説明

人工呼吸器用制御弁

【課題】人工呼吸器の流量制御および流量調節を行う弁について、流量の精度を高める。
【解決手段】ハウジング11と、このハウジング内でハウジングの縦軸の周りを回動可能に配置された回動弁12とを備え、この回動弁の回動によって、貫通孔11dが完全にまたは部分的に閉じることができる。回動弁12は、円錐形のシール面12cを有しており、このシール面は、対応して構成されたハウジング11の支持面11fと相互作用し、貫通孔11dが、シール面12cの領域内に配置されている。回動弁12は、アクチュエータ、好適にはステッピングモータ17によって比例駆動され、貫通孔11dは、回動弁12側において、シールエッジ11fによって包囲されており、このシールエッジの縁の高さは、弁の閉鎖方向に向かって徐々に高くなり、回動弁12は、この回動弁の軸方向に移動可能に、上記アクチュエータに連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工呼吸器の流量制御および流量調節用の弁に関する。
【背景技術】
【0002】
人工呼吸器は、一定の場所で使用する場合(例えば、診療所または家庭で使用する場合)だけでなく、移動先で使用する場合(例えば、救急隊)においても用いられている。ここで極めて重要なことは、人工呼吸器が、信頼性を伴って、且つ、故障することなく動作することである。このような人工呼吸器が動作している際に周囲のじゃまにならないようにするために、動作中の人工呼吸器は、可能な限り静かでなければならない。また、特に子供および未熟児の呼吸に関すれば、呼気をわずかな量の適正量に正確に調整可能であることが不可欠である。さらに、気管に密閉して設置されるチューブによる侵襲的人工呼吸の際には、吸気圧が一定の基準に到達した後、肺に酸素をより良好に送り込むために小休止が行われる。この小休止の間は、人工呼吸器から排出される漏洩流を阻止することが重要である。したがって、人工呼吸器の空気源は、患者に対して密閉されている必要がある。しかし、人工呼吸器の空気源を患者に対して密閉させることは比較的困難である。なぜなら、平滑に動作させると共にヒステリシスを回避するには、可能な限り力をかけずに行わなければならないからである。これに関して、ヒステリシスだけが問題を引き起こすのではなく、弁を調節する速度も問題を生じさせる。なぜなら弁は、硬ければ硬いほど、且つ、圧締圧が大きければ大きいほど、慣性および摩擦によってゆっくりと応答するからである。
【0003】
US第6,615,831号からは、3/2方弁を有する人工呼吸器が知られている。この3/2方弁は、磁気コイルによって軸方向に移動可能な制御弁を有している。前記制御弁は、その最終位置において、圧力生成器から来る吸気用の貫通孔を開口させるか、または、前記貫通孔を閉口させると同時に別の貫通孔を開口させ、これによって、圧力生成器の空気消費量を最小にすることが可能である。しかしながら、この弁は、位置依存性が極めて強いと共に、制御弁が軸方向に移動するために必要な半径方向隙間によって、閉鎖された状態でも密閉されない。
【0004】
EP第1 177 810 B1号には、弁について記載されており、この弁は、その縦軸の周りを回動可能な回動弁体を有している。この弁は、その周囲に、少なくとも1つの縦スリットを有しており、前記縦スリットは、回動弁体を取り囲むハウジングの区域の対応する開口部と揃うことが可能である。さらに、回動弁体の固定されていない側の正面には、制御カムが設置されている。この制御カムによって、上記開口部を部分的にのみ露出させることも可能である。この弁も、閉鎖された状態で決して完全に密閉されないという欠点を有している。上記弁の可動性を確保するには、所定の半径方向隙間を有する回動弁体を、上記ハウジングの区域の中にはめ込む必要がある。この際に形成される輪形隙間を通って一部の呼吸空気が漏れ出るため、所望の投与量に悪影響を与える。
【0005】
GB第288 403号からは、気体または別の液体用の弁または滑り弁が知られている。この弁は、円錐形の座部を備えるハウジングと、外側から回転させることによって操作可能な円錐形の弁体とを有している。前記弁体を回転させると、ハウジングの円錐形の座部内にある貫通孔が前記弁体の開口部と揃うため、媒体が弁を通って流れることが可能になる。しかし、構造によっては比較的高い摩擦抵抗が生じる。摩擦抵抗が高いと、操作が妨害されると共に、弁の可動性の制御が妨げられる。さらに、この弁でも、完全な密閉を確保することは不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6615831号明細書
【特許文献2】欧州特許第1177810号明細書
