人工魚礁及び人工魚礁連結体
【課題】本発明の目的は、魚が、隠れ場、休み場、産卵場及び餌場として有効に利用でき、既存の漁場の拡大や新たな漁場の創出を図ることができる人工魚礁及び人工魚礁連結体を提供すること。
【解決手段】 魚類が通る通路を有する魚礁本体1aと、該魚礁本体の側端部に、魚礁本体を安定保持するための鍔部1bが形成され、魚礁本体1aには魚が出入り可能な大きさの通穴Hが形成されている人工魚礁。
魚礁本体の通路はアーチ状であり、通穴は複数個形成されている。
また、魚礁本体の前端から鍔部1bが一定長さ延長され且つ後端から鍔部1bが一定長さ欠損されているようにすると連結状態で極めて安定したものとなる人工魚礁。
【解決手段】 魚類が通る通路を有する魚礁本体1aと、該魚礁本体の側端部に、魚礁本体を安定保持するための鍔部1bが形成され、魚礁本体1aには魚が出入り可能な大きさの通穴Hが形成されている人工魚礁。
魚礁本体の通路はアーチ状であり、通穴は複数個形成されている。
また、魚礁本体の前端から鍔部1bが一定長さ延長され且つ後端から鍔部1bが一定長さ欠損されているようにすると連結状態で極めて安定したものとなる人工魚礁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海底、湖底及び河底等に沈められ魚が好んで入り込む人工魚礁及び人工魚礁連結体に関する。
より詳しくは、魚が、隠れ場、休み場、産卵場、餌場等として有効に利用することができる人工魚礁及び人工魚礁連結体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海底から凸凹状に突き出た岩場の所は天然礁と呼ばれ、魚が集まり又育成されるのに適した場である。
【0003】
こうした場所と同じ機能を発揮するように、コンクリートブロック等で作製した構造体を海底等に沈めて魚場とする方法があるが、この場合、構造体は人工的なものであるため、いわゆる「人工魚礁」と呼ばれている。
人工魚礁の存在は一般に、魚にとって生息環境の向上となり、既存の漁場の他に新たな漁場を拡大したり創出したりするものとして有用されている。
【0004】
魚礁の具体的な特徴として、水流の影響を阻止し、隠れ場、休み場、産卵場或いは餌場となり易いこと、すなわち魚が生きるために必要な機能が備わっていることが挙げられる。
【0005】
因みに、隠れ場とは、魚を餌とする比較的大きな魚から餌食魚が身を隠すための場所であり、休み場とは、潮の流れから離れて魚が休息するための場である。
また、魚礁が産卵場及び餌場の役割を果たす理由としては、魚礁には産卵に必要な海藻が育ち易いことや、プランクトンを摂取し易いことが挙げられる。
【0006】
ところで、実際に開発されている人工魚礁としては、例えば、直方体状の枠状のものが広く知られている(特許文献1及び特許文献2参照)。
なお、この人工魚礁は海底に沈められて魚の成長促進の場として用いられ、例えば、その大きさとしては長さが数メートルで重さが数トンのものがある(特許文献1の段落0011、図2)。
【0007】
【特許文献1】特許第2695735号公報
【特許文献2】特開平8−140519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来の人工魚礁では、総じてフレームを組み上げたような形状をしているため、構造自体が複雑である。
特に、コンクリート製のものの場合は、製造上、使用する金型が複雑となる。
またパイプや線材を使っているために製造コストが高くなる。
更に構造が複雑であるために沈下させる場合、水の抵抗を受け易く位置決めが難しくなり、またパイプや線材は変形し易く当初の設計形状を維持しにくい。
全体形状として角部が多くて、潮流の影響を受け易く、魚の隠れ場、休み場、産卵場及び餌場として必ずしも有効に機能していない。
【0009】
