説明

人形体の関節構造

【課題】腕や脚を動かしたときに、人間に近い動作を行い、本物らしく、見栄えの良好な姿勢をとることができる人形体の関節構造を提供する。
【解決手段】第1部材22は関節本体21の第1回動軸211に回動可能に支持され、第2部材23は関節本体21の第2回動軸212に回動可能に支持されており、第1部材22及び第2部材23を回動させると関節本体21が回転移動するので、人間に近い動作を行い、本物らしく、見栄えの良好な姿勢をとることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人形体の関節構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の人形体として、ロボット等のプラスチックモデル(以下、プラモデルという)が知られている。このようなプラモデルにはユーザーが自由にポーズを決めることができるように複数の関節が設けられている。そして、関節を介して結合する腕や足を回転自在に構成するために多種多様の関節を備えた人形体が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の人形体は、球形の関節軸と、関節軸に嵌合できる嵌合凹部を備える連結体とからなっている。
【0004】
また、特許文献2に記載の人形体は、大腿部材の下端にバネによって付勢された係止突起を備えている。一方、下腿部材の上端には下腿部材の回転中心を中心とする円形のボスが設けられ、円形のボスには複数の係合凹部が形成されている。そして人形体は、任意の箇所の係合凹部に係止突起を圧接させて、関節を固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−327841号公報
【特許文献2】特開2001−74030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述したような従来の人形体においては、腕や脚を関節回りに回動させた場合、腕や脚が関節を中心とした単純な円運動をするため、腕や脚が関節とは別個に移動する。このため、人間等における腕や脚の動きとは異なり、本物らしくなく、見栄えが悪いという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、腕や脚を動かしたときに、人間に近い動作を行い、本物らしく、見栄えの良好な姿勢をとることができる人形体の関節構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の人形体の関節構造は、第1部材と第2部材とを相対的に回動可能に連結する人形体の関節構造であって、前記第1部材を回動可能に支持する第1回動軸と、前記第2部材を回動可能に支持する第2回動軸と、を有する関節本体を備え、前記関節本体が、前記第1部材及び前記第2部材の回動に伴って回転移動する構成を有している。
【0009】
また、本発明の人形体の関節構造において、前記第1部材に設けられた軸方向に沿って長い第1摺動穴に沿って一端が摺動するとともに他端が前記関節本体に回動可能に取り付けられた第1連結部材と、前記第2部材に設けられた軸方向に沿って長い第2摺動穴に沿って一端が摺動するとともに他端が前記関節本体に回動可能に取り付けられた第2連結部材と、を有する構成を有してもよい。また、前記関節本体に長円孔が設けられる構成としてもよい。
【0010】
また、本発明の人形体の関節構造において、前記第1部材及び前記第2部材が腕を形成するとともに、前記関節本体が肘部である構成を有してもよい。また、本発明の人形体の関節構造において、前記第1部材及び前記第2部材が脚を形成するとともに、前記関節本体が膝部である構成を有してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る人形体の関節構造によれば、人間に近い動作を行い、本物らしく、見栄えの良好な姿勢をとることができる人形体の関節構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明にかかる実施形態の人形体の関節構造を用いた人形体の全体斜視図である。
【図2】人形体の腕の骨部であり、(A)は肘を延ばした状態の側面図、(B)は肘を曲げた状態の側面図である。
【図3】人形体の腕の外観図であり、(A)は肘を延ばした状態の側面図、(B)は肘を曲げた状態の側面図である。
【図4】人形体の脚の骨部であり、(A)は膝を延ばした状態の側面図、(B)は膝を曲げた状態の側面図である。
【図5】人形体の脚の外観図であり、(A)は膝を延ばした状態の側面図、(B)は膝を曲げた状態の側面図である。
【図6】人形体の膝関節の分解斜視図である。
