説明

人工心肺に関連する神経障害を制御するためのキセノンの使用

【課題】人工心肺(CPB)を施した患者に神経障害が出ることがある。CPBに関連する障害には、神経支配系(neutomotor)障害、神経認知(neurocognitive)障害又は空間記憶障害等の神経障害を含めることができる。これらの障害は、通常患者にCPBを施してから最初の数日間に顕著である。人工心肺(CPB)を施した患者の1又は複数の神経障害を制御する方法を提供する。
【解決手段】人工心肺(CPB)を施す患者に潅流、吸入、または静脈内投与で、(i)人工心肺術開始前、(ii)人工心肺術中及び(iii)人工心肺術完了後にキセノンを投与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工心肺(CPB)を施した患者の神経障害を制御(コントロール)する方法に関する。
【0002】
CPBは、例えば開胸手術において心臓と肺とをバイパスするために、患者に体外膜型肺(extracorporeal membrane oxygenation)を設置することに関する。かかる装置は、体内から血液を取り出し、血液を圧力下の体循環に戻す前に、酸素を送達する人工心肺装置(酸素供給機)へと迂回させる。かかる装置は、心臓(血液ポンプ)と肺(赤血球に酸素を供給し、二酸化炭素を除去する)の両方の働きをし、一時的に機能していない心臓に、医師が初期心臓手術を行うことを可能にする。
【背景技術】
【0003】
CPBが出現してからの、ヒトにおける心臓手術後の脳の損傷が、数多く報告されている(Gardner T et al, Ann Thorac Surg 1985, 40:574-81; Tuman KJ et al, J Thorac Cardiovasc Surg 1992, 104:1510-7; Newman M et al, Multicenter Strudy of Perioperative Ischaemia Research Group, Circulation 1996, 94II74-80)。この損傷の医学的症状は、顕著な発作(frank stroke)から些細な神経認知障害まで、幅広い(Roach G et al, N Engl J Med 1996, 335:1857-63; Newman M et al, N Engl J Med 2001, 344:395-402)。本明細書中に記載されている「神経行動学的な(neurobehavioural)」と「神経の(neurological)」は、ほぼ同じ意味で用いられる。
【0004】
さらに具体的には、CPBに関連する障害には、神経支配系(neutomotor)障害、神経認知(neurocognitive)障害又は空間記憶障害等の神経障害を含めることができる。これらの障害は、通常患者にCPBを施してから最初の数日間に顕著である。
【発明の開示】
【0005】
本発明の最初の態様は、CPBに関連する1又は複数の神経障害を制御する薬剤の調製におけるキセノンの使用に関する。
【0006】
本発明の2番目の態様は、哺乳類における神経保護作用を提供する方法を提供する。かかる方法は、CPBの間に、キセノンの治療的有効量を哺乳類に投与することを含む。
【0007】
本発明の3番目の態様は、哺乳類においてCPBに関連する1又は複数の神経障害を制御する方法を提供する。かかる方法は、
(i)キセノンを、CPBの開始以前に、哺乳類に投与するステップ、
(ii)キセノンを、CPBの間に、哺乳類に投与するステップ、
(iii)キセノンを、CPBの完了後に、哺乳類に投与するステップ、
のステップを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
キセノンは、麻酔的特性を有することが50年以上前から知られている化学的不活性ガスである(Lawrence JH et al, Physiol. 1946; 105: 197-204)。キセノンが手術で初めて使用されてから(Cullen SC et al, Science 1951; 113: 580-582)、キセノンが、代謝性副産物がなく、深い無痛状態をもたらし、素早い効果と回復力があり、心血管系への作用が最小限であること等の、優れた薬理学的特性を有していることは、多くの研究グループによって示されている(Lachmann B et al, Lancet 1990; 335: 1413-1415; Kennedy RR et al, Anaesth. Intens. Care 1992; 20: 66-70; Luttropp HH et al, Acta Anaesthesiol. Scand. 1994; 38:121-125; Goto T et al, Anesthesioogy 1997; 86:1273-1278; Marx T et al, Br. J. Anaesth. 1997; 78:326-327)。しかし、最近まで、キセノンの臨床的活性の基盤となる分子メカニズムは、解明されていなかった。
【0009】
出願人による以前の研究で、キセノンが神経保護作用特性を有することが示されている。特に、参照のために、本明細書中に組み入れられているWO01/08692は、キセノンの神経保護剤としての使用及び/又はシナプス可塑性の阻害剤としての使用に関するものである。しかし、先行技術は、本発明において請求している、キセノンの神経保護剤としての有効性について、教示も示唆もしていない。
