説明

人体模型の腕部構造

【課題】より実際の人間に近いポーズを再現可能であり、且つ、外形のフォルムもより実際の人間に近づけることができる人体模型を提供する。
【解決手段】人体模型の胴体を、胸が形成されている胸部7と、腰が形成されている腰部11とに分割し、胸部7と腰部11とを連結パイプで連結し、胸部7と連結パイプ、腰部11と連結パイプとは各々回動可能となっている人体模型であり、胸部7と腰部11との間に、複数のシェル部材31〜34が相対移動可能に連結されて形成された腹部8を備え、この腹部8によって連結パイプの前側を覆うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人形やロボットの肢体に人体の動きと同様な自然な姿勢をとらせることができる人体模型及び、人体模型の腕部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
胴体、腕部及び脚部が折り曲げ可能に製作されており、様々な姿勢をとらせることが可能な人体模型に対する需要が増えている。例えば、種々の衣装や装備を着装させて楽しむホビー用の着せ変え人形玩具、展示鑑賞用人形の他、所謂ヒューマノイド型のロボットの分野においても、より人間に近い動きを人体模型に行わせることが求められている。
【0003】
これに対し、例えば胴体については、上胴部と上腹部と下腹部とからなる腹部と下胴部と上腹部を貫通して上胴部と下胴部とを連結する棒状連結部材とを備えてなる人形玩具であって、上胴部の下端部と上腹部の上端部とが摺動状態で回動可能に嵌合され、上腹部の下端部と下腹部の上端部とが摺動状態で回動可能に嵌合され、下腹部の下端部と下胴部の上端部とが摺動状態で回動可能に嵌合され、上胴部と下胴部とが棒状連結部材によって上腹部と下腹部とを挟んで棒状連結部材の中心に向かって付勢させており、上腹部と下腹部とが棒状連結部材を介して上胴部と下胴部との間で上胴部の屈曲・回動動作に追従できるようにする技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
これによれば、上腹部と下腹部とが棒状連結部材を介して上胴部と下胴部との間で上胴部の屈曲・回動動作に摺動状態で追従できるから、各部品間における隙間の発生を防ぐことができ、人体の動きと同様に動かすことができ、胴部を前後方向に90度以上、左右方向に60度以上屈曲させることはもとより、とらせたポーズの戻りがなく姿勢を保持させることができる人形玩具を提供することができる。
【0005】
また、例えば腕については、上腕部と前腕部とを関節部材を介して連結し、上腕部と前腕部とは、それぞれ上記関節部材に対して異なる範囲の角度で回動可能に連結され、関節部材に対する角度は、上腕部の方が前腕部よりも小さく制限されるようにする技術が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。これによれば、簡単な構造によって、曲げたときに人間と同じような肘部形状をリアルに実現することができる。
【0006】
しかしながら、例えば前者の技術においては、人体模型の胴体が上胴部と上腹部と下腹部と下胴部の4つに分割されており、人体模型の外見上、滑らかな体の曲線を表現することが困難であった。この点で、より人間と同じようなリアルな姿勢と、リアルな体の曲線の再現とを両立させることが困難であった。
【0007】
また、人体模型の腕についても、例えば後者の技術においては、前腕部自体のねじりを表現することが困難であり、この点でも、より人間と同じようなリアルな姿勢と、リアルな体の曲線の再現とを両立させることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−119768号公報
