説明

人形状置物

【課題】構造が簡単であり且つ意外性や奇抜性に基づく訴求力に富む人形状置物を提供する。
【解決手段】少なくとも一部の付属物を人形本体から引き戻し力を伴って引き出すことができる人形状置物であって、人形本体は、中空部7を形成し表面形状を画定する外壁6を備え、付属物8は、外壁6に形成された貫通孔9を通って中空部7内から外壁6外へ延びる弾性線条13の端部に結合されており、弾性線条13は、中空部7内において、貫通孔9から離れて外壁内側に設けられた係止部16に係止され、常時は付属物8を外壁6にほぼ接した状態に保持していることを特徴とする人形状置物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人形状の置物に関する。
【背景技術】
【0002】
人形状の置物は、人形特有の装飾性があるため、様々な箇所で多用されている。特に装飾性を増すために、花やリボンなどの髪飾りを装飾体として、装着したものも多い。そのような装飾体を備えた人形乃至人形状置物として、特許文献1及び2に記載のものがある。
【0003】
一方、人形状の置物は、装飾性に加えて、意外性や奇抜性を備えることにより、子供、成人、老人など年齢層に応じた訴求力を持つことになる。しかしながら、特許文献1及び2に記載の人形は、装飾を主目的とするものであるので、装飾体が静止状態で取り付けられたものであり、せいぜい部品の交換ができるに留まり、意外性や奇抜性に基づく訴求力に乏しいものであった。
【0004】
これに対し、特許文献3及び4に示す人形は、動作を伴うことにより、意外性や奇抜性に基づく訴求力を発揮する。しかしながら、その動作のために、モータなどの駆動手段を必要とし、構造が複雑なものとなっていた。
【特許文献1】特開平5−293254号公報
【特許文献2】特開平6−71052号公報
【特許文献3】特開平2−211190号公報
【特許文献4】実開平5−88591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消し、構造が簡単であり且つ意外性や奇抜性に基づく訴求力に富む人形状置物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記目的を達成するため、少なくとも一部の付属物を人形本体から引き戻し力を伴って引き出すことができる人形状置物であって、前記人形本体は、中空部を形成し表面形状を画定する外壁を備え、前記付属物は、前記外壁に形成された貫通孔を通って前記中空部内から外壁外へ延びる弾性線条の端部に結合されており、前記弾性線条は、前記中空部内において、前記貫通孔から離れて外壁内側に設けられた係止部に係止され、常時は前記付属物を前記外壁にほぼ接した状態に保持していることを特徴とする人形状置物を提供するものである。
【0007】
本明細書及び特許請求の範囲において、「人形」には、人、動物、植物の他、乗り物や建築物などを擬人化したものを含む。「付属物」には、人形の目、耳、鼻、腕、手、脚、足などの身体の一部や、髪飾り、ブローチ、手に持った花束などのように身体に付着させた装飾体を含む。また、「置物」には、鑑賞目的のものの他、手に持って楽しむもの、芳香剤や消臭剤を収容し揮散させるもの、光や音を発するものなど、諸機能を奏するものを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明に掛かる人形状置物は、少なくとも一部の付属物を人形本体から引き戻し力を伴って引き出すことができ、前記人形本体は、中空部を形成し表面形状を画定する外壁を備え、前記付属物は、前記外壁に形成された貫通孔を通って前記中空部内から外壁外へ延びる弾性線条の端部に結合されている。該弾性線条は、付属物を外壁にほぼ接した状態に保持しており、常時は、付属物が人形本体に安定的に保持されている。
【0009】
一方、付属物を引っ張れば、弾性線条が弾性変形して伸び、付属物を人形本体から離反させることができる。特に弾性線条は、貫通孔から離れて外壁内側に設けられた係止部に係止されることにより、中空部内で十分な長さを持っているので、付属物を引っ張ったときに弾性変形し得る量も大きくなる。その結果、付属物を人形本体から大きく離れた位置まで引き出すことができ、安定保持されていた付属物が、思わぬ距離まで移動することによる意外性や奇抜性が発揮される。また、引張り力を解けば、付属物は弾性線条の弾性により元の安定位置に戻るので、見る者の興味をさらにそそる。このように、本発明に掛かる人形状置物は、簡単な構造で、意外性や奇抜性に基づく強い訴求力を発揮することができる。