【0010】
本明細書中に記載の、「神経保護剤」なる用語は、神経保護を提供することが可能な薬剤、すなわち、虚血性損傷又は外傷性損傷等の損傷部位で、ニューロン等の神経部分を保護することができる薬剤を意味している。
【0011】
好ましい態様では、キセノンはNMDAアンタゴニストである。
【0012】
「アンタゴニスト」なる用語は、当技術分野での通常の意味で使用されており、すなわち、その天然アゴニスト(この場合は、グルタミン酸)によって、レセプターの機能活性化を防ぐ化学化合物である。
【0013】
NMDA(NメチルDアスパラギン酸)レセプターは、グルタミン酸レセプターの主要なサブクラスであり、グルタミン酸は、哺乳類の中枢神経系において最も重要な興奮性神経伝達物質であるとされている。何よりも、NMDAレセプターの活性化は、多くの病態において起きる、また頭蓋骨損傷、脳卒中及び、心停止後に起きる低酸素症や虚血の結果として起きる、興奮毒性及び神経細胞死を導く主要な現象であることが示されてきた。
【0014】
NMDAレセプターが、記憶及び学習等多くの高度の認知機能の基盤となっているシナプス可塑性や、一定の痛覚伝達路(nociceptive pathway)及び痛覚の認知において重要な役割を演じていることは、技術的に周知である(Collingridge et al, The NMDA Receptor, Oxford University Press, 1994)。さらに、NMDAレセプターのいくつかの特性は、NMDAレセプターが、意識そのものの基礎をなす脳における情報処理に関与している可能性を示唆している。
【0015】
NMDAレセプターアンタゴニストが、治療的な価値を有するには様々な根拠がある。第1にNMDAレセプターアンタゴニストは、通常の麻酔及び鎮静作用の非常に好ましい要素である、深い無痛状態をもたらす。第2に、NMDAレセプターアンタゴニストは、多くの臨床的状況(虚血、脳損傷、神経障害性疼痛状態、及びいくつかの型の痙攣を含む)において、神経保護作用がある。第3に、NMDAレセプターアンタゴニストは、一定の記憶喪失を与える。
【0016】
しかし、従来の多くのNMDAレセプターアンタゴニストに関連する障害は数多い。障害としては、例えば、不随意の動作、交感神経系の刺激、多量服用した場合の神経毒性の誘導(NMDAレセプターアンタゴニストは、通常麻酔薬として効果が弱いため、該当する)、心筋の低下及びてんかんのパラダイムにおける痙攣、例えばキンドリング(kindling) (Wlaz P et al, Eur. J. Neurosci. 1994; 6:1710-1719)が挙げられる。特に、血液脳関門を横断する新たなNMDAレセプターアンタゴニストを開発することは、非常に困難であった。この要因は、多くの既知のNMDAアンタゴニストを治療に用いることを制限していた。
【0017】
他の多くのNMDAアンタゴニストと異なり、キセノンは、血液脳関門を横断して拡散しながら、脳と素早く平衡化(equilibrate)することができる。NMDAアンタゴニストとしてキセノンを使用するさらなる利点としては、分子が呼吸によって素早く排出される、不活性で、揮発性のガスである点である。
【0018】
特に好ましい態様では、キセノンは、CPBに関連する1又は複数の神経障害を制御する。
【0019】
本明細書中に記載の、「神経障害の制御/制御する」なる用語は、キセノンの非存在下でCPBを施した被験対象と比較して、1又は複数の神経障害の重症度を低減する、ということを意味している。
【0020】
さらに好ましい態様では、神経障害は、神経支配系障害又は神経認知障害であってもよい。本明細書中に記載の、「神経支配系障害」なる用語は、当業者が理解する意味に関し、力、バランス及び運動の障害を含むことができる。同様に、「神経認知障害」も、当業者が理解する意味に関し、学習及び記憶の障害を含むことができる。かかる神経認知障害は、定評のある基準、例えばRandt 記憶検査のshort-story モジュール(Randt C, Brown E. Administration manual: Randt Memory Test. New York: Life Sciences, 1983)、ウェクスラー成人用知能検査(Wechsler Adult Intelligence Scale- Revised)のDigit span subtest 及びDigit symbol subtest (Wechsler D. The Wechslre Adult Interlligence Scale- Revised (WAIS-R). San Antonio Tex.: Psychological Corporation, 1982)] ベントン視覚記銘検査(Benton Revised Visual Retention Test) (Benton AL, Hansher K. Multilingual aphasia examination. Iowa City: University of Iowa Press, 1978)及び注意機能検査(Part B)(Trail Making Test)(Reitan TM Validity of the Trail Making Test as an indicator of organic brain damage. Percept Mot Skills 1958; 8:271-6)等によって評定することができる。