本発明は、このような従来の背景に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明は、魚が、隠れ場、休み場、産卵場及び餌場として有効に利用でき、既存の漁場の拡大や新たな漁場の創出を図ることができる人工魚礁及び人工魚礁連結体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かくして、本発明者は、このような課題背景に対して鋭意研究を重ねた結果、人工魚礁を曲面と平面を使ったシンプルな形状とすることにより、上記の問題点を解決することができることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたものである。
【0011】
すなわち、本発明は、(1)、魚類が通る通路を有する魚礁本体と、該魚礁本体の側端部に、魚礁本体を安定保持するための鍔部が形成され、魚礁本体には魚が出入り可能な大きさの通穴が形成されている人工魚礁に存する。
【0012】
また、本発明は、(2)、前記魚礁本体の通路はアーチ状に形成された上記(1)に記載の人工魚礁に存する。
【0013】
また、本発明は、(3)、前記通穴は複数個形成されている上記(1)に記載の人工魚礁に存する。
【0014】
また、本発明は、(4)、前記通穴は異なった形状の複数個が形成されている上記(1)に記載の人工魚礁に存する。
【0015】
また、本発明は、(5)、前記アーチ状に形成された通路が長手方向に径が小さくなっている上記(1)に記載の人工魚礁に存する。
【0016】
また、本発明は、(6)、前記鍔部に切り欠きが形成されている上記(1)に記載の人工魚礁に存する。
【0017】
また、本発明は、(7)、魚礁本体の前端から鍔部が一定長さ延長され且つ後端から鍔部が一定長さ欠損されている上記(1)に記載の人工魚礁に存する。
【0018】
また、本発明は、(8)、前記魚礁本体の壁面から多数の貝殻の破片を突出させた上記(1)に記載の人工魚礁に存する。
【0019】
また、本発明は、(9)、上記(1)ないし(4)のいずれか1項に記載の人工魚礁を複数相互に連結し、連続的に通路を形成した人工魚礁連結体に存する。
【0020】
なお、本発明の目的に添ったものであれば、上記(1)から(9)を適宜組み合わせた構成も採用可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の人工魚礁は、魚類が通る通路を有する魚礁本体と、該魚礁本体の側端部に、魚礁本体を安定保持するための鍔部が形成され、また魚礁本体には魚が出入り可能な大きさの通穴が形成されているので、通路内が魚の住み場(隠れ場、休み場、産卵場及び餌場)となり、通穴を通して魚が自由に出入りすることができる。
また、鍔部を備えることにより人工魚礁全体が安定した状態で海底に設置される。
【0022】
また、人工魚礁を複数相互に連結し、長い連続した通路を形成できるので、簡単に魚礁の拡張が可能である。
また魚礁本体に形成された通穴の形状や大きさが製造上、金型の一部の設計変更により容易に変えられるために、漁場に応じたものが提供できる。
結果的に、既存の漁場の拡大や新たな漁場の創出を容易に図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて説明する。
先ず、本発明の人工魚礁の利用形態を図1に示す。
本発明の人工魚礁1は、単独で使ったり、或いは、図1に示すように、複数相互に連結させて人工魚礁連結体として使用することもできる。
後者の場合、人工魚礁1同士の連結を確実にするために、例えば、連結具2を使って連結することがあるが、この例では人工魚礁にボルト穴を前もって開けておき連結板とボルトで連結した例を示した。
【0024】
また、多数個の人工魚礁1を連結し人工魚礁連結体とした場合には、一本の連続した長い通路Tを形成することができる。
【0025】
人工魚礁1の材料には、一般にコンクリートが用いられ、重量が重く海底でも安定するために、単体として、(或いは隣接させた状態として、)又は連結させた状態として、施工することが可能である。
【0026】
〔人工魚礁1〕
図2は、人工魚礁1の第1の実施の形態を示す斜視図である。
人工魚礁1は、魚類が通る通路Tを有する魚礁本体1aを備え、該魚礁本体の側端部には鍔部1bが形成されている。
