説明

人工乳首及びほ乳瓶

【課題】人工乳首をくわえたときに、くわえた口によって溝が塞がれない人工乳首及びほ乳瓶を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る人工乳首は、人工乳首本体と、前記人工乳首本体の下部から張り出したフランジと、前記フランジに形成し、空気をほ乳瓶内部に供給する供給部とを備える人工乳首であって、前記フランジに形成し、前記供給部から前記フランジの外周端に達する溝を備える。また、本発明に係るほ乳瓶は、前記の人工乳首を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工乳首及びほ乳瓶に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の人工乳首として、例えば、特許文献1には、ほぼ乳首形状の吸引部と、水平方向に伸長する哺乳瓶本体に取付けるためのフランジと前記フランジより立設され、前記吸引部底部に接続する胴部分とを有する乳首本体とよりなり、さらに前記フランジを表裏に貫通する吸入弁を有する乳首において、前記吸入弁より胴部分を通って吸引部底部まで空気溝を形成し、外部と吸入弁を連通したことを特徴とする乳首が開示されている。
【0003】
この人工乳首によれば、空気溝を形成することにより、ほ乳瓶内部に空気を供給しやすくなる。
【0004】
【特許文献1】特開2001−204796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記人工乳首では、空気溝が吸引部まで達しているので、ほ乳瓶の内容物を吸飲する吸飲者(例えば、乳児)が人工乳首をくわえたときに、くわえた口によって空気溝を塞いで、空気の供給がスムーズにいかない場合があった。これは、特に、ほ乳瓶本体が広口である場合にいえる。
【0006】
本発明は上述の点に鑑みなされたものであり、人工乳首をくわえたときに、くわえた口によって溝が塞がれない人工乳首及びほ乳瓶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の観点に係る人工乳首は、
人工乳首本体と、前記人工乳首本体の下部から張り出したフランジと、前記フランジに形成し、空気をほ乳瓶内部に供給する供給部とを備える人工乳首であって、
前記フランジに形成し、前記供給部から前記フランジの外周端に達する溝を備えることを特徴とする。
【0008】
また、前記溝は、前記供給部から前記フランジの外周端を通って前記フランジの側面下端に達してもよい。
【0009】
また、前記人工乳首本体は、吸飲部と、この吸飲部の下部につながる胴体部と、を有し、
前記供給部から前記胴体部を通って前記吸飲部の下部にまで達する第二の溝をさらに備えてもよい。
【0010】
本発明の第二の観点に係るほ乳瓶は、
上記いずれかの人工乳首を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る人工乳首及びほ乳瓶によれば、人工乳首をくわえたときに、くわえた口によって溝が塞がれない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本発明は下記の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で下記の実施形態及び図面に変更を加えることが出来るのはもちろんである。特に各部材の形状等は適宜変更できる。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係るほ乳瓶の一部正面図である。図2は、本発明の一実施形態に係るほ乳瓶の一部断面図である。図3は、本発明の一実施形態に係る人工乳首の要部斜視図である。
【0014】
ほ乳瓶1は、人工乳首10とキャップ20とほ乳瓶本体30とを備える。人工乳首10は、キャップ20を介して、ほ乳瓶本体30に装着される。これにより、ほ乳瓶1が形成される。
【0015】
人工乳首10は、人工乳首本体11と、フランジ13と、供給部15と、第一の溝12と、第二の溝14とを備える。キャップ20は、上面に形成した貫通孔21を備える。人工乳首10には、凹部17が形成されている。この凹部17に貫通孔の縁23を嵌め込むことにより、人工乳首10はキャップ20に装着される。
【0016】
