説明

人体通信装置およびその認証方法

【課題】 人体通信端末を携帯している本人の通信意思を認証できる人体通信装置およびその認証方法を提供する。
【解決手段】 人体通信装置10では、第1人体通信端末11は、人に携帯され、携帯している人13の第1生体生理情報31を検出する第1検出手段16を含んでいる。第2人体通信端末12は、人体接触センサ26と、人体接触センサ26に触れている人の第2生体生理情報32を検出する第2検出手段27を含んでいる。認証手段は、第1または第2人体通信端末11、12に含まれ、第1および第2生体生理情報31、32を入手し、第1および第2生体生理情報31、32の相関を求め、相関に応じて、第1および第2人体通信端末11、12の間の通信を許可する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、人体通信装置およびその認証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人体を通信経路としてデータを送受信する人体通信には、人体通信携帯端末を携帯している人が相手方の人体通信端末に設けられている人体接触センサに触れると、人体通信携帯端末と人体通信端末の間でデータ通信を行なうものがある。
【0003】
然しながら、人体通信携帯端末を携帯している本人が通信の意思がなくても、人体接触センサに触れている別人を介して人体通信携帯端末と人体通信端末の間でデータ通信がおこなわれてしまう場合がある。例えば、以下のような場合である。
【0004】
人体通信携帯端末を携帯していない別人が人体接触センサに触れた場合に、人体接触センサに触れている別人を介して人体通信携帯端末と人体通信端末の間でデータ通信がおこなわれる。
【0005】
人体通信携帯端末を携帯している別人が人体接触センサに触れた場合に、人体接触センサに触れている別人の人体通信携帯端末がパスされて、別人を介して本人の人体通信携帯端末と人体通信端末の間でデータ通信がおこなわれる。
【0006】
人体通信携帯端末を携帯している本人が意図しないデータ通信は、セキュリティ上の問題が生じる恐れがある。
【0007】
通常、セキュリティを確保するために、指紋パターンなどの本人認証用データを予め人体通信携帯端末に登録しておき、人体接触センサに触れている人の指紋パターンと比較して人体接触センサに触れている人が本人であるかの認証をおこなう。
【0008】
然し、本人認証用のデータを予め人体通信携帯端末に登録しておくことは、個人情報管理面で問題が生じる恐れがある。人体通信携帯端末を紛失した場合に、本人認証用データを悪用される恐れがある。
【0009】
従って、複数の人が共用するような人体通信携帯端末の場合は、本人認証用のデータを予め人体通信携帯端末に登録しておくことが難しくなるので、本人を認証するよりも、人体通信携帯端末を携帯している本人の通信意思を認証できる人体通信装置および認証方法が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−266234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、人体通信端末を携帯している本人の通信意思を認証できる人体通信装置およびその認証方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一つの実施形態によれば、人体通信装置では、第1人体通信端末は、人に携帯され、前記携帯している人の第1生体生理情報を検出する第1検出手段を含んでいる。第2人体通信端末は、人体接触センサと、前記人体接触センサに触れている人の第2生体生理情報を検出する第2検出手段を含んでいる。認証手段は、前記第1または第2人体通信端末に含まれ、前記第1および第2生体生理情報を入手し、前記第1および第2生体生理情報の相関を求め、前記相関に応じて、前記第1および第2人体通信端末の間の通信を許可する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1に係る人体通信装置を示すブロック図。
【図2】実施例1に係る人体通信装置を説明するための図。
【図3】実施例1に係る人体通信装置の認証手順を示す図。
【図4】実施例1に係る第1および第2生体生理情報の処理フローを示す図。
【図5】実施例1に係る第1および第2生体生理情報の間に相関が無い場合を示す図。
【図6】実施例1に係る第1および第2生体生理情報の間に相関が無い場合を示す図。
【図7】実施例1に係る第1および第2生体生理情報の間に相関が無い場合を示す図。
【図8】実施例1に係る人体通信装置の別の認証手順を示す図。
【図9】実施例2に係る人体通信装置を説明するための図。
