説明

人工大理石の補修方法

【課題】コーティング層が厚い製品であっても補修跡が残らないように補修を施すことが可能な人工大理石の補修方法を提供する。
【解決手段】熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を主体とする重合体と無機充填材から成る樹脂成形体の表面にコーティング層2を形成して成る人工大理石1の表面又は表面近傍の欠陥3を補修するための方法である。上記欠陥3部分を湿式研磨により除去し、その後に上記除去部分を上記コーティング層2と同一の塗料で再コーティングし、その後に上記再コーティング部分を湿式研磨により周囲と面一な滑面に仕上げる。これにより、コーティング層2が厚い場合であっても補修跡が残らないように補修を施すことが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面にコーティングを施して成る人工大理石の補修方法に関するものであり、詳しくは補修跡を目立たせないようにするための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、優れた物性及び高級感から、ビニルエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂の合成樹脂を主体とする人工大理石製の化粧板が広く壁材や台所用天板として用いられている。
【0003】
上記人工大理石としては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂に水酸化アルミニウムなどの無機充填材を添加した樹脂組成体のものがよく使用されており、この樹脂組成体を所定の厚みに成形し、用途に合わせて所定の大きさに切断した後、化粧面にあたる部分を必要に応じて研磨加工して用いられている。このようにして製造された人工大理石は、洗面カウンター、キッチンカウンター、浴槽、洗面ボール等に商品化されて広く利用される。
【0004】
上記人工大理石製品の表面又は表面近傍に傷や異物、泡噛み等の各種欠陥が発見された場合、従来はまず人工大理石表面を浅く切削するか、又はやすり、サンドペーパー、不織布等を用いた研磨により欠陥を除去し、その後に、除去した部位付近を周囲と同調するように研磨によってぼかして仕上げるといった方法で補修していた。
【0005】
ここで、上記人工大理石製品の表面には、防汚性向上や手入れの容易性向上を目的としてコーティング層を形成しておくことがある(特許文献1参照)。そして、このようにコーティング層を形成してある人工大理石製品においても、上記方法と同様の方法で補修がされていた。つまり、図2で示すように、コーティング層2を有する人工大理石1の表面を浅く切削するか、又はやすり、サンドペーパー、不織布等の研磨材4を用いた研磨により欠陥を除去し、除去した部位付近を周囲と同調するように研磨によってぼかし、その後にコーティング層6を再度形成することで仕上げるといった補修方法である。
【0006】
上記従来の補修方法にあっては、コーティング層を有さない製品や、コーティング層が2μm程度以下である製品にあっては周囲との差異が少なくて補修跡が目立たないように仕上げることが可能である。しかし、コーティング層が2μm程度以上である場合に上記従来の補修方法を行うと、特に補修箇所と周囲との間に光沢差が現れ、このため補修跡が残り易くなるといった問題がある。
【特許文献1】特開2006−35049
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みて発明したものであって、コーティング層の厚い製品であっても補修跡が残らないように補修を施すことが可能な人工大理石の補修方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明を、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を主体とする重合体と無機充填材から成る樹脂成形体の表面にコーティング層2を形成して成る人工大理石1の表面又は表面近傍の欠陥3を補修するための方法であって、上記欠陥3部分を湿式研磨により除去し、その後に上記除去部分を上記コーティング層2と同一の塗料で再コーティングし、その後に上記再コーティング部分を湿式研磨により周囲と面一な滑面に仕上げることを特徴とした人工大理石の補修方法とする。
【0009】
このような補修方法とすることで、2μm程度以上であるような厚いコーティング層2が形成してある人工大理石1の場合であっても、周囲との光沢差が少なくて補修跡が目立たないように仕上げることが可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、コーティング層の厚い製品であっても補修跡が残らないように補修を施すことが可能であるといった効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明における人工大理石は、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂と無機粉体から成り、必要に応じて着色剤や柄材等の添加剤を加えることも可能である。このように構成した人工大理石の少なくとも一方の面に、フッ素系化合物を塗布、浸透させることでコーティング層を形成し、これにより人工大理石化粧板を形成する。乾燥工程は室温でもよいし、また加熱させてもよい。
【0012】