また魚礁本体1aには魚が出入り可能な大きさの円形の通穴Hが形成されている。
魚礁本体1aはアーチ状に形成されており、内部の通路Tも同様にアーチ状の空間となっている。
この通路Tは、魚が群生する場となる。
【0027】
魚礁本体1aに通穴Hが形成されていることから、魚がこの通穴Hを通じて自由に通路内に出入りすることが可能である。
鍔部1bは、アーチ状の魚礁本体1aの側端部から外方に拡大するように形成されている。
この人工魚礁1は、この鍔部1bを有することにより人工魚礁全体を海の底地に安定した状態に着地させることができる。
【0028】
〔人工魚礁2〕
図3は、人工魚礁1の第2の実施の形態を示す斜視図である。
この人工魚礁1は、アーチ状の魚礁本体1aの全体に規則的に多数の円形の通穴Hが形成されているものである。
この通穴Hは、ランダムに形成することも当然可能である。
【0029】
〔人工魚礁3〕
図4は、人工魚礁1の第3の実施の形態を示す斜視図である。
この人工魚礁1は、アーチ状の魚礁本体1aの全体にそれぞれ異なった大きさの円形の3個の通穴Hが形成されているものである。
それぞれの円形の通穴Hの配置は、例えば、中央に最小の通穴Hを形成する等の変更は当然可能である。
【0030】
〔人工魚礁4〕
図5は人工魚礁1の第4の実施の形態を示す斜視図である。
この人工魚礁1は、アーチ状の魚礁本体1aに3つの矩形の通穴Hが形成されているものである。
当然、この矩形の通穴Hの数は自由に設定可能である。
【0031】
〔人工魚礁5〕
図6は、人工魚礁1の第5の実施の形態を示す斜視図である。
この人工魚礁1は、アーチ状の魚礁本体1aの通路Tが長手方向に径が徐々に小さくなっているものである。
このように通路Tの径を設定することで、海水の動きのない深海に沈下させた場合にも通路Tに水の流れが生じ易い。
【0032】
〔人工魚礁6〕
図7は、人工魚礁1の第6の実施の形態を示す斜視図である。
この人工魚礁1は、図2の人工魚礁1の鍔部1bに切り欠きKが形成されているものである。
この切り欠きKは、人工魚礁1を海底に沈下施工させた場合に、底面の凸凹を逃がすためのものであり、この部分に海底の突起が嵌まることで、人工魚礁1の遊動が阻止される利点がある。
【0033】
〔人工魚礁7〕
図8は、人工魚礁1の第7の実施の形態を示す斜視図である。
この人工魚礁1は、魚礁本体1aの前端から鍔部1bが一定長さ延長されて延長部1b1となっている。
また魚礁本体1aの後端から鍔部1bが一定長さ欠損されて欠損部1b2が形成されている。
【0034】
従って、このような人工魚礁1を複数個連結させていくと、図9に示すように、前方にある第1の人工魚礁1Xの鍔部1bの欠損部1b2に、後方にある第2の人工魚礁1Yの鍔部1bの延長部1b1が嵌まり込むようになる。
その場合、その第2の人工魚礁1Yの延長部1b1の上に、第1の人工魚礁1Xの魚礁本体1aの一部の下面が載置された状態となる。
そのため、海底に敷設した場合、一方の人工魚礁1Xが他方の人工魚礁1Y下方に押さえるように作用するために連結させた場合に安定化する。
【0035】
以下、本発明を実施例にしたがって述べるが、本発明は実施例にのみ限定されるものではない。
【0036】
(実施例)
上述の図2に示した形状のコンクリート製の人工魚礁1を5個試作した。
魚礁本体1aの内径は3m、外径が3.2m、厚さが0.2m、長さが2m、鍔部1bの幅が1mである。
また通穴Hの径は0.5mした。
人工魚礁1の重量は約6tであった。
そして、2個を連結させて人工魚礁連結体(実験用魚礁A)とし、残りは単独の実験用魚礁(B、C、D)として、海底20メートルの位置に沈下させ敷設した。
【0037】
以上の施工を行い、1年経過した後、各実験用魚礁の状態を観察した。
その結果、実験用魚礁A、実験用魚礁(B、C、D)とも、海草等が密度濃く繁殖しており、また魚が通路に多く集まっているのが確認できた。
また、通穴から小魚が自由に出入りしているのが観察された。
【0038】