【図10】実施例3に係る人体通信装置を説明するための図。
【図11】実施例4に係る人体通信装置を説明するための図。
【図12】実施例5に係る人体通信装置を説明するための図。
【図13】実施例6に係る人体通信装置を説明するための図。
【図14】実施例6に係る人体通信装置を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0015】
本実施例に係る人体通信装置について図1および図2を用いて説明する。図1は本実施例の人体通信装置を示すブロック図、図2は人体通信装置を説明するための図である。
【0016】
図1に示すように、本実施例の人体通信装置10は、人に携帯される携帯型の第1人体通信端末11と、所定の場所に設置される据え置き型の第2人体通信端末12で構成されている。
【0017】
第1人体通信端末11と第2人体通信端末12は、第1人体通信端末11を携帯している人13(以後、単に携帯者13という)が、第2人体通信端末12に設けられている人体接触センサに触れることにより、携帯者13を通信経路として、例えば位相変調されたアナログ信号を送受信することにより、データ通信を行なう。人体通信に用いられるアナログ信号(人体通信信号)の周波数は、略1MHzから10MHzの間にある。
【0018】
第1人体通信端末11は、アナログ信号を送受信するためのアナログフロントエンド部14と、アナログフロントエンド部14で送受信される信号を処理する信号処理部15と、携帯者13の第1生体生理情報を検出するための第1センサ16(第1検出手段)で構成されている。
【0019】
アナログフロントエンド部14は、アナログ信号を受信する受信部とアナログ信号を送信する送信部で構成されている。
【0020】
受信部は、例えば携帯者13に接触または着衣を介した静電結合でアナログ信号を受信する受信電極17と、受信したアナログ信号を増幅する低雑音増幅器18と、増幅されたアナログ信号をデジタル信号に変換して信号処理部15に出力するアナログ・デジタル変換器(以後、AD変換器という)19で構成されている。
【0021】
送信部は、例えば信号処理部15からのデジタル信号をアナログ信号に変換するデジタル・アナログ変換器(以後、DA変換器という)20と、変換されたアナログ信号を増幅する電力増幅器21と、携帯者13に接触または着衣を介した静電結合で増幅されたアナログ信号を送信する送信電極22で構成されている。
【0022】
信号処理部15は、例えば演算処理を施すCPU23と、演算処理結果を一時格納するRAM(Random Access Memory)24と、演算処理手順などのプログラムを格納するROM(Read Only Memory)25で構成されている。
【0023】
第2人体通信端末12は、人体の接触を検出する人体接触センサ26と、人体接触センサ26に内蔵される形で、人体接触センサ26に接触している人(以後、単に人体接触者という)の第2生体生理情報を検出するための第2センサ(第2検出手段)27を含んでいる。
【0024】
第2人体通信端末12は、第2センサ27からの第2生体生理情報を処理する信号処理部28と、第1人体通信端末11と同様に、アナログ信号を送受信するためのアナログフロントエンド部14と、アナログフロントエンド部14で送受信される信号を処理する信号処理部15を含んでいる。
【0025】
本明細書では、第1センサ16とは、検出した信号を増幅し、AD変換してデジタル信号としてCPU23に出力する機能も含んでいる。第2センサ27についても、同様である。
【0026】
図2に示すように、第1センサ16は、携帯者13の第1生体生理情報31として、例えば胸部の脈動による振動を検知するセンサであり、一定期間の連続した脈動波形を電気信号に変換する。
【0027】
第2センサ27は、人体接触者の第2生体生理情報32として、接触している部位、例えば指先の脈動による光透過率の変化を検知するセンサであり、第1生体生理情報31と同じく一定期間の連続した脈動波形を電気信号に変換する。
【0028】
第2人体通信端末12には、第1携帯端末11から人体通信経路33を介して第1生体生理情報31を入手し、第1および第2生体生理情報31、32の相関を求め、第1および第2生体生理情報31、32に相関があるときに、第1および第2人体通信端末11、12の間の通信を許可する認証手段(図示せず)が設けられている。
【0029】
認証手段は、例えば信号処理部15により具現化される。信号処理部15のROM24には、第1および第2生体生理情報31、32の相関を求める手順などのプログラムと、相関を求め、相関の有無を判断するのに必要な条件等が格納されている。
【0030】