神経支配系及び神経認知の他の適切な検査は、Conbs D, D’ Alecy L: Motor performance in rats exposed to severe forebrain ischemia: Effect of fasting and 1,3-butanediol. Stroke 1987;; 18:503-511 及びGionet T, Thomas J, Warner D, Goodlett C, Wasserman E, West J: Forebrain ischemia induces selective behavioral impairments associated with hippocampal injury in rats. Stroke 1991; 22: 1040-1047に記載されている。
【0021】
好ましくは、キセノンは、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤と組み合わせて投与される。
【0022】
かかる適切な賦形剤の、本明細書中に記載されている薬学的な組成物の各種形態は、“Handbook of Pharmaceutical Excipients, 2nd Edition, (1994), Edited by A Wade and PJ Weller”に例示されている。
【0023】
治療に使用できる適切な担体又は希釈剤は、薬学的に公知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing C0. (A.R. Gennaro edit. 1985)に記載されている。適切な賦形剤としては、乳糖、デンプン、ブドウ糖、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、ソルビトール等を挙げることができる。適切な希釈剤としては、エタノール、グリセロール及び水を例示することができる。
【0024】
薬学的な担体、希釈剤又は賦形剤は、所望の投与方法及び通常の薬学的実務に合わせて選択することができる。薬学的組成物は、担体、希釈剤、又は賦形剤として、さらに、適切な結合剤(1又は複数)、潤滑剤(1又は複数)、懸濁剤(1又は複数)、コーティング剤(1又は複数)、溶解剤(1又は複数)を含むことができる。
【0025】
適切な結合剤としては、デンプン;ゼラチン;ブドウ糖、無水乳糖、フリーフロー乳糖、ベータ乳糖、コーン甘味料等の天然の砂糖;アカシア、トラガント等の天然及び合成ガム;又はアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース及びポリエチレングリコール等を挙げることができる。
【0026】
適切な潤滑剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、塩化ナトリム等を挙げることができる。
【0027】
防腐剤、安定剤及び色素は、薬学的組成物として提供される。防腐剤の例としては、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸及びp-ヒドロキシ安息香酸を挙げることができる。抗酸化薬及び懸濁剤も使用することができる。
【0028】
キセノンは、他の薬学的活性剤と組み合わせて投与することもできる。かかる薬剤は、GABA作動活性を促進する麻酔薬又は鎮静剤を含む、いかなる薬学的活性剤であってもよい。かかるGABA作動性薬剤には、イソフルラン、プロポフォール及びベンゾジアゼピンが含まれる。
【0029】
キセノンは、L型カルシウムチャネルブロッカー、N型カルシウムチャネルブロッカー、P物質アンタゴニスト(substance P antagonist)、ナトリウムチャネルブロッカー、プリン作動性レセプターブロッカー等の他の活性成分又はそれらの組合わせと組み合わせて投与することもできる。
【0030】
キセノンは、任意の適切なデリバリーメカニズムによって投与することができ、さらには、2又はそれ以上の適切なデリバリーメカニズムによって投与することができる。
【0031】
特に好ましい1つの態様において、キセノンは潅流によって投与される。本発明に記載されている、「潅流」なる用語は、特定の人工心肺装置を使用している患者に、酸素/キセノンの混合物を導入し、二酸化炭素を除去することを意味する。一般的に、人工心肺装置は、心臓と肺の機能を代わりに行い、無血で静止状態の手術野を外科医に提供する。潅流技師は、患者の血液に酸素を送達し、酸素と二酸化炭素のレベルを制御する。本発明の文脈では、潅流技師は、患者の血液内にキセノンも導入する。その後潅流技師は、血液を動脈系に戻し、心臓手術中、患者の全ての重要臓器及び組織に、栄養血流を提供する。
【0032】
他の望ましい態様において、キセノンは吸入によって投与される。さらに好ましくは、キセノンは70%〜30%v/vのキセノン/酸素混合物の吸入によって投与される。
【0033】
キセノンは、当業者には公知の方法で患者に投与される。CPBを施す患者には、適切な人工呼吸を行い、キセノンは酸素/COと同様または平行に投与することができる。
【0034】
