説明

人工呼吸器用加温加湿装置

【課題】患者の呼吸を補助する際、人工呼吸器から適切な温度、相対湿度をもった気体流を常時供給する。
【解決手段】人工呼吸器100から供給される気体流を加温加湿する加温加湿部11と、加温加湿部11に接続された吸気経路12と、吸気経路12の加温加湿部11側の気体流の温度を検出する温度検出部13と、吸気経路12の患者口元側の気体流の温度と相対湿度とを検出する温度湿度検出部14とを有することを特徴とする人工呼吸器用加温加湿装置10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者に適切な温度、相対湿度をもった気体流を供給する人工呼吸器用加温加湿装置である。
【背景技術】
【0002】
患者の呼吸を補助する際、人工呼吸器から適切な温度、相対湿度をもった気体流を供給する必要がある。従来の人工呼吸器は吸気経路に温度センサーを設置した人工呼吸器用加温加湿装置を用いていたが、気体流の温度のみ監視し、制御していたことから、患者に供給する気体流の相対湿度を正確に検知することができず、チャンバの空焚き等によって、乾燥した気体流を患者に供給することにより、患者の気管、気管支を損傷するおそれがある。そこで、特許文献1には、患者口元付近に湿度センサーを配置することにより、供給される気体流の相対湿度を監視し、相対湿度が所定閾値以下で警報を発生させる人工呼吸器用警報装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−57493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、患者に供給される気体流が適切な相対湿度であったとしても、その気体流の温度が適切であるか否かを検出することは困難であるため、患者に低温、又は高温の気体流を供給するおそれもある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、患者に供給する気体流の温度、相対湿度を監視することにより、患者に適切な温度、相対湿度をもった気体流を確実に供給することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の人工呼吸器用加温加湿装置は、人工呼吸器から供給される気体流を加温加湿する加温加湿部と、前記加温加湿部に接続された吸気経路と、前記吸気経路の加温加湿部側の気体流の温度を検出する温度検出部と、前記吸気経路の患者口元側の気体流の温度と相対湿度とを検出する温度湿度検出部とを有することを特徴とする。
前記構成により、例えば、患者に供給する気体流の温度、相対湿度を常時監視することが可能になるため、患者に適切な温度、相対湿度をもった気体流を供給することが可能となる。また加温加湿部の空焚きも未然に防止することが可能となる。
【0007】
本発明の人工呼吸器用加温加湿装置は、前記吸気経路内の気体流を所定の設定温度に調節する吸気経路加熱部と、前記温度湿度検出部により検出された患者口元側検出温度と比較する第1、第2基準温度と前記温度湿度検出部により検出された検出相対湿度と比較する第1、2基準相対湿度とを記憶する記憶部と、前記患者口元側検出温度と前記第1、第2基準温度との比較結果、又は前記検出相対湿度と前記第1、第2基準相対湿度との比較結果により異なる警告をする警告出力部と、制御部とを有し、前記制御部が、前記患者口元側検出温度と前記第1基準温度とを比較し、前記患者口元側検出温度が前記第1基準温度未満の際、前記加温加湿部と前記吸気経路加熱部とを作動させ、前記制御部が、前記患者口元側検出温度と前記第2基準温度とを比較し、前記患者口元側検出温度が前記第2基準温度以上の際、前記加温加湿部と前記吸気経路加熱部とを停止させると共に、前記警告出力部から警告させ、前記制御部が、前記検出相対湿度と前記第1基準相対湿度とを比較し、前記検出相対湿度が前記第1基準相対湿度以下の際、前記加温加湿部を作動させ、前記制御部が、前記検出相対湿度と前記第2基準相対湿度とを比較し、前記検出相対湿度が前記第2基準相対湿度以下の際、前記加温加湿部と前記吸気経路加熱部とを停止させると共に、前記警告出力部から警告させることを特徴とする。