CPU23は、ROM24に格納されているプログラムに従って第1および第2生体生理情報31、32の相関を求める演算処理を実行する。演算結果は、RAM25に格納される。
【0031】
上述した人体通信装置10は、携帯者13の通信意思を認証するために、携帯者13が人体接触センサ26に触れていること、即ち、携帯者13と人体接触者が同一人であることを確認するように構成されている。
【0032】
次に、携帯者13の通信意思の認証方法について、図3を用いて説明する。図3は人体通信装置の認証手順を示す図である。
【0033】
第1人体通信端末11は、最初は携帯者13が人体接触センサ26に触れて何らかの通信信号が到来するまでの間、受信電極17からAD変換器19までの受信部を動作させて待機状態になっている。
【0034】
第2人体通信端末12は、人体接触センサ26への人体接触を検知すると、人体接触検知信号を送信する(ステップS11)。
【0035】
第1人体通信端末11は、人体接触検知信号を受信すると、DA変換器20から送信電極22までの送信部を動作させて、人体接触検知信号を受信したことを示す通信応答信号を送信して(ステップS12)、第1生体生理情報31を取得する。
【0036】
第2人体通信端末12は、通信応答信号を受信すると、第2生体生理情報32を取得すし、認証要求信号を送信して第1生体生理情報31の送信を要求する(ステップS13)。
【0037】
第1人体通信端末11は、認証要求信号を受信すると、第1生体生理情報31を送信する(ステップS14)。
【0038】
第2人体通信端末12は、第1生体生理情報31を受信すると、後述する方法により第1生体生理情報31と第2生体生理情報32の相関を求め、第1生体生理情報31と第2生体生理情報32に相関があるかを判断し、相関がある場合に認証鍵をやり取りするために第2認証鍵を送信する(ステップS15)。
【0039】
第1人体通信端末11は、第2認証鍵を受信すると、第1認証鍵を送信する(ステップS16)。
【0040】
第2人体通信端末12は、第1認証鍵を受信すると、認証鍵のやり取りが終了し、通信許可信号を送信する(ステップS17)。
【0041】
第1人体通信端末11が、通信許可信号を受信することにより、認証が完了する。以後第1および第2人体通信端末11、12の間で、携帯者13を通信経路とした人体通信により自由にデータ通信を行なうことができる。
【0042】
一方、第2人体通信端末12は、第1生体生理情報31と第2生体生理情報32に相関がない場合、接続拒否通知信号を送信し、通信を中断する。その結果、第1および第2人体通信端末11、12の間のデータ通信を行うことができない。
【0043】
第1生体生理情報31と第2生体生理情報32の相関は、例えば第1および第2生体生理情報31、32の同期点を探し出す方法で求める。これは、双方の波形の時間軸を少しずつずらしながら比較して、各サンプリングポイントでの波形のずれの大きさが全体にわたって極小になるポイント、例えば第1および第2生体生理情報31、32の差の自乗和が最小になるポイントを探す方法である。
【0044】
この波形のずれの大きさに基づいて相関の有無を判定する。第1および第2生体生理情報31、32が完全に一致していればこの波形のずれの大きさは0となる。
【0045】
この方法であれば、周期性のない波形あるいは周期の長い波形でも1周期分のデータを取らなくても比較的正確に波形を比較することができる。
【0046】
第1生体生理情報31と第2生体生理情報32に相関があれば、携帯者13が人体接触センサ26に触れていること、即ち、携帯者13と人体接触者が同一人であることが確認され、携帯者13の通信意思を認証することが可能である。
【0047】
本明細書では、第1生体生理情報31と第2生体生理情報32の相関とは必ずしも数学的に関数で表現されるものではなく、2つの波形がどれだけ類似しているかを実用上問題ないレベルで判定するための指標を意味している。
【0048】
第1人体通信端末11から送信する第1生体生理情報31は、第1センサ16で読み取ったリアルタイムデータであるが、信号波形処理遅延などを考慮すると、単純な波形比較ではうまく整合が取れない可能性がある。
【0049】
図4は第1および第2センサ16、27で読み取った第1および第2生体生理情報31、32の処理フローを示す図である。図4に示すように、第1および第2センサ16、27で、同じタイミングの第1および第2生体生理情報31、32を取得し、波形比較の同期タイミングを探し出すことが必要である。
【0050】
第1および第2生体生理情報31、32の取得開始のタイミングは、人が人体接触センサ26に接触し、人体接触検知信号に対する通信応答信号が出されたときが望ましい。
