説明

人工皮革の製造方法

【課題】柔軟性も強靭性も均一性も良くてボールやスポーツ用手袋の製作に好適な人工皮革の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】熱可塑性ポリマーシートを、該シートを緊密、且つ均一に加圧する圧縮工程と、該シートの片面を補強材としての布地で裏打ちする裏打ち工程とで人工皮革に製造する人工皮革の製造方法。特に、熱可塑性ポリマーシートを、該シートを緊密、且つ均一に加圧する圧縮工程と、該シートの片面を補強材としての布地で裏打ちする裏打ち工程と、該シートの裏打ち面の反対面をきざみ付きに加工するきざみ付き工程とで人工皮革に製造する人工皮革の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工皮革の製造方法に関し、さらに詳しくは、柔軟性も強靭性も均一性も良く、ハンドリング性に優れたボール、及びフィット性の良いゴルフ、登山、ホッケー及び野球用グローブ等のスポーツ用手袋の製作に好適な人工皮革を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボールやスポーツ用手袋の製作を考えると、前者はハンドリング性がポイントであり、後者はフィット性がポイントであるので、それらを拵えるのに使用する材料は柔軟性も強靭性も均一性も非常に重要である。
【0003】
しかしながら、野球用ボールやグローブを例として言えば、それらは、通常、牛革や馬革などで縫い合わせてなるが、このような天然皮革はまず採取位置及び生産ロットの相違によって緻密性も厚さもかなり違うため、皮革の採取、使用は自由でなく、且つ、材質そのものが硬直であるので、野球用ボールとして均一性が良くてハンドリング性に優れたもの、そして、野球用グローブとして柔軟性が良くてフィット性に優れたものを製作することが困難である。
【0004】
ところで、プラスチック、レジンなどのポリマーシートで拵えたものも当然あるが、このようなものは、均一性が良いが、薄いものは強靭不足であり、厚いものは硬直で柔軟性が悪く、まだまだ理想とは言えない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記に鑑みて、本発明は、柔軟性も強靭性も均一性も良くてボールやスポーツ用手袋の製作に好適な人工皮革の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は、熱可塑性ポリマーシートを、該シートを緊密、且つ均一に加圧する圧縮工程と、該シートの片面を補強材としての布地で裏打ちする裏打ち工程とで人工皮革に製造する人工皮革の製造方法、特に、熱可塑性ポリマーシートを、該シートを緊密、且つ均一に加圧する圧縮工程と、該シートの片面を補強材としての布地で裏打ちする裏打ち工程と、該シートの裏打ち面の反対面をきざみ付きに加工するきざみ付き工程とで人工皮革に製造する人工皮革の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
前記プロセスによる製造方法は、熱可塑性ポリマーシートを緊密且つ均一に加圧してからその片面を補強材としての布地で裏打ちするので、その製品の人工皮革は薄くて柔軟性が良い上、強靭性も均一性も良い。それがために、フィット性に優れたグローブやハンドリング性に優れたボールを製造することができる。それに、該シートの裏打ち面の反対面をきざみ付きに加工すると、該きざみ付き面をボール面とし、ボールのハンドリング性を更に向上させることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。説明中で実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明することがあるが、本発明はこれらの実施例によりその範囲を限定されるものではない。
【0009】
本発明の実施の形態を図1〜図5に基づいて説明する。
【0010】
まず、本発明の実施例1による人工皮革の製造方法は、図1のフローチャートに示すように、まずステップ1(S1)として圧縮・きざみ付き工程を行ない、そしてステップ2(S2)として該シートのきざみ付き面の反対面に裏打ち工程を行なう。
【0011】
即ち、発明者はこのような二工程だけからなる方法で、人工皮革の製造を完成した。
【0012】
図2をも参照して説明すると、このステップ1は、熱可塑性ポリマーシート2をヒーター11で先に加熱してから、成形型4においてその厚さを薄めに圧縮しながらその片面21にきざみ付けをする。
【0013】
即ち、実施例1におけるステップ1は、同一の成形型4で、従来の圧縮工程ときざみ付き工程とを同時にする。圧縮工程にあたる部分は、熱可塑性ポリマーシート2を薄くて緻密にさせる目的であり、きざみ付き工程にあたる部分は、熱可塑性ポリマーシート2の片面21に図3に示すような凹凸模様をつける目的であり、両部分とも予熱工程及び成形型を要するので、このように合併するとプロセス全体が遥かに簡略になる利点がある。
【0014】
この実施例1においては、熱可塑性ポリマーシート2として、4mm(d)のものを使用する上、前記圧縮工程で、150kg/cmの圧力でその厚さを1.0mm(d)までに圧縮してから3分50秒維持し、その後成形型4から取り出し、そのまま置くと、膨らんで厚さ1.5mm(d)のシートになった。次にそれをステップ2のインプットとした。
【0015】
前記条件は、用途に応じて任意に変更でき、特に限定されるものではない。例えば、野球用グローブを作る人工皮革の製造を例として考えれば、熱可塑性ポリマーシート2として、3〜6mmのものを使用する上、前記圧縮工程で、130〜160kg/cmの圧力をかけることにより、厚さ1.5〜4.5mmの複数種類の厚さや柔軟性、強靭度の人工皮革を製造し、それより、野球用グローブの各部分に応じて皮革材料を適当且つ自由に採取することができる。
【0016】