【特許文献3】英国特許第288403号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の課題は、安全に機能すると共に流動抵抗がわずかであり、可動性に優れた、患者の呼吸反射に素早く反応し、適性量の正確な流量を供給可能な、且つ、閉鎖した状態において弁の高い密閉度を実現可能な、人口呼吸器、または、人工呼吸器用弁を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の人工呼吸器の流量制御および流量調節用の弁は、ハウジングと、前記ハウジング内でハウジングの縦軸の周りを回動可能に配置された回動弁とを備えており、前記回動弁が回動することによって、少なくとも1つの貫通孔が、完全にまたは部分的に閉口可能である。前記回動弁はまた、円錐形のシール面を有しており、前記シール面は、対応して構成された上記ハウジングの支持面と相互作用する。上記貫通孔は、このシール面の領域内に配置されており、上記回動弁は、アクチュエータ、好適にはステッピングモータによって比例駆動される。
【0009】
上記課題を、本発明に従って、貫通孔の回動弁側が、シールエッジによって取り囲まれていること、および、前記回動弁が、回動弁の軸方向に移動可能に、アクチュエータに連結されていることによって解決する。前記シールエッジの縁の高さは、弁の閉鎖方向に向かって徐々に高くなっている。ここで、弁が閉じられた状態では、平面状の密閉が形成される。弁を開くと、回動弁は、シールエッジから浮上し、ここでもさらにシール隙間が形成される。円錐形の弁のハウジング上においてシールエッジが徐々に高くなっていることによって、回動弁は、閉鎖方向に回動されるにつれて、ますます強く押さえつけられ、このため弁はより一層密閉される。この回動弁の軸方向の可動性によって、回動弁は、回動時に、徐々に高くなっているシールエッジに反して、軸方向に避けることが可能である。これによって、呼吸反応に対する応答時間および生じる摩擦を最小化することが可能であると共に、弁の可動性を大幅に向上させることが可能である。また、こうしたことが可能であるため、場合によっては、貫通孔を小さくすることが可能であると共に、流量を弁によって正確に制御することが可能である。
【0010】
特に、例えば消毒のための取り付けおよび取り外しが簡易であることを特徴とする本発明の一形態では、アクチュエータが駆動軸を有しており、回動弁と駆動軸とは、相互に関連し合う端部において嵌合可能なように構成されている。取り外し可能な差込コネクタによって、取り付けは非常に容易になる。なぜなら、互いに連結し合う部分だけを嵌め合うだけでよく、また、極めて容易に、且つ、工具を用いることなく、再び分離することが可能だからである。
【0011】
軸方向に移動可能な、回動弁および駆動軸の連結の有効な一形態では、一方の端部が少なくとも1つのスリットを備え、他方の端部が、前記スリットの中に挿入可能な、回動弁の縦軸の回りを回動する運動を伝動する、少なくとも1つのスライド素子を備えている。ここで、2つの上記端部が嵌合した状態では、スリットの中に挿入されたスライド素子の自由端とスリットの底面とは、貫通孔が開いた状態において離間されており、スライド素子は、軸方向に移動可能にスリット内に配置されている。このようにして、連結の滑りばめを実現可能であり、このため、回動弁の軸方向の動きは、この連結によっては妨げられないし、または、悪影響を受けることもない。
【0012】
構成の簡易性および取り付け特性の良好性に優れた本発明の有効な一実施形態では、スライド素子は薄板として構成されている。この薄板は、スリットを備える端部に嵌合可能な端部の中に挿入可能であることが有効であり、薄板はこの端部の中において保持されることが可能である。
【0013】
本発明の有効な他の一実施形態では、回動弁は、軸方向において、中心点支持により、有利には縦中心軸内に配置された球により、ハウジング上で支えられている。回動弁とハウジングとの間の点支持では、摩擦損失が少ししか生じないため、わずかな作動力および駆動モーメントで、弁の高い可動性を実現することができる。
【0014】
さらに、ハウジングは、流入する呼吸空気用の横方向の吸込管と、軸方向に回動弁に接続されている、呼吸空気用の吐出管とを有している。ここで、シール面は、吸込管と吐出管との間に配置されている。本発明の本形態では、弁を閉鎖する際に、吸気および呼気の余剰圧力によって、回動弁が前記シール面に対して押さえつけられる。このため、漏れ損失は事実上回避される。磨耗による回動弁および対応する支持面の劣化は、自動的に補償される。
【0015】
シール面の円錐は、流れ方向に対向してテーパー状に構成されていることが都合がよい。テーパー状に形成されているため、吸気または呼気が前記円錐に吹き付けられると、弁内の気流は均一に分配され、生じる流動抵抗は比較的わずかになる。