【0051】
第1人体通信端末11側で取得した第1生体生理情報31は、信号変換されて第2人体通信端末12側に送信する処理が必要なため、第2人体通信端末12側で取得した第2生体生理情報32は、一時的に保管しておく必要がある。
【0052】
第2人体通信端末12側に第1および第2生体生理情報31、32が揃ったところで、波形比較を行うが、ノイズの混入や細かい部分での波形の相違が存在するため、相関出力に対して、より正確な判定を行なうために誤り訂正技術等を用いることが望ましい。
【0053】
図5乃至図7は、第1および第2生体生理情報31、32の間に相関が無い場合、即ち、携帯者13が人体接触センサ26に触れておらず、携帯者13と人体接触者が別人の場合を示す図で、図5および図6は人体接触者が第1人体通信端末を携帯していない場合、図7は人体接触者が第1人体通信端末を携帯している場合を示す図である。
【0054】
図5に示すように、第1通信端末11を携帯していない人40(以後、単に未携帯者40という)と携帯者13が手を繋いだ親子連れであるとする。第2通信端末12の側を通りかかった時、未携帯者40がたまたま人体接触センサ26に触れると、未携帯者40(人体接触者40)を介して携帯者13に至る人体通信経路41が形成される。
【0055】
この場合、第1生体生理情報31と第2生体生理情報32に相関が無いので、携帯者13の通信意思は認証されない。従って、携帯者13の意図しないデータ通信を防止することが可能である。
【0056】
図6に示すように、携帯者13が第2通信端末12の側に立っているときに、未携帯者45が、第2通信端末12と携帯者13の間に割り込んできたとする。未携帯者45が第2通信端末12と携帯者13の間をすり抜けるときに、たまたま一方の手が人体接触センサ26に触れ、他方の手が携帯者13に接触すると、未携帯者45(人体接触者45)を介して携帯者13に至る人体通信経路46が形成される。
【0057】
この場合も、第1生体生理情報31と第2生体生理情報32に相関が無いので、携帯者13の通信意思は認証されない。従って、携帯者13の意図しないデータ通信を防止することが可能である。
【0058】
図7に示すように、携帯者13が第2通信端末12の側に立っているときに、同じ第1通信端末11を携帯している人50(以後、単に携帯者50という)が、第2通信端末12と携帯者13の間に割り込んできて、携帯者13に接触しながら人体接触センサ26に触れたとする。
【0059】
たまたま携帯者50の脇が閉まっており、携帯者50の上腕から胸を経由して携帯者50に携帯されている第1人体通信端末11に至る通信経路が形成されず、携帯者50(人体接触者50)の下腕から腰部を通り抜けて携帯者13に至る人体通信経路51が形成される場合がある。
【0060】
この場合も、第1生体生理情報31と第2生体生理情報32に相関が無いので、携帯者13の通信意思は認証されない。従って、携帯者13の意図しないデータ通信を防止することが可能である。
【0061】
以上説明したように、本実施例では、第1人体通信端末11は携帯者13の第1生体生理情報31を検出する第1センサ16を含み、第2人体通信端末12は人体接触者の第2生体生理情報32を検出する第2センサ27を含み、認証手段が第1および第2生体生理情報31、32の相関の有無をチェックしている。
【0062】
その結果、第1および第2生体生理情報31、32の相関がある場合に、携帯者13と人体接触者が同一人であると確認できるので、携帯者13が通信意思を有する場合のみデータ通信が行われる。従って、人体通信端末を携帯している本人の通信意思を認証できる人体通信装置およびその認証方法が得られる。
【0063】
第1人体通信端末を携帯している本人の意図しないデータ通信が防止され、セキュリティ上の問題の発生が未然に防止される。
【0064】
ここでは、第2人体通信端末12で第1および第2生体生理情報31、32の相関を求める場合について説明したが、第1人体通信端末11で行うこともできる。図8は第1人体通信端末11で第1および第2生体生理情報31、32の相関を求める場合の認証手順を示す図である。
【0065】
図8に示すように、ステップS11からステップS12までは、第2人体通信端末12で第1および第2生体生理情報31、32の相関を求める場合と同じである。
【0066】
第2人体通信端末12は、通信応答信号を受信すると、第2生体生理情報32を取得し、取得した第2生体生理情報32を送信する(ステップS21)。
【0067】
第1人体通信端末11は、第2生体生理情報32を受信すると、第1生体生理情報31と第2生体生理情報32の相関を求め、第1生体生理情報31と第2生体生理情報32に相関があるかを判断し、相関がある場合に認証鍵をやり取りするために第1認証鍵を送信する(ステップS22)。
