説明

人工皮革

本発明は、難燃組成物を予備人工皮革上に部分的に塗布することにより、業界において要求する水準の難燃性を有すると共に、極細繊維の軟らかい触感が低下されず、通気性を大きく向上することができる人工皮革に関する。本発明の人工皮革は、極細繊維からなる不織布、及び前記不織布に含浸された弾性高分子樹脂を含む予備人工皮革と、前記予備人工皮革上に、前記予備人工皮革の全表面積に対して60乃至90%の面積比率で、難燃組成物が部分的に塗布されることにより形成された難燃組成物層と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工皮革に係り、より具体的には、難燃組成物層を含んでいる人工皮革に関する。
【背景技術】
【0002】
人工皮革は、極細繊維が3次元に交絡して形成された不織布に、高分子弾性体が含浸されてなるものであって、天然皮革と同様に柔らかい質感及び独特の外観を有することにより、履き物、衣類、手袋、雑貨、家具、及び自動車内装材などの様々な分野に広く用いられている。
【0003】
このような人工皮革は、使用される用途によって、柔軟性、表面の品位特性、耐摩耗性、耐光性、または伸度特性などにおいて、より向上した高機能性が要求されており、様々な特性が同時に要求されることもある。
【0004】
例えば、自動車内装材のうち、自動車シートに付着される表皮材に人工皮革が適用される場合、消費者の要求水準が高くなるにつれて、表面の品位特性、具体的には、優れた外観、通気性及び触感特性が要求されると同時に、自動車の物性項目のうち、法規に規定された難燃性を満足させなければならない困難があるのが実情である。
【0005】
すなわち、人工皮革の業界において要求する難燃性を付与するためには多量の難燃剤を使用しなければならないが、このように、多量の難燃剤を人工皮革に処理する場合、人工皮革の触感が固くなり、通気性が低下するという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、上記のような関連技術の制限及び短所に起因した問題点を防止できる人工皮革に関する。
【0007】
すなわち、本発明は、難燃組成物を予備人工皮革上に部分的に塗布することにより、業界において要求する水準の難燃性を有すると共に、極細繊維の軟らかい触感が低下されず、通気性を大きく向上することができる人工皮革を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような目的を達成するために、本発明は、極細繊維からなる不織布、及び前記不織布に含浸された弾性高分子樹脂を含む予備人工皮革と、前記予備人工皮革上に、前記予備人工皮革の全表面積に対して60乃至90%の面積比率で、難燃組成物が部分的に塗布されることにより形成された難燃組成物層と、を含む人工皮革を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、次のような効果がある。
【0010】
第一、本発明による人工皮革は、最適の形態及び含量で部分的に塗布された難燃組成物層を有することにより、業界において要求する水準の難燃性を有するだけでなく、経済性が向上する効果がある。
【0011】
第二、本発明による人工皮革は、難燃組成物層が部分的に塗布されることにより、優れた触感及び通気性を有することができる。
【0012】
このような人工皮革は、優れた難燃性と外観及び触感が要求される自動車用シートなどに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例に係る人工皮革の平面図である。
【図2】図1のA−A’線に沿う人工皮革の断面図である。
【図3】本発明の他の実施例に係る人工皮革の平面図である。
【図4】本発明の他の実施例に係る人工皮革の平面図である。
【図5】本発明の他の実施例に係る人工皮革の平面図である。
【図6】本発明の他の実施例に係る人工皮革の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の技術的思想及び範囲を逸脱しない範囲内で本発明の様々な変更及び変形が可能であるという点は当業者にとって自明である。したがって、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明、及びその均等物の範囲内に含まれる変更及び変形を全て含む。
