説明

人工呼吸器

【課題】患者の呼吸を置き換える、又は補うための人工呼吸器は、改善された空気流制御及び人工呼吸器動作の信頼性を提供する。
【解決手段】比例障害弁(POV)は、入口、出口、及びバイパスを含む。ステッパモータにより制御される活栓は、患者への空気流の制御を可能にしながら、タービンを一定のRPMで動作させるようにして、バイパス及び出口を介して空気の流れを送る。人工呼吸器はまた、空気流制御を改善し、製作が容易な吸気弁アセンブリ及び呼気弁アセンブリを含む。吸気弁は、圧力センサが正確に空気流を測定可能にするためのオリフィスディスクを含む。呼気弁アセンブリは、乱流を低減し、センサ精度を高める翼を含む。呼気弁アセンブリは、凝縮が形成される可能性を低減するために、タービンを冷却させた暖かい空気をアセンブリ上に吹き付ける。人工呼吸器はまた、冗長性を有する電力源を備えた改善された電源を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、医療用の人工呼吸器に関する。より詳細には、本発明は、改善された空気流制御、空気流感知、高い信頼性、及び冗長性のある電源システムを有する医療用の人工呼吸器を対象とする。
【背景技術】
【0002】
人工呼吸器は、自然な呼吸機能に取って代わる、又はそれを補うために使用される機械である。そのような装置には陽圧式人工呼吸器として分類されるものがあり、これは、ピストン、タービン、ベローズ、又は高いガス圧などの駆動機構により空気を人工呼吸器外に押し出すことを意味する。このアクションにより、大気圧に対する気道内の圧力を上昇させ、その結果、肺の内部の圧力を高めて肺を拡大させる。したがって、人工呼吸器は、連続的又は断続的な機械的換気を提供して、侵襲性、非侵襲性どちらのニーズをも支えることができる。換気は、通常、空気流及び圧力を提供するモータにより駆動されるタービンにより行われる。
【0003】
換気プロセスを制御するために、患者が吸気及び呼出する間に空気圧及び速度を測定する必要がある。本発明は、換気プロセスを制御するために、改善された流れセンサ機構を提供する。さらに、事前設定された圧力及び流れにて換気するために、患者に送られる空気圧及び体積流量を制御する必要がある。本発明は、改善された空気流制御を提供する機構を提供する。
【0004】
さらに、空気が人工呼吸器内に吸引されると、一般に、空気は、不純物を除くためにフィルタを通る。フィルタがゴミで塞がれると、人工呼吸器の動作が低下し、結果として、動作不良を起こす可能性がある。本発明は、フィルタをいつ交換すべきか判定する方法を提供する。
【0005】
さらに、人工呼吸器に関連付けられた流れセンサは、湿気により悪影響を受ける可能性がある。特に、患者が息を吐いたとき、呼出された空気は多量の湿気を含んでいる。呼出された空気が、呼気弁、及びそれに関連付けられた、呼出された体積を測定するための流れセンサなどの冷たい表面と接触した場合、湿気が凝縮し、流れセンサの機能を、また場合によっては呼気弁の機能を妨げる。本発明は、センサ及び弁の動作に対する高湿度の呼気の影響を低減させる手段を提供する。
【0006】
最後に、歩行時の人工呼吸器は、一般に、内部電源及び外部電源を、それぞれ充電可能な電池及び電源コードの形で含む。電池を交換する必要がある場合、新しい電池を取り付けるために、人工呼吸器からすべての電力を除くことが必要である。取り付ける場合には、人工呼吸器を動作させる前に再起動する必要がある。本発明は、従来の歩行時の人工呼吸器における電池交換に関連する問題を克服する電力システムを提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5931163号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
改善された空気流制御、空気流感知、高い信頼性、及び冗長性のある電源システムを有する医療用の人工呼吸器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に従って構成された人工呼吸器は、オペレータの制御、信頼性、及び患者からのフィードバックに関して、上記で論じた欠点のそれぞれを克服する。本発明の人工呼吸器は、陽圧の空気流を生成するためのタービンを含む。人工呼吸器は、ステッパモータにより駆動される比例障害弁(proportional obstacle valve)の形態の制御弁をさらに含む。比例障害弁は、その中を通る空気の流れを制御するために、弁に回転可能に取り付けられた活栓を含む。