説明

人工毛髪用モノフィラメント

【課題】静電気抑制効果を付加した人工毛髪用モノフィラメントを提供する。
【解決手段】非導電性ポリエステル樹脂からなる主線状部位aの表層部に、導電性無機粒子とポリエステル樹脂との混合物からなる、断面形状の外側に凸状部を形成している複数条の副線状部位b、b’が、主線状部位aを完全に被覆することなく、モノフィラメントの長さ方向に沿って筋状に形成されており、主線状部位aと副線状部位bの断面積比a:bが95:5〜70:30の範囲であり、モノフィラメントの両端に電極を繋いで印加し、測定されるモノフィラメントの抵抗値(Ω)÷抵抗値測定時の電極間距離(cm)で表した体積固有抵抗値が1×108Ω/cm以下であると共に、主線状部位がシリカ粒子を3.0重量%以下含有するポリエステル樹脂組成物で構成されている人工毛髪用モノフィラメント。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工毛髪用モノフィラメントに関するものである。さらに詳しくは、静電気抑制効果を備えた人工毛髪用モノフィラメントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
人工毛髪用モノフィラメントが使われる形態としては、頭部全体に装着するウイッグや、部分的にアクセントをつけるヘアーエクステンションなどが挙げられる。
【0003】
そして、従来の人工毛髪用モノフィラメントは、あくまでも薄毛をカバーする人毛代替としての位置づけが強かった。
【0004】
ところが昨今では、ファッションの一部として赤色、青色、蛍光色などさまざまな色相の人工毛髪用モノフィラメントからなるウイッグやヘアーエクステンションが好まれて使われるようになってきており、世の中の頭髪への意識が変わりつつある。
【0005】
また、ヘアースタイルも有名サロンなどによるヘアーアレンジなどの影響により、さまざまなバリエーションのヘアースタイルが流行している。
【0006】
特に若者を中心とした世代では、ファッション雑誌、テレビ、インターネットなどの影響により、派手な色相の頭髪色や盛り髪、巻き髪などのヘアースタイルをファッションの一部として楽しむようになっており、整髪料やコームなどを使用した整髪や、ヘアーアイロン、ヘアードライヤーなどの熱器具を使用してカール、ハネ、ウェーブなどの形状に整髪する方法などがある。
【0007】
従来からある人工毛髪用モノフィラメントの素材としては、塩化ビニル、モダクリル、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂モノフィラメントが使用されてきた。
【0008】
ところが、塩化ビニル、モダクリルなどの合成樹脂を使用した人工毛髪用モノフィラメント(例えば、特許文献1、2参照)は、柔軟性に優れているが、耐熱性がなく、ヘアーアイロンやヘアードライヤー、クリンパーなどの高温の熱器具を使用した整髪ができないという欠点がある。
【0009】
また、ポリエチレンテレフタレートを使用した人工毛髪用モノフィラメント(例えば、特許文献3参照)は、塩化ビニル、モダクリルと比べ耐熱性はあるものの、ヘアーブラシなどで髪をすいた時に、静電気が発生し人工毛髪用モノフィラメントが乱れるなどの欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−227028号公報
【特許文献2】特開2004−156149号公報
【特許文献3】特開平05−140807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の従来技術における問題点を課題として検討した結果、達成されたのである。すなわち、本発明の目的は、整髪用高熱器具によるヘアーセットも可能であり、ヘアーブラシなどで髪をすいたときに静電気の発生を抑えた人工毛髪用モノフィラメントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため本発明によれば、非導電性ポリエステル樹脂からなる主線状部位の表層部に、導電性無機粒子とポリエステル樹脂との混合物からなる複数条の副線状部位が、前記主線状部位を完全に被覆することなく、モノフィラメント長さ方向に沿って筋状に形成されているモノフィラメントからなることを特徴とする人工毛髪用モノフィラメントが提供される。