【図7】脚を延ばした状態の膝関節の断面図である。
【図8】脚を曲げた状態の膝関節の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1に示すように、本発明にかかる実施形態の人形体の関節構造は、例えば、人形体1に適用することができる。人形体1は、2本の脚30,30、脚30を回動可能に支持する腰40、腰40の上に所定角度回転可能に支持される上体50、上体50に回転可能に支持される2本の腕20,20、及び上体50の上に首60を介して回転可能に支持される頭部(図示省略)を有し、腕20の肘関節(肘)21及び脚30の肘関節(肘)31に適用することができる。
【0014】
図2及び図3に基づいて、腕20の関節構造11について説明する。腕20は、構造部材である骨部20Aと、骨部20Aの外側に設けられて外観をなすカバー部20Bを有する。まず、図2(A)及び(B)に基づいて、骨部20Aについて説明する。腕20は、肩関節51により上体50(図1参照)に回転可能且つ任意角度で固定可能に支持されており、関節本体である肘関節21と肩関節51の間の第1部材である上腕骨部22と、肘関節21より先(下)の第2部材である下腕骨部23を有する。なお、以下の実施形態において、第1の部材と第2の部材とを相対的に回動可能に連結する部材を関節本体とする。
【0015】
上腕骨部22は肘関節21に設けられている第1回動軸211により、肘関節21に対して回動可能且つ所定角度で固定可能に支持されている。上腕骨部22には、上腕骨部22の軸方向に沿って、長円形状をした第1摺動穴221が設けられている。また、下腕骨部23は肘関節21に設けられている第2回動軸212により、肘関節21に対して回動可能且つ所定角度で固定可能に支持されている。下腕骨部23には、下腕骨部23の軸方向に沿って、長円形状をした第2摺動穴231が設けられている。
【0016】
肘関節21の上腕骨部22側には、一端241が第1摺動穴221に沿って摺動するとともに、他端242が第3回動軸213により肘関節21に回動可能に取り付けられた第1連結部材24を有する。また、肘関節21の下腕骨部23側には、一端251が第2摺動穴231に沿って摺動するとともに、他端252が第4回動軸214により肘関節21に回動可能に取り付けられた第2連結部材25を有する。
【0017】
なお、下腕骨部23の先端(下端)には、手70(図1参照)を取り付けるための手首関節71が設けられている。手首関節71は、下腕骨部23の先端に設けられている手首回動軸72により、回動可能に支持される。
【0018】
図3(A)及び(B)に示すように、腕20の外観であるカバー部20Bは、骨部20Aの外側に、各部位に対応するカバーを取り付けたものである。具体的には、上腕骨部22の外側には上腕カバー26が取り付けられ、下腕骨部23の外側には下腕カバー27が取り付けられている。上腕カバー26及び下腕カバー27は複数に分割されており、少なくとも前側及び後側に分かれて、上腕骨部22及び下腕骨部23を前後から挟んで装着できるようになっている。また、肘関節21の外側には、肘関節21及び第1連結部材24及び第2連結部材25を覆う肘カバー28が取り付けられている。肘カバー28も、意匠及び取付けの観点から、複数に分割されている。本実施の形態において、第1連結部材24に上腕カバー26が取り付けられ、第2連結部材25に下腕カバー27が取り付けられている。それにより、第1連結部材24の第1摺動穴221に沿った摺動に伴って上側カバー26が摺動方向へ移動し、第2連結部材25の第2摺動穴231に沿った摺動に伴って下腕カバー26が摺動方向へ移動する。
【0019】
次に、下腕骨部23を上腕骨部22に対して回動させる場合の動きを説明する。下腕骨部23を第2回動軸212を中心として図2(A)中矢印A方向へ回動させると、下腕骨部23が第2回動軸212を中心として回動すると同時に、下腕骨部23の第2摺動穴231に先端が摺動可能に挿嵌されている第2連結部材25も、第4回動軸214を中心として同じ方向へ回動する。この際、第2連結部材25の一端251は、第2摺動穴231に沿って矢印B方向へ摺動する。
【0020】
また、上腕骨部22が取り付けられている第1回動軸211を中心として肘関節21が回動すると、肘関節21に設けられている第3回動軸213が回転しながら移動する(以後、「回転移動する」という。)ので、第3回動軸213に他端242が取り付けられている第1連結部材24も回転移動する。この際、第1連結部材24の一端241は、第1摺動穴221に沿って下方へ摺動する。
【0021】