前記構成により、温度湿度検出部から検出された患者口元側検出温度、又は検出相対湿度に基づき、制御部が、自動で加温加湿部を作動、又は停止させると共に、警告出力部から警告させる。吸気経路内を流動する気体流の温度、相対湿度が患者にとって適切でない場合、警告出力部からの警告により、外部へ容易に気付かせることができる。また、警告出力部は、患者口元側検出温度と1、第2基準温度との比較結果、又は検出相対湿度と前記第1、第2基準相対湿度との比較結果により異なる警告をするため、警告内容を容易に判別できる。
【0008】
本発明の人工呼吸器用加温加湿装置は、前記第1基準相対湿度を70%〜80%と、前記第2基準相対湿度を50%〜60%とすることを特徴とする。
前記構成により、患者へ適切な相対湿度をもった気体流をより確実に供給することが可能となると共に、加温加湿部の空焚きも未然に防止することができる。
【0009】
本発明の人工呼吸器用加温加湿装置は、前記記憶部が、前記温度検出部により検出された加温加湿部側検出温度と比較する下限温度と上限温度とを記憶し、前記警告出力部が、前記加温加湿部側検出温度と前記下限温度、又は前記上限温度との比較結果により異なる警告をし、前記制御部が、前記加温加湿部側検出温度と前記下限温度とを比較し、前記加温加湿部側検出温度が前記下限温度未満の際、前記加温加湿部を作動させ、前記制御部が、前記加温加湿部側検出温度と前記上限温度とを比較し、前記加温加湿部側検出温度が前記上限温度以上の際、前記加温加湿部を停止させると共に、前記警告出力部から警告させることを特徴とする。
前記構成により、温度検出部から検出された加温加湿部側検出温度に基づき、制御部が自動で加温加湿部を作動、又は停止させると共に、警告出力部から警告させる。
【0010】
本発明の人工呼吸器用加温加湿装置は、前記温度湿度検出部の温度湿度センサー本体は、前記吸気経路内の気体流が流通可能な一対の流通孔が形成された被覆部材により被覆されると共に、前記被覆部材の底面が開口されることを特徴とする。
前記構成により、加温度湿度検出部の温度湿度センサー本体が、一対の流通孔と開口孔とが形成された被覆部材に覆われているため、一対の流通孔が吸気経路内の気体流の流動方向の沿って配置されていなくても、開口孔から気体流が流入することが可能になるため、温度湿度検出部は正確に相対湿度を検出できる。
【0011】
本発明の人工呼吸器用加温加湿装置は、前記加温加湿部と前記吸気経路とを接続する接続部材を有し、前記接続部材は、前記加温加湿部から前記吸気経路に向かって上昇するように傾斜することを特徴とする。
前記構成により、加温加湿部から吸気経路に向かって、上昇するように傾斜しているため、加温加湿部内の水が吸気経路に流入することを防止できる。
【発明の効果】
【0012】
患者に供給する気体流の温度、相対湿度を監視できるため、低温、又は高温の気体流や乾燥した気体流を患者に供給することはなく、患者の気管、気管支の損傷を防ぐことができる。また加温加湿部の空焚きも未然に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態の人工呼吸器用加温加湿装置の全体図。
【図2】本実施形態の人工呼吸器用加温加湿装置のブロック図。
【図3】本実施形態の温度湿度検出部の拡大縦断面図。
【図4】本実施形態の人工呼吸器用加温加湿装置の正常作動時の処理手順を示すフローチャート。
【図5】本実施形態の人工呼吸器用加温加湿装置の温度検出部により検出された加温加湿部側検出温度が下限温度未満の際の処理手順を示すフローチャート。
【図6】本実施形態の人工呼吸器用加温加湿装置の温度検出部により検出された加温加湿部側検出温度が上限温度以上の際の処理手順を示すフローチャート。
【図7】本実施形態の人工呼吸器用加温加湿装置の温度湿度検出部により検出された患者口元側検出温度が第1基準温度未満の際の処理手順を示すフローチャート。
【図8】本実施形態の人工呼吸器用加温加湿装置の温度湿度検出部により検出された患者口元側検出温度が第2基準温度以上の際の処理手順を示すフローチャート。
【図9】本実施形態の人工呼吸器用加温加湿装置の温度湿度検出部により検出された検出相対湿度が第1、2基準相対湿度以下の際の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明による本実施形態の人工呼吸器用加温加湿装置について図面を参照して説明する。図1は本実施形態の人工呼吸器用加温加湿装置の全体図、図2は本実施形態の人工呼吸器用加温加湿装置のブロック図、図3は本実施形態の温度湿度検出部の拡大縦断面図である。
