人工降雨等発生方法
【課題】砂漠緑化が促進されて温暖化防止をも達成できるようにした人工降雨等発生方法を提供すること。
【解決手段】雨雲などの多湿気を強制上昇流発生システムにより自然流でなく強制的な上昇流として起生して立ちはだかる高い山脈を越えさせることで山脈の向こう側の乾燥地帯までも雨雲をもたらして降雨を発生させるようにする。
【解決手段】雨雲などの多湿気を強制上昇流発生システムにより自然流でなく強制的な上昇流として起生して立ちはだかる高い山脈を越えさせることで山脈の向こう側の乾燥地帯までも雨雲をもたらして降雨を発生させるようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工降雨等発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図8はインド洋1、インド大陸2、ヒマラヤ山脈3、チベット高原4およびタクラマカン砂漠5を一連状に示す断面概略模式図である。インド大陸2上の空気は、夏季(6月から9月)において暖かくなって上昇気流Uを発生し、それを補うためインド洋1からは大陸2へ向けて南西季節風であるモンスーンMが吹く。このモンスーンMが海側から吹くと多量の湿った空気が内陸にもたらされ、強く長い雨期が続くこととなる。
その雨期にあっては、モンスーンMとともに矢印Xの方向に雨雲6…が流れることとなるが、その流れる先にあるヒマラヤ山脈3が立ちはだかって冷やされるため、その手前で全て降雨となってインド大陸2上で大洪水をもたらす問題がある。
その一方で、ヒマラヤ山脈3の存在は、それを越えた地帯に湿気のない極乾燥気流Yを流すこととなって特にチベット高原4以北のタクラマカン砂漠5は超乾燥地帯となって緑化どころか温暖化防止推進上のネックになっていた。
そうした軽減策を講じたものもある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特開2006−239399
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1は、山脈に降った水をその流れる途中に設けた人工池に溜めてその溜まった水をもとに多湿上昇気流を発生させヒマラヤ山脈3を越えさせてタクラマカン砂漠5まで誘導されるようにしたものである。
しかし、こうした人工池による自然上昇気流発生方法によってもやはり多湿上昇気流をヒマラヤ山脈3を越えさせ得るものではなく、ここに多湿気流をより有効に山越えさせる方法の提供が望まれていた。
【0005】
本発明は、このような従来の方法が有していた問題を解決しようとするものであり、雨雲などの多湿気を強制上昇流発生システムにより自然流でなく強制的な上昇流として起生して立ちはだかる高い山脈を越えさせることで山脈の向こう側の乾燥地帯までも雨雲をもたらして降雨を発生させ、これにより、緑化を促進して温暖化防止をも可能とする人工降雨等発生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、山脈手前に滞留する雨雲や多湿気などの対象を強制上昇流発生システムによる強制的な上昇流の起生により同山脈を越えさせることで山脈の向こう側にもたらして降雨を発生可能とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のものにおいて、強制上昇流発生システムは、ジェットエンジンを含むものである。
【発明の効果】
【0007】
上述したように本発明の人工降雨等発生方法は、雨雲などの多湿気を強制上昇流発生システムにより自然流でなく強制的な上昇流として起生して立ちはだかる高い山脈を越えさせることで山脈の向こう側の乾燥地帯までも雨雲をもたらして降雨を発生させ、これにより、砂漠緑化が促進されて温暖化防止をも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】 本発明の人工降雨等発生方法の一実施形態を示す立体図。
【図2】 図1のH−H線模式断面図。
【図3】 図2のA部拡大図。
【図4】 他の実施形態を示す模式断面図。
【図5】 他の実施形態を示す模式断面図。
【図6】 他の実施形態を示す模式断面図。
【図7】 図6の風力発電駆動設備の拡大側面図。
【図8】 これまでの雨期の状況を示す模式断面図。
【図9】 他の実施形態を示す説明図。
【図10】 図9の水蒸気発生装置Mを拡大して示す断面図。
【図11】 図10のV−V線断面図。
【図12】 ラセン型ヒーターを示す平面図。
【図13】 他の実施形態を示す側面図。
【図14】 他の実施形態を示す側面図。
【図15】 他の実施形態を示す縦断側面図。
【図16】 他の実施形態を示す縦断側面図。
【図17】 他の実施形態を示す縦断側面図。
【図18】 他の実施形態を示す斜視図。
【図19】 他の実施形態を示す正面図。
【図20】 他の実施形態を示す斜視図。
【図21】 他の実施形態を示す斜視図。
【図22】 他の実施形態を示す正面図。
【図23】 他の実施形態を示す側面図。
【図24】 他の実施形態を示す説明図。
【図25】 他の実施形態を示す斜視図。
【図26】 ゲリラ豪雨の状況を示す斜視説明図。
【図27】 ゲリラ豪雨の一軽減対策例を示す斜視説明図。
【図28】 他の提案例を示す斜視説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の一形態を図1〜図3に基づいて説明する。
【0010】
図2はインド洋1、インド大陸2、ヒマラヤ山脈3、チベット高原4およびタクラマカン砂漠5を一連状に示す断面概略模式図であり、図1はヒマラヤ山脈3を模式的にまたその手前のインド大陸2の一部を模式的にあらわし更に向こう側にチベット高原およびタクラマカン砂漠を含む砂漠地帯5を模式的にあらわしている。
【0011】
インド大陸2上の空気は、夏季(6月から9月)において暖かくなって上昇気流Uを発生し、それを補うためインド洋1からは大陸2へ向けて南西季節風であるモンスーンMが吹く。このモンスーンMが海側から吹くと多量の湿った空気が内陸にもたらされ、強く長い雨期が続くこととなる。
その雨期にあっては、モンスーンMとともに矢印Xの方向に雨雲6…が自然に流れることとなるが、その流れる先にあるヒマラヤ山脈3には、流れてくる雨雲6…を対象にしてそれらを強制的に山脈3に沿って吹き上げる強制上昇流発生システムSを雨雲6…到達高さあるいは到達高さより低い高さに対応して設置してある。
【0012】
同システムSと同じ高さには、多くの水量が蓄えられるように等高線の方向に長溝状とした貯水部8が形成され、同貯水部8は、山脈3の高い個所ではなくできるだけ低い峰や山に対応する下方に配置してある。
【0013】
そして、貯水部8は、雨雲6…による降雨を直接溜めてそれらの貯水分を強制上昇流発生システムSにより強制的に山頂方向に吹き上げるために使用される。
【0014】
強制上昇流発生システムSは、図1の右下欄および図2のA部拡大である図3に示すように、ジェットエンジンJを主要部とする。このジェットエンジンJは、ターボジェット型のもので、ターボファン型その他ガスタービンなどでもよい。同エンジンJは、吸気・圧縮・燃焼・排気各部を備えるもので、貯水部8上の適所に横架固定の基盤13上に載置固定した架台14に角度調節可能に装備してある。15は支点、16は伝導装置、17は回転駆動装置、18はケロシン・ワイドカットなどのジェット燃料タンクである。
【0015】
ジェット燃料タンク18への燃料は、麓からの供給パイプ(図示省略)を通じて供給される。回転駆動装置17がいずれかに回転されると伝導装置16を介して支点15回りにジェットエンジンJが角度調節自在とされる。これにより、山の斜面に対する角度を平行にしたり少し角度を付けたりするなど自由に向きを変えることができる。
【0016】
また、架台14は基盤13に対して貯水部8の手前と奥側に進退調節自在とされ、これにより、雨雲6…が接近してきた場合に貯水部8の手前に進出して雨雲6…を吸い込み排気しやすい姿勢にする態様と、雨雲6…が到来しないか少ない場合に貯水部8上で山脈側に後退して同貯水部8内の水を図示しない温熱化手段により温熱水蒸気化して吸い込み排気する態様を選択可能になっている。図1の20は水蒸気供給装置であり、凝結核も同時に供給可能にしてもよい。