制御弁は、入口、出口、及びバイパス通路を含み、したがって、比例障害弁の動作は、空気流の流れを、入口からバイパス通路及び出口を通って制御する。人工呼吸器は、空気流を、制御弁出口から患者に送るための手段をさらに含む。送る手段は、通常、可撓性のある管類と、患者の鼻及び口に取付け可能なマスクとを含む。タービンは、エネルギー効率にとって最適なRPMで動作し、また比例障害弁は、バイパス通路及び出口の両方を介して空気を送ることにより、患者への空気流を制御することが好ましい。さらに、比例障害弁は、モータにより回転可能に動かすことのできる活栓を含み、活栓は、その中で活栓が回転する開口部に近接しているが、接触することはない。
【0010】
空気流を送る手段はまた、吸気ストラットアセンブリ及び呼気弁アセンブリを含むことが好ましい。吸気ストラットアセンブリは、その入口側及び外側で圧力差を提供するためにオリフィスディスクの形態の小径領域を含むことができる。吸気ストラットアセンブリは、オリフィスディスクの入口側及び出口側の両方からの入力を受け取るように配置された少なくとも1つの圧力センサを含む。さらに、吸気ストラットの出口側は、センサ感度をより高くするために差圧のダイナミックレンジを増加させるディフューザを含むことが好ましい。
【0011】
呼気弁アセンブリには、一連のセンサが関連付けられている。好ましい実施形態では、呼気弁アセンブリは、入口と出口の間で小径領域を含み、小径領域は、空気がそこを通過するとき空気流が乱れるのを低減するために、半径方向内側に延びる複数の翼を含む。小径領域における開口部、及び呼気弁アセンブリの出口部分からの入力を受け取るためのセンサが提供される。呼気弁アセンブリストラット及び吸気弁アセンブリストラットは共に、製作性を改善しコストを低減するために、一体に射出成形された構成部品として構成されることが好ましい。これらの構成部品は、消毒及び交換のために、容易にユニットから取り外すことができる。
【0012】
本発明に従って構成された人工呼吸器はまた、そのハウジング中の空気入口と、その空気入口に関連付けられた入口空気フィルタを含む。人工呼吸器はまた、空気入口フィルタが交換を必要としていることを判定しユーザに示すための手段を備える。人工呼吸器は、空気入口の下流に、かつタービンの空気入口の上流に位置するセンサを備えることが好ましい。空気入口フィルタが詰まった場合、センサにより感知される真空が生成されることになり、フィルタが交換を必要としていることを示す。
【0013】
人工呼吸器はまた、呼気弁アセンブリ上を流れるように加熱空気を送るための手段を含むことが好ましい。一実施形態では、人工呼吸器は、タービンを冷却するためのファンを含む。冷却空気はタービンにより加熱され、呼気弁アセンブリ上を流れるように送られてアセンブリを加温する。他の好ましい実施形態では、タービン及び駆動モータを含むタービンアセンブリは、内部のヒートシンクを備える。タービンは、ヒートシンク上に空気を駆動し、またタービンにより加熱された空気の一部は、呼気弁アセンブリ上を流れるように、かつ加温するように送られる。呼気弁アセンブリを加温することにより、患者が呼出した高湿度の空気から凝縮が形成される可能性を低下させる。
【0014】
本発明の人工呼吸器はまた、電源間で切り替えたときユニットを再起動することが不要となるように、冗長性を有する電源システムを含むことが好ましい。ユニットは、外部のAC電源コード、内部の充電可能な電池、人工呼吸器に差し込めるように適合可能な外部の電池、及び内部のバックアップ電池を含むことが好ましい。ユニットは、適切な電源を選択する電力切替えシステムをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に従って構成された人工呼吸器の斜視図である。
【図2】本発明に従って構成された人工呼吸器の空気ボックスユニットの図である。
【図3】本発明に従って構成された人工呼吸器の空気構成部品の空気ブロック図である。
【図4】完全な開放状態にある本発明に従って構成された比例障害弁(POV)の横断面図である。
【図5】閉じた状態にある図4のPOVの横断面図である。
【図6】本発明に従って構成された吸気ストラットの横断面図である。
【図7】図6で示す吸気ストラットの上面図である。
【図8】本発明に従って構成された呼気弁及びストラットの横断面図である。
【図9】図8で示す呼気弁の拡大した横断面図である。
【図10】本発明に従って構成された入口フィルタセンサを示すブロック図である。
