説明

人工血小板

人工血小板として使用するのに適した治療因子が、記載される。その因子は、不溶性キャリアに結合されたフィブリノゲン結合前駆体を含み、ここでそのフィブリノゲン結合前駆体は、創傷部位特異的因子(例えば、トロンビン)によって、そのキャリアに結合されたフィブリノゲン結合成分へと変換されることができる。そのフィブリノゲン結合成分は、そのフィブリノゲン結合前駆体と比較して、フィブリノゲンへの結合能力が増大する。その因子は、患者固有の血小板における欠損(例えば、血小板数の遺伝性または後天性の欠損(血小板減少症)あるいは機能の遺伝性または後天性の欠損(血小板無力症))を有する患者を処置するために使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工血小板として使用するのに適した因子に関する。その因子は、患者固有の血小板における欠損(例えば、血小板数の遺伝性または後天性の欠損(血小板減少症)あるいは機能の遺伝性または後天性の欠損(血小板無力症))を有する患者を処置するために使用され得る。
【背景技術】
【0002】
最近、血小板輸血は、急性出血および血小板の産生および/または機能の障害を有する患者における出血の予防に対する唯一の有効な処置である。しかし、輸血のために使用される血小板濃縮物の貯蔵寿命は、5日間だけである。血小板輸血に伴う感染の危険性および患者が血小板濃縮物に対するアレルギー反応を有し得る危険性もまた、存在する。
【0003】
血小板濃縮物および血小板輸血に関連する懸案事項に鑑みて、人工血小板を開発する試みが、行なわれている。人工血小板が血管損傷の部位(血小板が活性化される)において互いおよび内因性の血小板と凝集するが、他の場所における凝集は最小限であることが、重要である。血小板が活性化される場合、血小板膜糖タンパク質(GPIIb〜IIIa)のコンホメーション変化は、血小板膜糖タンパク質を血漿フィブリノゲンに結合させ、そしてさらなる血小板を、成長する血栓に補充する。
【0004】
特許文献1は、2つの人工血小板生成物の生産を記載する。生成物1は、末端のシステインを介してヒトアルブミンマイクロスフェアに架橋された配列NH−GPRPGGGGGGC(配列番号1)のペプチドである。フィブリノゲンは、上記ペプチドに結合される。生成物2は、フィブリノゲンが上記ペプチドに結合されないことを除いて生成物1と同一である。投与される場合、生成物2は、上記ペプチドを介して内因性フィブリノゲンに結合する。上記ペプチドは、フィブリノゲンがそのネイティブなコンホメーションで維持されるか、またはネイティブなコンホメーションに近づくようにフィブリノゲンに結合することができる。これは、活性化形態のGPIIb〜IIIaレセプターとの優勢な相互作用を可能にする。結合されたフィブリノゲンはまた、フィブリノゲンを切断するトロンビンと相互作用し得、フィブリン−フィブリン橋を介する上記マイクロスフェアの架橋を可能にする。
【0005】
生成物1と比較して、生成物2は増強された安全性プロフィールを有すると考えられる。なぜならば生成物2は、患者の内因性フィブリノゲンに結合するからである。これは、生成物2が投与される場合に、感染およびアレルギー反応の危険性を減少させる。
【特許文献1】国際公開第WO 2005/035002号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さらに改良された人工血小板を提供することが、望まれる。特に、血管損傷の部位から離れた部位における血栓形成の危険性がさらに最小化される人工血小板を提供する必要性が、存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に従って、人工血小板として使用するための因子が提供され、上記因子は、不溶性キャリアに結合されたフィブリノゲン結合前駆体を含み、ここで上記フィブリノゲン結合前駆体は、上記キャリアに結合されたフィブリノゲン結合成分へと創傷部位特異的因子によって変換されることができ、上記フィブリノゲン結合成分は、上記フィブリノゲン結合前駆体と比較して、フィブリノゲンへの結合能力が増大し、そして上記フィブリノゲン結合前駆体は、フィブリノゲンではない。
【0008】
一旦上記フィブリノゲン結合前駆体が創傷の部位で上記フィブリノゲン結合成分に変換されると、上記フィブリノゲン結合成分が、フィブリノゲンに結合できることにより、結合されたフィブリノゲンが、血小板に結合し、それによって血小板凝集を引き起こし得る。創傷部位特異的因子が、上記フィブリノゲン結合前駆体を変換するために必要とされるので、創傷の部位から離れた部位における血小板凝集は、最小化される。既知の人工血小板と比較して、本発明の因子は創傷から離れた血栓形成性が減少しており、それによって安全性が増強されていると、考えられる。
【0009】
本発明の因子のさらなる利点は、上記フィブリノゲン結合成分が、結合されたフィブリノゲンが活性化された血小板と優勢に相互作用するようにフィブリノゲンをそのネイティブなコンホメーションで維持するかまたはネイティブなコンホメーションに近いような様式で、フィブリノゲンに結合することは、必須ではないということである。これは、上記因子が創傷の部位においてのみ活性化されるからである。結果的に、フィブリノゲン結合成分の選択は、WO 2005/035002に記載される生成物1および生成物2に関するものほど重要ではない。それでもなお、上記フィブリノゲン結合成分がフィブリノゲンに結合することにより、結合されたフィブリノゲンが活性化された血小板と優勢に相互作用することが、好ましい。これは、上記因子が創傷部位から離れた部位において血栓形成を引き起こす危険性をさらに最小化する。
【0010】
一旦フィブリノゲンが、上記フィブリノゲン結合成分に結合されると、そのフィブリノゲンは、フィブリン−フィブリン橋を介した不溶性キャリアの架橋を可能にするためにトロンビンによって切断され得るべきである。
【0011】
好ましくは、上記フィブリノゲン結合成分は、10−9M〜10−6Mの間の解離定数(K)でフィブリノゲンに結合する。
【0012】
上記解離定数は、平衡状態にて測定され得る。例えば、既知の濃度の放射標識されたフィブリノゲンが、フィブリノゲン結合成分が架橋されているマイクロスフェアと一緒にインキュベートされ得る。代表的に、5μMのペプチドが、1gmのマイクロスフェアに架橋されるか、または15〜40μMのペプチドが、1gmのマイクロスフェアに架橋される。上記ペプチドに連結されたマイクロスフェアは、0.5mg/mlまで希釈され、そしてpH7.4の等張緩衝液(例えば、0.15M NaClを含む0.01M Hepes緩衝液)中で、0.05mg/mlと0.5mg/mlとの間の濃度において最大で1時間まで20℃にて放射標識されたフィブリノゲンと一緒にインキュベートされる。上記マイクロスフェア上のフィブリノゲン結合成分に結合されたフィブリノゲンは、遠心分離によって遊離のフィブリノゲンから分離され得、そして遊離のフィブリノゲンの量および結合されたフィブリノゲンの量が、測定され得る。次いで、その解離定数が、結合されたフィブリノゲンの濃度を結合されたフィブリノゲン:遊離のフィブリノゲンの濃度の比に対してプロットすることによるスキャッチャード分析(その曲線の傾斜がKを示す)によって算出され得る。
【0013】
フィブリノゲンへの上記フィブリノゲン結合前駆体(および上記不溶性キャリア)の親和性はより低いほど良いことが、認識される。これは、創傷の部位で創傷部位特異的因子によって変換されない限り、本発明の因子の血小板凝集を引き起こす危険性を最小化する。
【0014】
患者への本発明の因子の投与は、創傷部位から離れた部位における医学的に受容不可能なレベルの血液凝固を引き起こすべきではない。医学的に受容不可能なレベルの血液凝固は、深静脈血栓症(DVT)、肺塞栓症(PE)、一過性の脳虚血または心血管虚血あるいは脳卒中を含む。
【0015】
好ましくは、フィブリノゲンについての上記フィブリノゲン結合前駆体の解離定数は、1×10−6Mよりも大きい。
【0016】
上記フィブリノゲン結合前駆体は、ペプチドまたはペプチドアナログであり得るが、好ましくはペプチドである。
【0017】
本発明の好ましい実施形態において、上記フィブリノゲン結合前駆体は、ブロック成分(好ましくは、ペプチド)にアミノ酸末端にて結合されたフィブリノゲン結合ペプチド(すなわち、フィブリノゲン結合成分)を含み、上記ブロック成分は、上記フィブリノゲン結合ペプチドへのフィブリノゲンの結合をブロックまたは阻害する(すなわち、減少させる)。上記創傷部位特異的因子による上記フィブリノゲン結合前駆体の切断は、上記不溶性キャリアに結合された上記フィブリノゲン結合ペプチドを露出させる。このような実施形態において、上記ブロック成分は、切断が起きるまで、フィブリノゲン結合ペプチドのフィブリノゲンを結合する能力をブロックまたは阻害する。好ましくは、上記ブロック成分は、1〜30アミノ酸残基長のペプチドである。
【0018】
任意の適切なフィブリノゲン結合ペプチドが、使用され得る。例えば、上記ペプチドは、フィブリンに天然に結合されているフィブリノゲンの領域に結合することができる(すなわち、血小板膜糖タンパク質GPIIb〜IIIaによって)。フィブリノゲンへのフィブリンの結合は、Mosessonら、2001、Ann.N.Y.Acad.Sci.、936、11−30において考察される。フィブリノゲンへのGPIIb−IIIaの結合は、Bennett、2001、Annals of NY Acad.Sci.、936、340−354において考察される。
【0019】