山脈3手前に滞留する雨雲6…や多湿気などの対象を強制上昇流発生システムSによる強制的な上昇流の起生により同山脈3を越えさせて矢印Z…のように山脈3の向こう側にもたらして砂漠5へと誘導し降雨を発生可能とする。
【0017】
尚、図3に仮想線で示すように、ジェットエンジンJに平行に水蒸気吸排ダクト21を装備して、ジェットエンジンJからの排気に同調して負圧吸引しながら水蒸気を吹き上げるようにすることもできる。
このダクト21は、雨雲6…の水蒸気を取り込むようにしてもよい。水蒸気吸排ダクト21は、図3の右欄に示すように、ジェットエンジンJの外周に水蒸気の通気空間を存して同心状に設けたタイプにしてもよい。
【0018】
さらに、ジェットエンジンJは、山の麓や中腹など図1よりも低いところに設置して雨雲6を吹き上げるようにしてもよい。この場合、ジェットエンジンJからは排気ガス誘導配管により排気ガスを図1の貯水部8付近まで誘導するようにしてもよい。
【0019】
また、ジェットエンジンJは、図2に示すように、山越えした雨雲6′を降雨に適した状態にするため、チベット高原4やタクラマカン砂漠5手前(例えば、崑崙山脈やアルチン山脈など第2段目の山脈)に設置することもできる。この場合、山脈から流れ落ちる山水Dの溜まる水溜め部9…から発生した水蒸気をジェットエンジンJにより上方へ吹き上げて雨雲6′を降雨に適したものにすることができる。
【0020】
さらに、図4に示すように、貯水部8内の水は、雨雲6…よる他、インド大陸2上に形成された水溜部9…や河川10…などからポンプ11や配管12を通じて汲み上げるようにしてもよい。
【0021】
また、図5に示すように、インド洋1上には、水蒸気発生船24を設置しておき、雨雲6…が人工的でより効果的に多量発生するようにしてもよい。
【0022】
さらに、図6に示すように、ジェットエンジンJに代えて山越え手前の個所に風力発電駆動設備23を複数基設置しておいて、風のあるときは充電しておいて風のないときや少ないときにはその既充電分で同設備23を回転駆動させて雨雲6や朝霧などを吹き上げて山越えさせるように構成することもできる。
【0023】
図7はその具体的方法を示し、30は基台で、山の上部山腹を掘削除去してなる路盤上に固定設置され、31は架台で支点33を介して角度調節可能なアーム32を備えるとともに、アーム32は伝導装置34と回転駆動装置35により角度変更自在としてある。
【0024】
さらに、アーム32の先端には発電機本体36とプレーン37を備える。架台31には、制御部とバッテリその他必要な装備を内蔵してある。
プレーン37は、架台31を基台30に対し進退自在とされているので、好ましい位置に設備を構えることができるとともに回転駆動装置35および伝導装置34の駆動によりアーム32の角度を変更調節可能であるので、雨雲6…を効率的に流して充電が可能であるとともに吹き上げも効率なものにすることができる。これらにソーラー発電装置38を組み合わせることができる。
【0025】
図9はヒマラヤ山脈Hの山頂から少し下がった山斜面を含む部分を図示した他の実施形態を示す。この実施形態は、強制上昇流発生システムを図10および図11に示すようなスクリュウ型水蒸気流(雨雲)発生装置Mにより構成し、ヒマラヤ山脈Hのインド洋に面する頂上やや手前の中継発生個所と頂上発生個所の2個所に設置してインド洋側にある水を水蒸気から雨雲に変化させて山越えさせ、最終的にタクラマカン砂漠にまで達するようにして緑化を促すようにしたものである。前記2個所とあるのは、3個所などより多くの個所でもよい。
【0026】
中継発生個所には、自然に残された凹所やこの実施形態のように人工的に掘削形成された凹池40(図1のように等高線に平行に長い溝状のもの)を設け、この凹池40に矢印Aのように雨雲からの降雨分を溜めたり、矢印Bのように頂上からの雪解け水を溜めたり、矢印Cのように伏流水を溜めたり、あるいは矢印Dのようにインド大陸や山裾などの水を汲み上げ(毛細管現象によるものも含む)て溜めるものとする。41は防護壁である。
尚、前記凹池40は山の斜面を掘削などして造成しているが、図9の左上欄に示すように山はそのままの形とし架台42を張り出してその架台42を介して人工池43を形成してもよい。掘削による凹池40と架台による人工池43とを併用してもよい。
【0027】
前記水蒸気流発生装置Mは、そうした溜め水44をもとにして電気ヒーターで発生させた水蒸気に適宜凝結核を混合してスクリュウ流として先端から発生させるものである。
同装置Mは、図10および図11に示すように、凹池40の底に造成された基礎45上に球体軸受46を据付けるとともに外周複数個所にシリンダ47…を配して角度調節可能な状態で下部本体48を姿勢変更自在に設置されている。
尚、基礎45には、池底ヒーター49が設けられ、その電源50は、風力発電装置51やソーラー発電装置52あるいは原子力(図示省略)などから導かれるものとして供給されて常時加温により解凍を含む一定温度まで温度上昇をさせるものとする。図10の右上欄のようにレンズ集光加温装置53により溜め水44を水蒸気を発生可能なレベルまで加温するようにしてもよい。
【0028】
下部本体48は受皿型をした円池状のもので、同本体48は断熱質でなるとともにその底壁から全体にかけて保温ヒーター55が設けられ、さらに主加温(加熱)ヒーター56がその中央底面に取り付けられている。同本体48には上に断熱質の蓋57が設けられるとともに、外周には外部から内部へと周方向の流れを作るような導入パイプ58が挿通されている。このパイプ58にはポンプ59を介して凹池40内の加温されたものが通されるとともに、パイプヒーター60によりさらに加温されて矢印Eのように内部に流れ込み図11の矢印Fの周回流を起生するようにしてある。
【0029】
61は内部本体で、同本体60は、丸胴型でその底面には前記主加温ヒーター56が臨むとともに外周には図11に横断平面図を示すように内部旋回流Gを起生する旋回流起生パイプ62…が設けられている。
内部本体60の上には旋回上昇流案内筒63が載置固定されている。同筒63内には、その下部に吹上げ装置64が設けられ、上部内周には旋回促進バッフル65が内部バッフルとして設けられている。
尚、66は吸気加温装置、67はコンプレッサーで、外気を温めながら内部本体60内に暖かい空気を旋回状(矢印Gと同じ方向)に導入して旋回上昇流を起生するようにしてある。68は外部バッフルで、旋回上昇流Hを頂上の方向H′に向けるための付加設備である。
【0030】
水蒸気発生装置Mは、シリンダ(電動式を含む)47を駆動することにより球体軸受46を支点にして角度変更可能とされ、図9では頂上に先端が向くように傾斜して設定されている。同装置Mは正面からみて垂直にする以外に斜め上がりになるように右あるいは左傾斜状に角度変更することもある。
【0031】
凹池40内に溜められた水44は、池底ヒーター49により第1段階として常時加温処理がなされる。水44が凍結している場合も、池底ヒーター49により解凍され第1段階として所定温度以上にまで加温される。尚、この池底ヒーター49による加温は、水44が凍結する場合にのみ行うようにしてもよい。
水44はポンプ59により汲み上げられ、加温されながら導入パイプ58を通じて下部本体48内に流れEとして導入されて周回流Fとなったあと、旋回流起生パイプ62…を通じて旋回流Gを起生する。そして、この旋回流Gは、主加温ヒーター56による加熱を受けながら水蒸気を発生し、その水蒸気が旋回流Hを巻き起こしながら吹上げ装置64による吸引・吹上げおよび旋回促進バッフル65による更なる旋回加速を得つつ矢印Hのように強い旋回流として上昇してゆくことになる。
【0032】
その様子は、図9にも概要を示すように、矢印Hの上昇流(高温多湿気)は凝結核を伴ってまとまった強い旋回流として発生するが高所ということもあって低気圧が作用して適度に分散しながらしかも低温冷却作用により頂上を越えてそれまでにない全く新たな人工雨雲Iを形成してゆくとともに、矢印Hの連続した流れや吹上げる風などが手伝って矢印Xのように山越えをしてチベット高原や遠くタクラマカン砂漠にまで流れる雨雲となってゆく。