1つの特に好ましい態様では、キセノン又はキセノン/酸素混合物は、Air Products and Chemicals, Incによる係属中の出願(代理人整理番号P8942WO、P8943WO及びP8944WO;全て2003年5月1日に出願;2002年5月1日に出願されたUK出願第0210021.2号、0210022.0号及び0210023.8号に対しそれぞれ優先権主張)に記載されている吸入/人工心肺装置と組み合わせて用いて、投与される。かかる出願の内容は、参考のため本明細書中に組み込まれている。
【0035】
さらに他の好ましい態様において、キセノンは液体の形で投与される。好ましくは、無菌若しくは殺菌可能な溶液から調製した、溶液若しくは乳剤の形態で投与される。それらは、静脈内、動脈内、くも膜下腔内、皮下、皮内、腹腔内、又は筋肉内に注入することができる。
【0036】
1つの好ましい態様では、キセノンは、脂質乳剤の形態で投与される。静脈内処方には、キセノンの溶解度を十分に増進し、所望の臨床効果に到達するために、通常脂質乳剤(例えば市販されているIntralipid 10, Intralipid 20, Intrafat, Lipofundin S 又はLiposyn 乳剤、又は溶解性が最大となるように特別に処方されたもの)が含まれる。この種の脂質乳剤に関しては、G. Kleinberger and H. Pamperl, Infusionstherapie, 109-117 (1983)3にさらに記載されている。
【0037】
ガスを溶解又は分散する本発明の脂質相は、通常8〜30カーボン原子を含む飽和及び非飽和の、長鎖脂肪酸及び中鎖脂肪酸によって形成されている。かかる脂質は、水溶液内でリポソームを形成する。例として、魚油及び大豆油、アザミ油又は綿実油等の植物油を挙げることができる。本発明の脂質乳剤は、水中油型乳剤であり、乳剤内の脂質の割合が従来5〜30%重量、好ましくは10〜20%重量である。この種の水中油型乳剤は、通常大豆リン脂質等の乳化剤の存在下で調製される。
【0038】
本発明のリポソームを形成する脂質は、天然のものでも合成されたものでもよく、コレステロール、糖脂質、スフィンゴミエリン、グルコ脂質、スフィンゴ糖脂質、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトールを例示することができる。
【0039】
本発明の脂質乳剤は、追加成分を含むことができる。それらは、抗酸化剤や、脂質相を包囲している水溶液モル浸透圧濃度を血液と等圧にする添加物、又はリポソームの表面を修正するポリマーを含むことができる。
【0040】
適切な量のキセノンを、脂質乳剤に添加することができることが立証された。最も単純な手段でも、キセノンは、20℃、通常の圧力下で、乳剤1mlごとに0.2〜10ml以上の濃度で、溶解又は分散することができる。溶解ガスの濃度は、温度、圧力及び脂質の濃度等、数多くの要素に依存している。
【0041】
本発明の脂質乳剤は、ガス性キセノンを負荷(load)することができる。通常、装置を乳剤で満たし、麻酔薬、ガス又は蒸気は、乳剤に浸された燒結グラス・バブラーを通る。乳剤は、麻酔ガス又は麻酔蒸気と、選択された分圧で平衡化できる。ガス気密容器に保存すると、これらの脂質乳剤は、麻酔薬として十分な安定性を示し、従来の保存期間の間は、ガスとして放出されない。
【0042】
本発明の脂質乳剤は、キセノンを飽和状態にするために、負荷することができる。また、例えば、乳剤の投与で所望の薬学的活性を得た場合には、キセノンは、より低い濃度で存在することができる。
【0043】
本発明で用いられるキセノンの濃度は、所望の臨床効果に到達するために必要な最小濃度であってもよい。医師が、個人の患者に対し最も適切な、用量を決定することは一般的であり、この投与量は、特定の患者の年齢、体重及び反応によって異なる。もちろん、より多い又はより少ない投与量が効果的である個別の事例もあり、それらは、本発明の範囲内である。
【0044】
本発明のさらなる態様は、キセノンを投与するタイミングに関する。
【0045】
1つの好ましい態様においては、キセノンはCPBの間に、前記哺乳類に投与される。
【0046】
他の好ましい態様においては、キセノンはCPBの完了後に、投与される。
【0047】
さらに他の好ましい態様においては、キセノンはCPBの開始以前に投与される。
【0048】
1つの態様においては、キセノンは、少なくともCPBの間、すなわち、患者に人工心肺装置が装着されている間に投与される。さらなる態様においては、CPB以前にキセノンの投与が開始され、及び/又はCPBの完了後の期間も継続される。キセノンの投与が、CPB以前及びCPBの間行われることが好ましい。全ての態様において、投与は、CPBの完了後も任意で継続することができる。
【0049】
1つの特別な好ましい態様において、キセノンは、
(i)CPBの開始以前、
(ii)CPBの間、
(iii)CPBの完了後、
に哺乳類に投与される。
【0050】
さらに詳しくは、CPB以前、CPBの間、CPBの完了後のステップとは以下の通りである。胸骨切開術後、患者の全身に抗凝固剤を投与し、右心房及び大動脈をカニューレ処置する。カニューレ処置後、静脈血を心臓と肺から迂回し、CPB回路に戻し、酸素を供給し、二酸化炭素を除去し、キセノンを投与する。CPBの完了後、患者からカニューレを外し、全身の抗凝固を元に戻す。止血が確認された後、胸骨を閉じる。
