人工太陽光装置
【課題】 放射される混合光について、放射強度の変化のみでなく、分光分布特性が変動するように制御することができる人工太陽光装置を提供すること。
【解決手段】 本発明の人工太陽光装置は、放電ランプ、放電ランプ用分光分布制御手段、および放電ランプ入力電力制御手段を有してなる第1の光放射器と、白熱電球、白熱電球用分光分布制御手段、および白熱電球入力電力制御手段を有してなる第2の光放射器とを具えてなり、第1の光放射器の放電ランプ入力電力制御手段と第2の光放射器の白熱電球入力電力制御手段とが独立に作動されることにより、自然太陽光において観察される放射強度および分光分布特性の変化に対応した状態の混合光が放射される。第1の光放射器の放電ランプは、キセノンランプおよびメタルハライドランプの少なくとも一方または両方であり、第2の光放射器の白熱電球がハロゲンランプであることが好ましい。
【解決手段】 本発明の人工太陽光装置は、放電ランプ、放電ランプ用分光分布制御手段、および放電ランプ入力電力制御手段を有してなる第1の光放射器と、白熱電球、白熱電球用分光分布制御手段、および白熱電球入力電力制御手段を有してなる第2の光放射器とを具えてなり、第1の光放射器の放電ランプ入力電力制御手段と第2の光放射器の白熱電球入力電力制御手段とが独立に作動されることにより、自然太陽光において観察される放射強度および分光分布特性の変化に対応した状態の混合光が放射される。第1の光放射器の放電ランプは、キセノンランプおよびメタルハライドランプの少なくとも一方または両方であり、第2の光放射器の白熱電球がハロゲンランプであることが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自然太陽光に近似した特性の光が放射される人工太陽光装置に関する。
【0002】
【従来の技術】概略の波長特性が自然太陽光に近似した光を放射する、ランプよりなる人工光源を具えたソーラーシミュレータなどの人工太陽光装置は、例えば太陽電池の特性試験、植物の育成試験等において必要とされており、更にこのような人工太陽光装置においては、単に光の放射強度のみでなく、分光分布が適切に制御されることが望まれている。しかしながら、単一の種類のランプよりなる人工光源では、特性の異なるフィルターなどを利用しても、自然太陽光に十分に近似した分光分布特性の光を得ることが実際上不可能であるため、複数種類のランプを組合せて用いることが提案されている。
【0003】例えば特開平9−147602号公報では、メタルハライドランプとハロゲンランプとを用い、メタルハライドランプより放射される光のうち紫外領域および赤外領域の光をフィルターなどによってカットして可視領域の光を取り出すと共に、ハロゲンランプからは可視領域およびこれより短波長領域の光をフィルターなどによってカットして赤外領域の光を取り出し、これら2つの光を合成して人工太陽光を得ることが提案されている。
【0004】しかしながら、このような人工太陽光装置においては、可視領域の光源としてメタルハライドランプを用いると共に、赤外領域の光源としてハロゲンランプを用いるものであって、利用する波長領域毎に専用の光源ランプを用いる構成であるため、或る時点における自然太陽光に近似した分光分布特性を有する合成光が得られるとしても、微妙に変化する自然太陽光に対応してその分光分布特性が変化する合成光を得ることはできない。
【0005】すなわち、自然太陽光は、1年における季節、1日における時刻、天候などによってその光の放射強度が大きく変化するものであるが、単に放射強度が変化するのみでなく、分光分布特性も微妙に変化するものであり、具体的には、その放射波長ピークが波長約500〜800nmの領域において変動するように変化する。然るに、従来の人工太陽光装置では、合成光の放射強度の変化を再現することは可能であっても、合成された光における分光分布を微妙に変化させるような制御をすることができず、結局、自然太陽光の再現性が不十分である、という問題点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、放射される混合光について、放射強度の変化のみでなく、分光分布特性が変動するように制御することができ、従って再現性が非常に高い人工太陽光装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の人工太陽光装置は、放電ランプ、この放電ランプより放射される光の分光分布を制御する放電ランプ用分光分布制御手段、および当該放電ランプより放射される光の強度を制御するための放電ランプ入力電力制御手段を有してなる第1の光放射器と、白熱電球、この白熱電球より放射される光の分光分布を制御する白熱電球用分光分布制御手段、および当該白熱電球より放射される光の強度を制御するための白熱電球入力電力制御手段を有してなる第2の光放射器とを具えてなり、第1の光放射器の放電ランプ入力電力制御手段と第2の光放射器の白熱電球入力電力制御手段とが独立に作動されることにより、自然太陽光において観察される放射強度および分光分布特性の変化に対応した状態の混合光が放射されることを特徴とする。
【0008】以上において、第1の光放射器の放電ランプ用分光分布制御手段は、紫外領域および赤外領域の光を減衰若しくはカットして主として可視領域の光を取り出す光学装置とされ、第2の光放射器の白熱電球用分光分布制御手段は、赤外領域の光を減衰させてこの減衰した赤外領域の光および可視領域の光を取り出す光学装置とされる。
【0009】また、第1の光放射器の放電ランプは、キセノンランプおよびメタルハライドランプの少なくとも一方または両方であり、第2の光放射器の白熱電球がハロゲンランプであることが好ましい。更に、第1の光放射器における放電ランプ用分光分布制御手段に係る光学装置が、当該放電ランプの前方に配置された、当該放電ランプより放射される光の輝線をカットするフィルターであり、第2の光放射器の白熱電球が波長880nm付近に放射強度のピークを有するものであって、かつ、その白熱電球用分光分布制御手段が、当該白熱電球の前方に配置された、当該白熱電球より放射される光の放射強度のピークより長波長領域の光を減衰させる反射鏡または吸収フィルターであることが好ましい。
