人工沈石体および魚巣ブロック
【課題】 コンクリートが有する重量および強度面と特徴を生かしながら,生物の生育環境を害しないで洗掘が防止できる人工沈石体を得る。
【解決手段】 植物繊維を配合したモルタルまたはコンクリートの線状体同士が部分的に結着し且つ該線状体同士の間に間隙が形成されている立体形状のブロックからなる洗掘防止用の人工沈石体である。この人工沈石体は植物繊維の配合量が20Kg/m3以上で,線状体の径が5〜200mmである。モルタルまたはコンクリートはMgOおよびP2O5を主成分とする低pHセメントを結合材としたものである。
【解決手段】 植物繊維を配合したモルタルまたはコンクリートの線状体同士が部分的に結着し且つ該線状体同士の間に間隙が形成されている立体形状のブロックからなる洗掘防止用の人工沈石体である。この人工沈石体は植物繊維の配合量が20Kg/m3以上で,線状体の径が5〜200mmである。モルタルまたはコンクリートはMgOおよびP2O5を主成分とする低pHセメントを結合材としたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,水中構造物に水流が作用することによって発生する洗掘を抑制する人工沈石体であって且つ生物の生息環境に適合する人工沈石体および魚巣ブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
砂質の水底に構造物を設置する場合,その基礎部分に当る水流によって洗掘が起きることが多く,その対応として,洗掘防止用のコンクリートブロックや砕石等をネットに入れたフイルタユニットと称するものが使用されている。
【0003】
例えば,図1に示したように,水中構造物の基礎1の流れの当たる側部に洗掘防止用コンクリートブロック2を配置ことが行われる。このブロック2は基礎1の洗掘を抑制する効果をそれなりに示すが,このブロック2自身が洗掘を受けることは否めない。例えば図2に例示したように,ブロック2の流れが当たる側部の砂質地盤が(a)→(c)のように徐々に洗掘され,やがては底部まで洗掘されて(c),傾斜するようになる(d)。その結果,基礎1に対する洗掘防止効果も薄れることになり,メインテナンスを必要とする。
【0004】
このため,洗掘防止用ブロック2の形状を工夫することによって,さらにはポーラスコンクリートなどを使用することによって,洗掘の作用を緩和する提案も種々なされている(例えば特許文献1〜3)。特許文献3には植物繊維を配合したモルタルまたはコンクリートの線状体同士が部分的に結着し且つ該線状体同士の間に間隙が形成されている立体形状のブロックが記載されているが,このブロックを洗掘防止用に使用する点についての教示や示唆はない。
【特許文献1】特開平11−107243号公報
【特許文献2】特許第2751036号公報
【特許文献3】特開2002−306351号公報
【特許文献3】特開2003−265039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜3のように,多くの空隙を持つようにコンクリートブロックを用いたり,小さな隙間をもつポーラスコンクリートからなるブロックを用いると洗掘を緩和できるが,それにも限度がある。また,いずれの場合も,そのブロックを設置した水底は生物の生息環境にはならず,その部分は無生物状態となるのが通常である。
【0006】
したがって,本発明はこのような問題を解決し,洗掘防止効果が高く且つ生物の生息環境を害しない人工的な沈石体を得ること,さらには生物と植物の良好な共生環境が創り出しうる魚巣ブロックを得ることを課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば,植物繊維を配合したモルタルまたはコンクリートの線状体同士が部分的に結着し且つ該線状体同士の間に間隙が形成されている立体形状のブロックからなる洗掘防止用の人工沈石体を提供する。モルタルまたはコンクリート中への植物繊維の配合量は好ましくは20Kg/m3以上であり,その線状体の径は5〜300mmである。モルタルまたはコンクリートは,好ましくはMgOおよびP2O5を主成分とする低pHセメントを結合材としたものである。
【0008】
この人工沈石体は水底に埋設される下半身部分と水中に露出する上半身部分とからなる。下半身部分と上半身部分は一体的に連結していてもよいし,切り離し可能であってもよい。いずれにしても,上半身部分に藻類・沈水植物,浮葉植物等の水生植物を着生することができる。とくに,この人工沈石体の間隙に土壌を敷設し,この土壌物質に水生植物を陸上で着生したうえ,水中に設置することにより,水生植物の養・増殖を図ることができる。藻類としては例えばテングサ,ヒバマタ,ミル,シャジクモ,ホンダワラ類,コンブ類,カジメ,アラメ,クロメ,ヒロメ,ヒジキ,フノリ,ハバノリ等があり,沈水植物としては例えばオオカナダモ,フサモ,ウミヒルモ,アマモ等の海藻類があり,浮葉植物には例えばヒシ,スイレン等があり,抽水植物にはヨシ,ガマ,ウキヤゴウ等がある。さらに本発明によれば,植物繊維を配合したモルタルまたはコンクリートの線状体同士が部分的に結着し且つ該線状体同士の間に間隙が形成されている立体形状のブロックと,前記線状体の間隙に固着または脱着可能に挿入された両端または一端開口の筒体とからなる魚巣ブロックを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は水底に設置する人工沈石体として,植物繊維を配合した保水製のモルタルまたはコンクリートの線状体からなるブロックであって,該線状体同士が部分的に結着し且つ該線状体同士の間に間隙が形成されている立体形状のブロックを基本材料とする点に特徴がある。この人工沈石体を構成するセメントとして,MgOおよびP2O5を主成分とする低pHセメントを用いることができ,これによって生物の生活環境に与える影響も少なくなる。
【0010】
セメント系モルタルまたはコンクリートに適量の植物繊維を配合すると,硬化した状態では保水機能と強度を具備した硬化体が得られ,未だ固まらない状態では,ノズル口から押し出した場合に,その連続した線状体は線状形状を保持しながら変形できる性質が得られる。すなわち,植物繊維を配合することによってセメントマトリックス中に水が含浸できる硬化体組織が得られると共に,フレッシュ状態では線状体に押し出し成形ができるような粘った混練物を得ることが可能となり,ノズル口から押し出された線状体は変形が自在でありながらその線状の形状を硬化するまで保持し得るので,この線状体を未だ固まらないうちに曲げ絡み合わせると,あたかも即席乾燥麺に見られるような,線状体が捲縮して絡み合った接合組織が得られ,このものは,線状体同士が部分的に結着して硬化しているために適当な間隙をもつ任意形状の立体ブロックとなり得る。
【0011】
図3は,本発明に従う立体形状の人工沈石体の一つの形状例を示したもので,図4は,図3のX−Y矢視断面を示している。図3〜4のように本発明の人工沈石体は植物繊維を配合したセメント系硬化体(モルタルまたはコンクリート)からなる線状体3が曲げ絡み合って立体形状のブロック4を形成している。このブロック4は,硬化した線状体3が部分的に結着し,線状体同士の間に間隙を有した構造を有しており,一見したところ,即席乾燥麺(インスタントラーメン)のような麺の捲縮固化物を拡大したような立体形状を有している。
【0012】