そして、ステップ2は、前記厚さ1.5mm(d)のシートのきざみ付き面21の反対面22に先に接着剤を被覆してから布地3をそれに粘着させた。
【0017】
因みに、この実施例1の熱可塑性ポリマーシート2は、エチレン酢酸ビニルコポリマーで形成されているが、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンクロロプレンゴム、熱可塑性ゴム及び熱可塑性エラストマーから選んで作られたシートを使用しても良い。
【0018】
次いで、図4及び図5を参照して実施例2を説明する。
【0019】
実施例2のプロセスは、実施例1のステップ1とステップ2とを更に合併したステップ1だけを有するものである。
【0020】
即ち、前記ステップ1は、圧縮工程を、きざみ付き工程だけでなく、裏打ち工程とも共に行った。この合併をするために、前記実施例1のように、加熱すること及び成形型4に入れることの外に、さらに布地3の安置をも予備工程とする必要があり、即ち先に後の裏打ちを使用するための布地3を熱可塑性ポリマーシート3の片面22に被覆してから加熱し、そして成形型4に入れて圧縮と裏打ちときざみ付きとをと共に行った。
【0021】
裏打ち面は当然前記予備工程における布地の安置面22にあるが、きざみ付き面は実施例1のように裏打ち面の反対面21にある。
【0022】
また、この圧縮と裏打ちときざみ付きとを同一の成形型4で同一のステップ1において行うプロセスは、熱可塑性ポリマーシート3を先に加熱により溶融または半溶融したから行うので、裏打ちをするための接着剤被覆を省くことができ、製造のステップをさらに簡略化させることができる。
【0023】
本実施例の人工皮革の製造方法の他の内容は、前記実施例1と同じなので、ここではその説明を省く。
【産業上の利用可能性】
【0024】
以上のように、本発明の人工皮革の製造方法は、熱可塑性ポリマーシートを緊密且つ均一に加圧してからその片面を補強材としての布地で裏打ちするので、その製品の人工皮革は薄くて柔軟性が良い上、強靭性も均一性も良い。それがために、フィット性に優れたグローブやハンドリング性に優れたボールを製造することができる。それに、該シートの裏打ち面の反対面をきざみ付きに加工すると、該きざみ付き面をボール面とし、ボールのハンドリング性を更に向上させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例1に係る人工皮革の製造方法の処理の流れを示すフローチャート
【図2】実施例1に係る人工皮革の製造方法を模式的に示すフローチャート
【図3】実施例1に係る人工皮革の拡大断面図
【図4】実施例2に係る人工皮革の製造方法の処理の流れを示すフローチャート
【図5】実施例2に係る人工皮革の製造方法を模式的に示すフローチャート
【符号の説明】
【0026】
11 ヒーター
2 熱可塑性ポリマーシート
21 きざみ付き面21(裏打ち面の反対面)
22 きざみ付き面の反対面22(安置面)
3 布地
4 成形型
S1、S2 ステップ
、d、d 厚さ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリマーシートを、
該シートを緊密、且つ均一に加圧する圧縮工程と、
該シートの片面を補強材としての布地で裏打ちする裏打ち工程とで人工皮革に製造する人工皮革の製造方法。
【請求項2】
熱可塑性ポリマーシートを、
該シートを緊密、且つ均一に加圧する圧縮工程と、
該シートの片面を補強材としての布地で裏打ちする裏打ち工程と、
該シートの裏打ち面の反対面をきざみ付きに加工するきざみ付き工程とで人工皮革に製造する人工皮革の製造方法。
【請求項3】
前記圧縮工程を、前記熱可塑性ポリマーシートを先に加熱してからそれより低い温度で冷却しながら行うことを特徴とする請求項1または2に記載の、人工皮革の製造方法。
【請求項4】
前記裏打ち工程を、前記圧縮工程の後で行うことを特徴とする請求項1または2に記載の、人工皮革の製造方法。
【請求項5】
前記裏打ち工程として、先に前記熱可塑性ポリマーシートの片面に接着剤を被覆してから前記布地をそれに粘着させることを特徴とする請求項4に記載の、人工皮革の製造方法。
【請求項6】
前記圧縮工程と前記きざみ付き工程とを共に同一の成形型で行うことを特徴とする請求項2に記載の、人工皮革の製造方法。
【請求項7】
前記圧縮工程を、先に裏打ちを使用するための布地を前記熱可塑性ポリマーシートの片面に被覆してから前記裏打ち工程と共に行うを特徴とする請求項1または2に記載の、人工皮革の製造方法。
【請求項8】
前記圧縮工程を、先に裏打ちを使用するための布地を前記熱可塑性ポリマーシートの片面に被覆してから、前記裏打ち工程及び前記きざみ付き工程と共に同一の成形型で行うを特徴とする請求項2に記載の、人工皮革の製造方法。
【請求項9】
前記熱可塑性ポリマーシートとして、エチレン酢酸ビニルコポリマー、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンクロロプレンゴム、熱可塑性ゴム及び熱可塑性エラストマーから選んで作られたシートを使用することを特徴とする請求項1または2に記載の、人工皮革の製造方法。
【請求項10】
前記熱可塑性ポリマーシートとして、3〜6mmのものを使用する上、前記圧縮工程で、130〜160kg/cmの圧力をかけることにより、厚さ1.5〜4.5mmの人工皮革を製造することを特徴とする請求項1または2に記載の、人工皮革の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−46769(P2009−46769A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−211917(P2007−211917)
【出願日】平成19年8月15日(2007.8.15)
【出願人】(507275224)
【Fターム(参考)】