上記ペプチドは、フィブリノゲンのα鎖のカルボキシ末端ドメインおよび/またはアミノ末端ドメインに結合することができる。特に、上記ペプチドは、RGD含有モチーフに対して、これらのドメイン(例えば、アミノ酸95〜98のRGDF(配列番号2)、アミノ酸572〜575のRGDS(配列番号3))の一方または両方において結合することができる。上記ペプチドは、フィブリノゲンのγ鎖のカルボキシ末端ドメイン(好ましくは、このドメインの最後の12アミノ酸(配列HHLGGAKQAGDV(配列番号4))に結合することができる。上記ペプチドは、フィブリノゲンのγ鎖のD−ドメイン(例えば、D−ドメインのβ鎖セグメント)に結合することができる。
【0020】
上記フィブリノゲン結合ペプチドは、GPIIbまたはGPIIIaのフィブリノゲン結合領域に由来する配列を含み得る。例えば、上記ペプチドは、GPIIbのアミノ酸残基294〜314の配列に対応する配列AVTDVNGDGRHDLLVGAPLYM(配列番号5)、またはフィブリノゲン結合活性を保持するそのフラグメントもしくは誘導体を含み得る。フィブリノゲン結合活性を保持することが公知であるフラグメントは、TDVNGDGRHDL(296〜306)(配列番号6)、GDGRHDLLVGAPL(300〜312)(配列番号7)、およびGAPL(配列番号8)である。TDVNGDGRHDLの適切な誘導体としては、以下が挙げられる:T(D,E)VNG(D,E)GRH(D,E)L(配列番号9);TD(V,L)NGDGRHDL(配列番号10);TDV(N,Q)GDGRHDL(配列番号11);TDVNGDG(R,K)HDL(配列番号12)。
【0021】
上記フィブリノゲン結合ペプチドは、GPIIIaの残基95〜223の配列またはフィブリノゲン結合活性を保持するそのフラグメントもしくは誘導体を含み得る。例えば、配列SVSRNRDAPEGG(配列番号13)を含む残基211〜222は、GPIIIaにおける重要なフィブリノゲン結合ドメインであると考えられる。GPIIIaの他の適切な領域は、残基109〜171および残基164〜202を含む。
【0022】
上記フィブリノゲン結合ペプチドは、トロンビンの作用によってフィブリノゲンに対して露出され、そしてフィブリンを産生する重合反応における第1工程としてフィブリノゲンに結合する残基の配列を含み得る。トロンビンは、フィブリノゲンのα鎖およびβ鎖のN末端からペプチド切断(フィブリノペプチドAおよびBを放出)して、それぞれ、配列NH−GPR−(配列番号14)およびNH−GHR−(配列番号15)を露出させる。したがって、フィブリノゲン結合ペプチドの好ましい例は、そのアミノ末端にアミノ酸配列NH−G(P,H)RX−(配列番号16)を含み、ここでXは、任意のアミノ酸であり、そして(P,H)は、プロリンまたはヒスチジンのいずれかがその位置に存在することを意味する。好ましくは、上記ペプチドは、そのアミノ末端に配列NH−GPRP−(配列番号17)を含む。
【0023】
好ましくは、上記フィブリノゲン結合ペプチドは、4〜30アミノ酸残基長、より好ましくは4〜10アミノ酸残基長である。
【0024】
上記創傷部位特異的因子は、好ましくは、フィブリノゲン結合前駆体を切断し得る、創傷の部位において産生される天然に存在する酵素である。このような実施形態において、上記フィブリノゲン結合前駆体は、上記創傷部位特異的因子によって特異的に認識される、切断部位を含むべきであり、そしてその切断部位は、上記フィブリノゲン結合ペプチドと上記ブロック成分との間に位置する。トロンビンは、好ましい創傷部位特異的因子である。しかし、他のセリンプロテアーゼ(例えば、第Xa因子またはFIXa)は、創傷部位において産生され得、そしてフィブリノゲン結合前駆体を切断するために使用され得る。トロンビンは、アルギニン残基のカルボキシ末端、そして一般にアルギニンとグリシンとの間でペプチド結合を切断することが、公知である。
【0025】
本発明の好ましい実施形態において、上記フィブリノゲン結合前駆体は、そのアミノ末端にアミノ酸配列NH−ZYXR/GPRP−(配列番号18)を含むペプチドであり、ここで「/」は、トロンビン切断部位を示し、そしてXは、任意のアミノ酸であるが、好ましくはプロリンであり、Yは、任意のアミノ酸であるが、好ましくはアスパラギン酸またはアラニンであり、そしてZは、好ましくはロイシンまたはプロリンである少なくとも1個のアミノ酸である。例は、以下である:NH−LVPR/GPRP−(配列番号19)、NH−ADPR/GPRP−(配列番号20)、NH−LDPR/GPRP−(配列番号21)、またはNH−LVPR/GPRV−(配列番号22)。
【0026】
好ましい実施形態において、本発明の因子は、上記創傷部位特異的因子に対する結合部位をさらに含む。これは、創傷部位における上記フィブリノゲン結合前駆体の上記フィブリノゲン結合成分への変換を増強すると予想される。上記結合部位は、上記フィブリノゲン結合前駆体または上記フィブリノゲン結合前駆体の部分に結合された不溶性キャリア上にあり得る。好ましい実施形態において、上記結合部位が、上記フィブリノゲン結合成分に結合されることにより、上記創傷部位特異的因子による上記フィブリノゲン結合前駆体の切断が、上記結合部位を放出させて、上記フィブリノゲン結合成分を露出させる。例えば、上記フィブリノゲン結合前駆体は、カルボキシ末端からアミノ末端の方向に、上記不溶性キャリアに固定化されたフィブリノゲン結合ペプチド、上記創傷部位特異的因子に対する切断部位、および上記創傷部位特異的因子に対する結合部位を含むペプチドを含むペプチドであり得る。代表的に、上記結合部位ペプチドのカルボキシ末端は、上記創傷部位特異的因子が上記切断部位で上記フィブリノゲン結合前駆体ペプチドを切断する場合にその創傷部位特異的因子により認識される配列によって、上記フィブリノゲン結合ペプチドのアミノ末端から分離される必要がある。例えば、上記創傷部位特異的因子がトロンビンであり、そしてフィブリノゲン結合ペプチドのアミノ末端残基がGである場合、その配列は、上で規定されるようなRXYZ(カルボキシ方向からアミノ方向において)(配列番号23)であり得る。必要に応じて、スペーサー(spacer)がまた、上記創傷部位特異的因子によって認識される切断配列と、上記結合部位ペプチドとの間に存在し得る。上記スペーサーは、上記創傷部位特異的因子が上記結合部位ペプチドに結合される場合にその創傷部位特異的因子に上記フィブリノゲン結合前駆体を切断させ得るのに十分に長いべきである。好ましくは、上記スペーサーは、1〜20アミノ酸残基長のペプチドである。
【0027】
上記創傷部位特異的因子がトロンビンである場合、本発明の因子はトロンビン結合部位をさらに含むことが、好ましい。上記トロンビン結合部位は、好ましくは、トロンビンが好ましくはKd.10−9〜10−6の親和性で結合することができるペプチドによって提供される。好ましくは、そのペプチドは、トロンビンのエキソサイト(exocite)I結合ドメインまたはエキソサイトII結合ドメインが結合することができる配列を含む。トロンビン結合ペプチドの適切な例は、PAR−1レセプターのエキソサイト結合部位に由来する配列(例えば、WEDEEKNES(配列番号24))、フィブリノゲンに由来する配列(例えば、VRPEHPAETEYDSLYPEDDL(配列番号25))、または第VIII因子に由来する配列(例えば、EEEDWD(配列番号26)またはEDSYED(配列番号27))である。あるいは、上記トロンビン結合部位は、トロンビン結合ペプチドであるヒルジンに由来し得る(例えば、NGDFEEIPEEYL(配列番号28))。上記トロンビン結合ペプチドは、別個のペプチドとして上記不溶性キャリアに(ペプチドまたは非ペプチドのいずれかである適切なリンカーによって)架橋され得る。あるいは、上記トロンビン結合ペプチドは、フィブリノゲン結合前駆体ペプチドの部分であり得る。
【0028】
好ましい実施形態において、本発明の因子は、その因子の創傷部位への局在化を促進するために、創傷部位標的成分をさらに含む。上記創傷部位標的成分は、(好ましくは、Kd 10−9〜10−6の親和性で)創傷部位に選択的に結合するべきである。好ましくは、上記創傷部位標的成分は、細胞表面タンパク質組織因子に結合することができる。血液凝固は、細胞表面タンパク質組織因子が血管損傷後に血液に曝される場合に引き起こされる。一旦曝されると、細胞表面組織因子は、セリンプロテアーゼ第VII因子の不活性な前駆体、またはその酵素的に活性な形態VIIaに、非常に高い親和性および特異性で結合する。したがって、上記創傷部位標的成分は、第VII因子または細胞表面タンパク質組織因子に結合することができるそのフラグメントもしくは誘導体、あるいは第VIIa因子または細胞表面タンパク質組織因子に結合することができるそのフラグメントもしくは誘導体を含み得る。
【0029】
上記創傷部位標的成分は、上記フィブリノゲン結合前駆体または上記フィブリノゲン結合前駆体の部分に結合された不溶性キャリアに固定化され得る。1つの実施形態において、上記創傷部位標的成分および上記フィブリノゲン結合前駆体は、別々に上記不溶性キャリアに架橋される。別の実施形態において、上記創傷部位標的成分が、上記フィブリノゲン結合成分に結合されることにより、上記創傷部位特異的因子による上記フィブリノゲン結合前駆体の切断が、創傷部位標的成分を放出させて、そのフィブリノゲン結合成分を露出させる。例えば、上記フィブリノゲン結合前駆体は、カルボキシ末端からアミノ末端の方向に、上記不溶性キャリアに固定化されたフィブリノゲン結合ペプチド、上記創傷部位特異的因子に対する切断部位、および創傷部位標的成分を含むペプチドであり得る。代表的に、上記創傷部位標的成分のカルボキシ末端は、上記創傷部位特異的因子が上記切断部位で上記フィブリノゲン結合前駆体ペプチドを切断する場合にその創傷部位特異的因子により認識される配列によって、上記フィブリノゲン結合ペプチドのアミノ末端から分離される必要がある。例えば、上記創傷部位特異的因子がトロンビンであり、そしてフィブリノゲン結合ペプチドのアミノ末端残基がGである場合、その配列は、上で規定されるようなRXYZ(カルボキシ方向からアミノ方向において)であり得る。必要に応じて、スペーサーがまた、上記創傷部位特異的因子によって認識される切断配列と、上記創傷部位標的成分との間に存在し得る。上記スペーサーは、上記創傷部位標的成分を創傷部位に選択的に結合させ得るのに十分長いべきである。好ましくは、上記スペーサーは、1〜20アミノ酸残基長のペプチドである。
