射された伝播波及び伝播波受信部によって受信された伝播波に基づいてドップラー信号を生成するドップラー信号生成部と、ドップラー信号生成部が生成したドップラー信号に基づいて、人体の行動を判定する判定部と、を備えた人体検知装置において、判定部は、ドップラー信号が第一閾値を越えると人体有りと判定し、第一閾値を越えたドップラー信号に基づいて人体の行動を判定するものであり、この行動判定においてドアの開閉を判定すると、人体の退去を判定することを特徴とする。
【0011】
人体無しの場合におけるドップラー信号は、人体無しの状態において存在するノイズ(本明細書では暗ノイズと呼ぶ)に基づき、振幅強度が極めて小さくある一定の周波数をもった信号となる。本発明では、このような暗ノイズに基づく第一閾値を用いて人体の有無ないしは行動を判定し、さらに、ドアの開閉を判定し、当該ドア開閉の判定結果をも踏まえて人体の退去を判定することとしている。このような判定結果に基づけば、ドアの開閉を判定した際にはトイレ等が使用状態から非使用状態へ移行したとして判定を変更することができる。また、ドアを開けたまま人が退去したときは、人が居なくなったときに生じる暗ノイズの特徴を使って退去を判断することができる。
【0012】
この人体検知装置では、人体有りと判定している場合にドアの開閉があると判定した場合には、当該ドアで仕切られたスペースから退出するための人体の退去と判定することができる。このような判定を行うことで、使用者が不在となる(ドップラー信号が第一閾値を下回る)前にそのスペースの使用が終了したことを速やかに判定することが可能である。
【0013】
また、人体検知装置は、ドップラー信号が、第一閾値より小さく、周波数が第一周波数よりも高い期間が所定時間継続すると人体無しへと判定を変更するものでもよい。この場合には、人体が確実に遠ざかり、暗ノイズを検知することで、退去の有無に係わらず、人体無しとなったことを確実に判定することができる。
【0014】
また、人体検知装置において、ドアの開閉は、ドップラー信号の振幅が、第一閾値以上であって、第二閾値よりも小さく、その周波数が所定周波数より高い期間が所定時間継続したことによって判定することとしてもよい。ドア開閉時のドップラー信号は人体移動に比して振幅強度が小さく周波数が高い。本発明によれば、振幅が小さいことからすれば遠くの物体の移動であって、周波数からすれば人の移動より速いという特徴を組み合わせることで、ドアの開閉と人の移動とを切り分け、ドアの開閉を確実に判定することができる。
【0015】
また、人体検知装置は、行動判定において、ドップラー信号の振幅が、センサー近傍での人体の動きによる所定閾値を越えてから、所定時間内に第一閾値を下回り、その周波数が第一周波数よりも高いものであることを検知すると、人体の退去と判定するものであることも好ましい。一般に、横スライドドアのような横入りドアは、ドップラーセンサーの電波を横切るドア面積が狭いのでドア開閉が検知し難いが、本発明によれば、人体の動きを検知した後で突然に使用者の存在が検知できなくなって暗ノイズ状態となると、横入りドアからの退去があり当該スペースの使用が終了したと判定することができる。
【0016】
また、人体検知装置は、退去と判定しただけでは、人体有りとして行動判定を継続し、人体無しと判定すると、人体の接近有無の判定から再び実行することも好ましい。これによれば、退去動作後に使用者が当該スペースに戻ったような場合に、速やかに行動判定を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ドアの開閉を伴う場合がある使用者の行動態様とドアを開放したままトイレから退出する場合の使用者の行動形態をさらに正確に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】人体検知装置の機能的な構成を示すブロック構成図である。
【図2】検知領域における使用者の存在有無を判定するためのフローチャートである。
【図3】伝播波の送信態様とデータ取得態様の一例を示す図である。
【図4】伝播波の送信態様とデータ取得態様の一例を示す図である。
【図5】使用者が近接静止するまでの判定を行うフローチャートである。
【図6】伝播波の送信態様とデータ取得態様の一例を示す図である。
【図7】伝播波の送信態様とデータ取得態様の一例を示す図である。
【図8】手洗器に用いた場合の、使用状況の判定を行うフローチャートである。
【図9】大便器に用いた場合の、使用状況の判定を行うフローチャートである。
【図10】使用者が退去するまでの判定を行うフローチャートである。
【図11】大便器に使用者が近づく際の差分ドップラー信号の例を示す図である。
【図12】本発明の一実施形態を示すフローチャートである。
【図13】本発明の一実施形態を示すフローチャートである。
【図14】本発明の一実施形態を示すフローチャートである。
【図15】本発明の一実施形態を示すフローチャートである。
【図16】人体の接近時の差分ドップラー信号の波形を示す図である。
【図17】人体の移動接近時と立位静止時の差分ドップラー信号の波形を示す図である。
【図18】人体の着座動作時の差分ドップラー信号の波形を示す図である。
【図19】人体の離座動作時の差分ドップラー信号の波形を示す図である。
【図20】人体移動およびドア開閉時の差分ドップラー信号の波形を示す図である。
【図21】横入りドアからの人体退去時およびその後の差分ドップラー信号の波形を示す図である。
