説明

人工魚礁の製造方法

【課題】簡単でしかも安価な人工魚礁の製造方法を提供する。
【解決手段】表面に貝殻11が突出して配設されたコンクリート製の壁体12の周縁部を連結して製造される人工魚礁10の製造方法であって、壁体12は、型枠21の底部22に砂23を敷き、砂23上に貝殻11を敷き詰め、更にその上に砂利24を敷き詰めた後、砂利24の上からコンクリート25を打設して形成する。壁体12の表面には、貝殻11が突出して配設されるので、壁体12の表面に隙間が形成され、魚類の隠れ場所となると共に、微生物や藻類が付着しやすく、魚類が繁殖し易くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡単でしかも安価な人工魚礁の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海藻類、付着生物、飼料生物等を増殖させ、魚類の餌場、保育場、及び産卵場所等となる魚類の生息場所を提供する人工魚礁を海中に沈めて、魚類の育成を図っている。例えば、特許文献1には、廃棄物であるカキ殻、ホタテ貝殻、及びアコヤ貝殻等の貝殻を、外枠及び内枠と、その表裏に配置した多孔板とで形成される部屋内に充填した人工魚礁が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−34032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1の人工魚礁は、外枠、内枠、及び多孔板を製造し、これらを組み立てるので、手間がかかると共に、高価であるという問題があった。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、簡単でしかも安価な人工魚礁の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う本発明に係る人工魚礁の製造方法は、表面に貝殻が突出して配設されたコンクリート製の壁体の周縁部を連結して製造される人工魚礁の製造方法であって、
前記壁体は、型枠の底部に砂を敷き、該砂上に前記貝殻を敷き詰め、その上に砂利を敷き詰め、該砂利の上からコンクリートを打設し、該コンクリートが硬化した後に前記砂を除去して形成する。
使用する貝殻としては、缶詰等を製造する食品加工工場等から排出される可食部を取り除いたホタテ貝、牡蠣、サルボウガイ(赤貝)、アサリ、ハマグリ、アワビ、トコブシ、サザエ等の貝殻や、真珠の養殖に使用されたアコヤ貝及びシロチョウ貝等の貝殻を用いることができる。
【0007】
本発明に係る人工魚礁の製造方法において、前記砂の高さを1〜5cmに、前記貝殻の高さを1〜5cmに、前記砂利の高さを0.5〜3cmにそれぞれ敷き詰め、前記コンクリートを打設して成型した前記壁体の厚みを10〜30cmとすることができる。
ここで、壁体の貝殻及び砂利を除くコンクリートの厚みは、例えば、5cm以上とすることが望ましく、これによって、壁体の強度を保つことができる。なお、コンクリートは、有筋、無筋のいずれであってもよい。
【0008】
本発明に係る人工魚礁の製造方法において、前記コンクリートを打設する際に、鉄筋を該コンクリート内に配置すると共に、該コンクリートに振動を与えるのが好ましい。
コンクリートに振動を与えるには、打設した際にコンクリートの上からバイブレータを当てる方法や、型枠全体を振動させる方法がある。ここで、コンクリートが貝殻間に沈み込んで貝殻を覆ってしまわない程度にコンクリートに振動を与えるのが好ましい。これによって、壁体の表面に貝殻を突出して配設することができる。更に、砂利間にも隙間が形成されるように、コンクリートに振動を与えると、壁体の表面にも隙間ができるのでより好ましい。
【発明の効果】
【0009】
請求項1〜3に記載の人工魚礁の製造方法においては、型枠の底部に砂を敷き、砂上に貝殻を敷き詰め、その上に砂利を敷き詰め、砂利の上からコンクリートを打設し、コンクリートが硬化した後に砂を除去して表面に貝殻が突出して配設されたコンクリート製の壁体を形成し、壁体の周縁部を連結するので、簡単でしかも安価に人工魚礁を製造することができる。また、壁体の表面には、貝殻が突出して配設されるので、貝殻間や壁体表面に隙間が形成され、小型動物の隠れ場所となると共に、微生物や藻類が付着しやすく、魚類が繁殖し易くなる。