【0015】
〈本実施形態の人工呼吸器用加温加湿装置の構成〉
人工呼吸器用加温加湿装置10は、人工呼吸器100から供給される気体流を加温加湿する加温加湿部11と、加温加湿部11に接続された吸気経路12と、吸気経路12の加温加湿部11側の気体流の温度を検出する温度検出部13と、吸気経路12の患者口元側の気体流の温度と相対湿度とを検出する温度湿度検出部14とを備える。
【0016】
また、人工呼吸器用加温加湿装置10は、吸気経路12内の気体流を所定の設定温度に調節する吸気経路加熱部15と、上限温度と下限温度と第1、第2基準温度と第1、2基準相対湿度とを記憶する記憶部16と、外部に向けて警告する警告出力部17と、制御部18とを備える。なお、記憶部16と警告出力部17と制御部18とは、後述する装置本体19の内部に設けられる。
【0017】
加温加湿部11は、チャンバ20とチャンバ加熱部21とから構成される。チャンバ20は、樹脂製であり、円筒形状の本体部201と人工呼吸器100に接続される入口部202と吸気経路12に接続される出口部203とから構成される。本体部201は、所定量の水Wを入れることができる。本体部201には、アルミ板等からなる底部204が設けられ、チャンバ加熱部21により、チャンバ20内の水Wは容易に加熱される。
【0018】
チャンバ加熱部21は、装置本体19の上面に内蔵されたニクロム線から構成され、チャンバ加熱部21上に載置されたチャンバ20内の水Wを所定の設定温度に基づき、加熱し、保持する。なお、チャンバ加熱部21に、チャンバ20の位置ずれや転倒を防止するための係止部を設けるとより好適である。
【0019】
吸気経路12は、半透明の樹脂製のチューブであり、折り曲げ可能である。吸気経路12は、略T字状の樹脂製である接続部材22を介して、チャンバ20の出口部203と接続される。接続部材22は、チャンバ20から吸気経路12に向かって上昇するように傾斜するように形成されているため、チャンバ20内の水Wが吸気経路12に流入することを防止できる。接続部材22のチャンバ20の出口部203に接続された端部付近には温度検出部13が挿入される温度検出孔221が形成される。
【0020】
吸気経路12が、人工呼吸器100から患者へ気体流を供給する一方、患者から排出された気体流は、半透明の樹脂製のチューブからなる呼気経路23を通過し、外部へ排出される。吸気経路12と呼気経路23とを、それぞれ異なる色に着色することにより、容易に判別できる。なお、呼気経路23の一方の端部には、呼気弁231が設置され、患者から排出された気体流を外部へ排出する際、外部から外気が流入することはない。
【0021】
吸気経路12と呼気経路23とは、左右対称となるようにY字状筒形に形成された半透明の樹脂製であるY字状接続部材24を介して接続される。また、Y字状接続部材24の残り一端部は患者の喉元に挿入される挿入部材25又はマスク等が取り付けられる。吸気経路12と接続されるY字状接続部材24の端部付近には、温度湿度検出部14が挿入される温度湿度検出孔241が形成される。なお、Y字状接続部材24の中央部には、図示しない流量計に接続されたチューブが取り付けられており、吸気経路12と呼気経路23内の気体流の流動方向を容易に確認できる。
【0022】
温度検出部13は、温度センサーからなる温度センサー本体131から構成され、温度検出孔221に挿入され、配置される。温度センサー本体131が、吸気経路12内を流動し、温度検出部13を通過する際の気体流の温度を検出する。即ち、温度検出部13は吸気経路12の加温加湿部11側の気体流の温度を常時、又は一定時間毎に検出できる。
【0023】
温度湿度検出部14は、デジタル温湿度センサーからなる温度湿度センサー本体141と、温度湿度センサー本体141を被覆する被覆部材142とから構成される。温度湿度検出部14は、温度湿度検出孔241に挿入され、配置される。温度湿度センサー本体141が、吸気経路12内を流動し、温度湿度検出部14を通過する際の気体流の温度、相対湿度を検出する。即ち、温度湿度検出部14は、吸気経路12の患者口元側の気体流の温度、相対湿度を常時、又は一定時間毎に検出できる。
【0024】
