説明

人体温度測定装置およびその測定方法

【課題】人の位置が定まらない環境下において、比較的安価に人の温度を非接触で測定することができる。
【解決手段】人体温度測定装置1は、撮影部11、画像解析部21、赤外線量測定部31、可動部41、方向制御手段51、距離測定部61、および、温度補正手段71を有する。画像解析部21は、撮影部11により撮影された画像を解析し、その画像に写った人の顔を認識する。赤外線量測定部31は、所定の測定範囲からの赤外線量を測定する。可動部41および方向制御手段51は、赤外線量測定部31および距離測定部61が人の顔を向くように、その方向を変化させる。距離測定部61は、赤外線量測定部31と人の顔との距離を測定する。温度補正手段71は、赤外線量測定部31が人の顔に向かって測定した赤外線量を距離測定部61が測定した距離に基づいて補正して、人の顔の温度を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の少なくとも一部の温度を非接触で測定する装置、および、その測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象物の表面温度を測定する計器として、放射温度計が知られている(例えば、特許文献1)。放射温度計は、測定対象物の表面から放出される赤外線を受光して、その赤外線量からその測定対象物の表面温度を測定する計器である。放射温度計は、所定の測定視野を有していて、その測定視野からの赤外線を受光する。
【0003】
また、特許文献2,3には、車両用空調制御装置が開示されている。例えば、特許文献2に記載の車両用空調制御装置は、赤外線センサ、乗員温度検出部、および、制御部を備えている。
【0004】
赤外線センサは、車室内の温度分布を検出する。乗員温度検出部は、車室内の温度分布から乗員の体表面温度を検出する。また、制御部は、車室内の温度分布から得られた車室内の温度と乗員の体表面温度とに基づいて、車室内に空調風を供給して空調を行う空調装置を制御する。
【0005】
さらに、特許文献4には、非接触温度計測装置が開示されている。特許文献4に記載の非接触温度計測装置は、各種センサ(CCDカメラ、サーモビュア、距離センサ等)、画像処理手段、熱画像処理手段、および、解析制御手段を備えている。
【0006】
画像処理手段および熱画像処理手段は、各種センサで検出した人体のイメージを算出する。また、解析制御手段は、画像処理手段および熱画像処理手段の算出結果を合成して、人体の向きや温度分布を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−2739号公報
【特許文献2】特開2008−30690号公報
【特許文献3】特開平2−158412号公報
【特許文献4】特開平4−283634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
放射温度計を使用した、人の顔の表面温度の測定について、図7を用いて説明する。図7は、赤外線量測定部の測定視野および測定範囲について説明するための模式図である。放射温度計200は、所定の測定視野201からの赤外線を受光する赤外線量測定部を有し、受光した赤外線量から測定対象物の表面温度を出力する。一般的な放射温度計200では、その測定視野201は、測定方向に向かって放射状に広がる。よって、放射温度計200と測定対象物との距離が遠くなる程、放射温度計200の測定範囲は大きくなる。
【0009】
人204が(a)の位置にいる場合(放射温度計200と人204との距離が近い場合)には、放射温度計200の測定範囲202がその顔の範囲内に収まっている。そのため、放射温度計200は、人204の顔からの赤外線を受光する。よって、人204の顔の表面温度を的確に測定できる。
【0010】
一方、人205が(b)の位置にいる場合(放射温度計200と人205との距離が遠い場合)には、放射温度計200の測定範囲203がその顔の領域を超えている。そのため、放射温度計200は、人205の顔からの赤外線だけでなく、人205の髪、人205が着用している服、および、人205の周囲などからの赤外線をも受光する。よって、人205の顔の表面温度を的確に測定できない。
【0011】
ここで、特許文献1,2に記載の車両用空調制御装置では、乗員の位置は所定の座席の位置と仮定できるため、赤外線センサに対する乗員の方向および赤外線センサと乗員との距離は、一定である。よって、赤外線センサの測定範囲がその顔の領域内に収まるように赤外線センサを設置すれば、人の顔の表面温度を的確に測定できる。