【0010】
前記係止部は、前記外壁における前記貫通孔に対向する部分に設けることができる。これにより、弾性線条は中空部を横切って長く設置することができ、中空部内で伸縮動作を抵抗なく行えるので、引き出しがより容易となると共に、把持解除時の復帰動作の円滑性が増大する。
【0011】
前記付属物は、凸状に丸みを帯びた丸み形状部分を備え、前記弾性線条は、該丸み形状部分から延びるように前記付属物に結合されているものとすることができる。或いは、前記付属物は、突部を備え、前記弾性線条は、前記突部から延びるように前記付属物に結合されているものとすることができる。これらのいずれか又は双方を採用した構造とすることにより、付属物は、引き出された後、弾性線条により人形本体側へ引き戻されたとき、丸み形状部分又は突部が外壁に当接しその勢いで当接部分を中心にして一時的に細かく震える動作をすることになる。この付属物の微振動は、装飾効果、特に人形の愛らしさを増すのであり、花やリボンなどの可愛らしい付属物とすることにより、多くの世代に訴え、特に子供等への訴求力はとても強いものとなる。
【0012】
この付属物引き戻し時の細かい震えは、前記貫通孔と前記係止部とを結ぶ直線と、前記貫通孔形成箇所における前記外壁の接平面とがなす角度を10〜85°とすることによって、より明瞭に発現させることができる。
【0013】
また、付属物引き戻し時の微振動は、付属物の前記突部における最先端部が、該突部表面における前記弾性線条支持箇所からずれた位置に設けられることによっても、より明瞭に発現させることができる。
【0014】
前記人形状置物は、前記付属物及び貫通孔が前記人形本体の両側部に位置するように1対設けられ、1本の前記弾性線条が、前記中空部内から前記1対の貫通孔を経て外壁外へ延び端部が前記1対の付属物に各々結合され、前記係止部は、該弾性線条の中間部を、該弾性線条の長手方向へ移動可能に係止しているものとすることができる。これにより、人形本体に安定していた1対の付属物が、相反する方向へ飛び出した位置をとることになるので、見る者に与える意外性や奇抜性が、引き出し得る付属物が1個のの場合に比べて、著しく強くなる。さらに、一対の付属物を異なる距離まで引き出すことができ、両者が異なる動きを見せる面白さを発揮することもできる。また、1本の弾性線条が、中間部を係止されるので、1対の付属物の各々に1本の弾性線条及びその係止部を設ける必要がなく、構造が簡単となる。さらに、弾性線条は長手方向へ移動可能に係止部に係止されるので、1対の付属物の引き出し距離が均等でなくても、弾性線条には均一に近い引張り力が作用することになり、1対の付属物の引き込み動作が均等化され、安定した動作が得られる。また、弾性線条の負荷の均一化により、弾性線条の劣化を低減することができる。
【0015】
前記弾性線条における前記中空部内の部分には、前記付属物引き戻し時の該弾性線条の振動を増大させるための錘を装着することができる。これにより、付属物が引き戻されたときの弾性線条の振動が増大し、その振動は弾性線条を通じて付属物に伝達され、付属物の微振動をも増大させる。その結果、引き戻し時の微振動による前述の効果をより高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。図面中の同一又は同種の部分については、同じ番号を付して説明を省略することがある。
【0017】
図1から図7は、本発明の一実施形態に係る人形状置物を示している。この人形状置物は、人形本体のうちの頭部に対し、引き出し可能な付属物として装飾体を備えたものである。図1は通常の状態を一部断面で示す正面図、図2は装飾体を引き出した状態を示す正面図、図3は図2の状態の側面図である。また、図4から図7は頭部の図であり、図4は平面図、図5は底面図、図6は縦断側面図、図7は頭部を構成する2つの部分を分離した状態を示す縦断側面図である。
【0018】