【0015】
本明細書で用いられる‘予備人工皮革’という用語は、不織布及び前記不織布上に含浸された弾性高分子樹脂を含む人工皮革で、難燃組成物が付加される直前の人工皮革のことを意味する。
【0016】
以下、本発明の人工皮革の実施例を添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施例に係る人工皮革の平面図である。
【0018】
図2は、図1のA−A’線に沿う人工皮革の断面図である。
【0019】
図1及び図2に示すように、本発明の人工皮革は、予備人工皮革30と、その上に難燃組成物が部分的に塗布されることにより形成された難燃組成物層10とを含む。図1及び図2に例示した本発明の一実施例によれば、難燃組成物が予備人工皮革30上に部分的にのみ塗布されるので、難燃組成物が塗布されない予備人工皮革の非塗布領域に対応する溝が形成され、その結果、本発明の人工皮革は、極細繊維からなる予備人工皮革の触感の低下なしに優れた通気性を有することができる。
【0020】
また、予備人工皮革30上に難燃組成物が部分的にのみ塗布されるので、難燃組成物の使用量を大幅に低減することができる。その結果、人工皮革の生産単価を低くすることにより経済性を向上させることができる。
【0021】
反面、従来の技術のように予備人工皮革30上に難燃組成物を全面塗布する場合、難燃組成物を大量に使用するため、経済性が低下し、人工皮革の触感及び通気性が低下するという問題がある。
【0022】
本発明の人工皮革は、前記予備人工皮革30の全表面積に対して60乃至90%の面積比率で、難燃組成物を部分的に塗布することにより形成された難燃組成物層10を有する。前記難燃組成物層10が占める面積比率が60%未満の場合、業界において要求する水準の難燃性を有する人工皮革を得ることができず、それに対し、前記難燃組成物層10が占める面積比率が90%を超過する場合、人工皮革の通気性が急激に低下することがある。
【0023】
前記難燃組成物層10は、図1、及び図3乃至図5に示すように、様々な形態を有することができる。
【0024】
例えば、図5に示すように、難燃組成物層10は、所定の形状を有する多数の不連続的な単位層で構成することができる。すなわち、難燃組成物層10を構成する多数の単位層が予備人工皮革30上に不連続的に分布し、予備人工皮革30の非塗布領域に対応する一つの溝20が前記多数の単位層を取り囲むように形成することができる。
【0025】
しかし、不連続的に分布した多数の単位層を取り囲む一つの溝20が形成される場合、連続的に形成された溝20に沿って予備人工皮革30の非塗布領域が簡単に燃えてしまうため、人工皮革の難燃性が多少低下することがある。その結果、業界において要求する水準の難燃性を人工皮革に付与するためには、相対的に多くの難燃剤を使用しなければならず、それによって、人工皮革の通気性及び触感が多少低下することがある。
【0026】
これに対し、図1、3及び4にそれぞれ示すように、本発明の人工皮革は、難燃組成物が塗布されない前記予備人工皮革30の非塗布領域に対応して、不連続的に分布した多数の溝20を有することができる。
【0027】
本発明の難燃組成物層10は、図1及び3に示すように、前記多数の溝20を取り囲む一つのボディーでよい。選択的に、図4に示すように、本発明の難燃組成物層10は、不連続的に分布した多数の単位層で構成されてもよい。
【0028】
難燃組成物が塗布されない前記予備人工皮革30の非塗布領域に対応して不連続的に分布した多数の溝20を有する人工皮革に対して難燃性試験を行う場合、多数の溝20が不連続的に分布しているため、予備人工皮革20の非塗布領域の全体に火が広がるのを防止できる。その結果、難燃組成物の塗布量を少なくしても人工皮革の難燃性を大きく向上させることができる。
【0029】
したがって、同一の含量の難燃組成物を前記予備人工皮革30に塗布する場合、不連続的に分布した多数の溝20を有する人工皮革が、連続的に形成された一つの溝20のみを有する人工皮革に比べて優れた難燃性を有する。
【0030】
本発明の人工皮革の多数の溝20は、図6に示すように、不規則的及び不連続的に分布することができ、難燃組成物層10は、前記多数の溝20を取り囲む一つのボディーであってもよい。
