説明

人工呼吸装置に適したポンプとその排気バルブアセンブリ

【課題】人工呼吸装置に適したポンプと排気バルブアセンブリを提供する。
【解決手段】ベンチレータ装置に適した往復ポンプは、シリンダ10の中を軸方向に往復でき、その内部を吸入チャンバと排出チャンバとに分割するピストン13と、吸入チャンバの中に固定された壁12と、壁に固定された駆動収納部16とからなっている。駆動収納部は、モータMと、モータによって回転させられる回転子17と、駆動収納部内で回転するナット18と、ナットの一端にねじ込まれ、ピストンの他端に固定されたスクリュー21とからなる。ピストンは実質的に軸方向あるいは回転方向に動けるようになっており、モータによってナットが前後方向に回転させられると、スクリューとピストンはシリンダ内を軸方向に往復運動し、また、シリンダに対しスクリューとピストンが回転して、ピストンとシリンダの間での磨耗を平均化するようにできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ、特に人工呼吸装置に適したポンプに関する。本発明はまた、そのようなポンプと人工呼吸装置に適した排気バルブアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
ベンチレータ装置とも呼ばれる人工呼吸装置は患者に対する機械的な呼吸あるいは通気の補助のために広く使用されている。このような装置の例は、本出願人の先願米国特許4,807,616、4,823,787、あるいは4,941,469に記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、人工呼吸装置に特に適した新しいポンプを提供することであり、以下に詳しく述べるであろう多くの重要な利点を提供することである。本発明の他の目的は、上記の本発明の人工呼吸装置に特に適した排気バルブアセンブリを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の側面によれば、ベンチレータ装置に特に適した往復ポンプが提供され、これは、一端に吸入口、他端に排出口を有するポンプ収納部と、吸入口と排出口の間にあるシリンダと、シリンダの中を軸方向に往復可能で、その内部を吸入口へ通じる吸入チャンバと排出口へ通じる排出チャンバとに分割するピストンと、吸入口へと通じる通気路を有する吸入チャンバ内に固定された壁と、モータにエネルギーを供給することにより回転する回転子を有するモータを含む前記壁に固定された駆動収納部と、駆動収納部の中で回転し、回転子とともに回転するようにこれに固定されたナットと、一端ではナットにねじ込まれ、他端ではピストンに固定されたスクリューとからなる。ピストンは、ナットと駆動収納部との間にある回転可能なベアリングと、ピストンとシリンダとの間のシールとによって支持されている。
【0005】
本発明の第2の側面によれば、人工呼吸装置が提供され、これは、一端に吸入口、他端 に排出口を有するポンプ収納部と、吸入口と排出口の間にあるシリンダと、シリンダの中を軸方向に往復可能で、その内部を吸入口へ通じる吸入チャンバと排出口へ通じる排出チャンバとに分割するピストンと、接合部品でポンプ収納部の排出口に取り付けられた排気バルブと、外気中へと導く接合部品内の単方向バルブとからなっている。単方向バルブは通常閉じているが、接合部品内部に負の圧力がかかることにより、接合部品の内部を外気中に開くために自動的に開くようになっている。
【0006】
本発明の第3の側面によれば、上記本発明の人工呼吸装置に特に適した排気バルブアセンブリを提供し、これは、ポンプの排出口に接続可能な吸入ポートを有する収納部と、患者に接続するための排出ポートと、外気中へと導く排気ポートと、排出ポートを吸入ポートまたは排気ポートへ接続するバルブ部材と、内部の圧力に応じてバルブ部材の動作を制御する制御チャンバとからなる。排気バルブアセンブリは更に、排気バルブのバルブ部材が排出ポートを吸入ポートと接続するように、吸気の間は制御チャンバ内の圧力を上昇させ、排気バルブのバルブ部材が排出ポートを排気バルブの排気ポートと接続するように、排気の間は制御チャンバ内の圧力を降下させるように制御チャンバ内の圧力を制御する制御バルブを含んでいる。制御バルブは更に、排気中に制御チャンバ内の所定の分圧を予め設定し、排気バルブが開く排気圧力を予め設定する前設定手段を含む。