【0068】
第2人体通信端末12は、第1認証鍵を受信すると、第2認証鍵を送信する(ステップS23)。
【0069】
第1人体通信端末11は、第2認証鍵を受信すると、認証鍵のやり取りが終了し、通信許可信号を送信する(ステップS24)。
【0070】
第2人体通信端末12が、通信許可信号を受信することにより、認証が完了する。以後第1および第2人体通信端末11、12の間で、携帯者13を通信経路とした人体通信により自由にデータ通信を行なうことができる。
【0071】
一方、第1人体通信端末11は、第1生体生理情報31と第2生体生理情報32に相関がない場合、接続拒否通知信号を送信し、通信を中断する。
【実施例2】
【0072】
本発明の実施例2に係る人体通信装置について図9を用いて説明する。図9は本実施例の人体通信装置を説明するための図である。本実施例において、上記実施例1と同一の構成部分には同一符号を付してその部分の説明は省略し、異なる部分について説明する。
【0073】
本実施例が実施例1と異なる点は、第1および第2生体生理情報を人体の重心の揺らぎとしたことにある。人体は直立している間、重心が常に揺らいでいる。この揺らぎを検出できれば、第1および第2生体生理情報として利用することができる。
【0074】
即ち、図9に示すように、本実施例の人体通信装置では、第1人体通信端末11に、第1センサ(第1検出手段)61として人体の揺らぎを検出する加速度センサ、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)3軸加速度センサが内蔵されている。
【0075】
第2人体通信端末12に、第2センサ(第2検出手段)62として人体の重心移動軌跡を読み取るセンサマット、例えば感圧式ポジションセンサが外付けされている。
【0076】
第1センサ61は、携帯する向きが地面に対して一定方向にはなりえないので、重心の移動と同時に重力の方向も特定する。重力の方向が特定できたら、重力に水平な成分だけを切り出して、第1生体生理情報63を取得する。
【0077】
第2センサ62は、第2人体通信端末12が据え付けられている床に敷かれている。携帯者13は、例えば一瞬立ち止まって人体接触センサ26に触れるようする。この立ち止まっている間の携帯者13の重心の揺らぎから、第1センサ61は第1生体生理情報63を検出し、第2センサ62は第2生体生理情報64を検出する。
【0078】
この場合、第1生体生理情報63と第2生体生理情報64に相関が有るので、携帯者13が人体接触センサ26に触れていること、即ち、携帯者13と人体接触者が同一人であることが確認され、携帯者13の通信意思を認証することが可能である。
【0079】
一方、図5乃至図7に示す状況においては、携帯者13の第1生体生理情報63と、人体接触者の第2生体生理情報に相関が無いので、携帯者13の通信意思は認証されない。従って、携帯者13の意図しないデータ通信を防止することが可能である。
【0080】
以上説明したように、本実施例では人体の重心の揺らぎを、第1および第2生体生理情報63、64としている。これにより、人体の生体生理情報を検出する方法を適用するのが困難な場合、例えば第1人体通信端末が脈拍の振動が取りにくいような状態で携帯される場合にも適用できる利点が得られる。
【0081】
また、予め加速度センサを搭載している携帯機器を第1人体通信端末としてモディファイする場合、新たに胸部の脈動による振動を検知するセンサを設ける必要がないという利点もある。
【実施例3】
【0082】
本発明の実施例3に係る人体通信装置について図10を用いて説明する。図10は本実施例の人体通信装置を説明するための図である。本実施例において、上記実施例1と同一の構成部分には同一符号を付してその部分の説明は省略し、異なる部分について説明する。本実施例が実施例1と異なる点は、第1人体通信端末を手首に取り付けられるタイプとしたことにある。
【0083】
即ち、図10に示すように、本実施例の人体通信装置では、第1人体通信端末71は手首に取り付けられるタイプの人体通信端末である。手首の脈動を検出する第1センサ(図示せず)が第1人体通信端末71に内蔵されている。
【0084】
第1センサは、第1人体通信端末71を携帯している人72(以後単に、携帯者72という)の脈動で第1生体生理情報73を検出する。第1人体通信端末71は、人体通信経路74を介して第1生体生理情報73を第2人体通信端末12に送信する。
【0085】
この場合、第1生体生理情報73と第2生体生理情報32に相関が有るので、携帯者72が人体接触センサ26に触れていること、即ち、携帯者72と人体接触者が同一人であることが確認され、携帯者72の通信意思を認証することが可能である。