このようなセメント硬化体のブロック4を作成するには,例えば図5に示したように,植物繊維配合の未だ固まらないモルタルまたはコンクリート5(以下これを略して“植物繊維入り生モルタル”と呼ぶ)の混練物をグラウトポンプ6でノズル7に圧送することにより,ノズル7から植物繊維入り生モルタルの連続した線状体として押し出し,これを型枠8内に曲げ絡み合わせながら打設する。そのさい,植物繊維を適量配合し且つ水セメント比および単位水量を調節すると,ノズル7から押し出された植物繊維入り生モルタルの線状体は,直角はもとより180o近く曲げても破断することなく,くねくねと自在に曲がる。植物繊維を配合しない場合には,そのような性質を具備させることは困難で,形状保持力をもつような硬練として線状体に押し出した場合には,曲げるとすぐに折れてしまう。
【0013】
前記の図例では,型枠内に打設するさいに,作業員がノズルを前後・左右に移動させることによって,網の目状のものが積層した立体構造を形成する例を示したが,これを機械化して行なうことも勿論可能である。また,立体形状は,この例に限らず,線状体が部分的に結着し且つ線状体の間には所定の間隙が形成されているのであれば,あらゆる形状のものが可能である。例えば側面が3面体,4面体,5面体,6面体その他の多面体からなる多角形状の立体ブロック,或いは側面が円筒や楕円筒からなる円筒形状等の様々な形状の立体ブロックを作り出すことができる。
【0014】
ノズルから押し出す生モルタルの線状体の径については,直径が5〜300mm,好ましくは5〜200mm,さらに好ましくは10〜150mm前後のものが取り扱いやすい。植物繊維入り生モルタルの配合については後述するが,使用する植物繊維としては,長さが2〜12mm,径が0.1〜1.0mm程度のものが好適であり,配合量としては,植物繊維の種類によってその適正な範囲は異なるが,10〜80Kg/m3好ましくは20〜60Kg/m3の範囲とするのがよく,植物繊維の配合量が多いほど硬化した線状体の湿潤性能(保水性能)および生モルタルの線状体の変形性能が高まる。しかし,あまり多いと,骨材表面が植物繊維で覆われるところが増え,骨材・セメント間の接合強度を低下させることにもなるので,80Kg/m3以下,好ましくは60Kg/m3以下とするのがよい。練り混ぜに際しては,セメントペーストに植物繊維を先練りし,この植物繊維入りセメントペーストを骨材と混り混ぜる方法が好ましい。植物繊維としては,綿,麻,椰子殻,藁,籾,その他これる類するものを使用できる。
【0015】
植物繊維の使用にあたっては,その乾燥体をよくほぐした状態で使用するのがよい。植物繊維の性質上,その繊維一本一本の径や長さ,さらには表面状態や形状(針状か板状かなど)はランダムであるが,要するところ,その植物繊維の性質に応じてコンクリート中によく分散できるような寸法形状とすればよい。綿や麻を用いる場合には,長さがほぼ2〜12mmで,径がほぼ0.2〜0.7mm程度のものを練り混ぜ中の材料に少しづつ投入して分散させればよい。そのさい,水を混入する前の空練りを60秒以上行うことが好ましい。
【0016】
コンクリート用分散剤を使用して植物繊維の分散を促進させることも好ましい。使用できる分散剤には各種のものがあるが,例えば高性能減水剤(商品名レオビルド8000ESなど)が挙げられる。また,必要に応じて水溶性高分子等の増粘剤を使用することができる。
【0017】
使用するセメントとしては普通セメントが使用できるが,低pHセメントを使用すると,低pHの植物繊維入り生モルタルが得られ,低pH(低アルカリ)の本発明に人工沈石体を作ることができる。低pHセメントとしては,MgOおよびP2O5を主成分とする低pHセメントを使用できる。このような低pHセメントとしては,例えば特開2001−200252号公報に記載された軽焼マグネシアを主成分とする土壌硬化剤組成物が挙げられる。またこれに相当する低pHセメントは商品名マグホワイトとして市場で入手できる。さらに,セメントの一部を,必要に応じて高炉スラグ微粉末,フライアッシュ,シリカヒュームなどで置換することもできる。
【0018】
骨材成分としては通常の細骨材および粗骨材を使用できるが,粗骨材を使用する場合には最大寸法がノズル口径より小さいものを使用する必要がある。骨材を使用する場合には最大寸法5mm以下とするのがよい。細骨材としては通常の川砂のほか,土質成分のもの例えば火山灰土,黒土等を使用可能である。また,石灰石粉等の微粉末を配合することもできる。さらに軽量細骨材を使用することもできる。
【0019】
植物繊維を15Kg/m3以上,好ましくは20Kg/m3以上配合し,水セメント比を従来のポーラスコンクリートの場合と同等もしくはこれよりも高くして(例えばポーラスコンクリートでは水セメントが25〜35%程度である)練り混ぜると,スランプ値は高くても1.0cmまでの混練物が得られ,その硬化体は,透水係数が 1.0〜3.0 cm/secで,単位吸水率が10〜40%の保水性コンクリート(モルタル)を得ることができる。したがって,該混練物をノズルから押し出し,曲げ絡み合わせて立体形状となし,これを硬化してなる本発明のブロックは,単位吸水率が10〜40%の保水性を示す硬化した線状体からなる。このため,線状体そのものが保水性を示すので,生物生活用基材として非常に好適な材料である。
【0020】
さらに,本発明に従うブロックは,圧縮強度250〜330kgf/cm2 ,曲げ強度40〜50kgf/cm2 を示す硬化体製品となり得る。すなわち,普通コンクリートまたはモルタルと同等の強度特性を得ることか可能である。そして,図3に示したように,硬化した線状体3は曲げ絡み合って部分的に結着した構造の立体形状を有するので,線状体3の間には多くの隙間を有している。この間隙の容積を間隙率として表すと,この間隙率は線状体3の曲げ絡み合いの程度を調節することによって自由に制御ができ,例えば間隙率20〜80%のブロック,好ましくは間隙率30〜60%のブロックとすることができる。この間隙が洗掘を抑制する作用を果たす。この状態を図5に示した。
【0021】
図6は,本発明に従う人工沈石体9が水流のある水底10に設置された状態を示したものであるが,図6(a)に示したように,水流が当たる部分11において,沈石体9が部分的に洗掘されると,この人工沈石体9には多くの間隙が存在するので,その間隙も部分的に洗掘されるが,この洗掘され部分には砂質分が自然に戻るので,図6(b)のよう直ぐに修復される。すなわち,図2の(c)のように深く洗掘されるようなことは起きない。とくに,本発明に従う人工沈石体9は側面に一様な空隙を有すると共に内部にまで連通するような全体として均一な間隙を有しているので,どの面からの水流に対しても同様に作用することができ,一方の側面だけが洗掘されるようなことは防止される。さらに,これらの単体を連結して設置することでより広い範囲の洗掘防止ができる。
【0022】
そして,水底の人工沈石体9はその間隙に水底と同様な砂質分が充填されることにより,水底と同様な生物の生育環境が形成される結果,人工沈石体9の内部や下方および側方において,生物が生育できる。とくに,低pHセメントを使用した植物繊維入りブロックでは砂泥と同様な環境が維持されるので,水底における微小な動物の生態系および植物生育に適した状態となる。
【0023】
このような生物の生育環境に適する性質をもつ本発明に従う人工沈石体9は,これを積極的に水中植物の増・養殖に利用することができる。その態様例を図7に示した。
【0024】
図7は,水底に埋設される下半身部分Aと水中に露出する上半身部分Bとからなる本発明に従う人工沈石体9を示している。下半身部分Aおよび上半身部分Bとも,植物繊維を配合したモルタルまたはコンクリートの線状体同士が部分的に結着し且つ該線状体同士の間に間隙が形成されている立体形状のブロックからなる。下半身部分Aと上半身部分Bは一体的に接合されていてもよいし,図7の右側に示すように上下に分離できるものでもよい。