【0013】
なお、本発明の人工毛髪用モノフィラメントにおいては、
前記副線状部位がモノフィラメントの断面形状の外側に凸状部を形成していること、
前記主線状部位aと副線状部位bの断面積比a:bが95:5〜70:30の範囲にあること、
前記モノフィラメントの両端に電極を繋いで印加し、測定されるモノフィラメントの抵抗値(Ω)÷抵抗値測定時の電極間距離(cm)で表した体積固有抵抗値が1×10Ω/cm以下であること、および
前記主線状部位がシリカ粒子を3.0重量%以下含有するポリエステル樹脂組成物で構成されていること
が、いずれも好ましい条件として挙げられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、耐熱性、静電気抑制効果を有する人工毛髪用モノフィラメントを得ることができる。したがって、本発明の人工毛髪用モノフィラメントは、ヘアーアイロン、ヘアードライヤーなどの整髪用高熱器具を使用したヘアーセット、ヘアーブラシで髪をといだときに発生する静電気の抑制を要求特性する人工毛髪用モノフィラメントに極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(イ)〜(ト)は人工毛髪用モノフィラメントの断面形状を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の人工毛髪用モノフィラメントについて、図面に従って詳細に説明する。
【0017】
本発明の人工毛髪用モノフィラメントは、主たる材料としてポリエステル系樹脂を用いたものであり、非導電性ポリエステル樹脂からなる主線状部位の表層部に、導電性無機粒子とポリエステル樹脂との混合物からなる複数条の副線状部位が、前記主線状部位を完全に被覆することなく、モノフィラメント長さ方向に沿って筋状に形成されているモノフィラメントからなることを特徴とする。
【0018】
図1(イ)〜(ト)は人工毛髪用モノフィラメントの一例を示した断面図であり、(イ)、(ロ)、(ハ)は非導電性のポリエステル樹脂からなる主線状部位aの表層部に、導電性無機粒子とポリエステル樹脂との混合物からなる複数条の副線状部位bが、主線状部位aを完全に被覆することなく、人工毛髪用モノフィラメントの長さ方向に沿って筋状に形成されているものである。
【0019】
また、図1(二)、(ホ)、(へ)のように、副線状部位bが人工毛髪用モノフィラメントの長さ方向に垂直に切ったときの断面形状の外側に凸状部b´を形成するようにすることがより好ましい。その理由は、人工毛髪用モノフィラメントに光があたると乱反射を起こすため、より人毛に近い光沢が得られると共に、人工毛髪用モノフィラメントが重なったときに断面が異形であるため、隙間ができやすくブラシなどの櫛通しがよくなり、髪をすいたときに絡まりにくくなるためである。
【0020】
一方、図1(ト)のように、芯鞘構造で芯部非導電層cと鞘部導電層dで形成された人工毛髪用モノフィラメントでは、人工毛髪用モノフィラメントを染色した後の外観が悪く、艶、光沢がなくなるため好ましくない。
【0021】
また、本発明の人工毛髪用モノフィラメントは、ポリエステル樹脂を素材としていることから、熱特性として連続使用温度が150℃であるため、ヘアーアイロンなどの高熱器具による整髪が可能であり、ヘアーセット性に優れているのに対し、塩化ビニル、モダクリルは連続使用温度が100℃以下であるため耐熱性がなく、ヘアーアイロンなどの高熱器具を使用した整髪ができないためヘアーセット性が悪い。
【0022】
本発明で使用するポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、またはその2種類以上の共重合またはブレンドなどが挙げられる。
【0023】
