説明

人工芝の補強方法

【課題】基布に芝葉材を植設し基布の裏側に補強層を設けた人工芝を敷設している状態で補強する方法において、損傷を受けやすい部分或いは損傷を受けつつある部分を補強できるようにすること
【解決手段】芝葉材の外側から耐水性の液状硬化性樹脂を塗布して芝葉材に沿って流下させ、基布に到達した後樹脂を硬化させる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基布に芝葉材を植設し基布の裏側に補強層を設けた人工芝を敷設している状態で補強する方法に関するもので、多目的グランド、ゴルフ練習場、ゴルフ場の歩径路、テニスコート、ゲートボール場、野球場、フットサル場などにおいて利用されるものである。
【背景技術】
【0002】
人工芝は、多目的グランドやゴルフ練習場をはじめとして、多方面において利用されている。
これらの人工芝としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの繊維からなる基布に、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニリデンなどからなるモノフィラメントやフラットヤーンなどからなるループ、直毛、クリンプ、ラッセル、ハニカム、チェーンステッチ等の芝葉材を植設し、基布の裏側に塩化ビニル樹脂やSBRなどを塗布して裏面を補強した構成のものが盛用されている。
【0003】
しかしながら、敷設された人工芝は、屋外にあっては、太陽光線や風雨の影響を受けて全体が劣化していくが、磨耗ないし破損は全体にわたって均一に生じる訳ではなく、使用頻度の高い部分や使用環境が厳しい部分など、特定の部分に集中して磨耗や破損が発生している。
たとえば、ゴルフ練習場において敷設されている集球用の人工芝においては、ゴルファーが好んで狙う場所やその近辺にボールの落下が集中し、ボールの激突によって損傷を受けている。この損傷は、ボール落下時における圧縮破壊、ボールの回転制動や滑りに基因した摩擦熱による溶融破壊などによるものであり、芝材の磨耗や磨滅、基布の破損として現れているのが現状である。
【0004】
このような問題を解決するために、従来は二つの方法が選択されていた。
一つは損傷を受けた部分だけを切り取って同種の人工芝に張り替えることであり、他は全体を強靱な人工芝に張り替えることである。
前者の方法では、損傷を受けた部分だけを対象にした極めて安価な補修が行える利点があるものの、新旧の人工芝の継ぎ目が目立ってパッチワーク状となるし、基布の継目にホツレが発生する場合もあるから、美感上の不都合があった。
また、後者の方法に使用する人工芝として、例えば、基布に高溶融点素材を使用すると共に人工芝全体の高さの20%以上の厚みを持たせることによって、耐衝撃性及び耐久性を高めたものが特許文献1に提案されている。
強靱な人工芝は、芝葉材や基布の素材や構造を改良強化されるが、それによって人工芝自体のコストを高めてしまい、全面の人工芝を張り替えようとすると、相当な資金を投下せざるを得なくなる問題がある。
【特許文献1】特開平6-240559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、基布に芝葉材を植設し基布の裏側に補強層を設けた人工芝を敷設している状態で補強する方法において、損傷を受けやすい部分或いは損傷を受けつつある部分を補強できるようにすることを課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この技術的課題を解決するための技術的手段は、(イ)芝葉材の外側から耐水性の液状硬化性樹脂を塗布して芝葉材に沿って流下させ、(ロ)基布に到達した後樹脂を硬化させること、である。
【0007】
芝葉材の外側から耐水性の液状硬化性樹脂を塗布すると、樹脂は液状であるから芝葉材に沿って流下して芝葉材の外側に樹脂コーティング層を形成する。芝葉材に沿って流下した樹脂が基布に到達すると、樹脂は基布に含浸されると共に基布と芝葉材との結着部にも浸入し、その後硬化させられるから、人工芝は外側から確実に補強されることになる。
この樹脂は耐水性を有しているから、雨が降ったり人工芝を洗浄したりしても補強効果が失われることはない。
【0008】
上記の液状硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂を好適に使用することができる。これらの樹脂は、一液性、二液性のいずれであっても使用することができる。
塗布方法は、噴霧、刷毛塗りなど樹脂を芝葉材に沿って流下させられる方法であれば問わない。塗布によって液状の樹脂を流下させるためには、10〜1500mPa ・ s 程度の粘度の樹脂を使用することが望ましい。なお、噴霧式で塗布すると、塗布ムラが生じ難く、作業性もよい。
樹脂の塗布量は、m2 当たり150〜250gを基準にして塗布することが好ましいが、芝葉材の種類、植設密度、芝葉材の長さ等を勘案して増減することになる。
【0009】
以上のように、本発明方法では、敷設されている人工芝の損傷を受けやすい部分や損傷を受けつつある部分を対象にして液状硬化性樹脂を塗布することによって、部分的な補強を行うことが可能となる。
この補強は、同じ場所に追加して行うことも可能である。
【発明の効果】
【0010】
部分的な補修が行える結果、敷設した人工芝に生じる劣化や損傷を防止できる利点があり、特殊な素材や構造を持った高価な人工芝を使用しなくても、人工芝全体にほぼ均一な耐久性を持たせることが可能となる。
また、敷設している人工芝の継目において、基布にホツレが発生するのを防止できる効果もある。
【実施例1】
【0011】
(試験例)
人工芝の耐久性についての次の試験を実施した。
1−人工芝
ポリプロピレン製の織布からなる基布にループ状の66ナイロン製パイル(長さ3mm−裏面SBRコーティング加工)を植設した人工芝2m2 を使用した。
2−樹脂
サンプル1−一液型エポキシ樹脂(ボンド ユニエポ01−コニシ株式会社製)
サンプル2−二液型エポキシ樹脂(ボンド E200P−コニシ株式会社製)
サンプル3−未処理
3.液状樹脂の塗布
エアコンプレッサー付きスプレーガンを用いて、人工芝に対してサンプル1、2の樹脂400gを万遍なくスプレー噴霧し(塗布量200 g/m2 )、室温で3日間養生した。
4.耐磨耗試験
電動ドリル(日立工業株式会社製「FDV20VB(V))の先端部に鋼線ワイヤブラシ(サンフレックス株式会社製−鋼線長25mm)を取り付け、各人工芝の基布の表面にワイヤブラシの先端が接触する高さで、垂直に電動ドリルを保持した状態で、回転数3000回転/分でドリルを作動させ、パイルが削れるまでの時間(分)及び基布に孔が開くまでの時間(分)を調べた。
【0012】
5.試験結果
試験結果は下表の通りであった。サンプル1、2は未処理のサンプル3に比べて約2倍の耐久性を備えていることが判明した。
(表)

【実施例2】
【0013】
人工芝に塗布する樹脂として、多官能イソシアネート(商品名「Isonate J-243」住友バイエルウレタン株式会社製)100質量部とテトラエトキシシラン(商品名「TSLB124 」東芝シリコーン株式会社製)100質量部とを混合させた樹脂液を使用する他は、人工芝、樹脂液の塗布・耐摩耗試験の方法については実施例1と同様にして試験を実施した。
その結果、パイルが削れるまで8分、基布に穴が開くまで11分をそれぞれ要していて、未処理のサンプル3に対して、約1.6倍の耐久性を備えていることが判明した。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布に芝葉材を植設し基布の裏側に補強層を設けた人工芝を敷設した状態で補強する方法において、芝葉材の外側から耐水性の液状硬化性樹脂を塗布して芝葉材に沿って流下させ、基布に到達した後樹脂を硬化させる人工芝の補強方法。
【請求項2】
芝葉材の長さが10mm以下の人工芝である請求項1に記載の人工芝の補強方法。