【0010】本発明の人工太陽光装置は、放電ランプを光源ランプとする第1の光放射器および白熱電球を光源ランプとする第2の光放射器を同時に動作させると、第1の光放射器からは、投入された入力電力に応じた放射強度で放電ランプより光が放射され、この光が分光分布制御手段によって分光分布制御されたうえで被照射面に向かって放射されると共に、第2の光放射器からは、投入された入力電力に応じた放射強度で白熱電球より光が放射され、この光が分光分布制御手段によって分光分布制御されたうえで被照射面に向かって投射されるので、第1の光放射器および第2の光放射器の分光分布制御手段として適宜の特性を有するものを用いることにより、基本的に、自然太陽光と同様の分光分布特性を有する混合光を被照射面に放射することができる。
【0011】しかも、第1の光放射器の放電ランプおよび第2の光放射器の白熱電球の点灯状態が、それぞれに専用の互いに独立した入力電力制御手段によって制御されるところ、放電ランプより放射される光は入力電力が変化してもその分光分布には特に大きな変動がないが、白熱電球より放射される光は、入力電力が変化するとその分光分布が変動するので、この現象を利用して、白熱電球における入力電力を制御することにより、分光分布特性が微妙に変動した、異なる光質の混合光を放射することができ、その結果、種々の季節、時刻および天候などによって微妙に変化する分光分布特性を有する自然太陽光に近似した状態の混合光を放射させることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の人工太陽光装置について詳細に説明する。本発明の人工太陽光装置は、キセノンランプを光源ランプとする第1の光放射器の複数と、ハロゲンランプを光源ランプとする第2の光放射器の複数とが全体的に均一な分布となる状態で配置されて構成される。図1は、本発明の一実施例に係る人工太陽光装置10の主要部の構成を、光軸を左右方向として示す説明用正面図、図2は、図1の人工太陽光装置10の主要部を正面から見た説明図である。
【0013】図2に示すように、この例の人工太陽光装置10においては、ハロゲンランプによる第2の光放射器(円形の太線で示されている。)Hの9つが、それぞれ、3行3列の格子点上に配置されると共に、キセノンランプによる第1の光放射器(円形の二重線で示されている。)Xの4つが、互いに隣接する4つの第2の光放射器Hが位置する格子点の中央点に位置するよう、すなわち当該4つの第2の光放射器Hに囲まれた状態で配置されている。
【0014】図において、第1の光放射器Xおよび第2の光放射器Hの記号XおよびHに続く2つのアルファベットの第1字のLは、図2において左側、Cは同中央、Rは同右側を示し、第2字のUは、図2において上段、Mは同中段、Dは同下段を示す。例えば、XLUは図2で左側で上段の第1の光放射器を示し、HCMは中央列で中央段の、全体の中心位置にある第2の光放射器を示す。従って、図1は、図2の右上がり対角線に沿った配列を示すものである。
【0015】ここに、第1の光放射器Xの光源ランプであるキセノンランプとしては、例えば直流点灯型「UXL−25S」(ウシオ電機社製、定格ランプ電圧28V、定格ランプ電流90A、定格入力電力2.5kW、色温度6000K)を好ましく用いることができ、第1の光放射器Xの光源ランプであるハロゲンランプとしては、例えば「JCDZ−100−1000C」(ウシオ電機社製、定格ランプ電圧100V、定格入力電力1000W、色温度3200K)を好ましく用いることができる。ただし、第1の光放射器Xの光源ランプとしては、他の放電ランプやメタルハライドランプを用いることもできる。
【0016】第1の光放射器Xと、第2の光放射器Hとは、互いの大きさは異なるが、同様の基本的構成を有する。図3は、このような光放射器X(H)の基本的な構成を模式的に示す説明用断面図である。この光放射器は、前方に光投射窓20Aを有するランプハウス20内に楕円ミラー21が配置され、この楕円ミラー21内にハロゲンランプまたはキセノンランプからなる光源ランプ22が配置され、その発光点が楕円ミラー21の第1焦点位置に位置した状態とされる。また、ランプハウス20の光投射窓には拡散フィルター24が配置されると共に、この拡散フィルター24と光源ランプ22との間に吸収フィルター26が配置されている。Pは光軸である。
【0017】従って、当該光源ランプ22よりの光は、楕円ミラー21により第2焦点位置Fで集光するよう反射され、吸収フィルター26により、その吸収特性に応じた波長域の光がカットされあるいは減衰され、更に拡散フィルター24によって強度分布が調整された状態で、光軸Pに沿って放射される。
【0018】以上のような構成の第1の光放射器Xおよび第2の光放射器Hは、図1に示すように、その各々の光軸Pが被照射面S上の特定の目標点Oで一致するようにその光放射方向が規制されて配設されており、これにより、当該目標点Oを中心とする特定の光照射領域は、すべての第1の光放射器Xおよび第2の光放射器Hより放射される光の混合光によって照明される状態とされている。
【0019】以上の第1の光放射器Xの各々において、その吸収フィルターは、紫外領域および赤外領域の光を減衰若しくはカットして主として可視領域の光を透過すると共に、キセノンランプより放射される光における波長1000nm付近の輝線をカットする特性を有するものとされる。