【0007】
第1の側面によれば、ポンプを機械的慣性の非常に小さいものに構成することができ、ピストンの運動方向の逆転を非常に速く行うことが出来る(約5ミリ秒)。このように、このようなポンプを含んだ人工呼吸機は、新生児の呼吸に要求されるような非常に速い呼吸速度、例えば1分間に150回の呼吸を提供することができるとともに、他の場合に要求されるより遅い呼吸速度も提供できる。
【0008】
第2の側面によれば、このような単方向バルブは人工呼吸 機が止まったり、内部に詰まりやや障害があるとき、患者が周囲の空気を吸えるようにする。従来の人工呼吸機では、一般にH−バルブと呼ばれている単方向バルブは、一般に人工呼吸機の患者への空気供給チューブに外付けされている。ポンプ収納部を排気バルブに接続する接合部品の一体的一部分としてこのバルブを用意することによって、よりコンパクトでポータブルに装置を作り上げることが出来る。
【0009】
第3の側面によれば、例えば、排気のとき患者の 管のところでは一定の低圧力を維持して、患者の肺が僅かに膨張を維持するようにすることが望まれることが多い。他方、排気のあいだのこの管の圧力は、排気を妨げるほどに余分に大きくあってはならない。本発明の上記特徴によれば、排気中の圧力を個々の状況に合わせて所望の値に前もって設定することが出来る。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポンプを機械的慣性の非常に小さいものに構成することができ、ピストンの運動方向の逆転を非常に速く行うことが出来る。例えば、新生児の呼吸に要求されるような非常に速い速度(例えば1分間に150回)の呼吸を提供することができる。
【0011】
また、人工呼吸機が止まったり、内部で詰まりや障害があるとき、患者が周囲の空気を吸うことができると共に、ポンプ収納部を排気バルブに接続する接合部品の一体的一部分として、このバルブを構成することによって、よりコンパクトでポータブルに装置を作り上げることが出来る。
【0012】
更に、排気中の圧力を個々の状況に合わせて所望の値に前もって設定することが出来る。これにより、圧力を不要に大きくすることなく、排気のとき患者の管のところでは一定の低圧力を維持して、患者の肺を僅かに膨張させておくようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1に 図示されているポンプは、機械的な呼吸あるいは通気を補助するための人工呼吸装置に特に適している。ポンプは、一端には吸入ポート3、他端には排出ポート4が形成された収納部2を含んでいる。吸入ポート3は、ポンプ収納部に吸入された空気から固体微粒子を取り除くためのフィルタ6が設けられた吸入部品5が取りつけられるようになっている。排出ポート4は、以下に述べるように、供給チューブを通して排出口を排気バルブに接続するための接合部品7が取りつけられるようになっており、ポンプ収納部の外側へのみ空気が流れるように単方向バルブ8が設けられている。
【0014】
収納部2の内部は、一端が収納 部の端部壁11によって閉鎖され、他端が収納部の中に固定されている分離壁12によって閉鎖されているシリンダ10を含んでいる。ピストン13は、往復できるようにシリンダ10内に設けられており、シリンダの内部を吸入チャンバCiと排出チャンバCoに分割している。吸入チャンバCiは、取入れチューブ14と固定された分離壁12に形成された開口部15を通じて吸入口3とつながっている。一方、排出チャンバCoは、単方向バルブ8と接合部品7を通じて排出口とつながっている。
【0015】
ピストン13は、固定された分離壁12に設けられた駆動収納部16内に設置されているモータMによってシリンダ10の中を軸方向に往復することができる。モータMは、ゴムの騒音遮断材20を介して、回転ベアリング19によって駆動収納部16に回転するように取りつけられたナット18に固定された回転子17を含んでいる。
【0016】
ナット18は、固定された分離壁12の開口部22を通して連続スクリュー21を連続的に受け入れる。連続スクリュー21の一端はピストン13が固定され、他端はナット18にねじ込まれる。ポンプ収納部の吸入口3に面した駆動収納部16の端は、連続スクリュー21の端と接する管状スリーブ24と一体的に形成されている端部壁23によって閉鎖されている。
【0017】