【0086】
一方、図5乃至図7に示す状況においては、携帯者72の第1生体生理情報73と、人体接触者の第2生体生理情報に相関が無いので、携帯者72の通信意思は認証されない。従って、携帯者72の意図しないデータ通信を防止することが可能である。
【0087】
手首では動脈が人体の表面近くを通っているので、脈動の検出が確実且つ容易である。図2に示す第1人体接触端末11では、人体への装着部位によって脈動の検出が不正確になる場合がある。
【0088】
例えば、比較的心臓に近い胸部に装着されている場合は、胴体の脈動による振動の検出が容易であるが、腹部など脈による振動が取りにくい部位に装着されている場合、正確に脈動を検出することが難しくなる。
【0089】
以上説明したように、本実施例では、第1人体通信端末71を手首に装着するタイプとしている。これにより第1通信端末11における装着部位により第1生体生理情報が取得できなくなる不具合を改善できる利点が得られる。
【0090】
更に、第1通信端末11に比べて、第1人体通信端末71と人体の直接接触が容易になる、第1人体通信端末71の装着が容易になる等の利点が得られる。
【実施例4】
【0091】
本発明の実施例4に係る人体通信装置について図11を用いて説明する。図11は本実施例の人体通信装置を説明するための図である。本実施例において、上記実施例1と同一の構成部分には同一符号を付してその部分の説明は省略し、異なる部分について説明する。本実施例が実施例1と異なる点は、第1センサを第1人体通信端末の外付けとしたことにある。
【0092】
即ち、図11に示すように、本実施例の人体通信装置では、第1人体通信端末11に手首の脈動を検出する第1センサ81が外付けされている。第1センサ81は、携帯者13の手首に装着されている。第1人体通信端末11と第1センサ81は、予め通信認証が与えられている(ペアリングされている)。
【0093】
第1センサ81は、手首での脈動で第1生体生理情報82を検出し、人体通信経路83を介して第1生体生理情報82を第1人体通信端末11に送信する。第1人体通信端末11は、人体通信経路33を介して第1生体生理情報82を第2人体通信端末12に送信する。
【0094】
第1センサ81は第2センサ27の近くに設けられているので、第1センサ81が検出する手首での第1生体生理情報82と、第2センサ27が検出する指先での2生体生理情報32に混入するノイズや波形の細部の相違が低減する。その結果、第1および第2生体生理情報82、32の相関が高まることが期待される。
【0095】
この場合、第1生体生理情報82と第2生体生理情報32に相関が有るので、携帯者13が人体接触センサ26に触れていること、即ち、携帯者13と人体接触者が同一人であることが確認され、携帯者13の通信意思を認証することが可能である。
【0096】
一方、図5乃至図7に示す状況においては、携帯者13の第1生体生理情報83と、人体接触者の第2生体生理情報に相関が無いので、携帯者13の通信意思は認証されない。従って、携帯者13の意図しないデータ通信を防止することが可能である。
【0097】
以上説明したように、本実施例では、第1センサ81を第1人体通信端末11の外付けとしている。その結果、第1センサ81を、第1生体生理情報82を検出するのに最も適した部位に装着できる利点が得られる。
【実施例5】
【0098】
本発明の実施例5に係る人体通信装置について図12を用いて説明する。図12は本実施例の人体通信装置を説明するための図である。本実施例において、上記実施例1と同一の構成部分には同一符号を付してその部分の説明は省略し、異なる部分について説明する。本実施例が実施例1と異なる点は、第2センサを第2人体通信端末の外付けとしたことにある。
【0099】
即ち、図12に示すように、本実施例の人体通信装置では、第2人体通信端末12に手首の脈動を検出する第2センサ91が外付けされている。第2センサ91は、人体接触者、ここでは携帯者13の手首に装着されている。
【0100】
第2センサ91は、手首での脈動から第2生体生理情報92を検出し、人体通信経路93を介して第2体生理情報92を第2人体通信端末12に送信する。
【0101】
第2センサ91は、例えばアームイン式の血圧形と類似の構造で、内側が可動式の腕筒に腕を通して人体接触センサ26に触れると、自動的に腕筒の空気袋が膨らんで手首に対してぴったりと装着されるようになっている。
【0102】
第2センサ91は、第2生体生理情報92が検出されると、自動的に腕筒の空気袋が収縮し、装着が解除されるようになっている。第2センサ91は、着脱に時間を要するものの、自動的に着脱されるので、人体接触者がストレスを感じることは少なくて済むようになっている。