【0020】図4は、そのような吸収フィルターの一例における分光透過特性を示す曲線図の一部である。この図から、このような吸収フィルターによれば、波長約410nm以下の紫外領域の光がカットされ、可視領域の光は高い効率で透過されることが理解される。図5は、この吸収フィルターおよび拡散フィルターを介して放射されたキセノンランプの分光分布特性を示す曲線図である。この吸収フィルターによれば、紫外領域の光がカットされ、波長600nm以上の可視から赤外領域の光の一部が減衰されると共に一部がカットされ、波長1000nm付近の輝線がカットされている。
【0021】また、第2の光放射器Hを構成するハロゲンランプは、通常、波長880nm付近に放射強度のピークを有するものが好適である。そして、当該第2の光放射器Hの各々における吸収フィルターは、赤外領域の光を減衰させてこの減衰した赤外領域の光および可視領域の光を透過する特性を有するもの、具体的には波長880nmより長波長領域の光を減衰させる特性を有するものとされる。
【0022】図6は、そのようなフィルターの一例における透過特性を示す曲線図である。この図から、このようなフィルターによれば、波長約880nm以上の赤外領域の光が減衰され、可視領域の光は高い効率で透過されることが理解される。図7は、このフィルターおよび拡散フィルターを介して放射されたハロゲンランプの分光分布特性を示す曲線図である。このフィルターによれば、主として波長880nm以上の赤外領域の光が図6に示すようなフィルターの透過特性に基づいて照射される。
【0023】そして、第1の光放射器Xおよび第2の光放射器Hには、そのいずれにも、放射される光の強度を制御するための入力電力制御手段が設けられるが、この入力電力制御手段は、第1の光放射器Xおよび第2の光放射器Hに対して互いに独立したものとされる。すなわち、第1の光放射器Xにおいては、第2の光放射器Hの入力電力制御手段とは無関係に、その光源ランプであるキセノンランプの入力電力を制御し得るものとされると共に、第2の光放射器Hにおいては、第1の光放射器Xの入力電力制御手段とは無関係に、その光源ランプであるハロゲンランプの入力電力を制御し得るものとされる。
【0024】ここに、複数の第1の光放射器Xは、その各々が個別の条件で制御され得ることが好ましく、また複数の第2の光放射器Hも、その各々が個別の条件で制御され得ることが好ましい。また、本発明において、入力電力制御手段は、特に予め設定されたプログラムに従って光源ランプに対する入力電力を調整することのできる従来公知の点灯装置を好適に用いることができる。
【0025】図8は、上記のキセノンランプを、その入力電力を調整して点灯させたときの分光スペクトルの変化を示す特性曲線図である。この図から明らかなように、キセノンランプなどの放電ランプは、その入力電力を増減した場合であっても、その分光分布特性は基本的に変化せず、単に放射強度が変化するのみである。
【0026】一方、図9は、上記のハロゲンランプを、その入力電力を調整して点灯させたときの分光スペクトルの変化を示す特性曲線図である。この図から明らかなように、ハロゲンランプなどの白熱電球は、その入力電力を増減した場合には、単にその放射強度が上下するのみでなく、分光分布特性が変化する特性を有する。具体的には、入力電力を増大すると、放射強度が高くなると共に分光分布曲線の放射波長ピークが短波長領域に移行する特性を有する。
【0027】而して、本発明においては、キセノンランプを光源ランプとする第1の光放射器Xと、ハロゲンランプを光源ランプとする第2の光放射器Hとを同時に動作させることにより、両者からの光の混合光が被照射面Sに投射されるが、第1の光放射器Xと第2の光放射器Hは、いずれも専用の分光分布制御手段である吸収フィルターが設けられているので、当該混合光を基本的に自然太陽光に近似したものとすることができる。
【0028】そして、第1の光放射器Xのキセノンランプより放射される光と、第2の光放射器Hのハロゲンランプより放射される光の両者は、互いに独立の入力電力制御手段によって放射強度が制御されるところ、キセノンランプの放射強度は、その入力電力によって分光分布特性が基本的に変化せず、一方、ハロゲンランプの放射強度は、その入力電力によって分光分布特性が特定の傾向で変化するものであるため、各ランプの入力電力をそれぞれ適当に調整することにより、両光放射器による混合光の放射強度をきわめて容易に所望の大きさに制御しながら、その分光分布特性を微妙に変化させることができる。
【0029】具体的には、キセノンランプの入力電力およびハロゲンランプの入力電力を共に増加させると、混合光は、放射強度が大きくなると共に放射波長ピークが短波長領域に移行したものとなり、キセノンランプの入力電力およびハロゲンランプの入力電力を共に低下させると、放射強度が小さくなると共に放射波長ピークが長波長領域に移行する。そして、ハロゲンランプの入力電力を調整して所望の分光分布特性を得ながら、キセノンランプの入力電力を調整して、混合光全体の放射強度を所望の状態とすればよい。このようにして、自然太陽光と同様の変化を含んだ混合光を実現することができる。
【0030】その結果、季節、時刻、天候などの条件によってその分光分布特性が微妙に変化する自然太陽光に応じて、同様に変化した分光分布特性を有する混合光により被照射面を照射することができるので、きわめて高い再現性が達成される。
【0031】例えば、曇天時の自然太陽光は、晴天時の自然太陽光に比して、放射強度が通常1/10乃至1/100程度に低いが、それのみでなく、分光分布特性は放射波長ピークが短波長領域に移行している。従って、この場合には、第1の光放射器Xに係るキセノンランプへの入力電力を大幅に低下させると共に、第2の光放射器Hに係るハロゲンランプへの入力電力を大きくすることにより、混合光全体として放射強度が低下されて放射波長ピークが短波長領域に移行した状態とすることができ、これにより、晴天時の自然太陽光の状態から、曇天時の自然太陽光の状態を再現することができる。また、1日の自然太陽光の分光分布特性は、経時的に放射強度が上昇した上で低下すると共に、放射波長ピークが短波長領域に移行するが、この場合にも、キセノンランプおよびハロゲンランプの入力電力を独立に制御することにより、そのような変化を含む自然太陽光に近似した混合光を放射することができる。