【0012】
しかしながら、例えば、部屋内にいる人の温度を測定する場合には、人が部屋内のどの位置にいるかが定まらないため、放射温度計に対する人の方向および放射温度計と人との距離は一定とならない。よって、放射温度計の測定範囲がその顔の領域を超えてしまい、人の顔の表面温度を的確に測定できない場合もある。
【0013】
ここで、特許文献3に記載の非接触温度計測装置では、人の顔の温度を測定するためにサーモビュアを用いているため、サーモビュアと人との距離を必ずしも把握する必要はない。また、サーモビュアは、一般的に放射温度計に比べて高価であるため、この測定装置は、比較的高価なものとなってしまう。
【0014】
そこで、本発明に係る人体温度測定装置およびその測定方法は、上記課題を解決するためになされたものであり、人の位置が定まらない環境下において、比較的安価に人の温度を非接触で測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明に係る人体温度測定装置は、所定の測定視野からの赤外線量を測定する赤外線量測定部と、前記赤外線量測定部が取り付けられ前記赤外線量測定部の測定方向を変化させる可動部と、前記赤外線量測定部が人体の少なくとも一部に向くように前記可動部を制御する方向制御手段と、前記赤外線量測定部と前記人体の少なくとも一部との距離を取得する距離取得手段と、前記赤外線量測定部が前記人体の少なくとも一部に向かって測定した赤外線量を前記距離取得手段が取得した距離に基づいて補正して前記人体の少なくとも一部の温度を取得する温度補正手段とを具備することを特徴とする。
【0016】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る人体温度測定方法は、撮影工程と、前記撮影工程で撮影された画像を解析し前記画像に写った人体の少なくとも一部を認識する画像解析工程と、前記画像解析工程で認識された前記画像中の前記人体の少なくとも一部の位置に基づいて赤外線量測定部が前記人体の少なくとも一部に向くように前記赤外線量測定部が取り付けられた可動部を駆動させる駆動工程と、前記赤外線量測定部が前記人体の少なくとも一部に向かって赤外線量を測定する赤外線量測定工程と、前記赤外線量測定部と前記人体の少なくとも一部との距離を取得する距離取得工程と、前記赤外線量測定工程で前記人体の少なくとも一部に向かって測定した赤外線量を前記距離取得工程で取得した距離に基づいて補正して前記人体の少なくとも一部の温度を取得する温度補正工程とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、人の位置が定まらない環境下において、比較的安価に人の温度を非接触で測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る人体温度測定装置の主要な構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る人体温度測定方法を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る人体温度測定装置を適用したロボットの斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る人体温度測定装置の主要な構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る人体温度測定方法を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る人体温度測定装置の主要な構成を示すブロック図である。
【図7】赤外線量測定部の測定視野および測定範囲について説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る人体温度測定装置および人体温度測定方法について、図1ないし図3を用いて説明する。
【0020】
まず、第1の実施形態に係る人体温度測定装置の構成について図1を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る人体温度測定装置の主要な構成を示すブロック図である。
【0021】
人体温度測定装置1は、撮影部11、画像解析部21、赤外線量測定部31、可動部41、方向制御手段51、距離測定部61(距離取得手段)、および、温度補正手段71を有する。
【0022】
