説明

人口呼吸器用マスクの補助具及び人口呼吸器用マスク

【課題】装着者に圧迫感や締め付け感などの負担をかけず、鼻隆の高さや幅に個人差があっても、また、頬や鼻周りが痩せて顔の凹凸が大きくなったとしても、常に、顔面に確実に密着させことができ、酸素等の漏れの生じないようにした人口呼吸器用マスクの補助具及び人口呼吸器用マスクを提供する。
【解決手段】請求項1に記載の人口呼吸器用マスクの補助具は、鼻、鼻と口、顔全体を覆うマスク本体の顔接面に一面が粘着でき、他面が顔面に粘着できる表裏粘着面を環状に形成し、該表裏粘着面に剥離シートを添付したことを特徴とし、マスク使用に先立って表裏粘着板の一面をマスク本体の顔接面に粘着し、表裏粘着板の他面の剥離シートを剥がして粘着面を露出して顔面へ貼ることにより密着性をより向上させるとともに、表裏粘着面付き人口呼吸器用マスクとしても市販できるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鼻、鼻と口、顔全体を覆うマスク本体の顔接面を、顔に密着させることのできる人口呼吸器用マスクの補助具及び人口呼吸器用マスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、酸素等の気体(空気を含む)の人口呼吸器用マスクには、鼻だけを覆うもの、鼻と口を覆うもの、顔全体を覆うものがある。これらは大きさに差はあっても、顔接面を顔の対応部位に密着できるように後頭部に回して固定する装着バンドを用いていることが多い。この装着バンドは、後頭部に回して固定するという行為自体、装着者に大きな負担をかけることになることから、装着バンドに代えてマスク本体に耳掛けバンドを設けるようにした技術(例えば、特開2005−253925号公報)がある。一方、人口呼吸器用マスクを顔の対応部位に密着させること自体、圧迫感があったり締め付け感があることからマスクを身体の近傍、例えば、ベッド等に取り付けた支持アームにより固定して非密着型にした技術(例えば、特開2007−296211号公報)もある。
【特許文献1】特開2005−253925号公報
【特許文献2】特開2007−296211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前者(特開2005−253925号公報)のものは負担が耳に移るだけで、装着者に大きな負担をかけることには替わりなかったし、後者(特開2007−296211号公報)のものは、装着者に圧迫感や締め付け感などの負担はかけないが、酸素等の漏れによる事故の生じることは避けられなかった。
【0004】
本発明は、上記の問題を解消するためのもので、その目的とするところは、装着者に圧迫感や締め付け感などの負担をかけず、鼻隆の高さや幅に個人差があっても、また、頬や鼻周りが痩せて顔の凹凸が大きくなったとしても、常に、顔面に確実に密着させことができ、酸素等の漏れの生じないようにした人口呼吸器用マスクの補助具及び人口呼吸器用マスクを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の人口呼吸器用マスクの補助具は、鼻、鼻と口、顔全体を覆うマスク本体の顔接面に一面が粘着でき、他面が顔面に粘着できる表裏粘着面を環状に形成し、該表裏粘着面に剥離シートを添付したことを特徴とし、マスク使用に先立って表裏粘着板の一面をマスク本体の顔接面に粘着し、表裏粘着板の他面の剥離シートを剥がして粘着面を露出して顔面へ貼ることにより密着性をより向上させ、酸素等の気体の漏れがないように構成した。
【0006】
また、請求項2に記載の人口呼吸器用マスクの補助具は、前記表裏粘着面を含む粘着材が、全厚シリコーンジェル層又は中間層に補強薄膜材を介装したシリコーンジェル層であることを特徴とし、マスク本体を顔の対応部位に適用したときに、表裏の粘着層が生物学的に安定し肌にやさしく、しかも無毒性が期待できるように構成した。
【0007】