【0051】
好ましくは、キセノンはCPBの開始以前の予備手術において、例えば、胸骨切開術の間及び/又は患者の全身に抗凝固剤を投与し、右心房及び大動脈をカニューレ処置している間に投与される。
【0052】
好ましくは、キセノンは、心臓が機能を再開した後のステップ(iii)、及び/又は手術の最終段階の間に投与される。1つの好ましい態様において、キセノンは、CPBの完了時、すなわち、患者がカニューレを外し、全身の抗凝固を元に戻し、及び/又は止血を確認し、胸骨を閉じた後、投与される。
【0053】
本発明の1つの特に好ましい態様では、キセノンが投与される哺乳類の体温は制御されている。好ましくは、体温は平常の体温より低く下げられる。通常は、体温は、平常の体温より、約1℃〜約10℃下げられ、より好ましくは、約1℃〜約5℃下げられる。
【0054】
本発明の3番目の態様は、CPBに関連する1又は複数の神経障害を、哺乳類において制御する方法に関し、かかる方法は、以下のステップを含む。
(i)キセノンを、CPBの開始以前に、哺乳類に投与するステップ、
(ii)キセノンを、CPBの間に、哺乳類に投与するステップ、及び
(iii)キセノンをCPBが完了した後に、投与するステップ。
【0055】
本発明の2番目と3番目の態様の好ましい態様は、1番目の態様に記載されたものと同一である。
【0056】
好ましくは、キセノンは、ステップ(i)中に、吸入又は静脈注入によって、より好ましくは吸入によって投与される。
【0057】
好ましくは、キセノンは、ステップ(iii)中に、吸入又は静脈注入によって、より好ましくは吸入によって投与される。
【0058】
好ましくは、ステップ(ii)は、特定の人工心肺装置を使用して、潅流によって投与することを含む。
【0059】
本発明は、動物の治療にも適用できる。この点で、本発明は、さらに獣医学的に使用できる希釈剤、賦形剤又は担体と組み合わせたキセノンの使用に関する。
【0060】
獣医学的使用には、キセノンは、通常の獣医学の慣例に従い投与され、獣医師が、特定の動物に最も適切である用量処方計画及び投与経路を決定する。
【0061】
本発明のさらなる態様は、哺乳類においてCPBに関連する1又は複数の神経障害を制御する方法に関し、かかる方法は哺乳類に、キセノンの治療的有効量を投与することを含む。
【0062】
好ましくは、キセノンは、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と組み合わせて投与される。
【0063】
さらにより好ましくは、キセノンは、NMDAレセプターの活性量を低減する。
【0064】
本発明は、実施例及び下記の図を参照して、さらに詳細に記載する。
【実施例】
【0065】
手術準備及び人工心肺(CPB)
本研究で使用したCPBモデルの方法論は、文献(Anesthesiology 2001, 95: 1485-91)に記載されている。要約すると、雄のSprague-Dawley ラット(12〜14週齢、350〜380g、Harlan, Indianapolis, IN)に、5%イソフルランと酸素富化した空気と共にプラスティック製の箱の中で、麻酔を導入した。14ゲージのカニューレを用いて経口気管内に挿管した後、機械的に肺に酸素を送達し、(40%O/バランスN)、二酸化炭素分圧PaCOを36〜42mmHgに維持した。予備手術中、麻酔を、2.0〜2.5%イソフルランで維持し、直腸と頭蓋骨膜の温度を制御し、電気毛布と対流性強制空気加熱システムを用いて、37.5±0.1℃にサーボ制御した(YSI400シリーズ、サーミスター、及び73ATAIndicating Controller, YSI Yellow Springs, OH)。大腿動脈の分岐部である浅腹壁動脈を、PE−10管でカニューレ処置し、平均動脈圧(MAP)をモニターした。人工心肺(CPB)の間、ラットに、フェンタニル(30μg/kg、静脈内)、ミダゾラム(0.4mg/kg静脈内)及びアトラクリウム(0.5mg/kg静脈内)を迅速投与した後、3つの混合物をシリンジポンプで連続注入して(フェンタニル2.5μg/kg/分、ミドゾラム0.03μg/kg/分、アトラクリウム0.08μg/kg/分)、麻酔した。試験的研究によって、この麻酔処方で、動物の麻酔が、CPBの間、十分な深度を有することが確認されている。頚部を切開して内頚静脈に挿入した4.5Frマルチオリフィスカニューレを通して、血液を抜き取り、カニューレの先端が下大静脈と右心房の接合部に到達するまで挿入した。血液を、腹部の尾動脈(腹部側)に位置する20ゲージ−1.1インチ−カテーテルを通じてCPB回路から戻した。
【0066】