図示のように、この人形状置物は、立ち姿のウサギをデフォルメしたものであり、頭部1と、胴体と手足を凹凸曲面で表した自立可能な胴部2とを備えている。頭部1は、胴部2の上部に脱着自在な構造となっており、後述するように、全体として薬剤揮散機能を備えた容器となっている。頭部は、人形の性格や表情を表しやすいため、引き出し可能な付属物を頭部に設けるのは、意外性や奇抜性に基づく強い訴求力を発揮するのに特に有利である。
【0019】
頭部1は、ほぼ球状の頭3の上部から1対の耳4が延びた形状をしており、外壁6がその表面形状を画定し、内部は中空部7となっている。この頭部1は、1対の耳4を通る平面で2つに分割された構造となっており、位置合わせ用の複数の突起10が一方の前半部分1aに設けられ、後半部分1bにこれらを受け入れる凹部が形成され、これらが緊く嵌め合わされることにより、両半部分が合体される。前半部分1aにおける1対の耳4の各々の付け根付近には、装飾体8が取り付けられている。この実施形態においては、装飾体8は、手指で把持可能な大きさの花の形状とされており、放射状に延びる複数の花弁が偏平形状部分11を形成し、該扁平形状部分の中心部において頭部1側に突出した花托が突部12を形成している。
【0020】
外壁6には、耳4の付け根付近に貫通孔9が形成されており、1本の弾性線条13が、中空部7内から貫通孔9を通って外壁6外へ延びている。弾性線条13の端部は、装飾体8の突部12を先端側から貫通し、反対側で装飾体に固定されている。これにより、弾性線条13は、1対の装飾体の突部12から延びた状態となっている。弾性線条が突部から延びた状態とするには、この他、弾性線条を突部の表面に接合するなど、適宜の形態とすることができる。弾性線条13の中間部は、後半部分1bの外壁内面に設けられた係止片14に係止されている。係止片14は、図4及び図6に示すように、貫通孔9に対向する位置である頭3後部から中空部7内へ突出するリブであり、中央部に係止部16として貫通孔が形成され、一方の側縁から該係止部にスリット17が延びている。弾性線条13は、中間部をスリット17から通して係止部16に緩く支持され、長手方向へ移動可能となっている。こうして弾性線条13は、1対の貫通孔9と係止部16を結ぶV字形をなすように張設され、常時は突部12が外壁6にほぼ接した状態となるように保持している。この保持状態を得るには、貫通孔から係止部までの距離(この実施形態のように一対の貫通孔と1つの係止部とを備える場合はこれらに掛け渡される距離)に対し、弾性線条の長さを同じ、或いは、少し長め又は短めとなるように設定すればよい。
【0021】
弾性線条13は、この実施形態では紐状のゴムとされているが、紐状樹脂、コイルばね等、手や指によって引き延ばすことができる弾性を有した種々の線条材を用いることができる。また、弾性線条として、線条体の表面に凹凸を有したものを用いて貫通孔9の縁部との接触抵抗を増し、装飾体が弾性線条と共に揺動しながら引き戻し時に装飾体を揺動させたり、外周面に繊維を巻回乃至付着させたものを用いて貫通孔9の縁部との接触抵抗を低減し、装飾体8の引き戻し速度を上昇させて頭部への衝突時の揺動を増したりするというように、弾性線条を選択することによって、より興味を引く動作を得ることができる。
【0022】
弾性線条13は、貫通孔9から係止片14へ斜めに延びている。この状態を形成するため、貫通孔9と係止片14の係止部16とを結ぶ直線と、貫通孔形成箇所における外壁6の接平面とがなす傾斜角が、後述する所定の角度とされている。
【0023】
また、頭部1の下部には、外壁6内面に取付け用リブ18が設けられ、下端に開口部19が設けられている。図9に示すように、胴部2は、上端の口部2aにキャップ21が螺合されるようになっており、キャップ21の外周面には、多数の縦溝からなるスプライン22が形成されている(図9は、キャップ21を胴部2の口部2aへの螺合から解いて上方へ移動した状態を示している)。頭部1の取付け用リブ18の内周面にはスプライン22に噛み合う凹凸が設けられている。
【0024】
頭部1を組み立てるには、弾性線条13の両端部を前半部分1aの貫通孔9に内側から通し、端部に装飾体8を結合する。そして、弾性線条13の中間部を後半部分1bのスリット17から係止部16に係止する。この状態で、前半部分1a及び後半部分1bを併せる際に、キャップ21を挟むようにして開口部19及び取付け用リブ18に嵌合し、突起10で固定すればよい。