【0032】図10は、上記の構成を有する人工太陽光装置において、第1の光放射器Xのキセノンランプ4灯すべての入力電力を定格の100%とすると共に、第2の光放射器Hのハロゲンランプ9灯のうち、8灯の入力電力を定格の100%、他の1灯の入力電力を定格の95%としたときの分光分布特性を示す曲線図であり、この分光分布特性は、夏晴れの正午における自然太陽光を再現するものである。また、図11は、第1の光放射器Xのキセノンランプ4灯のうち、1灯の入力電力を定格の70%、他の3灯の入力電力を定格の0%とすると共に、第2の光放射器Hのハロゲンランプ9灯のうち、1灯の入力電力を定格の43%、他の8灯の入力電力を定格の0%としたときの分光分布特性を示す曲線図であり、この分光分布特性は、曇りの天候における自然太陽光を再現するものである。
【0033】実際の装置において、各光源ランプの入力電力の制御は、自然太陽光の実際の変化に対応して、第1の光放射器Xの光源ランプおよび第2の光放射器Hの光源ランプの入力電力を調整する操作を行い、そのデータに基づいて得られるプログラムに従って第1の光放射器Xおよび第2の光放射器Hの各々の光源ランプの入力電力を自動的に制御することが好ましい。
【0034】以上、本発明の好適な具体例について説明したが、本発明においては、種々の変更を加えることができる。例えば、キセノンランプの代わりにメタルハライドランプなどの他の放電ランプを用いることができ、この場合には、その放射光に応じた分光分布制御手段が用いられる。分光分布制御手段としては、吸収フィルターのみならず、その反射特性に波長依存性を有するミラーを用いることも可能であり、複数の吸収フィルター、複数の波長依存性ミラー、吸収フィルターと波長依存性ミラーとの組合せとすることもできる。第1の光放射器および第2の光放射器の数および配列は、具体的に種々の態様とすることができるが、均一な混合光が得られることが好ましい。
【0035】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、放射される混合光について、放射強度の変化のみでなく、分光分布特性が変動するように制御することができ、従って再現性が非常に高い人工太陽光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例に係る人工太陽光装置の主要部の構成を、光軸を左右方向として示す説明用正面図である。
【図2】図1に示す人工太陽光装置の主要部を正面から見た説明図である。
【図3】第1の光放射器または第2の光放射器の基本的な構成を模式的に示す説明用断面図である。
【図4】第1の光放射器に用いられる吸収フィルターの一例における透過特性を示す曲線図である。
【図5】図4の吸収フィルターおよび拡散フィルターを介して放射されたキセノンランプの分光分布特性を示す曲線図である。
【図6】第1の光放射器に用いられるフィルターの一例における透過特性を示す曲線図である。
【図7】図6の吸収フィルターおよび拡散フィルターを介して放射されたハロゲンランプの分光分布特性を示す曲線図である。
【図8】キセノンランプを、その入力電力を調整して点灯させたときの分光スペクトルの変化を示す特性曲線図である。
【図9】ハロゲンランプを、その入力電力を調整して点灯させたときの分光スペクトルの変化を示す特性曲線図である。
【図10】本発明の人工太陽光装置により、異なった季節における自然太陽光を再現した場合の分光分布特性を示す特性曲線図である。
【図11】本発明の人工太陽光装置により、他の状態における自然太陽光を再現した場合の分光分布特性を示す特性曲線図である。
【符号の説明】
10 人工太陽光装置
H 第2の光放射器
X 第1の光放射器
20 ランプハウス
20A 光投射窓
21 楕円ミラー
22 光源ランプ
24 拡散フィルター
26 吸収フィルター
P 光軸
F 第2焦点
S 被照射面
O 目標点
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自然太陽光に近似した特性の光が放射される人工太陽光装置に関する。
【0002】
【従来の技術】概略の波長特性が自然太陽光に近似した光を放射する、ランプよりなる人工光源を具えたソーラーシミュレータなどの人工太陽光装置は、例えば太陽電池の特性試験、植物の育成試験等において必要とされており、更にこのような人工太陽光装置においては、単に光の放射強度のみでなく、分光分布が適切に制御されることが望まれている。しかしながら、単一の種類のランプよりなる人工光源では、特性の異なるフィルターなどを利用しても、自然太陽光に十分に近似した分光分布特性の光を得ることが実際上不可能であるため、複数種類のランプを組合せて用いることが提案されている。
【0003】例えば特開平9−147602号公報では、メタルハライドランプとハロゲンランプとを用い、メタルハライドランプより放射される光のうち紫外領域および赤外領域の光をフィルターなどによってカットして可視領域の光を取り出すと共に、ハロゲンランプからは可視領域およびこれより短波長領域の光をフィルターなどによってカットして赤外領域の光を取り出し、これら2つの光を合成して人工太陽光を得ることが提案されている。
【0004】しかしながら、このような人工太陽光装置においては、可視領域の光源としてメタルハライドランプを用いると共に、赤外領域の光源としてハロゲンランプを用いるものであって、利用する波長領域毎に専用の光源ランプを用いる構成であるため、或る時点における自然太陽光に近似した分光分布特性を有する合成光が得られるとしても、微妙に変化する自然太陽光に対応してその分光分布特性が変化する合成光を得ることはできない。