CPB回路(図2)は、静脈リザーバー、ペリスタルティックポンプ(peristaltic pump)と膜型人工肺からなり、全て内径1.6mmのシリコンチューブ(Tygon; Cole-Parmer Instrument Co., Vernon Hills, IL)に連結している。ヘパリン処置(100IU/ラット、静脈内)し、イソフルラン麻酔で放血した2匹のドナーラット(275〜320gm)から、実験開始前に採血した約40mlの全血で、CPB回路の初回刺激を行った。排出された血液は、暖めた静脈リザーバー(ヒートポンプから循環水で覆われた)を横断し、ペリスタルティックポンプ(Masterfex, Cole-Parmer Instrument Co., vernon Hills, IL)から膜型人工肺(表面積が0.33m2 の修正したCobe Micro neonatal oxygenator; Cobe Cardiovascular, Inc., Arvada, CO)へと移動した。閉鎖された回路のガス送達系は、血液をラット内に戻した後、適切なガスを膜型人工肺に送達した。インラインフロープローブ(2N806フロープローブとT208ボリュームフローメーター; Transonics Systems, Inc., Ithaca, NY)を用いて、連続的にCPBフローを測定した。動脈経路流入温度は、循環ウォーターバスシステムを用いて37.5℃に維持した。Oximetrix MonitorとOpticath Catheter (Abbot Laboratories, North Chicago, IL) を使用して、静脈環流ラインからの静脈酸素飽和率を連続的に測定した。動脈血液ガスは、OSM3Hemoximeter (Radiometer Inc., Copenhagen, Denmark)を使用して測定したヘモグロビンを用いて、IL1306血液ガス分析装置(Instrument Laboratories, Inc. Lexington, MA)で分析した。
【0067】
実験プロトコール
上記記載の実験段階がすべて完了した後、ラットをランダムに4つのグループに分けた。Sham 群(n=10):ラットにカニューレ処置するが、CPBは施さない。CPB群(n=10):ラットに、膜型人工肺を用いて定常流CPBを60分施し、30%Oと65%Nの混合物を供給した。CPB+MK801群:ラット(n=10)に、CPBの15分〜60分前に、MK801(0.15mg/kg、静脈内)を、グループ2と同様の濃度で供給した。MK801の用量は、副作用を最小限に押さえるよう、試験的研究より選択した。CPR+キセノン群:ラット(n=10)に膜型人工肺を用いてCPBを60分施し、30%Oと60%キセノンの混合物を供給した。
【0068】
生理的パラメーター
平均動脈圧とフローレートは、3つのCPB群に有意差はなかった。pHと血液ガスの測定値は、一貫して正常範囲内に維持された。CPBの間、静脈リザーバーでサンプリングした混合静脈血酸素飽和度混合は、通常より低いが、3つのCPB群に有意差はなかった。ヘモグロビンは、Sham 群では段階的に減少したが(恐らく血液サンプリングが原因)、3つのCPB群では、それぞれ、CPBの120分後にベースライン付近まで段階的に上昇し、CPBを施した3つの群に有意差なかった。血糖は、4つの群で統計的な有意差を示さなかった。直腸と頭蓋骨膜の温度は、CPB間の10〜20分間の短期間を除いて、37.5℃付近に維持した(回路からの比較的冷たい血液が注入されたことによる)。CPB群では、有意差を記録しなかった。動物の体重は、術後3日目に最低レベルまで減少した。その後、術後12日目の実験後までには、ベースラインより上まで上昇した。体重に関しては、4つの群に有意差はなかった。
【0069】
神経及び神経認知検査
術後1、3、12日目に、全ての動物に対し、スケールを0〜9(最高得点=9)に格付けした牽引力(prehensile traction)、力、バランスビームパフォーマンスを含む標準化された機能神経検査を、定評あるプロトコール(Combs D, D7Alecy L: Motor performance in rats exposed to severe forebrain ischemia: Effect of fasting and 1,3-butanediol Stroke 1987; 18:503-511 Gionet T, Thomas J, Warner D, Goodlett C, Wasserman E, West J: Forebrain ischemia induces selective behavioral impairments associated with hippocampal injury in rats. Stroke 1991; 22: 1040-1047)に従って行った。
【0070】
神経の評価に加えて、術後3日目に、グループ分けを周知していない検査者によって、コンピューター化したビデオトラッキングシステムによるモリス水迷路を使用した行動検査(etho Vision; Noldus, Wageningen, The Netherlands)を行い、神経認知転帰を測定した(Morris R: Developments of a water-maze procedure for studying spatial learning in the rat. J Neurosci methods 1984; 11:47-60)。要約すると、モリス水迷路は、直径1.5m、深さ30cmの水の水槽(26.5±0.2℃)と、1つの四分割に浸水して隠れているプラットフォーム(水面下1cm)からなる。ラットを、複数の迷路、視覚的手がかりのある薄暗い部屋で、水に入れた。浸水したプラットフォームを見つけるまでの時間(反応時間と定義)を測定して、視覚空間学習と記憶障害を検査した。ラットは水中迷路で1回の検査につき4度の実験を毎日行い、水中にいる時間を90秒に制限した。検査は、それぞれ異なる四分割から開始した。検査を連続10日間繰り返した。