本発明の人工魚礁によれば、通路内が魚の住み場(隠れ場、休み場、産卵場及び餌場)となり、通穴を通して魚が自由に出入りすることができる。
また、鍔部を備えることにより人工魚礁全体が安定した状態で海底に設置できる。
また、人工魚礁を複数相互に連結し、長い連続した通路を形成できるので、簡単に魚礁の拡張が可能であり、そのため、既存の漁場の拡大や新たな漁場の創出を容易に図ることができる。
【0039】
以上、本発明を説明してきたが、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、その本質を逸脱しない範囲で、他の種々の変形が可能であることはいうまでもない。
例えば、魚礁としては、海底だけでなく、湖底や河底に沈めて用いることも可能である。
【0040】
また、連結具としては、図1に示すようなもの以外にも、例えば図10に示すようなコの字状の連結具2等、種々のものが採用可能である。
図10の場合には、連結具2を嵌め込むための嵌り溝Lを鍔部1bに形成することとなる。
【0041】
また、人工魚礁の材料としては、主としてコンクリートが用いられるが、水に沈むものであれば種々の材料が採用可能である。
また、コンクリートを使用する場合、用途によっては、図11(図2のA−A断面)に示すように、その中に貝殻等の破片を混入すると良い。
このようにすると、魚礁本体1aの内壁面から多数の貝殻等の破片4が突出し、海藻5の胞子が付着し繁殖し易くなり、餌食魚の餌場として優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、本発明の人工魚礁の利用形態を示す説明図である。
【図2】図2は、本発明の人工魚礁の第1の実施形態を示す説明図である。
【図3】図3は、本発明の人工魚礁の第2の実施形態を示す説明図である。
【図4】図4は、本発明の人工魚礁の第3の実施形態を示す説明図である。
【図5】図5は、本発明の人工魚礁の第4の実施形態を示す説明図である。
【図6】図6は、本発明の人工魚礁の第5の実施形態を示す説明図である。
【図7】図7は、本発明の人工魚礁の第6の実施形態を示す説明図である。
【図8】図8は、本発明の人工魚礁の第7の実施形態を示す説明図である。
【図9】図9は、図8の人工魚礁を連結した場合を示す説明図である。
【図10】図10は、連結具を使って魚礁を連結した場合の別の例を示す説明図である。
【図11】図11は、貝殻の破片を混入したコンクリート製の人工魚礁を示す説明図である。
【符号の説明】
【0043】
1 人工魚礁
1a 魚礁本体
1b 鍔部
1b1 延長部
1b2 欠損部
2 連結具
3 魚
4 貝殻の破片
5 海藻
H 通穴
K 切り欠き
L 嵌り溝
T 通路
【技術分野】
【0001】
本発明は、海底、湖底及び河底等に沈められ魚が好んで入り込む人工魚礁及び人工魚礁連結体に関する。
より詳しくは、魚が、隠れ場、休み場、産卵場、餌場等として有効に利用することができる人工魚礁及び人工魚礁連結体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海底から凸凹状に突き出た岩場の所は天然礁と呼ばれ、魚が集まり又育成されるのに適した場である。
【0003】
こうした場所と同じ機能を発揮するように、コンクリートブロック等で作製した構造体を海底等に沈めて魚場とする方法があるが、この場合、構造体は人工的なものであるため、いわゆる「人工魚礁」と呼ばれている。
人工魚礁の存在は一般に、魚にとって生息環境の向上となり、既存の漁場の他に新たな漁場を拡大したり創出したりするものとして有用されている。
【0004】
魚礁の具体的な特徴として、水流の影響を阻止し、隠れ場、休み場、産卵場或いは餌場となり易いこと、すなわち魚が生きるために必要な機能が備わっていることが挙げられる。
【0005】
因みに、隠れ場とは、魚を餌とする比較的大きな魚から餌食魚が身を隠すための場所であり、休み場とは、潮の流れから離れて魚が休息するための場である。
また、魚礁が産卵場及び餌場の役割を果たす理由としては、魚礁には産卵に必要な海藻が育ち易いことや、プランクトンを摂取し易いことが挙げられる。