被覆部材142は、金属製の円筒状に形成される。図3に示すように、被覆部材142には、一対の流通孔143と被覆部材142の底面が開口した開口孔144とが形成される。一対の流通孔143により、患者に供給される気体流が流通孔143を通過し、温度湿度センサー本体141に接触することにより、吸気経路12内の気体流の温度、相対湿度を検出できる。開口孔144により、温度湿度検出部14内に湿った気体が被覆部材142内に滞留することないため、正確な相対湿度を検出できる。また、一対の流通孔143と開口孔144とが形成されることにより、一対の流通孔143が吸気経路12内の気体流の流動方向に沿っていなくとも、開口孔144から、温度湿度検出部14内に気体流が流入し、温度湿度センサー本体141と接触するため、気体流の正確な温度、相対湿度を検出できる。即ち、吸気経路12内の気体流の流動方向に対する温度湿度検出部14の流通孔143の角度により、検出相対湿度が影響されることはない。
【0025】
温度検出部13と温度湿度検出部14とは、相互にケーブルによって接続されると共に、装置本体19に接続される。
【0026】
吸気経路加熱部15は、ヒーターワイヤ151とコネクタ152とから構成され、吸気経路12内に内設される。吸気経路加熱部15は、吸気経路12内を流動する気体流を所定の設定温度に加熱し、保持する。吸気経路加熱部15が吸気経路12内の気体流の温度を加熱し、保持することにより、外気温との温度差から生じる吸気経路12内の結露を防ぐことができる。即ち、季節や昼夜における外気温の変化における影響を限りなく抑えることが可能となる。なお、吸気経路加熱部15のコネクタ152は、吸気経路12と接続する接続部材22の端部の逆側端部に設置され、図示しないケーブルによって装置本体19に接続される。
【0027】
ここで、所定の設定温度は、加温加湿部側設定温度と患者口元側設定温度とからなる。加温加湿部側設定温度は、吸気経路12の加温加湿部11側の気体流の設定温度、具体的には、チャンバ20の出口部203に接続された接続部材22付近を通過する際の気体流の設定温度であり、患者口元側設定温度は、吸気経路12の患者口元側の気体流の設定温度、具体的には、吸気経路12と接続されたY字状接続部材24を通過する際の気体流の設定温度である。本実施形態においては、加温加湿部側設定温度は26℃〜43℃の温度範囲で設定することができ、患者口元側設定温度は30℃〜40℃の温度範囲で設定することができる。例えば、加温加湿部側設定温度を37℃と、加温加湿部側設定温度を40℃とに設定した場合、吸気経路加熱部15は吸気経路12内を流動する気体流をそれぞれ37℃、40℃となるように調節する。
【0028】
装置本体19は、その内部に記憶部16と警告出力部17と制御部18とが設けられる。
【0029】
記憶部16は、ハードディスク等から構成され、下限温度、上限温度、第1、第2基準温度、第1、第2基準相対湿度を記憶する。なお、上述した加温加湿部側設定温度と患者口元側設定温度とを記憶部16に予め記憶させることにより、使用毎に加温加湿部側設定温度と患者口元側設定温度とを設定する作業を省略することができる。
【0030】
ここで、下限温度は加温加湿部側設定温度から所定温度低く設定した下限閾値温度であり、加温加湿部側検出温度と比較され、上限温度は加温加湿部側設定温度から所定温度高く設定した上限閾値温度であり、加温加湿部側検出温度と比較される。
【0031】
第1基準温度は患者口元側設定温度から所定温度低く設定した下限閾値温度であり、患者口元側検出温度と比較され、第2基準温度は患者口元側設定温度から所定温度高く設定した上限閾値温度であり、患者口元側検出温度と比較される。また、第1基準相対湿度は70%〜80%であり、温度湿度検出部14により検出した検出相対湿度と比較され、第2基準相対湿度は50%〜60%であり、温度湿度検出部14により検出した検出相対湿度と比較される。なお、第1基準相対湿度を80%と、第2基準相対湿度を60%とするとより好適である。
【0032】
本実施形態においては、加温加湿部側設定温度を37℃、患者口元側設定温度を40℃と設定した場合、記憶部17は、制御部18により算出された下限温度は33℃と、上限温度は40℃とを記憶する。また、記憶部17は、第1基準温度は37℃と、第2基準温度は43℃と、第1基準相対湿度は80%と、第2基準相対湿度は60%とを記憶する。
【0033】