【図11】本発明に従って構成された冗長性を有する電源システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に従って構成された医療用人工呼吸器が図1で示されている。人工呼吸器10は、人工呼吸器の動作を制御し、患者情報を提供し、また患者の呼吸を監視するためにセンサからのフィードバックを提供するタッチスクリーン14を備えたハウジング12を含む。図1ではさらに、吸気弁アセンブリ26及び呼気弁アセンブリ30が示されており、それらは、患者への管類(図示せず)を用いることにより、医療用人工呼吸器を患者と流体連通させる。
【0017】
図3は、人工呼吸器の空気構成部品の空気ブロック図である。主な空気構成部品は、陽圧の空気流を生成するためのタービン及び駆動モータを含むタービンアセンブリ18と、比例障害弁(POV)20に結合されたステッパモータ33により動作する可動弁を有するPOVの形式の空気流を制御する制御弁と、高圧ボックス22と、患者に対して空気流の一方向経路を提供する吸気弁及びストラット26と、患者監視のために呼気を受け取る呼気弁及びストラット30と、複数の圧力/流れセンサとを含む。
【0018】
患者への空気流の経路は、空気フィルタ21を含むことが好ましい。人工呼吸器は、タービンの取入れ口に結合された入口25と流体連通している入口フィルタ23を介して、環境空気を装置中に吸引する。したがって、患者に供給される空気は、人工呼吸器内に入るとき、並びに患者に出力される前にフィルタされる。
【0019】
好ましい実施形態では、動作中にタービンを冷却するために、タービンアセンブリ18は、内部のヒートシンクを備える。代替的に、冷却ファン27を、タービンアセンブリ上に空気を吹き付けるために使用することもできる。以下でより詳細に論ずるが、ヒートシンク又は冷却ファンにより加熱された空気は、呼気弁アセンブリ30上を流れるように送られて加温する。(図3の空気流経路29を参照のこと)
図2は、人工呼吸器10の空気ボックスユニット16を示している。空気ボックスユニット16の主な構成部品は、モータにより駆動されるタービン18、患者への空気の流れを調整するために使用される比例障害弁(POV)20、高圧ボックス22、ノイズダンパ24、及び一方向の吸気弁及びストラット26である。
【0020】
患者への改善された空気流制御、及び人工呼吸器動作の信頼性を提供するために、本発明は、図4及び5で示される比例障害弁(POV)20を使用することを採用する。POV20は、ステッパモータ33(図3)により駆動される活栓32を含み、非常に低い流れ抵抗を与える。
【0021】
POV20は、2つの出口を備える蛇口のように動作する。図4で示すように、タービンからの空気は、主入口34を介してPOVに入る。活栓32を回すことにより、出口を形成する通路の面積が制御される。広い出口36は患者に空気を送達するが、狭い出口は、余剰の空気をタービン入口へ戻すバイパス38である。活栓32を回転させることによって両方の出口の開口面積を操作することにより、ユーザは、患者に送達する空気量を正確に制御することができる。図4で示すように、活栓32は、空気が全くバイパス38に送られないその完全な開放状態にある。図5は、その完全に閉じた状態にある活栓32を示している。
【0022】
POV20は非常に信頼性が高く、連続して何百万サイクルも動作することができる。活栓32は、速度又は不浸透性を低下させることなく動作することができる。さらに活栓32は、急速に加速することができる。例えば、活栓は、約30ミリ秒のうちにその閉鎖状態から開放状態に遷移することができる。同時に、活栓エンジン、すなわち、ステッパモータ33は、小型でエネルギー効率がよく、電池で動作するように構成される。さらに、流れを制御するために不必要に電力を消費するタービンのRMPを調整するよりも、バイパス構成は、タービン速度を高速に維持することができる。活栓32を用いて、バイパスへ送られる空気量を変えることにより、患者への流れはタービン速度を変えることなく制御される。したがって、タービンは、患者に対する空気の流れをPOV20により制御して、最大のエネルギー効率のための最適なRPMで動作することができる。したがって、POV20は、改善された人工呼吸器制御のために、無限に可変できるバイパスを提供する。
【0023】