【0025】
図8は,下半身部分Aは水底に埋設された状態で上半身部分Bに藻類13が着生された状態を示している。すなわち,上半身部分Bにおける線状体同士の間隙に藻類などの水生植物の根部が伸長し,この上半身部分Bが水生植物の着生基盤となっている。また,上半身部分Bにおける線状体表面に水生植物が着生された状態とすることもできる。この場合,線状体表面が凹凸を有しているとその着生を助成することができる。この表面の凹凸は線状体の軸方向に沿う多数の溝によって形成したものが好適である。線状体表面に付着して着生するものとして例えばハネケイソウやイトマキケイソウ等の珪藻類,アオサ等の緑藻類,紅藻類,スサビノリ類等がある。図7〜8の例では上半身部分Bは切妻屋根に似た形を有しており,これを下半身部分Aに重ね置いたときに,この屋根の下に水流が通過する空間12が出来る。このため,ブロックを構成している線状体同士の間に多くの間隙に加えて,この空間12にも流れが入り込むので,生物の生育環境が良好となる。下半身部分Aは,前記したように洗掘が起きないので,着生基盤としての上半身部分Bも水底に安定すると共に,下半身部分Aの空隙も生物の生育に適した状態に置かれる。下半身部分Aと上半身部分Bとを切り離し可能なものとした場合には,両者の連結のための噛み合わせ部分を形成しておくのが好ましい。噛み合わせに代えて金具類やローブ,テープ,針金などの連結部材で接続するようにしてもよい。
【0026】
図9は,本発明に従う人工沈石体を用いて藻類の移植・造成を行う例を示したものである。先ず,天然の藻体14から人工採苗を行なう(人工採苗方式)。得られた胞子や配偶体15を,本発明に従う人工沈石体(本例ではその上半身部分B)に散布して着床させる。そのさい人工沈石体の間隙には土壌物質として砂や土を装填しておくのがよい。これを所定の期間養生し,重ねて設置場所に搬送し,下半身部分Aと組み立てて水底16に移植する。これにより,上半身部分Bの間隙に根部が伸長して生育し増殖する。その間,水底では水生生物が人工沈石体内およびその周辺で棲息する。この例では,水生植物体として胞子や配偶体を用いたが,さらには本発明に従う人工沈石体の間隙に土壌物質を敷設し,この土壌物質に水生植物体〔例えば種子や球根,栄養体(生活体)の一部(例えば地下茎やほふく枝の切片等),或いは幼苗,成苗〕を陸上で着生したうえ,水中に設置する水生植物の育成法が実現することができる。
【0027】
図10は,天然採苗方式による移植・造成方式を示したものである。まず天然の母藻17の周囲に本発明の人工沈石体9を設置しておき,これらに自然発生の幼体,例えば胞子や配偶体15を着床させる。着床した人工沈石体9(実際にはその上半身B)を回収し,必要に応じて養生して移植箇所に運搬する。そして,下半身部分Aと上半身部分Bを組み立てた人工沈石体として,これを水底16に設置して移植する。これにより,上半身部分Bの間隙に根部が伸長して生育し増殖する。その間,水底では水生生物が人工沈石体内およびその周辺で生息する。
【0028】
このようにして,水底に埋まる下半身部分Aが,好ましくはその体積の30%以上が空隙を有することから(全ての側面でも同様の空隙を有する),この空隙は底質の小石や砂や泥が詰まり,波や流れに対しても空隙から出来る小さな渦によって洗掘を抑制する作用を果たすので,その位置が安定し,水生植物の移植・増殖を安定して実行することができる。
【0029】
また,本発明に従う人工沈石体は土,砂,植物繊維が配合されているので,これら3者が表面に露出している。しかも,多数の線状体が隙間をもって部分的に接合した関係にあるので,これら3者が露出する表面積が非常に大きい。このため,藻類の胞子や配偶体が好む着床が選択できる。とくに,植物繊維が表面に露出している点で,石材や従来のコンクリートにはない着床効果を示す。従来よりコンブ,カジメ,アラメ,ワカメ,ホンダワラ,ヒジキ,モズク,ノリその他の海藻の養殖には胞子や配偶体をロープ,布,紙などに付着させ,種糸,種布,種紙として一般的に使用されている。これらは繊維が大きな役割を担っているものであるが,本発明に従う人工沈石体でも同様に植物繊維の存在がこれらの着床を促進させることができる。
【0030】
なお,植物繊維をさらに表面に露出させるために,図5のようにノズル7から線状体を吐出するさいに,ノズル7として,内周が円形や楕円形のものに代えて,内周に星型のような多数の歯型をもつものを使用すると,線状体の表面には軸方向に多くの溝が形成され,表面積が非常に大きくなると共にこれらの溝に植物繊維のケバが立ち,一層,藻類の配偶体の着床の選択幅が広がる。
【0031】
本発明の人工沈石体を形成している線状体は,土,砂,植物繊維が流砂等で削られ易い特性がある。このため,特に一年性のアカモク等では生長したあとで枯れたときには,それが人工沈石体に付着・着生していた部分は,流砂等で一体的に削り取られ,人工沈石体の表面が更新される結果,その新しい表面が次の胞子や配偶体等の着床に利用しやすくなるという特徴がある。
【0032】
図7〜10では,本発明に従う人工沈石体のうち上半身部分Bが切妻屋根型のものを例として示したが,必ずしもこのような形状でなくてもよい。例えば,ピラミッド型,台形型,直方体型,円柱型,円筒型,アーチ型,そのほか任意の形状であることができる。
【0033】
さらに本発明によれば,この人工沈石体をさらに改良することによって,多くの種類の生物が共存し得る魚巣ブロックを提供する。図11に本発明に従う魚巣ブロックを例を示した。この魚巣ブロックは,ウナギやナマズなどの好む一端または両端開口の筒を本発明の人工沈石体に取付けたものである。図11にはその製造工程例を示しており,図11の(A)では,図5の場合と同様に線状体1をノズル7から押し出して数層を形成したあと,一端または両端開口の筒体18(形成されるブロックのほぼ幅一杯の長さをもつ)を配置し,その上に(B)のようにさらに線状体1の数層を形成し,(C)のように筒18の開口端がブロックから露出した状態の魚巣ブロック19を成形し,これを硬化させることによって一つの魚巣ブロックユニットが形成される。これを水低に設置することによって,場合によっては当該ブロックの線状体1の間隙に砂利や砂・土などを装填したうえで水底に設置することによって,複数の生き物の集合的な魚巣を構成することができる。
【0034】
図12は,その魚巣ブロック19のユニットを水底に横方向に並設した例を示している。この横方向のみならず,縦方向に積層することもできるし,横と縦の両方向に隣接することによって必要な大きさの漁礁にすることもできる。その場合,筒体18にナマズやウナギなどの筒状の巣穴を好む魚類が入り込めるように,筒体18の開口がブロック本体から露出するように配置を考慮する。線状体1の間隙には前述したとおり,植物を着生させて成育させることもできる。
【0035】
本発明の魚巣ブロックによると,小さな食物連鎖が形成されるので,これまでの魚巣ブックにはない機能を果たす。これまでの魚巣ブロックの多くは,水面付近から底部までに比較的大きなくぼみを設けるものが一般的であり,各種の生き物が必ずしもその性質に応じて共生できるようなものではなかった。できるだけ共生できるように,従来の魚巣ブロックのくぼみに砕石を入れたりして穴の大きさを変えても,流れの変化で間隙が変化して生き物が好む大きさにはならないのが通常である。このため,ウナギ,ナマズ,ドジョウ,ヒガイ,ギバチ,アユカケ,ドンコ等の魚類や,サンシヨウオ,カエル等の両性類,モグスガニ,サワガニ,テナガエビ,ザリガニ,モエビ等の甲殻類,さらには水棲昆等,底棲性で負の夜光性をもち種類によって接触性があるような生き物が良好に共生できるような魚巣ブロックはこれまでのところなかった。