【0010】
特に、請求項2記載の人工魚礁の製造方法においては、壁体が砂、貝殻、及び砂利をそれぞれ所定の高さに順に敷き詰めた後、砂利の上からコンクリートを打設して成型されるので、コンクリートが貝殻を覆うことなく、貝殻間及び砂利間に隙間ができると共に、コンクリートが硬化した後に、貝殻の配設面に水等を掛けるだけで砂を除去することができる。また、壁体の厚みが10〜30cmであるので、壁体の強度が維持される。
請求項3記載の人工魚礁の製造方法においては、コンクリートを打設する際に、鉄筋をコンクリート内に配置するので、壁体の強度が高くなる。また、コンクリートを打設する際に、コンクリートに振動を与えるので、砂に埋もれた貝殻分を残して、コンクリートを均一に充填でき、充填率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1(A)、(B)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係る人工魚礁の製造方法によって製造された人工魚礁の正面図、平面図、図2は同人工魚礁の製造方法の説明図である。
【0012】
図1を参照して、本発明の一実施の形態に係る人工魚礁の製造方法を適用して製造された人工魚礁10について説明する。
人工魚礁10は、表面に貝殻11が突出して配設された3つ以上、例えば、6つのコンクリート製の壁体12の周縁部をそれぞれ連結して、平面視して正6角形状となっている。貝殻11としては、例えば、缶詰工場から排出される可食部を取り除いたサルボウガイ(赤貝)の貝殻を使用した。
【0013】
壁体12は、高さが1〜3m、幅が1〜3m、厚みが10〜30cm(本実施の形態では、高さ1.5m、幅1.5m、及び厚み15cmである)となっている。また、壁体12の幅方向の両側面は、それぞれ背面側に向かって60度に傾斜して形成されており、隣り合う壁体12の側面同士を接して6つの壁体12を配置すると、平面視して正6角形状(中空の6角柱)に形成される。
更に、各壁体12には、正面視して中央部に、例えば、高さ100cmかつ幅100cmの通水孔(窓)13が設けられ、6つの壁体12で構成される中空部分に海水が流入及び流出し易いようになっている。なお、通水孔13は、破損防止のため角部が面取りされている。
【0014】
各壁体12の周縁部には、ボルト14を挿入する貫通孔15が設けられている。矩形状の2つの片部が120度の角度で一体的に接続され平面視してくの字状となった連結金具17を、隣り合う壁体12の貫通孔15が設けられた連結部分の背面側に、各壁体12の背面に連結金具17の各片部が接するように、配置する。隣接する壁体12のそれぞれの貫通孔15に挿入されたボルト14を連結金具17の各片部に形成された貫通孔16に通してナット18で固定することにより、6つの壁体12が連結固定されて人工魚礁10が形成される。
【0015】
次に、図2を参照して、人工魚礁10の製造方法について説明する。
まず、幅方向両側に対向して設けられた側壁部20が内側に60度傾斜して配置された型枠21の底部22に砂23を高さ1〜5cm、例えば、2cm程度敷く。なお、型枠21の底部22の中央部分には、壁体12の通水孔13を形成する図示しない内側壁部が立設配置されている。次に、砂23上に貝殻11を高さ1〜5cm、例えば、2cm程度敷き詰める。更に、その上に砂利24を高さ0.5〜3cm、例えば、1cm程度敷き詰める。壁体12の厚み、すなわち、貝殻11、砂利24、及びコンクリート25の合計の厚みが10〜30cm(本実施の形態では、15cm)となるように、砂利24の上からコンクリート25を打設する。なお、コンクリートの厚みは、壁体の強度を保つ観点から5cm以上とすることが望ましい。
【0016】
コンクリート25を打設する際には、例えば、コンクリート25の高さが、例えば、4〜6cmとなった時点で、コンクリート25の上に鉄筋26を配置し、残りのコンクリート25を流し込んで、コンクリート25中に鉄筋26を埋設して、壁体12の強度を高める。また、壁体12の貫通孔15が形成される位置に、貫通孔15の内径と実質的に同じ長さの外径を有する棒状部材27を型枠21の底部22に対して垂直となるように配置する。コンクリート25の流し込みが終わった後、コンクリート25の上部から図示しないバイブレータで振動を与え、コンクリート25が硬化するまで静置する。なお、バイブレータでコンクリートに振動を与える代わりに、型枠21を振動させてもよい。