警告出力部17は、ランプが配置された後述の状態表示部193や図示しないブザー等からなり、加温加湿部側検出温度と下限温度、又は上限温度との比較結果、患者口元側検出温度と第1、第2基準温度との比較結果、検出相対湿度と前記第1、第2基準相対湿度との比較結果に基づき、異なる警告を外部に向けて発する。例えばランプの点灯やアラーム音の発生、又はその両方により、外部へ警告する。
【0034】
制御部18は、CPU等からなり、加温加湿部側設定温度と患者口元側設定温度とに基づき、チャンバ加熱部21と吸気経路加熱部15とを作動させ、又は停止させることにより、吸気経路12内を流動する気体流の温度を制御する。また、制御部18は、加温加湿部側設定温度と患者口元側設定温度とが設定されると、自動的にそれぞれ所定温度低く、又は高くした下限温度、上限温度、第1、第2基準温度を算出し、記憶部16に出力する。
【0035】
制御部18は、加温加湿部側検出温度と下限温度、又は上限温度とを比較した結果に応じて、後述する処理を自動的に実施する。また、制御部18は、患者口元側検出温度と第1、第2基準温度との比較結果、及び検出相対湿度と第1、第2基準相対湿度との比較結果についてもそれぞれ処理を自動的に実施する。例えば、制御部18が、チャンバ加熱部21と吸気経路加熱部15とを作動させ、又は停止させたり、警告出力部17から外部に向けて警告させる。なお、気体流の供給開始直後等は、温度検出部13により検出された加温加湿部側検出温度が下限温度を満たしていないため、待機時間を設定するとより好適である。例えば、待機時間を20分間と設定する。
【0036】
装置本体19の表面には、操作部191と温度湿度表示部192と状態表示部193とが設けられる。操作部191を操作することにより、加温加湿部側設定温度と患者口元側設定温度とを所定の温度範囲内で任意に設定することができる。例えば、加温加湿部側設定温度の設定可能な温度範囲を26℃〜43℃とし、患者口元側設定温度の設定可能な温度範囲を30℃〜40℃とする。温度湿度表示部192は、加温加湿部側検出温度、患者口元側検出温度、検出相対湿度を表示し、操作部191により表示される温度、相対湿度を切り替えることができる。状態表示部193は、温度検出部13、温度湿度検出部14、チャンバ20等に相当するランプが複数配置されるものである。ランプは人工呼吸器用加温加湿装置10の各部の作動状態に合わせて色が変化し、例えば、正常時を緑色、注意時を橙色、警告時を赤色と変化させることにより、人工呼吸器用加温加湿装置10の各部の作動状態が容易に視認できる。例えば、温度湿度検出部14の作動状態が警告時には、温度湿度検出部14に相当するランプが赤色に点灯する。
【0037】
なお、装置本体19は、図示しないが、低電力、短距離送信機からなる無線送信機を備えることもできる。無線送信機に接続されることにより、パソコン等のモニタへ人工呼吸用加温加湿装置10の作動状態を表示させることができる。即ち、人工呼吸器用加温加湿装置10から離れたモニタ上で、加温加湿部側検出温度や、患者口元側検出温度、検出相対湿度とを監視することが可能となる。また、人工呼吸器用加温加湿装置10の異常時には、モニタ上に異常箇所と異常内容とを表示させることもできる。
【0038】
〈本実施形態の人工呼吸器用加温加湿装置の処理の流れ〉
次に、人工呼吸器用加温加湿装置10の各種処理の流れを、図4〜図9に示すフローチャートにより説明する。なお、本実施形態において、加温加湿部側設定温度を37℃、患者口元側設定温度を40℃と設定する。また、制御部18により算出された下限温度は33℃と、上限温度は40℃と、第1基準温度は37℃と、第2基準温度は43℃とすると共に、第1基準相対湿度は80%と、第2基準相対湿度は60%とする。
【0039】
人工呼吸器用加温加湿装置10の正常作動時の処理の流れは、図4に示す通りである。
【0040】
ステップS101において、装置本体19を起動し、操作部191を操作することにより、加温加湿部側設定温度を37℃、患者口元側設定温度を40℃に設定する。なお、加温加湿部側設定温度と患者口元側設定温度とを予め記憶部16に記憶させた場合、ステップS101を省略し、ステップS102に進む。
【0041】
ステップS102において、人工呼吸器100を起動すると共に、制御部18は、ステップS101により設定された加温加湿部側設定温度と患者口元側設定温度とに基づき、チャンバ加熱部21と吸気経路加熱部15とにより気体流への加熱を開始する。