【0005】すなわち、自然太陽光は、1年における季節、1日における時刻、天候などによってその光の放射強度が大きく変化するものであるが、単に放射強度が変化するのみでなく、分光分布特性も微妙に変化するものであり、具体的には、その放射波長ピークが波長約500〜800nmの領域において変動するように変化する。然るに、従来の人工太陽光装置では、合成光の放射強度の変化を再現することは可能であっても、合成された光における分光分布を微妙に変化させるような制御をすることができず、結局、自然太陽光の再現性が不十分である、という問題点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、放射される混合光について、放射強度の変化のみでなく、分光分布特性が変動するように制御することができ、従って再現性が非常に高い人工太陽光装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の人工太陽光装置は、放電ランプ、この放電ランプより放射される光の分光分布を制御する放電ランプ用分光分布制御手段、および当該放電ランプより放射される光の強度を制御するための放電ランプ入力電力制御手段を有してなる第1の光放射器と、白熱電球、この白熱電球より放射される光の分光分布を制御する白熱電球用分光分布制御手段、および当該白熱電球より放射される光の強度を制御するための白熱電球入力電力制御手段を有してなる第2の光放射器とを具えてなり、第1の光放射器の放電ランプ入力電力制御手段と第2の光放射器の白熱電球入力電力制御手段とが独立に作動されることにより、自然太陽光において観察される放射強度および分光分布特性の変化に対応した状態の混合光が放射されることを特徴とする。
【0008】以上において、第1の光放射器の放電ランプ用分光分布制御手段は、紫外領域および赤外領域の光を減衰若しくはカットして主として可視領域の光を取り出す光学装置とされ、第2の光放射器の白熱電球用分光分布制御手段は、赤外領域の光を減衰させてこの減衰した赤外領域の光および可視領域の光を取り出す光学装置とされる。
【0009】また、第1の光放射器の放電ランプは、キセノンランプおよびメタルハライドランプの少なくとも一方または両方であり、第2の光放射器の白熱電球がハロゲンランプであることが好ましい。更に、第1の光放射器における放電ランプ用分光分布制御手段に係る光学装置が、当該放電ランプの前方に配置された、当該放電ランプより放射される光の輝線をカットするフィルターであり、第2の光放射器の白熱電球が波長880nm付近に放射強度のピークを有するものであって、かつ、その白熱電球用分光分布制御手段が、当該白熱電球の前方に配置された、当該白熱電球より放射される光の放射強度のピークより長波長領域の光を減衰させる反射鏡または吸収フィルターであることが好ましい。
【0010】本発明の人工太陽光装置は、放電ランプを光源ランプとする第1の光放射器および白熱電球を光源ランプとする第2の光放射器を同時に動作させると、第1の光放射器からは、投入された入力電力に応じた放射強度で放電ランプより光が放射され、この光が分光分布制御手段によって分光分布制御されたうえで被照射面に向かって放射されると共に、第2の光放射器からは、投入された入力電力に応じた放射強度で白熱電球より光が放射され、この光が分光分布制御手段によって分光分布制御されたうえで被照射面に向かって投射されるので、第1の光放射器および第2の光放射器の分光分布制御手段として適宜の特性を有するものを用いることにより、基本的に、自然太陽光と同様の分光分布特性を有する混合光を被照射面に放射することができる。
【0011】しかも、第1の光放射器の放電ランプおよび第2の光放射器の白熱電球の点灯状態が、それぞれに専用の互いに独立した入力電力制御手段によって制御されるところ、放電ランプより放射される光は入力電力が変化してもその分光分布には特に大きな変動がないが、白熱電球より放射される光は、入力電力が変化するとその分光分布が変動するので、この現象を利用して、白熱電球における入力電力を制御することにより、分光分布特性が微妙に変動した、異なる光質の混合光を放射することができ、その結果、種々の季節、時刻および天候などによって微妙に変化する分光分布特性を有する自然太陽光に近似した状態の混合光を放射させることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の人工太陽光装置について詳細に説明する。本発明の人工太陽光装置は、キセノンランプを光源ランプとする第1の光放射器の複数と、ハロゲンランプを光源ランプとする第2の光放射器の複数とが全体的に均一な分布となる状態で配置されて構成される。図1は、本発明の一実施例に係る人工太陽光装置10の主要部の構成を、光軸を左右方向として示す説明用正面図、図2は、図1の人工太陽光装置10の主要部を正面から見た説明図である。
【0013】図2に示すように、この例の人工太陽光装置10においては、ハロゲンランプによる第2の光放射器(円形の太線で示されている。)Hの9つが、それぞれ、3行3列の格子点上に配置されると共に、キセノンランプによる第1の光放射器(円形の二重線で示されている。)Xの4つが、互いに隣接する4つの第2の光放射器Hが位置する格子点の中央点に位置するよう、すなわち当該4つの第2の光放射器Hに囲まれた状態で配置されている。
【0014】図において、第1の光放射器Xおよび第2の光放射器Hの記号XおよびHに続く2つのアルファベットの第1字のLは、図2において左側、Cは同中央、Rは同右側を示し、第2字のUは、図2において上段、Mは同中段、Dは同下段を示す。例えば、XLUは図2で左側で上段の第1の光放射器を示し、HCMは中央列で中央段の、全体の中心位置にある第2の光放射器を示す。従って、図1は、図2の右上がり対角線に沿った配列を示すものである。