【特許文献2】特開2005−34400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の不都合に鑑みて案出されたものであり、その目的は、より実際の人間に近いポーズを再現可能であり、且つ、外形のフォルムもより実際の人間に近づけることができる人体模型を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、人体模型の胴体を、胸が形成されている上胴部と、腰が形成されている下胴部と、に分割し、上胴部と下胴部とを連結部材で連結し、上胴部と連結部材、下胴部と連結部材とは各々回動可能となっている人体模型であり、上胴部と下胴部との間の部分の少なくとも連結部材の前側に、複数のシェルが相対移動可能に連結されて形成された腹部を備え、この腹部によって前記連結部材を覆うようにしたことを最大の特徴とする。
【0011】
より詳しくは、胸が形成されている上胴部と、
腰が形成されている下胴部と、
一端が前記上胴部に回動可能に支持されるとともに他端が前記下胴部に回動可能に支持されることで、前記上胴部と前記下胴部とを連結する連結部材と、
を備える人体模型であって、
前記上胴部と前記下胴部との間における、前記連結部材の前側には、互いに相対移動可能に前記上胴部と前記下胴部との連結方向に連結された複数のシェル状のシェル部材からなるとともに前記連結部材を覆う腹部をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
これによれば、人体模型における上胴部と下胴部との間を相対移動可能に連結された複数のシェル部材で覆うことができる。従って、上胴部と連結部材とを回動させ、連結部材と下胴部とを回動させることで、人体模型の上胴部と下胴部の位置関係を変化させた時に、その変化に合わせて複数のシェル部材を相対移動させることで、上胴部と下胴部を滑らかにつなぐように人体の外形を再現することが可能となる。
【0013】
また、本発明においては、前記複数のシェル部材は、前記上胴部と前記下胴部との連結方向に相対移動可能に連結されているようにしてもよい。そうすれば、上胴部と下胴部との相対位置(姿勢)が変化した場合に、当該変化に合わせて腹部における前記連結方向の長さを変化させることができ、人間の外形(皮膚)の伸縮を再現することが可能である。
【0014】
また、本発明においては、前記複数のシェル部材は、互いの相対的な角度が変化可能に連結されているようにしてもよい。そうすれば、上胴部と下胴部との傾きが変化した場合に、当該変化に合わせて腹部を曲面とすることができ、人体の自然な外形を再現することが可能である
【0015】
また、本発明においては、前記複数のシェル部材は、互いにねじれ可能に連結されているようにしてもよい。そうすれば、上胴部と下胴部とがねじれた位置関係となった場合に、当該変化に合わせて腹部を滑らかなねじれ曲面とすることができ、人体の自然な外形を再現することが可能である
【0016】
また、本発明においては、前記腹部における複数のシェル部材のうちの少なくとも一部は、平板または曲板状の本体部と、本体部から略エックス字状に延出された4本の連結部とを有し、
前記4本の連結部のうち、前記シェル部材が前記腹部を構成した状態で前記下胴部側に位置する2本の下側連結部には、該下側連結部の先端を折り返して形成されるフックが設けられ、
複数の前記シェル部材が連結された際に、前記シェル部材が前記腹部を構成した状態で前記上胴部側に位置するシェル部材の前記下側連結部のフックが、前記下胴部側に位置するシェル部材の前記連結部と当接することで、前記上胴部と前記下胴部との連結方向の前
記シェル部材同士の相対移動が規制され、
前記シェル部材が前記腹部を構成した状態で前記上胴部側に位置するシェル部材の前記下側連結部のフックが、前記下胴部側にくるシェル部材の前記連結部または本体部と当接することで、前記シェル部材同士の曲げ方向またはねじり方向の相対移動が規制されるようにしてもよい。
【0017】
これによれば、複雑な機構などを必要とせず、前記シェル部材同士における、前記上胴部と下胴部の連結方向、曲げ方向、ねじれ方向の相対移動を適切に規制することができ、前記シェル部材同士が過度に相対移動してしまうことによる、前記腹部の外形の乱れを抑制することができる。
【0018】
また、本発明は、上腕部と、
前記上腕部に対して直接にまたは他部材を介して回動可能に連結された前腕部と、