【0042】
ステップS103において、患者へ気体流の供給を開始する。本実施形態における人工呼吸器100から供給される気体流の温度を24℃、相対湿度を50%とし、気体流が人工呼吸用加温加湿装置10内を流動し、患者へ供給される状況を説明する。チャンバ20内の所定量の水Wがチャンバ加熱部21により加熱され、気体流がチャンバ20内を通過する際、チャンバ20内の水Wの表面からの蒸発により、温度が上昇すると共に、ほぼ飽和状態(相対湿度99%程度)となる。次に、ほぼ飽和状態となった気体流がチャンバ20の出口部203から吸気経路12へ流動し、チャンバ20出口付近に配置された温度検出部13において気体流の温度は38℃程度を検出される。その後、気体流は吸気経路加熱部15により加熱されながら吸気経路12内を流動し、患者口元付近に配置された温度湿度検出部14において気体流の温度は40℃程度、相対湿度は85%程度を検出される。そして、気体流は患者の口元に設置された挿入部材25を通過し、患者に供給されるまでに自然冷却され、気体流の温度は37℃、相対湿度は95%となるため、患者に適切な温度、相対湿度をもった気体流が供給される。なお、制御部18が、状態表示部193に表示された温度検出部13や温度湿度検出部14に相当するランプを、正常時を示す緑色に点灯させると好適である。
【0043】
ステップS104において、患者への気体流の供給を正常終了する際、患者への気体流の供給を停止し、ステップS105において、制御部18は、チャンバ加熱部21と吸気経路加熱部15とを停止する。
【0044】
人工呼吸器用加温加湿装置10の温度検出部13により検出された加温加湿部側検出温度が下限温度未満の際の処理の流れは、図5に示す通りである。なお、ステップS201〜S203は、上述したステップS101〜S103と同様な処理のため省略する。
【0045】
ステップS204において、制御部18は、加温加湿部側検出温度と記憶部16に記憶された下限温度である33℃と比較し、加温加湿部側検出温度が下限温度未満であった場合、ステップS205に進む。
【0046】
ステップS205において、制御部18は、加温加湿部側検出温度が下限温度以上となるように、開始時の加温加湿部側設定温度37℃から設定温度を上げると共に、チャンバ加熱部21を作動させる。なお、制御部18が、待機時間経過後、状態表示部193の温度検出部13に相当するランプを橙色に点灯させると共に、アラーム音を発生させるとより好適である。
【0047】
人工呼吸器用加温加湿装置10の温度検出部13により検出された加温加湿部側検出温度が上限温度以上の際の処理の流れは、図6に示す通りである。なお、ステップS301〜S303は、上述したステップS101〜S103と同様な処理のため省略する。
【0048】
ステップS304において、制御部18は、加温加湿部側検出温度と記憶部17に記憶された上限温度である40℃と比較し、加温加湿部側検出温度が上限温度以上であった場合、ステップS305に進む。
【0049】
ステップS305において、制御部18は、チャンバ加熱部21を停止させる。
【0050】
ステップS306において、待機時間経過後、加温加湿部側検出温度が上限温度以上であった場合、制御部18は警告出力部17から外部に向けて警告する。例えば、制御部18は、状態表示部193の温度検出部13に相当するランプを赤色に点灯させると共に、アラーム音を発生させる。
【0051】
人工呼吸器用加温加湿装置10の温度湿度検出部14により検出された患者口元側検出温度が第1基準温度未満の際の処理の流れは、図7に示す通りである。なお、ステップS401〜S403は、上述したステップS101〜S103と同様な処理のため省略する。
【0052】
ステップS404において、制御部18は、患者口元側検出温度と記憶部16に記憶された第1基準温度である37℃と比較し、患者口元側検出温度が第1基準温度未満であった場合、ステップS405に進む。
【0053】
ステップS405において、制御部18は、患者口元側検出温度が第1基準温度以上となるように、開始時の加温加湿部側設定温度37℃から設定温度を上げると共に、チャンバ加熱部21と吸気経路加熱部15とを作動させる。なお、制御部18が、状態表示部193の温度湿度検出部14に相当するランプを橙色に点灯させると共に、アラーム音を発生させると好適である。