【0015】ここに、第1の光放射器Xの光源ランプであるキセノンランプとしては、例えば直流点灯型「UXL−25S」(ウシオ電機社製、定格ランプ電圧28V、定格ランプ電流90A、定格入力電力2.5kW、色温度6000K)を好ましく用いることができ、第1の光放射器Xの光源ランプであるハロゲンランプとしては、例えば「JCDZ−100−1000C」(ウシオ電機社製、定格ランプ電圧100V、定格入力電力1000W、色温度3200K)を好ましく用いることができる。ただし、第1の光放射器Xの光源ランプとしては、他の放電ランプやメタルハライドランプを用いることもできる。
【0016】第1の光放射器Xと、第2の光放射器Hとは、互いの大きさは異なるが、同様の基本的構成を有する。図3は、このような光放射器X(H)の基本的な構成を模式的に示す説明用断面図である。この光放射器は、前方に光投射窓20Aを有するランプハウス20内に楕円ミラー21が配置され、この楕円ミラー21内にハロゲンランプまたはキセノンランプからなる光源ランプ22が配置され、その発光点が楕円ミラー21の第1焦点位置に位置した状態とされる。また、ランプハウス20の光投射窓には拡散フィルター24が配置されると共に、この拡散フィルター24と光源ランプ22との間に吸収フィルター26が配置されている。Pは光軸である。
【0017】従って、当該光源ランプ22よりの光は、楕円ミラー21により第2焦点位置Fで集光するよう反射され、吸収フィルター26により、その吸収特性に応じた波長域の光がカットされあるいは減衰され、更に拡散フィルター24によって強度分布が調整された状態で、光軸Pに沿って放射される。
【0018】以上のような構成の第1の光放射器Xおよび第2の光放射器Hは、図1に示すように、その各々の光軸Pが被照射面S上の特定の目標点Oで一致するようにその光放射方向が規制されて配設されており、これにより、当該目標点Oを中心とする特定の光照射領域は、すべての第1の光放射器Xおよび第2の光放射器Hより放射される光の混合光によって照明される状態とされている。
【0019】以上の第1の光放射器Xの各々において、その吸収フィルターは、紫外領域および赤外領域の光を減衰若しくはカットして主として可視領域の光を透過すると共に、キセノンランプより放射される光における波長1000nm付近の輝線をカットする特性を有するものとされる。
【0020】図4は、そのような吸収フィルターの一例における分光透過特性を示す曲線図の一部である。この図から、このような吸収フィルターによれば、波長約410nm以下の紫外領域の光がカットされ、可視領域の光は高い効率で透過されることが理解される。図5は、この吸収フィルターおよび拡散フィルターを介して放射されたキセノンランプの分光分布特性を示す曲線図である。この吸収フィルターによれば、紫外領域の光がカットされ、波長600nm以上の可視から赤外領域の光の一部が減衰されると共に一部がカットされ、波長1000nm付近の輝線がカットされている。
【0021】また、第2の光放射器Hを構成するハロゲンランプは、通常、波長880nm付近に放射強度のピークを有するものが好適である。そして、当該第2の光放射器Hの各々における吸収フィルターは、赤外領域の光を減衰させてこの減衰した赤外領域の光および可視領域の光を透過する特性を有するもの、具体的には波長880nmより長波長領域の光を減衰させる特性を有するものとされる。
【0022】図6は、そのようなフィルターの一例における透過特性を示す曲線図である。この図から、このようなフィルターによれば、波長約880nm以上の赤外領域の光が減衰され、可視領域の光は高い効率で透過されることが理解される。図7は、このフィルターおよび拡散フィルターを介して放射されたハロゲンランプの分光分布特性を示す曲線図である。このフィルターによれば、主として波長880nm以上の赤外領域の光が図6に示すようなフィルターの透過特性に基づいて照射される。
【0023】そして、第1の光放射器Xおよび第2の光放射器Hには、そのいずれにも、放射される光の強度を制御するための入力電力制御手段が設けられるが、この入力電力制御手段は、第1の光放射器Xおよび第2の光放射器Hに対して互いに独立したものとされる。すなわち、第1の光放射器Xにおいては、第2の光放射器Hの入力電力制御手段とは無関係に、その光源ランプであるキセノンランプの入力電力を制御し得るものとされると共に、第2の光放射器Hにおいては、第1の光放射器Xの入力電力制御手段とは無関係に、その光源ランプであるハロゲンランプの入力電力を制御し得るものとされる。
【0024】ここに、複数の第1の光放射器Xは、その各々が個別の条件で制御され得ることが好ましく、また複数の第2の光放射器Hも、その各々が個別の条件で制御され得ることが好ましい。また、本発明において、入力電力制御手段は、特に予め設定されたプログラムに従って光源ランプに対する入力電力を調整することのできる従来公知の点灯装置を好適に用いることができる。
【0025】図8は、上記のキセノンランプを、その入力電力を調整して点灯させたときの分光スペクトルの変化を示す特性曲線図である。この図から明らかなように、キセノンランプなどの放電ランプは、その入力電力を増減した場合であっても、その分光分布特性は基本的に変化せず、単に放射強度が変化するのみである。
【0026】一方、図9は、上記のハロゲンランプを、その入力電力を調整して点灯させたときの分光スペクトルの変化を示す特性曲線図である。この図から明らかなように、ハロゲンランプなどの白熱電球は、その入力電力を増減した場合には、単にその放射強度が上下するのみでなく、分光分布特性が変化する特性を有する。具体的には、入力電力を増大すると、放射強度が高くなると共に分光分布曲線の放射波長ピークが短波長領域に移行する特性を有する。
【0027】而して、本発明においては、キセノンランプを光源ランプとする第1の光放射器Xと、ハロゲンランプを光源ランプとする第2の光放射器Hとを同時に動作させることにより、両者からの光の混合光が被照射面Sに投射されるが、第1の光放射器Xと第2の光放射器Hは、いずれも専用の分光分布制御手段である吸収フィルターが設けられているので、当該混合光を基本的に自然太陽光に近似したものとすることができる。