前記前腕部に回動可能に連結された掌部と、
を備える人体模型の腕部構造であって、
前記前腕部は、
前記上腕部に対して連結された主前腕部と、
前記主前腕部に並列して設けられ、該主前腕部に対してねじれ可能に結合されたねじれ前腕部と、
前記主前腕部の前記掌部側に設けられ、前記掌部と直接にまたは他部材を介して回動可能に連結された先端部と、
を有し、
前記主前腕部には、前記上腕部側の端部に位置し前記前腕部の前記上腕部側の端部を単独で形成する根本部と、該根本部から前記掌部側に延設された延設部とが設けられ、
前記主前腕部と前記ねじれ前腕部とは、前記根本部に前記掌部側に開口するように設けられた底面略球形の窪みである凹部に、前記ねじれ前腕部の前記上腕部側の端部に前記上腕部側に突出するように設けられた先端略球形の凸部を挿入し、あるいは、前記根本部に前記掌部側に突出するように設けられた先端略球形の凸部を、前記ねじれ延設部の前記上腕部側の端部に前記上腕部側に開口するように設けられた底面略球形の窪みである凹部に挿入することで、前記凸部の軸回りに回動及び傾き可能に結合され、
前記主前腕部と前記先端部とは、前記先端部に前記上腕部側に突出するように設けられた円柱状の軸部を、前記延設部の前記掌部側の端部に前記掌部側に開口するように設けられた円柱状の窪みである軸受け穴に挿入し、あるいは、前記先端部に前記上腕部側に開口するように設けられた円柱状の窪みである軸受け穴に、前記延設部の前記掌部側の端部に前記掌部側に突出するように設けられた円柱状の軸部を挿入することで、前記軸部の軸回りに回動可能に結合され、
前記先端部と前記ねじれ前腕部とは、前記先端部に前記延設部の延設方向と略垂直方向に突出するように設けられた円柱状の第2軸部を、前記ねじれ前腕部の前記掌部側の端部に前記延設部の延設方向と略垂直方向に開口するように断面円形に開けられた第2軸受け穴に挿入し、あるいは、前記先端部に前記延設部の延設方向と略垂直方向に開口するように断面円形に開けられた第2軸受け穴に、前記ねじれ前腕部の前記掌部側の端部に前記延設部の延設方向と略垂直方向に突出するように設けられた円柱状の第2軸部を挿入することで、前記第2軸部の軸回りに回動可能に結合されたことを特徴とする、人体模型の腕部構造であってもよい。
【0019】
これによれば、掌部が結合された先端部は、ねじれ前腕部の主前腕部に対するねじれ運動を伴いつつ、延設部の延設方向、すなわち前腕部の長手方向の軸回りに回動することが可能となる。これにより、より実際の人体の動きに忠実な手首の回転を可能にし、人体模型の姿勢をよりリアルにすることが可能となる。
【0020】
また、本発明においては、前記第2軸部において、該第2軸部が前記第2軸受け穴に挿入された際に該第2軸受穴の外部に未挿入の状態で露出した部分には、中心を該第2軸部の軸中心上に設けた略球形のボール部が形成され、
前記掌部は、該掌部の前記先端部側に設けられ略円環状の円環部を有し、
前記掌部と前記先端部とは、前記第2軸部に前記円環部を貫通させ、前記ボール部を前記円環部に嵌合することで結合されるようにしてもよい。
【0021】
これによれば、円環部が第2軸部の軸回りに回転する変位と、円環部が、ボール部の回りに傾く変位を組み合わせることで、掌部を前腕部に対して任意の方向に傾けることが可能となる。これにより、人体模型にとらせることができる姿勢の自由度をさらに高めることが可能となる。
【0022】
なお、上記の手段は、可能な限り互いに組み合わせて使用することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る人体模型によれば、より実際の人間に近いポーズを再現可能であり、且つ、外形のフォルムもより実際の人間に近づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例1に係る人体模型の全体図を示す図である。
【図2】本発明の実施例1に係る腕部の概略構成を示す図である。
【図3】本発明の実施例1に係る脚部の概略構成を示す図である。
【図4】本発明の実施例1に係る胸部と腰部の結合状態を説明するための図である。