管状スリーブ24は、最も右によった位置で連続スクリュー21の全体に渡る長さを完全に収納してしまう位の長さをしており、スクリュー21を完全に覆い包み、外部からの汚染から守るように端部壁25によって閉鎖されている。スリーブ24の内径はその内側の端において広げられており、スクリュー21が管状スリーブ24内を往復するとき、連続的にスクリュー21に油をさすためのフェルト製注油芯26が取りつけられる。
【0018】
ジャバラ27はスクリュー21を包んでいる。ジャバラ27はピストン13に一端で取りつけられ、他端で固定された分離壁12に取りつけられている。そして、ピストンと分離壁の間のスクリューの部分が汚れないように保護する。ジャバラ27はまた、チャンバーCiを密閉し、内部の空気が密閉されていないモータ収納部から外に逃げてしまわないようにする。
【0019】
連続スクリュー21を含むピストン13 は、駆動収納部16内の前述した回転ベアリング19とピストンの外縁に沿った回転シール28によって、シリンダ10の内部の動きに対して支持されている。ジャバラ27とシール28は軸方向と幾らかの回転運動とをピストン13が出来るようにしておりピストンは実質的にそのような両方の運動について制限されていない。このように、スクリュー21が取りつけられているナット18の回転はスクリュー21を動かすであろうし、また、ピストン13も軸方向に動かすであろう。そして、更に、ピストンがシリンダ10に対して幾らか回転出来るようにするであろう。後者の機能はピストン13とシリンダ10との間の磨耗を平均化する。
【0020】
ピストン13には、空気が吸入チャンバCiから排出チャンバCoに向かった方向にのみ流れるようにする単方向バルブ30を取りつける開口部が形成されている。この単方向バルブと、空気が排出チャンバCoの外側へのみ流れるようにする排出口4内の単方向バルブ8とは、例えば、傘の形をしていることから名前の付いたアンブレラバルブであってもよい。
【0021】
更に、単方向バルブ31(図2参照)は、ポンプ収納部の排出ポート4に取りつけられている接合部品7の中に設けられている。単方向バルブ31は外気中へと続く開口部32を閉じるため通常圧力がかけられており、接合部品7内に負の圧力があれば、接合部品の内部と外気中とをつなぐため折れ曲がる(図1及び図2においては、右側に)バルブ弁の形をしていてもよい。バルブ31は、このように、通常、患者用空気供給ホースに設けられているH−バルブと同じ機能を果たし、人工呼吸機が止まったり、内部に詰まりや障害が起こったときに、患者が周囲の空気を吸入することができるようにする。
【0022】
ポンプ収納部2は更に、支持脚33が設けられていて、これを任意の適当な水平面上で支持するようになっている。図1に示されているポンプの動作は上記記載より明らかであろう。このように、モータMがエネルギーを供給されて一方向に動くと、その回転子17は、ナット18を動かしてスクリュー21を動かし、従ってピストン13を一つの方向、例えば左方向に動かして排出チャンバCoを縮ませるようにし、空気を排出単方向バルブ8から外へ押し出す。ピストン13のこの動きのあいだ、その単方向バルブ30は閉じられており、吸入チャンバCi内の空気が排出チャンバCoに入らないようにする。
【0023】
モータMがエネルギーを供給されて反対方向に動くと、スクリュー21と、従って、ピストン13とが反対方向、例えば右方向に動かされる。これにより、排出チャンバCoを広げ、吸入チャンバCiを縮め、吸入チャンバからの空気は単方向バルブ30を通って排出チャンバに吸引される。単方向バルブ8は閉じられ、空気が排出チャンバから逃げ出さないようにする。
【0024】
ピストン13は回転ベアリング19とシール28とに よって、軸方向の動きと回転方向の動きとに対して実質的に制限されずに支持されている。このように、ナット18の回転による軸方向の移動の間、幾らかの回転方向の動きをすることができ、これはシール28の外縁の回りの磨耗を平均化し、その寿命を延ばすのに有利であることが分かっている。
【0025】
人工呼吸機が止まったり、人工呼吸機内に内部の詰まりや障害があるときには、患者は依然、接合部品7内の単方向バルブ31によって吸気することが出来る。なぜなら、そのような状態の下での吸気の間、接合部品内に作られる負の圧力によって後者のバルブが開くからである。
【0026】