【0071】
一般行動の変化
MK801を投与した動物は全て、多動性、ふらつき (head weaving)やそれに伴う運動協調性の障害を示し、麻酔から覚醒後1〜2時間持続した。全ての動物は、覚醒後、飲食が可能であった。
【0072】
神経支配系機能検査
CPB群は、術後1〜3日目に、Sham 群又はCPB+キセノン群のいずれと比較して、悪い神経学的転帰を示した。[(1日目:5.2±1.5vs7.6±0.8(p<0.01)又は8.3±0.5(p<0.001);3日目:5.8±1.8vs8.3±0.7(p<0.05)又は8.9±0.2(p<0.001)]しかし、CPB群とCPB+MK801群とでは差異はなかった(1日目:5.2±1.5vs6.2±1.4(p>0.05);3日目:5.8±1.8vs7.4±1.8(p>0.05)。術後12日目には、4つの群に差異はなかった(図3)。機能神経検査における各要素の質量分析は、この差異が、バランスビームと牽引力能力間のバランスをさらに悪化させる主な原因であることを示唆した(データは示されていない)。
【0073】
モリス水迷路検査
毎日4つの検査に基づいてプラットフォームを見つけるまでに動物が要した時間を示すCPB群の反応時間は、Sham群、CPB+MK801群及びCPB+Xe群と比較すると、長かった。
【0074】
各群とCPB群とを比較すると、統計的な有意差があった(CPSvsSham:F=18.2、p<0.0001;CPBvsCPB+MK801:F=20.7、p<0.0001;CPBvsCPB+Xe:F=21.6、p<0.0001)。術後3〜4日目のStudent-Neman-Keuls の反復測定値(Repeated measurement)は、CPB群と比較して有意差を示した(図4)。水泳時間は、術後10日間は、4.7〜6.2インチ/秒変化したが、それぞれの時点では4つの群に有意差はなかった(図5)。
【0075】
上記の結果は、CPB中のキセノンの投与が、バイパス後の神経認知障害及び神経障害を顕著に保護することを明確に示している。
【0076】
温度変化研究
神経保護剤としてのキセノンの作用を、例えば、CPB中に起こりうる平常の体温(37℃)とより低い体温(33℃)で、検査した。WO01/08692(Imperial College of Science, Technology and Medicineの名義)に記載の方法に従って、神経細胞/膠細胞(neuronal/glial)共培養したマウスからのLDH放出の測定に基づいて、研究を行った。
【0077】
データは、キセノンが、神経細胞/膠細胞共培養したマウスからのLDH放出を、37℃で非常に効果的に減少させ、さらに驚くことに、33℃でより効果的に減少させることを示している。実際、キセノンは、37℃で、EC50が35.9+/−2.2%であるが、33℃では11.5+/−2.0%である。この増強された有効性は、単純な物理化学に基づき単に予測するよりも、想像以上に高い。すなわち、増強された有効性は、温度が低いときに、キセノンのターゲットに対する結合親和力の予想される上昇に起因するよりもはるかに顕著である。
【0078】
本発明に記載された方法の各種修正や変更は、当業者が、本発明の範囲や精神から逸脱することがなければ行うことができる。本発明は、具体的に好ましい実施例に関連して記載されているが、化学や関連する分野の技術者にとって明白である、本発明を実施するための実施態様の各種修正は、以下の請求項の範囲内でなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は、実験プロトコールの概略図を示す。標準化された機能検査を用いて、CPBの後に神経学的転帰(neurologic outcome)を分析した。神経認知転帰(neurocognitive outcome)は、モリス水迷路(Morris water maze)に浸水したプラットフォーム(視覚空間学習及び記憶の指標)を見つける時間(又は反応時間(latency))と定義し、CPB後3〜12日目に毎日測定した。
【図2】図2は、ラットCPBモデルと、キセノンガス送達系の概略図を示す。
【図3】図3は、Sham群、CPB群、CPB+MK801群及びCPB+Xe群の、24時間後、72時間後及び12日後の神経支配機能スコアを示す。
【図4】図4は、人工心肺(CPB)後毎日(3〜12日目)測定した、モリス水迷路を使用した視覚空間学習及び記憶による、神経認知転帰(neurocognitive outcome)を示す。結果は、各ラットのそれぞれの日の4つの反応時間の合計である(反応時間とは、動物が、各実験で異なる四分割からスタートして、浸水したプラットフォームを見つけるまでの時間と定義される。)データは、n=10であるときに、平均値+SEMである。ANOVAは、Sham群、CPB+MK801群又はCPB+Xe群と、CPB群とをそれぞれ比較したときに有意な統計差があることを示している。(CPBvsSham:F=18.2、p<0.0001;CPBvsCPB+MK801:F=20.7、p<0.0001;CPBvsCPB+Xe:F=21.6、p<0.0001)。Student-Newman-Keulsを使用した反復測定(repeated measure)と、その後の差異分析により、CPB後3日目及び4日目にCPB群と比較した時に、有意差を示した。