POV20を用いる本発明の改善された空気流制御は、以下の2つの原理に基づいている。すなわち、空気流の通路中にバイパスを使用すること、及び不浸透性又はシーリングのために空気を使用することである。POVの空気の通路の一部として、余剰の空気が患者に送達されるのではなく放出されるバイパス38を使用することにより、送達する圧力を直接制御することが可能になる。バイパス38はまた、タービンの体積流量の放出を制御して行うことにより、患者に送達される体積流量に対する非常に良好な制御を可能にする。
【0024】
人工呼吸器装置の動作効率は一般に重要なものであるが、特に、電池電力により動作する可搬型の人工呼吸器では重要である。POV動作は、活栓32が開放位置にあるとき、空気漏れによる損失を最小にして、タービンからの高圧空気流を患者に送る。さらに、活栓32と弁本体の間でわずかな間隙を設けて、それにより活栓に対する摩擦を低減することにより、活栓モータ33に対する不必要な負荷が阻止されるが、それを、以下でより詳細に論ずるものとする。摩擦を低下させることはまた、どんな解決策であっても、システム故障を生ずるおそれのある構成部品の摩耗を増加させることを防ぐという高信頼性に対する要件を満たすことになる。
【0025】
しかし、POVを用いる空気ユニットのこの不浸透性は、以下の理由で普通の蛇口のように、摩擦に基づくことはできない。すなわち、エンジンは、活栓がその位置を変えたときに生ずる活栓の慣性と共に構成部品の摩擦を克服することが必要になるはずなので、エンジン又はモータの負荷が増加するようになること、構成部品は、より速く摩耗することになり、その結果、不浸透性の有効性を低下させること、その機構は、特有の材料、詳細な設計、及び正確な製作を必要とすることになるので、より高コストになることである。本発明のPOVは、摩擦ではなく空気を使用し、空気の通路を不浸透性にする。
【0026】
空気を含むどの流体も、摩擦及び剪断力を生ずる粘性を有する。流体が、管を通過するとき、境界表面の直ぐ近傍に、流れることのない層が存在する。この層は境界層と呼ばれる。この層は、剪断力で隣接する層に影響を与え、隣の層の速度を減少させる。この過程は、剪断力が減少されて流れに影響しない点に達するまで、流体の各層で繰り返される。異なる速度を有する層の数は、粘性値に直接比例する。
【0027】
本発明のPOV20は、上記で述べた境界層原理に基づく。POVにこの原理を適用するために、活栓32の直径は、それが回転する開口部の直径よりも約0.1mm小さい。このPOVの直径差は、活栓と弁のシリンダとの間の摩擦を阻止する。さらに、本発明の解決策は、製作時の不正確さに対して何らかの許容範囲を可能にする。しかし、特有の空気通路の幾何形状で組み合わされた直径におけるこのわずかな差は、流れが剪断力に勝るには不十分ないくつかの境界層が許容されるだけである。不浸透性は、このようにして摩擦を使用せずに生成される。当業者であれば、不浸透性は絶対的なものではないことを理解するであろうが、どんな漏れも、人工呼吸器の動作に悪影響を与えることのない無視できる値にまで低減される。さらに、当業者であれば、上記で特定された許容範囲及び測定値は、例示のためであり、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、変更できることを理解するであろう。
【0028】
本発明の他の態様は、改善された流れセンサ測定を提供する吸気/呼気ストラットアセンブリの形態の流れメータ機構である。呼気弁アセンブリは、容易に交換できるユーザがサービス可能な弁システムを含む。吸気及び呼気ストラットアセンブリは共に、製作を容易にし、コストを低減するために、成形されたプラスチックから作られる。吸気ストラットアセンブリに対する流れセンサは、開口部及びディフューザを有するオリフィスディスクの使用に基づいており、一方、呼気弁アセンブリ流れセンサは、流れを安定化させ、乱流を低減するための翼を有するディフューザに基づく。
【0029】
オリフィス流れメータディスクは、ベンチュリノズルと同じ原理を使用する、すなわち、それは、ゆっくり移動する流体は、速く移動する流体よりも高い圧力をおよぼすと考えるベルヌーイの原理に基づく。オリフィス流れメータディスクは、中央に開口部を有するディスクである。このディスクは、流体の流れ方向(導管軸)に対して直角に配置され、それにより、流体は、広い通路又は管から小さな開口部を通って流れるように強制される。流体の平均速度は、その場合、管面積の減少を補償するために増加する(装置の機能的な流量設定における空気などを、亜音速の速度における非圧縮性の流体挙動であると仮定する)。平均速度が高速である実際の横断面積は、逆の流体流れにより、開口部の面積よりも小さく、縮流と呼ばれ、それは、流体流れが開口部を通過した後に拡散し始める点に位置する。