【図5】本発明の実施例1に係る腹部及び背部の概略構成を示す図である。
【図6】本発明の実施例1に係る第4シェル部材の形状を示す図である。
【図7】本発明の実施例1に係る第3シェル部材と第4シェル部材との結合状態を説明するための図である。
【図8】本発明の実施例2に係る前腕部の概略構成を示す図である。
【図9】本発明の実施例2に係る前腕部と、掌部の構成の詳細について説明するための図である。
【図10】本発明の実施例2に係る前腕部のねじれ動作と、掌部の傾斜動作について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る人体模型の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0026】
図1は本実施例における人体模型1の正面図である。図1において人体模型1は、人体の頭が形成されている頭部2と、人体の首が形成されている首部3と、人体の胴体が形成されている胴部4と、人体の腕が形成されている腕部5と、人体の脚が形成されている脚部6とから構成されている。
【0027】
図1において頭部2は、頭部2の内部に固定された図示しないボールが、首部3の頭部側の端部に設けられた内面球形状の図示しないボール受部に回動可能に支持されることで、首部3に対して任意の方向に傾くことが可能に結合されている。また、首部3は、本実施例における上胴部としての胸部7に固定された図示しないボールが首部3の胸部側の端部に設けられた内面球形状の図示しないボール受部に回動可能に支持されることで、胸部7に対しても任意の方向に傾き可能に結合されている。
【0028】
次に、図2を用いて腕部5について説明する。腕部5は、肩部12、上腕部13、肘部
14、前腕部15、掌部16を有している。肩部12は、胸部7に対して、胸部7の略前後方向に定められた軸回りに回転可能に支持された胸部軸5a、胸部軸5aに一体に設けられ胸部軸5aに垂直な軸5bに回動可能に結合された第2胸部軸5c、第2胸部軸5cの先端に設けられたボール5dを介して結合されている。すなわち、ボール5dは矢印5e、5fの方向に任意に揺動可能であり、肩部12の位置もボール5dと同様な自由度で揺動が可能である。また、肩部12は、ボール5dに対して任意の傾きに調整可能となっている。
【0029】
上腕部13は、肩部12に設けられた肩部軸12aに対して回動可能に結合されている。すなわち、上腕部13は、肩部12に対して矢印12bの方向に回動可能に結合されている。そして、上腕部13と肘部14とは、上腕部の延びる方向に平行な上腕部軸13a及び、上腕部軸13aに垂直方向の第2上腕部軸13bの回りに回動可能に結合されており、さらに、肘部14に対して前腕部15は、第2上腕部軸13bと平行な肘部軸14a及び、肘部軸14aに垂直に固定された第2肘部軸14bの回りに回動可能に結合されている。また、前腕部15と掌部16とは、後述するように、任意の方向に回動可能に結合されている。
【0030】
次に、脚部6について説明する。脚部6は、股部18、上腿部19、膝部20、下腿部21、足部22を有している。股部18は、腰部11の左右方向に設けられた腰部軸11aに回動可能に支持されている。そして、上腿部19は、股部18に対して、腰部11の前後方向に設けられた軸18a回りに回動可能に結合されている。すなわち、上腿部19は、腰部11に対して、図中矢印19a及び19bの方向に回動可能に設けられている。
【0031】
上腿部19に対して膝部20は、上腿部19の延びる方向に設けられた上腿部軸19cの回りに回動可能に、さらに上腿部軸19cに垂直に左右方向に設けられた膝部軸20aの回りに回動可能に結合されている。また、膝部20に対して下腿部21は、同様に第2膝部軸20bと下腿部軸21aとを介して結合されており、下腿部21は膝部20に対して、第2膝部軸20b及び下腿部軸21aの回りに回動可能に結合されている。
【0032】