【0006】
ところで、実際に開発されている人工魚礁としては、例えば、直方体状の枠状のものが広く知られている(特許文献1及び特許文献2参照)。
なお、この人工魚礁は海底に沈められて魚の成長促進の場として用いられ、例えば、その大きさとしては長さが数メートルで重さが数トンのものがある(特許文献1の段落0011、図2)。
【0007】
【特許文献1】特許第2695735号公報
【特許文献2】特開平8−140519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来の人工魚礁では、総じてフレームを組み上げたような形状をしているため、構造自体が複雑である。
特に、コンクリート製のものの場合は、製造上、使用する金型が複雑となる。
またパイプや線材を使っているために製造コストが高くなる。
更に構造が複雑であるために沈下させる場合、水の抵抗を受け易く位置決めが難しくなり、またパイプや線材は変形し易く当初の設計形状を維持しにくい。
全体形状として角部が多くて、潮流の影響を受け易く、魚の隠れ場、休み場、産卵場及び餌場として必ずしも有効に機能していない。
【0009】
本発明は、このような従来の背景に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明は、魚が、隠れ場、休み場、産卵場及び餌場として有効に利用でき、既存の漁場の拡大や新たな漁場の創出を図ることができる人工魚礁及び人工魚礁連結体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かくして、本発明者は、このような課題背景に対して鋭意研究を重ねた結果、人工魚礁を曲面と平面を使ったシンプルな形状とすることにより、上記の問題点を解決することができることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたものである。
【0011】
すなわち、本発明は、(1)、魚類が通る通路を有する魚礁本体と、該魚礁本体の側端部に、魚礁本体を安定保持するための鍔部が形成され、魚礁本体には魚が出入り可能な大きさの通穴が形成されている人工魚礁に存する。
【0012】
また、本発明は、(2)、前記魚礁本体の通路はアーチ状に形成された上記(1)に記載の人工魚礁に存する。
【0013】
また、本発明は、(3)、前記通穴は複数個形成されている上記(1)に記載の人工魚礁に存する。
【0014】
また、本発明は、(4)、前記通穴は異なった形状の複数個が形成されている上記(1)に記載の人工魚礁に存する。
【0015】
また、本発明は、(5)、前記アーチ状に形成された通路が長手方向に径が小さくなっている上記(1)に記載の人工魚礁に存する。
【0016】
また、本発明は、(6)、前記鍔部に切り欠きが形成されている上記(1)に記載の人工魚礁に存する。
【0017】
また、本発明は、(7)、魚礁本体の前端から鍔部が一定長さ延長され且つ後端から鍔部が一定長さ欠損されている上記(1)に記載の人工魚礁に存する。
【0018】
また、本発明は、(8)、前記魚礁本体の壁面から多数の貝殻の破片を突出させた上記(1)に記載の人工魚礁に存する。
【0019】
また、本発明は、(9)、上記(1)ないし(4)のいずれか1項に記載の人工魚礁を複数相互に連結し、連続的に通路を形成した人工魚礁連結体に存する。
【0020】
なお、本発明の目的に添ったものであれば、上記(1)から(9)を適宜組み合わせた構成も採用可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の人工魚礁は、魚類が通る通路を有する魚礁本体と、該魚礁本体の側端部に、魚礁本体を安定保持するための鍔部が形成され、また魚礁本体には魚が出入り可能な大きさの通穴が形成されているので、通路内が魚の住み場(隠れ場、休み場、産卵場及び餌場)となり、通穴を通して魚が自由に出入りすることができる。
また、鍔部を備えることにより人工魚礁全体が安定した状態で海底に設置される。