ほ乳瓶本体30の開口近傍部31の側面とキャップ20の側部25の内側とには、それぞれ、ねじ山33とねじ山27が形成されている。人工乳首10が装着されたキャップ20は、ねじ山33とねじ山27とにより、ほ乳瓶本体30に装着される。このようにして、人工乳首10は、キャップ20を介して、ほ乳瓶本体30に装着される。なお、キャップ20の装着方法は、ねじ式の他、嵌め込み式のものでもよい。ほ乳瓶本体30は、一端閉口で、他端の開口がほ乳瓶本体の中間部よりも径の小さい、略円筒形状である。
【0017】
人工乳首本体11は、吸飲部11aと、この吸飲部11aの下部につながる胴体部11bとを有する。
【0018】
吸飲部11aは、略乳首形状に形成されている。吸飲部11aは、その頂部に貫通孔11aaを備える。貫通孔11aaは、円筒形状、断面十字形状、又は、断面Y字形状等の適宜の形状で形成される。貫通孔11aaは、ほ乳瓶1(ほ乳瓶本体30内部)の内容物(例えばミルク)の逆流を防止又は軽減する逆止弁としてもよい。ほ乳瓶1の内容物は、貫通孔11aaから吸飲される。
【0019】
胴体部11bは、吸飲部11aの下面内側に、円筒形状で形成されている。すなわち、胴体部11bの外周の径は、吸飲部11aの下端の外周の径よりも小さい。吸飲部11aと、胴体部11bと、後述のフランジ13とにより、人工乳首10には凹部17が形成される。胴体部11bの側面は、凹部の底を構成する。
【0020】
フランジ13は、人工乳首本体11(胴体部11b)の下部から張り出して形成されている。フランジ13は、ここでは、水平方向に張り出して形成されている。フランジ13は、キャップ20に併せた形状になっており、ここでは円環状に形成されている。
【0021】
フランジ13は、外周部13aの上部に形成した略円環状の凸部13bを備える。凸部13bは、キャップ20に当接する。また、フランジ13は、ほ乳瓶本体30の開口近傍部31の形状に合わせて形成した円弧形状の凸部13cを備える。凸部13cは、ほ乳瓶本体30に当接する。また、キャップ20は、縁23の下部に形成した凸部29を備える。凸部29は、フランジ13に当接する。凸部13b、凸部13c、及び、凸部29が他の部材に当接することにより、人工乳首10はしっかりと固定される。
【0022】
供給部15は、フランジ13に形成され、空気をほ乳瓶1内部(ほ乳瓶本体30内部)に供給する。供給部15は、ほ乳瓶1の内容物の逆流を防止する逆止弁である。供給部15を、逆止弁にすることにより、ほ乳瓶1の内容物の逆流を防止することができ、後述の第一の溝12又は第二の溝14に内容物が詰まり第一の溝12又は第二の溝14を塞ぐことを防止又は軽減できる。供給部は、下記の貫通孔15aのみでもよい。
【0023】
供給部15は、フランジ13を貫通する貫通孔15aと、この貫通孔15aを下側から覆うドーム状のドーム部15bとを備える。ドーム部15bには、線状、Y字状、又は、X字状の切れ込みが形成されている。ドーム部15bの切れ込みは、通常時には閉じており、ほ乳瓶1の外部の空気をほ乳瓶1に供給するときに開く。このようにして、供給部15は、逆止弁となる。なお、供給部15は、他の形状の逆止弁としてもよい。
【0024】
第一の溝12は、フランジ13に形成され、供給部15からフランジ13の外側に向かい、フランジ13の外周端に達する。第一の溝12は、フランジ13の表面側から見て、直線状に形成されるが、曲線状、又は、折れ線状等に形成してもよい。第一の溝12は、人工乳首10の外部(フランジ13の外部、例えば、フランジ13の側面の外側)と供給部15とを連通する。この第一の溝12は、凸部13b等により上部が覆われていてもよい。外周部13aにも溝が形成されているため、第一の溝12の底面は水平に形成されている。この底面は、段差があっても良い。第一の溝12は、空気を供給部15に供給する空気溝である。
【0025】
第一の溝12の断面形状は矩形、U字形、V字形又は半円形その他の形状とすることができる。断面形状の寸法の一例を以下に示す。なお、断面形状の寸法は、人工乳首の材質及び形状等によって変更してもよい。下記の寸法は、あくまで一例であり、下記の寸法以外の寸法を採用してもよい。矩形の場合、深さ(フランジ13の表面からの高さ。凸部13bの表面からの高さではない。以下同じ。)は0.2〜0.8mmであり、幅は1〜3mmである。U字形の場合、深さは0.2〜0.8mmであり、幅は1〜3mmである。深さが0.2mm未満では、人工乳首10を装着した場合に隙間がなくなる恐れがあり、0.8mmを超えると内容物漏れの可能性がある。V字形の場合、断面二等辺三角形の一辺の長さは1.2〜3.0mmであり、その中心角は45〜100度である。45度以下では人工乳首10に亀裂が生じる可能性がありまた洗浄が難しくなる。半円形の場合、半径は0.4〜1.5mmである。0.4mm以下では空気の供給が不足し、1.5mmでは内容物の漏れの可能性がある。なお、第一の溝12の深さは一定でなくても良い。