【0028】そして、第1の光放射器Xのキセノンランプより放射される光と、第2の光放射器Hのハロゲンランプより放射される光の両者は、互いに独立の入力電力制御手段によって放射強度が制御されるところ、キセノンランプの放射強度は、その入力電力によって分光分布特性が基本的に変化せず、一方、ハロゲンランプの放射強度は、その入力電力によって分光分布特性が特定の傾向で変化するものであるため、各ランプの入力電力をそれぞれ適当に調整することにより、両光放射器による混合光の放射強度をきわめて容易に所望の大きさに制御しながら、その分光分布特性を微妙に変化させることができる。
【0029】具体的には、キセノンランプの入力電力およびハロゲンランプの入力電力を共に増加させると、混合光は、放射強度が大きくなると共に放射波長ピークが短波長領域に移行したものとなり、キセノンランプの入力電力およびハロゲンランプの入力電力を共に低下させると、放射強度が小さくなると共に放射波長ピークが長波長領域に移行する。そして、ハロゲンランプの入力電力を調整して所望の分光分布特性を得ながら、キセノンランプの入力電力を調整して、混合光全体の放射強度を所望の状態とすればよい。このようにして、自然太陽光と同様の変化を含んだ混合光を実現することができる。
【0030】その結果、季節、時刻、天候などの条件によってその分光分布特性が微妙に変化する自然太陽光に応じて、同様に変化した分光分布特性を有する混合光により被照射面を照射することができるので、きわめて高い再現性が達成される。
【0031】例えば、曇天時の自然太陽光は、晴天時の自然太陽光に比して、放射強度が通常1/10乃至1/100程度に低いが、それのみでなく、分光分布特性は放射波長ピークが短波長領域に移行している。従って、この場合には、第1の光放射器Xに係るキセノンランプへの入力電力を大幅に低下させると共に、第2の光放射器Hに係るハロゲンランプへの入力電力を大きくすることにより、混合光全体として放射強度が低下されて放射波長ピークが短波長領域に移行した状態とすることができ、これにより、晴天時の自然太陽光の状態から、曇天時の自然太陽光の状態を再現することができる。また、1日の自然太陽光の分光分布特性は、経時的に放射強度が上昇した上で低下すると共に、放射波長ピークが短波長領域に移行するが、この場合にも、キセノンランプおよびハロゲンランプの入力電力を独立に制御することにより、そのような変化を含む自然太陽光に近似した混合光を放射することができる。
【0032】図10は、上記の構成を有する人工太陽光装置において、第1の光放射器Xのキセノンランプ4灯すべての入力電力を定格の100%とすると共に、第2の光放射器Hのハロゲンランプ9灯のうち、8灯の入力電力を定格の100%、他の1灯の入力電力を定格の95%としたときの分光分布特性を示す曲線図であり、この分光分布特性は、夏晴れの正午における自然太陽光を再現するものである。また、図11は、第1の光放射器Xのキセノンランプ4灯のうち、1灯の入力電力を定格の70%、他の3灯の入力電力を定格の0%とすると共に、第2の光放射器Hのハロゲンランプ9灯のうち、1灯の入力電力を定格の43%、他の8灯の入力電力を定格の0%としたときの分光分布特性を示す曲線図であり、この分光分布特性は、曇りの天候における自然太陽光を再現するものである。
【0033】実際の装置において、各光源ランプの入力電力の制御は、自然太陽光の実際の変化に対応して、第1の光放射器Xの光源ランプおよび第2の光放射器Hの光源ランプの入力電力を調整する操作を行い、そのデータに基づいて得られるプログラムに従って第1の光放射器Xおよび第2の光放射器Hの各々の光源ランプの入力電力を自動的に制御することが好ましい。
【0034】以上、本発明の好適な具体例について説明したが、本発明においては、種々の変更を加えることができる。例えば、キセノンランプの代わりにメタルハライドランプなどの他の放電ランプを用いることができ、この場合には、その放射光に応じた分光分布制御手段が用いられる。分光分布制御手段としては、吸収フィルターのみならず、その反射特性に波長依存性を有するミラーを用いることも可能であり、複数の吸収フィルター、複数の波長依存性ミラー、吸収フィルターと波長依存性ミラーとの組合せとすることもできる。第1の光放射器および第2の光放射器の数および配列は、具体的に種々の態様とすることができるが、均一な混合光が得られることが好ましい。
【0035】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、放射される混合光について、放射強度の変化のみでなく、分光分布特性が変動するように制御することができ、従って再現性が非常に高い人工太陽光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例に係る人工太陽光装置の主要部の構成を、光軸を左右方向として示す説明用正面図である。
【図2】図1に示す人工太陽光装置の主要部を正面から見た説明図である。
【図3】第1の光放射器または第2の光放射器の基本的な構成を模式的に示す説明用断面図である。
【図4】第1の光放射器に用いられる吸収フィルターの一例における透過特性を示す曲線図である。
【図5】図4の吸収フィルターおよび拡散フィルターを介して放射されたキセノンランプの分光分布特性を示す曲線図である。
【図6】第1の光放射器に用いられるフィルターの一例における透過特性を示す曲線図である。
【図7】図6の吸収フィルターおよび拡散フィルターを介して放射されたハロゲンランプの分光分布特性を示す曲線図である。
【図8】キセノンランプを、その入力電力を調整して点灯させたときの分光スペクトルの変化を示す特性曲線図である。