【0054】
人工呼吸器用加温加湿装置10の温度湿度検出部14により検出された患者口元側検出温度が第2基準温度以上の際の処理の流れは、図8に示す通りである。なお、ステップS501〜S503は、上述したステップS101〜S103と同様な処理のため省略する。
【0055】
ステップS504において、制御部18は、患者口元側検出温度と記憶部16に記憶された第2基準温度である43℃と比較し、検出温度が第2基準温度以上であった場合、ステップS505に進む。
【0056】
ステップS505において、制御部18は、チャンバ加熱部21と吸気経路加熱部15とを停止させる。
【0057】
ステップS506において、制御部18は、警告出力部17から外部に向けて警告する。例えば、制御部18は、状態表示部193の温度湿度検出部14に相当するランプが赤色に点灯させると共に、アラーム音を発生させる。
【0058】
人工呼吸器用加温加湿装置10の温度湿度検出部14により検出された検出相対湿度が第1、第2基準相対湿度以下の際の処理の流れは、図9に示す通りである。なお、ステップS601〜S603は、上述したステップS101〜S103と同様な処理のため省略する。
【0059】
ステップS604において、制御部18は、検出相対湿度と記憶部16に記憶された第1基準相対湿度である80%と比較し、検出相対湿度が第1基準相対湿度である80%以下であった場合、ステップS605に進む。
【0060】
ステップS605において、吸気経路12内を流動する気体流をチャンバ20により十分な飽和状態とするために、制御部18は、チャンバ加熱部21を作動させる。しかし、チャンバ20内の水Wが不足し始めると、ステップS605において、チャンバ加熱部21を作動させても、気体流の相対湿度が低下し続け、ステップS606に進む。
【0061】
ステップS606において、制御部18は、検出相対湿度と記憶部16に記憶された第2基準相対湿度である60%と比較し、検出相対湿度が第2基準相対湿度である60%以下であった場合、ステップS607に進む。
【0062】
ステップS607において、制御部18は、チャンバ加熱部21と吸気経路加熱部15とを停止させると共に、ステップS608において、制御部18は警告出力部16から外部にむけて警告する。例えば、制御部18が、状態表示部193のチャンバ20に相当するランプが赤色に点灯させると共に、アラーム音を発生させる。これにより、チャンバ20内の水Wが不足していることを容易に確認できるため、チャンバ20の空焚きを未然に防止することができ、チャンバ20内に水の追加等の対応が可能となる。
【0063】
〈本実施形態の効果〉
患者に供給する気体流の温度、相対湿度を監視することにより、適切な温度、相対湿度をもった気体流を患者に供給することができ、患者の気管、気管支の損傷を防ぐことができる。また、チャンバの空焚きも未然に防止することが可能となる。
【0064】
〔実施形態の変形例等〕
本明細書開示の発明は、各発明や実施形態の構成の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものを含み、下記の変形例等も包含する。
【0065】
本実施形態の人工呼吸器用装置10は、患者の喉元に直接挿入し気体流を供給するものであるが、患者の口にマスクを被せて気体流を供給することもできる。装置本体19の操作部191を操作することにより、切換可能としてもよい。
【0066】
人工呼吸器用加温加湿装置10の温度センサー本体131は温度センサーのみからなるが、温度湿度センサー本体141と同様にデジタル温湿度センサーを適用すると、温度検出部13においても温度、相対湿度を検出することができ、吸気経路12内を流通する気体流のより正確な温度、相対湿度を検出することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、患者に適切な温度、相対湿度をもった気体流を供給する人工呼吸器に利用することができる。
【符号の説明】
【0068】