撮影部11は、例えば広角のカメラである。撮影した画像は画像データとして出力される。なお、撮影部11は、ビデオでも良い。
【0023】
赤外線量測定部31は、測定方向に向かって放射状に広がった所定の測定視野を有し、その測定視野からの赤外線を受光して、その赤外線量を測定する。受光した赤外線量は、例えば電圧値で出力される。
【0024】
距離測定部61は、距離取得手段の一例であって、例えばPSD(光位置センサ:Position Sensitive Detector)である。これは、いわゆる赤外反射型センサであり、測定方向に向かって赤外光を発光してから、その赤外光が測定対象物に反射しその反射光を受光するまでの時間に基づいて、距離測定部61とその測定対象物との距離を測定するセンサである。なお、距離測定部61は、超音波を用いたセンサでも良い。
【0025】
撮影部11、赤外線量測定部31および距離測定部61は、撮影部11の撮影方向、赤外線量測定部31の測定方向および距離測定部61の測定方向が同一の方向を向くように、可動部41のほぼ同位置に取り付けられている。そのため、距離測定部61と測定対象物との距離と赤外線量測定部31と測定対象物との距離とは、ほぼ同一である。
【0026】
可動部41は、例えばパン・チルト方向に動くアクチュエータである。可動部41が動くと、撮影部11の撮影方向、赤外線量測定部31の測定方向および距離測定部61の測定方向が、同時に同一の方向に変化する。
【0027】
画像解析部21は、撮影部11に接続され、撮影部11により撮影された画像中における人の顔の有無を検出し、画像中における人の顔の位置を認識する。なお、必ずしも人の顔でなくても良く、例えば人の手などでも良い。
【0028】
方向制御手段51は、画像解析部21に接続され、画像解析部21が認識した人の顔の位置に基づいて、可動部41を制御する。
【0029】
温度補正手段71は、温度照合部72および温度データベース73を有する。温度データベース73は、赤外線量(電圧値)、赤外線量測定部31と測定対象物との距離(距離測定部61と測定対象物との距離)、および、補正後の温度(測定対象物の表面温度)の関係を複数収納している。
【0030】
温度照合部72は、赤外線量測定部31、距離測定部61および温度データベース73に接続されている。温度照合部72は、赤外線量測定部31から出力された赤外線量(電圧値)および距離測定部61から出力された距離を、温度データベース73に収納されたデータに照合して、補正後の温度を出力する。
【0031】
次に、第1の実施形態に係る人体温度測定方法について図2を用いて説明する。以下、人体温度測定方法1の測定対象が部屋内にいる人の顔であるとして説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係る人体温度測定方法を示すフローチャートである。
【0032】
人体温度測定装置1が初期化(S1)された後、撮影部11は、部屋内の任意の空間を撮影し(S2)、その撮影した画像データを出力する。
【0033】
画像解析部21は、撮影部11が出力した画像データを入力して、画像中に人の顔が含まれているか否かを検出する(S3,S4)。この検出方法は、例えば、肌色領域の検出によるものでも良いし、顔画像のパターンマッチングによるものでも良い。
【0034】
画像解析部21が画像中に人の顔を検出できなかった場合には、方向制御手段51の制御により可動部41がパン・チルト動作を行う(S5)。これにより、可動部41に取り付けられた撮影部11の撮影方向が変化し(S6)、撮影される空間が変化する。可動部41が動作した後、再度、撮影部11は撮影し(S2)、画像解析部21はその画像を解析する(S3,S4)。画像中に人の顔が検出されるまで、これらの処理を繰り返す(S2〜S6)。
【0035】
一方、画像解析部21が画像中に人の顔を検出した場合には、画像解析部21は、人の顔が画像中のどの位置にあるかを解析し(S7)、その位置に関するデータを方向制御手段51に出力する。
【0036】
方向制御手段51は、人の顔の位置に関するデータに基づいて、赤外線量測定部31および距離測定部61の測定範囲の中心が人の顔の中心と一致するように可動部41を制御する(S8)。これにより、可動部41がパン・チルト動作を行い、赤外線量測定部31および距離測定部61の測定方向が人の顔の中心を向く(S9)。
【0037】
赤外線量測定部31は、その測定方向が人の顔を向いて停止した後、その測定視野からの赤外線を受光して、その赤外線量を測定する(S10)。また、距離測定部61は、その測定方向が人の顔を向いて停止した後、距離測定部61と人の顔との距離を測定する(S11)。