中には、矢印Yのように条件によって下がり傾向となる人工雨雲も形成されることがある。その人工雨雲Yは山頂に雨あるいは雪を降らせ、場合によってはその山頂において凍結堆積してしまうものもある。凹所70に雨水71として溜まったものは、前記同様の図10の装置Mによって旋回流を発生し矢印Y−1のように遠くに流される雨雲になったり、あるいはやや重いものは矢印Y−2のように下がる方向に流されてゆく。さらに、雨雲は矢印2のように山斜面に添って川や伏流水として流れ落ち、それらが溜まって雨雲の発生源となる。その溜まった池に前記装置Mを設置しておけば遠くまで達する人工雨雲を形成することができ、こうしたリレーを繰り返すことでタクラマカン砂漠へも容易に達する人工雨雲とすることができる。一方、山頂で凍ったものは前記のように装置Mで解凍されて同じように旋回流から流れY−1,Y−2になってゆく。
【0033】
図12の実施形態は、例えば、主加温ヒーター56をラセン状にしたものであり、この場合、ラセンにしたヒーター56を複数個配備してもよく、この複数個とは平面的に複数並べる場合と上下に重ねる場合とがある。
【0034】
水蒸気発生装置Mは、図13に示すように、溜池74の底から立設した架台75に角度変更可能に支持させることもできる。この場合、架台75の底と装置Mの下部内にヒーター76,77を設けて加熱しながら旋回流を発生するようにする。また、装置Mが角度変更されても溜め水78が装置M内に常に供給されるように深く装置Mを没するものとする。
【0035】
図14の水蒸気発生装置Mは、溜め池80の溜め水81上にフロート82を浮べて台座としてその上に角度変更自在に設置したもので、特に、装置Mを蛇腹83により角度変更自在に連通状態を保つようにしたものである。装置M内の旋回流発生装置などは図示省略されている。尚、装置Mは、角度変更によりバランスが変わらないように重心を支点に支持する。
【0036】
図15の実施形態は、山の前記中継個所の高さにトンネル86を掘って内周に断熱材87を施して矢印のように溜まってくる水88が凍ることのないようにするとともに、この水88をポンプ89やヒーター90を介して水蒸気発生装置Mにより上昇気とするように構成した。尚、山の裾からの水は左下欄に示すように内部に吸水材91を充填した吸上げパイプ92により毛細管現象でトンネル86内に送り込むようにしてもよい。この方式は他の実施形態でも利用する。また、トンネル86の手前には捕捉ネット93を設置してそこから垂れ下がってくる水を集めてポンプアップすることでトンネル86内の水88とすることもできる。この方式は他の実施形態でも利用する。
【0037】
図16の実施形態は、山の中継個所の高さに掘ったトンネル95内に密閉型で断熱式の水溜めコンテナ96を内装設置し、このコンテナ96を外ケース97と内断熱ケース98とで二重構造のものとするとともに、同コンテナ96内に山の斜面上下から送られてくる降雨流水や雪解け水、さらに内部伏流水などを溜め水98として確保し、さらに内底のヒーター99により常に凍結しない状態に維持できるようにしたもので、こうして確保された溜め水100を利用して水蒸気発生装置Mに供給して人工雨雲を作るようにしたものである。同図右欄に示すように、雨樋型のコンテナ101にしてもよい。コンテナ101には蓋を付してもよい。102はヒーターである。
【0038】
図17の実施形態は、水溜めコンテナ105を中継個所以外に山頂の凹所1006内にも設置可能とした例である。同コンテナ105は、外ケース107と内断熱ケース108とでなるとともに内底には内部の溜め水109を凍結しないように確保するヒーター110が内蔵されている。前記中継個所の水蒸気発生装置Mによる人工雨雲からの降雨を凹所106内に溜めてポンプ111によりコンテナ105内に導入するとともに装置Mに適宜供給して更なる人工雨雲を発生させる仕組みになっている。尚、右欄のように雨樋式のコンテナ112にしてもよい。また、装置Mは、角度を下向きにして凹所106内に溜まる降雪分を内蔵ヒーターによる高温気の噴出により融かすようにしてもよい。装置Mは、コンテナ105上に設置してコンテナ105内で常時水として確保したものを雨雲発生用として直接上空へと噴出したり前記溶解のために周辺に噴出してもよい。
【0039】
図18の実施形態は、ヒマラヤ山脈のような高い峰が続く山脈に対しその正面側の雲高さ以上の山腹に沿って溝状の水溜め115を造ってそこに水蒸気発生装置Mを数基配備したものにおいて、特に、同水蒸気発生装置Mをそのまま山頂の方向に向けるのでなく斜め山回りの方向に向けて水蒸気(高温多湿気)を放出することにより山脈間の低い峰116を矢印Jのように人工雨雲117…が越えてゆくようにしたものである。人工雨雲117を容易に山越えさせることができる。尚、矢印Kのように低い峰の直ぐ下方山腹に溜め水115や装置Mを設置してもよい。また、矢印JとKの双方を発生して互いに合流するようにしても効果的に人工雨雲を発生させることができる。
【0040】
図19の実施形態は、熱帯海上で発生する高温多湿気をより効果的に人工雨雲として発生させるためのものである。120は海面に浮かぶ航空母艦である船舶で、この船舶120は連結盤121により互いに一定距離離れた状態で平行に接近させてある。これら船舶120間には熱帯海上特有の高温多湿気Aが溜まって次々に発生しており、これらの高温多湿気Aを連結盤121に備えた多数基の強制上昇装置(縦軸型強力ファン)122…により吸上げて矢印Bのように人工雨雲を作るための上昇気流として起生するようにしたものである。
また、船舶120が航空母艦である場合には、ジェット機123…が搭載されていることからそのジェットエンジン124の後方にバッフル125を付しておくことによりエンジン噴射して矢印Cのように上昇誘導流を作って高温多湿気Aを上昇促進させるものである。この上昇誘導流は、ラセン状の軌道をもって上昇するようにジェット機123を配置したりバッフル125の向きを変位自在とすることができる。上昇気流は人工雨雲となって丘・大陸の方向へ上空気流とともに流されて降雨を発生する。
【0041】
図20の実施形態は、現存(人工的に造られた湖や池などを含む)と水蒸気(人工雨雲)発生装置S…および季節風(偏西風)をうまく利用してリレー式に降雨をもたらし、最終的に砂漠地帯(タクラマカン砂漠)への降雨により緑化を促進するようにしたものである。同実施形態では、タクラマカン砂漠を緑化の対象にしているが、サハラ砂漠などの世界各処の砂漠や乾燥地帯、日本における各処の緑化対策(水不足対策を含む)に応用可能なものである。
【0042】
矢印A−1、A−2、A−3は、ヨーロッパからアジアの方向に流れる偏西風(亜熱帯ジェット気流)であり、これらの偏西風のうち南側のA−1は日本の梅雨時に対応して現れるジェット気流で、ヒマラヤ山脈127の存在によりその前後を通るように二手に分岐して流れる。その上側のジェット気流A−2は日本において梅雨後に対応するジェット気流であり、タクラマカン砂漠128を含むその周辺一帯上空を通過し、さらに、その北側のジェット気流A−3のように黒海からカスピ海129→アラル海130→バルハシ海131の上空を蛇行しながら経由して流れる。このように偏西風は常に一定の緯度を通るものでなく季節により変位してゆくものである。
【0043】
この実施形態では、黒海に設置した水蒸気発生装置Sにより水蒸気を上昇させて偏西風A−3の流れを利用してカスピ海129上に雨雲を送り込むことにより図示のように人工降雨をもたらし、さらに、カスピ海129に設置した水蒸気発生装置Sにより同様に水蒸気を上昇させて偏西風A−3に乗せて次のアラル海130上で人工降雨をもたらすようにした。同様にバルハシ海131にも人口降雨をもたらし、こうしてリレー式に次々と東方の湖に水を移送するようにした。
【0044】
バルハシ湖131からカプチャガイ湖132、さらにクル湖133へは、同様に水蒸気発生装置Sによる水蒸気上昇により冬季シベリア高気圧Bに乗せて移送するようにする。クル湖133からの上昇水蒸気はシベリア高気圧により天山山脈134の方向に運ばれるが、その手前で雨雲が停留するおそれがあるため、天山山脈134の山頂やや手前に水蒸気発生装置Sを設置してその停留するおそれのある雨雲を吹上げて山越えさせることによりタクラマカン砂漠128の上空に人工雨雲を持ち込み、そこで人工降雨をもたらすようにした。