【0025】
このように、1本の弾性線条13が、両端部で1対の装飾体8を支持し、その中間部を係止部16に係止しているので、装飾体の取付け構造が簡単となっている。さらに、弾性線条13は長手方向へ移動可能に係止部16に係止されるので、1対の装飾体8の引き出し距離が均等でなくても、弾性線条13には均一に近い引張り力が作用することになり、1対の装飾体8の引き込み動作が均等化され、安定した動作が得られる。また、弾性線条の負荷の均一化により、弾性線条の劣化を低減することができる。
【0026】
尤も、弾性線条13は、係止部16に移動不能に固定した状態で係止してもよく、その場合は、各装飾体8が独立して弾性線条13により引き戻される。さらに、弾性線条を装飾体8毎に設けてもよく、各々に対して係止部を設置することもできる。
【0027】
胴部2は、下端が閉じた容器であり、口部に螺合されるキャップ21は、下部に吸液芯23の支持部を有し、該支持部から吸液芯23が胴部内へ延びている。図8及び図9に示すように、吸液芯23は、キャップ21を口部から外して持ち上げることにより引き出され、胴部内の薬剤を吸い上げて口部より上方の露出部分から薬剤を揮散させる。胴部2内の薬剤は、消臭剤、芳香剤など、種々の揮散性薬剤とすることができる。
【0028】
この人形状置物を使用する場合は、立設姿勢で適所に設置する。キャップ21を胴部2のキャップ21に螺合させた状態では、頭部1が胴部2のすぐ上に位置し、人形の形をした置物の役割をなす。また、頭部1を回転させれば、スプライン22との噛合によりキャップ21も回転し、胴部2の口部からキャップ21を外すことができる。そして、頭部1と共にキャップ21を上方へ持ち上げれば、吸液芯23の上部が露出して薬剤が揮散され、芳香器、消臭器などの機能も得られる。
【0029】
いずれの状態においても、装飾体8は、人形の頭部1に保持されて髪飾りの役割をなす。一方、装飾体8を手指で把持して引っ張ると、弾性線条13が伸びて、装飾体8を頭部から離反させることができ、把持している手指を解けば、装飾体8は弾性線条13の弾性により元の安定位置に戻る。装飾体8を引き出すときには、中空部7内での十分な長さに基づき、装飾体8を頭部1から大きく離れた位置まで引き出すことができるのであり、安定保持されていた装飾体が、思わぬ距離まで移動することによる意外性や奇抜性が発揮される。この効果を得るための引き出し量は、例えば、手や指により楽に引くことのできる力で、装飾体を頭部における頭の大きさの半分以上の距離まで引き出せる程度にするのが望ましい。
【0030】
その引き出し量は、装飾体及び係止部における弾性線条の結合箇所間の距離、これらの結合箇所間に張設された状態での弾性線条の張力(プレテンション)又はたるみ量、並びに弾性線条の弾性係数を適宜の値とすることにより決定することができる。その基準としては、例えば、中空部内での弾性線条の方向に沿って装飾体を2N(ニュートン)の引張り力で引き出したときに、頭部の中の頭(耳、角等の突起部分を除く)の最大正面寸法(顔を正面から見た状態における縦横斜めのいずれかの最大寸法)の50〜250%の長さまで引き出せるように決めることができる。この引き出し量の割合は、60〜200%とするのが、より望ましい。この実施形態では、頭3の最大正面寸法(頭の幅)が70mmであるのに対し、中空部内での弾性線条の方向に沿って装飾体を2Nの引張り力で引き出したときに、125mmまで引き出すことができる。これは、頭3の最大正面寸法の179%に相当する。
【0031】
特に、装飾体8及び貫通孔9が頭部1の両側部に位置するように1対設けられることにより、人形の頭部から装飾体を両側方へ引き出すことができる。これにより、頭部にあった装飾体8が、相反する方向へ飛び出した位置をとることになるので、見る者に与える意外性や奇抜性が、1個の装飾体の場合に比べて、著しく強くなる。さらに、一対の装飾体を異なる距離まで引き出すことができ、両者が異なる動きを見せる面白さを発揮することもできる。
【0032】
装飾体8の引き出し量が大きくなりすぎないように、弾性線条13の中間位置にストッパを設けることもできる。図3は、1例としてストッパ31を一点鎖線で示している。ストッパは、貫通孔9より大きい寸法のものを弾性線条13に固着し、或いは弾性線条に結び目を設けて形成することができる。