【0030】
流体が、管を通って流れ続けると、管の面積は元のサイズに戻り、また流体の速度は、元の速度に戻る。圧力は増加するが、水頭損失として知られたエネルギー損失により、その元の値には戻らない。
【0031】
前述の仮定された縮流において、ディスクの前及び直ぐ後で流体の静圧を測定することにより、流量を計算することができる。代替的には、測定ポート間の静圧差により抑制される2次流量を、流量評価のために測定することができる。
【0032】
亜音速ディフューザを、流体が非圧縮性である(装置の機能的な流量設定の空気)と仮定して、流体の運動エネルギーをエンタルピー又は静圧に変換するために使用することができる。亜音速ディフューザは、空気が下流に流れると直径が拡大する管から構成される。管の横断面積は、質量保存の法則に従い流体の体積流量を変化させることなく拡大する。したがって、管の面積拡大に直接比例する平均速度の減少が達成され、それを測定して人工呼吸器を制御するために使用することができる。
【0033】
本発明は、空気の静圧、又はその誘起された2次流量の測定を可能にし、かつ他の流体(液体及び気体)も同様に測定できる吸気ストラットアセンブリ60を含む。図6及び7で示すように、吸気ストラット60は、空気の通路を幾何学的に操作することにより動作して、流体の速度に依存する圧力低下を生成する。この依存性は、圧力低下を速度に変換するために計算され、校正することができる。
【0034】
吸気ストラット60は、ゼロから最高200L/分までの体積流量の正確な速度測定値を提供する。それはまた、それぞれ、0から5mBar(5hPa)の範囲であり、かつ圧力低下と体積流量との間でほぼ線形関係にある差圧を提供する。その設計によっては、吸気ストラットアセンブリは、プラスチックの射出成形技法により1つの構成部品として製作することができ、それにより、製作コストを下げることができる。一体化して成形されたストラットは、制作者にとって容易であり、費用がかからないだけではなく、必要に応じて、人工呼吸器内で交換することが簡単になる。
【0035】
吸気ストラット60は、オリフィスディスク62と縮退させた(degenerated)ディフューザ64とを組み合わせたその幾何形状において特有のものである。ベンチュリノズルと同様に、オリフィスディスク62は、圧力低下測定値(すなわち、主として低速における水頭損失)に反映されるエネルギー損失を生ずる。本発明のディスクには、溝を付けて低い流量における測定感度を高めることができる。支配方程式、ΔP=KQで理解できるように、速度が増加すると、圧力は急速に減少する。センサは、高い流量においてオリフィスの感度不足を生ずることなく、機能的にすべての流量範囲にわたって、圧力のこれらの急速な変化を測定する必要がある。亜音速ディフューザは、体積流量の低い値における圧力差に対して見込まれる影響を最小にして、体積流量の高い値における圧力差を低下させる。前に述べたように、ディフューザ64は、流速を低下させ、したがって、静圧差を増加させる。この理由のために、ディフューザ幾何形状を用いて構築された本発明の吸気ストラット60は、静圧を増加させる縮流による高い流量におけるオリフィス効果を補償する。
【0036】
理論的には、ディフューザの圧力差挙動と、オリフィスディスク水頭損失挙動との間には負の関係がある。組み合わされた装置の異なる効率特性は、低い流量における測定感度を維持しながら、比較的高い流量における圧力流れの関係を部分的に線形化する必要がある。本発明の吸気ストラット60は、オリフィスディスク62とディフューザ64の相補的な機構を組み合わせて、それにより、高い体積流量と低い体積流量の両方で、流れを正確に測定できる測定ツールが得られる。流れを測定するために、吸気ストラットは、センサに結合された2つの圧力測定ポート66、68を備える(図2を参照)。2つのポート66、68は差圧ブリッジを形成し、2つのポート間で測定された圧力差が、正確に流れを近似するように、ポート66がストラットの大きな直径の領域に配置され、ポート68が、小さな直径の領域に配置される。本発明の吸気ストラット60は、低い圧力差(5mbar(5hPa))を維持し、また前に述べたように、プラスチックの射出成形により製作される1つの構成部品として構成されうる。
【0037】