下腿部21に対して足部22は、下腿部21の延びる方向の第2下腿部軸21b、第2下腿部軸21bに垂直な第3下腿部軸21c、足部22の前後方向に延びる足裏軸22aを介して連結されており、足部22は下腿部21に対して、矢印方向21d、21e、22bに回動可能に結合されている。
【0033】
次に、胸部7と、本実施例における下胴部としての腰部11の結合部分及び、腹部8について説明する。図4には、胸部7と腰部11との連結状態を示す。図4(A)は正面図、図4(B)は側面図を示している。胸部7には、ボール7aが回動可能に備えられており、このボール7aは連結部材としての連結パイプ25と結合されている。これにより、胸部7と連結パイプ25とは任意の角度に傾斜可能となっている。また、腰部11には、腰部ベース部材11aが設けられている。この腰部ベース部材11aは、腰部11に対して、腰部軸11bにより前後方向に回動可能に結合されている。
【0034】
また、腰部ベース部材11aにはさらにボール11cが回動可能に備えられており、このボール11cは連結パイプ25と結合されている。従って、連結パイプ25は、腰部ベース部材11aに対して、任意の方向に傾斜可能となっている。これにより、胸部7と腰部11とは、連結パイプ25を介して任意の角度に相対的な姿勢を変更可能となっている。ここで、腰部ベース部材11aは腰部軸11bによりボール11cと異なる場所で腰部11に回動可能に支持されているため、腰部11に対する連結パイプ25の回動が、単一の回動中心に対する回動運動ではなくなり、動きの自由度を高めることができる。
【0035】
なお、連結パイプ25には押さえ棒25aが設けられており、連結パイプ25が腰部ベース部材11aに対して前側に傾いた場合に腰部ベース部材11aに当接し、それ以上連結パイプ25が腰部ベース部材11aに対して前傾しないように構成されている。すなわち、一定量以上、連結パイプ25が腰部11に対して前傾した場合には、傾きの中心がボール11cの回転中心から、腰部軸11bに移動し、より、実際の人間に近い動きを実現することが可能となっている。
【0036】
次に、胸部7と腰部11とを連結する腹部8について説明する。腹部8は、上述した連結パイプ25の周囲を、胸部7と腰部11とが相対変位した場合に追従が可能なように囲うことで、人体模型1の外観をより実際の人間に近くする部分である。
【0037】
図5には、本実施例における胸部7、腰部11と腹部8について示す。本実施例においては、胸部7には、第1シェル部材30が軸30a回りに回動可能に結合されている。また、第1シェル部材30には、第2シェル部材31が、軸31a回りに回動可能に結合されている。次に、第2シェル部材31には、第3シェル部材32が、第3シェル部材32には第4シェル部材33が、第4シェル部材33には第5シェル部材34が互いに相対移動可能に、且つ離散を禁止するように結合されている。この構成の詳細については後述する。そして、第5シェル部材34は下端にリング34aを有しており、このリング34aにより腰部ベース部材11aに設けられたフック11dに結合されている。
【0038】
次に、第2シェル部材31、第3シェル部材32、第4シェル部材33、第5シェル部材34を結合させている構成について説明する。まず、図6には、第4シェル部材33について示す。
【0039】
図6(A)は第4シェル部材33の平面図、図6(B)は第4シェル部材33の側面図、図6(C)は第4シェル部材33の底面図である。第4シェル部材33は、シェル部33aの上端両側から斜め上方に延設された上延設シェル部33bと、同様に下側両側から斜め下方に延設された下延設シェル部33cとを有しており、概略エックス字状の平面形状を有している。また、図6(C)に示すように、下延設シェル部33cの先端は内側に折り返されており、フック部33dを形成している。ここで上延設シェル部33b及び下延設シェル部33cは、本実施例において連結部を構成する。また、下延設シェル部33bは下側連結部に相当する。またシェル部33aは本体部に相当する。
【0040】