尚、カスピ海129→クル湖133まで人工運河135を連設して水を送るようにしてもよい。この場合、黒海からカスピ海129まで人工運河で接続してもよい。
前記偏西風による人工雨雲の発生方法と運河による水移送方法とはいずれか一方により実施する場合と、双方の方法で実施する場合とがある。
また、人工運河135により接続する場合、同運河135内に水蒸気発生装置Sを設置して次々に水蒸気を発生させ偏西風A−3に乗せる方法もある。
【0045】
タクラマカン砂漠128に人工降雨をもたらす他の方法は同図に併せて示されている。その1つは、ヒマラヤ山脈127の山頂手前に人工ため池137を設けておき、そこに水蒸気発生装置Sを設置してモンスーンによる雨雲138を吸い込んで加熱しながらラセン流として水蒸気を上昇させて山越えさせてタクラマカン砂漠128に人工降雨をもたらすようにしたものである(同図右下欄)。
人工ため池137の水蒸気発生装置Sを駆動しただけでは水蒸気が完全に山越えせず氷河や降雪などが存在する山頂に人工降雨(あるいは降雪)がある場合には、山頂に設置した水蒸気発生装置Sにより氷河や降雪などを溶かして加熱処理してラセン上昇させることによりタクラマカン砂漠128に人工雨雲をもたらして降雨をさせるようにした(同図右下欄)。
さらに、別の方法として、山脈の幅の狭いところを選んでそこに水蒸気誘導トンネル140を貫通させてその入り口からモンスーンによる雨雲を吸引したりその山手前のため池137からの水蒸気を吸引するようにし、さらに、出口に設けた水蒸気発生装置Sの角度調節により上昇雨雲としたりあるいはタクラマカン砂漠128に達する人工雨雲とするようにした。
【0046】
他にも、偏西風A−1やA−2に乗せて矢印X,Yのように非常に低い抜け経路を通じて山越えさせてタクラマカン砂漠128に人工雨雲を発生させたり、同じ矢印経路で吸水パイプを敷設して水を山越えさせるようにしてもよい。
【0047】
図21の実施形態は、メッシュや垂れ線材などの霧粒捕捉材138…により山裾側からの霧粒Aを集めるように構成したものにおいて、同捕捉材138の底部に霧滴を回収するパイプ139を設け、同パイプ139内のヒーター140により更なる蒸発Bを促進してパイプ開口141を通じてリレー式に上昇気流Cを作るようにしたものである。142は霧滴は通すが水蒸気は通さないシールである。この方式を山の傾斜方向に複数段併設すれば山頂まで自然力を利用して水蒸気を運ぶことができ、山越えの人工雨雲の発生も可能となる。
尚、霧粒捕捉材138は、振動させれば捕捉効果が高くなり、超音波振動させてもよい。前記ヒーター140に代えて超音波振動素子ユニットを内蔵してもよい。
【0048】
図22の実施形態は、霧粒捕捉材145の下部のパイプ146を一方に向けて傾斜させるとともにその端部に集水部147を設けて同部147から水蒸気を発生させるようにしたもので、左右の霧粒捕捉材145を寄せ合わせて両集水部147から水蒸気を発生させるようにしてもよい。
【0049】
図23の実施形態は、川149や湖などの発生源から朝方の冷却により発生し漂う霧150を複数段の強制送り装置151により一定方向に送って平地の草木152…の緑化を直接促進したり山の草木の緑化促進を図ったりするようにしたものである。強制送り装置151は角度調節可能で下向きにすれば平地の草木152を対象に、また水平に向ければ山153の斜面を対象に霧150を当てることができる。山の斜面にも強制送り装置151…を配備してさらに上方へリレー式に送ることもできるし、また、霧粒捕捉材154…を張設してもよい。強制送り装置151を大きく斜め上向きにすれば山斜面に添ってより上方へ霧を送り山越えさせることもできる。
【0050】
図24の実施形態は、砂漠は日中において地表で高温であるのに対し数m下がった地下ではかなりの低温でその温度差が30度前後であることを利用した砂漠温度差発電システムに関する。
【0051】
156はサイクル配管で液体アンモニアが作動流体として封入されている。同配管156には、ポンプ157・蒸発器158・タービン159・凝縮器160が順に接続されており、蒸発器158には砂漠の地上温度を捕捉して高温水とする変換部161が設けられてその高温水が通されて液体アンモニアを気化するようになっている。凝縮器160には地下の低温分を捕捉して低温水に変換する変換部162が設けられて気化したアンモニアを再び液化するようにしている。
【0052】
そして、前記気化したアンモニアはタービン159を回転させて発電機163を駆動し送電対象164に送るようになっている。
尚、こうした温度差発電システムは、図25に示す高い山165と低い山166間のように温度差のある条件下においても利用される。
【0053】
前記実施形態ではタクラマカン砂漠を対象にして降雨をもたらすようにした場合を説明したが、例えば、日本においても日本海からの湿潤化した雨雲を山越えさせて東日本の方向に誘導する場合その他の世界各処において応用することができる。
【0054】
図26はゲリラ豪雨の発生現象の説明図であり、都市部では夏季日射に伴う熱気の上昇Xによりヒートアイランド現象が発生し、そこに局地風である温暖・湿潤な海風Yが流れ込むと入道雲(積乱雲)200が発生して上空の冷たく乾燥した空気と交じり合うと不安定な大気状態となる。その不安定さを解消するため、急激に入道雲が発達する結果、ゲリラ豪雨201…が発生する。
【0055】
図27のように、こうした入道雲がBのように発達する前の小規模な段階Aにおいて人工的にゲリラ豪雨の軽減を図る方法を図27に示す。都市部においては熱気の上昇Xが生じ、自然発生的に入道雲Aが発生している。その段階でゲリラ豪雨の発生を予測し、海風Yによる本格的な入道雲Bの発生前に、温暖湿潤な海風Yを、都市部より海側地域に設置したスパイラル上昇方式の上昇流起生装置203…により吸引して凝結核混合装置204による凝結核の混合を伴って都市部手前において矢印Zのように急上昇させる。この上昇流Zは人工的な入道雲205を小規模なものとして発生させ、その結果、ゲリラ豪雨までもいかない小規模な降雨を発生させることができる。
【0056】
そのことから、本来発達途上にあった入道雲AはBのように急速に発達することなく減衰し、その結果、ゲリラ豪雨は規模の小さいものあるいは消失してしますことになり、大洪水のおそれがなくなる。
また一方、人工的な降雨によりビルや車道・歩道などの大地、屋根などが冷やされる結果、ヒートアイランド現象は弱まり、ゲリラ豪雨への発達減衰に寄与する。大気は清浄化されるとともにビルなどの建築物は水洗いされる。
【0057】
尚、離れた位置にあるビル207…の屋上に電波や音波などの発生装置208を設けて人工入道雲205の中に振動を与えて水分子を結合しやすくすることにより降雨を発生しやすくしてもよい。
また、レーザー発生装置209により入道雲205内にレーザーを照射して凝結核の作用下でさらなる水分子の結合を促進させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 インド洋
2 インド大陸
3 ヒマラヤ山脈
5 タクラマカン砂漠
6 雨雲
8 貯水部
9 水溜部
10 河川
J ジェットエンジン
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工降雨等発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図8はインド洋1、インド大陸2、ヒマラヤ山脈3、チベット高原4およびタクラマカン砂漠5を一連状に示す断面概略模式図である。インド大陸2上の空気は、夏季(6月から9月)において暖かくなって上昇気流Uを発生し、それを補うためインド洋1からは大陸2へ向けて南西季節風であるモンスーンMが吹く。このモンスーンMが海側から吹くと多量の湿った空気が内陸にもたらされ、強く長い雨期が続くこととなる。