次に、本発明の人工毛髪用モノフィラメント製造方法に関して詳細に説明する。
【0024】
非導電性の主線状部位aを構成するポリエステル樹脂の製造方法としては、一般的なポリエステル系樹脂の重合方法で製造することができ、例えばアンチモン化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物、アルミニウム化合物を主たる触媒として、ジカルボン酸及び/またはそのエステル形成誘導体とジオール及び/またはそのエステル形成誘導体からエステル化反応により合成することで製造することができる。
【0025】
一方、導電成分としての複数条の副線状部位b又はb´を形成する導電性ポリマー樹脂組成物としては、導電性無機粒子を高濃度にブレンドしたものが使用されるが、その主成分となるポリマー樹脂については、非導電層の主線状部位aを形成するポリマー樹脂として例示したものと同様の樹脂を用いることができる。
【0026】
導電性ポリマー樹脂組成物における導電性無機粒子濃度は、40〜85重量%であることが好ましく、50〜80重量%の範囲であることがさらに好ましい。
【0027】
これは、導電性無機粒子の含有量が上記範囲を下まわると、得られる人工毛髪用モノフィラメントの導電性能が低下しやすい傾向にあり、逆に、導電性無機粒子の含有量が上記範囲を上まわると、得られる人工毛髪用モノフィラメントの強度が低下しやすくなるばかりか、人工毛髪用モノフィラメントを溶融紡糸する際には、原料を紡糸機内に押し込みにくくなり、溶融紡糸が困難となりやすいからである。
【0028】
また、本発明の人工毛髪用モノフィラメントに含有される導電性無機粒子は、後に黒色以外に染色できるよう、金属酸化物粒子が導電性および白度の面から好ましい。
【0029】
なお、金属酸化物粒子としては、例えば酸化錫、酸化亜鉛、及び酸化錫、酸化亜鉛で表面を被覆した酸化チタンなどの粒子が挙げられるが、さらに導電性能を高める添加剤として酸化錫に対しては酸化アンチモンが、酸化亜鉛に対してはアルミニウム、カリウム、インジウム、ゲルマニウム、錫などの金属酸化物を併用することも可能である。
【0030】
そして、本発明の人工毛髪用モノフィラメントに使用する金属酸化物粒子の平均粒子径は、0.01〜7μmの範囲が好ましく、さらには0.1〜1μmの範囲がより好ましい。
【0031】
これは、金属酸化物粒子の平均粒子径が上記範囲を下まわると、粒子同士が凝集しやすくなるために粒子の連続構造が形成されなくなり、十分な導電性能が得られにくくなるばかりか、0.01μm以下の超微粒子は非常に高価なため、製造コストに影響しやすいからである。また、金属酸化物粒子の平均粒子径が上記範囲を上まわると、逆に粒子が凝集性しにくくなって粒子の連続構造が形成されなくなり、十分な導電性能が得られにくくなるからである。
【0032】
さらにまた、本発明の人工毛髪用モノフィラメントは、その長さ方向に対して垂直に切断した断面において、主線状部位aと副線状部位b又はb´の断面積比a:b又はb´が95:5〜70:30の範囲であることが好ましい。
【0033】
主線状部位aが上記範囲を上回った場合は、十分な導電性が得られないため好ましくなく、また、主線状部位aが上記範囲を下回った場合は、未延伸糸が硬くなり、延伸工程時、糸切れが発生するなど紡糸性が悪くなるため好ましくない。
【0034】
本発明の人工毛髪用モノフィラメントの導電性能は、副線状部位b又はb´に使用する導電成分やその使用濃度、芯鞘比率、さらには表面に露出している副線状部位b´の割合によって異なるが、抵抗値(Ω)÷抵抗値測定値時の電極間距離(cm)で表した体積固有抵抗値が1x10Ω/cm以下であることが好ましく、上記範囲を上回ると静電気抑制効果がなくなるため好ましくない。
【0035】
すなわち、人工毛髪用モノフィラメントの体積固有抵抗値が1x10Ω/cm以下であれば、静電気抑制効果としての機能を十分に発揮することができる。
【0036】