【図22】暗ノイズの波形を示す図である。
【図23】人体の静止時および離反動作時の差分ドップラー信号の波形を示す図である。
【図24】人体の着座静止状態におけるモコン操作時の差分ドップラー信号の波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0020】
本発明の実施形態に係る人体検知装置について図1を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係る人体検知装置1の機能的な構成を示すブロック構成図である。図1に示すように、人体検知装置1は、伝播波送信部2と、伝播波受信部3と、ドップラー信号生成部4と、ドップラー信号算出部5と、行動判定部6(判定部)と、を備えている。
【0021】
人体検知装置1は、所定方向に伝播波を送り出すことで使用者の存在及び行動態様を検知する装置である。人体検知装置1は、使用者の存在及び行動態様を検知しようとする検知領域に伝播波を送信して人体検知を行うものである。例えば、人体検知装置1が、手洗器に設置される場合には、使用者が手洗器を使用する際の立ち位置を含む領域に、伝播波としてのマイクロ波を送信する。例えば、人体検知装置1が、大便器に設置される場合には、使用者が大便器を立位使用する際の立ち位置及び着座使用する際の着座位置を含む領域に、伝播波としてのマイクロ波を送信する。
【0022】
続いて、各機能部分について説明する。伝播波送信部2は、使用者の存在を検知しようとする検知領域に伝播波を送信する部分である。伝播波送信部2は、送信した伝播波の情報をドップラー信号生成部4に出力する。
【0023】
伝播波受信部3は、使用者によって反射された伝播波を受信する部分である。伝播波受信部3は、受信した伝播波の情報をドップラー信号生成部4に出力する。
【0024】
ドップラー信号生成部4は、伝播波送信部2によって送信された伝播波と、伝播波受信部3によって受信された伝播波とに基づいてドップラー信号を生成する部分である。ドップラー信号生成部4は、生成したドップラー信号をドップラー信号算出部5に出力する。
【0025】
ドップラー信号算出部5は、ドップラー信号生成部4が生成したドップラー信号に基づいて、差分ドップラー信号を生成する。ドップラー信号算出部5は、差分ドップラー信号を生成しない場合は、ドップラー信号生成部4が生成して出力したドップラー信号を、そのまま行動判定部6に出力する。ドップラー信号算出部5は、差分ドップラー信号を生成する際には、時系列に沿った少なくとも一対のドップラー信号の差を取り、差分ドップラー信号を生成する。
【0026】
行動判定部6は、ドップラー信号生成部4が生成したドップラー信号又はドップラー信号算出部5が算出した差分ドップラー信号に基づいて、使用者の状況を判定する部分である。行動判定部6は、ドップラー信号又は差分ドップラー信号に基づいて、使用者の存在及び行動態様を判定する部分である。
【0027】
続いて、所定方向に伝播波を送り出すことで使用者の存在を検知するフローについて、図2を参照しながら説明する。図2は、検知領域における使用者の存在有無を判定するためのフローチャートである。
【0028】
ステップS01では、センサー駆動周期を1s(第一周期)と設定する。ステップS02では、センサー駆動時期か否かを判断する。センサー駆動時期であれば、伝播波送信部2と、伝播波受信部3と、ドップラー信号生成部4とを駆動する。センサー駆動時期でなければ、ステップS02の処理を繰り返す。
【0029】
センサー駆動時期において具体的には、図3に示すように、1000msec(1s)間隔で、伝播波送信部2が駆動される。伝播波送信部2は、1000msec(1s)間隔で、15msecの間伝播波を送信する。伝播波受信部3は、伝播波送信部2が送信して反射された伝播波を受信し、ドップラー信号生成部4に出力する。ここで例として時間を示しているのは、マイクロ波センサーとして、周波数10.525GHzを使用したときの数値例である。マイクロ波センサーの周波数が異なれば、それに応じた時間間隔でのセンサーの駆動制御が必要になる。
【0030】
ステップS03では、ドップラー信号算出部5が、12msec(第二周期)間隔でドップラー信号を一対形成して検出値A,Bとし、行動判定部6に出力する。なお、具体的な、検出値A,Bとしては、時系列に沿った一対のドップラー信号の差を取った差分ドップラー信号とすることが好ましい。一例として、図7(A)にその手法を示す。図7(A)に示す例では、電波送信を35msec行っている。その電波送信を行っている間に、20msecの間隔で取得されたA1とA2のドップラー信号に基づいて、A2−A1の差分ドップラー信号を検出値Aとし、同じく20msecの間隔で取得されたB1とB2のドップラー信号に基づいて、B2−B1の差分ドップラー信号を検出値Bとすることで、検出値A,Bを差分ドップラー信号とすることができる。
【0031】
ステップS04では、行動判定部6が、検出値A,Bいずれかが第一閾値以上となっているか否かを判断する。検出値A,Bのいずれかが第一閾値以上となっていればステップS05の処理に進み、検出値A,Bのいずれもが第一閾値以上となっていなければステップS06の処理に進む。
【0032】
ステップS05では、行動判定部6が、検知領域に使用者が存在するものと判断し、行動態様を判定するためのフロー(後述する)に移行する。
【0033】