その雨期にあっては、モンスーンMとともに矢印Xの方向に雨雲6…が流れることとなるが、その流れる先にあるヒマラヤ山脈3が立ちはだかって冷やされるため、その手前で全て降雨となってインド大陸2上で大洪水をもたらす問題がある。
その一方で、ヒマラヤ山脈3の存在は、それを越えた地帯に湿気のない極乾燥気流Yを流すこととなって特にチベット高原4以北のタクラマカン砂漠5は超乾燥地帯となって緑化どころか温暖化防止推進上のネックになっていた。
そうした軽減策を講じたものもある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特開2006−239399
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1は、山脈に降った水をその流れる途中に設けた人工池に溜めてその溜まった水をもとに多湿上昇気流を発生させヒマラヤ山脈3を越えさせてタクラマカン砂漠5まで誘導されるようにしたものである。
しかし、こうした人工池による自然上昇気流発生方法によってもやはり多湿上昇気流をヒマラヤ山脈3を越えさせ得るものではなく、ここに多湿気流をより有効に山越えさせる方法の提供が望まれていた。
【0005】
本発明は、このような従来の方法が有していた問題を解決しようとするものであり、雨雲などの多湿気を強制上昇流発生システムにより自然流でなく強制的な上昇流として起生して立ちはだかる高い山脈を越えさせることで山脈の向こう側の乾燥地帯までも雨雲をもたらして降雨を発生させ、これにより、緑化を促進して温暖化防止をも可能とする人工降雨等発生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、山脈手前に滞留する雨雲や多湿気などの対象を強制上昇流発生システムによる強制的な上昇流の起生により同山脈を越えさせることで山脈の向こう側にもたらして降雨を発生可能とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のものにおいて、強制上昇流発生システムは、ジェットエンジンを含むものである。
【発明の効果】
【0007】
上述したように本発明の人工降雨等発生方法は、雨雲などの多湿気を強制上昇流発生システムにより自然流でなく強制的な上昇流として起生して立ちはだかる高い山脈を越えさせることで山脈の向こう側の乾燥地帯までも雨雲をもたらして降雨を発生させ、これにより、砂漠緑化が促進されて温暖化防止をも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】 本発明の人工降雨等発生方法の一実施形態を示す立体図。
【図2】 図1のH−H線模式断面図。
【図3】 図2のA部拡大図。
【図4】 他の実施形態を示す模式断面図。
【図5】 他の実施形態を示す模式断面図。
【図6】 他の実施形態を示す模式断面図。
【図7】 図6の風力発電駆動設備の拡大側面図。
【図8】 これまでの雨期の状況を示す模式断面図。
【図9】 他の実施形態を示す説明図。
【図10】 図9の水蒸気発生装置Mを拡大して示す断面図。
【図11】 図10のV−V線断面図。
【図12】 ラセン型ヒーターを示す平面図。
【図13】 他の実施形態を示す側面図。
【図14】 他の実施形態を示す側面図。
【図15】 他の実施形態を示す縦断側面図。
【図16】 他の実施形態を示す縦断側面図。
【図17】 他の実施形態を示す縦断側面図。
【図18】 他の実施形態を示す斜視図。
【図19】 他の実施形態を示す正面図。
【図20】 他の実施形態を示す斜視図。
【図21】 他の実施形態を示す斜視図。
【図22】 他の実施形態を示す正面図。
【図23】 他の実施形態を示す側面図。
【図24】 他の実施形態を示す説明図。
【図25】 他の実施形態を示す斜視図。
【図26】 ゲリラ豪雨の状況を示す斜視説明図。
【図27】 ゲリラ豪雨の一軽減対策例を示す斜視説明図。
【図28】 他の提案例を示す斜視説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の一形態を図1〜図3に基づいて説明する。
【0010】
図2はインド洋1、インド大陸2、ヒマラヤ山脈3、チベット高原4およびタクラマカン砂漠5を一連状に示す断面概略模式図であり、図1はヒマラヤ山脈3を模式的にまたその手前のインド大陸2の一部を模式的にあらわし更に向こう側にチベット高原およびタクラマカン砂漠を含む砂漠地帯5を模式的にあらわしている。
【0011】
インド大陸2上の空気は、夏季(6月から9月)において暖かくなって上昇気流Uを発生し、それを補うためインド洋1からは大陸2へ向けて南西季節風であるモンスーンMが吹く。このモンスーンMが海側から吹くと多量の湿った空気が内陸にもたらされ、強く長い雨期が続くこととなる。
その雨期にあっては、モンスーンMとともに矢印Xの方向に雨雲6…が自然に流れることとなるが、その流れる先にあるヒマラヤ山脈3には、流れてくる雨雲6…を対象にしてそれらを強制的に山脈3に沿って吹き上げる強制上昇流発生システムSを雨雲6…到達高さあるいは到達高さより低い高さに対応して設置してある。
【0012】
同システムSと同じ高さには、多くの水量が蓄えられるように等高線の方向に長溝状とした貯水部8が形成され、同貯水部8は、山脈3の高い個所ではなくできるだけ低い峰や山に対応する下方に配置してある。
【0013】
そして、貯水部8は、雨雲6…による降雨を直接溜めてそれらの貯水分を強制上昇流発生システムSにより強制的に山頂方向に吹き上げるために使用される。
【0014】
強制上昇流発生システムSは、図1の右下欄および図2のA部拡大である図3に示すように、ジェットエンジンJを主要部とする。このジェットエンジンJは、ターボジェット型のもので、ターボファン型その他ガスタービンなどでもよい。同エンジンJは、吸気・圧縮・燃焼・排気各部を備えるもので、貯水部8上の適所に横架固定の基盤13上に載置固定した架台14に角度調節可能に装備してある。15は支点、16は伝導装置、17は回転駆動装置、18はケロシン・ワイドカットなどのジェット燃料タンクである。
【0015】
ジェット燃料タンク18への燃料は、麓からの供給パイプ(図示省略)を通じて供給される。回転駆動装置17がいずれかに回転されると伝導装置16を介して支点15回りにジェットエンジンJが角度調節自在とされる。これにより、山の斜面に対する角度を平行にしたり少し角度を付けたりするなど自由に向きを変えることができる。
【0016】
また、架台14は基盤13に対して貯水部8の手前と奥側に進退調節自在とされ、これにより、雨雲6…が接近してきた場合に貯水部8の手前に進出して雨雲6…を吸い込み排気しやすい姿勢にする態様と、雨雲6…が到来しないか少ない場合に貯水部8上で山脈側に後退して同貯水部8内の水を図示しない温熱化手段により温熱水蒸気化して吸い込み排気する態様を選択可能になっている。図1の20は水蒸気供給装置であり、凝結核も同時に供給可能にしてもよい。
山脈3手前に滞留する雨雲6…や多湿気などの対象を強制上昇流発生システムSによる強制的な上昇流の起生により同山脈3を越えさせて矢印Z…のように山脈3の向こう側にもたらして砂漠5へと誘導し降雨を発生可能とする。
【0017】
尚、図3に仮想線で示すように、ジェットエンジンJに平行に水蒸気吸排ダクト21を装備して、ジェットエンジンJからの排気に同調して負圧吸引しながら水蒸気を吹き上げるようにすることもできる。
このダクト21は、雨雲6…の水蒸気を取り込むようにしてもよい。水蒸気吸排ダクト21は、図3の右欄に示すように、ジェットエンジンJの外周に水蒸気の通気空間を存して同心状に設けたタイプにしてもよい。
【0018】
さらに、ジェットエンジンJは、山の麓や中腹など図1よりも低いところに設置して雨雲6を吹き上げるようにしてもよい。この場合、ジェットエンジンJからは排気ガス誘導配管により排気ガスを図1の貯水部8付近まで誘導するようにしてもよい。
【0019】