さらに、請求項3に記載の人口呼吸器用マスクは、鼻、鼻と口、顔全体を覆うマスク本体の顔接面に表裏粘着板の一面を固定し、マスク着用に際し、表裏粘着板の他面に添付した剥離シートを剥がして顔面に粘着できるようにし、かつ、表裏粘着板のうち、少なくとも顔面に触れる側の粘着材がシリコーンジェルであることを特徴とし、表裏粘着面付き人口呼吸器用マスクを提供できるように構成した。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、マスク使用に先立って表裏粘着板の一面をマスク本体の顔接面に粘着し、表裏粘着板の他面の剥離シートを剥がして粘着面を露出させて顔面へ貼ることにより密着性をより向上させる。例えば、鼻隆の高さや横幅には個人差があっても、また、老人になって頬が痩せて凹凸ができたとしても、皺により凹凸が増えたとしても常に凹凸を吸収密着し、酸素等の気体を漏らすことがない上に、装着バンドや耳掛けバンドを強く締めつけて用いなくとも使用できるという優れた効果を奏する。
【0009】
また、請求項2に記載の発明によれば、マスク本体を顔の対応部位に適用したときに、表裏粘着層が生物学的に安定し、肌にやさしく、しかも無毒性(毒性のない安心感)が期待できるという優れた効果を奏する。
【0010】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、表裏粘着面付き人口呼吸器用マスクを提供できることから、顔面への粘着による密着性が高まるゆえに、酸素等の気体の漏れがないという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の実施の態様を添付図面に基づいて説明する。図1は本願補助具を示す平面図、図2は本願補助具の断面図で、(a)は全厚が粘着層、(b)は補強薄膜材を中間層にした粘着層、図3はマスクの着用状態を示す斜視図、図4はマスクを顔接面側から見た斜視図である。
【0012】
1は本願補助具で、該本願補助具1は、表裏粘着面2、2′を介してマスク本体10の顔接面11と人の顔面Aとを、図3の如く、密着(仮着)させる得るものである。該本願補助具1は、図1の如く、鼻と口とを囲むように洋梨状(環状)形成されており、その表裏は、図2の如く、粘着面2、2′となっているとともに、該粘着面2、2′には剥離シート3、3′が仮着されて粘りつかないようにしている。該剥離シート3、3′は図面上では粘着面2、2′とほぼ同形になっているが、同形である必要はない。しかして、マスク使用に先立って、一方の剥離シート3を剥がして粘着面2を露出させてマスク本体10の顔接面11に貼り、次いで粘着面2′に未だ仮着されている剥離シート3′を剥がして粘着面2′を、図4の如く、露出させれば、鼻と口とを囲むように顔の必要な部位に貼ることができる。
【0013】
前記本願補助具1の表裏粘着面2、2′は、シリコーンジェル層を用いて構成されてることが好ましい。シリコーンジェル層が好ましいのは、表裏が粘着面になっているとともに、人の顔の皮膚に粘着させて、生物学的に安定し、肌にやさしく、しかも、無毒性(毒性のない安心感)が期待できるからである。また、シリコーンジェル層は、特に、柔軟性があるため、頬が痩せて凹凸が目立ったり、皺が増えたりしてもその凹凸や皺間を埋めるように貼れるため、マスク本体1の鼻、口の前方空間内に導かれた空気や酸素または麻酔ガスなどを外に漏らすことがない。
【0014】
前記本願補助具1は、表裏粘着面2、2′を含む全厚が、図2(a)の如く、シリコーンジェル層で形成されている場合と、図2(b)の如く、補強薄膜材4を中間層にしたシリコーンジェル層になっている場合とがある。ここに、補強薄膜材4は、シリコーンジェルの形態安定性のために有効であり、この補強薄膜材4としては、通常、ポリエチレン薄膜材、発泡ポリエチレン薄膜材あるいは不織布薄膜材等を使用するが、柔軟性を損なわない限り、特に、材質的な制約はない。なお、表裏粘着面2、2′を含む粘着層には、経費的には塩ビ系の粘着剤が選ばれることもあるが、アクリル酸エステル共重合体を用いることもある。
【0015】
前記本願補助具1は、マスク本体10の顔接面11を、図3の如く、人の顔に密着(仮着)させるためのもので、図では鼻と口を覆うものを示しているが、鼻だけを覆うもの、顔全体を覆うものもある。いずれにしてもマスク本体10の顔接面11は柔軟な素材(例えば、軟質プラスチック材料等)により形成され、顔の対応部位に柔軟に接触できるように形状的にも工夫されている。
【0016】
前記マスク本体10は、口や鼻への圧迫感を無くすために、鼻、口の前方空間があり、該内部空間には、空気や酸素または麻酔ガスなどの供給源(図示せず)に連通させる導管12を備えるとともに、排気孔13を備えている。勿論、マスク本体10の用途によっては導管12を備えないものある。また、マスク本体10の内部空間に対応する部位を、例えば、不織布の如く通気性がある素材で作った場合には、前記排気孔13も不要になることもある。