図8及び9を参照すると、呼気弁及びストラットアセンブリ30は、患者の圧力ポート40、及び差圧ブリッジを形成する2つのポート42、44を含み、ポート42は、ポート44よりも大きな直径の弁領域に配置される。患者の圧力感知のために、ポート40に関して圧力センサが設けられ、また呼気流センサとして他のセンサが、差圧ブリッジ42、44に対して提供される(図3を参照のこと)。ポート42、44の間で感知された圧力差は、正確に呼気流を近似する。第4のポート46は、可撓性のある膜の形態の呼気弁48を動作させるための圧力を供給する。差圧ブリッジに関係付けられた小径領域は、乱流を低減し、かつセンサの信頼性を改善するために安定化流れ翼56を含む。流れ翼56は、長手方向の流れ軸に沿った通路中に延びるように構成される。翼56は、大きな直径の入口通路の端部から、呼気弁ストラットの小径部分における大きな直径の出口通路の開始部に延びる。翼56は、小径部分に関して等間隔に配置されることが好ましく、それにより、乱流を低減して流れセンサの精度を高めることができる。図9は、呼気弁及びストラットアセンブリ30の分解図を示している。
【0038】
呼気弁及びストラットアセンブリ30は、そのアセンブリを人工呼吸器ハウジングに接続するマニホールド50に取外し可能に結合される。呼気弁及びストラットアセンブリは、アセンブリを定位置に保持する一対の可動レバー(図示せず)を含む。呼気弁及びストラットアセンブリ30は、マニホールド50において容易に外すことができ、取り替えることができる。取り外して分解した後、再使用のため、部品を加圧滅菌することができる。
【0039】
本発明の人工呼吸器はまた、高湿度の呼気が呼気弁アセンブリ及びセンサの動作に対して与える影響を低減するための手段も提供する。患者が呼出すると、呼気は、患者の肺及び気道により加熱され、多量の湿気を、いくつかの例では100%に近い湿気を含む。この高湿度の空気は、呼気弁と、その関連付けられた、呼気体積を測定するための流れセンサとを通って移動する。高湿度の呼気が、冷たい表面と接触した場合、湿気が凝縮して小さな水滴の形態の凝縮物を形成する。この凝縮物は、流れセンサの機能を、またいくつかの場合では、呼気弁の機能を妨げるおそれがある。いくつかの状況では、凝縮物の小滴が、人工呼吸器の下に形成された。
【0040】
本発明は、凝縮物を形成する確率を低下させる手段を含み、それは、呼気弁アセンブリ上に加熱空気を送る手段を含む。タービンは、時間が経過するとタービン軸受に対して破壊的なものとなりうる熱を発生する。図3で示すように、タービン軸受に対する熱の影響を軽減するために、ファン27がタービンアセンブリ18に隣接して配置され、タービン上に冷却空気を吹き付けるようにする。代替的には、タービンアセンブリは、タービンにより生成された空気流の経路中に位置する内部のヒートシンクを含み、空気流の一部が、呼気弁アセンブリ上に流れるように送られることが好ましい。通常、タービンアセンブリを冷却させた加熱空気は、ユニットから排出される。本発明では、加熱空気は、呼気弁アセンブリ上を流れるように送られて、患者からの高湿度の呼気に対して凝縮点にならないように、呼気弁及び流れセンサの温度を上昇させる(例えば、空気流経路29を参照のこと)。したがって、タービンを冷却させた加熱空気を用いることにより、呼気弁アセンブリの温度が上昇し、これらの構成部品の部品上に凝縮が形成されないようにすることができる。凝縮が回避されるので、呼気弁及び関連付けられたセンサは、凝縮の形成に関する従来技術の人工呼吸器の困難さを経験することはない。さらに、本発明の設計は、何らかの構成部品の部品を追加せずに、普通であれば周囲に排出されることになる加熱空気を使用して、呼気弁アセンブリ及び関連付けられたセンサの内部及び周囲に凝縮物が形成される確率を低下させる。
【0041】
本発明の他の特徴は、入口空気フィルタが交換を必要としていることを検出しユーザに示すための手段を対象とする。図10を参照すると、換気のための空気は、入口フィルタ23を通って機械の中に吸引される。通常、入口フィルタ23は、人工呼吸器ハウジング12上に位置し、患者に送達される空気から微粒子を濾過する。この理由で、フィルタの通気路へのどんな障害物も阻止することが重要である。
【0042】
入口フィルタ23中の障害物は、最終的に人工呼吸器を悪化させる、又は誤動作させることになる。フィルタ交換が必要な場合にオペレータに知らせるために、フィルタの状態を評価することが必要である。しかし、フィルタの交換は、機械の動作環境に依存しており、空気中のゴミの量は、かなり変化する可能性がある。したがって、交換時期が変化しうるので、フィルタの交換は、予防的な点検作業としてスケジュールを立てることができない。そうではなくて、フィルタの有効性を絶えず確認することが必要である。