図1のポンプにおいて、ピストン13の各一往復サイクルにより排出ポート4を介して空気の排出ストロークが形成されることが見て取れるであろう。図1に示されているポンプはよって、単一方向作動ポンプである。
【0027】
図3は、ピストンの各一往復サイクルに対し2排出ストロークを形成するように一部変更した他は図1と実質的に同じ構成の双方向作動ポンプを示している。理解を助けるために、図3のポンプにおいて図1と共通のパーツには同じ参照番号を付してある。
【0028】
図3に示されている双方向作動ポンプは、上記の図1のポンプと共通のパーツに加えて、チャンバCiとチャンバCoとに吸入口3を接続する吸入導管40と、チャンバCiとチャンバCoとに排出口4を接続する排出導管41とを含んでいる。排出口4は、図1に図示されている単一方向作動ポンプにおけるように単方向バルブ8を含んでおり、排出チャンバCoから排出ダクト41のそれぞれの端へと外側にのみ空気が流れるようにしている。ダクト41の後者の端は図1の排出接合部品7と同じ機能を持っており、通常、通気開口部32を閉じている単方向バルブ31が設けられている。もう1つの単方向バルブ42は吸入チャンバCiに通じる排出導管41の反対側の端に設けられており、このチャンバから排出導管への空気の外側に向かっての流れのみが起きるようにしている。
【0029】
図3に示されている双方向作動ポンプのピストン13は単方向バルブを含んでいない。そのかわりに、図3のポンプは、空気が吸入チャンバCiの中へのみながれるようにする、吸入導管40の一端の単方向バルブ43と、空気が排出チャンバCoの中へのみながれるようにする、吸入導管40の反対側の一端の第2の単方向バルブ44とを含んでいる。
【0030】
図3に図示されている双方向作動ポンプは、ピストン13の各往復サイクルに対し2つの吸入あるいは排出ストロークが提供されることを除いて、図1に図示されている単一方向作動ポンプと同様に作動することが見て取れるであろう。
【0031】
図4は、ポンプPと、患者にポンプで作られた空気を供給するための排気バルブアセンブリとを含んでいる。ポンプPは図1の単一方向作動ポンプあるいは図3の双方向作動ポンプの何方かとすることが出来る。例示の目的で、以下には双方向作動ポンプを使用して記載する。図3に図示されているように、このポンプの排出口は、空気供給チューブ48と圧力制御チューブ49とを含んでおり、共に、図1の接合部品7として働く排出導管41のそれぞれの端に接続されている。
【0032】
排気バルブアセンブリは図4に 図示されているように患者にポンプPが排出する空気を供給するためにポンプPに接続されている。それは、排気バルブ50と、患者が吸気と排気とが出来るように排気バルブの動作の制御を行う制御バルブ60とを含んでいる。以下により詳細に述べるように、例えば、患者の肺が僅かに膨らんだ状態にしておくような低圧力に固定するため、そして/あるいは、患者にとって危険な高圧力にならないように、制御バルブ60は吸気と排気の間の圧力を前もって設定出来るようにする。
【0033】
排気バルブ50は、ポンプPの排出口で空気供給チューブ48に接続されている吸入ポート51と、患者との接続のための排出ポート52と、外気へと導く排気ポート53と、排出ポート52を吸入ポート51あるいは排気ポート53へ接続するバルブ部材54とを含んでいる。バルブ部材54はバルブシート54a上に乗れるようになっていて隔壁の形をしており、隔壁の一方の側の吸入ポート51における圧力と隔壁の反対側の制御チャンバ55における圧力との差分圧によって制御される。制御チャンバ55は、チューブ56によって制御バルブ60に接続されており、制御バルブの動作がチャンバ55の中の圧力を制御し、従って、バルブ部材54の動作を制御する。
【0034】
制御バルブ60はチューブ49を通じてポンプPの排気口に接続された吸入ポート61と、チューブ56を通じて排気バルブ50の制御チャンバ55に接続された制御ポート62と、外気に導く通気孔63と、制御部材64とからなっている。制御部材64は制御ポート62を吸入ポート61に接続する第1の位置(図5と図6とに図示)あるいは、制御ポート62を通気孔63に接続する第2の位置(図7と図8とに図示)に移動可能である。
【0035】