【図5】図5は、モリス水迷路検査中のSham群、CPB+MK801群及びCPB+Xe群の水泳速度を示す。毎日(CPB後3〜12日)測定し、コンピューター化したビデオトラッキングシステムで記録した水泳速度は、群によって差異はなかった。したがって、反応時間(図4参照)の差異は、神経支配系の障害でなく、認識の混乱によるものである。
【図6】図6は、平常体温(37℃)と低体温時(33℃)の両方における、キセノンの神経保護剤としての作用を示す。具体的には、図6は、それぞれの体温における、キセノン濃度(%atm)に対する(標準化された)LDHリリースを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工心肺術開始前及び人工心肺術中に投与される人工心肺術に関連する1又は複数の神経障害を制御する薬剤の調製におけるキセノンの使用。
【請求項2】
神経障害が、神経支配系障害又は神経認知障害であることを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項3】
薬剤が、人工心肺術が完了した後にも投与されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
制御が、薬剤の非存在下で人工心肺術を施した被検対象と比較して、1又は複数の神経障害の重症度を軽減することに関与することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
薬剤が、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
薬剤が、潅流によって投与されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
薬剤が、吸入によって投与されることを特徴とする、請求項1〜5いずれかに記載の使用。
【請求項8】
薬剤が、70〜30%v/vのキセノン/酸素混合物の形態であることを特徴とする、請求項7記載の使用。
【請求項9】
薬剤が、溶液又は乳剤の形態で投与されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の使用。
【請求項10】
溶液又は乳剤が、静脈内に投与されることを特徴とする、請求項9記載の使用。
【請求項11】
薬剤が、脂質乳剤の形態であることを特徴とする、請求項9又は10の使用。
【請求項12】
キセノンを治療有効量を含み、人工心肺術開始前及び人工心肺術中に投与されることを特徴とする、人工心肺術に関連する1又は複数の神経障害を哺乳類において制御する治療剤。
【請求項13】
1又は複数の神経障害が、神経支配系障害又は神経認知障害から選択されることを特徴とする、請求項12の治療剤。
【請求項14】
(i)人工心肺術開始前、
(ii)人工心肺術中及び
(iii)人工心肺術完了後
に哺乳類に投与されることを特徴とする、請求項12又は13に記載の治療剤。
【請求項15】
制御が、治療剤の非存在下で人工心肺術を施した被検対象と比較して、1又は複数の神経障害の重症度を軽減することに関与することを特徴とする、請求項12〜14のいずれかに記載の治療剤。
【請求項16】
薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含むことを特徴とする、請求項12〜15のいずれかに記載の治療剤。
【請求項17】
潅流で投与されることを特徴とする請求項12〜16のいずれかに記載の治療剤。
【請求項18】
吸入で投与されることを特徴とする請求項12〜16のいずれかに記載の治療剤。
【請求項19】
70〜30%v/vのキセノン/酸素混合物の形態であることを特徴とする、請求項18に記載の治療剤。
【請求項20】
乳剤又は溶液の形態であることを特徴とする、請求項12〜17のいずれかに記載の治療剤。
【請求項21】
脂質乳剤の形態であることを特徴とする、12〜17のいずれかに記載の治療剤。
【請求項22】
乳剤又は溶液が、静脈内に投与されることを特徴とする、請求項20に記載の治療剤。
【請求項23】
人工心肺術開始前、予備手術中に投与されることを特徴とする、請求項14に記載の治療剤。
【請求項24】
ステップ(iii)中に、心臓が再開した後に及び/又は手術の最終段階中に、投与され
ることを特徴とする、請求項14又は23に記載の治療剤。
【請求項25】
ステップ(i)及び(iii)において、それぞれ別個に、潅流又は静脈注入で投与され
ることを特徴とする、請求項14に記載の治療剤。
【請求項26】
ステップ(ii)において、特殊な人工心肺装置を使用し、吸入によって投与されることを特徴とする、請求項14又は25に記載の治療剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−102290(P2011−102290A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218067(P2010−218067)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【分割の表示】特願2004−500891(P2004−500891)の分割
【原出願日】平成15年5月1日(2003.5.1)
【出願人】(504405707)プロテクソン リミテッド (3)
【Fターム(参考)】