【0103】
第2センサ91が検出する手首での第2生体生理情報92は、指先で検出される第2生体生理情報より確実であり、第1および第2生体生理情報31、92の相関が高まることが期待される。
【0104】
この場合、第1生体生理情報31と第2生体生理情報92に相関が有るので、携帯者13が人体接触センサ26に触れていること、即ち、携帯者13と人体接触者が同一人であることが確認され、携帯者13の通信意思を認証することが可能である。
【0105】
一方、図5乃至図7に示す状況においては、携帯者13の第1生体生理情報31と、人体接触者の第2生体生理情報92に相関が無いので、携帯者13の通信意思は認証されない。従って、携帯者13の意図しないデータ通信を防止することが可能である。
【0106】
以上説明したように、本実施例では、第2センサ91を第2人体通信端末12の外付けとしている。その結果、第2生体生理情報92を、指先より確実性の高い手首にて検出できる利点が得られる。
【実施例6】
【0107】
本発明の実施例6に係る人体通信装置について図13および図14を用いて説明する。図13は本実施例の人体通信装置を説明するための図、図14は人体通信装置を示すブロック図である。本実施例において、上記実施例1と同一の構成部分には同一符号を付してその部分の説明は省略し、異なる部分について説明する。本実施例が実施例1と異なる点は、人体の生体生理活動により発せられる電気信号を生体生理情報としたことにある。
【0108】
そもそも、人体には生体生理活動により発せられる電気信号(生体生理活動電気信号という)、例えば神経活動による電気信号、血液・リンパ液の流動による人体抵抗の変化による電気信号、外部の電界あるいは電磁との相互作用の変化により発生する電気信号などが流れている。生体生理活動電気信号は、人体の活動状態に応じて異なるので、人体を識別する認証信号として利用することが可能である。
【0109】
図13に示すように、生体生理活動電気信号101は、略1kHzから1MHzの周波数帯に分布している。一方、人体通信信号102は、略1MHzから10MHzの周波数帯に分布しているので、生体生理活動電気信号101と人体通信信号102は干渉することはない。
【0110】
従って、生体生理活動電気信号101と人体通信信号102を含む人体電気信号から生体生理活動電気信号101を選択することにより、生体生理活動電気信号101を第1および第2生体生理情報として使用することができる。
【0111】
図14に示すように、人体通信装置110では、第1人体通信端末111に、携帯者13の人体電気信号から生体生理活動電気信号101を選択的するための第1検出手段112が設けられている。
【0112】
第1人体通信端末111では、受信電極17で受信した人体電気信号が低雑音増幅器18で増幅される。増幅された人体電気信号は、AD変換器19と人体電気信号選択部112に入力される。
【0113】
人体電気信号選択部112では、ローパスフィルタ(選択回路)113は、低雑音増幅器18で増幅された人体電気信号から生体生理活動電気信号101のみを通過させる。
【0114】
増幅器114は、ローパスフィルタ113を通過した生体生理活動電気信号101を増幅する。ローパスフィルタ113の挿入損出を補償するためである。AD変換器115は、増幅された生体生理活動電気信号101をデジタル信号に変換し、信号処理部15のCPU23に出力する。
【0115】
同様に、第2人体通信端末(図示せず)には、人体接触者の人体電気信号から生体生理活動電気信号101を選択するための第2検出手段が設けられている。第2検出手段の構成は、第1検出手段と同様であり、その説明は省略する。
【0116】
生体生理活動電気信号101の選択は、図3に示すフローに従い、第1および第2生体生理情報取得時に行なう。選択された生体生理活動電気信号101は、AD変換されて、デジタル信号としてCPU23に取り込まれ、処理される。
【0117】
ここでは、第1人体通信端末111の第1検出手段112は、携帯者13の生体生理活動電気信号101を選択する。第2人体通信端末の第2検出手段は、携帯者13の生体生理活動電気信号101を選択する。
【0118】
この場合、第1生体生理情報と第2生体生理情報に相関が有るので、携帯者13が人体接触センサ26に触れていること、即ち、携帯者13と人体接触者が同一人であることが確認され、携帯者13の通信意思を認証することが可能である。
【0119】
一方、図5乃至図7に示す状況においては、携帯者13の第1生体生理情報と、人体接触者の第2生体生理情報に相関が無いので、携帯者13の通信意思は認証されない。従って、携帯者13の意図しないデータ通信を防止することが可能である。