【0026】
人工乳首10をキャップ20を介してほ乳瓶本体30に装着した場合、第一の溝12によって、フランジ13の側面かつキャップ20の内側に開口部12aが形成される。
【0027】
吸飲者が、吸飲部11aをくわえて吸飲すると、キャップ20とほ乳瓶本体30との隙間(例えば、ねじ山33とねじ山27の隙間)から空気が入り込む。キャップ20とほ乳瓶本体30との隙間から入り込んだ空気は、フランジ13の側面とキャップ20の内側の間を通って開口部12aに入り込み、第一の溝12を通って供給部15に供給される。供給部15に供給された空気は、供給部15を介してほ乳瓶1内部に供給される。
【0028】
フランジ13の外周端に達する第一の溝12を人工乳首10のフランジ13に形成することにより、人工乳首10をキャップ20を介してほ乳瓶本体30に装着した場合に開口部12aがキャップ20の内側に形成されるため、吸飲者が吸飲部11aをくわえたときに、吸飲者の口により開口部12a、すなわち、第一の溝12が塞がれることがない。このため、ほ乳瓶1内部への空気の供給がスムーズにいかない不都合を防止又は軽減できる。また、本実施形態のように、第一の溝12を人工乳首10に形成することにより、吸飲時において、空気の供給路が第一の溝12により確保できるため、ほ乳瓶1外部の空気をキャップ20とほ乳瓶本体30との隙間から供給部15に供給し易くなり、ほ乳瓶1内部への空気の供給がスムーズになる。
【0029】
なお、第一の溝12は、図4(a)及び(b)のような形状にしてもよい。ここで、図4(a)及び図4(b)は、本発明の他の実施形態に係る人工乳首の要部斜視図である。なお、符号は、第一の溝以外、同じ符号を付して説明する。
【0030】
図4(a)では、第一の溝112は、供給部15からフランジ13の外周端に達しているが、第一の溝112の底面に段差が設けられている。すなわち、外周部13aにおいて、外周部13a(図2参照)に溝が形成されずに、凸部13bに溝が形成されて、全体として、第一の溝112が形成されている。このように形成された第一の溝112は、人工乳首10の外部と供給部15とを連通していない。しかし、凸部13bとフランジ13における外周部13a以外の部分とにより形成される段差で空間が出来るため、人工乳首10の外部から入り込む空気は第一の溝112及び前記空間を通って供給部15に供給される。なお、凸部13bに形成した溝と、フランジ13の外周部13a以外の部分に形成した溝とは、連続的に位置せずに(例えば一直線状に位置せずに)、互いにずれていても良い。このように不連続な溝でも、途中に前記のような空間があれば、全体として、供給部15からフランジ13の外周端に達する第一の溝112になる。ただし、吸飲者の吸飲等により人工乳首10が変形した場合に、キャップ20の内側とフランジ13の表面等が密着して前記空間が潰れ、空気の供給がスムーズにいかない場合もある。他の説明は、第一の溝12の説明に準じる。
【0031】
図4(b)では、第一の溝212は、供給部15からフランジ13の外周端に達しているが、より具体的には、供給部15からフランジ13の外周端を通ってフランジの側面下端に達している。このように第一の溝212を形成しても、第一の溝212は、人工乳首10の外部(フランジ13の外周端の下側)と供給部15とを連通する。第一の溝212の開口部は、フランジ13の裏面の外周端部に形成される。このため、フランジ13の側面とキャップ20の内側とが密着しても、フランジ13の裏面に形成される開口部、すなわち、第一の溝212は塞がれない。他の説明は、第一の溝12の説明に準じる。
【0032】
第二の溝14は、供給部15から胴体部11bを通って吸飲部11aの下部にまで達する。この溝の断面形状等は、第一の溝12に順じる。ここでは、第二の溝14は、人工乳首10の外部(ほ乳瓶1外部)と供給部15とを連通する。第二の溝14は、供給部15から人工乳首10の中心に向かい、胴体部11bを上昇して、吸飲部11aの下面を人工乳首10の中心と反対側に向かって、吸飲部11aの下端外周端にまで達する。第二の溝14の形状等は、第一の溝12の説明に準じる。