【0031】
本発明の人工皮革の多数の溝20のそれぞれは、様々な形状、例えば円形、多角形またはライン状を有することができる。
【0032】
一方、難燃性及び通気性をいずれも向上させるためには、前記難燃組成物層10が最適の浸透深さ及び上部厚さを有さなければならない。図2は、本発明の一実施例である図1のA−A’線に沿う人工皮革の断面図で、図2に示すように、前記人工皮革は、難燃組成物層10が前記予備人工皮革30の表面上に突出した程度を意味する上部厚さ、及び前記難燃組成物層10が予備人工皮革30の内部に浸透した程度を意味する浸透深さを有する。
【0033】
水平燃焼速度が100mm/分以下の難燃性、及び20〜50L/分/100cmの通気性を有する人工皮革を製造するために、前記上部厚さaは、予備人工皮革30の厚さcに対して、0.1〜4%の比率の範囲にあることが好ましい。もし、前記上部厚さaの比率が0.1%未満の場合、業界において要求する水準の難燃性を有する人工皮革を製造できず、一方、前記上部厚さaの比率が4%を超過する場合、人工皮革の触感が急激に低下することがある。
【0034】
前記浸透深さbは、予備人工皮革30の厚さcに対して、5〜50%の比率の範囲にあることが好ましい。もし、前記浸透深さbの比率が5%未満の場合、接着力が低下して耐久性が低くなり、反面、前記浸透深さbの比率が50%を超過する場合、人工皮革の触感が固くなることがある。
【0035】
難燃組成物層10の上部厚さa及び浸透深さbは、試料の断面を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影することにより測定できる。
【0036】
前記難燃組成物は難燃剤及びバインダーを含むことができる。前記難燃剤としては発ガン物質であるハロゲン系難燃剤よりもリン系難燃剤を用いることが好ましい。前記バインダーは、接着力を向上させるためのもので、このようなバインダーには様々な種類のものを用いることができる。特に、シリコンを含むウレタン系バインダーは、シリコンを含むので、耐熱性に優れ、燃焼時にシリコンの分解が抑制され、ウレタンと架橋結合を形成できるので、人工皮革の難燃性を向上させることができる。一方、前記ウレタン系バインダーは、予備人工皮革30と強い接着力を有するだけでなく、スポンジなどの他の素材とも良好な接着力を有するという利点がある。
【0037】
前記難燃組成物は、上述した難燃剤及びバインダーの他、様々な添加剤を含むことができる。前記添加剤には酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、または柔軟剤などを用いることができる。
【0038】
前記予備人工皮革30は、上記で定義したように、不織布(図示せず)、及び前記不織布に含浸された弾性高分子樹脂(図示せず)を含む人工皮革で、難燃組成物が付加される直前の人工皮革のことを意味し、下記で説明する方法により製造できる。
【0039】
まず、複合紡糸工程を通じて海島型繊維を製造する。前記海島型繊維のうち島成分はナイロンまたはポリエステルであってもよく、前記ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、またはポリブチレンテレフタレート(PBT)であってもよい。
【0040】
次に、切断工程を通じて、前記海島型繊維をステープル繊維などの短繊維状に作製する。前記短繊維状の海島型繊維は、カーディング(carding)工程及びクロスラッピング(cross lapping)工程を経ることで、ウェブ(Web)を形成することになる。選択的に、スパンボンディング(spun bonding)工程を通じて、長繊維状の海島型繊維を用いて、切断工程なしに、直ちにウェブを形成することもできる。
【0041】
このように形成された複数個のウェブをニードルパンチまたはウォータージェットパンチなどを用いて互いに結合させることによって、不織布を完成する。
【0042】
次に、前記不織布に弾性高分子樹脂を含浸させる工程、及び前記海島型繊維のうち海成分を除去する極細化工程を順次に行うことによって、予備人工皮革30を完成する。選択的に、前記極細化工程を先に行った後、前記弾性高分子樹脂の含浸工程を行ってもよい。
【0043】