【0030】
上記不溶性キャリアは、不活性で、生体適合性であるべきであり、そしてその不溶性キャリアは、本発明の因子が投与される場合に、任意の医学的に受容不可能なレベルの血液凝固をもたらすべきではない。上記不溶性キャリアは、肺毛細管床(lung capillary bed)を通した本発明の因子の透過を可能にするのに十分小さいべきである。因子が肺毛細管床を透過する能力は、Perkinsら、1997、The British Journal of Radiology、70、603の方法を使用して決定され得る。
【0031】
上記不溶性キャリアは、少数(例えば、数でその集団うちの約2%よりも少ない)が、Coulter Multizer IIなどの粒子カウンター(particle counter)によって測定された場合に、最大寸法として6μmを超えているような、最大寸法を有し得る。最大寸法として2〜4μmの大きさが、適切であり得、それは、ヒト血小板の大きさに匹敵する。
【0032】
上記不溶性キャリアは、微粒子(固体微粒子、中空微粒子、または多孔性微粒子を含む)であり得、その不溶性キャリアは、好ましくは、実質的に球状の微粒子である。上記微粒子は、任意の適切な物質(例えば、架橋されたタンパク質)から形成され得る。適切なタンパク質は、アルブミン(血清由来アルブミンまたは組換えアルブミン、ヒトアルブミンまたは非ヒトアルブミン)である。本発明において不溶性キャリアとして使用するのに適した微粒子は、ヒト血清アルブミンを、例えば、WO 92/18164におけるような周知の噴霧乾燥技術を使用して噴霧乾燥することによって形成され得る。
【0033】
キャリアとしての微粒子の使用に代わるものは、リポソーム、合成ポリマー粒子(例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸およびポリ(乳酸/グリコール酸))、または細胞膜フラグメントを含む。
【0034】
上記フィブリノゲン結合前駆体は、任意の適切な手段によって上記不溶性キャリアに結合され得るが、そのフィブリノゲン結合前駆体は、代表的に、共有結合される。好ましい共有結合の例は、ジスルフィド結合、チオエーテル結合、またはアミド結合である。適切な共有結合は、上記フィブリノゲン結合前駆体がシステインを含むペプチドであり、そして上記キャリアがチオール反応基を含む場合に、形成され得る。これは、システインの−SH基を上記キャリアのチオール反応基に連結することによって、上記ペプチドがそのキャリアに結合されることを可能にする。好ましくは、末端システイン基は、上記ペプチドと上記キャリア上のチオール反応基とを架橋するために、上記フィブリノゲン結合前駆体ペプチドに組み込まれる。あるいは、共有結合は、上記フィブリノゲン結合前駆体がマレイミド基(好ましくは、そのカルボキシ末端に(例えば、上記ペプチドのカルボキシ末端リジンに結合される))を含むペプチドであり、そして上記キャリアがスルフヒドリル(sulphydryl)基を含む場合に、形成され得る。次いで、上記ペプチドは、そのペプチドのマレイミド基と上記キャリアのスルフヒドリルとを反応させることによってそのキャリアに結合することができる。
【0035】
代表的に、スペーサーは、上記フィブリノゲン結合成分のフィブリノゲン−結合活性が上記不溶性キャリアによって不利な影響を受けないことを確保するために、そのフィブリノゲン結合成分とその不溶性キャリアとの間に必要とされる。例えば、上記不溶性キャリアの表面は、上記フィブリノゲン結合成分へのフィブリノゲンの結合を、その結合がその不溶性キャリアの表面から十分な距離でない限り、立体的に障害し得る。
【0036】
上記フィブリノゲン結合前駆体がフィブリノゲン結合ペプチドを含むペプチドであり、そしてその前駆体が末端アミノ酸残基によって上記不溶性キャリアに結合される場合、スペーサー配列は、好ましくは、その前駆体の末端アミノ酸残基とフィブリノゲン結合ペプチドとの間に存在する。上記スペーサー配列は、例えば、1〜20アミノ酸残基長(好ましくは、5〜20アミノ酸残基長)であり得る。スペーサー配列GGGGGG(配列番号29)またはGGGGG(配列番号30)が、好ましい。
【0037】
多数のフィブリノゲン結合前駆体が、上記不溶性キャリアに結合することができる。血小板は、代表的に、50,000〜100,000のGPIIb〜IIIa表面タンパク質を有する。上記不溶性キャリアに結合された同様の数のフィブリノゲン結合前駆体が、適当であり得るが、約1,000〜10,000が、好ましい。
【0038】
本発明にしたがって、本発明の因子と、薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤、または希釈剤とを含む薬学的組成物もまた、提供される。
【0039】
本発明の因子は、生理学的pHの等張緩衝液中の懸濁物において処方され得る。マンニトール、グルコース、ヒトアルブミン、またはトレハロース(trahalose)を含む緩衝液が、使用され得る。本発明の因子は、使用の直前に再構成され得る凍結乾燥された投薬形態を産生するために、凍結乾燥され得る。
【0040】
本発明の因子は、代表的に、無菌的に産生される。好ましくは、本発明の因子は、さらに、末期の滅菌処理に供される。適切な処理の例は、適切な温度(例えば、60℃で10時間)にて液体懸濁物を加熱すること、または121℃で15分間にわたるオートクレーブにおける蒸気滅菌である。あるいは、本発明の因子は、最初に凍結乾燥され、次いで、例えば、160℃に少なくとも2時間、または80℃に72時間にわたって加熱され得る。あるいは、上記加熱処理工程は、例えば、コバルト60供給源を使用した25〜35kGyへの曝露によるγ照射によって置換され得る。
【0041】
医薬として使用するための本発明の因子もまた、本発明にしたがって提供される。
【0042】
血小板減少症または血小板無力症を予防、処置、または改善するための医薬の製造における本発明の因子の使用が、本発明にしたがってさらに提供される。
【0043】
血小板減少症または血小板無力症を予防、処置、または改善するための方法が、本発明にしたがってさらに提供され、この方法は、本発明の因子を、このような処置の必要がある被験体に投与する工程を包含する。
【0044】
血小板減少症は、血球を計数することによって診断される。正常な血小板数は、150×10/l〜400×10/lである。この範囲を下回ると、主に止血が、損なわれ、そして出血時間が、延長される。しかし、生命を脅かす自発的な出血は、通常、血小板数が10×10/lより下に下降した場合にのみ生じる。本発明の方法は、被験体が、400×10/lを下回る血小板数、好ましくは150×10/lを下回る血小板数、より好ましくは10×10/lを下回る血小板数を有する場合に、使用され得る。
【0045】
血小板減少症の最も一般的な原因は、血液癌においてか、または細胞傷害性の化学療法または放射線療法後におけるような、骨髄からの血小板産生の不全である。
【0046】
血小板減少症は、増大した血小板破壊を引き起こす状態から生じ得る。これらとしては、免疫性血小板減少性紫斑病、播種性血管内凝固、ヘパリン誘発性血小板減少症、他の薬物誘発性血小板減少症、全身性エリテマトーデス、HIV−1関連血小板減少症、血栓性血小板減少症性紫斑病/溶血性尿毒症症候群、分類不可能型免疫不全、および輸血後紫斑病が挙げられる。
【0047】
血小板減少症は、減少した血小板産生を引き起こす状態から生じ得る。これらとしては、橈骨欠損に伴う血小板減少症(TAR)症候群、無巨核球性血小板減少症、巨大血小板症候群(例えば、ベルナール−スーリエ症候群、メイ−ヘグリン異常、Fechtner症候群、セバスチャン(Sebastian)症候群、エプスタイン症候群、モントリオール血小板症候群)、およびヴィスコット−オールドリッチ症候群が挙げられる。
【0048】
血小板減少症は、腐骨形成(例えば、脾機能亢進症またはNasabach−Merritt症候群)または増大した血小板破壊を引き起こす状態および血液希釈(例えば、体外灌流)から生じ得る。
【0049】
血小板無力症(後天性血小板機能欠損)は、尿毒症、骨髄増殖性障害(例えば、本態性血小板血症、真性赤血球増加症、慢性骨髄性白血病、および原因不明性骨髄様化生)、急性白血病および骨髄異形成症候群、異常タンパク血症、体外灌流、後天性フォンウィルブラント病、後天性貯蔵プール欠乏症、抗血小板抗体、肝疾患から生じ得る。
【0050】
血小板無力症(遺伝性血小板機能欠損)は、血小板接着の状態(例えば、ベルナール−スーリエ症候群)、アゴニストレセプターの状態(例えば、インテグリンα2β1(コラーゲンレセプター)欠損、P2Y12(ADPレセプター)欠損またはトロンボキサンAレセプター欠損)、シグナリング経路の状態(例えば、Gαq欠損、ホスホリパーゼC−β2欠損、シクロオキシゲナーゼ欠損、トロンボキサンシンターゼ欠損、リポキシゲナーゼ欠損またはカルシウム動員の欠損)、分泌の状態(例えば、貯蔵プール疾患、ヘルマンスキー−パラドック症候群、チェディアック−東症候群、灰色血小板症候群、ケベック(Quebec)症候群およびヴィスコット−オールドリッチ症候群)、凝集の状態(例えば、グランツマン血小板無力症または先天性無フィブリノゲン血症)および血小板−血液凝固タンパク質相互作用の状態(例えば、スコット(Scott)症候群)から生じ得る。
【0051】
本発明の方法は、上記の状態のいずれかを予防、処置、または改善するために、使用され得る。
【0052】
本発明の方法はまた、冠動脈バイパス手術および/または血液透析における体外循環の間に生じるような患者の血小板への持続性の機械的損傷を有する患者を処置するために、使用され得る。
【0053】