【0022】
また、人工魚礁を複数相互に連結し、長い連続した通路を形成できるので、簡単に魚礁の拡張が可能である。
また魚礁本体に形成された通穴の形状や大きさが製造上、金型の一部の設計変更により容易に変えられるために、漁場に応じたものが提供できる。
結果的に、既存の漁場の拡大や新たな漁場の創出を容易に図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて説明する。
先ず、本発明の人工魚礁の利用形態を図1に示す。
本発明の人工魚礁1は、単独で使ったり、或いは、図1に示すように、複数相互に連結させて人工魚礁連結体として使用することもできる。
後者の場合、人工魚礁1同士の連結を確実にするために、例えば、連結具2を使って連結することがあるが、この例では人工魚礁にボルト穴を前もって開けておき連結板とボルトで連結した例を示した。
【0024】
また、多数個の人工魚礁1を連結し人工魚礁連結体とした場合には、一本の連続した長い通路Tを形成することができる。
【0025】
人工魚礁1の材料には、一般にコンクリートが用いられ、重量が重く海底でも安定するために、単体として、(或いは隣接させた状態として、)又は連結させた状態として、施工することが可能である。
【0026】
〔人工魚礁1〕
図2は、人工魚礁1の第1の実施の形態を示す斜視図である。
人工魚礁1は、魚類が通る通路Tを有する魚礁本体1aを備え、該魚礁本体の側端部には鍔部1bが形成されている。
また魚礁本体1aには魚が出入り可能な大きさの円形の通穴Hが形成されている。
魚礁本体1aはアーチ状に形成されており、内部の通路Tも同様にアーチ状の空間となっている。
この通路Tは、魚が群生する場となる。
【0027】
魚礁本体1aに通穴Hが形成されていることから、魚がこの通穴Hを通じて自由に通路内に出入りすることが可能である。
鍔部1bは、アーチ状の魚礁本体1aの側端部から外方に拡大するように形成されている。
この人工魚礁1は、この鍔部1bを有することにより人工魚礁全体を海の底地に安定した状態に着地させることができる。
【0028】
〔人工魚礁2〕
図3は、人工魚礁1の第2の実施の形態を示す斜視図である。
この人工魚礁1は、アーチ状の魚礁本体1aの全体に規則的に多数の円形の通穴Hが形成されているものである。
この通穴Hは、ランダムに形成することも当然可能である。
【0029】
〔人工魚礁3〕
図4は、人工魚礁1の第3の実施の形態を示す斜視図である。
この人工魚礁1は、アーチ状の魚礁本体1aの全体にそれぞれ異なった大きさの円形の3個の通穴Hが形成されているものである。
それぞれの円形の通穴Hの配置は、例えば、中央に最小の通穴Hを形成する等の変更は当然可能である。
【0030】
〔人工魚礁4〕
図5は人工魚礁1の第4の実施の形態を示す斜視図である。
この人工魚礁1は、アーチ状の魚礁本体1aに3つの矩形の通穴Hが形成されているものである。
当然、この矩形の通穴Hの数は自由に設定可能である。
【0031】
〔人工魚礁5〕
図6は、人工魚礁1の第5の実施の形態を示す斜視図である。
この人工魚礁1は、アーチ状の魚礁本体1aの通路Tが長手方向に径が徐々に小さくなっているものである。
このように通路Tの径を設定することで、海水の動きのない深海に沈下させた場合にも通路Tに水の流れが生じ易い。
【0032】
〔人工魚礁6〕
図7は、人工魚礁1の第6の実施の形態を示す斜視図である。
この人工魚礁1は、図2の人工魚礁1の鍔部1bに切り欠きKが形成されているものである。
この切り欠きKは、人工魚礁1を海底に沈下施工させた場合に、底面の凸凹を逃がすためのものであり、この部分に海底の突起が嵌まることで、人工魚礁1の遊動が阻止される利点がある。
【0033】
〔人工魚礁7〕
図8は、人工魚礁1の第7の実施の形態を示す斜視図である。
この人工魚礁1は、魚礁本体1aの前端から鍔部1bが一定長さ延長されて延長部1b1となっている。
また魚礁本体1aの後端から鍔部1bが一定長さ欠損されて欠損部1b2が形成されている。
【0034】
