説明

人形体の腰部関節構造

【課題】腕や脚を動かしたときに、人間に近い動作を行い、本物らしく、見栄えの良好な姿勢をとることができる人形体の腰部関節構造を提供する。
【解決手段】一対の脚3,3を両側面に回動可能且つ任意角度で固定可能に連結する股関節部材11と、上面に上体4を回転可能に支持する上体支持部12とが、相対的に前後に移動可能に連結されている。このため、左右の脚3を前後する歩行状態の姿勢において、脚3の回動に伴い股関節部材11を上体支持部12に対して前後に移動させることにより、人間の歩行動作に近い姿勢をとることができ、本物らしく、見栄えの良好な姿勢をとることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人形体の腰部関節構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2本の脚を回動自在に有する人形体として、ロボット等のプラスチックモデル(以下、プラモデルという)が知られている。このようなプラモデルにはユーザーが自由にポーズを決ることができるように複数の関節が設けられている。そして、関節を介して結合する腕や足を回動自在に構成するために多種多様の関節を備えた人形体が開発されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の人形体においては、球形の関節軸と、関節軸に嵌合できる嵌合凹部を備える連結体とからなっている。すなわち、腰部に連結された関節軸の先端の球部を、脚に設けられている嵌合凹部に嵌合させることにより、脚を前後に回動可能に支持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−327841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した特許文献1に記載の従来の人形体においては、脚を前後して歩行の姿勢をとる際に、脚を関節軸回りに回動させると、脚が関節軸を中心とした単純な円運動をする。このため、脚と腰との位置関係が不自然になり、人間等における脚の動きとは異なるので、本物らしくなく、見栄えが悪いという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、脚を前後に回動して歩行姿勢をとる際に、人間に近い動作を行い、本物らしく、見栄えの良好な姿勢をとることができる人形体の腰部関節構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の人形体の腰部関節構造は、一対の脚を両側面に回動可能且つ任意角度で固定可能に連結するとともに、上面に上体を回転可能に支持する人形体の腰部関節構造であって、前記一対の脚を支持する股関節部材と、前記上体を支持する上体支持部とが、相対的に前後に移動可能に連結されている構成を有している。
【0008】
また、本発明の人形体の腰部関節構造において、前記股関節部材と、前記上体支持部と、前記股関節部材及び前記上体支持部を連結する一対の前後リンク部材により、平行四辺形のリンク機構を構成し、前記股関節部材が前記上体支持部に対して相対的に前後に平行移動する構成を有することが好ましい。
【0009】
また、本発明の人形体の腰部関節構造において、前記上体支持部は前記上体を回転可能に支持しており、前記一対の脚を前後して歩行させる際に、前記股関節部材を前記上体支持部に対して相対的に前後に平行移動させるとともに、前方へ回動した脚側を後方へ移動させるように前記上体に対して前記股関節部材を相対的に回転させる構成を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る人形体の腰部関節構造によれば、左右の脚を前後する歩行状態の姿勢において、脚の回動に伴い股関節部材を上体支持部に対して前後に移動させることにより、人間の歩行状態に近い姿勢をとることができ、本物らしく、見栄えの良好な姿勢をとることができる人形体の腰部関節構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明にかかる実施形態の人形体の腰部関節構造を用いた人形体の全体斜視図である。
【図2】人形体の腰部及び上体の斜視図である。
【図3】人形体の腰部関節の分解斜視図である。
【図4】(A)は直立時における腰部関節構造の側面図、(B)は歩行時における腰部関節構造の側面図である。