本発明の因子の適切な総投薬量は、タンパク質ベースのキャリアの0.1〜5gタンパク質、または0.1〜5gタンパク質当量の範囲にあると予想される。
【0054】
また、本発明にしたがって、本発明の因子の部分として使用するためのフィブリノゲン結合前駆体が、提供され、ここで上記フィブリノゲン結合前駆体は、創傷部位特異的因子によってフィブリノゲン結合成分に変換されることができ、上記フィブリノゲン結合成分は、上記フィブリノゲン結合前駆体ペプチドと比較して、フィブリノゲンへの結合能力が増大し、上記フィブリノゲン結合前駆体ペプチドは、フィブリノゲンではない。好ましくは、上記フィブリノゲン結合前駆体は、ペプチドである。特に好ましい実施形態において、上記フィブリノゲン結合前駆体ペプチドは、配列番号32〜35、または配列番号38〜41のうちのいずれかのアミノ酸配列を含む。
【0055】
本発明の因子の部分として使用するためのフィブリノゲン結合前駆体を同定する方法もまた、本発明にしたがって提供され、この方法は:
i)創傷部位特異的因子と、不溶性キャリアに結合された標識された候補フィブリノゲン結合前駆体とを、上記創傷部位特異的因子による既知のフィブリノゲン結合前駆体のフィブリノゲン結合成分への変換を許容する条件下で接触させる工程;
ii)上記創傷部位特異的因子とのインキュベーションの前後において、上記不溶性キャリア上の標識の量を決定する工程;および
iii)上記創傷部位特異的因子とのインキュベーション後における上記不溶性キャリア上の標識の量が、上記創傷部位特異的因子とのインキュベーション前における上記不溶性キャリア上の標識の量よりも少ない場合に、上記候補フィブリノゲン結合前駆体をフィブリノゲン結合前駆体として同定する工程;
を包含する。
【0056】
このような方法の例は、下で実施例11に記載される。
【0057】
上記方法は、上記創傷部位特異的因子とのインキュベーション前後において、上記不溶性キャリアへのフィブリノゲンの結合を決定する工程、および工程(iii)において、上記創傷部位特異的因子とのインキュベーション後における上記不溶性キャリア上の標識の量が上記創傷部位特異的因子とのインキュベーション前における上記不溶性キャリア上の標識の量よりも少なくありかつ上記不溶性キャリアへのフィブリノゲンの結合が上記創傷部位特異的因子とのインキュベーション後に増大する場合に、上記候補フィブリノゲン結合前駆体をフィブリノゲン結合前駆体として同定する工程をさらに包含し得る。
【0058】
本発明の因子の部分として使用するためのフィブリノゲン結合前駆体を同定する方法が、本発明にしたがってさらに提供され、この方法は:
i)創傷部位特異的因子と、不溶性キャリアに結合された候補フィブリノゲン結合前駆体とを、上記創傷部位特異的因子によるフィブリノゲン結合前駆体のフィブリノゲン結合成分への変換を許容する条件下で接触させる工程;
ii)上記候補フィブリノゲン結合前駆体が、上記創傷部位特異的因子と接触した後に、クロット形成、血小板凝集、または上記不溶性キャリアの凝集を促進するか否かを決定する工程;および
iii)クロット形成が促進される場合に、上記候補フィブリノゲン結合前駆体をフィブリノゲン結合前駆体として同定する工程;
を包含する。
【0059】
候補フィブリノゲン結合前駆体が上記創傷部位特異的因子トロンビンと接触した後に、クロット形成、血小板凝集、または上記不溶性キャリアの凝集を促進するか否かを決定するための適切な方法は、下で実施例7〜10に記載される。
【0060】
本発明の因子は一旦投与されると(創傷の部位での創傷部位特異的因子によるその変換を除いて)分解されない(またはゆっくりとしか分解されない)ことが一般に重要であることが、認識される。好ましくは、血中での本発明の因子の循環時間は、本発明の因子の変換をもたらす創傷部位を全く有さない被験体に一旦投与されると、1時間より大きい。インビトロで本発明の因子の安定性を決定するための適切な方法は、下で実施例12に記載される。本発明の因子は、実施例12に記載される試験の条件下で、少なくとも1時間にわたって安定であるべきである。
【0061】
WO 2005/035002の実施例1〜4は、ペプチドに連結されたマイクロスフェアを産生する方法、ペプチドに連結されたマイクロスフェアへのフィブリノゲンの結合をアッセイする方法、改変型凝集アッセイ、インビトロ活性アッセイ、およびインビボ評価モデルを記載する。対応する方法は本発明の因子を同定、産生および試験するために使用され得ることが、理解される。
【0062】
本発明の好ましい実施形態は、単なる例として、添付の図面に関連して本明細書に記載される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
本発明の因子の第1の好ましい実施形態は、図1(a)において概略的に示される。その因子は、ヒト血清アルブミン(HSA)マイクロスフェアに結合されたフィブリノゲン結合前駆体ペプチドを含む。上記フィブリノゲン結合前駆体ペプチドは、(そのカルボキシ末端からそのアミノ末端に向かって)以下を含む:上記HSAマイクロスフェアに架橋されるカルボキシ末端システイン残基;第1のスペーサー配列(スペーサー1);フィブリノゲン結合ペプチド;トロンビン切断配列(「トロンビン切断配列」と表示された図中の囲みは、トロンビンが上記フィブリノゲン結合前駆体ペプチドを切断し得る部位(すなわち、トロンビン切断部位)に対してアミノ末端である配列を示す);第2のスペーサー配列(スペーサー2);およびトロンビン結合ペプチド。
【0064】
上記フィブリノゲン結合ペプチドのアミノ末端側にある上記フィブリノゲン結合前駆体ペプチドの部分(すなわち、トロンビン切断配列−スペーサー2−トロンビン結合ペプチド部分)は、ブロック成分を形成する。上記ブロック成分は、上記フィブリノゲン結合ペプチドへのフィブリノゲンの結合をブロックまたは阻害する。創傷部位で産生されたトロンビンは、上記トロンビン結合ペプチドに結合し、そしてそのフィブリノゲン結合ペプチドのアミノ末端にて上記フィブリノゲン結合前駆体ペプチドを切断し得る(図1(b)に示される通り)。上記フィブリノゲン結合前駆体ペプチドの切断は、上記フィブリノゲン結合ペプチドから上記ブロック成分を放出させ、それによってそのフィブリノゲン結合ペプチドを露出させ、そしてそのフィブリノゲン結合ペプチドへのフィブリノゲンの結合を可能にする(図1(c))。
【0065】
上記第1のスペーサーは、上記フィブリノゲン結合ペプチドを、一旦そのフィブリノゲン結合ペプチドが露出されるとマイクロスフェアがそのフィブリノゲン結合ペプチドへのフィブリノゲンの結合を妨げないように、上記HSAマイクロスフェアから間隔を空けて配置する。上記第2のスペーサーは、トロンビンが上記トロンビン結合ペプチドに結合される場合に上記トロンビン切断部位を切断するように、トロンビンを最適に配向させる。
【0066】
本発明の因子の第2の好ましい実施形態は、図2(a)において概略的に示される。その因子は、HSAマイクロスフェアに架橋された以下の2つの別個のペプチドを含む:フィブリノゲン結合前駆体ペプチド、およびトロンビン結合ペプチド。上記フィブリノゲン結合前駆体ペプチドは、(そのカルボキシ末端からそのアミノ末端に向かって)以下を含む:上記HSAマイクロスフェアに架橋されるカルボキシ末端システイン残基;第1のスペーサー配列(スペーサー1);フィブリノゲン結合ペプチド;およびトロンビン切断配列(「トロンビン切断配列」と表示された図中の囲みは、トロンビンが上記フィブリノゲン結合前駆体ペプチドを切断し得る部位(すなわち、トロンビン切断部位)に対してアミノ末端である配列を示す)。上記フィブリノゲン結合ペプチドのアミノ末端側にある上記フィブリノゲン結合前駆体ペプチドの部分(すなわち、上記トロンビン切断配列)は、ブロック成分を形成する。上記ブロック成分は、上記フィブリノゲン結合ペプチドへのフィブリノゲンの結合をブロックまたは阻害する。
【0067】
上記トロンビン結合ペプチドは、そのカルボキシ末端において第2のスペーサー配列(スペーサー2)に連結される。上記第2のスペーサー配列のカルボキシ末端は、上記HSAマイクロスフェアに架橋されるシステイン残基に連結される。
【0068】
創傷部位で産生されたトロンビンは、上記トロンビン結合ペプチドに結合し、そして上記トロンビン切断部位にてそのフィブリノゲン結合前駆体ペプチドを切断する。上記フィブリノゲン結合前駆体ペプチドの切断は、上記フィブリノゲン結合ペプチドから上記ブロック成分を放出させ、それによってそのフィブリノゲン結合ペプチドを露出させ、そしてそのフィブリノゲン結合ペプチドへのフィブリノゲンの結合を可能にする(図2(b))。
【0069】
本発明の因子の第3の好ましい実施形態は、図3aにおいて概略的に示される。その因子は、HSAマイクロスフェアに架橋された以下の3つの別個のペプチドを含む:フィブリノゲン結合前駆体ペプチド、トロンビン結合ペプチド、および創傷部位標的ペプチド。上記フィブリノゲン結合前駆体ペプチドおよび上記トロンビン結合ペプチドは、第2の好ましい実施形態について上で記載される通りである。上記創傷部位標的ペプチドは、そのカルボキシ末端において第3のスペーサー配列(スペーサー3)に連結される。上記第3のスペーサー配列のカルボキシ末端は、上記HSAマイクロスフェアに架橋されるシステイン残基に連結される。上記創傷部位標的ペプチドは、創傷部位(例えば、細胞表面タンパク質組織因子)に選択的に結合することができる。
【0070】
上記創傷部位標的ペプチドは、本発明の因子の創傷部位への局在化を促進する。創傷部位で産生されたトロンビンは、上記トロンビン結合ペプチドに結合し、そして上記トロンビン切断部位にて上記フィブリノゲン結合前駆体ペプチドを切断する。上記フィブリノゲン結合前駆体ペプチドの切断は、上記フィブリノゲン結合ペプチドから上記ブロック成分を放出させ、それによってそのフィブリノゲン結合ペプチドを露出させ、そしてそのフィブリノゲン結合ペプチドへのフィブリノゲンの結合を可能にする(図3a)。