従って、このような人工魚礁1を複数個連結させていくと、図9に示すように、前方にある第1の人工魚礁1Xの鍔部1bの欠損部1b2に、後方にある第2の人工魚礁1Yの鍔部1bの延長部1b1が嵌まり込むようになる。
その場合、その第2の人工魚礁1Yの延長部1b1の上に、第1の人工魚礁1Xの魚礁本体1aの一部の下面が載置された状態となる。
そのため、海底に敷設した場合、一方の人工魚礁1Xが他方の人工魚礁1Y下方に押さえるように作用するために連結させた場合に安定化する。
【0035】
以下、本発明を実施例にしたがって述べるが、本発明は実施例にのみ限定されるものではない。
【0036】
(実施例)
上述の図2に示した形状のコンクリート製の人工魚礁1を5個試作した。
魚礁本体1aの内径は3m、外径が3.2m、厚さが0.2m、長さが2m、鍔部1bの幅が1mである。
また通穴Hの径は0.5mした。
人工魚礁1の重量は約6tであった。
そして、2個を連結させて人工魚礁連結体(実験用魚礁A)とし、残りは単独の実験用魚礁(B、C、D)として、海底20メートルの位置に沈下させ敷設した。
【0037】
以上の施工を行い、1年経過した後、各実験用魚礁の状態を観察した。
その結果、実験用魚礁A、実験用魚礁(B、C、D)とも、海草等が密度濃く繁殖しており、また魚が通路に多く集まっているのが確認できた。
また、通穴から小魚が自由に出入りしているのが観察された。
【0038】
本発明の人工魚礁によれば、通路内が魚の住み場(隠れ場、休み場、産卵場及び餌場)となり、通穴を通して魚が自由に出入りすることができる。
また、鍔部を備えることにより人工魚礁全体が安定した状態で海底に設置できる。
また、人工魚礁を複数相互に連結し、長い連続した通路を形成できるので、簡単に魚礁の拡張が可能であり、そのため、既存の漁場の拡大や新たな漁場の創出を容易に図ることができる。
【0039】
以上、本発明を説明してきたが、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、その本質を逸脱しない範囲で、他の種々の変形が可能であることはいうまでもない。
例えば、魚礁としては、海底だけでなく、湖底や河底に沈めて用いることも可能である。
【0040】
また、連結具としては、図1に示すようなもの以外にも、例えば図10に示すようなコの字状の連結具2等、種々のものが採用可能である。
図10の場合には、連結具2を嵌め込むための嵌り溝Lを鍔部1bに形成することとなる。
【0041】
また、人工魚礁の材料としては、主としてコンクリートが用いられるが、水に沈むものであれば種々の材料が採用可能である。
また、コンクリートを使用する場合、用途によっては、図11(図2のA−A断面)に示すように、その中に貝殻等の破片を混入すると良い。
このようにすると、魚礁本体1aの内壁面から多数の貝殻等の破片4が突出し、海藻5の胞子が付着し繁殖し易くなり、餌食魚の餌場として優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、本発明の人工魚礁の利用形態を示す説明図である。
【図2】図2は、本発明の人工魚礁の第1の実施形態を示す説明図である。
【図3】図3は、本発明の人工魚礁の第2の実施形態を示す説明図である。
【図4】図4は、本発明の人工魚礁の第3の実施形態を示す説明図である。
【図5】図5は、本発明の人工魚礁の第4の実施形態を示す説明図である。
【図6】図6は、本発明の人工魚礁の第5の実施形態を示す説明図である。
【図7】図7は、本発明の人工魚礁の第6の実施形態を示す説明図である。
【図8】図8は、本発明の人工魚礁の第7の実施形態を示す説明図である。
【図9】図9は、図8の人工魚礁を連結した場合を示す説明図である。
【図10】図10は、連結具を使って魚礁を連結した場合の別の例を示す説明図である。
【図11】図11は、貝殻の破片を混入したコンクリート製の人工魚礁を示す説明図である。
【符号の説明】
【0043】
1 人工魚礁
1a 魚礁本体
1b 鍔部
1b1 延長部
1b2 欠損部