【図9】ハロゲンランプを、その入力電力を調整して点灯させたときの分光スペクトルの変化を示す特性曲線図である。
【図10】本発明の人工太陽光装置により、異なった季節における自然太陽光を再現した場合の分光分布特性を示す特性曲線図である。
【図11】本発明の人工太陽光装置により、他の状態における自然太陽光を再現した場合の分光分布特性を示す特性曲線図である。
【符号の説明】
10 人工太陽光装置
H 第2の光放射器
X 第1の光放射器
20 ランプハウス
20A 光投射窓
21 楕円ミラー
22 光源ランプ
24 拡散フィルター
26 吸収フィルター
P 光軸
F 第2焦点
S 被照射面
O 目標点
【特許請求の範囲】
【請求項1】 放電ランプ、この放電ランプより放射される光の分光分布を制御する放電ランプ用分光分布制御手段、および当該放電ランプより放射される光の強度を制御するための放電ランプ入力電力制御手段を有してなる第1の光放射器と、白熱電球、この白熱電球より放射される光の分光分布を制御する白熱電球用分光分布制御手段、および当該白熱電球より放射される光の強度を制御するための白熱電球入力電力制御手段を有してなる第2の光放射器とを具えてなり、第1の光放射器の放電ランプ入力電力制御手段と第2の光放射器の白熱電球入力電力制御手段とが独立に作動されることにより、自然太陽光において観察される放射強度および分光分布特性の変化に対応した状態の混合光が放射されることを特徴とする人工太陽光装置。
【請求項2】 第1の光放射器の放電ランプ用分光分布制御手段は、紫外領域および赤外領域の光を減衰若しくはカットして主として可視領域の光を取り出す光学装置であり、第2の光放射器の白熱電球用分光分布制御手段は、赤外領域の光を減衰させてこの減衰した赤外領域の光および可視領域の光を取り出す光学装置である請求項1に記載の人工太陽光装置。
【請求項3】 第1の光放射器の放電ランプは、キセノンランプおよびメタルハライドランプの少なくとも一方または両方であり、第2の光放射器の白熱電球がハロゲンランプであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の人工太陽光装置。
【請求項4】 第1の光放射器における放電ランプ用分光分布制御手段に係る光学装置が、当該放電ランプの前方に配置された、当該放電ランプより放射される光の輝線をカットするフィルターであり、第2の光放射器の白熱電球が波長880nm付近に放射強度のピークを有するものであって、かつ、その白熱電球用分光分布制御手段が、当該白熱電球の前方に配置された、当該白熱電球より放射される光の放射強度のピークより長波長領域の光を減衰させる反射鏡または吸収フィルターであることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の人工太陽光装置。
【請求項1】 放電ランプ、この放電ランプより放射される光の分光分布を制御する放電ランプ用分光分布制御手段、および当該放電ランプより放射される光の強度を制御するための放電ランプ入力電力制御手段を有してなる第1の光放射器と、白熱電球、この白熱電球より放射される光の分光分布を制御する白熱電球用分光分布制御手段、および当該白熱電球より放射される光の強度を制御するための白熱電球入力電力制御手段を有してなる第2の光放射器とを具えてなり、第1の光放射器の放電ランプ入力電力制御手段と第2の光放射器の白熱電球入力電力制御手段とが独立に作動されることにより、自然太陽光において観察される放射強度および分光分布特性の変化に対応した状態の混合光が放射されることを特徴とする人工太陽光装置。
【請求項2】 第1の光放射器の放電ランプ用分光分布制御手段は、紫外領域および赤外領域の光を減衰若しくはカットして主として可視領域の光を取り出す光学装置であり、第2の光放射器の白熱電球用分光分布制御手段は、赤外領域の光を減衰させてこの減衰した赤外領域の光および可視領域の光を取り出す光学装置である請求項1に記載の人工太陽光装置。
【請求項3】 第1の光放射器の放電ランプは、キセノンランプおよびメタルハライドランプの少なくとも一方または両方であり、第2の光放射器の白熱電球がハロゲンランプであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の人工太陽光装置。
【請求項4】 第1の光放射器における放電ランプ用分光分布制御手段に係る光学装置が、当該放電ランプの前方に配置された、当該放電ランプより放射される光の輝線をカットするフィルターであり、第2の光放射器の白熱電球が波長880nm付近に放射強度のピークを有するものであって、かつ、その白熱電球用分光分布制御手段が、当該白熱電球の前方に配置された、当該白熱電球より放射される光の放射強度のピークより長波長領域の光を減衰させる反射鏡または吸収フィルターであることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の人工太陽光装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開平11−214165
【公開日】平成11年(1999)8月6日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−11491
【出願日】平成10年(1998)1月23日
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(391025512)株式会社ウシオユーテック (1)
【公開日】平成11年(1999)8月6日
【国際特許分類】
【出願日】平成10年(1998)1月23日
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(391025512)株式会社ウシオユーテック (1)
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