【図5】(A)は直立時における腰部の外観の側面図、(B)は歩行時における腰部の外観の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以後の説明において、各部材(または各部分)の動き方を区別するために、各部材の軸(長手方向に沿った中心軸)回りに回転することを「回転」で示し、各部材の一点(例えば、一端)を中心として部材が円運動をする動作を「回動」で示すこととする。また、回転可能あるいは回動可能に支持される部材(部分)は、全て、所定の角度回転または回動した状態で手を放すと、その状態を保持するので、特記する場合を除き、「回転可能」及び「回動可能」の文言には、所定角度で固定可能の意味を含むものとする。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の人形体の腰部関節構造10は、例えば、人形体1の腰部2に適用することができる。人形体1は、2本の脚3,3、3を前後方向に回動可能に支持する腰部2、腰部2の上に所定角度回転可能且つ前後左右に回動可能に支持される上体4、上体4に回動可能に支持される2本の腕5,5、及び上体4の上に首6を介して回転可能に支持される頭部(図示省略)を有する。
【0014】
図2にも示すように、上体4は上端の中央に首6を有するとともに、左右両側に腕5を回動可能に支持する肩関節41を有する。また、上体4の下部には、腰部2に回転可能に支持される背骨42を有する。
【0015】
図3に示すように、背骨42は、上部に上体4を回転可能且つ回動可能に支持する支持球体42aを有し、下部にも支持球体42bを有する。背骨42の下側には、支持球体42bを回転可能且つ回動可能に支持する受け部材43を有する。受け部材43は、左右に長い平板状の本体43aの上面に、背骨42の支持球体42bを回転可能且つ回動可能に受ける軸受け43bを有し、本体43aの左右両端部には、嵌合穴43c、43cを有する。
【0016】
受け部材43の下側には、背骨42を腰部関節構造10に連結する連結部材44を有する。連結部材44は、左右に長い平板状の本体44aを有し、本体44aの下面には、腰部関節構造10によって回転可能且つ回動可能に支持される支持球体44bを有する。なお、連結部材44は、本体44aの上面両端部に設けられている係止突起44c、44cを、受け部材43の本体43aに設けられている嵌合穴43c、43cに嵌合させて結合される。
【0017】
図2乃至図4に示すように、腰部関節構造10は、一対の脚3,3を支持する股関節部材11と、上体4を支持する上体支持部12とが、相対的に前後に移動可能に連結されている。すなわち、股関節部材11と上体支持部12とが、一対の前後リンク部材13,14により連結されて、平行四辺形のリンク機構を構成する。
【0018】
股関節部材11は、上方が開口(開口部111a)した箱状の関節筐体111と、この関節筐体111の内部に収容される軸受け部112を有する。関節筐体111は、対向する左右の側板111b、111bに円形の切欠き111cを有し、前後の縦壁111d、111dには、それぞれ前方及び後方へ向かって突出する一対のブラケット111e、111eが設けられている。対向するブラケット111eの内面には、それぞれ軸突起111fが突設されている。
【0019】
軸受け部112は、関節筐体111の開口部111aから内部空間に挿入される矩形板状の本体112aを有し、本体112aの左右両側面には、脚3を回動可能に支持する軸受け112bを有する。左右の軸受け112bは、それぞれ関節筐体111の左右の側板111b、111bの切欠き111cから外部に露出する。
【0020】
上体支持部12は、水平な矩形平板状の本体121を有し、本体121の上面中央には上体4下端部の支持球体44bが嵌合する球体支持凹部126を有する。これにより、上体4は、腰部2に枢着されて、前後左右あらゆる方向へ回転可能且つ回動可能に支持される。また、上体4は背骨42の軸を中心として回転可能に支持される。また、本体121の前端および後端には、それぞれ左右一対の円筒形状の軸受け部122、123を有する。一対の軸受け部122,122の間には軸124が設けられ、軸受け部123,123の間には軸125が設けられている。
【0021】
前リンク部材13は、上下方向の棒状部材であり、上端には上体支持部12の軸124が軸支される軸受け穴131を有する。また、下端には、関節筐体111の軸突起111fが内嵌する嵌合穴132を有する。同様に、後リンク部材14は、上下方向の棒状部材であり、上端には上体支持部12の軸125が軸支される軸受け穴141を有する。また、下端には、関節筐体111の軸突起111fが内嵌する嵌合穴142を有する。
【0022】
図5(A)及び(B)には、図4に示した腰部関節構造10の外側に、装飾部材を取り付けた状態を示している。すなわち、前リンク部材13の前方に前装飾品15が取り付けられ、後リンク部材14の後方には後装飾品16が取り付けられる。これにより、腰部関節構造10の骨組みが、前方及び後方から見えないようにしている。なお、腰部関節構造10の左右外側には装飾品取付け部材17,17(図1及び図2参照)が設けられており、脚3の外側を覆う装飾品18(図5参照)が取り付けられる。