【0036】
これに対して,本発明の魚巣ブロックでは筒を好む生き物(穴に入る性質のあるもの),泥,砂,小石を好む生き物(潜り込む性質のあるもの),空隙や空間を好む生き物(隠れる性質のあるもの),粗い表面を好む植物(藻類など)が共生できる。例えば,筒体18にはウナギやナマズ等の大型魚類の住み家となり,線状体1の間隙(小石や砂・土が必要に応じて装填される)は小さな空間に入り込む小型魚類や甲殻類が一緒に生活する居住域となる。後者の居住域に生活する小型魚類や甲殻類(ドジョウ,ヨシノボリ,チチブ等の魚類や,サンシヨウオ,カエル等の両性類,カニ・エビ等の甲殻類,水棲昆虫,更には貝類等)は,大型魚類の餌ともなり,ここに植生する藻類等と共に食餌連鎖が形成される。植物の着生のためには,線状体1の表面が前述のように凹凸を有しているのがよい。場合によっては,魚巣ブロックの上面は水面より上にして,その水面上のブロック上面を植物植栽用に利用することもできる。
【0037】
筒体18は,ウナギの場合には内径5cm程度のもので長さは50〜60cm程度,ナマズの場合には内径8〜10cm程度のもので長さは60〜70cm程度のものがよく,材質は特に竹がよい。筒体18は図11のように線状体1に一体的に組み込んで固化固定することもできるが,線状体1が未だ固まらないうちに,筒体18を抜き取って,筒体18が入る空洞を形成して固化し,硬化したブロックに対してその空洞に筒体18を脱着自在に装着する構成としてもよい。また,硬化したブロックに筒体18が入る穴を設けることもできる。
【0038】
このブロックを水底に設置すると,そのブロックに特に砂などを充填して置かなくても(もちろん適度に充填してもよいが),線状体1の間の空隙には自然に砂,泥,小石が入り込んで少々の流れがあっても大きな変化を起こさない小型生物の住み家ができ上がり,この小空間を好む魚類,両性類,甲殻類水棲昆虫,貝類等が生息し,筒体18内に住む大型魚類との共存帯域ができ,本発明の沈石体がもつ本来の洗堀り防止機能により安定した共生環境が維持される。また,線状体1の粗面(凹凸をもつ表面)には太陽光を受けて藻類の増殖が生じる。藻類の増殖は光線の強弱を与えて緑藻から珪藻に至る各種の植物を成育する環境を形成し,この成育した植物を餌とする生き物が集積し生活するするので,魚巣ブロックごとに植物連鎖が成り立つ。線状体1を構成するモルタルまたはコンクリートはその結合材としては通常のセメントでもよいが,前記のようにMgOおよびP2O5を主成分とする低pHセメント用いると共に,土(黒土)を適度に配合したうえで植物繊維を配合することによって生き物にとって好ましい魚巣ブロックを構成することができる。
【0039】
本発明に従う人工沈石体および魚巣ブロックを作るための,代表的な植物繊維入り生モルタルの材料配合例を挙げると,例えば,
低pHセメント(商品名マグホワイト):500Kg/m3±50Kg/m3
黒土 :500Kg/m3±50Kg/m3
砂 :400Kg/m3±40Kg/m3
水 :420Kg/m3±40Kg/m3
植物繊維(綿の場合) :20Kg/m3±5Kg/m3
混和剤として,
ソイルセメント用混和剤(商品名レオソイル100A):5Kg/m3±1Kg/m3
ソイルセメント用混和剤(商品名レオソイル100B):3Kg/m3±1Kg/m3
を例示できる。
【0040】
これによって例えば気乾比重=1.5±0.2,湿潤比重=2.1±0.2の硬化体とすることができる。この硬化体(立体形状のブロックを作成するための線状体)は,例えば圧縮強度300kgf/cm2 ±50kg/m3,曲げ強度45kgf/cm2 ±10kg/m3で,単位吸水率が30%±10%程度の保水性を示す硬化体となる。
【0041】
以上説明したように,本発明の人工沈石体は,水中構造物に水流が作用することによって発生する洗掘を抑制する作用を有する。このため,水中構造物の安定に寄与すると共に,本発明の人工沈石体は生物の生息環境に適合するものであるから,自然環境を害することもない。そして,本発明の人工沈石体によると藻類の移植・造成を効率よく行うことができるので,モ場の造成にも役立てることができる。さらに本発明の人工沈石体を利用した魚巣ブロックによると各種の生き物が共生できる点でこれまでのものにはない良好な庶物連鎖をもつ集合的な共生体を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】水中構造物の基礎部分に洗掘防止ブロックを設置した状態を示す略断面図である。
【図2】水底での洗掘の発生状況を図解的に示した図である。
【図3】本発明に従う人工沈石体を構成するブロックの一例を示す略平面図である。
【図4】図3のX−Y矢視断面図である。
【図5】本発明に従う植物繊維入り生モルタルの線状体を型枠内に装填する例を示す略図である。
【図6】本発明に従う人工沈石体に洗掘が起きない状況を図解的に示した図である。
【図7】本発明の人工沈石体の下半身部分と上半身部分の例を示す斜視図である。
【図8】本発明の人工沈石体に藻類が植栽した状態を示す略断面図である。
【図9】本発明の人工沈石体を用いて藻類の採苗・移植・増殖を行う工程例を示した図である。
【図10】本発明の人工沈石体を用いて藻類の採苗・移植・増殖を行う他の工程例を示した図である。
【図11】本発明に従う魚巣ブロックを製造する工程を示す図である。
【図12】本発明に従う魚巣ブロックのユニットを連接した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1 水中構造物
2 洗掘防止ブロック
3 植物繊維配合のセメント系硬化体からなる線状体
4 立体形状のブロック
5 植物繊維入り生モルタル
6 グラウトポンプ
7 ノズル
8 型枠
9 人工沈石体
10,16 水底
12 水流が通過する空間
13,水生植物(藻類)
14 藻体
15 胞子や配偶体
17 母藻
18 筒体
19 魚巣ブロック
【技術分野】
【0001】
本発明は,水中構造物に水流が作用することによって発生する洗掘を抑制する人工沈石体であって且つ生物の生息環境に適合する人工沈石体および魚巣ブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
砂質の水底に構造物を設置する場合,その基礎部分に当る水流によって洗掘が起きることが多く,その対応として,洗掘防止用のコンクリートブロックや砕石等をネットに入れたフイルタユニットと称するものが使用されている。
【0003】
例えば,図1に示したように,水中構造物の基礎1の流れの当たる側部に洗掘防止用コンクリートブロック2を配置ことが行われる。このブロック2は基礎1の洗掘を抑制する効果をそれなりに示すが,このブロック2自身が洗掘を受けることは否めない。例えば図2に例示したように,ブロック2の流れが当たる側部の砂質地盤が(a)→(c)のように徐々に洗掘され,やがては底部まで洗掘されて(c),傾斜するようになる(d)。その結果,基礎1に対する洗掘防止効果も薄れることになり,メインテナンスを必要とする。
【0004】
このため,洗掘防止用ブロック2の形状を工夫することによって,さらにはポーラスコンクリートなどを使用することによって,洗掘の作用を緩和する提案も種々なされている(例えば特許文献1〜3)。特許文献3には植物繊維を配合したモルタルまたはコンクリートの線状体同士が部分的に結着し且つ該線状体同士の間に間隙が形成されている立体形状のブロックが記載されているが,このブロックを洗掘防止用に使用する点についての教示や示唆はない。
