説明

人工骨材の製造方法

【目的】 本発明の目的は、シラスを使用した十分な発泡性と、良好な物理特性を有する人工骨材の製造方法を提供することにある。
【構成】 本発明の人工骨材の製造方法は、シラス及び粘着材を含有してなる混合物を粉砕、造粒及び焼成することからなる人工骨材の製造方法において、粒径2.5mm以下に分級したシラスを使用することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、主として軽量かつ高強度を必要とする軽量コンクリート、及び防音、断熱性等が求められる路盤材、床材等の建築、土木材料用のシラスを使用する人工骨材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】本明細書において、「シラス」とは、白色の火山性堆積物であり、その二次堆積物を含めた固体物質の総称である。それは、主に北海道、東北、九州にかなり広域に分布するものであり、それ以外の全国各地にも分布している。
【0003】従来のシラスを用いた人工骨材は外部に通じる開放気孔が多く、その吸水率は高くなっており、骨材強度自身も大きくない。そのため、現在人工骨材として比較的大量に使用されている、モルタルやコンクリートを作製する際に、予め長時間水に浸漬して吸収させる必要があるので作業的に効率が悪かった。また、人工骨材に水分が残存した場合に、冬季凍結するような使用環境下では凍結融解によりコンクリートが破壊する危険性もあった。このようなことから、シラスを原料とした人工骨材での工業化は難しかった。
【0004】また、シラスの利用法としては、従来粒度5mm以上のものを、そのまま保温材、クッション材としてグラウンドの敷き砂や石に、ジーンズの磨き石に、また、軽量ブロック用軽石等に使用されている。しかし、粒度5mm以下のものは、ほんの一部のガラスの磨き砂、及びバルーン原料に使用されるぐらいで、残りは埋め立て材にしか用いられていなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】シラスには、火山ガラス質部分と結晶質部分があり、それらの融点が異なっている。そのため、人工骨材を製造する際に発泡特性に寄与している部分は結晶質部分より融点の低い火山ガラス質部分であり、火山ガラス質部分と結晶質部分の量分比に人工骨材の発泡特性が影響している。
【0006】シラスは、南九州をはじめ全国的にあり、わが国でも入手し易い原料である。しかし、その組成は地域的・層序的には偏りがある。シラスの中には、粒径4mm以下の火山灰が多いシラス(後記表1、表2、表3の分級前シラス)、粒径4mm以上の軽石が多いシラス(後記表4の分級前シラス)、天然で自然と分級された2次シラス(後記表5、表6の分級前シラス)の3種類に大別される。それにより、シラスは採取原料により粒度分布及びその火山ガラス質部分の含有率が異なっていたり、更には異質岩片が混入していたりする。そのため、人工骨材の原料としては品質にバラツキが起こり、焼成して得られた人工骨材は物性面において十分なものが得られなかった。
【0007】従って、本発明の目的は、シラスを使用した十分な発泡性と、良好な物理特性を有する人工骨材の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明の人工骨材の製造方法は、シラス及び粘着材を含有してなる混合物を粉砕、造粒及び焼成することからなる人工骨材の製造方法において、粒径2.5mm以下に分級したシラスを使用することを特徴とする。
【0009】シラスを使用する人工骨材の製造過程における焼成発泡メカニズムは以下の通りである。焼成温度を上昇して行くと、ある一定の温度(軟化温度)の状態を過ぎるとシラス中の火山ガラス質部分が軟化し始める。その際に、火山ガラス質部分同士が接しているところでは、ガラス同士がくっつき始めている。そして、軟化した火山ガラス質部分は結晶質鉱物及び発泡材が存在する場合にはその回りを埋めて行く。また、火山ガラス質部分に囲まれた発泡材が酸化を始めて気化し、火山ガラス質部分が膨らみ始めて気泡ができる。その状態から冷却固化させると気泡の入った人工骨材が製造される。
【0010】この場合、シラス中に火山ガラス質部分の量が少ないと、軟化し始めるときのガラス同士の接触部分が少なくなり、発泡したときの気泡が大きくかつ長柱状のものができる。それを回避する方法としてはかなりの微粉砕を行えば解消されるが、それは粉砕のコストを高くすることとなり、工業化には適していない。
【0011】上記のように、シラスには、火山ガラス質部分と結晶質部分とがある。そこで本発明者らは、シラスの火山ガラス質部分と結晶質部分の分布について調査したところ、シラス中の粒径の小さいものほど火山ガラス質部分の含有率が高いということが判明した。即ち、特定のフルイを通したものはフルイの上に残ったものよりも火山ガラス質部分の含有率が高く、フルイを通すことにより火山ガラス質部分の含有率の高い原料を得ることができる。また、フルイを通すことにより、大きな異質岩片を除くことができるという二次的な効果もある。