これにより、肘関節21は、下腕骨部23の回動に伴い、図2(B)中C方向へ回転移動する。また、このように骨部20Aが動くことにより、骨部20Aに取り付けられているカバー部20Bも同様に動くので、肘カバー28が回転移動(図3(B)中矢印A方向)する。これにより、人間に近い動作を行うことができ、本物らしく、見栄えの良好な姿勢をとることができる。
【0022】
本実施形態の人形体の腕の関節構造11によれば、肘関節21と、肘関節21の第1回動軸211に回動可能に支持された上腕骨部22との間に、一端241が上腕骨部22の軸方向に沿って長く設けられた第1摺動穴221に沿って摺動するとともに、他端242が肘関節21に回動可能に取り付けられた第1連結部材24を設けたので、肘関節21に対して上腕骨部22を回動させると、連動して第1連結部材24が回転移動する。また、肘関節21と、肘関節21の第2回動軸212に回動可能に支持された下腕骨部23との間に、一端251が下腕骨部23の軸方向に沿って長く設けられた第2摺動穴231に沿って摺動するとともに、他端252が肘関節21に回動可能に取り付けられた第2連結部材25を設けたので、肘関節21に対して下腕骨部23を回動させると、連動して第2連結部材25が回転移動する。
【0023】
よって、上腕骨部22及び下腕骨部23を回動させると肘関節21が回転移動して、肘関節21に取り付けた肘カバー28が図3(B)中矢印A方向へ回転移動するので、人間に近い動作を行うことができ、本物らしく、見栄えの良好な姿勢をとることができる。
【0024】
また、上腕骨部22及び下腕骨部23を回動させると肘関節21が回転移動して、肘関節21に取り付けた肘カバー28が図3(B)中矢印A方向へ回転移動し、上腕カバー26及び下腕カバー27が肘関節21方向へ移動する。肘関節21の回転移動に伴い、上腕カバー26及び下腕カバー27が移動することにより、あたかも人間の筋肉の動きを再現しているように見え、より人間に近い動作を行うことができ、本物らしく、見栄えの良好な姿勢をとることができる。
【0025】
次に、図4及び図5に基づいて、脚30の関節構造12について説明する。脚30は、構造部材である骨部30Aと、骨部30Aの外側に設けられて外観をなすカバー部30Bを有する。まず、図4(A)及び(B)に基づいて、骨部30Aについて説明する。脚30は、股関節52により上体50(図1参照)に回転可能且つ任意角度で固定可能に支持されており、関節本体である膝関節31と股関節52の間の第1部材である大腿骨部32と、膝関節31より下の第2部材である下腿骨部33を有する。
【0026】
大腿骨部32は膝関節31に設けられている第1回動軸311により、膝関節31に対して回動可能且つ所定角度で固定可能に支持されている。大腿骨部32には、大腿骨部32の軸方向に沿って、長円形状をした第1摺動穴321が設けられている。また、下腿骨部33は膝関節31に設けられている第2回動軸312により、膝関節31に対して回動可能且つ所定角度で固定可能に支持されている。下腿骨部33には、下腿骨部33の軸方向に沿って、長円形状をした第2摺動穴331が設けられている。
【0027】
膝関節31の大腿骨部32側には、一端341が第1摺動穴321に沿って摺動するとともに、他端342が第3回動軸313により膝関節31に回動可能に取り付けられた第1連結部材34を有する。ここでは、第1連結部材34は、一端側の連結部材34Aと、他端側の連結部材34Bを有しており、両連結部材34A、34Bは、回動軸34Cにおいて相対的に回動可能に連結されている。また、膝関節31の下腿骨部33側には、一端351が第2摺動穴331に沿って摺動するとともに、他端352が第4回動軸314により膝関節31に回動可能に取り付けられた第2連結部材35を有する。
【0028】
なお、下腿骨部33の先端(下端)には、足80を取り付けるための足首関節81が設けられている。足首関節81は、下腿骨部33の先端に設けられている足首回動軸82により、回動可能に支持される。また、足80の先端のつま先部83は、つま先回動軸84により、上下方向(図4(B)中矢印A方向)へ回動可能に連結されている。
【0029】
図5(A)及び(B)に示すように、脚30の外観であるカバー部30Bは、骨部30Aの外側に、各部位に対応するカバーを取り付けたものである。具体的には、大腿骨部32の外側には大腿カバー36が取り付けられ、下腿骨部33の外側には下腿カバー37が取り付けられている。大腿カバー36及び下腿カバー37は複数に分割されており、少なくとも前側及び後側に分かれて、大腿骨部32及び下腿骨部33を前後から挟んで装着できるようになっている。また、膝関節31の外側には、膝関節31及び第1連結部材34及び第2連結部材35を覆う膝カバー38が取り付けられている。膝カバー38も、意匠及び取付けの観点から、複数に分割されている。なお、足80や足首81を覆う足カバー39も設けられている。本実施形態において、第1連結部材34に大腿カバー36が取り付けられ、第2連結部材35に下腿カバー37が取り付けられている。それにより、第1連結部材34の第1摺動穴321に沿った摺動に伴って大腿カバー36が摺動方向へ移動し、第2連結部材35の第2摺動穴331に沿った摺動に伴って下腿カバー36が摺動方向へ移動する。