また、ジェットエンジンJは、図2に示すように、山越えした雨雲6′を降雨に適した状態にするため、チベット高原4やタクラマカン砂漠5手前(例えば、崑崙山脈やアルチン山脈など第2段目の山脈)に設置することもできる。この場合、山脈から流れ落ちる山水Dの溜まる水溜め部9…から発生した水蒸気をジェットエンジンJにより上方へ吹き上げて雨雲6′を降雨に適したものにすることができる。
【0020】
さらに、図4に示すように、貯水部8内の水は、雨雲6…よる他、インド大陸2上に形成された水溜部9…や河川10…などからポンプ11や配管12を通じて汲み上げるようにしてもよい。
【0021】
また、図5に示すように、インド洋1上には、水蒸気発生船24を設置しておき、雨雲6…が人工的でより効果的に多量発生するようにしてもよい。
【0022】
さらに、図6に示すように、ジェットエンジンJに代えて山越え手前の個所に風力発電駆動設備23を複数基設置しておいて、風のあるときは充電しておいて風のないときや少ないときにはその既充電分で同設備23を回転駆動させて雨雲6や朝霧などを吹き上げて山越えさせるように構成することもできる。
【0023】
図7はその具体的方法を示し、30は基台で、山の上部山腹を掘削除去してなる路盤上に固定設置され、31は架台で支点33を介して角度調節可能なアーム32を備えるとともに、アーム32は伝導装置34と回転駆動装置35により角度変更自在としてある。
【0024】
さらに、アーム32の先端には発電機本体36とプレーン37を備える。架台31には、制御部とバッテリその他必要な装備を内蔵してある。
プレーン37は、架台31を基台30に対し進退自在とされているので、好ましい位置に設備を構えることができるとともに回転駆動装置35および伝導装置34の駆動によりアーム32の角度を変更調節可能であるので、雨雲6…を効率的に流して充電が可能であるとともに吹き上げも効率なものにすることができる。これらにソーラー発電装置38を組み合わせることができる。
【0025】
図9はヒマラヤ山脈Hの山頂から少し下がった山斜面を含む部分を図示した他の実施形態を示す。この実施形態は、強制上昇流発生システムを図10および図11に示すようなスクリュウ型水蒸気流(雨雲)発生装置Mにより構成し、ヒマラヤ山脈Hのインド洋に面する頂上やや手前の中継発生個所と頂上発生個所の2個所に設置してインド洋側にある水を水蒸気から雨雲に変化させて山越えさせ、最終的にタクラマカン砂漠にまで達するようにして緑化を促すようにしたものである。前記2個所とあるのは、3個所などより多くの個所でもよい。
【0026】
中継発生個所には、自然に残された凹所やこの実施形態のように人工的に掘削形成された凹池40(図1のように等高線に平行に長い溝状のもの)を設け、この凹池40に矢印Aのように雨雲からの降雨分を溜めたり、矢印Bのように頂上からの雪解け水を溜めたり、矢印Cのように伏流水を溜めたり、あるいは矢印Dのようにインド大陸や山裾などの水を汲み上げ(毛細管現象によるものも含む)て溜めるものとする。41は防護壁である。
尚、前記凹池40は山の斜面を掘削などして造成しているが、図9の左上欄に示すように山はそのままの形とし架台42を張り出してその架台42を介して人工池43を形成してもよい。掘削による凹池40と架台による人工池43とを併用してもよい。
【0027】
前記水蒸気流発生装置Mは、そうした溜め水44をもとにして電気ヒーターで発生させた水蒸気に適宜凝結核を混合してスクリュウ流として先端から発生させるものである。
同装置Mは、図10および図11に示すように、凹池40の底に造成された基礎45上に球体軸受46を据付けるとともに外周複数個所にシリンダ47…を配して角度調節可能な状態で下部本体48を姿勢変更自在に設置されている。
尚、基礎45には、池底ヒーター49が設けられ、その電源50は、風力発電装置51やソーラー発電装置52あるいは原子力(図示省略)などから導かれるものとして供給されて常時加温により解凍を含む一定温度まで温度上昇をさせるものとする。図10の右上欄のようにレンズ集光加温装置53により溜め水44を水蒸気を発生可能なレベルまで加温するようにしてもよい。
【0028】
下部本体48は受皿型をした円池状のもので、同本体48は断熱質でなるとともにその底壁から全体にかけて保温ヒーター55が設けられ、さらに主加温(加熱)ヒーター56がその中央底面に取り付けられている。同本体48には上に断熱質の蓋57が設けられるとともに、外周には外部から内部へと周方向の流れを作るような導入パイプ58が挿通されている。このパイプ58にはポンプ59を介して凹池40内の加温されたものが通されるとともに、パイプヒーター60によりさらに加温されて矢印Eのように内部に流れ込み図11の矢印Fの周回流を起生するようにしてある。
【0029】
61は内部本体で、同本体60は、丸胴型でその底面には前記主加温ヒーター56が臨むとともに外周には図11に横断平面図を示すように内部旋回流Gを起生する旋回流起生パイプ62…が設けられている。
内部本体60の上には旋回上昇流案内筒63が載置固定されている。同筒63内には、その下部に吹上げ装置64が設けられ、上部内周には旋回促進バッフル65が内部バッフルとして設けられている。
尚、66は吸気加温装置、67はコンプレッサーで、外気を温めながら内部本体60内に暖かい空気を旋回状(矢印Gと同じ方向)に導入して旋回上昇流を起生するようにしてある。68は外部バッフルで、旋回上昇流Hを頂上の方向H′に向けるための付加設備である。
【0030】
水蒸気発生装置Mは、シリンダ(電動式を含む)47を駆動することにより球体軸受46を支点にして角度変更可能とされ、図9では頂上に先端が向くように傾斜して設定されている。同装置Mは正面からみて垂直にする以外に斜め上がりになるように右あるいは左傾斜状に角度変更することもある。
【0031】
凹池40内に溜められた水44は、池底ヒーター49により第1段階として常時加温処理がなされる。水44が凍結している場合も、池底ヒーター49により解凍され第1段階として所定温度以上にまで加温される。尚、この池底ヒーター49による加温は、水44が凍結する場合にのみ行うようにしてもよい。
水44はポンプ59により汲み上げられ、加温されながら導入パイプ58を通じて下部本体48内に流れEとして導入されて周回流Fとなったあと、旋回流起生パイプ62…を通じて旋回流Gを起生する。そして、この旋回流Gは、主加温ヒーター56による加熱を受けながら水蒸気を発生し、その水蒸気が旋回流Hを巻き起こしながら吹上げ装置64による吸引・吹上げおよび旋回促進バッフル65による更なる旋回加速を得つつ矢印Hのように強い旋回流として上昇してゆくことになる。
【0032】
その様子は、図9にも概要を示すように、矢印Hの上昇流(高温多湿気)は凝結核を伴ってまとまった強い旋回流として発生するが高所ということもあって低気圧が作用して適度に分散しながらしかも低温冷却作用により頂上を越えてそれまでにない全く新たな人工雨雲Iを形成してゆくとともに、矢印Hの連続した流れや吹上げる風などが手伝って矢印Xのように山越えをしてチベット高原や遠くタクラマカン砂漠にまで流れる雨雲となってゆく。
中には、矢印Yのように条件によって下がり傾向となる人工雨雲も形成されることがある。その人工雨雲Yは山頂に雨あるいは雪を降らせ、場合によってはその山頂において凍結堆積してしまうものもある。凹所70に雨水71として溜まったものは、前記同様の図10の装置Mによって旋回流を発生し矢印Y−1のように遠くに流される雨雲になったり、あるいはやや重いものは矢印Y−2のように下がる方向に流されてゆく。さらに、雨雲は矢印2のように山斜面に添って川や伏流水として流れ落ち、それらが溜まって雨雲の発生源となる。その溜まった池に前記装置Mを設置しておけば遠くまで達する人工雨雲を形成することができ、こうしたリレーを繰り返すことでタクラマカン砂漠へも容易に達する人工雨雲とすることができる。一方、山頂で凍ったものは前記のように装置Mで解凍されて同じように旋回流から流れY−1,Y−2になってゆく。
【0033】
図12の実施形態は、例えば、主加温ヒーター56をラセン状にしたものであり、この場合、ラセンにしたヒーター56を複数個配備してもよく、この複数個とは平面的に複数並べる場合と上下に重ねる場合とがある。
【0034】