図7には、第3シェル部材32と第4シェル部材33との結合状態を示す。第3シェル部材32と第4シェル部材33とは、上延設シェル部の長さが異なるものの基本的に上述したようなエックス字状の形状を有している。第4シェル部材33は、上延設シェル部33bが、第3シェル部材32の下延設シェル部32cとフック部32cとの間に挟みこまれた状態となっている。従って、第4シェル部材33が第3シェル部材32に対して図中下側に相対移動しようとした場合には、上延設シェル部33b同士の間隔は上側に行くに従って広くなっているので、上延設シェル部33bが第3シェル部材32の下延設シェル部32cとフック部32dの折り返し部分に当接し、それ以上の相対移動を禁止するようになっている。
【0041】
また、第4シェル部材33が第3シェル部材32に対して図中上側に相対移動しようとした場合には、比較的自由に相対移動可能となるが、下延設シェル部33c同士の間隔は下側に行くに従って広くなっているので、第4シェル部材33の下延設シェル部33cが、第3シェル部材32の下延設シェル部32cとフック部32dとの折り返し部分に当接し、それ以上の相対移動を禁止するようになっている。
【0042】
また、フック部32dの先端同士の間隔は、結合する第4シェル部材33のシェル部3
3aにおける最も幅が狭い部分よりも狭く設定されているので、シェル部材同士が離散することもない。また、第3シェル部材32の下延設シェル部32cとフック部32dとの間の間隔は、第4シェル部材33の厚みに対して充分なクリアランスが設けられているため、第3シェル部材32と第4シェル部材33とはクリアランスの範囲内で高い自由度で任意の方向に相対移動可能であり、互いに傾くことも可能である。
【0043】
第3シェル部材32と第2シェル部材31との結合、第4シェル部材33と第5シェル部材34の結合についても、同様のことが言える。但し、第5シェル部材34は下延設シェル部を有する代わりにリング34aによってフック11dに結合されており、図中上下方向への相対移動が制限されている点が異なる。上記のように本実施例においては、胸部7と腰部11との間を複数のシェル部材30〜34によって連結し、連結パイプ25の前側を覆ったため、胸部7と腰部11とがどのような相対変位をしたとしても追従可能で、滑らかな腹部の外観を表現することが可能である。その結果、人体模型の外観をより人間に近づけることができる。
【0044】
次に、図5の説明に戻る。本実施例では上述のような構成によって腹部8を形成しているが、同様に、背部9についても説明する。本実施例においては、胸部7の背中側において、第1背面シェル部材40が、軸40aにおいて胸部7の前後方向に回動可能に支持されている。また、第1シェル部材30には、第2背面シェル部材41が、軸41aに対して回動可能に支持されている。そして、第2背面シェル部材41は、第1背面シェル部材40をさらに外側から覆うように配置されている。この第1背面シェル部材40と第2背面シェル部材41とにより、胸部7と腰部11とが相対変位した場合にも、連結パイプ25の背中側を良好に覆うことが可能となり、腹部8の滑らかさとの相乗効果により、よりリアルに、人体の外観を再現することが可能となる。
【0045】
本実施例においては、胸部7と腰部11との間を複数のシェル部材30〜34によって連結し、連結パイプ25の前側を覆った例について説明したが、同様のシェル部材によって連結パイプ25の側方や後側をさらに覆ってもよいことは当然である。
【実施例2】
【0046】
次に、本発明の実施例2について説明する。本実施例においては、より実際の人体に近いリアルな外観及び動きポーズを可能とする前腕部の構成について説明する。本実施例において、実施例1で説明した部分については共通な構成を採用し、共通の構成には同じ符号を用いて説明は省略する。
【0047】
図8には、本実施例における前腕部15について示す。前腕部15は、他部材としての肘部14に対して、軸14a及び、軸14bの両方に対して回動可能に連結されている。本実施例における前腕部15は、主前腕部としての前腕本体15a、ねじれ前腕部としてのねじれ前腕15b及び、先端部としての手首部15cの3つの部分を有する。図9には、前腕本体15a、ねじれ前腕15b及び、手首部15cの結合関係について示す。図9に示すように、前腕本体15aには、肘部14と直接結合される根本部としての前腕根本150と、前腕根本150から、掌部16側に延設される延設部としての延設前腕151とが設けられている。そして、前腕根本150は、それ自体の太さが前腕部15の根本の太さとなっている。前腕根本150の掌部16側の面には、底部が略球面状の窪みである凹部としての根本凹部152が形成されている。