【0030】
次に、大腿骨部32を下腿骨部33に対して相対的に回動させる場合の動きを説明する。大腿骨部32を第1回動軸311を中心として図4(A)中矢印B方向へ回動させると、大腿骨部32が第1回動軸311を中心として回動すると同時に、大腿骨部32の第1摺動穴321に一端341が摺動可能に挿嵌されている第1連結部材34も、第3回動軸313を中心として同じ方向へ回動する。この際、第1連結部材34の一端341は、第1摺動穴321に沿って膝関節31の方向へ摺動する。
【0031】
また、下腿骨部33が取り付けられている第2回動軸312を中心として、膝関節31が図4(B)中矢印C方向へ回動すると、膝関節31に設けられている第4回動軸314が回転移動するので、第4回動軸314に他端352が取り付けられている第2連結部材35も回転移動する。この際、第2連結部材35の一端351は、第2摺動穴331に沿って上方へ摺動する。
【0032】
これにより、膝関節31は、大腿骨部32の回動に伴い、図4(B)中B方向へ回転移動する。また、このように骨部30Aが動くことにより、骨部30Aに取り付けられているカバー部30Bも同様に動くので、膝カバー38が図5(B)中A方向へ回転移動する。なお、大腿カバー36の前部カバー361を、第1連結部材34の他端側の連結部材34Bに連結することにより、大腿骨部32が回動した際に、前部カバー361を膝関節31方向(図5(B)中矢印B方向)へ移動させるようにすることもできる。
【0033】
また、本実施形態の人形体の脚の関節構造12によれば、膝関節31と、膝関節31の第1回動軸311に回動可能に支持された大腿骨部32との間に、一端341が大腿骨部32の軸方向に沿って長く設けられた第1摺動穴321に沿って摺動するとともに、他端342が膝関節31に回動可能に取り付けられた第1連結部材34を設けたので、膝関節31に対して大腿骨部32を回動させると、連動して第1連結部材34が回転移動する。また、膝関節31と、膝関節31の第2回動軸312に回動可能に支持された下腿骨部33との間に、一端351が下腿骨部33の軸方向に沿って長く設けられた第2摺動穴331に沿って摺動するとともに、他端352が膝関節31に回動可能に取り付けられた第2連結部材35を設けたので、膝関節31に対して下腿骨部33を回動させると、連動して第2連結部材35が回転移動する。
【0034】
よって、大腿骨部32及び下腿骨部33を回動させると膝関節31が回転移動して、膝関節31に取り付けた膝カバー38が図5(B)中矢印A方向へ回転移動するので、人間に近い動作を行うことができ、本物らしく、見栄えの良好な姿勢をとることができる。
【0035】
また、大腿骨部32及び下腿骨部33を回動させると膝関節31が回転移動して、膝関節31に取り付けた膝カバー38が図3(B)中矢印A方向へ回転移動し、大腿カバー36及び下腿カバー37が膝関節31方向へ移動する。膝関節31の回転移動に伴い、大腿カバー36及び下腿カバー37が移動することにより、あたかも人間の筋肉の動きを再現しているように見え、より人間に近い動作を行うことができ、本物らしく、見栄えの良好な姿勢をとることができる。
【0036】
図6乃至図8に基づいて、脚90の変形例について説明する。図に示すように、膝関節91は、連結可能な左膝関節部911と右膝関節部912を有し、左右膝関節部911,912の前面には前膝関節部913を有する。左右膝関節部911,912は、各々外周に沿って周壁911a、912aを有しており、周壁911a、912a同士を連結することにより、内部空間を形成する。また、膝関節91の内部所定位置には、後述するタイミング突起91aが設けられている。
【0037】
左膝関節部911は、内部に円筒形状の下軸受け部911bと、上軸受け部911cを有する。両軸受け部911b、911cの高さは、周壁911aの高さよりも低くなっている。また、右膝関節部912は、左膝関節部911の上下軸受け部911b、911cに対向する位置に、円筒形状の下軸受け部912bと、上軸受け部912cを有する。両軸受け部912b、912cの高さは、周壁912aの高さよりも低くなっている。従って、左右膝関節部911,912を結合すると、下軸受け部911b、912b同士、及び上軸受け部911c、912c同士が一定の間隔を開けて連続状に配置される。
【0038】