前記不織布に弾性高分子樹脂を含浸させる工程は、塗布(coating)工程またはディッピング(dipping)工程などによって行うことができ、このうち、工程が簡単で容易なディッピング工程について具体的に説明すると、次の通りである。
【0044】
まず、前記弾性高分子樹脂としては、ポリウレタン樹脂またはシリコーン系樹脂を用いることができる。前記ポリウレタン樹脂としては、ポリカーボネートジオール系樹脂、ポリエステルジオール系樹脂、またはポリエーテルジオール系樹脂単独で、またはこれらの混合物を用いることもできる。
【0045】
このような弾性高分子樹脂を含む組成物に不織布を浸漬させる工程、凝固槽で前記弾性高分子樹脂を固化させる凝固工程、及び水洗槽で水洗する工程を順次に行って、弾性高分子樹脂の含浸工程を完了できる。前記凝固槽に入っている凝固液は、水とジメチルホルムアミドなどが含まれた混合溶液でよい。
【0046】
前記極細化工程をさらに具体的に説明すると、苛性ソーダ水溶液などのアルカリ溶液を用いて、島成分と海成分とからなる複合纎維において、前記海成分を溶出させて除去する。海成分が除去されることによって、残っている島成分が極細繊維を形成することになる。前記極細化工程により生成される極細繊維は、0.3デニール以下の繊度の範囲を有することが触感面において好ましい。
【0047】
以上では、海島型繊維を用いて予備人工皮革30を製造する方法について説明したが、本発明はこれに限定されず、最初から極細繊維を製造し、これを用いて不織布を製造した後、前記不織布に弾性高分子樹脂を含浸させることによって、予備人工皮革30を製造することもできる。
【0048】
上述したような人工皮革は、優れた難燃性と共に、優れた通気性を有する。すなわち、FMVSS.No.302の自動車内装材の燃焼試験の規定に基づいて測定された人工皮革の水平燃焼速度が100mm/分以下で、同時に、人工皮革の通気性が20〜50L/分/100cmの範囲でありうる。
【0049】
前記水平燃焼速度は難燃性を測定する一つの方法で、人工皮革が自動車シートなどの内装材として用いられる場合において主に測定する方法である。もし、人工皮革の水平燃焼速度が100mm/分を超過する場合、業界において要求する水準の難燃性を有することができず、自動車用内装材としての使用が困難であることがある。
【0050】
前記人工皮革の通気性は、人工皮革が自動車シートに使用される場合、前記自動車シートの内外に空気が通過する程度を示すもので、通気性が増加するほど運転者は快適さを感じる反面、通気性が低下するほど運転者は不快を感じる。しかし、通気性が過度に増加すると、難燃組成物層10の含有量が低くなり、それによって人工皮革の難燃性が過度に低下する。したがって、前記人工皮革の通気性は、20〜50L/分/100cmの範囲を有することが好ましい。
【0051】
以下では、本発明の実施例と比較例を通じて詳細に説明する。本発明は、下記の実施例により理解を助けるだけで、特許請求の範囲の保護範囲を制限するわけではない。
【実施例】
【0052】
実施例1
【0053】
主成分であるポリエチレンテレフタレートに金属スルホネート含有ポリエステル単位が5モル%共重合された共重合ポリエステルを溶融して、海成分の溶融液を準備し、ポリエチレンテレフタレート(PET)を溶融して、島成分の溶融液を準備する。以後、前記海成分の溶融液50重量%及び前記島成分の溶融液50重量%を用いて複合紡糸して、単糸繊度が3デニールで、断面において前記島成分が16個で構成されたフィラメントを得、前記フィラメントを延伸倍率3.5として延伸して、フィラメント状の海島型繊維を製造した。以後、前記海島型繊維を用いて、15個/インチのクリンプ数を有するようにクリンプ工程を行い、130℃で熱固定した後、51mmに切断してステープル状の海島型繊維を製造した。
【0054】
その後、前記ステープル状の海島型繊維を、カーディング及びクロスラッピング工程を通じてウェブを形成した後、前記ウェブをニードルパンチ工程を経るようにして、不織布を製造した。
【0055】
その後、前記不織布を5重量%の濃度のポリビニルアルコール水溶液でパディングした後、乾燥し、該乾燥した不織布を、ジメチルホルムアミド(DMF)溶媒にポリウレタンを溶解させて得た10重量%の濃度及び25℃のポリウレタン溶液に3分間浸漬させた。以後、前記ポリウレタン溶液が浸漬された不織布を15重量%の濃度のジメチルホルムアミド水溶液で凝固させ、水で水洗して、前記ポリウレタンが含浸された不織布を得た。