【特許文献1】特開平11−107243号公報
【特許文献2】特許第2751036号公報
【特許文献3】特開2002−306351号公報
【特許文献3】特開2003−265039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜3のように,多くの空隙を持つようにコンクリートブロックを用いたり,小さな隙間をもつポーラスコンクリートからなるブロックを用いると洗掘を緩和できるが,それにも限度がある。また,いずれの場合も,そのブロックを設置した水底は生物の生息環境にはならず,その部分は無生物状態となるのが通常である。
【0006】
したがって,本発明はこのような問題を解決し,洗掘防止効果が高く且つ生物の生息環境を害しない人工的な沈石体を得ること,さらには生物と植物の良好な共生環境が創り出しうる魚巣ブロックを得ることを課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば,植物繊維を配合したモルタルまたはコンクリートの線状体同士が部分的に結着し且つ該線状体同士の間に間隙が形成されている立体形状のブロックからなる洗掘防止用の人工沈石体を提供する。モルタルまたはコンクリート中への植物繊維の配合量は好ましくは20Kg/m3以上であり,その線状体の径は5〜300mmである。モルタルまたはコンクリートは,好ましくはMgOおよびP2O5を主成分とする低pHセメントを結合材としたものである。
【0008】
この人工沈石体は水底に埋設される下半身部分と水中に露出する上半身部分とからなる。下半身部分と上半身部分は一体的に連結していてもよいし,切り離し可能であってもよい。いずれにしても,上半身部分に藻類・沈水植物,浮葉植物等の水生植物を着生することができる。とくに,この人工沈石体の間隙に土壌を敷設し,この土壌物質に水生植物を陸上で着生したうえ,水中に設置することにより,水生植物の養・増殖を図ることができる。藻類としては例えばテングサ,ヒバマタ,ミル,シャジクモ,ホンダワラ類,コンブ類,カジメ,アラメ,クロメ,ヒロメ,ヒジキ,フノリ,ハバノリ等があり,沈水植物としては例えばオオカナダモ,フサモ,ウミヒルモ,アマモ等の海藻類があり,浮葉植物には例えばヒシ,スイレン等があり,抽水植物にはヨシ,ガマ,ウキヤゴウ等がある。さらに本発明によれば,植物繊維を配合したモルタルまたはコンクリートの線状体同士が部分的に結着し且つ該線状体同士の間に間隙が形成されている立体形状のブロックと,前記線状体の間隙に固着または脱着可能に挿入された両端または一端開口の筒体とからなる魚巣ブロックを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は水底に設置する人工沈石体として,植物繊維を配合した保水製のモルタルまたはコンクリートの線状体からなるブロックであって,該線状体同士が部分的に結着し且つ該線状体同士の間に間隙が形成されている立体形状のブロックを基本材料とする点に特徴がある。この人工沈石体を構成するセメントとして,MgOおよびP2O5を主成分とする低pHセメントを用いることができ,これによって生物の生活環境に与える影響も少なくなる。
【0010】
セメント系モルタルまたはコンクリートに適量の植物繊維を配合すると,硬化した状態では保水機能と強度を具備した硬化体が得られ,未だ固まらない状態では,ノズル口から押し出した場合に,その連続した線状体は線状形状を保持しながら変形できる性質が得られる。すなわち,植物繊維を配合することによってセメントマトリックス中に水が含浸できる硬化体組織が得られると共に,フレッシュ状態では線状体に押し出し成形ができるような粘った混練物を得ることが可能となり,ノズル口から押し出された線状体は変形が自在でありながらその線状の形状を硬化するまで保持し得るので,この線状体を未だ固まらないうちに曲げ絡み合わせると,あたかも即席乾燥麺に見られるような,線状体が捲縮して絡み合った接合組織が得られ,このものは,線状体同士が部分的に結着して硬化しているために適当な間隙をもつ任意形状の立体ブロックとなり得る。
【0011】
図3は,本発明に従う立体形状の人工沈石体の一つの形状例を示したもので,図4は,図3のX−Y矢視断面を示している。図3〜4のように本発明の人工沈石体は植物繊維を配合したセメント系硬化体(モルタルまたはコンクリート)からなる線状体3が曲げ絡み合って立体形状のブロック4を形成している。このブロック4は,硬化した線状体3が部分的に結着し,線状体同士の間に間隙を有した構造を有しており,一見したところ,即席乾燥麺(インスタントラーメン)のような麺の捲縮固化物を拡大したような立体形状を有している。
【0012】
このようなセメント硬化体のブロック4を作成するには,例えば図5に示したように,植物繊維配合の未だ固まらないモルタルまたはコンクリート5(以下これを略して“植物繊維入り生モルタル”と呼ぶ)の混練物をグラウトポンプ6でノズル7に圧送することにより,ノズル7から植物繊維入り生モルタルの連続した線状体として押し出し,これを型枠8内に曲げ絡み合わせながら打設する。そのさい,植物繊維を適量配合し且つ水セメント比および単位水量を調節すると,ノズル7から押し出された植物繊維入り生モルタルの線状体は,直角はもとより180o近く曲げても破断することなく,くねくねと自在に曲がる。植物繊維を配合しない場合には,そのような性質を具備させることは困難で,形状保持力をもつような硬練として線状体に押し出した場合には,曲げるとすぐに折れてしまう。
【0013】
前記の図例では,型枠内に打設するさいに,作業員がノズルを前後・左右に移動させることによって,網の目状のものが積層した立体構造を形成する例を示したが,これを機械化して行なうことも勿論可能である。また,立体形状は,この例に限らず,線状体が部分的に結着し且つ線状体の間には所定の間隙が形成されているのであれば,あらゆる形状のものが可能である。例えば側面が3面体,4面体,5面体,6面体その他の多面体からなる多角形状の立体ブロック,或いは側面が円筒や楕円筒からなる円筒形状等の様々な形状の立体ブロックを作り出すことができる。
【0014】
ノズルから押し出す生モルタルの線状体の径については,直径が5〜300mm,好ましくは5〜200mm,さらに好ましくは10〜150mm前後のものが取り扱いやすい。植物繊維入り生モルタルの配合については後述するが,使用する植物繊維としては,長さが2〜12mm,径が0.1〜1.0mm程度のものが好適であり,配合量としては,植物繊維の種類によってその適正な範囲は異なるが,10〜80Kg/m3好ましくは20〜60Kg/m3の範囲とするのがよく,植物繊維の配合量が多いほど硬化した線状体の湿潤性能(保水性能)および生モルタルの線状体の変形性能が高まる。しかし,あまり多いと,骨材表面が植物繊維で覆われるところが増え,骨材・セメント間の接合強度を低下させることにもなるので,80Kg/m3以下,好ましくは60Kg/m3以下とするのがよい。練り混ぜに際しては,セメントペーストに植物繊維を先練りし,この植物繊維入りセメントペーストを骨材と混り混ぜる方法が好ましい。植物繊維としては,綿,麻,椰子殻,藁,籾,その他これる類するものを使用できる。
【0015】
植物繊維の使用にあたっては,その乾燥体をよくほぐした状態で使用するのがよい。植物繊維の性質上,その繊維一本一本の径や長さ,さらには表面状態や形状(針状か板状かなど)はランダムであるが,要するところ,その植物繊維の性質に応じてコンクリート中によく分散できるような寸法形状とすればよい。綿や麻を用いる場合には,長さがほぼ2〜12mmで,径がほぼ0.2〜0.7mm程度のものを練り混ぜ中の材料に少しづつ投入して分散させればよい。そのさい,水を混入する前の空練りを60秒以上行うことが好ましい。