【0012】そこで、本発明においては、シラスを分級して得られた粒径2.5mm以下のものを人工骨材を製造する際の原料とすることを特徴とするものである。シラスを粒径2.5mm程度以下に分級する操作は、簡便な作業であるが、これによりシラス中の火山ガラス質部分の含有率を分級前のシラスのそれよりも高めることができ、低吸水率で、かつ高強度の人工骨材を簡単に得ることができる。
【0013】人工骨材は、所定の粒径を有する分級したシラスと粘着材からなる混合物で粉砕、造粒、焼成工程を行い、製造する。この場合、分級シラスと粘着材の配合割合は、分級シラス60〜99.9重量%すなわち粘着材0.1〜40重量%の範囲内である。ここで、分級シラスの割合が60重量%未満の場合には全固形分に対する火山ガラス質部分の含有率が小さくなるため好ましくなく、また、該割合が99.9重量%を超えると造粒しにくくなるために好ましくない。なお、粘着材としては例えばベントナイト等の粘土鉱物、及び有機質バインダー等を挙げることができる。
【0014】また、所望の比重を得るために、所定の粒径に分級したシラスと粘着材からなる混合物に、更に、発泡材に加え、粉砕した後、造粒作業をもって所定の寸法の造粒品を得、次に、焼成を行って低吸水率で、かつ高強度を有する人工骨材とすることができる。なお、発泡材としては例えばSiC、Si34、CaCO3、CaSO4、有機質バインダー等を挙げることができる。
【0015】また、本発明の人工骨材の製造方法において、粉砕、造粒及び焼成操作は慣用の人工骨材の製造の際に使用される任意の操作を使用することができ、特に限定されるものではない。
【0016】なお、慣用の人工骨材の製造方法において、焼成発泡温度は、火山ガラス質部分の軟化温度(粘度:4.5×107ポイズ、温度:約700℃)から流動温度(粘度:1.0×105ポイズ、温度:約850℃)がよいと言われている。それはゆっくりとした焼成温度上昇と長い最高温度保持時間の場合である。よって、人工骨材の物性は焼成パターン(昇温速度、最高温度保持時間、冷却速度)に、大きく影響される。しかし、工業化段階では急熱、急冷を行うような場合の方が多く、コスト的にも安価にできている。そこで、焼成発泡温度は1000〜1300℃の範囲で行うのが好適である。1000℃未満の温度では最高温度保持時間を長くしなければならず、また、1300℃を超える温度ではガラス化反応が十分速く進行して、粘性が低くなることにより気泡が消失し易いために好ましくない。
【0017】
【作用】火山ガラス質部分の含有率の低いシラスを使用して得られた人工骨材の気泡が大きくかつ長柱状であり、その気泡が外部に通じ易くなる傾向にある。そのため、軽量、低吸収率で、かつ十分な強度をもった人工骨材が得られない。しかし、シラスを分級して粒度2.5mm以下のものとすることにより、分級前のシラスと比べて火山ガラス質部分の含有量を多くすることができ、また異質岩片を取り除くこともできる。人工骨材の製造過程において、粗粉砕のみでも分級前のシラスを原料としたものに比べて十分な発泡と強度が得られることになる。このことにより、従来、人工骨材の原料に用いることができなかった火山ガラス質部分の含有率が低いシラスから簡単な分級で安価に優れた特性を有する人工骨材を製造することができる。
【0018】
【実施例】本実施例では、出発原料としてのシラスは鹿児島県X市産2種類、Y市産2種類、宮崎県Z市産2種類を使用した。各原料は使用前十分に乾燥を行ったものを供した。表1〜6に示す火山ガラス質部分(以下、単に「ガラス」という)含有率は、試料を砕き、薄片にして偏光顕微鏡観察下、クロスニコル上で常に暗黒な部分の面積をもって行った。
【0019】これらのシラスを各種フルイ(2.5mm、1.2mm、0.6mm)にてトロンメルフルイ機によりフルイ分けを行って分級シラスを得た。次に、得られた分級シラス100重量部、発泡材としてSiC0.3重量部、粘着材としてベントナイト3重量部を振動モルにて一緒に粉砕し、マイクロトラック社の粒度分析装置でd50値が9(±0.5)μmで全粒子が50μm以下になるよう行った。得られた粉砕粒子に水20〜25%程度を加えながらパンペレタイザーにて球形に造粒し、約1g/個になるよう造粒物を作製した。その後、造粒物は十分乾燥を行った。
【0020】焼成はロータリーキルンにて、大気中焼成温度1140〜1180℃にて行って、粒径10〜15mmの人工骨材を得た。得られた人工骨材の物性を表1〜6に併記する。なお、表乾比重及び吸水率はJIS A1135に準拠して測定したものであり、圧潰強度はインストロン万能試験機で点圧縮したものである。その測定は、個数50個のものの平均値をとった。
【0021】
【表1】