【0056】
その後、前記ポリウレタンが含浸された不織布を、5重量%の濃度の苛性ソーダ水溶液で処理して、前記複合纎維において海成分を溶出させ、極細化工程を行って、346.3g/mの単位重量、0.95mmの厚さ、56.4L/分/100cmの通気性を有する予備人工皮革30を得た。
【0057】
次に、水40重量%、ポリリン酸アンモニウム(ammonium polyphosphate)40重量%のリン系難燃剤、及び20重量%のポリウレタン系バインダーで配合された7,800cpsの粘度を有する難燃組成物を、ロータリースクリーンコーティング法を用いて、前記予備人工皮革30の一面上に、図1のような形状に塗布した後、130℃で10分間熱風乾燥することによって、面積比率65%、上部厚さa 16μm、及び浸透深さb 100μmの難燃組成物層10が形成された人工皮革を得た。前記ロータリースクリーンコーティングは、ICHINOSE社のロータリースクリーン捺染機、及びSTORK社の80メッシュ(mesh)スクリーンを用いて行った。
【0058】
実施例2及び3
【0059】
前述した実施例1において、前記難燃組成物層10の面積比率をそれぞれ75及び85%に変更したのを除いては、実施例1と同一の方法で人工皮革をそれぞれ得た。
【0060】
実施例4
【0061】
前述した実施例1において、図4のような形状に難燃組成物を塗布するのを除いては、実施例1と同一の方法で人工皮革を得た。
【0062】
実施例5及び6
【0063】
前述した実施例4において、前記難燃組成物層10の面積比率をそれぞれ75及び85%に変更したのを除いては、実施例4と同一の方法で人工皮革を得た。
【0064】
実施例7
【0065】
前述した実施例1において、図5のような形状に難燃組成物を塗布するのを除いては、実施例1と同一の方法で人工皮革を得た。
【0066】
比較例1
【0067】
前述した実施例1において、難燃組成物を予備人工皮革30の全面に塗布したのを除いては、実施例1と同一の方法で人工皮革を得た。
【0068】
比較例2
【0069】
前述した実施例1において、前記難燃組成物層10の面積比率を55%に変更したのを除いては、実施例1と同一の方法で人工皮革を得た。
【0070】
次に、上記の各実施例及び比較例によってそれぞれ得られた人工皮革の物性を、次のような方法で測定し、その測定結果を表1に示した。
【0071】
難燃組成物層10の面積比率(%)
【0072】
難燃組成物層10の面積比率(%)は、予備人工皮革30の全表面積に対して、前記予備人工皮革30上に形成された難燃組成物層10が占める面積を比率として表したものである。
【0073】
具体的には、人工皮革を任意の地点を選択し、50×50cmの大きさを有する試料を準備し、イメージ分析器(Image−ProPlusのソフトウェアにJVC Digital Camera KY−F70Bを使用)を用いて、準備した試料の表面を撮影した後、面積を分析するプログラムを通じて、下記の数学式によって、難燃組成物層10の面積比率を測定した。この時、使用した試料は総5個で、各測定された結果を算術平均し、最終的に難燃組成物層10の面積比率を求めた。
【0074】
[数]
難燃組成物層10の面積比率(%)=(予備人工皮革30に塗布された難燃組成物層10の面積/予備人工皮革30の面積)×100
【0075】
難燃組成物層10の上部厚さの比率(%)
【0076】
難燃組成物層10の上部厚さの比率(%)は、図2に示すように、予備人工皮革30の平均厚さcに対して、前記予備人工皮革30の表面から上側に突出した難燃組成物層10までの平均高さである上部厚さaを比率として表したものである。前記予備人工皮革30の平均厚さc、及び難燃組成物層10までの平均高さである上部厚さaは走査電子顕微鏡(SEM)を用いて測定した。
【0077】
具体的には、人工皮革の断面SEM写真において、間隔が1000μmになるように任意の2つの地点を選択し、前記2つの地点での予備人工皮革30の厚さc、及び難燃組成物層10の上部厚さaを求めた。該測定を総5個の試料に対して行い、測定された結果を算術平均して、最終的に予備人工皮革30の平均厚さc、及び難燃組成物層10の平均上部厚さaを求めた。次に、予備人工皮革30の平均厚さc、及び難燃組成物層10の平均上部厚さaを用いて難燃組成物層10の上部厚さの比率(%)を計算した。