【0120】
なお、人体通信装置110では、人体から生体生理活動により発せられる生体生理活動電気信号101を利用するので、実施例1に示す第1センサ16および2センサ27は不要である。
【0121】
以上説明したように、本実施例では、生体生理活動電気信号101を第1および第2生体生理信号として利用しているので、第1および第2センサが不要である。第1検出手段112はアナログフロントエンド部14や信号処理部15などに1チップに集積して形成することができるので、第1および第2人体通信端末を簡素化、小型化することができる利点がある。
【0122】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0123】
本発明は、以下の付記に記載されているような構成が考えられる。
(付記1) 前記第2センサは前記第2人体通信端末に外付けされ、前記2センサは前記第2人体通信端末に接触している人を通信経路とする人体通信で前記第2人体通信端末に接続されている請求項2に記載の人体通信装置。
【0124】
(付記2) 前記第2センサは、指先を除く身体部位で前記第2生体生理情報を検出するセンサである請求項2に記載の人体通信装置。
【符号の説明】
【0125】
10、110 人体通信装置
11、71、111 第1人体通信端末
12 第2人体通信端末
13、50、72 第1通信端末携帯者
14 アナログフロントエンド部
15 信号処理部
16、61、81 第1センサ
17 受信電極
18 低雑音増幅器
19、115 AD変換器
20 DA変換器
21 電力増幅器
22 送信電極
23 CPU
24 ROM
25 RAM
26 人体接触センサ
27、62、91 第2センサ
28 信号処理部
31、63、73、82 第1生体生理情報
32、64、92 第2生体生理情報
33、41、46、51、74、83、93 人体通信経路
40、45 第1人体通信端末未携帯者
101 生体生理活動電気信号
102 人体通信信号
112 第1検出手段
113 ローパスフィルタ
114 増幅器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人に携帯され、前記携帯している人の第1生体生理情報を検出する第1検出手段を含む第1人体通信端末と、
人体接触センサと、前記人体接触センサに触れている人の第2生体生理情報を検出する第2検出手段を含む第2人体通信端末と、
前記第1または第2人体通信端末に含まれ、前記第1および第2生体生理情報を入手し、前記第1および第2生体生理情報の相関を求め、前記相関に応じて、前記第1および第2人体通信端末の間の通信を許可する認証手段と、
を具備すること特徴とする人体通信装置。
【請求項2】
(実施例1〜5)
前記第1および第2生体生理情報は、人体の脈動または重心の揺らぎであり、前記第1検出手段は前記人体の脈動または重心の揺らぎを電気信号に変換する第1センサを含み、前記第2検出手段は前記人体の脈動または重心の揺らぎを電気信号に変換する第2センサを含むことを特徴とする請求項1に記載の人体通信装置。
【請求項3】
(実施例6)
前記第1および第2生体生理情報は、生体生理活動により人体から発せられる電気信号であり、前記第1および第2検出手段は前記電気信号を選択する選択回路を含むことを特徴とする請求項1に記載の人体通信装置。
【請求項4】
前記第1センサは前記第1人体通信端末に外付けされ、前記第1センサは前記携帯している人を通信経路とする人体通信で前記第1人体通信端末に接続されていることを特徴とする請求項2に記載の人体通信装置。
【請求項5】
人に携帯される第1人体通信端末と第2人体通信端末の間で人体通信を行なう人体通信装置において、前記第1人体通信端末を携帯している人の通信意思を認証する方法であって、
前記第1人体通信端末を携帯している人の第1生体生理情報を検出するステップと、
前記第2人体通信端末に接触している人の第2生体生理情報を検出するステップと、
前記第1および第2生体生理情報の相関を求め、前記相関に応じて、前記第1および第2人体通信端末の間の通信を許可するステップと、
を具備することを特徴とする人体通信装置の認証方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−113383(P2012−113383A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259764(P2010−259764)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】