【0048】
また、延設前腕151の先端には円柱状の窪みである軸受け穴としての先端凹部153が形成されている。この根本凹部152と先端凹部153の軸方向は双方同じであり、その方向は延設前腕151の延設方向と略同一になっている。
【0049】
次に、ねじれ前腕15bの前腕根本150側の端部には、根本凹部152に挿入される先端略球形の凸部としての根本凸部154が形成されている。また、ねじれ前腕15bの掌部16側の端部には、延設前腕151の延設方向に略垂直方向に円柱状に設けられた窪みあるいは、断面円形の貫通孔である第2軸受け穴としての先端ねじれ凹部155が形成されている。
【0050】
また、手首部15cの延設前腕151側には、先端凹部153に挿入される円柱状の軸部としての手首凸部156が形成されている。また、手首部15cのより掌部16側には、延設前腕151の延設方向に略垂直方向に円柱状に設けられた第2軸部としての手首ねじれ凸部157が設けられている。また、この手首ねじれ凸部157の途中には球形のボール部158が設けられている。そして、前腕部15は、前腕本体15aの根本凹部152にねじれ前腕15bの根本凸部154が挿入されるとともに、先端凹部153に手首凸部156が挿入され、さらに、先端ねじれ凹部155に手首ねじれ凸部157が挿入される。また、その際、先端ねじれ凸部157に設けられたボール部158には、掌部16に固定された円環部としてのリング16aが嵌合する。その際、リング16aの内環16bの径は、ボール部158の径より若干小さく設定されている。
【0051】
このような構成によれば、前腕部15が、より実際の人間に近い態様でねじれるようにできる。図10(A)には、図8の状態から前腕部を約90度ねじった場合の図を示す。このことで、人体模型1により実際の人体に近いポーズをとらせることが可能となる。また、本実施例によれば、図10(B)に示すように、より簡単な構成で、掌部16を前腕部15に対して任意の方向に傾けることが可能となる。
【0052】
なお、本実施例において、根本凹部152と根本凸部154、先端凹部153と手首凸部156、先端ねじれ凹部155と手首ねじれ凸部157の関係は逆であってもよい。すなわち、ねじれ前腕15bの前腕根本150側の端部には、底部が略球面状の窪みである凹部としての根本凹部が形成され、前腕根本150の掌部16側の面には根本凹部に挿入される先端略球形の凸部としての根本凸部が形成されるようにしてもよい。また、手首部15cの延設前腕151側には円柱状の窪みである軸受け穴としての先端凹部が形成され、延設前腕151の先端には、先端凹部に挿入される円柱状の軸部としての手首凸部が形成されるようにしてもよい。また、ねじれ前腕15bの掌部16側の端部には、延設前腕151の延設方向に略垂直方向に円柱状に設けられた第2軸部としての手首ねじれ凸部が設けられ、手首部15cの掌部16側には、延設前腕151の延設方向に略垂直方向に円柱状に設けられた窪みあるいは、断面円形の貫通孔である第2軸受け穴としての先端ねじれ凹部が形成されるようにしてもよい。
【0053】
また、本実施例においては、上腕部13と前腕部15とが他部材としての肘部14を介して連結された例について説明したが、本発明は、上腕部13と前腕部15とが他部材を介さずに連結された構成にも適用可能であることは当然である。また、本実施例においては、手首部15cに掌部16に固定されたリング16aが直接結合した例について説明したが、リング16aは掌部16に対して相対移動可能な別部材(他部材)としてもよいことは当然である。
【符号の説明】
【0054】
1・・・人体模型
2・・・頭部
3・・・首部
4・・・胴部
5・・・腕部