また、本発明の人工毛髪用モノフィラメントは、目的とする特性を疎外しない範囲であれば、さらなる特性を付加する目的で、種々の添加物を制限なくポリマー樹脂やポリマー樹脂組成物中に含有することができ、例えば、耐摩耗性向上を目的にアイオノマー樹脂やシリコーン樹脂を副線状部位b、b´の導電成分中に0.1〜0.5重量%添加することも可能である。
【0037】
また、主線状部位aを構成するポリエステル系樹脂組成物にシリカ粒子を3.0重量%以下含有することが好ましく、さらに1.0〜2.5重量%含有することで、より人毛に近い艶、光沢が得られるためより好ましい。上記範囲を上回った場合には、艶、光沢を十分に満足できない傾向が招かれることがある。
【0038】
本発明の人工毛髪用モノフィラメントの製造方法には、なんら特殊な方法を必要とせず、例えばエクストルーダー型等の複合溶融紡糸機と所望の複合紡糸口金を用いて溶融押出する製造方法など、公知の芯鞘複合紡糸方法により製造することができる。
【0039】
また、本発明の人工毛髪用モノフィラメントの色相は、従来のポリエステルの人工毛髪用モノフィラメントの染色方法で染色することができ、目的とする特性を疎外しない範囲であれば減量加工、柔軟加工、蛋白質などのコーティングなどの仕上げ加工等も可能である。
【0040】
本発明の人工毛髪用モノフィラメントは、ウイッグ以外にヘアーエクステンションとしても利用が可能である。
【0041】
かくして得られる本発明の人工毛髪用モノフィラメントは、人工毛髪用モノフィラメントとしての十分な物理的強度を兼ね備えるとともに、整髪用高熱器具への耐熱性を備え、静電気抑制効果として必要とされる導電性能を十分に有し、ファッション性を重視した人工毛髪用モノフィラメントとして極めて優れた効果を発揮し、これら人工毛髪用モノフィラメントとして好適に利用し得るものである。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明の人工毛髪用モノフィラメントをさらに詳しく説明するが、本発明はその主旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。人工毛髪用モノフィラメントの各種特性値は以下の方法に従って測定したものである。
【0043】
[主線状部位aと副線状部位b、b´及び芯部非導電層cと鞘部導電層dの面積比]
人工毛髪用モノフィラメントを長さ方向に対して垂直に切断し、その断面をKEYENCE製デジタルマイクロスコープVHX−100Fにて観察し、デジタルマイクロスコープの面積測定ツールを用いて、主線状部位aの断面積および副線状部位bの断面積を計測し、その面積比を百分率で求めた。
【0044】
[体積固有抵抗値]
人工毛髪用モノフィラメント試料を5cmにカットし、両端の表面にドータイトを塗り1時間乾燥させる。その後、試料の両端をクリンプ(電極)で把持し、印加して糸の抵抗値を測定し、下記の計算式(I)により抵抗値を求めた。なお、測定は温度20℃、湿度65%の条件下で行い、抵抗値は東亜電波工業(株)製の極超絶縁計SM−10型を使用して測定した。
【0045】
体積固有抵抗値(Ω/cm)=測定抵抗値(Ω)÷電極間距離(cm)・・・(I)
[外接円直径]
人工毛髪用モノフィラメントを長さ方向に対して垂直に切断し、その断面をKEYENCE製デジタルマイクロスコープVHX−100Fにて観察し、デジタルマイクロスコープの面積測定ツールを用いて、人工毛髪用モノフィラメントの外接円直径を測定した。
【0046】
[外観評価]
人工毛髪用モノフィラメントを黒色に染色後、太陽光の下に目視で評価した。
【0047】
◎ 人工毛髪用モノフィラメントの艶、光沢が人毛に似ている、
○ 人工毛髪用モノフィラメントの艶、光沢がある、
× 人工毛髪用モノフィラメントの艶、光沢がない。
【0048】
なお、実施例で使用した原料は、特に記されない限り次のものを使用した。
【0049】
[ポリエステルペレット]
公知の溶融重縮合と固相重縮合とによって製造した極限粘度0.94、末端カルボキシル基濃度15当量/10gの乾燥したポリエチレンテレフタレートペレット(以下、PETペレットと略称する)。
【0050】