【0043】
本発明は、空気入口センサを設けることによりこの問題を克服する。センサは、機械に入る空気量を測定することにより、フィルタの有効性を検出する。フィルタが塞がれると、その抵抗が増加するが、それは、機械中に吸引される空気が少なくなることを意味する。タービンは、空気入口部から空気を吸引するので、フィルタを介して十分な空気が入らない場合、真空が生成される。
【0044】
図10で示すように、本発明は、機械の主電子ボード上に配置される圧力センサ57を提供し、圧力センサ57は、タービンの空気の入口に管を介して接続される。センサの読取りが、真空が存在すること、すなわち、汚れたフィルタが存在することを示す事前設定値に達した場合、機械は、表示画面上に表示されるサービスメッセージ58により、かつ/又は可聴信号により、フィルタを交換するようにオペレータを促す。
【0045】
本発明のさらに他の特徴は、改善された電源である。図11で示すように、本発明の人工呼吸器は、電源出力にアクセス可能である場合に使用するための、また内部の一体化された電池74を充電するための外部のAC電源コード72を含む、別個の、冗長性を有する電源を含む。したがって、電源出力が利用可能ではない場合、人工呼吸器は、内部の一体化された電池74を用いて動作することができる。人工呼吸器はまた、電力用としてユニットに差し込むことのできる外部電池76を含む。最後に、本発明の人工呼吸器は、一次の電力源が故障してもバックアップ電池78を含んでいる。各供給源は、人工呼吸器を動作させるために所望の電力源を自動的に選択する電力切替えシステム70に電気的に結合される。冗長性を有する電源を考慮すると、ユニットの電源を落として再起動する必要なく、電池を交換することができる。
【0046】
本発明の例示的な諸実施形態が、添付の図面を参照して述べられてきたが、本発明は、これらの正確な実施形態に限定されないこと、及び本発明の範囲から逸脱することなく、当業者により様々な他の変更及び修正を諸実施形態に対して行いうることを理解されたい。
【符号の説明】
【0047】
10 人工呼吸器
12 ハウジング
14 タッチスクリーン
16 空気ボックスユニット
18 タービンアセンブリ
20 比例障害弁(POV)
21 空気フィルタ
22 高圧ボックス
23 入口フィルタ
24 ノイズダンパ
25 入口
26 吸気弁アセンブリ、一方向の吸気弁及びストラット
27 冷却ファン
29 空気流経路
30 呼気弁アセンブリ、呼気弁及びストラットアセンブリ
32 活栓
33 ステッパモータ
34 主入口
36 出口
38 バイパス
40 患者の圧力ポート
42 ポート
44 ポート
46 ポート
48 呼気弁
50 マニホールド
56 安定化流れ翼
57 圧力センサ
58 サービスメッセージ
60 吸気ストラットアセンブリ
62 オリフィスディスク
64 ディフューザ
66 圧力測定ポート
68 圧力測定ポート
70 電力切替えシステム
72 AC電源コード
74 電池
76 外部電池
78 バックアップ電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の呼吸を置き換える、又は補うための人工呼吸器であって、
陽圧の空気流を生成するためのタービンと、
モータにより回転可能に動作可能な活栓を有する比例障害弁を備える制御弁であり、入口、出口、及びバイパス通路を含み、前記比例障害弁が、前記バイパス通路及び出口を介する前記入口からの前記流れを制御するように動作する、制御弁と、
前記制御弁の出口から流れる空気を前記患者に送る手段と
を備える人工呼吸器。
【請求項2】
前記モータがステッパモータである、請求項1記載の人工呼吸器。
【請求項3】
前記比例障害弁の前記活栓が、前記活栓がその中で回転する開口部に近接しているが接触しない、請求項1記載の人工呼吸器。
【請求項4】
前記タービンが、エネルギー効率にとって最適なRPMで動作し、また前記比例障害弁が、前記バイパス通路を介して空気を送ることにより、前記患者への空気流を制御する、請求項1記載の人工呼吸器。
【請求項5】
前記空気流を送る手段が、オリフィスディスクの形態の小径領域を有する吸気ストラットアセンブリを含む、請求項1記載の人工呼吸器。
【請求項6】
前記吸気ストラットアセンブリが、前記オリフィスディスクの前記入口側及び前記出口側に位置する少なくとも1つの圧力センサを含む、請求項5記載の人工呼吸器。