【0033】
また、装飾体8は、手指で引き出された後、弾性線条13により頭部側へ引き戻されたとき、突部12である花托が外壁6に当接し、扁平形状部分11である花弁はその勢いで当接部分を中心にして一時的に細かく震える動作をすることになる。この装飾体の微振動は、装飾効果、特に人形の愛らしさを増すのである。
【0034】
特に、装飾体引き戻し時の細かい震えは、貫通孔9と係止部16とを結ぶ直線と、貫通孔形成箇所における外壁6の接平面とがなす傾斜角を10〜85°とすることによって、より明瞭に発現する。すなわち、引き戻し時に装飾体8が頭部の外壁6に衝突する方向を、外壁面に対して傾斜させることにより、装飾体8が外壁に衝突した瞬間に衝突箇所をほぼ中心とするモーメントが作用して装飾体8を回動させ、その反動動作が繰り返されて装飾体8は細かく揺動するのである。傾斜角が85°より大きいと、装飾体8の引き戻し方向が外壁面に垂直に近くなり、微振動が発生し難い。一方、傾斜角が10°より小さいと、外壁面から遠ざかる方向へ引き出された弾性線条13に対し、中空部7内での引き戻し方向が大きく異なることになり、貫通孔9縁部での摩擦力が増して弾性線条の損傷を生じやすくなる。この観点から、該傾斜角を20〜80°とするのが、より好ましく、30〜60°とするのがさらに好ましい。また、微振動を生じやすくするために、突部12の先端は、半球状等の丸みを帯びた丸み形状部分とするのが望ましい。
【0035】
図4及び図10は、この傾斜角に関して、貫通孔9と係止部16との間に延びる弾性線条13と耳4の接平面とがなす角Aを示している。但し、この傾斜角は、図4の平面図に表れた角度と、図10の側面図に表れた角度を合わせたものとなる。
【0036】
また、上記のように傾斜角を設け、偏平形状部分11である花弁を径方向に大きくすることにより、図10に示すように、引き戻し時に、偏平形状部分11である花弁が先に外壁6に当接し、その後に突部12である花托が外壁6に到達することになる。その結果、先に当接した花弁から装飾体8全体がモーメントを受け、花托の当接共に微振動を行なうという効果も得られる。
【0037】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形態様を含む。例えば、装飾体引き戻し時の微振動は、図11に示すように、装飾体8の突部12における最先端部12aが、該突部端面における弾性線条支持箇所12bからずれた位置に設けられることによっても、明瞭に発現させることができる。すなわち、この構造によれば、引き戻し時に、突部12の最先端部12aが外壁6に衝突した時点では、突部端面における弾性線条支持箇所12bは未だ外壁6に到達していない。したがって、引張り力が作用する弾性線条支持箇所12bにより、最先端部12aをほぼ中心としたモーメントが装飾体8に作用する。これによる突部12の回動とその反動動作の繰り返しにより、装飾体8に微振動が発生するのである。このための突部の形状は、端面が最先端部から一方へ傾斜したもの、端面の一部に突起部を設けたもの等、種々の形状とすることができる。この場合も、微振動を生じやすくするために、突部の先端は、丸みを帯びた丸み形状部分とするのが望ましい。
【0038】
装飾体は、上記実施形態のように1対設けるほか、1個或いは3個以上設けることもできる。図12及び図13は、頭部1に1個の装飾体8を設けた場合を示しており、図12は通常状態、図13は装飾体8を引き出した状態である。
【0039】
図12に示すように、弾性線条13を係止する係止片14’及び係止部16’は、貫通孔9から離れた位置であれば頭部1における貫通孔9の対向位置に限らず、他の適宜の位置に設けてもよい。また、図14に示すように、弾性線条の張設に中継箇所を設けることもできる。この形態では、外壁6内側において、貫通孔9から離れた中継部27が設けられ、該中継部から離れた箇所に係止部16”が設けられている。中継部27は、外壁6から内側に突出するリブ26に設けられた貫通孔であり、リブ26の一方の側縁から該中継部にスリット28が延びて弾性線条13を導入するようになっている。係止部16”は、外壁6から内側に突出するリブ14”に設けられた貫通孔であり、リブ14”の一方の側縁から該係止部にスリット17”が延びて弾性線条13を導入するようになっている。中継部27は、弾性線条をその長手方向に移動可能とするように緩く係合させている。この形態により、限られた中空部内で弾性線条をさらに長くすることができる。その結果、装飾体(付属物)を頭部(人形本体)から遠くまで、より容易に引き離すことができる。この場合も、中継部27は、外壁における貫通孔9に対向する部分に設けられるのが望ましい。