[導電性無機粒子含有PETマスターバッチペレット]
導電性無機粒子として表面に酸化第2錫の皮膜15重量%を有する酸化チタン粒子に対して、1.5重量%の酸化アンチモンを混合焼成して得られた平均粒子径0.2μの導電粒子(三菱マテリアル株式会社製W−1)を、極限粘度0.67のPETチップに75重量%含有したPETペレット。
[実施例1]
非導電性の主線状部位aにPETペレットを、複数条の副線状部位bに導電性無機粒子含有PETマスターバッチペレットを、エクストルーダー型複合溶融紡糸機に連続供給した。
【0051】
エクストルーダー型複合溶融紡糸機内で各ペレットを290℃で溶融混練した後、ギヤポンプを介して複合紡糸パック内に押出し、さらに各ペレットの溶融物を濾過層に通過させた後、口金吐出孔直前で合流させ、断面形状が図1(イ)となる複合紡糸口金より紡出した。その後紡出された溶融物は70℃の湯浴中で冷却固化されて未延伸糸となり、この未延伸糸を引き続きトータル4.2倍に延伸し、さらに熱セットを施して、直径0.1mm、図1(イ)の主線状部位aと副線状部位bの断面積比a:bが95:5の人工毛髪用モノフィラメントを得た。
[実施例2]
図1(イ)の主線状部位aと副線状部位bの断面積比A:Bを70:30としたこと以外は、実施例1と同様にして、直径0.1mmの人工毛髪用モノフィラメントを得た。
[実施例3]
断面形状が図1(ロ)になるような複合紡糸口金で紡出させたこと以外は、実施例1と同様にして、直径0.1mmの人工毛髪用モノフィラメントを得た。
[実施例4]
断面形状が図1(ハ)になるような複合紡糸口金で紡出させたこと以外は、実施例1と同様にして、直径0.1mmの人工毛髪用モノフィラメントを得た。
[実施例5]
断面形状が図1(二)になるような複合紡糸口金で紡出させたこと以外は、実施例1と同様にして、外接円直径0.1mmの人工毛髪用モノフィラメントを得た。
[実施例6]
断面形状が図1(ホ)になるような複合紡糸口金で紡出させたこと以外は、実施例1と同様にして、外接円直径0.1mmの人工毛髪用モノフィラメントを得た。
[実施例7]
断面形状が図1(へ)になるような複合紡糸口金で紡出させたこと以外は、実施例1と同様にして、外接円直径0.1mmの人工毛髪用モノフィラメントを得た。
[実施例8]
非導電性の主線状部位aにPETペレットに粒径平均4μmのシリカ粒子を2重量%含有させたこと以外は、実施例1と同様にして、直径0.1mmの人工毛髪用モノフィラメントを得た。
[実施例9]
断面形状が図1(二)になるような複合紡糸口金で紡出させたこと以外は、実施例8と同様にして、外接円直径0.1mmの人工毛髪用モノフィラメントを得た。
[実施例10]
非導電成分の主線状部位aにPETペレットに粒径平均4μmのシリカ粒子を2重量%含有させたこと以外は、実施例9と同様にして、外接円直径0.1mmの人工毛髪用モノフィラメントを得た。
[実施例11]
断面形状が図1(へ)になるような複合紡糸口金で紡出させたこと以外は、実施例10と同様にして、外接円直径0.1mmの人工毛髪用モノフィラメントを得た。
[比較例1]
PETペレットをエクストルーダー型溶融紡糸機に連続供給した。
【0052】
エクストルーダー型溶融紡糸機内でペレットを約290℃で溶融混練した後、ギヤポンプを介して紡糸パック内に押出し、さら各ペレットの溶融物を濾過層に通過させた後、断面が丸形の紡糸口金より紡出した。その後紡出された溶融物は70℃の湯浴中で冷却固化されて未延伸糸となり、この未延伸糸を引き続きトータル4.2倍に延伸し、さらに熱セットを施して、直径0.1mmの人工毛髪用モノフィラメントを得た。
[比較例2]
芯部非導電層cにPETペレット、鞘部導電層dに導電性無機粒子含有PETマスターバッチペレットを、エクストルーダー型複合溶融紡糸機に連続供給した。
【0053】