【0016】
コンクリート用分散剤を使用して植物繊維の分散を促進させることも好ましい。使用できる分散剤には各種のものがあるが,例えば高性能減水剤(商品名レオビルド8000ESなど)が挙げられる。また,必要に応じて水溶性高分子等の増粘剤を使用することができる。
【0017】
使用するセメントとしては普通セメントが使用できるが,低pHセメントを使用すると,低pHの植物繊維入り生モルタルが得られ,低pH(低アルカリ)の本発明に人工沈石体を作ることができる。低pHセメントとしては,MgOおよびP2O5を主成分とする低pHセメントを使用できる。このような低pHセメントとしては,例えば特開2001−200252号公報に記載された軽焼マグネシアを主成分とする土壌硬化剤組成物が挙げられる。またこれに相当する低pHセメントは商品名マグホワイトとして市場で入手できる。さらに,セメントの一部を,必要に応じて高炉スラグ微粉末,フライアッシュ,シリカヒュームなどで置換することもできる。
【0018】
骨材成分としては通常の細骨材および粗骨材を使用できるが,粗骨材を使用する場合には最大寸法がノズル口径より小さいものを使用する必要がある。骨材を使用する場合には最大寸法5mm以下とするのがよい。細骨材としては通常の川砂のほか,土質成分のもの例えば火山灰土,黒土等を使用可能である。また,石灰石粉等の微粉末を配合することもできる。さらに軽量細骨材を使用することもできる。
【0019】
植物繊維を15Kg/m3以上,好ましくは20Kg/m3以上配合し,水セメント比を従来のポーラスコンクリートの場合と同等もしくはこれよりも高くして(例えばポーラスコンクリートでは水セメントが25〜35%程度である)練り混ぜると,スランプ値は高くても1.0cmまでの混練物が得られ,その硬化体は,透水係数が 1.0〜3.0 cm/secで,単位吸水率が10〜40%の保水性コンクリート(モルタル)を得ることができる。したがって,該混練物をノズルから押し出し,曲げ絡み合わせて立体形状となし,これを硬化してなる本発明のブロックは,単位吸水率が10〜40%の保水性を示す硬化した線状体からなる。このため,線状体そのものが保水性を示すので,生物生活用基材として非常に好適な材料である。
【0020】
さらに,本発明に従うブロックは,圧縮強度250〜330kgf/cm2 ,曲げ強度40〜50kgf/cm2 を示す硬化体製品となり得る。すなわち,普通コンクリートまたはモルタルと同等の強度特性を得ることか可能である。そして,図3に示したように,硬化した線状体3は曲げ絡み合って部分的に結着した構造の立体形状を有するので,線状体3の間には多くの隙間を有している。この間隙の容積を間隙率として表すと,この間隙率は線状体3の曲げ絡み合いの程度を調節することによって自由に制御ができ,例えば間隙率20〜80%のブロック,好ましくは間隙率30〜60%のブロックとすることができる。この間隙が洗掘を抑制する作用を果たす。この状態を図5に示した。
【0021】
図6は,本発明に従う人工沈石体9が水流のある水底10に設置された状態を示したものであるが,図6(a)に示したように,水流が当たる部分11において,沈石体9が部分的に洗掘されると,この人工沈石体9には多くの間隙が存在するので,その間隙も部分的に洗掘されるが,この洗掘され部分には砂質分が自然に戻るので,図6(b)のよう直ぐに修復される。すなわち,図2の(c)のように深く洗掘されるようなことは起きない。とくに,本発明に従う人工沈石体9は側面に一様な空隙を有すると共に内部にまで連通するような全体として均一な間隙を有しているので,どの面からの水流に対しても同様に作用することができ,一方の側面だけが洗掘されるようなことは防止される。さらに,これらの単体を連結して設置することでより広い範囲の洗掘防止ができる。
【0022】
そして,水底の人工沈石体9はその間隙に水底と同様な砂質分が充填されることにより,水底と同様な生物の生育環境が形成される結果,人工沈石体9の内部や下方および側方において,生物が生育できる。とくに,低pHセメントを使用した植物繊維入りブロックでは砂泥と同様な環境が維持されるので,水底における微小な動物の生態系および植物生育に適した状態となる。
【0023】
このような生物の生育環境に適する性質をもつ本発明に従う人工沈石体9は,これを積極的に水中植物の増・養殖に利用することができる。その態様例を図7に示した。
【0024】
図7は,水底に埋設される下半身部分Aと水中に露出する上半身部分Bとからなる本発明に従う人工沈石体9を示している。下半身部分Aおよび上半身部分Bとも,植物繊維を配合したモルタルまたはコンクリートの線状体同士が部分的に結着し且つ該線状体同士の間に間隙が形成されている立体形状のブロックからなる。下半身部分Aと上半身部分Bは一体的に接合されていてもよいし,図7の右側に示すように上下に分離できるものでもよい。
【0025】
図8は,下半身部分Aは水底に埋設された状態で上半身部分Bに藻類13が着生された状態を示している。すなわち,上半身部分Bにおける線状体同士の間隙に藻類などの水生植物の根部が伸長し,この上半身部分Bが水生植物の着生基盤となっている。また,上半身部分Bにおける線状体表面に水生植物が着生された状態とすることもできる。この場合,線状体表面が凹凸を有しているとその着生を助成することができる。この表面の凹凸は線状体の軸方向に沿う多数の溝によって形成したものが好適である。線状体表面に付着して着生するものとして例えばハネケイソウやイトマキケイソウ等の珪藻類,アオサ等の緑藻類,紅藻類,スサビノリ類等がある。図7〜8の例では上半身部分Bは切妻屋根に似た形を有しており,これを下半身部分Aに重ね置いたときに,この屋根の下に水流が通過する空間12が出来る。このため,ブロックを構成している線状体同士の間に多くの間隙に加えて,この空間12にも流れが入り込むので,生物の生育環境が良好となる。下半身部分Aは,前記したように洗掘が起きないので,着生基盤としての上半身部分Bも水底に安定すると共に,下半身部分Aの空隙も生物の生育に適した状態に置かれる。下半身部分Aと上半身部分Bとを切り離し可能なものとした場合には,両者の連結のための噛み合わせ部分を形成しておくのが好ましい。噛み合わせに代えて金具類やローブ,テープ,針金などの連結部材で接続するようにしてもよい。
【0026】
図9は,本発明に従う人工沈石体を用いて藻類の移植・造成を行う例を示したものである。先ず,天然の藻体14から人工採苗を行なう(人工採苗方式)。得られた胞子や配偶体15を,本発明に従う人工沈石体(本例ではその上半身部分B)に散布して着床させる。そのさい人工沈石体の間隙には土壌物質として砂や土を装填しておくのがよい。これを所定の期間養生し,重ねて設置場所に搬送し,下半身部分Aと組み立てて水底16に移植する。これにより,上半身部分Bの間隙に根部が伸長して生育し増殖する。その間,水底では水生生物が人工沈石体内およびその周辺で棲息する。この例では,水生植物体として胞子や配偶体を用いたが,さらには本発明に従う人工沈石体の間隙に土壌物質を敷設し,この土壌物質に水生植物体〔例えば種子や球根,栄養体(生活体)の一部(例えば地下茎やほふく枝の切片等),或いは幼苗,成苗〕を陸上で着生したうえ,水中に設置する水生植物の育成法が実現することができる。
【0027】