【0016】
シール面の円錐角(円錐の中心軸と母線のなす角)は、30°と60°との間、有利には約45°であることが有効である。この角度範囲によって、比較的短く且つ小型の弁を構成することが可能である。ここに記載した角度範囲はまた、有利な流量条件を生じさせ、乱流を大幅に回避する。
【0017】
貫通孔は、回動弁を閉じる方向に回動させる際の流路断面が累進的にに減少されるように、および/または、複数の貫通孔が設けられるように構成されていることが有効である。閉鎖工程が終わるまでには、わずかな流路断面が存在するだけになり、このため、弁を完全に閉鎖した場合にシステム内に生じる衝撃圧力は大幅に回避される。孔が複数個ある場合、孔の大きさはそれぞれ異なっていてもよく、これら孔の大きさは、閉鎖工程が終わりに近づくにつれて小さくなる。半径方向に複数の孔を並べて配置して、これらの半径方向に並べて配置した孔の数を閉鎖工程が終わりに近づくにつれて減少させることによっても、同一の効果を得ることが可能である。
【0018】
貫通孔は、回動弁を閉じる方向において、楔形且つテーパー状に構成されていることが都合がよい。楔形をしていることによって、弁を閉じる際の、残りの流路断面が、より早くまたはゆっくりと、縮小または拡大するように作用し得る。楔形の貫通孔の縁部は、湾曲して構成されていることが有効である。
【0019】
弁の可動性を向上させると共に、閉鎖状態において弁を良好に密閉するには、相互作用し合うハウジングおよび/または回動弁のシール面の円錐半径が、円周の一部に亘って、弁を閉鎖する方向と反対の方向に一定に増大していることが有効である。つまり、隣り合った回動弁のシール面とハウジングのシール面とは、正確な円錐表面ではなく、この特別な形態では、円錐表面とわずかに相違している。弁を閉鎖した状態では、シール面は、平面状に重なり合って支えられ、極めて高度の密閉を形成する。弁を開くと、シール隙間が形成される。このシール隙間は、流路断面をさらに拡大させて、より大きな流量が弁を通ることを可能にする。
【0020】
回動弁が自動的に初期位置に戻るように、回動弁は、少なくとも1つのねじりバネの復元力に抗して回動可能であることが有効である。したがって、この回動型アクチュエータの電源が切られた状態が、規定された初期位置である。よって停電時には、弁は、有利には自動的に、完全に開いた位置にあるか、または、前記開いた位置に移行するため、患者の自然呼吸は妨げられない。
【0021】
本発明に係る弁は、患者を人工的に呼吸させるため、または、患者の呼吸を支援するための自動人工呼吸器において、空気入口と、空気供給源と、比例制御可能な少なくとも1つの制御弁と、前記制御弁を駆動するための圧力を測定するセンサ、および前記制御弁を駆動するための流量を測定するセンサと共に用いられることが都合がよい。
【0022】
この種の人工呼吸器の空気供給源は、全呼吸サイクルに亘って一定の回転速度で回転する送風機として構成されていることが有効である。このような送風機は、動作時に極めて静かである点、および、雑音レベルが低い点において優れている。ここでは、呼吸の調節は、弁の駆動によって行われる。
【0023】
本発明の別の形態を図面に示すと共に、従属請求項に記載した。参照番号表は、特許請求の範囲と同様に、本開示の一部を構成するものである。
【0024】
図面は、互いに関連付けて包括的に示している。同一の参照番号は、同一の部材であることを意味するものであり、異なる記号を付した同一の参照番号は、機能的に同一または類似の部材を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る人工呼吸を概略的に示す図である。
【図2】本発明に係る弁を概略的に示す斜視図である。
【図3】回動弁とアクチュエータとの間の軸方向に移動可能な連結を有する、本発明に係る弁を示す断面図である。
【図4】回動弁を取り除いた、切断線A−Aに沿って切断した図2に示した弁のハウジングを示す断面図である。
【図5】切断線B−Bに沿って切断した、図3に示した弁を示す断面図である。
【図6】閉鎖した状態の、図5に係る弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を、図面を参照しながら、模式的且つ典型的に、さらに詳細に説明する。
【0027】