【0023】
次に、腰部関節構造10における動作について説明する。図4(A)に示すように、脚3を前後しない直立状態では、前リンク部材13及び後リンク部材14が鉛直方向に保持されており、股関節部材11の真上に上体支持部12が位置する。この状態では、前装飾品15及び後装飾品16も真っ直ぐに配置される(図5(A)参照)。
【0024】
一方、左右の脚3を前後に回動する歩行状態では、図4(B)に示すように、前後のリンク部材13,14を傾けることにより、脚3を支持する股関節部材11を上体4を支持する上体支持部12に対して、水平状態を保持したまま前方にずらす(図4(B)の矢印参照)。この状態では、前装飾品15及び後装飾品16もリンク部材13,14と同様に傾く(図5(B)参照)。
【0025】
なお、このとき、上体4の姿勢は、股関節構造10に対して、直立、前後屈、横屈及び回転等が可能であり、左右の脚3のうち前方へ回動(歩行)した脚3側の肩関節41を後方へ移動させるように、股関節構造10に対して上体4を相対的に回転させるのが望ましい。すなわち、例えば、左の脚3を前方へ回動させた場合には、上体4に対して股関節部材11の左側を後方へ移動させるように股関節部材11を相対的に回転させる(図5(B)において矢印A参照)。
【0026】
本実施形態の人形体の要部関節構造10によれば、一対の脚3、3を両側面に回動可能に連結する股関節部材11と、上面に上体4を回転可能且つ回動可能に支持する上体支持部12とが、相対的に前後に移動可能に連結されている。このため、左右の脚3を前後する歩行状態の姿勢において、脚3の回動に伴い股関節部材11を上体支持部12に対して前後に移動させることにより、人間の歩行動作に近い姿勢をとることができ、本物らしく、見栄えの良好な姿勢をとることができる。
【0027】
また、股関節部材11と上体支持部12は、前後リンク部材13,14により平行四辺形のリンク機構を構成しているので、股関節部材11は上体支持部12に対して相対的に前後に平行移動することができる。
【0028】
さらに、一対の脚3、3を前後して歩行させる際に、股関節部材11を上体支持部12に対して相対的に前後に平行移動させるとともに、前方へ回動させた脚3側を後方へ移動させるように腰部関節構造10を本体に対して相対的に回転させる。これにより、一層人間の歩行動作に近い姿勢をとることができ、本物らしく、見栄えの良好な姿勢をとることができる。
【0029】
なお、本発明に係る人形体の腰部関節構造は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形、変化が可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 人形体
3 脚
4 上体
10 腰部関節構造
11 股関節部材
12 上体支持部
13 前リンク部材
14 後リンク部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の脚を両側面に回動可能且つ任意角度で固定可能に連結するとともに、上面に上体を回転可能に支持する人形体の腰部関節構造であって、
前記一対の脚を支持する股関節部材と、前記上体を支持する上体支持部とが、相対的に前後に移動可能に連結されていることを特徴とする人形体の腰部関節構造。
【請求項2】
前記股関節部材と、前記上体支持部と、前記股関節部材及び前記上体支持部を連結する一対の前後リンク部材により、平行四辺形のリンク機構を構成し、
前記股関節部材が前記上体支持部に対して相対的に前後に平行移動することを特徴とする請求項1に記載の人形体の腰部関節構造。
【請求項3】
前記上体支持部は前記上体を回転可能に支持しており、前記一対の脚を前後して歩行させる際に、前記股関節部材を前記上体支持部に対して相対的に前後に平行移動させるとともに、前方へ回動した脚側を後方へ移動させるように前記上体に対して前記股関節部材を相対的に回転させることを特徴とする請求項2に記載の人形体の腰部関節構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−176325(P2012−176325A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−140823(P2012−140823)
【出願日】平成24年6月22日(2012.6.22)
【分割の表示】特願2010−110546(P2010−110546)の分割
【原出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000135748)株式会社バンダイ (246)
【Fターム(参考)】