【0022】
【表2】


【0023】
【表3】


【0024】
【表4】


【0025】
【表5】


【0026】
【表6】


【0027】上述の表1〜6の結果から明らかなように、シラスから分級して得られた粒径2.5mm以下の分級シラスから得られた人工骨材は、その原料となる分級前シラスを用いて得られた人工骨材よりも吸水率が低く、また、高い圧潰強度を有するものであった。
【0028】参考例人工骨材(粗骨材)として実施例品(表1の粒径1.2mm以下の分級シラスを用いて1160℃で焼成したもの:ロ)及び比較例品(表1の1160℃で焼成したもの:イ)、及び陸砂(細骨材:絶乾比重状態から24時間水没し、表乾状態としたもの:表乾比重2.59)並びに普通ポルトランドセメント(比重3.16)を用いて、JIS A 1108に準拠してコンクリート強度の試験を行った。
【0029】
【表7】


【0030】なお、表7中、Wは水、Cはセメント、Sは陸砂、Gは人工骨材をぞれぞれ示す。
【0031】
【表8】
粗骨材の種類 単位容量質量(kg/l) 圧縮強度(kgf/cm2) イ 1.52 280 ロ 1.52 340
【0032】単位容量質量は簡易型枠により測定したものであり、圧縮強度はJIS A 1108に準拠し、標準養生=材令28日で行ったものである。
【0033】
【発明の効果】本発明方法によれば、シラスを有効利用して人工骨材が作製でき、シラスをフルイのような簡単なもので分級操作を行えばシラス中の火山ガラス質部分の含有量をより高くすることができ、工業化に適したシラスが容易に得られるようになる。このことは、どの産地のシラスからも簡単に火山ガラス質部分の含有率が高い人工骨材原料としてのシラスとすることができ、簡単な分級と粉砕により十分な発泡性と物理特性のよい人工骨材が得られるようになり、その工業的意義は大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 シラス及び粘着材を含有してなる混合物を粉砕、造粒及び焼成することからなる人工骨材の製造方法において、粒径2.5mm以下に分級したシラスを使用することを特徴とする人工骨材の製造方法。
【請求項2】 混合物が発泡材を含有してなる、請求項1記載の人工骨材の製造方法。

【公開番号】特開平7−187737
【公開日】平成7年(1995)7月25日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−326837
【出願日】平成5年(1993)12月24日
【出願人】(000000240)秩父小野田株式会社 (1,449)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)