制御ポート62は排気バルブ50の制御チャンバ55へ吸入ポートにおける圧力(これは、ポンプPの排出圧力と同じである。)を移動するために吸入ポート61に接続可能である。これにより、隔壁54は閉鎖位置に移動し(図4に図示)、吸入ポート51と排出ポート52を通じた患者による吸気を可能にしている。制御バルブ60の制御ポート62はまた、排出ポート52と、外気へ導く排気ポート53とを通じて患者が排気出来るように、排気バルブ50の制御チャンバ55を外気へと通気するために通気孔63に接続可能である。以下に説明するように、制御バルブ60は排気中に排気バルブ50の制御チャンバ55内の圧力を制御するために前もって設定してもよく、これによって、患者にとって危険である排気中の余分な圧力を必要としないで、排気中に患者の肺が僅かに膨らんだ状態に保つ(これは、多くの患者にとって有益である。)ために、患者による排気圧力を前もって設定する。
【0036】
図5と図7に図示されているように、制御バルブ60の制御部材64は2つの通気路を選択的に制御する隔壁である。つまり、1つの通気路は吸入ポート61と制御ポート62との間であり、一方、第2の通気路は制御ポート62と外気通気孔63との間である。
【0037】
制御バルブ60は、制御バルブを通って延びている穴67の中を移動可能な弾力性チューブ66によって包まれている中空の金属性筒65を含んでいる。中空の筒65の一端は外気通気孔63を規定している。中空の筒の反対の一端は隔壁64によって噛み合う、広がった先端部68とともに形成されており、隔壁は中空の筒65とその弾力性スリーブ66を左側へ押しつける(図5と図7)。しかし、弾力性スリーブ66には、金属性筒65を右側に、つまり隔壁64に押しつけるよう予め圧力がかけられているとともに、弾力性スリーブ66は制御バルブ60の中に固定された環状フランジ69に対して限度を設けている。制御バルブは更に、制御ポート62から隔壁64へ導く通気路70を有している。
【0038】
制御バルブ60は更に、コイル71と、コイル71を流れる電流によって作られる磁力により、制御バルブの収納部に向かって磁気的に引きつけられる接極材あるいはクラッパ72とからなるソレノイドを含んでいる。接極材72は、作用する相対力に依存して、3つのモードのうちの1つに基づいた位置を取ることが出来る。つまり、(1)隔壁が排出口62において圧力に曝されている、接極材72が隔壁64により右に押しつけられる(図7参照)圧力緩和モード。この緩和位置においては、排出口62における圧力のために隔壁は筒65の先端部68から離れ、外気通気孔63を通って排出ポート62から外気へと空気が逃げれるようになっており、制御チャンバ55内の圧力を下げる。(2)接極材72が隔壁64を筒65の先端部68に向かって押しつける「保持」モード(図5)。この位置においては、排出ポート62と外気あるいは吸入ポート61との間には空気の流れはなく、排出ポート62における圧力は維持される。(3)接極材72が隔壁64を筒65の先端部68に向かって押しつけ、更に、筒を(左側に)押して吸入ポート61と排出ポート62の間に通気路を作る「圧力」モード。このモードにおいては、排出ポートにおける圧力は、吸入ポート61の圧力に達するか、隔壁64に加えられる圧力が接極材72に加えられる磁力を越え、それを右に動かして環状フランジ69内の通気路を閉じてしまう時まで増加する。このモードにおいては、コイル71を流れる電流を変化させることにより、ポート62における圧力を変化させ、排気バルブ50の制御チャンバ55内の圧力を変化させる。
【0039】
上記「保持」モード(2)においては、接極材は非常に僅かに前後に動き、底の端にある設置点の回りを揺動するということは重要である。この揺動は実質的に摩擦がなく、排気バルブの本質的にヒステリシスのない制御を行う調節バルブを提供する。
【0040】
また、隔壁64は、1つは先端部68のための密閉を行い、もう1つは外気からソレノイドの内部の周辺の密閉を行うという2重の密閉ということと共に、力の輸送手段としても作用する。弾力のある弾力性スリーブ66はまた、3重の機能を持った部材であり、すなわち、中空の筒65を右側に押しつけるためのバネとして働き、環状フランジ69に対してシールとして働き、そして吸入ポート61に対してもシールとして働くものである。上記のスリーブ66、先端部68、フランジ69及び隔壁64の構成により、吸入通気路67が開いている時には、通気孔63を通る外気への通気路が開くことが出来ないようにしている。
【0041】