【0071】
上記第3のスペーサー配列は、上記創傷部位標的ペプチドを、マイクロスフェアが創傷部位へのその創傷部位標的ペプチドの結合を妨げないように、上記HSAマイクロスフェアから間隔を空けて配置する。
【0072】
本発明の因子の第4の好ましい実施形態は、図3bにおいて概略的に示される。その因子は、ヒト血清アルブミン(HSA)マイクロスフェアに結合されたフィブリノゲン結合前駆体ペプチドを含む。上記フィブリノゲン結合前駆体ペプチドは、(そのカルボキシ末端からそのアミノ末端に向かって)以下を含む:上記HSAマイクロスフェアに架橋されるカルボキシ末端システイン残基;第1のスペーサー配列(スペーサー1);フィブリノゲン結合ペプチド;およびトロンビン切断配列(「トロンビン切断配列」と表示された図中の囲みは、トロンビンが上記フィブリノゲン結合前駆体ペプチドを切断し得る部位(すなわち、トロンビン切断部位)に対してアミノ末端である配列を示す)。
【0073】
上記フィブリノゲン結合ペプチドのアミノ末端側にある上記フィブリノゲン結合前駆体ペプチドの部分(すなわち、上記トロンビン切断配列)は、ブロック成分を形成する。上記ブロック成分は、上記フィブリノゲン結合ペプチドへのフィブリノゲンの結合をブロックまたは阻害する。創傷部位で産生されたトロンビンは、上記フィブリノゲン結合ペプチドのアミノ末端において上記フィブリノゲン結合前駆体ペプチドを切断し得る(図3bに示される通り)。上記フィブリノゲン結合前駆体ペプチドの切断は、上記フィブリノゲン結合ペプチドから上記ブロック成分を放出させ、それによってそのフィブリノゲン結合ペプチドを露出させ、そしてそのフィブリノゲン結合ペプチドへのフィブリノゲンの結合を可能にする(図3bの下部に示される通り)。
【0074】
上に記載され、そして図1〜3に示される本発明の因子の4つの好ましい実施形態の適切なペプチド配列の例は、以下である:
スペーサー1:NH−GGGGGG−COOH(配列番号29);
フィブリノゲン結合ペプチド:NH−GPRP−COOH(配列番号17);
トロンビン切断配列:NH−LVPR−COOH(配列番号31);
スペーサー2:トロンビンが上記トロンビン結合ペプチドに結合される場合に上記トロンビン切断部位を切断するようにトロンビンを最適に配向させるペプチド配列;
トロンビン結合ペプチド:トロンビンを結合することができる分子(例えば、PAR−1)上のトロンビンエキソサイト1結合部位に由来するペプチド配列(すなわち、WEDEEKNES(配列番号24));
創傷部位標的ペプチド:第VII因子またはそのフラグメントもしくは誘導体(例えば、組換え第VIIa因子);
スペーサー3:NH−GGGGGG−COOH(配列番号29)。
【0075】
上に記載された好ましい実施形態において、上記ペプチドは、上記HSAマイクロスフェアに架橋されるカルボキシ末端システイン残基を含む。上記マイクロスフェアへの任意の適切な共有結合は、例えば、そのペプチドに結合されたマレイミド基とそのマイクロスフェアのスルフヒドリル基との反応から生じる共有結合の代わりに使用され得ることが、認識される。
【0076】
上に記載された好ましい実施形態(および下で実施例において記載された実施形態のいくつか)は、マイクロスフェアを含む。他の微粒子または適切な不溶性キャリアはマイクロスフェアの代わりに使用され得ることが、認識される。
【実施例】
【0077】
(実施例1)
(本発明の因子の例:)
【0078】
【化2】

ここで:
「/」は、トロンビン切断部位を示し;
【0079】
【化3】

は、アルブミンマイクロスフェアを示し;そして
【0080】
【化4】

は、上記ペプチド配列の末端システインと上記アルブミンマイクロスフェアとの間の共有結合を示す。
【0081】
この実施例において、上記アルブミンマイクロスフェアの表面を、上記ペプチドのカルボキシ末端システイン残基の−SH基との反応のための上記キャリア上のチオール反応基を提供するために、ジチオ−ビス−(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)によって改変した(下の実施例2を参照のこと)。
【0082】
(実施例2)
(マイクロスフェアに結合されたフィブリノゲン結合前駆体ペプチド(ペプチドA)およびフィブリノゲン結合ペプチド(ペプチドB)の調製)
N−LVPRGPRPG6C(ペプチドA)(配列番号36)およびHN−GPRPG6C(ペプチドB)(配列番号37)を、それぞれ、合成し、そして以下の通りに、ヒトアルブミンから構成されたマイクロスフェアに別個に架橋した:
25mgのヒトアルブミンから構成されたマイクロスフェアを、10mg/mlの最終濃度にて0.02M Tris(pH7.5)に懸濁した;
4mg/mlの濃度にて0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)に溶解した75μlのジチオ−ビス−(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)を、上記マイクロスフェアに添加し、そしてDynal撹拌機において2時間にわたって混合した;
洗浄を改善するために混合した後、さらなる2.5mlの0.02M Tris(pH7.5)を、チューブに添加し、そして倒置によって簡単に混合した;
上記マイクロスフェアを、1800gで15分間にわたる遠心分離によって上清から分離した;
上記マイクロスフェアを、2.5mlの0.02M Tris(pH7.5)に再懸濁した;
ペプチドAまたはペプチドBを、10mg/mlの濃度にて0.02M Tris(pH7.5)に溶解した。10mg/mlにおける100μlのペプチドを、上記マイクロスフェアに添加し、そしてDynal撹拌機において室温にて6時間にわたって混合した;
2.5mlの0.02M Tris(pH7.5)を、添加し、そして倒置によって簡単に混合した;
上記マイクロスフェアを、1800gで15分間にわたる遠心分離によって上清から分離した;
上記マイクロスフェアを、さらなる5.0mlの0.02M Tris(pH7.5)によって洗浄し、そして記載したような遠心分離によって分離した;
上記マイクロスフェアを、5%ヒト血清アルブミンを含む2.5mlの0.02M Trisに再懸濁した;
上記マイクロスフェアを、200μlのアリコートに充填し、そして−70℃にて保存した。
【0083】
(実施例3)
(トロンビンの非存在下(i)および存在下(ii)における、マイクロスフェア(M/S)に連結されたフィブリノゲン結合前駆体(ペプチドA)およびマイクロスフェア(M/S)に連結されたフィブリノゲン結合ペプチド(ペプチドB)へのフィブリノゲンの結合の測定)
ペプチドAに連結されたマイクロスフェア、およびペプチドBに連結されたマイクロスフェアを、実施例2に記載したように調製した、そして下の表に示したように、緩衝液またはトロンビンと一緒に30分間にわたって混合した:
【0084】
【表1】

次いで、上記マイクロスフェアを、1800gにて10分間遠心分離することによって回収した。上記マイクロスフェアを、100μlのTrisに再懸濁して、5mg/mlの最終濃度を得た。10μlのヒルジン 100U/mlを、残余のトロンビンを阻害するために添加した。
【0085】
濃度0.1mg/mlにおける180μlのフィブリノゲンを、20μlのペプチドAに連結されたマイクロスフェアまたは20μlのペプチドBに連結されたマイクロスフェアに添加し、そして1時間にわたって混合した。
【0086】
フィブリノゲンの結合を、以下の通りに測定した。5μlのマイクロスフェアを、50μlのHEPES緩衝液(pH7.5)に添加した。ヒトフィブリノゲンへの1μlのFITC標識した抗体を、添加し、そして20分間にわたって混合した。その反応を、0.2%のホルミル食塩水(Formyl saline)の添加によって停止させた。結合した蛍光を、Beckman Coulter XL MCL Flow Cytometerを使用して測定した。
【0087】
その結果を、図4に示す。ペプチドAマイクロスフェアをフィブリノゲンと一緒に混合した場合、予めトロンビンと一緒にインキュベートされなかったペプチドAマイクロスフェアは、少量のフィブリノゲン(6%)のみを結合した。ペプチドAに結合されたマイクロスフェアを最初にトロンビンと一緒にインキュベートし、次いでフィブリノゲンと一緒に混合した場合、86%が、フィブリノゲンを結合した。
【0088】
ブロック配列を伴わないフィブリノゲン結合ペプチドであったペプチドBは、トロンビンの存在下および非存在下でフィブリノゲンを結合した。
【0089】
(実施例4)
(本発明の因子のさらなる例:)
【0090】
【化5】

ここで:
「/」は、トロンビン切断部位を示し;
【0091】
【化6】

は、表面スルフヒドリル基を有するアルブミン微粒子を示し;そして
【0092】
【化7】

は、上記ペプチド配列の末端マレイミドと上記アルブミン微粒子のスルフヒドリル基との反応によって形成されたチオエーテル共有結合を示す。
【0093】
(実施例5)
(マレイミド連結化学を使用した微粒子へのフィブリノゲン結合前駆体ペプチド(ペプチドC)の連結)
C末端上にマレイミド(MAL)部分を有する以下のペプチド:HN−LVPRGPRPG5K−MAL(ペプチドC)(配列番号42)を、合成し、そして以下の通りに、ヒトアルブミンから構成された微粒子に架橋した:
ペプチド結合体化の前に、上記微粒子のスルフヒドリル含量を、改変型Ellmansアッセイによって以下の通りに決定した:ジチオ−ビス−(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)を、2mM EDTAを含む0.1Mリン酸Na緩衝液(pH8)に4mg/mlの濃度で溶解した。20mg/ml(0.2ml)に調製した上記微粒子サンプルを、2mM EDTAを含む0.79mlの0.1Mリン酸Na緩衝液(pH8)と一緒に混合し、そして10μLのDTNBストックを、その反応に添加した。コントロールブランクを、微粒子を含まない0.2mlの緩衝液を用いて調製した。上記反応を、ターンテーブル上で20分間にわたって混合し、次いで遠心分離(1800gにて15分間)し、そしてその上清を、シリンジによって回収し、次いで0.22μmのシリンジフィルターを通して濾過した。その濾液を、412nmにて分光光度計を使用して分析し、そしてスルフヒドリル基の量を、13600のモル吸光係数を使用して決定した。上記チオール含量は、代表的に、1モルのアルブミンタンパク質あたり0.6モル〜0.3モルの間のチオールであった。
【0094】
微粒子へのマレイミド改変ペプチドの結合体化のために;62.5mgのヒト血清アルブミン微粒子を、ターンテーブル上で10分間にわたって混合し、次いで10分間にわたって超音波処理することによって、2mM EDTAを含む2.4mlの0.1M Tris/HCl(pH7)に分散させた。
【0095】
ペプチドCを、10mM リン酸Na緩衝液(pH6.5)に10mg/mlで溶解した。ペプチドストック(100μl)を、上記微粒子に添加し、そしてDynal撹拌機において室温にて1時間にわたって混合した。その反応を、等量の0.02M Tris(pH7.5)に希釈し、そして倒置によって簡単に混合した。上記微粒子を、1800gにて15分間の遠心分離によって上清から分離した。
【0096】
上記微粒子を、さらなる5.0mlの0.02M Tris/HCl(pH7.5)によって洗浄し、そして記載したような遠心分離によって分離した;
上記微粒子を、2%マンニトールを含む2.5mlの0.02M Tris(pH7.5)に再懸濁した。上記微粒子を、200μlのアリコートに充填し、そして−70℃にて保存した。
【0097】
(実施例6)
(トロンビンを伴うかまたは伴わないインキュベーション後における微粒子へのフィブリノゲンの結合の測定)
微粒子を、実施例5に記載した通りに、ペプチドCによって改変した。微粒子を、フィブリノゲン結合配列がトロンビンによって露出されることを確認するために、トロンビンへの曝露後にフィブリノゲン溶液と一緒に混合した。
【0098】
0.7mg/ml、5mg/mlまたは10mg/mlの微粒子を、37℃にて0〜0.64U/mLのトロンビンと一緒にインキュベートし、2分後に、そのトロンビンを、10U/mLの最終濃度におけるヒルジン(Sigma)の添加によって阻害した。微粒子を、9300gにて5分間遠心分離し、そしてHBSに再懸濁して、14mg/mLを得た。上記微粒子を、0.1mg/mLのヒトフィブリノゲン(Scottish National Blood Transfusion Service:SNBTS)において10倍に希釈し、そして室温にて1時間インキュベートした。結合したフィブリノゲンの量を、ポリクローナル抗体ウサギ抗ヒトフィブリノゲン−FITC(Dako Cytomation)を用いたフローサイトメトリーによって決定した。これらの結果は、図5において、トロンビンを伴わずにペプチドCによって改変した上記微粒子は、フィブリノゲンに結合しないが、トロンビン濃度を上昇させることによって、微粒子に結合したフィブリノゲンの量が試験した微粒子の全3種の濃度において増加したことを示す。ペプチドCによって改変しなかった微粒子は、トロンビン曝露を伴うかまたは伴わないフィブリノゲンを結合しない。
【0099】
(実施例7)
(トロンビンに応答したフィブリノゲンにおけるクロット形成)
クロット形成を、以下の通りに、Platelet Aggregation Profiler(登録商標)PAP−4(BioData Corporation、PA)を使用して濁度の減少によって決定した;
ペプチドCに連結された微粒子を、実施例5に記載した通りに、Hepes緩衝化生理食塩水(HBS)中の2.5mg/mlのストック濃度で調製した。ベースラインの光学濃度を、HBS中に3mg/mlのフィブリノゲン(SNBTS)溶液を用いて設定した。フィブリノゲン溶液(205μl)を、37℃まで1分間にわたって予め温め、その後、微粒子(25μl)を、900rpmに設定した撹拌子の速度を伴って添加した。2分後に、20μLのヒトトロンビン(Sigma)ストック溶液を、添加して、0.032U/mlの最終濃度を得た。代表的な凝集プロフィールを、図6に示す。トロンビンの非存在下において、ブランクもペプチドCによって改変した微粒子も、クロットを形成しなかった。2分におけるトロンビンの添加後に、その溶液の濁度は、コントロールの未改変微粒子と比較して、ペプチドC改変微粒子を含む溶液についてより迅速に低下し、これは、クロット形成を示す。
【0100】
(実施例8)
(ペプチドC改変微粒子をトロンビンと一緒にプレインキュベートした後の、トロンビンに応答した血漿におけるクロット形成)
クロット形成を、緩衝液中でトロンビンに対して予め曝露したペプチドC改変微粒子を用いて血漿においてモニタリングした。血漿中の微粒子クロット形成を、上に記載した通りに、Platelet Aggregation Profiler(登録商標)PAP−4(BioData Corporation、PA)を使用して濁度計で決定した。
【0101】
ペプチドC改変微粒子を、実施例5に記載した通りに、HBS中の2.5mg/mlのストック濃度で調製した。ペプチドC改変微粒子を、0.6U/mlのトロンビンと一緒に1時間にわたってプレインキュベートし、次いでヒルジン(10U/ml)を、トロンビン活性を阻害するために添加した。その反応を、9300gにて5分間遠心分離し、次いでHBSに2.5mg/mlで再懸濁した。ベースラインの光学濃度を、クエン酸塩添加血から調製した血漿を用いて設定した。血漿サンプル(205μl)を、37℃まで1分間にわたって予め温め、その後、微粒子(25μl)を、900rpmに設定した撹拌子の速度を伴って添加した。2分後に、20uLのトロンビンストック溶液を、その反応に添加して、0.25U/mlの最終トロンビン濃度を得た。代表的な凝集プロフィールを、図7に示す。この図は、ペプチドC微粒子を血漿を伴うインキュベーションの前および間の両方においてトロンビンに曝露する場合に、クロット形成が生じることを示す。トロンビン曝露を伴わない場合、上記ペプチドC改変微粒子は、20分間を超えてクロット形成をもたらさなかった。
【0102】
(実施例9)
(トロンビンに応答した血漿におけるクロット形成)
血漿中の微粒子クロット形成を、上に記載した通りに、Platelet Aggregation Profiler(登録商標)PAP−4(BioData Corporation、PA)を使用して濁度計で決定した。
【0103】
ペプチドC改変微粒子を、実施例5に記載した通りに、HBS中の2.5mg/mlのストック濃度で調製した。ベースラインの光学濃度を、クエン酸塩添加血から調製した血漿を用いて設定した。血漿サンプル(205μl)を、37℃まで1分間にわたって予め温め、その後、微粒子(25μl)を、900rpmに設定した撹拌子の速度を伴って添加した。2分後に、20uLのヒトトロンビン(Sigma)ストック溶液を、その反応に添加して、0.25U/mlの最終トロンビン濃度を得た。代表的な凝集プロフィールを、図8に示す。これらの結果は、トロンビンの添加を伴わない血漿において、未改変微粒子およびペプチドC改変微粒子の両方がクロットを形成しなかったことを示す。2分の時点におけるトロンビンの添加によって、ペプチドCによって改変した微粒子は、未改変のコントロールブランク微粒子と比較して、血漿における加速したクロット形成を示した。
【0104】
(実施例10)
(ペプチドC改変微粒子の存在下における血小板凝集)
ペプチドC改変微粒子の存在下における血小板凝集を、Multiplateletインピーダンス血小板凝集計(Multiplate(登録商標)Dynabyte medical、Munich)を使用して測定した。
【0105】
ペプチドC改変微粒子を、実施例5に記載した通りに、HBS中の2.5mg/mlのストック濃度で調製した。上記微粒子(0.75mg)を、HBS中の1U/mlのヒトトロンビン(Sigma)(総容量0.3ml)と一緒に1時間プレインキュベートした。トロンビン活性を阻害するために、ヒルジン(Sigma)を、5U/mlの最終濃度で添加した。その反応を、9300gにて5分間遠心分離し、そして上清を、廃棄した。上記微粒子を、2.5mg/mlの濃度までHBSに再懸濁した。
【0106】
血小板減少血液を、以下の通りに、クエン酸塩添加血から調製した:
血小板を、全血を163gにて20分間遠心分離し、そして血小板が豊富な上層を廃棄することによって除去した。上部の血小板が豊富な層を、全血を1800gにて30分間遠心分離した後に上清として単離した血漿によって置換した。
【0107】
電気インピーダンスをモニタリングするために;それぞれの電極ウェルについて、0.3mlの血液を、37℃にて微粒子(0.15mg)および生理食塩水と一緒にインキュベートして、0.6mlの総容量を得た。凝集を、30μlの活性化剤であるアデノシン二リン酸溶液(0.1mM)の添加直後に記録した。凝集を、6分間にわたって記録した;図9における結果は、最終的な凝集の任意の単位で示す。これらの結果は、微粒子を伴わないTCBまたはブランク微粒子と比較して、ペプチドC改変微粒子の存在下の活性化TCBにおけるより大きい電気インピーダンス(すなわち、最終的な凝集よりも大きい)を示す。
【0108】
(実施例11)
(候補フィブリノゲン結合前駆体ペプチドの加水分解の決定)
候補ペプチド(そのペプチドのN末端に放射標識分子、色素分子または蛍光発生分子を有する)を、合成する。上記ペプチドを、実施例2または5に記載した方法を使用して不溶性キャリアに連結する。そのペプチド改変キャリアを、緩衝液において純粋なプロテアーゼと一緒にインキュベートする。上記改変キャリア上に残存する標識の量は、そのペプチドの加水分解速度を決定することを可能にする。