図10は,天然採苗方式による移植・造成方式を示したものである。まず天然の母藻17の周囲に本発明の人工沈石体9を設置しておき,これらに自然発生の幼体,例えば胞子や配偶体15を着床させる。着床した人工沈石体9(実際にはその上半身B)を回収し,必要に応じて養生して移植箇所に運搬する。そして,下半身部分Aと上半身部分Bを組み立てた人工沈石体として,これを水底16に設置して移植する。これにより,上半身部分Bの間隙に根部が伸長して生育し増殖する。その間,水底では水生生物が人工沈石体内およびその周辺で生息する。
【0028】
このようにして,水底に埋まる下半身部分Aが,好ましくはその体積の30%以上が空隙を有することから(全ての側面でも同様の空隙を有する),この空隙は底質の小石や砂や泥が詰まり,波や流れに対しても空隙から出来る小さな渦によって洗掘を抑制する作用を果たすので,その位置が安定し,水生植物の移植・増殖を安定して実行することができる。
【0029】
また,本発明に従う人工沈石体は土,砂,植物繊維が配合されているので,これら3者が表面に露出している。しかも,多数の線状体が隙間をもって部分的に接合した関係にあるので,これら3者が露出する表面積が非常に大きい。このため,藻類の胞子や配偶体が好む着床が選択できる。とくに,植物繊維が表面に露出している点で,石材や従来のコンクリートにはない着床効果を示す。従来よりコンブ,カジメ,アラメ,ワカメ,ホンダワラ,ヒジキ,モズク,ノリその他の海藻の養殖には胞子や配偶体をロープ,布,紙などに付着させ,種糸,種布,種紙として一般的に使用されている。これらは繊維が大きな役割を担っているものであるが,本発明に従う人工沈石体でも同様に植物繊維の存在がこれらの着床を促進させることができる。
【0030】
なお,植物繊維をさらに表面に露出させるために,図5のようにノズル7から線状体を吐出するさいに,ノズル7として,内周が円形や楕円形のものに代えて,内周に星型のような多数の歯型をもつものを使用すると,線状体の表面には軸方向に多くの溝が形成され,表面積が非常に大きくなると共にこれらの溝に植物繊維のケバが立ち,一層,藻類の配偶体の着床の選択幅が広がる。
【0031】
本発明の人工沈石体を形成している線状体は,土,砂,植物繊維が流砂等で削られ易い特性がある。このため,特に一年性のアカモク等では生長したあとで枯れたときには,それが人工沈石体に付着・着生していた部分は,流砂等で一体的に削り取られ,人工沈石体の表面が更新される結果,その新しい表面が次の胞子や配偶体等の着床に利用しやすくなるという特徴がある。
【0032】
図7〜10では,本発明に従う人工沈石体のうち上半身部分Bが切妻屋根型のものを例として示したが,必ずしもこのような形状でなくてもよい。例えば,ピラミッド型,台形型,直方体型,円柱型,円筒型,アーチ型,そのほか任意の形状であることができる。
【0033】
さらに本発明によれば,この人工沈石体をさらに改良することによって,多くの種類の生物が共存し得る魚巣ブロックを提供する。図11に本発明に従う魚巣ブロックを例を示した。この魚巣ブロックは,ウナギやナマズなどの好む一端または両端開口の筒を本発明の人工沈石体に取付けたものである。図11にはその製造工程例を示しており,図11の(A)では,図5の場合と同様に線状体1をノズル7から押し出して数層を形成したあと,一端または両端開口の筒体18(形成されるブロックのほぼ幅一杯の長さをもつ)を配置し,その上に(B)のようにさらに線状体1の数層を形成し,(C)のように筒18の開口端がブロックから露出した状態の魚巣ブロック19を成形し,これを硬化させることによって一つの魚巣ブロックユニットが形成される。これを水低に設置することによって,場合によっては当該ブロックの線状体1の間隙に砂利や砂・土などを装填したうえで水底に設置することによって,複数の生き物の集合的な魚巣を構成することができる。
【0034】
図12は,その魚巣ブロック19のユニットを水底に横方向に並設した例を示している。この横方向のみならず,縦方向に積層することもできるし,横と縦の両方向に隣接することによって必要な大きさの漁礁にすることもできる。その場合,筒体18にナマズやウナギなどの筒状の巣穴を好む魚類が入り込めるように,筒体18の開口がブロック本体から露出するように配置を考慮する。線状体1の間隙には前述したとおり,植物を着生させて成育させることもできる。
【0035】
本発明の魚巣ブロックによると,小さな食物連鎖が形成されるので,これまでの魚巣ブックにはない機能を果たす。これまでの魚巣ブロックの多くは,水面付近から底部までに比較的大きなくぼみを設けるものが一般的であり,各種の生き物が必ずしもその性質に応じて共生できるようなものではなかった。できるだけ共生できるように,従来の魚巣ブロックのくぼみに砕石を入れたりして穴の大きさを変えても,流れの変化で間隙が変化して生き物が好む大きさにはならないのが通常である。このため,ウナギ,ナマズ,ドジョウ,ヒガイ,ギバチ,アユカケ,ドンコ等の魚類や,サンシヨウオ,カエル等の両性類,モグスガニ,サワガニ,テナガエビ,ザリガニ,モエビ等の甲殻類,さらには水棲昆等,底棲性で負の夜光性をもち種類によって接触性があるような生き物が良好に共生できるような魚巣ブロックはこれまでのところなかった。
【0036】
これに対して,本発明の魚巣ブロックでは筒を好む生き物(穴に入る性質のあるもの),泥,砂,小石を好む生き物(潜り込む性質のあるもの),空隙や空間を好む生き物(隠れる性質のあるもの),粗い表面を好む植物(藻類など)が共生できる。例えば,筒体18にはウナギやナマズ等の大型魚類の住み家となり,線状体1の間隙(小石や砂・土が必要に応じて装填される)は小さな空間に入り込む小型魚類や甲殻類が一緒に生活する居住域となる。後者の居住域に生活する小型魚類や甲殻類(ドジョウ,ヨシノボリ,チチブ等の魚類や,サンシヨウオ,カエル等の両性類,カニ・エビ等の甲殻類,水棲昆虫,更には貝類等)は,大型魚類の餌ともなり,ここに植生する藻類等と共に食餌連鎖が形成される。植物の着生のためには,線状体1の表面が前述のように凹凸を有しているのがよい。場合によっては,魚巣ブロックの上面は水面より上にして,その水面上のブロック上面を植物植栽用に利用することもできる。
【0037】
筒体18は,ウナギの場合には内径5cm程度のもので長さは50〜60cm程度,ナマズの場合には内径8〜10cm程度のもので長さは60〜70cm程度のものがよく,材質は特に竹がよい。筒体18は図11のように線状体1に一体的に組み込んで固化固定することもできるが,線状体1が未だ固まらないうちに,筒体18を抜き取って,筒体18が入る空洞を形成して固化し,硬化したブロックに対してその空洞に筒体18を脱着自在に装着する構成としてもよい。また,硬化したブロックに筒体18が入る穴を設けることもできる。
【0038】
このブロックを水底に設置すると,そのブロックに特に砂などを充填して置かなくても(もちろん適度に充填してもよいが),線状体1の間の空隙には自然に砂,泥,小石が入り込んで少々の流れがあっても大きな変化を起こさない小型生物の住み家ができ上がり,この小空間を好む魚類,両性類,甲殻類水棲昆虫,貝類等が生息し,筒体18内に住む大型魚類との共存帯域ができ,本発明の沈石体がもつ本来の洗堀り防止機能により安定した共生環境が維持される。また,線状体1の粗面(凹凸をもつ表面)には太陽光を受けて藻類の増殖が生じる。藻類の増殖は光線の強弱を与えて緑藻から珪藻に至る各種の植物を成育する環境を形成し,この成育した植物を餌とする生き物が集積し生活するするので,魚巣ブロックごとに植物連鎖が成り立つ。線状体1を構成するモルタルまたはコンクリートはその結合材としては通常のセメントでもよいが,前記のようにMgOおよびP2O5を主成分とする低pHセメント用いると共に,土(黒土)を適度に配合したうえで植物繊維を配合することによって生き物にとって好ましい魚巣ブロックを構成することができる。