ステップS06では、行動判定部6が、検出値A,Bいずれかが第二閾値以上となっているか否かを判断する。第二閾値は、第一閾値よりも小さい値となるように設定されている。検出値A,Bのいずれかが第二閾値以上となっていればステップS07の処理に進み、検出値A,Bのいずれもが第二閾値以上となっていなければステップS02の処理に戻る。
【0034】
ステップS07では、センサー駆動周期を100msec(第三周期)と設定し、カウンターNを0に設定する。ステップS08では、センサー駆動時期か否かを判断する。センサー駆動時期であれば、伝播波送信部2と、伝播波受信部3と、ドップラー信号生成部4とを駆動する。センサー駆動時期でなければ、ステップS08の処理を繰り返す。
【0035】
具体的には、図4に示すように、センサー駆動時期によらず連続的に伝播波送信部2が駆動される。伝播波送信部2は、連続して伝播波を送信する。伝播波受信部3は、伝播波送信部2が送信して反射された伝播波を受信し、ドップラー信号生成部4に出力する。ドップラー信号生成部4は、100msec周期且つ12msec(第四周期)間隔でドップラー信号を一対形成する。
【0036】
ステップS09では、ドップラー信号生成部4が、12msec間隔でドップラー信号を一対形成して検出値A,Bとし、行動判定部6に出力する。
【0037】
ステップS10では、行動判定部6が、検出値A,Bいずれかが第一閾値以上となっているか否かを判断する。検出値A,Bのいずれかが第一閾値以上となっていればステップS11の処理に進み、検出値A,Bのいずれもが第一閾値以上となっていなければステップS12の処理に進む。
【0038】
ステップS11では、行動判定部6が、検知領域に使用者が存在するものと判断し、行動態様を判定するためのフロー(後述する)に移行する。
【0039】
ステップS12では、カウンターNをカウントアップする。ステップS13では、カウンターNが3となっているか否かを判断する。カウンターNが3となっていなければステップS08の処理に戻り、カウンターNが3となっていればステップS01の処理に戻る。以上のセンサー駆動方法は、便器や水栓などを利用目的で近づいて来る速度の遅い使用者のドップラー信号の特徴を使った駆動方法である。利用目的で接近してくる使用者(利用者)は利用するために静止する必要があるので、必ず移動速度は遅くなる。このときのドップラー信号を見逃さずに探索する方法が以上説明した方法で、常時ドップラーセンサーを駆動することなく、間引き駆動で済むために省エネ化できるという利点がある。また、単にマイクロ波センサーを駆動するだけなら、図6の方法による常時駆動でもよい。
【0040】
続いて、所定方向に伝播波を送り出すことで使用者の行動態様を検知するフローについて、図5を参照しながら説明する。図5は、検知領域における使用者の行動態様を判定するためのフローチャートであって、使用者が近接静止するまでの判定を行うフローチャートである。図5に示すフローは、図2を参照しながら説明したフローによって、使用者が検知領域内に入ったことを検知した後のフローである(図2のステップS05、ステップS11)。
【0041】
ステップS21では、センサー駆動周期を4msec(第五周期)と設定する。具体的には、図6に示すように、センサー駆動時期によらず連続的に伝播波送信部2が駆動される。伝播波送信部2は、連続して伝播波を送信する。伝播波受信部3は、伝播波送信部2が送信して反射された伝播波を受信し、ドップラー信号生成部4に出力する。ドップラー信号生成部4は、4msec(第五周期)間隔でドップラー信号を生成する。ドップラー信号生成部4は、生成したドップラー信号をドップラー信号算出部5に出力する。
【0042】
ドップラー信号算出部5は、時系列に沿った一対のドップラー信号の差を取った差分ドップラー信号を生成する。一例としては、図7(B)に示すように、A,B,C,Dそれぞれのドップラー信号に基づいて、C−Aの差分ドップラー信号、D−Bの差分ドップラー信号を生成する。このように算出することで、4msec間隔の差分ドップラー信号が生成される。尚、差分ドップラー信号の生成にあたっては、データを間引いて例えば12msec間隔の差分ドップラー信号を生成することも好ましいものである。
【0043】
ステップS22では、生成した差分ドップラー信号が、判断開始閾値を超えたか判断する。差分ドップラー信号が判断開始閾値を超えていればステップS23の処理に進み、差分ドップラー信号が判断開始閾値を超えていなければステップS22の処理を繰り返す。
【0044】
ステップS23では、行動判定部6が差分ドップラー信号の振幅強度を算出する。ステップS24では、行動判定部6が差分ドップラー信号の周波数を算出する。
【0045】
ステップS25では、差分ドップラー信号の振幅強度が第一行動閾値を超え、且つ差分ドップラー信号の周波数が第一周波数閾値より高い期間が第一所定時間を超えたか否かを判断する。差分ドップラー信号の振幅強度が第一行動閾値を超え、且つ差分ドップラー信号の周波数が第一周波数閾値より高い期間が第一所定時間を超えていれば、ステップS26の処理に進む。差分ドップラー信号の振幅強度が第一行動閾値を超え、且つ差分ドップラー信号の周波数が第一周波数閾値より高い期間が第一所定時間を超えていなければ、ステップS23の処理に戻る。
【0046】
ステップS26では、検知領域内の所定位置に対する使用者の移動であると判定し、使用者が接近中であると判定する。