【0109】
例えば、5,6−カルボキシフルオレセイン標識したペプチドである5,6−FAM−LVPRGPRPGGGGG−Cys(配列番号43)。その標識したペプチドを、ペプチド結合を容易にするために、DNTBを使用し、実施例2に記載した方法を使用してアルブミン微粒子に結合体化する。ペプチド加水分解の速度を、フローサイトメーターを使用して、上記微粒子上に残存する結合したフルオレセインの量によって決定する。
【0110】
上記標識したペプチドと結合体化した微粒子を、pH7.4にて種々の濃度のヒトトロンビン(Sigma)と一緒に混合し、そして37℃にて種々の期間にわたってインキュベートする。次いで、その反応を、トロンビンの単位に対して5倍過剰なヒルジンの添加によって停止させ、そしてその反応を、フローサイトメトリーによって分析するために、適切に希釈する。この手順は、アルブミン微粒子に結合体化した場合にトロンビンによって加水分解され得るペプチドの同定を可能にする。同等の手順はマイクロスフェアに結合体化された場合に他のプロテアーゼによって加水分解され得るペプチドを同定するために使用され得ることが、認識される。
【0111】
(実施例12)
(フィブリノゲン結合前駆体ペプチドの安定性の決定)
N末端標識を有する候補フィブリノゲン結合前駆体ペプチドを、合成し、そして実施例11に記載した通りに、不溶性キャリアに結合体化する。上記標識したペプチドに連結された微粒子を、生物学的サンプル(例えば、全血、血漿または組織ホモジネート)においてインキュベートする。上記ペプチドの安定性は、上記微粒子上のインタクトな蛍光ペプチドの量を反映する。関連するプロテアーゼを同定するために、特定のプロテアーゼ員日々バーを、上記インキュベート反応に含める。
【0112】
例えば、クエン酸塩添加血を、トロンビンインヒビターであるヒルジン(5U/ml)と一緒に混合し、そしてその血液を、20mmol/mLのカルシウムによって再石灰化する。次いで、上記標識したペプチドによって改変した微粒子を、2.5mg/mlの最終濃度でその血液に添加する。その反応を、37℃に維持しながら混合し、その反応のサンプルを、異なる時点にて採取し、適切に希釈し、そしてフローサイトメーターに適用してインタクトな結合したペプチドの量を決定する。
【0113】
(実施例13)
(インビボでの用量関連性の止血活性の評価)
(1.血小板減少性ウサギモデルにおける用量関連性の止血活性)
雄ニュージーランド白ウサギ(2.5〜4.0kg)を、標準的な供給業者から得る。6羽までのウサギの群を、2用量の細胞傷害性薬物ブスルファンを、それぞれ、この研究の12日前および9日前に使用して血小板減少性にする。ブスルファンの用量を、必要とする血小板減少症の重篤度にしたがって変化させる(例えば、2用量の20mg/kgは、一般に、血小板数を10×10/l〜20×10/lの間まで減少させるのに対して、2用量の25mg/kgは、血小板数を10×10/l未満まで減少させる)。血小板数の減少に加えて、ブスルファン投薬は、白血球の枯渇を伴うが、ヘマトクリットの小さい減少のみを伴い、そして明白な毒性を伴わない。麻酔剤は、この手順に必要ではない。
【0114】
ヒト血小板濃縮物を、これらの研究のためにポジティブコントロールとして使用する。これは、動物の1群あたり1つの血小板濃縮物のみを必要とする。ヒト血小板は細網内皮系による取り込みに起因してウサギにおいて約5分間のみにわたって循環することが、先に示されている。したがって、これらの実験において、マクロファージ機能を、研究日の24時間前に上記ウサギにパルミチン酸エチルを投薬することによって阻害する。一貫性のために、パルミチン酸エチルによる処置が、動物の全ての群に対して使用され得る。
【0115】
研究日において、試験因子を、耳静脈中に静脈内に注入する。効力を、その耳の標準的な切開を使用して行われる出血時間の測定によって評価する。
【0116】
出血時間の変動性を、上記動物がおとなしくかつ温かく、そして均一な温度であることを確保することによって、可能な限り制御し(Roskam、1993、Comptes Rendus des Seances de la Societe de Biologie、114、166−169)、そして血液サンプルの数を最小化する。Blajchman & Lee、1997、Transfusion Medical Reviews、11、99−105。出血時間を、試験用量の投与直前、および投薬の24時間後のまでの時点において測定する。20分間を超える出血時間を、創傷に圧力を適用することによって停止させる。動物を、この研究の完了において屠殺する。
【0117】
用量/kgベースにおける本発明の因子の用量関連性の活性を、ヒト血小板の活性と比較した出血時間の減少によって規定する。同じ大きさであるがペプチドとカップリングしていないHSA微粒子を、ネガティブコントロールとして使用する。この研究の24時間にわたって効果の持続時間の比較が、行われ得る。
【0118】
血小板減少性ウサギにおいて、約20分間の出血時間が、代表的である。本発明の因子は、6羽の群中の3羽、そして好ましくは6羽全ての試験ウサギの出血時間を最小で10分未満まで減少させ得るはずである。
【0119】
(2.ウサギWesslerモデルにおける血栓形成性の評価)
本発明の因子の潜在的な血栓形成性を、本質的に、Wesslerら、1959、Journal of Applied Physiology、14、943−946によって記載されるようなWesslerモデルにおいて評価する。
【0120】
雄ニュージーランド白ウサギ(体重2.5kg〜4.0kg)を、認可された供給業者から入手し、そして最大で6羽のウサギの群を、麻酔する。左右の頸静脈の区域を、露出させ、そして周囲の組織から引き離す。試験調製物を、耳静脈を介して投与し、そして3分間の循環期間の後、その頸静脈の区域を、結紮し、そしてさらに10分間にわたってその位置に放置する。その区域を、慎重に切除し、そしてその管腔を、露出させる。その血管を、視覚的に記録される発生した血栓の存在について調べる。
【0121】
本発明の因子は、出血時間の最適な減少に関連する用量よりも5倍(好ましくは、10倍)高い用量において、血栓を産生しないはずである。
【0122】
本発明の因子の適切な用量は、患者の体重1kgあたり1×10〜2×1010個の生成物粒子であり得る。例えば、その用量(体重1kgあたりの生成物粒子の数として示す場合)は、約2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、9×10、1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、9×10、1×1010または2×1010であり得る。
【0123】
適切な用量はまた、患者の体重1kgあたりの総タンパク質のミリグラムとして示され得る。これに基づくと、適切な用量は、5〜200mg/kgであり得る。例えば、その用量は、約5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、50mg/kg、60mg/kg、70mg/kg、80mg/kg、90mg/kg、150mg/kgまたは200mg/kgであり得る。
【0124】
理想的な用量は、少なくとも2倍、好ましくは約10倍の安全域を有する。換言すれば、その理想的な用量は、2倍または約10倍増加した場合でさえ、有効であるが、安全なままである。安全な用量は、上に記載したようなWessler試験を用いて、クロットを形成しない。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1−1】図1は、本発明の因子の第1の好ましい実施形態を概略的に示す。
【図1−2】図1は、本発明の因子の第1の好ましい実施形態を概略的に示す。
【図2】図2は、本発明の因子の第2の好ましい実施形態を概略的に示す。
【図3A】図3aは、本発明の因子の第3の好ましい実施形態を概略的に示す。
【図3B】図3bは、本発明の因子の第4の好ましい実施形態を概略的に示す。
【図4】図4は、実施例3に記載されるようなペプチドに連結されたマイクロスフェアへのフィブリノゲンの結合の測定の結果を示す。
【図5】図5は、種々の濃度のトロンビンとのインキュベーション後における、マイクロスフェアに結合されたフィブリノゲンの%を示す。0.7mg/ml(黒三角)におけるペプチド改変を有さないマイクロスフェアならびに0.7mg/ml(黒丸)、5mg/ml(黒四角)または10mg/ml(黒逆三角)におけるペプチドCによって改変されたマイクロスフェア。
【図6】図6は、それぞれ、0.032U/mlのトロンビンの非存在下(1および2)または存在下(3および4)における、ブランク微粒子またはペプチドC改変微粒子とフィブリノゲンとの凝集プロフィールを示す。
【図7】図7は、ペプチドC改変微粒子と、トロンビンに曝されていない血漿との凝集プロフィール(1)、およびペプチドC改変微粒子と、トロンビンとプレインキュベートされ、そしてトロンビンが2分後に添加される血漿に添加された血漿との凝集プロフィール(2)を示す。
【図8】図8は、ブランク微粒子またはペプチドC改変微粒子と、血漿との凝集プロフィールを示す。トロンビンを伴わないペプチドC(1)微粒子およびブランク(2)微粒子;2分目においてトロンビンの添加を伴うブランク(3)およびペプチドC(4)マイクロスフェア。
【図9】図9は、血小板凝集測定を使用した、トロンビンに予め曝露されている微粒子を伴うアデノシン二リン酸(ADP)によって活性化された血小板減少血液における血小板凝集およびトロンビンに予め曝露されている微粒子を伴わないアデノシン二リン酸(ADP)によって活性化された血小板減少血液における血小板凝集を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不溶性キャリアに結合されたフィブリノゲン結合前駆体を含む因子であって、該フィブリノゲン結合前駆体は、創傷部位特異的因子によって、該キャリアに結合されたフィブリノゲン結合成分へと変換されることができ、該フィブリノゲン結合成分は、該フィブリノゲン結合前駆体と比較して、フィブリノゲンへの結合能力が増大し、そして該フィブリノゲン結合前駆体は、フィブリノゲンではない、因子。