下軸受け部911b、912bには下筒状連結部材941が回動可能に収容され、上軸受け部911c、912cには上筒状連結部材942が回動可能に収容される。下筒状連結部材941は下腿部93と一体で回動し、上筒状連結部材942は大腿部92と一体で回動する。下軸受け部911b、912bの外周と上軸受け部911c、912cの外周とは接触して設けられており、一部連通している。従って、下軸受け部911b、912bに収容された下筒状連結部材941と、上軸受け部911c、912cに収容された上筒状連結部材942とは、接触している。
【0039】
両筒状連結部材941,942は全体円筒形状をしているが、ともに周面の一部には複数の平面部941a、942aを有する。従って、両筒状連結部材941,942の平面部941a、942a同士が接触している状態では、回転が規制される。これにより、下腿部93と大腿部92は、所定の力以下では、相対的な回動が阻止される。なお、所定以上の回転力が作用すると、平面部941a、942a同士の接触状態を脱して、下腿部93と大腿部92は相対的に回動可能となる。
【0040】
下腿部93は、下筒状連結部材941に一体的に取り付けられ、下筒状連結部材941の平面部941aは先端側(上端側)に配置される。なお、下腿部93は下筒状連結部材941を中心として回動するだけなので、詳細な構造は、説明を省略する。
【0041】
大腿部92は、その下端部が上筒状連結部材942に一体的に取り付けられ、上筒状連結部材942の平面部942aは先端側(下端側)に配置される。大腿部92は、中心に左右の大腿基部921,922を有し、大腿基部921,922の前後を覆う前大腿カバー923及び後大腿カバー924を有する。大腿基部921,922には、後述するタイミング板95を有するタイミング部材927が回動部材928を介して回動可能に取り付けられる。つまり、左右の大腿基部921,922を結合して形成される大腿部材と回動部材928を介して回動可能に軸支される。また、大腿部92の上部の股関節96を前後から挟む股関節カバー925,926を有する。
【0042】
ここで、タイミング板95には、長円孔95aが設けられており、前述した膝関節91に設けられているタイミング突起91aが移動可能に収容される。つまり、左膝関節部911に設けられたタイミング突起91aと右膝関節部912に設けられたタイミング突起91aが長円孔95aに収容される。それにより、膝関節91と回動部材928は回動可能に軸支される。また、左右の大腿基部921,922を結合して形成される内部空間には、前大腿カバー923を回動させる回動部材928及び前後の股関節カバー925,926を大腿基部921,922の上端部に連結する連結部材929が設けられている。
【0043】
次に、膝の屈伸に伴う脚90を真っ直ぐに伸ばした状態では、下筒状連結部材941と上筒状連結部材942とが、平面部941aと平面部942aとで接触しており、所定の回転力以下では回転を阻止して真っ直ぐな状態を保持している。また、タイミング突起91aはタイミング板95の長円孔95aの上端部に位置している。
【0044】
図7に示す直立状態から、下腿部93を後方へ回動(図7中矢印A参照)させて脚30を曲げると、下腿部93は下筒状連結部材941を中心として回動しようとする。しかし、下筒状連結部材941は上筒状連結部材942に対して回動が規制されているので、下腿部93は膝関節91と一体で、上筒状連結部材942を中心として回動する。
【0045】
図8に示すように、膝関節91の回動により、タイミング突起91aは長円孔95aの内部を移動する。そして、タイミング突起91aが長円孔95aの下端部に当接すると、膝関節91は大腿部92に対して所定角度屈曲した状態で回動が阻止される。
【0046】
さらに下腿部93を後方へ回動させて脚90を曲げると、膝関節91は回動しないので、下腿部93は下筒状連結部材941を中心として回動しようとする。下筒状連結部材941の回動力が一定以上になると、下筒状連結部材941の平面部941aは、上筒状連結部材942の平面部942aから滑って移動し、隣の平面部942aと接する。これにより、下腿部93は膝関節91に対して一定角度だけ回動する。これに伴い、回動部材928が図8中矢印B方向へ回動して、前大腿カバー923を前方へ押し出す(図8中矢印C参照)。
【0047】
さらに下腿部93を回動させると、下筒状連結部材941の平面部941aと接触する上筒状連結部材942の平面部942aが、移動することにより、一定角度ずつ回動を行うことができる。
【0048】