【0017】
前記マスク本体10は、そのマスク上縁10′から延ばした腕片14の頂部に設けた額当板15の両端に連結した伸縮バンド16と、これに後頭部の交差部を介して連係した伸縮バンド16′の各先端部に設けた玉棒17をマスク側部10″に設けた玉受18に結合してマスク本体10を顔に適用できるようにしている。
【0018】
次に、マスク本体1の作用について説明する。まず、本願補助具1から剥離シート3を剥がして露出させた一面の粘着面2を、前記マスク本体10の顔接面11に仮着する。次に、顔接面11に仮着されている本願補助具1から剥離シート3′を剥がして露出させた粘着面2′を鼻と口とを囲むように人の顔に貼る。
【0019】
このように、前記マスク本体10が顔に貼られた状態では、マスク上縁10′から延ばした腕片14の頂部に設けた額当板15の両端に連結した伸縮バンド16と伸縮バンド16′との交差部を後頭部に回して固定しなくてもよい。換言すればマスク上縁10′から延ばした腕片14と、その頂部に設けた額当板15と、その両端に連結した伸縮バンド16と、これに交差部を介して連繋した伸縮バンド16′と、マスク側部10″に設けた玉受18は不要になる。
【0020】
前記本願補助具1から剥離シート3を剥がし、その一面の粘着面2をその粘着力を利用して前記マスク本体10の顔接面11に接着(固着)させた状態で市販し、そのマスク本体10を買った人が、マスク着用に際し、顔接面11側の、本願補助具1から剥離シート3′を剥がして自分の顔に適用するようにしてもよい。つまり、顔面に粘着できる粘着面を持つ人口呼吸器用マスクとして市販する場合もある。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本願補助具は、マスクの装着者に圧迫感や締め付け感などの負担をかけず、鼻隆の高さや幅に個人差があっても、また、頬や鼻周りが痩せて顔の凹凸が大きくなったとしても、常に、顔面に確実に密着でき、酸素等の漏れの生じないようにしたもので、医療分野において広く利用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本願補助具を示す平面図である。
【図2】本願補助具の断面図で、(a)は全厚が粘着層、(b)は補強薄膜材を中間層にした粘着層である。
【図3】マスク本体の着用状態を示す斜視図である。
【図4】マスク本体を顔接面側から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
1 本願補助具
2、2′ 表裏粘着面
3、3′ 剥離シート
4 補強薄膜材
10 マスク本体
10′ マスク上縁
10″ マスク側部
11 顔接面
12 導管
13 排気孔
14 腕片
15 額当板
16、16′ 伸縮バンド
17 玉棒
18 玉受
A 顔面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鼻、鼻と口、顔全体を覆うマスク本体の顔接面に一面が粘着でき、他面が顔面に粘着できる表裏粘着面を環状に形成し、該表裏粘着面に剥離シートを添付したことを特徴とする人口呼吸器用マスクの補助具。
【請求項2】
前記表裏粘着面を含む粘着材が、全厚シリコーンジェル層又は中間層に補強薄膜材を介装したシリコーンジェル層であることを特徴とする人口呼吸器用マスクの補助具。
【請求項3】
鼻、鼻と口、顔全体を覆うマスク本体の顔接面に表裏粘着面の一面を固定し、マスク着用に際し、表裏粘着面の他面に添付した剥離シートを剥がして顔面に粘着できるようにするとともに、表裏粘着面のうち、少なくとも顔面に触れる側の粘着材がシリコーンジェル層であることを特徴とする人口呼吸器用マスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−110143(P2011−110143A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267586(P2009−267586)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(504153451)株式会社オーキスメディカル (3)
【Fターム(参考)】