【0038】
赤外線量の測定(S10)と距離の測定(S11)とは、同時に行っても良い。なお、距離測定部61が赤外光を用いたセンサの場合には、距離の測定は、赤外線量の測定の前後に行うのが好ましい。両測定を同時に行うと、赤外線量測定部31が、距離測定部61が発光した赤外線を受光してしまい、所望の赤外線量を測定することができないからである。
【0039】
温度補正手段71の処理について説明する。赤外線量測定部31の測定範囲がその顔の領域内に収まっている場合(図7の(a)の場合)には、赤外線量測定部31が受光する赤外線は、ほぼ人の顔からの赤外線である。よって、補正は必要なく、測定された赤外線量を温度に変換すれば、人の顔の表面温度を得ることができる。
【0040】
一方、赤外線量測定部31の測定範囲が人の顔の領域超えている場合(図7の(b)の場合)には、赤外線量測定部31が受光する赤外線は、人の顔からの赤外線だけでなく、人の顔以外のもの(その人の髪や服、その人の背後の壁など)からの赤外線も含む。よって、測定された赤外線量は、これらの総量となる。したがって、この総量をそのまま温度に変換したのでは、その温度は人の顔の表面温度と一致しない。
【0041】
さらに、赤外線量測定部31の測定範囲が人の顔の領域を超えている場合では、赤外線量測定部31と人の顔とが離れるほど、赤外線量測定部31の測定範囲に対する人の顔の範囲の割合が小さくなる。
【0042】
そのため、温度補正手段71は、赤外線量測定部31が測定した赤外線量を必要に応じて補正して、人の顔の表面温度を得る(S12)。具体的には、温度照合部72は、赤外線量測定部31が測定した赤外線量(例えば、電圧値)および距離測定部61が測定した赤外線量測定部31と測定対象物との距離(距離測定部61と測定対象物との距離)を入力する。その後、温度照合部72は、入力した赤外線量および距離を、温度データベース73に予め収納されたデータに照合して、補正後の温度を出力する。
【0043】
以下、第1の実施形態に係る人体温度測定装置を適用したロボットについて図3を用いて説明する。図3は、本発明の第1の実施形態に係る人体温度測定装置を適用したロボットの斜視図である。
【0044】
ロボット100は、頭部101および胴部102を有する。頭部101は、首部103を介して胴部102に取り付けられている。ロボット100は、その内部に人体温度測定装置1を内蔵している。
【0045】
首部103は、可動部41の働きを有し、頭部101がパン・チルト方向に動く。頭部101の内部には、撮影部11、赤外線量測定部31および距離測定部61を有し、これらは、目104から撮影および測定を行う。
【0046】
ロボット100は、人体温度測定装置1により人の顔の表面温度を得て、その温度に応じて、その部屋に設置されているエアコンの温度調節を行うことができる。また、その温度が所定の温度より高い場合には、その人に対して「熱があるのではないですか」や「風邪を引いていますか」などの音声を出力できる。
【0047】
以下、第1の実施形態に係る人体温度測定装置および人体温度測定方法の効果について説明する。
【0048】
本実施形態によれば、部屋のように人の位置が定まらない環境下において、人体の少なくとも一部の表面温度を測定できる。しかも、比較的安価な赤外線量測定計を用いて、これを実現できる。
【0049】
また、本実施形態に係る人体温度測定装置1は、赤外線量測定部31の測定範囲が人の顔の領域を超えている場合であっても、赤外線量測定部31により測定された赤外線量を温度に変換する際に補正を行うため、出力結果が実際の人の顔の表面温度に近い値となる。
【0050】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る人体温度測定装置および人体温度測定方法について、図4および図5を用いて説明する。なお、本実施形態は、第1の実施形態の変形例であるため、第1の実施形態と同一部分または類似部分には、同一符号を付して、重複説明を省略する。
【0051】
まず、第2の実施形態に係る人体温度測定装置の構成について図4を用いて説明する。図4は、本発明の第2の実施形態に係る人体温度測定装置の主要な構成を示すブロック図である。
【0052】
人体温度測定装置1は、撮影部11、画像解析部21、赤外線量測定部31、可動部41、方向制御手段51、距離測定部61(距離取得手段)、温度補正手段71、ガイド光照射部81、および、駆動部91を有する。