2 連結具
3 魚
4 貝殻の破片
5 海藻
H 通穴
K 切り欠き
L 嵌り溝
T 通路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚類が通る通路を有する魚礁本体と、該魚礁本体の側端部に、魚礁本体を安定保持するための鍔部が形成され、魚礁本体には魚が出入り可能な大きさの通穴が形成されていることを特徴とする人工魚礁。
【請求項2】
前記魚礁本体の通路はアーチ状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の人工魚礁。
【請求項3】
前記通穴は複数個形成されていることを特徴とする請求項1に記載の人工魚礁。
【請求項4】
前記通穴は異なった形状の複数個が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の人工魚礁。
【請求項5】
前記アーチ状に形成された通路が長手方向に径が小さくなっていることを特徴とする請求項1に記載の人工魚礁。
【請求項6】
前記鍔部に切り欠きが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の人工魚礁。
【請求項7】
魚礁本体の前端から鍔部が一定長さ延長され且つ後端から鍔部が一定長さ欠損されていることを特徴とする請求項1に記載の人工魚礁。
【請求項8】
前記魚礁本体の壁面から多数の貝殻の破片を突出させたことを特徴とする請求項1に記載の人工魚礁。
【請求項9】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の人工魚礁を複数相互に連結し、連続的に通路を形成したことを特徴とする人工魚礁連結体。
【請求項1】
魚類が通る通路を有する魚礁本体と、該魚礁本体の側端部に、魚礁本体を安定保持するための鍔部が形成され、魚礁本体には魚が出入り可能な大きさの通穴が形成されていることを特徴とする人工魚礁。
【請求項2】
前記魚礁本体の通路はアーチ状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の人工魚礁。
【請求項3】
前記通穴は複数個形成されていることを特徴とする請求項1に記載の人工魚礁。
【請求項4】
前記通穴は異なった形状の複数個が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の人工魚礁。
【請求項5】
前記アーチ状に形成された通路が長手方向に径が小さくなっていることを特徴とする請求項1に記載の人工魚礁。
【請求項6】
前記鍔部に切り欠きが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の人工魚礁。
【請求項7】
魚礁本体の前端から鍔部が一定長さ延長され且つ後端から鍔部が一定長さ欠損されていることを特徴とする請求項1に記載の人工魚礁。
【請求項8】
前記魚礁本体の壁面から多数の貝殻の破片を突出させたことを特徴とする請求項1に記載の人工魚礁。
【請求項9】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の人工魚礁を複数相互に連結し、連続的に通路を形成したことを特徴とする人工魚礁連結体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−6768(P2007−6768A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−191139(P2005−191139)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(505249034)有限会社栄丸 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(505249034)有限会社栄丸 (1)
【Fターム(参考)】
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