【請求項7】
前記吸気ストラットの前記出口側がディフューザを含む、請求項6記載の人工呼吸器。
【請求項8】
前記空気流を送る手段が、入口と出口の間で小径領域を有する呼気弁アセンブリを含み、小径前記領域が、空気流の乱れを低減するために、半径方向内側に延びる複数の翼を含む、請求項1記載の人工呼吸器。
【請求項9】
前記呼気弁アセンブリが、一体の射出成形構成部品である呼気ストラットを含む、請求項8記載の人工呼吸器。
【請求項10】
前記タービンの空気入口と流体連通する人工呼吸器の空気入口をさらに備え、前記人工呼吸器の空気入口が、入口空気フィルタと、前記入口空気フィルタが交換を必要としていることを判定しユーザに示すための手段とを含む、請求項1記載の人工呼吸器。
【請求項11】
前記判定手段が、前記タービンの空気入口に位置する圧力センサを備える、請求項10記載の人工呼吸器。
【請求項12】
内部の充電可能な電池と、外部の電源コードと、前記人工呼吸器内に差し込むように適合可能な外部電池と、内部のバックアップ電池とを含む冗長性を有する電源をさらに備える、請求項1記載の人工呼吸器。
【請求項13】
前記空気流を送る手段が、呼気弁アセンブリを含み、また前記人工呼吸器が、前記タービンを冷却するための手段をさらに備え、さらに、前記タービンにより加熱された空気が、前記呼気弁アセンブリ上を流れるように送られて前記アセンブリを加温し、それにより凝縮が形成される確率を低下させる、請求項1記載の人工呼吸器。
【請求項14】
患者の呼吸を置き換える、又は補うための人工呼吸器であって、
前記患者に送達される陽圧の空気流を生成するための手段と、
前記生成手段を冷却し、かつ加熱空気の空気流を生成するための手段と、
前記患者により呼出された空気の前記流れを監視するための呼気弁アセンブリと、
前記呼気弁アセンブリ上に加熱空気の前記流れを送って前記アセンブリを加温し、それにより凝縮が形成される確率を低下させる手段と
を備える人工呼吸器。
【請求項15】
前記タービンの空気入口と流体連通する人工呼吸器の空気入口をさらに備え、前記人工呼吸器の空気入口が、入口空気フィルタと、前記入口空気フィルタが交換を必要としていることを判定しユーザに示すための手段とを含む、請求項14記載の人工呼吸器。
【請求項16】
前記生成手段がタービンを含み、さらに、前記冷却手段が、ヒートシンク及び冷却ファンの一方を備える、請求項14記載の人工呼吸器。
【請求項17】
前記生成手段がタービンを含み、さらに、前記タービンが、比例障害制御弁と流体連通しており、前記比例障害制御弁が、前記タービンから出力された空気流を制御するために、入口、出口、及びバイパス通路を有する、請求項14記載の人工呼吸器。
【請求項18】
患者の呼吸を置き換える、又は補うための人工呼吸器であって、
前記患者に送達される空気流を生成するための手段と、
オリフィスディスクの形態の小径領域を有しており、前記オリフィスディスクの前記入口側及び前記出口側にそれぞれに位置する少なくとも1つの圧力センサを含む吸気ストラットアセンブリと、
呼気ストラットを含む呼気弁アセンブリであり、前記呼気ストラットが、空気流の乱れを低減するために、半径方向内側に延びる複数の翼を含む小径領域を有する、呼気弁アセンブリと
を備える人工呼吸器。
【請求項19】
前記患者に供給される前記空気流が、入口、出口、及びバイパス通路を含む比例障害制御弁(POV)を通って流れる、請求項18記載の人工呼吸器。
【請求項20】
前記生成手段が空気入口フィルタを有する空気入口を含み、前記空気入口が、タービンへの入口と流体連通し、さらに、空気圧を感知するために前記空気フィルタの下流でかつ前記タービンの空気入口の上流に圧力センサを含み、事前設定の値を感知すると、前記空気入口フィルタを交換する必要があるという指示を提供する、請求項18記載の人工呼吸器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2012−502782(P2012−502782A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530085(P2011−530085)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/054997
【国際公開番号】WO2010/033358
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)