【0047】
ステップS27では、差分ドップラー信号の振幅強度が第一行動閾値よりも大きな第二行動閾値を越えたか否かを判断する。差分ドップラー信号の振幅強度が第一行動閾値よりも大きな第二行動閾値を越えていれば、ステップS28の処理に進む。差分ドップラー信号の振幅強度が第一行動閾値よりも大きな第二行動閾値以下であれば、退去判断に進む(図10のステップS63)。
【0048】
ステップS28では、差分ドップラー信号の振幅強度が第一行動閾値を下回った状態が、所定期間続いたか判断する。差分ドップラー信号の振幅強度が第一行動閾値を下回った状態が、所定期間続いた場合には、ステップS29の処理に進む。差分ドップラー信号の振幅強度が第一行動閾値を下回った状態が、所定期間続いていない場合には、ステップS28の処理を継続する。
【0049】
ステップS29では、検知領域内の所定位置に使用者が静止したと判定する。尚、使用者の静止を判定するにあたっては、使用者の移動距離を累積算出し、この移動距離に基づいて判定することも好ましい。行動判定部6は、差分ドップラー信号の振幅強度が第一行動閾値を超えている期間において、差分ドップラー信号の周波数に基づいて使用者の移動距離を算出し、その算出した移動距離が所定距離を上回った場合に、検知領域内の所定位置に使用者が静止したと判定する。
【0050】
続いて、所定位置に使用者が静止した後の行動態様を検知するフローについて、図8及び図9を参照しながら説明する。図8は、静止した使用者の行動態様を判定するためのフローチャートであって、使用者が手洗器を利用する際の判定を行うフローチャートである。図9は、静止した使用者の行動態様を判定するためのフローチャートであって、使用者が大便器を利用する際の判定を行うフローチャートである。図8及び図9に示すフローは、図5を参照しながら説明したフローによって、使用者が検知領域内で静止したことを検知した後のフローである(図5のステップS29)。
【0051】
まず図8を参照しながら、使用者が手洗器を利用する際の判定について説明する。
【0052】
ステップS41では、差分ドップラー信号の振幅強度が第二行動閾値よりも小さな第三行動閾値を越え、差分ドップラー信号の周波数が第一周波数閾値を超えているか判断する。差分ドップラー信号の振幅強度が第二行動閾値よりも小さな第三行動閾値を越え、差分ドップラー信号の周波数が第一周波数閾値を超えていれば、ステップS42の処理に進む。差分ドップラー信号の振幅強度が第二行動閾値よりも小さな第三行動閾値を越え、差分ドップラー信号の周波数が第一周波数閾値を超えていなければ、退去判断に進む(図10のステップS61)。ステップS42では、使用者が吐水装置に向けて手を差し出したと判定する。
【0053】
ステップS43では、差分ドップラー信号の振幅強度が第三行動閾値を下回った期間が、所定期間連続したか否かを判断する。差分ドップラー信号の振幅強度が第三行動閾値を下回った期間が、所定期間連続していれば、ステップS44の処理に進み、差分ドップラー信号の振幅強度が第三行動閾値を下回った期間が、所定期間連続していなければ、ステップS43の処理を継続する。ステップS44では、使用者が吐水装置から手を引き離したと判定する。
【0054】
続いて図9を参照しながら、使用者が大便器を利用する際の判定について説明する。
【0055】
ステップS51では、ステップS29において使用者が静止したと判断する前に、差分ドップラー信号の振幅強度が第一行動閾値よりも小さな第四行動閾値を下回った後、第一所定時間よりも短い第二所定時間内(換言すれば、ステップS29において使用者が静止したと判断する前)にその振幅強度が第四行動閾値を上回り、更に、差分ドップラー信号の周波数が第一周波数閾値より高い期間が第一所定時間を超え、その後、前記差分ドップラー信号の振幅強度が前記第四行動閾値を所定期間下回ったか否かを判断する。この条件を満たせば、ステップS52の処理に進み、この条件を満たさなければ、ステップS53の処理に進む。
【0056】
ステップS51の処理は、図11に示すように、使用者が大便器に近づくと、差分ドップラー信号の振幅強度が増大し、そこで脱衣行動していると差分ドップラー信号の振幅強度が大きいものの、使用者が大便器に着座する場合には、着座体勢に移行する着座準備のための短い時間において使用者の動きが一時的に止まり、着座するための動きにより差分ドップラー信号の振幅強度が大きくなった後、着座が完了すると再度差分ドップラー信号の振幅強度が小さくなることを利用するものである。
【0057】
ステップS52では、使用者が大便器に着座して排便を行うと判定する。この判定には、図18に示す着座動作に特有のドップラー信号の特徴を利用する。図18の着座動作のドップラー信号を更に詳細に示したのが図11である。すなわち、着座動作の場合、便器前の立位位置から便座である着座位置までの距離はある範囲内に限定されるために、ある一定距離の移動範囲の信号が現れるという特徴がある。また、この判断には本着座部分のドップラー信号の特徴をパターン認識する方法で処理してもよい。尚、行動判定部6は、使用者が大便器に着座して排便を行うと判定した後に、差分ドップラー信号の振幅強度が第四行動閾値を上回った期間が第三所定時間を超えないか、又は差分ドップラー信号の周波数が第一周波数閾値よりも低い場合に、使用者が大便器に着座しながらその一部を動かしたものと判定することも好ましい。
【0058】