図1に概略的に示した、保護用の覆い10を備える人口呼吸器は、空気入口1と空気供給源2とを有している。空気供給源2は、送風機またはコンプレッサとして構成されていることが都合がよい。しかしながら、空気供給源2として、内部または外部の蓄圧器、あるいは、外部の圧縮空気供給器を用いてもよい。上部の、患者の吸気に利用されるラインには、調節可能な吸気制御弁3aと、吸気用流量センサ4aと、吸気用圧力センサ5aとが設置されている。このラインの終端部では、吸気管6が患者まで導かれている。復路では、呼気管7が、患者から覆い10の中まで導かれている。この下部の、呼気を制御するラインにも、呼気用の圧力センサ5bと、呼気用の流量センサ4bと、調節可能な呼気制御弁3bとが設置されている。流量センサ4a,4bおよび圧力センサ5a,5bの測定値は、常に制御部8に供給され、制御部8において、これらの測定値は、患者の吸気または呼気のために制御弁3a、3bを調節するために利用される。最終的に、吐き出された息は、空気出口9を介して外部に達する。
【0028】
上記人工呼吸器は、外部の配電網に直接接続されていてもよいし、あるいは、内部または外部の電池によって動作されてもよい。
【0029】
図2〜6に明示した、本発明に係る制御弁の実施形態は、回動弁12を備えるハウジング11から構成されており、回動弁12は、前記ハウジングに回動可能に搭載されている。ハウジング11は、軸に対し側方の吸込管11aと、軸方向において回動弁12に接続されている吐出管11bとを備えている。吸込管11aと吐出管11bとの間には、仕切り壁11cが存在している。この仕切り壁11cは、円錐形に構成されており、円錐角(円錐の中心軸と母線のなす角)は、約45°となっている。仕切り壁11cには、楔形に構成された貫通孔11dが設けられている。回動弁12は、管状のシャフト12aと、前記シャフトに接続された漏斗形部12bとから構成されている。漏斗形部12bの内側は、ハウジング11の仕切り壁11cにある支持面11eと共に、シール面12cを形成している。図6に示す弁が閉鎖された状態では、このシール面12cが貫通孔11dを閉じる。
【0030】
図3から明らかなように、回動弁12は、軸方向において、例えば凸状の支点盤または球13を介して、ハウジング11の中央に低摩擦で支えられている。球を用いることによって、両部材11、12に、縦中心軸の領域において中心点支持が生じ、このため、摩擦を極めてわずかに抑えることが可能である。
【0031】
回動弁12のシャフト12aを取り囲むねじりばね14は、弁に電源が供給されていない状態において、回動弁12を規定された初期位置(例えば、「開」または「閉」)で保持するものとして用いられる。さらに、ねじりばね14は、漏斗形部12bを軸方向に仕切り壁11cに対して押さえつけることによって、回動弁12を密閉した状態で保持することを支援する。吐出管11b側でない側面では、カバー15が、ハウジング11に接続されている。カバー15を密閉するために、有利にはOリングとして構成された密閉リング16が用いられている。
【0032】
カバー15には、アクチュエータとして用いられるステッピングモータ17が固定されている。ステッピングモータ17は、駆動軸17aによって回動弁12を回動駆動させるためのものである。弁を閉鎖する際に、弁の後方に余剰圧力が生じる。この余剰圧力は、回動弁12の漏斗形部12bまたはシール面12cを、ハウジング11の支持面11eに対して軸方向に押さえつける。これによって、実際には漏れ損失は生じない。このため、例えば送風機として構成された空気供給源を、1つの完全な呼吸サイクルに亘って、一定の回転速度で動作させることが可能である。前記完全な呼吸サイクルとは、吸込みと吐出しとから構成されるサイクルである。従って、この呼吸サイクルの全ての動作を、制御弁だけで実現することが可能になる。
【0033】
図4および5に明示したように、貫通孔11dは楔形に構成されており、湾曲した縁部を有している。このため、例えば累進的に閉じるまたは開くといった、弁の特定の特性を実現可能である。特にこれによって、圧力ピークを除去または回避することが可能である。
【0034】
弁を閉鎖するために、ねじりばね14の力によって、回動弁12を、図6に示した閉鎖位置に回動させる。必要な空気の量によっては、回動弁12の回動角度を低減させることによって、貫通孔11dを部分的にのみ開口させてもよい。
【0035】
貫通孔11dは、円形のシールエッジ11fによって取り囲まれている。シールエッジ11fの縁の高さは、回動弁12が閉じる方向に向かって徐々に高くなっていることが都合がよい。これによって、回動弁12用の突合せ斜面が形成される。このため、弁が閉鎖した状態において、特に良好な密閉が得られる。弁を開く際には、回動弁12がシールエッジ11fから浮上するため、更なるシール隙間が開口し、弁の処理能力は増大する。
【0036】