【0039】
本発明に従う人工沈石体および魚巣ブロックを作るための,代表的な植物繊維入り生モルタルの材料配合例を挙げると,例えば,
低pHセメント(商品名マグホワイト):500Kg/m3±50Kg/m3
黒土 :500Kg/m3±50Kg/m3
砂 :400Kg/m3±40Kg/m3
水 :420Kg/m3±40Kg/m3
植物繊維(綿の場合) :20Kg/m3±5Kg/m3
混和剤として,
ソイルセメント用混和剤(商品名レオソイル100A):5Kg/m3±1Kg/m3
ソイルセメント用混和剤(商品名レオソイル100B):3Kg/m3±1Kg/m3
を例示できる。
【0040】
これによって例えば気乾比重=1.5±0.2,湿潤比重=2.1±0.2の硬化体とすることができる。この硬化体(立体形状のブロックを作成するための線状体)は,例えば圧縮強度300kgf/cm2 ±50kg/m3,曲げ強度45kgf/cm2 ±10kg/m3で,単位吸水率が30%±10%程度の保水性を示す硬化体となる。
【0041】
以上説明したように,本発明の人工沈石体は,水中構造物に水流が作用することによって発生する洗掘を抑制する作用を有する。このため,水中構造物の安定に寄与すると共に,本発明の人工沈石体は生物の生息環境に適合するものであるから,自然環境を害することもない。そして,本発明の人工沈石体によると藻類の移植・造成を効率よく行うことができるので,モ場の造成にも役立てることができる。さらに本発明の人工沈石体を利用した魚巣ブロックによると各種の生き物が共生できる点でこれまでのものにはない良好な庶物連鎖をもつ集合的な共生体を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】水中構造物の基礎部分に洗掘防止ブロックを設置した状態を示す略断面図である。
【図2】水底での洗掘の発生状況を図解的に示した図である。
【図3】本発明に従う人工沈石体を構成するブロックの一例を示す略平面図である。
【図4】図3のX−Y矢視断面図である。
【図5】本発明に従う植物繊維入り生モルタルの線状体を型枠内に装填する例を示す略図である。
【図6】本発明に従う人工沈石体に洗掘が起きない状況を図解的に示した図である。
【図7】本発明の人工沈石体の下半身部分と上半身部分の例を示す斜視図である。
【図8】本発明の人工沈石体に藻類が植栽した状態を示す略断面図である。
【図9】本発明の人工沈石体を用いて藻類の採苗・移植・増殖を行う工程例を示した図である。
【図10】本発明の人工沈石体を用いて藻類の採苗・移植・増殖を行う他の工程例を示した図である。
【図11】本発明に従う魚巣ブロックを製造する工程を示す図である。
【図12】本発明に従う魚巣ブロックのユニットを連接した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1 水中構造物
2 洗掘防止ブロック
3 植物繊維配合のセメント系硬化体からなる線状体
4 立体形状のブロック
5 植物繊維入り生モルタル
6 グラウトポンプ
7 ノズル
8 型枠
9 人工沈石体
10,16 水底
12 水流が通過する空間
13,水生植物(藻類)
14 藻体
15 胞子や配偶体
17 母藻
18 筒体
19 魚巣ブロック
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物繊維を配合したモルタルまたはコンクリートの線状体同士が部分的に結着し且つ該線状体同士の間に間隙が形成されている立体形状のブロックからなる洗掘防止用の人工沈石体。
【請求項2】
植物繊維の配合量が20Kg/m3以上で,線状体の径が5〜300mmである請求項1に記載の洗掘防止用の人工沈石体。
【請求項3】
モルタルまたはコンクリートはMgOおよびP2O5を主成分とする低pHセメントを結合材としたものである請求項1または2に記載の洗掘防止用の人工沈石体。
【請求項4】
植物繊維を配合したモルタルまたはコンクリートの線状体同士が部分的に結着し且つ該線状体同士の間に間隙が形成されている立体形状のブロックからなり,水底に埋設される下半身部分と水中に露出する上半身部分とからなる人工沈石体。
【請求項5】
下半身部分と上半身部分は一体的に連結している請求項4に記載の人工沈石体。
【請求項6】
下半身部分と上半身部分は切り離し可能である請求項4に記載の人工沈石体。
【請求項7】
上半身部分に水生植物が着生されている請求項4に記載の人工沈石体。
【請求項8】
線状体の表面には軸方向に沿った多数の溝が形成されている請求項1ないし5のいずれかに記載の人工沈石体。
【請求項9】
請求項1または4に記載の人工沈石体の間隙に土壌物質を敷設し,この土壌物質に水生植物を陸上で着生したうえ,水中に設置する水生植物の育成法。
【請求項10】
植物繊維を配合したモルタルまたはコンクリートの線状体同士が部分的に結着し且つ該線状体同士の間に間隙が形成されている立体形状のブロックと,前記線状体の間隙に固着または脱着可能に挿入された両端または一端開口の筒体とからなる魚巣ブロック。
【請求項1】
植物繊維を配合したモルタルまたはコンクリートの線状体同士が部分的に結着し且つ該線状体同士の間に間隙が形成されている立体形状のブロックからなる洗掘防止用の人工沈石体。
【請求項2】
植物繊維の配合量が20Kg/m3以上で,線状体の径が5〜300mmである請求項1に記載の洗掘防止用の人工沈石体。
【請求項3】
モルタルまたはコンクリートはMgOおよびP2O5を主成分とする低pHセメントを結合材としたものである請求項1または2に記載の洗掘防止用の人工沈石体。
【請求項4】
植物繊維を配合したモルタルまたはコンクリートの線状体同士が部分的に結着し且つ該線状体同士の間に間隙が形成されている立体形状のブロックからなり,水底に埋設される下半身部分と水中に露出する上半身部分とからなる人工沈石体。
【請求項5】
下半身部分と上半身部分は一体的に連結している請求項4に記載の人工沈石体。
【請求項6】
下半身部分と上半身部分は切り離し可能である請求項4に記載の人工沈石体。
【請求項7】
上半身部分に水生植物が着生されている請求項4に記載の人工沈石体。
【請求項8】
線状体の表面には軸方向に沿った多数の溝が形成されている請求項1ないし5のいずれかに記載の人工沈石体。
【請求項9】
請求項1または4に記載の人工沈石体の間隙に土壌物質を敷設し,この土壌物質に水生植物を陸上で着生したうえ,水中に設置する水生植物の育成法。
【請求項10】
植物繊維を配合したモルタルまたはコンクリートの線状体同士が部分的に結着し且つ該線状体同士の間に間隙が形成されている立体形状のブロックと,前記線状体の間隙に固着または脱着可能に挿入された両端または一端開口の筒体とからなる魚巣ブロック。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−215819(P2009−215819A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62374(P2008−62374)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000230010)ジオスター株式会社 (77)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000230010)ジオスター株式会社 (77)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]