エクストルーダー型複合溶融紡糸機内で各ペレットを290℃で溶融混練した後、ギヤポンプを介して複合紡糸パック内に押出し、さらに各ペレットの溶融物を濾過層に通過させた後、口金吐出孔直前で合流させ、断面形状が図1(ト)となる複合紡糸口金より紡出した。その後紡出された溶融物は70℃の湯浴中で冷却固化されて未延伸糸となり、この未延伸糸を引き続きトータル4.2倍に延伸し、さらに熱セットを施して、直径0.1mm、図1(ト)の芯部非導電層cと鞘部導電層dの断面積比c:dが95:5の人工毛髪用モノフィラメントを得た。
[比較例3]
主線状部位aと副線状部位bの断面積比a:bを50:50としたこと以外は、比較例2と同様にして、直径0.1mmの人工毛髪用モノフィラメントを得た。
【0054】
実施例1〜11と比較例1〜3で得られた人工毛髪用モノフィラメントの体積固有抵抗値と紡糸性の外観評価結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
表1の結果から明らかなように、本発明の人工毛髪用モノフィラメントは、体積固有抵抗値が良好な値を示し、紡糸性、外観評価も良好であった。
【0057】
これに対して、本発明の条件を満たさない人工毛髪用モノフィラメント(比較例1〜3)は、導電性能および紡糸性、外観評価のいずれかが実施例の人工毛髪用モノフィラメントに比べて低く、静電気抑制効果がないもの(比較例1)、染色後の製品外観が悪くなるもの(比較例2)、操業が悪く生産性に欠けるもの(比較例3)ものばかりであることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のポリエステル系樹脂組成物からなる人工毛髪用モノフィラメントは、耐熱性に優れ、ヘアーアイロン、ヘアードライヤー、クリンパーなどの整髪用高熱器具への対応も可能であり、静電気抑制効果を兼ね揃えており、従来の人工毛髪用モノフィラメントには見られない安定的な品質を備えている。
【0059】
したがって、本発明の人工毛髪用モノフィラメントは、静電気による髪の広がりを抑制することができ、人工毛髪用モノフィラメントとして極めて優れた効果を発揮する。
【符号の説明】
【0060】
a・・・主線状部位
b、b´・・・副線状部位
c・・・芯部非導電層
d・・・鞘部導電層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導電性ポリエステル樹脂からなる主線状部位の表層部に、導電性無機粒子とポリエステル樹脂との混合物からなる複数条の副線状部位が、前記主線状部位を完全に被覆することなく、モノフィラメント長さ方向に沿って筋状に形成されているモノフィラメントからなることを特徴とする人工毛髪用モノフィラメント。
【請求項2】
前記副線状部位がモノフィラメントの断面形状の外側に凸状部を形成していることを特徴とする請求項1に記載の人工毛髪用モノフィラメント。
【請求項3】
前記主線状部位aと副線状部位bの断面積比a:bが95:5〜70:30の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の人工毛髪用モノフィラメント。
【請求項4】
前記モノフィラメントの両端に電極を繋いで印加し、測定されるモノフィラメントの抵抗値(Ω)÷抵抗値測定時の電極間距離(cm)で表した体積固有抵抗値が1×10Ω/cm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の人工毛髪用モノフィラメント。
【請求項5】
前記主線状部位がシリカ粒子を3.0重量%以下含有するポリエステル樹脂組成物で構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の人工毛髪用モノフィラメント。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−104151(P2013−104151A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249285(P2011−249285)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000219288)東レ・モノフィラメント株式会社 (239)
【Fターム(参考)】