また、図8に示す膝を曲げた状態から、図7に示す膝を伸ばした状態に移動する際には、下腿部93を図8中矢印D方向へ回動させる。このとき、下腿部93と膝関節91は、下筒状連結部材941の平面部941aと上筒状連結部材942の平面部942aとの接触により、相対的な回動が規制されているので、膝関節91も一体で回動し、タイミング突起91aは長円孔95aの内部を移動する。
【0049】
タイミング突起91aは長円孔95aの上端部に当接すると、膝関節91は回動部材928を回動させながらタイミング部材927を図8中矢印E方向へ移動させる。さらに下腿部93を回動させると、タイミング部材927が左右の大腿基部921,922に当接して停止する。そして、さらに下腿部93を回動させることにより、下腿部93が下筒状連結部材941を中心として回動し、図7に示す直立状態に戻る。
【0050】
また、下腿部93を回動させて膝を曲げる際に、下腿部93を所定角度以上回動させると膝関節91が連動して回動し、さらに前大腿カバー923も連動して移動する。ここで、膝関節91と大腿部材とを相対的に回動可能に連結するタイミング部材927に長円孔95aが設けられているため、膝部材91の回動に際し、タイミング突起91aが長円孔95aの内部を移動する。それにより、前腿カバー923の移動するタイミングを調整することができ、自然なタイミングで膝関節91及び前大腿カバー923が移動し、人間における筋肉の盛り上がりの状態を再現することができる。
【0051】
本実施形態に係る人形体の関節構造は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形、変化が可能である。すなわち、前述した実施形態では、2本の脚30,30で直立する人間のような人形体1に適用する場合を例示したが、この他、例えば4本の脚で立つ動物のような人形体に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0052】
10 人形体の関節構造
20 腕
21 肘関節(関節本体、肘部)
211 第1回動軸
212 第2回動軸
22 上腕骨部(第1部材)
221 第1摺動穴
23 下腕骨部(第2部材)
231 第2摺動穴
24 第1連結部材
241、251 一端
242,252 他端
25 第2連結部材
30 脚
31 膝関節
311 第1回動軸
312 第2回動軸
32 大腿骨部(第1部材)
321 第1摺動穴
33 下腿骨部(第2部材)
331 第2摺動穴
34 第1連結部材
341、351 一端
342,352 他端
35 第2連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と第2部材とを相対的に回動可能に連結する人形体の関節構造であって、
前記第1部材を回動可能に支持する第1回動軸と、前記第2部材を回動可能に支持する第2回動軸と、を有する関節本体を備え、
前記関節本体が、前記第1部材及び前記第2部材の回動に伴って回転移動することを特徴とする人形体の関節構造。
【請求項2】
前記第1部材に設けられた軸方向に沿って長い第1摺動穴に沿って一端が摺動するとともに他端が前記関節本体に回動可能に取り付けられた第1連結部材と、前記第2部材に設けられた軸方向に沿って長い第2摺動穴に沿って一端が摺動するとともに他端が前記関節本体に回動可能に取り付けられた第2連結部材と、を有することを特徴とする請求項1に記載の人形体の関節構造。
【請求項3】
前記第1連結部材に設けられた第1カバー部材と、前記第2連結部材に設けられた第2カバー部材と、を有する請求項2に記載の人形体の関節構造。
【請求項4】
前記関節本体に長円孔が設けられている請求項1記載の人形体の関節構造。
【請求項5】
前記第1部材及び前記第2部材が腕を形成するとともに、前記関節本体が肘部であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の人形体の関節構造。
【請求項6】
前記第1部材及び前記第2部材が脚を形成するとともに、前記関節本体が膝部であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の人形体の関節構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−196524(P2012−196524A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−140826(P2012−140826)
【出願日】平成24年6月22日(2012.6.22)
【分割の表示】特願2010−110549(P2010−110549)の分割
【原出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000135748)株式会社バンダイ (246)
【Fターム(参考)】