ステップS53では、行動判定部6が、検知領域内の所定位置に対する使用者の移動であると判定した後において、使用者が大便器に着座して排便を行うと判定しない場合であるので、使用者が大便器に着座しないで排便を行うと判定する。これは使用者が大便器に着座せずに排便を行う場合、図17に示すようなドップラー信号となり、大便器前での静止状態は着座か立位静止かであり、この両者のどちらかを判断するうえで、着座動作基準であるステップS61を満たしていなければ立位と判断している。
【0059】
ステップS54では、着座中の利用者の離座判断を行う。離座動作時のドップラー信号は図19に示すような信号を示す。離座は着座と逆の行為であり、着座動作信号を時系列に逆転したような信号となる。離座信号は初め振幅が大きく、その後振幅が小さくなる特徴がある。これは離座動作により体の位置がセンサーから離れるためである。この離座信号も、離座移動距離がある移動範囲内に限定される。この判定にもステップS52で説明したと同様に離座動作に特有のドップラー信号の特徴を利用したり、パターン認識を利用しても良い。差分ドップラー信号の振幅強度が第四行動閾値を上回った期間が第三所定時間を超え、差分ドップラー信号の周波数が第一周波数閾値よりも高いか否かを判断する。差分ドップラー信号の振幅強度が第四行動閾値を上回った期間が第三所定時間を超え、差分ドップラー信号の周波数が第一周波数閾値よりも高い場合にはステップS55の処理に進み、そうでない場合はステップS54の処理を継続する。ステップS55では、使用者が大便器から離座したものと判定する。
【0060】
続いて図10を参照しながら、使用者が退去する際の判定について説明する。図10は、使用者が退去する際の判断フローを示したフローチャートである。
【0061】
ステップS61では、差分ドップラー信号の振幅強度が第一行動閾値を上回り、且つ差分ドップラー信号の周波数が第一周波数閾値よりも高い期間が第四所定時間を超えたか否かを判断する。差分ドップラー信号の振幅強度が前記第一行動閾値を上回り、且つ前記差分ドップラー信号の周波数が前記第一周波数閾値よりも高い期間が第四所定時間を超えていれば、ステップS62の処理に進み、その条件を満たさなければ、図8のステップS41又は図9のステップS51の処理に戻る。ステップS62では、検知領域内の所定位置からの使用者の移動であると判定する。
【0062】
ステップS63では、差分ドップラー信号の振幅強度が前記第一行動閾値を下回る期間が所定期間続いたか否かを判断する。差分ドップラー信号の振幅強度が前記第一行動閾値を下回る期間が所定期間続いていなければ、ステップS63の処理に戻る。差分ドップラー信号の振幅強度が前記第一行動閾値を下回る期間が所定期間続けば、ステップS64の処理に進む。ステップS64では、振幅強度が最後に第二行動閾値を越えた時点から使用者が第一距離閾置以上進んでいるかを判定し、その条件を満たしていればステップS65に進み、人がいなくなったと判定する。このS64の処理によって、使用者が接近している状態で移動開始したことを、差分ドップラー信号の振幅強度が第一行動閾値よりも大きな第二行動閾値を越えたことで判断し、その後使用者が少し遠ざかって振幅強度が第二行動閾値を下回ると、その時点からの移動距離によって使用者がどの程遠ざかったのかを正確に算出して、使用者の接近状態から十分に遠ざかった位置に移動したことを正確に判断することができる。なお、移動距離の算出は、差分ドップラー信号の周波数から求められる使用者の移動速度と時間との積を積分することから算出することが可能である。S64の条件を満たしていなければ、図5のステップ29に進む。
【0063】
続いて、図12〜図24を参照しながら、ドア付きの部屋から使用者が退去する際の判定の一例を説明する。図12〜図15は、使用者がドア付きの部屋から退去する際の判断フローを示したフローチャートである。また、図16〜図24は、使用者の移動や姿勢、ドアの動きなどに応じた各信号(差分ドップラー信号)を例示した波形図である。ここでは差分ドップラー信号を示しているが、ドップラー信号も同様の信号パターンとなる。ドア付きの部屋とは、例えば、大便器が設置され、壁とドア(開き戸や引き戸)とで区画されたトイレなどのことである。
【0064】
図12でドアの動きを考慮に含めた退去判定の行動判定フローを開始したら(ステップS501)、差分ドップラー信号における差分値が閾値51以上かどうか判定する(ステップS502)。閾値51は利用者の体全体の動きに伴うドップラー信号の振幅強度の下限値を設定したものである。利用者が便器利用のために静止または着座後離座した状態の場合、体の動きのドップラー信号は比較的大きな値となる。差分ドップラー信号が閾値51以上でなければ当該ステップS502を繰り返す一方、51以上であれば次のステップへ進む。
【0065】
次ステップ以降では、差分ドップラー信号の振幅強度を計算し(ステップS503)、周波数を計算してから(ステップS504)、振幅強度が第一所定値(第一閾値)より大きく、尚かつ周波数が第一周波数より高い期間が所定期間以上継続したかどうか判断する(ステップS505)。所定期間以上であれば、人(例えばトイレの使用者)が移動接近中であると判定し、人体F(人体有無のフラッグ)を「有り」にする(ステップS506)。一方、所定期間以上でなければステップS503に戻り、振幅強度計算から繰り返す。これは、人が移動する場合、比較的大きな信号振幅のドップラー信号が一定距離以上継続することを利用して判断している。例えば、図24に示すように着座中にリモコン操作したり、着座中にトイレットペーパーを取ったり、操作リモコンに手を伸ばしたり、お尻拭き動作をしたりしている場合は、大きなドップラー信号が出なかったり、一定期間以上大きい信号が継続しない。