【0053】
ガイド光照射部81は、その照射方向に向かってガイド光を発する。ガイド光の発光には、例えば赤外発光LEDが用いられる。
【0054】
ガイド光照射部81、赤外線量測定部31および距離測定部61は、ガイド光照射部81の照射方向、赤外線量測定部31の測定方向および距離測定部61の測定方向が同一の方向を向くように、可動部41のほぼ同位置に取り付けられている。
【0055】
一方、撮影部11は、可動部41には取り付けられず、駆動部91に取り付けられる。撮影部11は、ガイド光照射部81、赤外線量測定部31および距離測定部61とは異なる位置に配置され、撮影部11の撮影方向は、ガイド光照射部81の照射方向、赤外線量測定部31の測定方向および距離測定部61の測定方向とは異なる。
【0056】
駆動部91は、画像解析部21と接続されていて、画像解析部21が解析した画像中の人の顔の有無に基づいて、パン・チルト動作または停止する。
【0057】
次に、第2の実施形態に係る人体温度測定方法について図5を用いて説明する。図5は、本発明の第2の実施形態に係る人体温度測定方法を示すフローチャートである。
【0058】
人体温度測定装置1が初期化(S21)された後、ガイド光照射部81は、ガイド光を連続的に照射する(S22)。ガイド光の照射開始後、撮影部11は、部屋内の任意の空間を撮影し(S23)、その撮影した画像データを出力する。
【0059】
画像解析部21は、撮影部11が出力した画像データを入力して、画像中に人の顔が含まれているか否かを解析する(S24,S25)。
【0060】
画像解析部21が画像中に人の顔を検出できなかった場合には、駆動部91がパン・チルト動作を行う(S26)。これにより、駆動部91に取り付けられた撮影部11の撮影方向が変化し、撮影される空間が変化する。駆動部91の動作が停止した後、再度、撮影部11は撮影し(S23)、画像解析部21はその画像を解析する(S24,S25)。画像中に人の顔が検出されるまで、これらの処理を繰り返す(S23〜S26)。
【0061】
一方、画像解析部21が画像中に人の顔を検出した場合には、画像解析部21は、その画像中の人の顔上の略中心にガイド光が照射されているか否かを解析する(S26,S27)。
【0062】
画像解析部21が人の顔上の略中心にガイド光を検出できなかった場合には、方向制御手段51の制御により可動部41がパン・チルト動作を行う(S28)。これにより、可動部41に取り付けられたガイド光照射部81の照射方向が変化する(S29)。可動部41の動作が停止した後、再度、撮影部11は撮影し(S30)、画像解析部21はその画像を解析する(S26)。人の顔上の略中心にガイド光が検出されるまで、これらの処理を繰り返す(S26〜S30)。
【0063】
なお、画像解析部21は、人の顔上の略中心ではないが、画像中にガイド光を検出した場合には、その位置に関するデータを方向制御手段51に出力し、方向制御手段51は、その情報に基づいて、可動部41を制御するようにしても良い(図示しない)。
【0064】
一方、画像解析部21が人の顔上の略中心にガイド光を検出できた場合には、ガイド光を停止する(S31)。その後、赤外線量測定部31は、赤外線量を測定し(S32)、距離測定部61は、距離測定部61と人の顔との距離を測定する(S33)。ガイド光の停止後に赤外線量を測定するのは、ガイド光の発光に赤外発光LEDを用いた場合には、赤外線量測定部31が受光する赤外線にガイド光の反射光が加わるのを防ぐためである。
【0065】
その後、温度照合部72は、入力した赤外線量および距離を、温度データベース73に予め収納されたデータに照合して、補正後の温度を出力する(S34)。
【0066】
以下、第2の実施形態に係る人体温度測定装置を適用したロボットについて説明する。
【0067】
ロボット100は、撮影部11および駆動部91を除いた各部21,31,41,51,61,71,81を内蔵している。撮影部11および駆動部91は、部屋内の壁などに設置される。撮影部11は、撮影した画像をデータとしてロボット100の内部の画像解析部21にワイヤレス送信する。頭部101の内部には、赤外線量測定部31、距離測定部61およびガイド光照射部81を有し、これらは、目104から測定および照射を行う。
【0068】
本実施形態に係る人体温度測定装置および人体温度測定方法によっても、第1の実施形態に係る人体温度測定装置および人体温度測定方法と同様の効果を得ることができる。