図4〜6に明示した、両側面に楔型の貫通孔11dを1つだけ備えている実施形態の代わりに、この貫通孔を、多数の別個の孔として構成してもよい。この場合、貫通孔は、一方の側面において、輪となったシールエッジによって包囲されていることが可能である。この場合、多数の孔は、閉鎖方向に進むにつれて流路断面が累進的に縮小するように、配置されている。
【0037】
本発明では、回動弁12は、アクチュエータに、取り外し可能に、且つ、回動弁12の軸方向に移動可能に連結されており、回動弁12と駆動軸17aとは、相互に関連し合う端部12dおよび17bにおいて、嵌合可能に構成されていてよい。ここでステッピングモータ17は、軸方向において固定して配置されている。
【0038】
例えば、駆動軸17aはスリット18を有し、回動弁12は前記スリットの中に挿入可能なスライド素子を有している。スライド素子は、薄板19として構成されていることが都合がよい。この薄板は、回動弁12のシャフト12aの端部12dの中に挿入可能であり、前記端部の中において保持される。つまり薄板19は、例えば、シャフト12aの側面に設けられたスリットを通って挿入されてもよい。薄板19を固定するために、薄板19は、背中合わせとなる面に、弾力性のある突起部を有していてよい。この突起部は、シャフト12aの側面に設けられたスリットの縁部に重なっている。
【0039】
当然ながら、スライド素子を、回動弁12のシャフト12aと共に1つの部材として形成してもよい。スライド素子とスリット18とは共に、駆動軸17aにおける、回動弁12用の滑りばめを形成する。貫通孔11dが開いた状態において、薄板19の自由端とスリット18の底面18aとは離間されており、このため、貫通孔11dを閉鎖する際に回動弁12が軸方向に移動可能になる。貫通孔11dを閉鎖する際に、回動弁12が軸方向に移動する方向を、図3では、矢印で示しており、これは、回動弁12の縦軸の方向に移動させることに相当する。
【0040】
本発明に係る、回動弁12とステッピングモータ17との連結の構成によって、少なくとも3つの有効な効果がもたらされる。
1.回動運動が、バックラッシュ無しに、ステッピングモータ17から回動弁12に伝動される。
2.シールエッジ11fが徐々に高くなっているため、回動弁12はばね14の力に対して軸方向に移動可能であり、このため、弁がわずかに開いている時でも、弁が完全に閉じている、閉鎖膜への圧力またはばね荷重が最も大きい時でも、いずれの場合にも、最適な密閉が提供される。
3.連結の左部および右部を嵌め合うだけでよいため、取り付けが極めて容易である。
【0041】
ハウジング11および回動弁12は、プラスチックから構成されていることが有効である。プラスチックの比重は比較的少なく、このため、移動可能な部分、特に回動弁12の自重も少ない。これは他方で、前記移動可能な部分の高い可動性を可能にする。プラスチックのさらなる利点は、耐久性があること、および、極めて良好に殺菌可能であることである。
【符号の説明】
【0042】
1 空気入口、2 空気供給源、3a 吸気制御弁、3b 呼気制御弁、4a 吸気用流量センサ、4b 呼気用流量センサ、5a 吸気用圧力センサ、5b 呼気用圧力センサ、6 吸気管、7 呼気管、8 制御部、9 空気出口、10 覆い、11 ハウジング、11a 吸込管、11b 吐出管、11c 仕切り壁、11d 貫通孔、11e 支持面、11f シールエッジ、12 回動弁、12a シャフト、12b 漏斗形部、12c シール面、12d 端部、13 凸状の支点盤、14 ねじりばね、15 カバー、16 密閉リング、17 ステッピングモータ、17a 駆動軸、18 スリット、18a 底面、19 薄板、19a 自由端。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(11)と、上記ハウジング内で上記ハウジングの縦軸の周りを回動可能に配置された回動弁(12)とを備え、
上記回動弁(12)が回動することによって、少なくとも1つの貫通孔(11d)が、完全にまたは部分的に閉じることが可能であり、
上記回動弁(12)は、円錐形のシール面(12c)を有しており、上記シール面(12c)は、対応して構成された上記ハウジング(11)の支持面(11e)と相互作用し、
上記貫通孔(11d)は、上記シール面(12c)の領域内に配置されており、上記回動弁(12)は、アクチュエータによって比例駆動される、人工呼吸器(1)の流量制御および流量調節用の弁において、
上記貫通孔(11d)は、上記回動弁(12)側において、シールエッジ(11f)によって取り囲まれており、上記シールエッジ(11f)の縁の高さは、上記弁の閉鎖方向に向かって徐々に高くなり、上記回動弁(12)は、上記回動弁(12)の軸方向に移動可能に、上記アクチュエータに連結されていることを特徴とする弁。
【請求項2】