【0017】
コンクリート25が硬化した後、型枠21及び棒状部材27を外し、成形体を起こして、貝殻11が配設している面に水を掛けて砂23を除去する。このようにして、表面に貝殻11が突出して配設された壁体12を製造する。同様にして製造した6つの壁体12を、前述したように、ボルト14、連結金具17、及びナット18によってそれぞれ連結して人工魚礁10を製造する。
【0018】
本発明は、前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能であり、例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて本発明の人工魚礁の製造方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
例えば、前記実施の形態の人工魚礁の製造方法において、可食部を取り除いたサルボウガイの貝殻を使用したが、ホタテ貝、牡蠣、アサリ、ハマグリ、アワビ、トコブシ、サザエ、アコヤ貝、及びシロチョウ貝等の貝殻を単独又は混合して使用してもよく、その他の貝殻を用いてもよい。
【0019】
また、前記実施の形態では、6つの壁体を連結して、平面視して正6角形状の人工魚礁を製造したが、側面に実質的に45度の傾斜を付けた壁体を作成し、この壁体を4つ連結して、平面視して正方形の人工魚礁を作成してもよい。また、人工魚礁を、平面視して、長方形状、三角形、5角形以上の多角形状としてもよい。
また、コンクリートを打設して壁体を形成する際に、コンクリートの上部、すなわち、背面部に、貝殻を押し付けて配設し、壁体の両面に貝殻を突出させて配置してもよい。更に、貝殻の他に、竹筒、使用済飲料容器、パイプ、自然石、人工石、瓦、及び煉瓦屑のいずれか1又は2以上を配設してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(A)、(B)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係る人工魚礁の製造方法によって製造された人工魚礁の正面図、平面図である。
【図2】同人工魚礁の製造方法の説明図である。
【符号の説明】
【0021】
10:人工魚礁、11:貝殻、12:壁体、13:通水孔、14:ボルト、15:貫通孔、16:貫通孔、17:連結金具、18:ナット、20:側壁部、21:型枠、22:底部、23:砂、24:砂利、25:コンクリート、26:鉄筋、27:棒状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に貝殻が突出して配設されたコンクリート製の壁体の周縁部を連結して製造される人工魚礁の製造方法であって、
前記壁体は、型枠の底部に砂を敷き、該砂上に前記貝殻を敷き詰め、その上に砂利を敷き詰め、該砂利の上からコンクリートを打設し、該コンクリートが硬化した後に前記砂を除去して形成することを特徴とする人工魚礁の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の人工魚礁の製造方法において、前記砂の高さを1〜5cmに、前記貝殻の高さを1〜5cmに、前記砂利の高さを0.5〜3cmにそれぞれ敷き詰め、前記コンクリートを打設して成型した前記壁体の厚みを10〜30cmとしたことを特徴とする人工魚礁の製造方法。
【請求項3】
請求項1及び2のいずれか1項に記載の人工魚礁の製造方法において、前記コンクリートを打設する際に、鉄筋を該コンクリート内に配置すると共に、該コンクリートに振動を与えることを特徴とする人工魚礁の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−143483(P2007−143483A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−342357(P2005−342357)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(594121947)ライトンコスモ株式会社 (4)
【Fターム(参考)】