【0040】
弾性線条13における中空部7内の部分には、装飾体8を引き戻した時の弾性線条の振動を増大させるための錘29を装着することもできる。錘29を装着した状態を図4に一点鎖線で示す。錘29は、弾性線条13に対して所定箇所に固着してもよいし、弾性線条13に沿って移動可能に取り付けてもよい。弾性線条13に固着する場合は、中空部7内における弾性線条13の中間箇所とするのが望ましい。その位置は、係止部16から貫通孔9側へ1/2、1/3などの適宜の距離の位置とすることができるが、外壁6に当接することにより装飾体8(付属物)の引き出しを妨げないように設定する。また、弾性線条に結び目を作ることにより、その結び目を錘とすることもできる。弾性線条13はまた、図15に示すように係止部16から貫通孔9までの距離より長くして、中空部7内でたるみを持たせるようにしてもよい。この場合にも、通常状態において、装飾体8は錘29の重量で外壁6にほぼ接した状態に保持される。錘の重量は、通常時の中空部7内での弾性線条13の張力又はたるみの程度、弾性線条の弾力性や柔軟性及び長さ、装飾体の形状や重量などに応じて、装飾体(付属物)に必要な微振動が引き戻し時に得られるように決められる。図示の実施形態の場合は、500mgの錘を装着することにより、装飾体8の振動を増体させることができた。 装飾体は、花の他、蝶やトンボなどの虫類又は動物を模したもの、リボン、球状や角形又は綿毛状などの玉、マスコット類など、種々の形態とすることができる。また、その装着箇所は、人形が模写するものの種類、用途、置物のの機能などに応じて、種々選択することができる。装飾体の大きさは、それ自体を手指でつまむなどして把持できる程度のものの他、それ自体を手指で把持できない大きなものであっても、一部を手で持って引っ張ることができればよい。
【0041】
上記実施形態は、人形本体の頭部を対象としたものであるが、人や動物の人形であれば、胴体、四肢など他の身体箇所を対象とし、植物、乗り物、建築物などを模した人形においては訴求力を発揮し得る種々の箇所を対象とすることができる。また、引き戻し力を伴って引き出すことができる付属物としては、上記実施形態における頭部の装飾体の他、身体箇所に装着乃至保持される装飾体や花束などとし、或いは、身体の一部などとすることもできる。
【0042】
図16及び図17は、耳を人形本体の引き出し可能な付属物8’とした人形状置物の例を示している。この付属物8’は、球状部分11’の周囲にに突縁11a’を付けた形状をなし、下端部の丸みを帯びた丸み形状部分12’から弾性線条13が延びている。通常時は、丸み形状部分12’が頭3に接している。他の構造は、図1から図8に示したものと同様である。この例においても、通常時は付属物8’が頭3に安定的に保持されており、付属物8’の突縁11a’を手指で把持して引っ張れば、弾性線条13の伸長により付属物8’を頭3から引き離すことができる。引き出した状態を図に一点鎖線で示している。そして、引張り力を解けば、付属物8’は弾性線条3の弾性により元の安定位置に戻る。したがって、前述の実施形態と同様に、意外性や奇抜性に基づく強い訴求力を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態に係る人形状置物の通常使用状態を一部断面で示す正面図である。
【図2】図1に示す人形状置物について装飾体を引き出した状態を示す正面図である。
【図3】図1に示す人形状置物の側面図である。
【図4】図1に示人形状置物の頭部の平面図である。
【図5】図4に示す頭部の底面図である。
【図6】図4に示す頭部の縦断側面図である。
【図7】図4に示す頭部を構成する2つの部分を分離した状態を示す縦断側面図である。
【図8】図1に示す人形状置物の一使用状態を示す正面図である。
【図9】図8に示す人形状置物から頭部を取り外し一点鎖線で示した正面図である。