上記アクチュエータは、駆動軸(17a)を備え、上記回動弁(12)と上記駆動軸(17a)とは、相互に関連し合う端部(12d・17d)において、嵌合可能なように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の弁。
【請求項3】
一方の上記端部(17d)は、少なくとも1つのスリット(18)を備え、他方の上記端部(12d)は、上記スリット(18)の中に挿入可能な、上記回動弁(12)の縦軸の回りを回動する運動を伝動する、少なくとも1つのスライド素子を備え、上記端部(12d・17d)が嵌合した状態では、上記スリット(18)の中に挿入した上記スライド素子の自由端と上記スリット(18)の底面(18a)とは、上記貫通孔(11d)が開いた状態において離間されており、上記スライド素子は、軸方向に移動可能に上記スリット(18)内に配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の弁。
【請求項4】
上記スライド素子は、薄板(19)として構成されていることを特徴とする、請求項3に記載の弁。
【請求項5】
上記薄板(19)は、上記スリット(19)を備える端部(17a)に嵌合可能な端部(12d)の中に挿入可能であり、上記端部(12d)の中において保持されることを特徴とする、請求項4に記載の弁。
【請求項6】
上記ハウジング(11)は、流入する呼吸空気用の横方向の吸込管(11a)と、軸方向に上記回動弁(12)に接続されている、呼吸空気用の吐出管(11b)とを有しており、上記シール面(12c)は、上記吸込管(11a)と上記吐出管(11b)との間に配置されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の弁。
【請求項7】
上記回動弁(12)は、軸方向において、中心点支持により上記ハウジング(11)の上で支えられていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の弁。
【請求項8】
上記シール面(12c)の円錐は、流れ方向に対向して、テーパー状に構成されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の弁。
【請求項9】
上記シール面の円錐角は、30°と60°との間、有利には約45°であることを特徴とする、請求項1または2に記載の弁。
【請求項10】
上記貫通孔(11d)は、上記回動弁(12)を閉鎖する方向に回動させる際に、流路断面が累進的に減少されるように、および/または、複数の貫通孔が設けられるように構成されていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の弁。
【請求項11】
1つまたは複数の上記貫通孔(11d)は、上記回動弁(12)を閉鎖する方向において、楔形且つテーパー状に構成されていることを特徴とする、請求項4に記載の弁。
【請求項12】
相互作用し合う上記ハウジング(11)および/または上記回動弁(12)のシール面の円錐半径は、円周の一部に亘って、弁を閉鎖する方向に対向して連続的に増大していることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の弁。
【請求項13】
上記回動弁(12)は、少なくとも1つのねじりばね(14)の復元力に抗して回動可能であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の弁。
【請求項14】
空気入口(1)と、空気供給源(2)と、比例制御可能な少なくとも1つの制御弁(3a、3b)と、上記制御弁(3a、3b)を駆動するための圧力を測定するためのセンサ(5a、5b)および流量を測定するためのセンサ(4a、4b)とを備えた、患者を人工的に呼吸させるため、または、患者の呼吸を支援するための人工呼吸器において、
上記制御弁は、請求項1〜13のいずれか1項に記載の弁であることを特徴とする人工呼吸器。
【請求項15】
上記空気供給源(2)は、全呼吸サイクルに亘って一定の回転速度で回転する送風機として構成されていることを特徴とする、請求項14に記載の人工呼吸器。

【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−104357(P2011−104357A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228168(P2010−228168)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(504080548)アイエムティー メディカル アクチエンゲゼルシャフト (4)