6・・・脚部
7・・・胸部
8・・・腹部
11・・・腰部
11a・・・腰部ベース部材
12・・・肩部
13・・・上腕部
14・・・肘部
15・・・前腕部
15a・・・前腕本体
15b・・・ねじれ前腕
15c・・・手首部
16・・・掌部
18・・・股部
19・・・上腿部
20・・・膝部
21・・・下腿部
22・・・足部
25・・・連結パイプ
30−34・・・第1シェル部材−第5シェル部材
40・・・第1背面シェル部材
41・・・第2背面シェル部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上腕部と、
前記上腕部に対して直接にまたは他部材を介して回動可能に連結された前腕部と、
前記前腕部に回動可能に連結された掌部と、
を備える人体模型の腕部構造であって、
前記前腕部は、
前記上腕部に対して連結された主前腕部と、
前記主前腕部に並列して設けられ、該主前腕部に対してねじれ可能に結合されたねじれ前腕部と、
前記主前腕部の前記掌部側に設けられ、前記掌部と直接にまたは他部材を介して回動可能に連結された先端部と、
を有し、
前記主前腕部には、前記上腕部側の端部に位置し前記前腕部の前記上腕部側の端部を単独で形成する根本部と、該根本部から前記掌部側に延設された延設部とが設けられ、
前記主前腕部と前記ねじれ前腕部とは、前記根本部に前記掌部側に開口するように設けられた底面略球形の窪みである凹部に、前記ねじれ前腕部の前記上腕部側の端部に前記上腕部側に突出するように設けられた先端略球形の凸部を挿入し、あるいは、前記根本部に前記掌部側に突出するように設けられた先端略球形の凸部を、前記ねじれ延設部の前記上腕部側の端部に前記上腕部側に開口するように設けられた底面略球形の窪みである凹部に挿入することで、前記凸部の軸回りに回動及び傾き可能に結合され、
前記主前腕部と前記先端部とは、前記先端部に前記上腕部側に突出するように設けられた円柱状の軸部を、前記延設部の前記掌部側の端部に前記掌部側に開口するように設けられた円柱状の窪みである軸受け穴に挿入し、あるいは、前記先端部に前記上腕部側に開口するように設けられた円柱状の窪みである軸受け穴に、前記延設部の前記掌部側の端部に前記掌部側に突出するように設けられた円柱状の軸部を挿入することで、前記軸部の軸回りに回動可能に結合され、
前記先端部と前記ねじれ前腕部とは、前記先端部に前記延設部の延設方向と略垂直方向に突出するように設けられた円柱状の第2軸部を、前記ねじれ前腕部の前記掌部側の端部に前記延設部の延設方向と略垂直方向に開口するように断面円形に開けられた第2軸受け穴に挿入し、あるいは、前記先端部に前記延設部の延設方向と略垂直方向に開口するように断面円形に開けられた第2軸受け穴に、前記ねじれ前腕部の前記掌部側の端部に前記延設部の延設方向と略垂直方向に突出するように設けられた円柱状の第2軸部を挿入することで、前記第2軸部の軸回りに回動可能に結合されたことを特徴とする、人体模型の腕部構造。
【請求項2】
前記第2軸部において、該第2軸部が前記第2軸受け穴に挿入された際に該第2軸受穴の外部に未挿入の状態で露出した部分には、中心を該第2軸部の軸中心上に設けた略球形のボール部が形成され、
前記掌部は、該掌部の前記先端部側に設けられ略円環状の円環部を有し、
前記掌部と前記先端部とは、前記第2軸部に前記円環部を貫通させ、前記ボール部を前記円環部に嵌合することで結合されることを特徴とする請求項1に記載の人体模型の腕部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−157783(P2012−157783A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−125599(P2012−125599)
【出願日】平成24年6月1日(2012.6.1)
【分割の表示】特願2009−171126(P2009−171126)の分割
【原出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(509207379)
【Fターム(参考)】