なお使用するフッ素系化合物としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、テトラフルオロエチレンとへテロ環含有フッ素系モノマーの共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、フルオロアルキル(メタ)アクリレート重合体、フルオロアルキル(メタ)アクリレートとその他アルキル(メタ)アクリレート共重合体、フッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンとテトラフロロエチレン共重合体、フッ化ビニリデンとパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、等が例示できる。
【0013】
このようにして出来た人工大理石の表面を補修するには、まず欠陥部分の除去を行う。具体的にはやすり、サンドペーパー、不織布等の適当な研磨材を用いて除去するのであるが、この際に水を滴下させておき、湿式研磨によって除去を行う。
【0014】
表面部分の欠陥部分を除去した後に、他のコーティング層を形成する塗料と同一の塗料を用い、これを除去部分に塗布、浸透させることで凹状の除去部分を埋め合わせるように再コーティングさせる。そして、指触乾燥後に上記再コーティング部分の表面を仕上げるのであるが、このときも上記再コーティング部分の表面に水を滴下させながら、やすり、サンドペーパー、不織布等の適当な研磨材を用い、湿式研磨によって周囲と面一な滑面に仕上げる。
【0015】
このように本発明にあっては、欠陥部分の除去と、この除去部分を埋め合わす再コーティング部分の表面仕上げの両方を、水を用いた湿式研磨で行う。これにより、欠損除去時と再コーティング部分の表面仕上げ時の両方において、研磨材の目詰まりが低減されて研磨傷を消し易くなり、他のコーティング層と再コーティング部分との境界がぼかし易くなる。また研磨時に生じる研磨粉が研磨材となって作用することで、表面光沢差が大きくなることが防止される。
【実施例】
【0016】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳しく説明する。
【0017】
まず、ビニルエステル樹脂(武田薬品(株)製「プロミネートP−311」)に、水酸化アルミニウム(住友化学(株)製「CW−308B」を、ビニルエステル樹脂100重量部に対して200重量部配合し、硬化剤(日本油脂(株)製「パーキュアWO」)を適量添加し、攪拌機で混合することによって、樹脂組成物を調製した。この樹脂組成物を2666Pa(20Torr)の減圧下で30分間減圧脱泡処理し、これを金型内に注入して金型を90℃で70分間加熱することによって樹脂組成物を硬化させ、10mm厚の平板として成形した人工大理石を得た。
【0018】
この人工大理石を研磨材(住友3M(株)製「スコッチ・ブライト」)で表面研磨した後に、フッ素樹脂をフッ素系溶剤に希釈させたフッ素樹脂化合物から成る塗料をスプレー若しくは刷毛等で塗布し、室温にて乾燥させた。表面研磨の番手は♯240〜♯1000の範囲で、平均粗さは0.2μm〜1.5μm程度である。
【0019】
図1(a)に示すように、上記塗料によりコーティング層2を形成した人工大理石1の表面に、傷等の欠陥3がある場合、図1(b)、(c)に示すように水5を滴下させながらサンドペーパー等の研磨材4で表面の欠陥3部分を除去する。そして表面に残留する水5を除去した後に、他部位でコーティングされている塗料と同一の塗料を塗布し、指触乾燥させることで、図1(d)に示すように上記除去部分を埋め合わせるようなコーティング層6を形成する。
【0020】
そして、この再コーティング後には図1(e)に示すように、コーティング層6から周囲のコーティング層2の境界近傍にかけての表面部分を、再度水5を滴下させながら同様の研磨材4で研磨する。これにより図1(f)に示すように、補修部分の境界をぼかして周囲との違和感が生じないように仕上げることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)〜(f)は本発明の実施形態における人工大理石の補修法を順に示す説明図である。
【図2】(a)〜(c)は従来の人工大理石の補修法を順に示す説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1 人工大理石
2 コーティング層
3 欠陥

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を主体とする重合体と無機充填材から成る樹脂成形体の表面にコーティング層を形成して成る人工大理石の表面又は表面近傍の欠陥を補修するための方法であって、上記欠陥部分を湿式研磨により除去し、その後に上記除去部分を上記コーティング層と同一の塗料で再コーティングし、その後に上記再コーティング部分を湿式研磨により周囲と面一な滑面に仕上げることを特徴とする人工大理石の補修方法。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−7344(P2008−7344A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−177332(P2006−177332)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】