10…人工呼吸器用加温加湿装置 11…加温加湿部 12…吸気経路 13…温度検出部 14…温度湿度検出部 15…吸気経路加熱部 16…記憶部 17…警告出力部 18…制御部 19…装置本体 20…チャンバ 21…チャンバ加熱部 22…接続部材 23…呼気経路 24…Y字状接続部材 25…挿入部材 100…人工呼吸器 131…温度センサー本体 141…温度湿度センサー本体 142…被覆部材 143…流通孔 144…開口孔 151…ヒーターワイヤ 152…コネクタ 191…操作部 192…温度湿度表示部 193…状態表示部 201…本体部 202…入口部 203…出口部 底部…204 221…温度検出孔 231…呼気弁 241…温度湿度検出孔 W…水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工呼吸器から供給される気体流を加温加湿する加温加湿部と、
前記加温加湿部に接続された吸気経路と、
前記吸気経路の加温加湿部側の気体流の温度を検出する温度検出部と、
前記吸気経路の患者口元側の気体流の温度と相対湿度とを検出する温度湿度検出部と、
を有することを特徴とする人工呼吸器用加温加湿装置。
【請求項2】
前記吸気経路内の気体流を所定の設定温度に調節する吸気経路加熱部と、
前記温度湿度検出部により検出された患者口元側検出温度と比較する第1、第2基準温度と前記温度湿度検出部により検出された検出相対湿度と比較する第1、第2基準相対湿度とを記憶する記憶部と、
前記患者口元側検出温度と前記第1、第2基準温度との比較結果、又は前記検出相対湿度と前記第1、第2基準相対湿度との比較結果により異なる警告をする警告出力部と、
制御部と、
を有し、
前記制御部が、前記患者口元側検出温度と前記第1基準温度とを比較し、前記患者口元側検出温度が前記第1基準温度未満の際、前記加温加湿部と前記吸気経路加熱部とを作動させ、
前記制御部が、前記患者口元側検出温度と前記第2基準温度とを比較し、前記患者口元側検出温度が前記第2基準温度以上の際、前記加温加湿部と前記吸気経路加熱部とを停止させると共に、前記警告出力部から警告させ、
前記制御部が、前記検出相対湿度と前記第1基準相対湿度とを比較し、前記検出相対湿度が前記第1基準相対湿度以下の際、前記加温加湿部を作動させ、
前記制御部が、前記検出相対湿度と前記第2基準相対湿度とを比較し、前記検出相対湿度が前記第2基準相対湿度以下の際、前記加温加湿部と前記吸気経路加熱部とを停止させると共に、前記警告出力部から警告させることを特徴とする請求項1記載の人工呼吸器用加温加湿装置。
【請求項3】
前記第1基準相対湿度を70%〜80%と、前記第2基準相対湿度を50%〜60%とすることを特徴とする請求項2記載の人工呼吸器用加温加湿装置。
【請求項4】
前記記憶部が、前記温度検出部により検出された加温加湿部側検出温度と比較する下限温度と上限温度とを記憶し、
前記警告出力部が、前記加温加湿部側検出温度と前記下限温度、又は前記上限温度との比較結果により異なる警告をし、
前記制御部が、前記加温加湿部側検出温度と前記下限温度とを比較し、前記加温加湿部側検出温度が前記下限温度未満の際、前記加温加湿部を作動させ、
前記制御部が、前記加温加湿部側検出温度と前記上限温度とを比較し、前記加温加湿部側検出温度が前記上限温度以上の際、前記加温加湿部を停止させると共に、前記警告出力部から警告させることを特徴とする請求項2、又は3記載の人工呼吸器用加温加湿装置。
【請求項5】
前記温度湿度検出部の温度湿度センサ本体は、前記吸気経路内の気体流が流通可能な一対の流通孔が形成された被覆部材により被覆されると共に、前記被覆部材の底面が開口されることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の人工呼吸器用加温加湿装置。
【請求項6】
前記加温加湿部と前記吸気経路とを接続する接続部材を有し、
前記接続部材は、前記加温加湿部から前記吸気経路に向かって上昇するように傾斜することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の人工呼吸器用加温加湿装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−125618(P2011−125618A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289273(P2009−289273)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(501263946)パシフィックメディコ株式会社 (3)