ソレノイドコイル71を流れる電流は、73に模式的に示されている制御回路によって制御される。制御回路73はコイル71を周期的に制御し、それぞれノブ74と75に模式的に示されている手動前設定手段により予め設定されるように、吸気のときには、全体的にあるいは部分的にエネルギー供給を行い、排気のときには、部分的にエネルギー供給を行うか全くエネルギー供給を行わないかする。このように、前設定ノブ74はコイル71のエネルギー供給のサイクルを制御し、従って、吸気/排気の速度を制御する。一方、ノブ75は、吸気と排気の間、コイルにエネルギーを供給する電流を制御し、従って、吸気と排気の間、固定された圧力を制御する。
【0042】
図4に図示されている人工呼吸装置の動作を図5、6、7、8を参照して詳細に説明する。図5と図6は、吸気の間の制御バルブ60の中の隔壁64の位置を示している。この時、十分なエネルギーを供給する電流が制御回路73によってソレノイドコイル71に供給され、ソレノイドがその接極材72を図5と図6に示されている限界の位置まで引っ張るようにする。この限界の位置においては、接極材72は隔壁64を中空の筒65の金属性の先端部68に押しつけ、中空の筒を通る制御ポート62から外気通気孔63への通気路を閉鎖する。接極材72によって隔壁64に加えられる力は中空の筒65とその弾力性スリーブ66を左側へ動かし、従って、環状フランジ69から離れるようにするのに十分で、穴67を通る吸入ポート61からの通気路と制御ポート62への通気路70を開く。従って、この時、ポンプPからの排出圧が排気バルブ50の制御チャンバ55に加えられ、このバルブの隔壁54が、図4に示されているように、バルブシート54aに対し閉じた位置になるようにする。従って、ポンプPの排出口における空気の流れは、排気バルブ50の吸入ポート51と排出ポート52とを通ってポンプと空気供給チューブ48から患者へと届く。
【0043】
今、ソレノイドコイル71を流れる電流がゼロになったとすると、制御バルブ60の隔壁64は図7と図8で図示される位置を取るであろう。この位置においては、弾力性チューブ66の予め圧力をかけた状態は、弾力性チューブの縁がフランジ69と噛み合うまで、中空の筒65を右側に動かし、従って、吸入ポート61と制御ポート62との間の通気路が閉じる。しかし、中空の筒65の先端部68は依然隔壁64と接しており、先端部と隔壁との間の通気路も閉じられている。従って、制御チャンバ55内の圧力は制御チャンバの中に閉じ込められる。しかし、接極材72は最も右側の位置にあるので、隔壁64によって中空の筒65の外部先端部68に加えられる力は非常に小さいものである。従って、制御ポート62から隔壁にあと僅かに大きい圧力が加えられれば、隔壁を動かし(図7と図8では右側へ)、隔壁と中空の筒の外部先端部68との間の通気路を開き、外気通気孔63を通じて制御チャンバ55内の圧力を外気へと通気する。このように、患者が排気ポート53を通じて排気するとき、排気バルブの隔壁54はシート54aから離れ、排出ポート52を排気ポート53に接続し、患者が外気へ排気出来るようにする。
【0044】
排気中にコイル71に流れる電流の大きさが大きいほど、隔壁と外気通気孔63へ導く中空の筒65の先端部68との間の通気路が開くのを阻止している隔壁64に対してソレノイドの接極材72によって加えられる力も大きくなり、従って、吸気と排気の間、制御チャンバ55に加えられる固定された圧力も大きくなる。従って、排気圧は個々の場合に応じて制御ノブ75によって予め設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に基づいて構成され、特に人工呼吸装置に適した単一方向作動ポンプの一形態を示す水平断面図である。
【図2】図1の拡大断片図である。
【図3】本発明に基づいて構成された双方向作動ポンプを示す図1と同様の図である。
【図4】本発明に基づいて構成された排気バルブアセンブリの一形態を含む人工呼吸装置と、その図1または図3のポンプとの接続を示す縦断面図である。
【図5】図4の排気バルブアセンブリの制御バルブの一状態を示す拡大図である。
【図6】図5の制御バルブの拡大断片図である。
【図7】図4の排気バルブアセンブリの制御バルブの別の一状態を示す拡大図である。
【図8】図7の制御バルブの拡大断片図である。
【符号の説明】
【0046】
2 収納部
3 吸入ポート
4 排出ポート
5 吸入部品
6 フィルタ
7 接合部品
8 単方向バルブ