【0066】
ここで、振幅強度の第一所定値(第一閾値)は、人がいない場合におけるノイズ(暗ノイズ)を基準にした値(例えば、暗ノイズの振幅よりも僅かに大きな振幅値)に設定されている(図22参照)。また、第一周波数は、人の移動速度を基準にして設定されている(図17参照)。
【0067】
次に、差分ドップラー信号の振幅強度が第二所定値(第二閾値)以下であり、尚かつ周波数が第三周波数より高い期間が所定期間以上継続したかどうか判断する(ステップS507)。振幅強度の第二所定値(第二閾値)は、ドア移動の際に生じる振幅を基準にした値(例えば、人体検知装置1からみてドアがトイレの中のもっとも遠方に配置されている場合において、ドア移動の際に生じる振幅よりも僅かに小さい振幅値)に設定されている(図20参照)。この第二所定値は、上述した第一所定値よりも大きな値となる。また、第三周波数は、ドアの移動速度を基準にして設定されているもので、一般には人の移動時の差分ドップラー信号よりも高い周波数となる(図20参照)。なお、人体検知装置1からみてドアがトイレの中の最も遠方でなく、遠方へ到達する途中のトイレ壁面に配置されている場合においても、図20に示すようなドアの動きに伴うドップラー信号が現れる。
【0068】
ステップS507にてYESであれば、当該トイレのドアの動作を検知したこととなる(ステップS508)。ここでは、ドア開閉時の差分ドップラー信号は人体移動に比して振幅強度が小さく周波数が高いという特徴に着目し(図20参照)、これら特徴を組み合わせることで、ドアの開閉態様と使用者の移動態様とを切り分け、ドアの開閉を確実に判定できるようにしている。ドア動作を検知したら、状態判定F(フラッグ)を「退去」にする(ステップS509)。
【0069】
続いて、差分ドップラー信号の振幅強度が、上述の第一所定値(第一閾値)より小さく、尚かつ周波数が第一周波数より高い期間が所定期間以上継続したかどうか判断する(ステップS510)。YESであれば、人体無しであるとして不在であると判断し、判定を「人体無し」へと変更する(ステップSP511)。ここでは、人体が確実に遠ざかったことを検知することで、退去の有無に係わらず、人体無しとなったことを確実に判定する。不在判断を下したら、人体検知フラッグおよび人の行動状態を示すフラッグである状態判定フラッグをそれぞれ初期値にリセットし、人体フラッグを無(ゼロ)とし、状態判定フラッグを非使用状態として(ステップS512)、一連のフローの最初(ステップS501)に戻る。このように、本実施形態では、退去と判定した場合(ステップS509)、人体有りとして行動判定を継続し、人体無しと判定すると(ステップS511、S512)、人体の接近有無の判定から再び実行するようにしているので(ステップS501)、退去動作後に使用者がトイレに戻った場合に、速やかに行動判定を行うことができる。また、ドア動作を検知したときの移動距離と差分ドップラー信号の振幅強度が、上述の第一所定値(第一閾値)より小さく、尚かつ周波数が第一周波数より高い期間が所定期間以上継続したときの移動距離が予め設定した距離以下の短い距離のときだけ不在判断をすることも好ましい。このようにすればトイレ空間内で、ドアの動作以外の何らかの動作でドアの開閉信号に類似したドップラー信号が発生した場合、ドアの動作との判断ができ、正確に不在判断ができる。
【0070】
また、ステップS507にてNOの場合(差分ドップラー信号の振幅強度が第二所定値(第二閾値)以下であり、尚かつ周波数が第三周波数より高い期間が所定期間以上継続していない場合)には、使用者の着座パターンを検知したかどうか、判断する(ステップSP513)。着座パターン検知は、着座動作時における差分ドップラー信号の波形(図18参照)に基づき、上述の実施形態にて説明したごとく行うことができる。
【0071】
ステップS513でYESの場合はステップS523(図14参照)に進む一方で、NOの場合は、差分ドップラー信号の振幅強度が第四所定値より大きいかどうかを判断する(ステップS514)。第四所定値は、便器の近傍から電波の放射方向に対して横へ移動する人体を検知する際の閾値となるもので、ある程度の強い振幅が短時間出た後、人がすぐに居なくなって暗ノイズになるという傾向ないし特徴に基づき設定されている(図21参照)。ステップS514にてYESであれば、人が退去した可能性があるとして、次のステップ(ステップS515)に進む。逆にNOであれば、ステップS507へ戻る。
【0072】
ステップS515では、差分ドップラー信号の振幅強度が第五所定値より小さい期間が所定値以上継続したかどうかを判断する(ステップS515)。第五所定値は、暗ノイズより大きいが、人がセンサー前で動いたときの信号に比べて小さな値であり、静止か退去(離反)のときには差分ドップラー信号の振幅強度が小さくなることに基づき設定されている(図23参照)。ステップS515にてYESであれば、人が退去した可能性があるとして、次のステップ(ステップS516)に進む。逆にNOであれば、ステップS507へ戻る。
【0073】