【0069】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係る人体温度測定装置および人体温度測定方法について、図6を用いて説明する。図6は、本発明の第3の実施形態に係る人体温度測定装置の主要な構成を示すブロック図である。なお、本実施形態は、第1の実施形態の変形例であるため、第1の実施形態と同一部分または類似部分には、同一符号を付して、重複説明を省略する。
【0070】
距離算出部62は、距離取得手段の一例であって、画像解析部21と接続されていて、画像解析部21から人の顔が検出された画像を入力する。距離算出部62は、入力した画像全体に対する人の顔の占める割合を算出し、撮影部11と赤外線量測定部31との位置関係に基づいて、赤外線量測定部31と人の顔との距離を算出する。
【0071】
撮影部11および赤外線量測定部31は、撮影部11の撮影方向、赤外線量測定部31の測定方向および距離測定部61の測定方向が同一の方向を向くように、可動部41のほぼ同位置に取り付けられている。
【0072】
温度算出部74は、温度補正手段71の一例であって、赤外線量測定部31および距離算出部62に接続されていて、人の顔の表面温度を算出する。具体的には、温度算出部74は、距離算出部62が算出した赤外線量測定部31と人の顔との距離から赤外線量測定部31の測定範囲に対する人の顔の領域の占める割合を算出し、この割合に基づいて、赤外線量測定部31が測定した赤外線量から人の顔の表面温度を算出する。
【0073】
本実施形態に係る人体温度測定装置および人体温度測定方法によっても、第1の実施形態に係る人体温度測定装置および人体温度測定方法と同様の効果を得ることができる。
【0074】
[他の実施形態]
上記各実施形態は単なる例示であって、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0075】
例えば、第1の実施形態または第2の実施形態に係る人体温度測定装置1の画像解析部21、方向制御手段51および温度照合部72は、1つのコンピュータにより実行されても良いし、ネットワーク等を介して複数のコンピュータにより実行されても良い。また、第3の実施形態に係る人体温度測定装置1の画像解析部21、方向制御手段51、距離算出部62、および、温度算出部74は、1つのコンピュータにより実行されても良いし、ネットワーク等を介して複数のコンピュータにより実行されても良い。
【0076】
また、各実施形態の特徴を組み合わせても良い。例えば、第1の実施形態に係る人体温度測定装置1において、距離照合部72および温度データベース73に換えて、第3の実施形態に係る温度算出部74を適用しても良い。
【符号の説明】
【0077】
1…人体温度測定装置、11…撮影部、21…画像解析部、31…赤外線量測定部、41…可動部、51…方向制御手段、61…距離測定部、62…距離算出部、71…温度補正手段、72…温度照合部、73…温度データベース、74…温度算出部、81…ガイド光照射部、91…駆動部、100…ロボット、101…頭部、102…胴部、103…首部、104…目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の測定視野からの赤外線量を測定する赤外線量測定部と、
前記赤外線量測定部が取り付けられ前記赤外線量測定部の測定方向を変化させる可動部と、
前記赤外線量測定部が人体の少なくとも一部に向くように前記可動部を制御する方向制御手段と、
前記赤外線量測定部と前記人体の少なくとも一部との距離を取得する距離取得手段と、
前記赤外線量測定部が前記人体の少なくとも一部に向かって測定した赤外線量を前記距離取得手段が取得した距離に基づいて補正して前記人体の少なくとも一部の温度を取得する温度補正手段と
を具備することを特徴とする人体温度測定装置。
【請求項2】
撮影部と、
前記撮影部により撮影された画像を解析し前記画像に写った前記人体の少なくとも一部を認識する画像解析部と、をさらに有し、
前記撮影部は、その撮影方向と前記赤外線量測定部の測定方向とが同一になるように前記可動部に取り付けられ、
前記方向制御手段は、前記撮影部と前記赤外線量測定部との位置関係、前記撮影部の撮影方向および前記画像解析部が認識した前記画像中の前記人体の少なくとも一部の位置に基づいて前記可動部を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の人体温度測定装置。
【請求項3】
撮影部と、
前記撮影部により撮影された画像を解析し前記画像に写った前記人体の少なくとも一部を認識する画像解析部と、