【0033】
人工乳首10をキャップ20を介してほ乳瓶本体30に装着した場合、第二の溝14により、吸飲部11aの外周部(下端外周端)に開口部14aが形成される。
【0034】
吸飲者が、吸飲部11aをくわえて吸飲すると、開口部14aからほ乳瓶1外部の空気が入り込む。開口部14aに入り込んだ空気は、第二の溝14を通って供給部15に供給される。供給部15に供給された空気は、供給部15を介してほ乳瓶1内部に供給される。
【0035】
本実形態においては、第二の溝14を人工乳首10に形成することにより、吸飲時において、空気の供給路が第二の溝14により確保できるので、ほ乳瓶1外部の空気を供給部15に供給し易くなり、ほ乳瓶1内部への空気の供給がスムーズになる。
【0036】
また、第一の溝12と、第二の溝14と、を人工乳首10に形成することにより、空気の供給路を複数確保でき、より空気をほ乳瓶1内部に供給しやすくなる。また、一方の溝が塞がれても、他方の溝により、空気を供給することが可能となる。また、第一の溝12又は212を人工乳首10に形成することにより、キャップ20を強く締めても、供給部15への空気の供給が阻害されにくい。
【0037】
キャップ20及びほ乳瓶本体30は、硬質合成樹脂等の適宜の材料で形成することができる。また、人工乳首10は、シリコーンゴムその他のゴムであって、人体特に乳幼児に対し安全度の高いゴムを材料で形成できる。また人工乳首10のゴムの硬さは、JIS硬度25〜35であることが好ましい。硬度25以下では人工乳首が変形しやすく、硬度35以上では乳幼児が吸飲しにくいからである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態に係るほ乳瓶の一部正面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るほ乳瓶の一部断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る人工乳首の要部斜視図である。
【図4】(a)及び(b)は、本発明の他の実施形態に係る人工乳首の要部斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1 ほ乳瓶
10 人工乳首
11 人工乳首本体
11a 吸飲部
11aa 貫通孔
11b 胴体部
12 第一の溝
12a 開口部
13 フランジ
13a 外周部
13b 凸部
13c 凸部
14 第二の溝
14a 開口部
15 供給部
15a 貫通孔
15b ドーム部
17 凹部
20 キャップ
21 貫通孔
23 縁
25 側部
27 ねじ山
30 ほ乳瓶本体
31 開口近傍部
33 ねじ山
112 第一の溝
212 第一の溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工乳首本体と、前記人工乳首本体の下部から張り出したフランジと、前記フランジに形成し、空気をほ乳瓶内部に供給する供給部とを備える人工乳首であって、
前記フランジに形成し、前記供給部から前記フランジの外周端に達する溝を備えることを特徴とする人工乳首。
【請求項2】
前記溝は、前記供給部から前記フランジの外周端を通って前記フランジの側面下端に達していることを特徴とする請求項1に記載の人工乳首。
【請求項3】
前記人工乳首本体は、吸飲部と、この吸飲部の下部につながる胴体部と、を有し、
前記供給部から前記胴体部を通って前記吸飲部の下部にまで達する第二の溝をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の人工乳首。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の人工乳首を備えることを特徴とするほ乳瓶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−136774(P2010−136774A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313762(P2008−313762)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(500434196)コーシンベビー株式会社 (1)
【Fターム(参考)】