水蒸気発生装置Mは、図13に示すように、溜池74の底から立設した架台75に角度変更可能に支持させることもできる。この場合、架台75の底と装置Mの下部内にヒーター76,77を設けて加熱しながら旋回流を発生するようにする。また、装置Mが角度変更されても溜め水78が装置M内に常に供給されるように深く装置Mを没するものとする。
【0035】
図14の水蒸気発生装置Mは、溜め池80の溜め水81上にフロート82を浮べて台座としてその上に角度変更自在に設置したもので、特に、装置Mを蛇腹83により角度変更自在に連通状態を保つようにしたものである。装置M内の旋回流発生装置などは図示省略されている。尚、装置Mは、角度変更によりバランスが変わらないように重心を支点に支持する。
【0036】
図15の実施形態は、山の前記中継個所の高さにトンネル86を掘って内周に断熱材87を施して矢印のように溜まってくる水88が凍ることのないようにするとともに、この水88をポンプ89やヒーター90を介して水蒸気発生装置Mにより上昇気とするように構成した。尚、山の裾からの水は左下欄に示すように内部に吸水材91を充填した吸上げパイプ92により毛細管現象でトンネル86内に送り込むようにしてもよい。この方式は他の実施形態でも利用する。また、トンネル86の手前には捕捉ネット93を設置してそこから垂れ下がってくる水を集めてポンプアップすることでトンネル86内の水88とすることもできる。この方式は他の実施形態でも利用する。
【0037】
図16の実施形態は、山の中継個所の高さに掘ったトンネル95内に密閉型で断熱式の水溜めコンテナ96を内装設置し、このコンテナ96を外ケース97と内断熱ケース98とで二重構造のものとするとともに、同コンテナ96内に山の斜面上下から送られてくる降雨流水や雪解け水、さらに内部伏流水などを溜め水98として確保し、さらに内底のヒーター99により常に凍結しない状態に維持できるようにしたもので、こうして確保された溜め水100を利用して水蒸気発生装置Mに供給して人工雨雲を作るようにしたものである。同図右欄に示すように、雨樋型のコンテナ101にしてもよい。コンテナ101には蓋を付してもよい。102はヒーターである。
【0038】
図17の実施形態は、水溜めコンテナ105を中継個所以外に山頂の凹所1006内にも設置可能とした例である。同コンテナ105は、外ケース107と内断熱ケース108とでなるとともに内底には内部の溜め水109を凍結しないように確保するヒーター110が内蔵されている。前記中継個所の水蒸気発生装置Mによる人工雨雲からの降雨を凹所106内に溜めてポンプ111によりコンテナ105内に導入するとともに装置Mに適宜供給して更なる人工雨雲を発生させる仕組みになっている。尚、右欄のように雨樋式のコンテナ112にしてもよい。また、装置Mは、角度を下向きにして凹所106内に溜まる降雪分を内蔵ヒーターによる高温気の噴出により融かすようにしてもよい。装置Mは、コンテナ105上に設置してコンテナ105内で常時水として確保したものを雨雲発生用として直接上空へと噴出したり前記溶解のために周辺に噴出してもよい。
【0039】
図18の実施形態は、ヒマラヤ山脈のような高い峰が続く山脈に対しその正面側の雲高さ以上の山腹に沿って溝状の水溜め115を造ってそこに水蒸気発生装置Mを数基配備したものにおいて、特に、同水蒸気発生装置Mをそのまま山頂の方向に向けるのでなく斜め山回りの方向に向けて水蒸気(高温多湿気)を放出することにより山脈間の低い峰116を矢印Jのように人工雨雲117…が越えてゆくようにしたものである。人工雨雲117を容易に山越えさせることができる。尚、矢印Kのように低い峰の直ぐ下方山腹に溜め水115や装置Mを設置してもよい。また、矢印JとKの双方を発生して互いに合流するようにしても効果的に人工雨雲を発生させることができる。
【0040】
図19の実施形態は、熱帯海上で発生する高温多湿気をより効果的に人工雨雲として発生させるためのものである。120は海面に浮かぶ航空母艦である船舶で、この船舶120は連結盤121により互いに一定距離離れた状態で平行に接近させてある。これら船舶120間には熱帯海上特有の高温多湿気Aが溜まって次々に発生しており、これらの高温多湿気Aを連結盤121に備えた多数基の強制上昇装置(縦軸型強力ファン)122…により吸上げて矢印Bのように人工雨雲を作るための上昇気流として起生するようにしたものである。
また、船舶120が航空母艦である場合には、ジェット機123…が搭載されていることからそのジェットエンジン124の後方にバッフル125を付しておくことによりエンジン噴射して矢印Cのように上昇誘導流を作って高温多湿気Aを上昇促進させるものである。この上昇誘導流は、ラセン状の軌道をもって上昇するようにジェット機123を配置したりバッフル125の向きを変位自在とすることができる。上昇気流は人工雨雲となって丘・大陸の方向へ上空気流とともに流されて降雨を発生する。
【0041】
図20の実施形態は、現存(人工的に造られた湖や池などを含む)と水蒸気(人工雨雲)発生装置S…および季節風(偏西風)をうまく利用してリレー式に降雨をもたらし、最終的に砂漠地帯(タクラマカン砂漠)への降雨により緑化を促進するようにしたものである。同実施形態では、タクラマカン砂漠を緑化の対象にしているが、サハラ砂漠などの世界各処の砂漠や乾燥地帯、日本における各処の緑化対策(水不足対策を含む)に応用可能なものである。
【0042】
矢印A−1、A−2、A−3は、ヨーロッパからアジアの方向に流れる偏西風(亜熱帯ジェット気流)であり、これらの偏西風のうち南側のA−1は日本の梅雨時に対応して現れるジェット気流で、ヒマラヤ山脈127の存在によりその前後を通るように二手に分岐して流れる。その上側のジェット気流A−2は日本において梅雨後に対応するジェット気流であり、タクラマカン砂漠128を含むその周辺一帯上空を通過し、さらに、その北側のジェット気流A−3のように黒海からカスピ海129→アラル海130→バルハシ海131の上空を蛇行しながら経由して流れる。このように偏西風は常に一定の緯度を通るものでなく季節により変位してゆくものである。
【0043】
この実施形態では、黒海に設置した水蒸気発生装置Sにより水蒸気を上昇させて偏西風A−3の流れを利用してカスピ海129上に雨雲を送り込むことにより図示のように人工降雨をもたらし、さらに、カスピ海129に設置した水蒸気発生装置Sにより同様に水蒸気を上昇させて偏西風A−3に乗せて次のアラル海130上で人工降雨をもたらすようにした。同様にバルハシ海131にも人口降雨をもたらし、こうしてリレー式に次々と東方の湖に水を移送するようにした。
【0044】
バルハシ湖131からカプチャガイ湖132、さらにクル湖133へは、同様に水蒸気発生装置Sによる水蒸気上昇により冬季シベリア高気圧Bに乗せて移送するようにする。クル湖133からの上昇水蒸気はシベリア高気圧により天山山脈134の方向に運ばれるが、その手前で雨雲が停留するおそれがあるため、天山山脈134の山頂やや手前に水蒸気発生装置Sを設置してその停留するおそれのある雨雲を吹上げて山越えさせることによりタクラマカン砂漠128の上空に人工雨雲を持ち込み、そこで人工降雨をもたらすようにした。
尚、カスピ海129→クル湖133まで人工運河135を連設して水を送るようにしてもよい。この場合、黒海からカスピ海129まで人工運河で接続してもよい。
前記偏西風による人工雨雲の発生方法と運河による水移送方法とはいずれか一方により実施する場合と、双方の方法で実施する場合とがある。
また、人工運河135により接続する場合、同運河135内に水蒸気発生装置Sを設置して次々に水蒸気を発生させ偏西風A−3に乗せる方法もある。
【0045】
タクラマカン砂漠128に人工降雨をもたらす他の方法は同図に併せて示されている。その1つは、ヒマラヤ山脈127の山頂手前に人工ため池137を設けておき、そこに水蒸気発生装置Sを設置してモンスーンによる雨雲138を吸い込んで加熱しながらラセン流として水蒸気を上昇させて山越えさせてタクラマカン砂漠128に人工降雨をもたらすようにしたものである(同図右下欄)。