ガイド光を照射しその照射方向と前記赤外線量測定部の測定方向とが同一になるように前記可動部に取り付けられたガイド光照射部とを、さらに有し、
前記方向制御手段は、前記画像解析部が前記画像に写った前記人体の少なくとも一部の上に前記ガイド光照射部が照射した前記ガイド光を認識するように前記可動部を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の人体温度測定装置。
【請求項4】
前記距離取得手段は、電磁波または音波を発振しその発振方向と前記赤外線量測定部の測定方向とが同一になるように前記可動部に取り付けられ前記人体の少なくとも一部に向かって発振してからその反射波を受信するまでの時間に基づいて前記人体の少なくとも一部との距離を測定する距離測定部を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の人体温度測定装置。
【請求項5】
前記距離取得手段は、前記画像解析部が認識した前記画像に占める前記人体の少なくとも一部の割合および前記撮影部と前記赤外線量測定部との位置関係に基づいて前記赤外線量測定部と前記人体の少なくとも一部との距離を算出する距離算出部を有することを特徴とする請求項2または3に記載の人体温度測定装置。
【請求項6】
前記温度補正手段は、
前記赤外線量、前記赤外線量測定部と前記人体の少なくとも一部との距離および前記人体の少なくとも一部の温度の関係を収納する温度データベースと、
前記赤外線量測定部が測定した赤外線量および前記距離取得手段が取得した距離を前記温度データベースに照合して前記人体の少なくとも一部の温度を取得する温度照合部と
を有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の人体温度測定装置。
【請求項7】
前記温度補正手段は、前記距離取得手段が取得した前記撮影部と前記赤外線量測定部との位置関係に基づいて前記赤外線量測定部の測定範囲に占める前記人体の少なくとも一部の割合を算出し前記人体の少なくとも一部の温度を取得する温度算出部を有することを特徴とする請求項2ないし5のいずれか一項に記載の人体温度測定装置。
【請求項8】
撮影工程と、
前記撮影工程で撮影された画像を解析し前記画像に写った人体の少なくとも一部を認識する画像解析工程と、
前記画像解析工程で認識された前記画像中の前記人体の少なくとも一部の位置に基づいて赤外線量測定部が前記人体の少なくとも一部に向くように前記赤外線量測定部が取り付けられた可動部を駆動させる駆動工程と、
前記赤外線量測定部が前記人体の少なくとも一部に向かって赤外線量を測定する赤外線量測定工程と、
前記赤外線量測定部と前記人体の少なくとも一部との距離を取得する距離取得工程と、
前記赤外線量測定工程で前記人体の少なくとも一部に向かって測定した赤外線量を前記距離取得工程で取得した距離に基づいて補正して前記人体の少なくとも一部の温度を取得する温度補正工程と
を具備することを特徴とする人体温度測定方法。
【請求項9】
照射方向と前記赤外線量測定部の測定方向とが同一になるように前記可動部に取り付けられたガイド光照射部によりガイド光を照射するガイド光照射工程を有し、
前記駆動工程は、前記画像解析部が前記画像に写った前記人体の少なくとも一部の上に前記ガイド光照射部が照射したガイド光を認識するように前記可動部を制御し、
前記赤外線量測定工程は、前記ガイド光照射工程の終了後に実施される
ことを特徴とする請求項8に記載の人体温度測定方法。
【請求項10】
前記距離取得工程は、電磁波または音波を発振しその発振方向と前記赤外線量測定部の測定方向とが同一になるように前記可動部に取り付けられた距離測定部により前記人体の少なくとも一部に向かって発振してからその反射波を受信するまでの時間に基づいて前記人体の少なくとも一部との距離を測定する距離測定工程を有し、
前記赤外線量測定工程は、前記距離測定工程の開始前または終了後に実施される
ことを特徴とする請求項8または9に記載の人体温度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−230392(P2010−230392A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76514(P2009−76514)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(505461072)東芝キヤリア株式会社 (477)
【Fターム(参考)】