ステップS516では、差分ドップラー信号が、所定閾値である第四所定値よりも大きな振幅強度になった時点から所定時間内に振幅強度が第一所定値(第一閾値)を下回り、その周波数が第一周波数より高くなったかどうかを判断する(ステップS516)。ステップS516にてYESであれば、人が退去した可能性があるとして、次のステップ(ステップS517)以降に進む。逆にNOであれば、使用者が立位小便姿勢(立位静止状態)にあると判断する(ステップS522)。ステップS516では、立位小便姿勢にある場合、使用者は身体が揺らぎ、この揺らぎに起因して、差分ドップラー信号が、移動接近時等に比べて周波数と振幅強度がきわめて低い揺らぎ状態になることに基づいて判断を行う(図17参照)。立位小便姿勢にあると判断したら、後述するステップS550(図15参照)へ進む。
【0074】
ステップS517では、上述した一連の判断(特に、ステップS513〜S516の判断)の結果に基づき、横入りドア(トイレの側方に配置されており、トイレに対して横から出入りするようになっているドア)の動作を検知したこととする(ステップS517)。一般に、横スライドドアのような横入りドアは、トイレの外側に開閉する開き戸やドアとセンサーの間に人体が入って開閉するドアを開けたまま退去するとき、ドアの開閉が検知し難いが、本実施形態では、人体の動きを検知した後で、突然に暗ノイズ状態となると、横入りドアからの退去と判定することで、トイレの使用終了と判定することができる。ドア動作を検知したら、状態判定フラッグを「退去」としてから(ステップS518)、上記ステップS516における差分ドップラー信号の周波数が第一周波数より高い状態が所定期間以上継続したかどうか判断する(ステップS519)。YESであれば、トイレ内は人体無しであるから不在であると判断する(ステップS520)。一方、NOであればステップS507に戻る。
【0075】
ステップS520で不在判断を下したら、前述のS512と同じように初期値をリセットし、人体フラッグを無(ゼロ)とし、状態判定フラッグを非使用状態として(ステップS521)、一連のフローの最初(ステップS501)に戻る。このように、本実施形態では、退去と判定した場合(ステップS518)、人体有りとして行動判定を継続し、人体無しと判定すると(ステップS520、S521)、人体の接近有無の判定から再び実行するようにしているので(ステップS501)、退去動作後に使用者がトイレに戻った場合に、速やかに行動判定を行うことができる。
【0076】
また、上述のステップS513にてYES(着座パターンを検知した)であれば、差分ドップラー信号の振幅強度が第一所定値より大きく第五所定値より小さい期間が所定時間以上継続したかどうか判断する(ステップS523)。上述したとおり、振幅強度の第一所定値は、人がいない場合におけるノイズ(暗ノイズ)を基準にした値(例えば、暗ノイズの振幅よりも僅かに大きな振幅値)であり、ここで第一所定値より大きいかどうかを判断することは、着座時に暗ノイズが生じやすい場合があることに基づく。また、第五所定値は、上述したステップS515における第五所定値と同じものであり、静止か退去のときには差分ドップラー信号の振幅強度が小さくなることに基づき、暗ノイズより大きく、尚かつ人がセンサー前で動いたときの信号に比べて小さな値に設定されている。ここで、YESであれば、着座動作時の差分ドップラー信号の波形に基づき、使用者が着座したと判断することができる(ステップS524)ステップS524で使用者が着座したと判断したら、状態判定フラッグを「離」にし、ステップS550へ進む(図15参照)。一方、NOであれば、ステップS507へ戻る。
【0077】
ステップS550では、差分ドップラー信号の振幅強度が第六所定値以上かどうかを判断する。第六所定値とは、センサー(人体検知装置1)に対して使用者がより近づいたことを検知するための閾値であり、本実施形態における振幅の閾値としては最大のものである(図16参照)。これは、例えば、便器の水タンク上やトイレ側壁などに配置された手洗いを利用する際、使用者の身体が当該センサー(人体検知装置1)に近づく場合には当該行動に基づいて判断するものである。差分ドップラー信号の振幅強度が第六所定値以上であれば、手洗いをしていると判断し、状態判定フラッグを「手洗い」として(ステップS552)、ステップS507へ戻る。一方、差分ドップラー信号の振幅強度が第六所定値以上でなければ、手洗い判断することなくステップS507へ戻る。
【0078】
ここまで説明したように、ドア付きの部屋から使用者が退去する際、以上の退去判断フローに基づいて判断を実施する本実施形態の人体検知装置1によれば、ドア開閉に伴う差分ドップラー信号を利用し、ドアの開閉を判定すると使用状態から非使用状態へと判定を変更し、ドアの開閉を伴う使用者の行動態様をさらに正確に検知することが可能である。
【0079】
また、従来は、ドップラーセンサーから出力されたセンサー出力原信号を異なる増幅率で増幅した複数の信号を用いる際、使用者のゆっくりとした動き(揺らぎ)を正確に捉えることが難しい場合があったが、本実施形態の人体検知装置1によればこのような際にも使用者の動きを捉え(ステップS515、ステップS523参照)、トイレの使用状態や使用者の有無状態をより正確に判断することが可能となる。
【0080】
また、上述のごとき退去判断を行う人体検知装置1によれば、使用者がドアを開けたままで閉めずにトイレから退去してしまうという態様に対しても、使用者がいなくなったときに生じる暗ノイズの特徴を使って退去行動を正確に判断することが可能である。別言すれば、本実施形態の人体検知装置1によるドア開閉判定は、ドアが開けられたままで閉められない場合にも対応することができる。