【0078】
難燃組成物層10の浸透深さの比率(%)
【0079】
難燃組成物層10の浸透深さbの比率(%)は、図2に示すように、予備人工皮革30の平均厚さcに対して、前記予備人工皮革30の表面から内部に浸透した難燃組成物層10までの平均深さである浸透深さbを比率として表したものである。前記予備人工皮革30の平均厚さc、及び難燃組成物層10までの平均深さである浸透深さbは走査電子顕微鏡(SEM)を用いて測定した。
【0080】
具体的には、人工皮革の断面SEM写真において、間隔が1000μmになるように任意の2つの地点を選択し、前記2つの地点での予備人工皮革30の厚さc、及び難燃組成物層10の浸透深さbを求めた。該測定を総5個の試料に対して行い、測定された結果を算術平均して、最終的に予備人工皮革30の平均厚さc、及び難燃組成物層10の平均浸透深さbを求めた。次に、予備人工皮革30の平均厚さc、及び難燃組成物層10の平均浸透深さbを用いて難燃組成物層10の浸透深さの比率(%)を計算した。
【0081】
難燃組成物層10の塗布量の測定
【0082】
難燃組成物層10が形成される前の予備人工皮革30の重量と、難燃組成物層10が形成された後の人工皮革の重量との差から難燃組成物の塗布量(g/m)を得た。
【0083】
人工皮革の水平燃焼速度の測定
【0084】
人工皮革の難燃性の程度を間接的に表す水平燃焼速度(mm/分)をFMVSS.No.302の自動車内装材の燃焼試験の規定に基づいて測定した。
【0085】
人工皮革の通気性の測定
【0086】
ASTM D 737に規定されたFrazierテストによって通気性(L/分/100μm)を測定した。
【0087】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
極細繊維からなる不織布、及び前記不織布に含浸された弾性高分子樹脂を含む予備人工皮革と、
前記予備人工皮革上に、前記予備人工皮革の全表面積に対して60乃至90%の面積比率で、難燃組成物が部分的に塗布されることにより形成された難燃組成物層と、を含む、人工皮革。
【請求項2】
前記人工皮革は、前記難燃組成物が塗布されない前記予備人工皮革の非塗布領域に対応して不連続的に分布した複数の溝を有する、請求項1に記載の人工皮革。
【請求項3】
前記難燃組成物層は、前記複数の溝を取り囲む一つのボディーであることを特徴とする、請求項2に記載の人工皮革。
【請求項4】
前記溝のそれぞれは、円形、多角形またはライン状であることを特徴とする、請求項2に記載の人工皮革。
【請求項5】
FMVSS.No.302の自動車内装材の燃焼試験の規定に基づいて測定された前記人工皮革の水平燃焼速度が100mm/分以下で、同時に、前記人工皮革の通気性が20〜50L/分/100cmであることを特徴とする、請求項1に記載の人工皮革。
【請求項6】
前記難燃組成物層は、前記予備人工皮革の厚さに対して0.1〜4%の範囲の上部厚さ、及び前記予備人工皮革の厚さに対して5〜50%の範囲の浸透深さを有することを特徴とする、請求項1に記載の人工皮革。
【請求項7】
前記難燃組成物層は、リン系難燃剤を含む、請求項1に記載の人工皮革。
【請求項8】
前記難燃組成物層は、シリコンを含むウレタン系バインダーを含む、請求項1に記載の人工皮革。
【請求項9】
前記極細繊維の繊度は、0.3デニール以下であることを特徴とする、請求項1に記載の人工皮革。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−520581(P2013−520581A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554938(P2012−554938)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【国際出願番号】PCT/KR2011/001335
【国際公開番号】WO2011/105851
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(597114649)コーロン インダストリーズ インク (99)
【Fターム(参考)】