【請求項2】
前記フィブリノゲン結合成分は、ペプチドである、請求項1に記載の因子。
【請求項3】
前記フィブリノゲン結合ペプチドは、アミノ末端にアミノ酸配列NH−GPRP−(配列番号17)を含む、請求項2に記載の因子。
【請求項4】
前記フィブリノゲン結合前駆体は、前記創傷部位特異的因子によって切断されて、前記キャリアに結合された前記フィブリノゲン結合成分を露出することができる、請求項1〜3に記載の因子。
【請求項5】
前記フィブリノゲン結合前駆体は、ブロック成分にアミノ末端にて連結されたフィブリノゲン結合ペプチドを含み、該ブロック成分は、該フィブリノゲン結合ペプチドへのフィブリノゲンの結合をブロックまたは阻害することによって、前記創傷部位特異的因子による該フィブリノゲン結合前駆体の切断が、該フィブリノゲン結合ペプチドを露出させて、該フィブリノゲン結合ペプチドへのフィブリノゲンの結合を増大させることを可能にする、請求項4に記載の因子。
【請求項6】
前記創傷部位特異的因子は、トロンビンであり、そして前記フィブリノゲン結合前駆体は、トロンビン切断部位を含む、請求項4または5に記載の因子。
【請求項7】
前記フィブリノゲン結合前駆体は、アミノ末端にアミノ酸配列NH−ZYXR/GPRP(配列番号18)を含むペプチドを含み、「/」は、前記トロンビン切断部位を示し、そしてXは、任意のアミノ酸であるが、好ましくはプロリンであり、Yは、任意のアミノ酸であるが、好ましくはアスパラギン酸であり、そしてZは、好ましくはロイシンまたはプロリンである少なくとも1個のアミノ酸である、請求項6に記載の因子。
【請求項8】
前記ペプチドは、そのアミノ末端に以下のアミノ酸配列:
【化1】

のうちの1つを含み、「/」は、前記トロンビン切断部位を示す、請求項7に記載の因子。
【請求項9】
トロンビン結合部位をさらに含む、請求項6〜8のいずれかに記載の因子。
【請求項10】
前記フィブリノゲン結合前駆体および前記トロンビン結合部位は、別々に前記不溶性キャリアに結合される、請求項9に記載の因子。
【請求項11】
前記トロンビン結合部位は、前記フィブリノゲン結合前駆体の部分であるペプチド配列である、請求項9に記載の因子。
【請求項12】
前記ペプチド配列は、トロンビンが結合することができる配列であり、好ましくはトロンビンエキソサイトIドメインまたはトロンビンエキソサイトIIドメインが結合することができる配列である、請求項11に記載の因子。
【請求項13】
前記ペプチド配列は、トロンビンエキソサイトIドメインまたはトロンビンエキソサイトIIドメインが結合することができるPAR−1レセプターのペプチド配列(例えば、WEDEEKNES(配列番号24))、フィブリノゲンのペプチド配列(例えば、VRPEHPAETEYDSLYPEDDL(配列番号25))、または第VIII因子のペプチド配列(例えば、EEEDWD(配列番号26)またはEDSYED(配列番号27))、あるいはトロンビン結合ペプチドであるヒルジンに対応する、請求項11または12に記載の因子。
【請求項14】
前記フィブリノゲン結合前駆体は、前記不溶性キャリアに共有結合されるカルボキシ末端残基または改変カルボキシ末端残基を有するペプチドを含む、請求項1〜13のいずれかに記載の因子。
【請求項15】
前記カルボキシ末端残基がシステイン残基であるか、または前記改変カルボキシ末端残基がマレイミド改変リジン残基である、請求項14に記載の因子。
【請求項16】
前記フィブリノゲン結合前駆体は、前記カルボキシ末端残基または前記改変カルボキシ末端残基と、前記フィブリノゲン結合成分との間にスペーサー配列を含む、請求項14または15に記載の因子。
【請求項17】
前記スペーサー配列は、GGGGGG(配列番号29)またはGGGGG(配列番号30)である、請求項16に記載の因子。
【請求項18】
創傷部位標的成分をさらに含む、請求項1〜17のいずれかに記載の因子。
【請求項19】
前記創傷部位標的成分は、前記不溶性キャリアに固定化されている、請求項18に記載の因子。
【請求項20】
前記創傷部位標的成分は、前記フィブリノゲン結合前駆体の部分である、請求項18に記載の因子。
【請求項21】
前記フィブリノゲン結合前駆体が、フィブリノゲン結合ペプチドを含むペプチドであり、そして前記創傷部位標的成分が、該フィブリノゲン結合ペプチドのアミノ末端に結合されることにより、該創傷部位特異的因子による該フィブリノゲン結合前駆体の切断が、該創傷部位標的成分を遊離させて該フィブリノゲン結合ペプチドを露出させる、請求項20に記載の因子。
【請求項22】
前記創傷部位標的成分は、細胞表面タンパク質組織因子に結合することができる、請求項18〜21のいずれかに記載の因子。
【請求項23】
前記創傷部位標的成分は、第VII因子または細胞表面タンパク質組織因子に結合することができるそのフラグメントもしくは誘導体、あるいは第VIIa因子または細胞表面タンパク質組織因子を結合することができるそのフラグメントもしくは誘導体を含む、請求項22に記載の因子。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれかに記載の因子と、薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤、または希釈剤とを含む、薬学的組成物。
【請求項25】
医薬として使用するための、請求項1〜23のいずれかに記載の因子。
【請求項26】
血小板減少症または血小板無力症を予防、処置、または改善するための医薬の製造における、請求項1〜23に記載の因子の使用。
【請求項27】
血小板減少症または血小板無力症を予防、処置、または改善するための方法であって、該方法は、請求項1〜23のいずれかに記載の因子を、このような予防、処置、または改善の必要がある被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項28】
請求項1に記載の因子の部分として使用するためのフィブリノゲン結合前駆体ペプチドであって、該フィブリノゲン結合前駆体ペプチドは、創傷部位特異的因子によってフィブリノゲン結合ペプチドへと変換されることができ、該フィブリノゲン結合ペプチドは、該フィブリノゲン結合前駆体ペプチドと比較して、フィブリノゲンへの結合能力が増大し、そして該フィブリノゲン結合前駆体ペプチドは、フィブリノゲンではない、フィブリノゲン結合前駆体ペプチド。
【請求項29】
配列番号32〜配列番号35、または配列番号38〜配列番号41のうちのいずれかのアミノ酸配列を含む、請求項28に記載のペプチド。
【請求項30】
請求項1に記載の因子の部分として使用するためのフィブリノゲン結合前駆体を同定する方法であって、以下:
i)創傷部位特異的因子と、不溶性キャリアに結合された標識された候補フィブリノゲン結合前駆体とを、該創傷部位特異的因子による既知のフィブリノゲン結合前駆体のフィブリノゲン結合成分への変換を許容する条件下でインキュベートする工程;
ii)該創傷部位特異的因子とのインキュベーションの前後において、該不溶性キャリア上の標識の量を決定する工程;および
iii)該創傷部位特異的因子とのインキュベーション後における該不溶性キャリア上の標識の量が、該創傷部位特異的因子とのインキュベーション前における該不溶性キャリア上の標識の量よりも少ない場合に、該候補フィブリノゲン結合前駆体をフィブリノゲン結合前駆体として同定する工程;
を包含する、方法。
【請求項31】
前記創傷部位特異的因子とのインキュベーション前後において、前記不溶性キャリアへのフィブリノゲンの結合を決定する工程、および工程(iii)において、該創傷部位特異的因子とのインキュベーション後における該不溶性キャリア上の標識の量が、該創傷部位特異的因子とのインキュベーション前における該不溶性キャリア上の標識の量よりも少なく、かつ該不溶性キャリアへのフィブリノゲンの結合が該創傷部位特異的因子とのインキュベーション後に増大する場合に、前記候補フィブリノゲン結合前駆体をフィブリノゲン結合前駆体として同定する工程をさらに包含する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
請求項1に記載の因子の部分として使用するためのフィブリノゲン結合前駆体を同定する方法であって、以下:
i)創傷部位特異的因子と、不溶性キャリアに結合された候補フィブリノゲン結合前駆体とを、該創傷部位特異的因子によるフィブリノゲン結合前駆体のフィブリノゲン結合成分への変換を許容する条件下で接触させる工程;
ii)該候補フィブリノゲン結合前駆体が、該創傷部位特異的因子と接触した後に、クロット形成、血小板凝集、または該不溶性キャリアの凝集を促進するか否かを決定する工程;および
iii)クロット形成が促進される場合に、該候補フィブリノゲン結合前駆体をフィブリノゲン結合前駆体として同定する工程;
を包含する、方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−505964(P2009−505964A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524591(P2008−524591)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【国際出願番号】PCT/GB2006/002934
【国際公開番号】WO2007/015107
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(506117127)ヘモスタティクス リミテッド (4)
【Fターム(参考)】