【図10】図4に示す頭部の要部を示す縦断側面図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係る人形状置物における頭部の要部の縦断面図である。
【図12】本発明のさらに他の実施形態に係る人形状置物の通常使用状態を一部断面で示すの正面図である。
【図13】図12に示す人形状置物について装飾体を引き出した状態を示す正面図である。
【図14】本発明のさらに他の実施形態に係る人形状置物の頭部の平面図である。
【図15】本発明のさらに他の実施形態に係る人形状置物の頭部の縦断側面図である。
【図16】本発明のさらに他の実施形態に係る人形状置物の正面図である。
【図17】図16に示す人形状置物の側面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 頭部
2 胴部
6 外壁
7 中空部
8 装飾体(付属物)
8’付属物
9 貫通孔
11 扁平形状部分
12 突部
13 弾性線条
14 係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部の付属物を人形本体から引き戻し力を伴って引き出すことができる人形状置物であって、前記人形本体は、中空部を形成し表面形状を画定する外壁を備え、前記付属物は、前記外壁に形成された貫通孔を通って前記中空部内から外壁外へ延びる弾性線条の端部に結合されており、前記弾性線条は、前記中空部内において、前記貫通孔から離れて外壁内側に設けられた係止部に係止され、常時は前記付属物を前記外壁にほぼ接した状態に保持していることを特徴とする人形状置物。
【請求項2】
前記係止部は、前記外壁における前記貫通孔に対向する部分に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の人形状置物。
【請求項3】
前記付属物が凸状に丸みを帯びた丸み形状部分を備え、前記弾性線条は、該丸み形状部分から延びるように前記付属物に結合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の人形状置物。
【請求項4】
前記付属物が突部を備え、前記弾性線条は、前記突部から延びるように前記付属物に結合されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の人形状置物。
【請求項5】
前記貫通孔と前記係止部とを結ぶ直線と、前記貫通孔形成箇所における前記外壁の接平面とがなす傾斜角が、10〜85°であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の人形状置物。
【請求項6】
前記突部における最先端部が、該突部表面における前記弾性線条支持箇所からずれた位置に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の人形状置物。
【請求項7】
前記付属物及び貫通孔が前記人形本体の両側部に位置するように1対設けられ、1本の前記弾性線条が、前記中空部内から前記1対の貫通孔を経て外壁外へ延び端部が前記1対の付属物に各々結合され、前記係止部は、該弾性線条の中間部を、該弾性線条の長手方向へ移動可能に係止していることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の人形状置物。
【請求項8】
前記弾性線条における前記中空部内の部分に、前記付属物引き戻し時の該弾性線条の振動を増大させるための錘が装着されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の人形状置物。
【請求項9】
前記人形本体のうち頭部に前記付属物が設けられており、該付属物が頭部の装飾体とされていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の人形状置物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−202923(P2007−202923A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−27746(P2006−27746)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】