10 シリンダ
11 端部壁
12 分離壁
13 ピストン
14 取り入れチューブ
15 開口部
16 駆動収納部
17 回転子
18 ナット
19 回転ベアリング
20 ゴムの騒音遮断材
21 スクリュー
22 開口部
23 端部壁
24 管状スリーブ
25 端部壁
26 フェルト製注油芯
27 ジャバラ
28 シール
30 単方向バルブ
31 単方向バルブ
32 開口部
33 支持脚
40 吸入導管
41 排出導管(ダクト)
42 単方向バルブ
43 単方向バルブ
44 単方向バルブ
48 空気供給チューブ
49 圧力制御チューブ
50 排気バルブ
51 吸入ポート
52 排出ポート
53 排気ポート
54 バルブ部材
54a バルブシート
55 制御チャンバ
56 チューブ
60 制御バルブ
61 吸入ポート
62 制御ポート
63 通気孔
64 制御部材
65 中空の金属製筒
66 弾力性チューブ(スリーブ)
67 穴
68 先端部
69 環状フランジ
70 通気路
71 コイル
72 接極材(クラッパ)
73 制御回路
74、75 ノブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプの排出口と接続する吸入ポートを有する収納部と、患者につなげるための排出ポートと、外気へ導く排気ポートと、前記排出ポートを前記吸入ポートまたは前記排気ポートに接続するバルブ部材と、内部の圧力に応じて前記バルブ部材の動作を制御する制御チャンバと、排気バルブの前記バルブ部材が前記排出ポートを前記吸入ポートに接続するように、吸気の間、前記制御チャンバ内部の圧力を上昇させるように、また、排気バルブの前記バルブ部材が前記排出ポートを前記排気バルブの前記排気ポートに接続するように、排気の間、前記制御チャンバ内部の圧力を降下させるように、前記制御チャンバ内部の圧力を制御する制御バルブとを有し、前記制御バルブは、排気の間、前記排気バルブを開くための排気圧を予め設定するために前記制御チャンバ内の所定の分圧を予め設定する前設定手段を有することを特徴とする排気バルブアセンブリ。
【請求項2】
前記制御バルブは、前記ポンプ収納部の前記排出口に接続される吸入ポートと、排気バルブの制御チャンバに接続される制御ポートと、外気へ導く通気孔と、吸気中には、前記排気バルブの前記制御チャンバを前記制御バルブの前記吸入ポート、すなわち前記ポンプ収納部の排出ポートに接続する第1の通気路を開く第1の位置と、排気中には、前記第1の通気路を閉じ、前記排気バルブの前記制御チャンバを外気へ導く前記通気孔に接続する第2の通気路を開く第2の位置とに移動可能なバルブ部品と、ソレノイドにエネルギーが与えられることによって、前記排気バルブの前記制御チャンバ内の圧力を制御する接極材を有する前記ソレノイドと、吸気中は、前記バルブ部品を前記第1の位置に移動させ、排気中は、前記バルブ部品を前記第2の位置に移動させるように前記ソレノイドへのエネルギーの供給を制御する回路とからなることを特徴とする請求項1記載の排気バルブアセンブリ。
【請求項3】
前記バルブ部品は、内部がそ の一端において外気に曝される中空の筒と、前記中空の筒の反対側の端と噛み合う隔壁とを有し、前記ソレノイドの前記接極材は、吸気中、前記中空の筒を前記第1の位置へ押しつけるように前記隔壁に対して作用することを特徴とする請求項2記載の排気バルブアセンブリ。
【請求項4】
前記バルブ部品は更に、前記中空の筒を包み、排気中に前記中空の筒を前記第2の位置へ押しつけるように働く弾力性チューブを含むことを特徴とする請求項3記載の排気バルブアセンブリ。
【請求項5】
前記接極材は、その縁の回りに揺動し、前記排気バルブの本質的にヒステリシスのない制御を行うことが出来ることを特徴とする請求項3記載の排気バルブアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−330821(P2007−330821A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−242694(P2007−242694)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【分割の表示】特願2005−43269(P2005−43269)の分割
【原出願日】平成7年2月28日(1995.2.28)
【出願人】(594181583)