人工ため池137の水蒸気発生装置Sを駆動しただけでは水蒸気が完全に山越えせず氷河や降雪などが存在する山頂に人工降雨(あるいは降雪)がある場合には、山頂に設置した水蒸気発生装置Sにより氷河や降雪などを溶かして加熱処理してラセン上昇させることによりタクラマカン砂漠128に人工雨雲をもたらして降雨をさせるようにした(同図右下欄)。
さらに、別の方法として、山脈の幅の狭いところを選んでそこに水蒸気誘導トンネル140を貫通させてその入り口からモンスーンによる雨雲を吸引したりその山手前のため池137からの水蒸気を吸引するようにし、さらに、出口に設けた水蒸気発生装置Sの角度調節により上昇雨雲としたりあるいはタクラマカン砂漠128に達する人工雨雲とするようにした。
【0046】
他にも、偏西風A−1やA−2に乗せて矢印X,Yのように非常に低い抜け経路を通じて山越えさせてタクラマカン砂漠128に人工雨雲を発生させたり、同じ矢印経路で吸水パイプを敷設して水を山越えさせるようにしてもよい。
【0047】
図21の実施形態は、メッシュや垂れ線材などの霧粒捕捉材138…により山裾側からの霧粒Aを集めるように構成したものにおいて、同捕捉材138の底部に霧滴を回収するパイプ139を設け、同パイプ139内のヒーター140により更なる蒸発Bを促進してパイプ開口141を通じてリレー式に上昇気流Cを作るようにしたものである。142は霧滴は通すが水蒸気は通さないシールである。この方式を山の傾斜方向に複数段併設すれば山頂まで自然力を利用して水蒸気を運ぶことができ、山越えの人工雨雲の発生も可能となる。
尚、霧粒捕捉材138は、振動させれば捕捉効果が高くなり、超音波振動させてもよい。前記ヒーター140に代えて超音波振動素子ユニットを内蔵してもよい。
【0048】
図22の実施形態は、霧粒捕捉材145の下部のパイプ146を一方に向けて傾斜させるとともにその端部に集水部147を設けて同部147から水蒸気を発生させるようにしたもので、左右の霧粒捕捉材145を寄せ合わせて両集水部147から水蒸気を発生させるようにしてもよい。
【0049】
図23の実施形態は、川149や湖などの発生源から朝方の冷却により発生し漂う霧150を複数段の強制送り装置151により一定方向に送って平地の草木152…の緑化を直接促進したり山の草木の緑化促進を図ったりするようにしたものである。強制送り装置151は角度調節可能で下向きにすれば平地の草木152を対象に、また水平に向ければ山153の斜面を対象に霧150を当てることができる。山の斜面にも強制送り装置151…を配備してさらに上方へリレー式に送ることもできるし、また、霧粒捕捉材154…を張設してもよい。強制送り装置151を大きく斜め上向きにすれば山斜面に添ってより上方へ霧を送り山越えさせることもできる。
【0050】
図24の実施形態は、砂漠は日中において地表で高温であるのに対し数m下がった地下ではかなりの低温でその温度差が30度前後であることを利用した砂漠温度差発電システムに関する。
【0051】
156はサイクル配管で液体アンモニアが作動流体として封入されている。同配管156には、ポンプ157・蒸発器158・タービン159・凝縮器160が順に接続されており、蒸発器158には砂漠の地上温度を捕捉して高温水とする変換部161が設けられてその高温水が通されて液体アンモニアを気化するようになっている。凝縮器160には地下の低温分を捕捉して低温水に変換する変換部162が設けられて気化したアンモニアを再び液化するようにしている。
【0052】
そして、前記気化したアンモニアはタービン159を回転させて発電機163を駆動し送電対象164に送るようになっている。
尚、こうした温度差発電システムは、図25に示す高い山165と低い山166間のように温度差のある条件下においても利用される。
【0053】
前記実施形態ではタクラマカン砂漠を対象にして降雨をもたらすようにした場合を説明したが、例えば、日本においても日本海からの湿潤化した雨雲を山越えさせて東日本の方向に誘導する場合その他の世界各処において応用することができる。
【0054】
図26はゲリラ豪雨の発生現象の説明図であり、都市部では夏季日射に伴う熱気の上昇Xによりヒートアイランド現象が発生し、そこに局地風である温暖・湿潤な海風Yが流れ込むと入道雲(積乱雲)200が発生して上空の冷たく乾燥した空気と交じり合うと不安定な大気状態となる。その不安定さを解消するため、急激に入道雲が発達する結果、ゲリラ豪雨201…が発生する。
【0055】
図27のように、こうした入道雲がBのように発達する前の小規模な段階Aにおいて人工的にゲリラ豪雨の軽減を図る方法を図27に示す。都市部においては熱気の上昇Xが生じ、自然発生的に入道雲Aが発生している。その段階でゲリラ豪雨の発生を予測し、海風Yによる本格的な入道雲Bの発生前に、温暖湿潤な海風Yを、都市部より海側地域に設置したスパイラル上昇方式の上昇流起生装置203…により吸引して凝結核混合装置204による凝結核の混合を伴って都市部手前において矢印Zのように急上昇させる。この上昇流Zは人工的な入道雲205を小規模なものとして発生させ、その結果、ゲリラ豪雨までもいかない小規模な降雨を発生させることができる。
【0056】
そのことから、本来発達途上にあった入道雲AはBのように急速に発達することなく減衰し、その結果、ゲリラ豪雨は規模の小さいものあるいは消失してしますことになり、大洪水のおそれがなくなる。
また一方、人工的な降雨によりビルや車道・歩道などの大地、屋根などが冷やされる結果、ヒートアイランド現象は弱まり、ゲリラ豪雨への発達減衰に寄与する。大気は清浄化されるとともにビルなどの建築物は水洗いされる。
【0057】
尚、離れた位置にあるビル207…の屋上に電波や音波などの発生装置208を設けて人工入道雲205の中に振動を与えて水分子を結合しやすくすることにより降雨を発生しやすくしてもよい。
また、レーザー発生装置209により入道雲205内にレーザーを照射して凝結核の作用下でさらなる水分子の結合を促進させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 インド洋
2 インド大陸
3 ヒマラヤ山脈
5 タクラマカン砂漠
6 雨雲
8 貯水部
9 水溜部
10 河川
J ジェットエンジン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
山脈手前に滞留する雨雲や多湿気などの対象を強制上昇流発生システムによる強制的な上昇流の起生により同山脈を越えさせることで山脈の向こう側にもたらして降雨を発生可能とする人工降雨等発生方法。
【請求項2】
請求項1に記載のものにおいて、強制上昇流発生システムは、ジェットエンジンを含むものである人工降雨等発生方法。
【請求項1】
山脈手前に滞留する雨雲や多湿気などの対象を強制上昇流発生システムによる強制的な上昇流の起生により同山脈を越えさせることで山脈の向こう側にもたらして降雨を発生可能とする人工降雨等発生方法。
【請求項2】
請求項1に記載のものにおいて、強制上昇流発生システムは、ジェットエンジンを含むものである人工降雨等発生方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
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【図23】
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【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2011−24548(P2011−24548A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182840(P2009−182840)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(594100838)フジワラ産業株式会社 (51)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(594100838)フジワラ産業株式会社 (51)
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