【0081】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【0082】
以上について例示すれば、例えば本実施形態では、本発明に係る人体検知装置1を、大便器が設置され、壁とドア(開き戸)とで区画されたトイレに適用した場合について説明したが、これは人が出入りする行動の検知が行われるドア付きスペースの好適例に過ぎず、本発明がこの他のスペースや部屋などにおいても適用可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0083】
1:人体検知装置
2:伝播波送信部
3:伝播波受信部
4:ドップラー信号生成部
5:ドップラー信号算出部
6:行動判定部(判定部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体に向けて伝播波を放射する伝播波発信部と、
人体と人体以外の移動体によって反射された伝播波を受信する伝播波受信部と、
前記伝播波発信部によって放射された伝播波及び前記伝播波受信部によって受信された伝播波に基づいてドップラー信号を生成するドップラー信号生成部と、
前記ドップラー信号生成部が生成したドップラー信号に基づいて、人体の行動を判定する判定部と、
を備えた人体検知装置において、
前記判定部は、前記ドップラー信号が第一閾値を越えると人体有りと判定し、第一閾値を越えたドップラー信号に基づいて人体の行動を判定するものであり、
この行動判定においてドアの開閉を判定すると、人体の退去を判定することを特徴とする人体検知装置。
【請求項2】
前記ドップラー信号が、第一閾値より小さく、周波数が第一周波数よりも高い期間が所定時間継続すると人体無しへと判定を変更することを特徴とする請求項1に記載の人体検知装置。
【請求項3】
前記ドアの開閉は、前記ドップラー信号の振幅が、第一閾値以上であって、第二閾値よりも小さく、その周波数が所定周波数より高い期間が所定時間継続したことによって判定することを特徴とする請求項1に記載の人体検知装置。
【請求項4】
前記行動判定において、前記ドップラー信号の振幅が、センサー近傍での人体の動きによる所定閾値を越えてから、所定時間内に第一閾値を下回り、その周波数が第一周波数よりも高いものであることを検知すると、人体の退去と判定することを特徴とする請求項1に記載の人体検知装置。
【請求項5】
退去と判定しただけでは、人体有りとして行動判定を継続し、人体無しと判定すると、人体の接近有無の判定から再び実行することを特徴とする請求項2に記載の人体検知装置。
【請求項1】
人体に向けて伝播波を放射する伝播波発信部と、
人体と人体以外の移動体によって反射された伝播波を受信する伝播波受信部と、
前記伝播波発信部によって放射された伝播波及び前記伝播波受信部によって受信された伝播波に基づいてドップラー信号を生成するドップラー信号生成部と、
前記ドップラー信号生成部が生成したドップラー信号に基づいて、人体の行動を判定する判定部と、
を備えた人体検知装置において、
前記判定部は、前記ドップラー信号が第一閾値を越えると人体有りと判定し、第一閾値を越えたドップラー信号に基づいて人体の行動を判定するものであり、
この行動判定においてドアの開閉を判定すると、人体の退去を判定することを特徴とする人体検知装置。
【請求項2】
前記ドップラー信号が、第一閾値より小さく、周波数が第一周波数よりも高い期間が所定時間継続すると人体無しへと判定を変更することを特徴とする請求項1に記載の人体検知装置。
【請求項3】
前記ドアの開閉は、前記ドップラー信号の振幅が、第一閾値以上であって、第二閾値よりも小さく、その周波数が所定周波数より高い期間が所定時間継続したことによって判定することを特徴とする請求項1に記載の人体検知装置。
【請求項4】
前記行動判定において、前記ドップラー信号の振幅が、センサー近傍での人体の動きによる所定閾値を越えてから、所定時間内に第一閾値を下回り、その周波数が第一周波数よりも高いものであることを検知すると、人体の退去と判定することを特徴とする請求項1に記載の人体検知装置。
【請求項5】
退去と判定しただけでは、人体有りとして行動判定を継続し、人体無しと判定すると、人体の接近有無の判定から再び実行することを特徴とする請求項2に記載の人体検知装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
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【図7】
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【図10】
【図11】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2013−72714(P2013−72714A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211234(P2011−211234)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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