説明

人形玩具の肩関節構造及び人形玩具

【目的】外観上のリアルさや美観を損なうことなく、よりリアルな立体的な肩関節動が可能な肩関節構造及び人形玩具を提供する。
【構成】人形玩具の上体部の肩部に、内転・外転する肩甲骨部材を介して腕部を回動可能に接続する構成の人形玩具の肩関節構造において、
上体部には、該上体部の肩関節位置に肩甲骨部材が側面方向から入り込む空間となる肩部取付凹部が設けられ、
肩甲骨部材には、肩部取付凹部に入り込んだ際に露出する側面部分に腕部が回動可能に接続する腕部取付関節部と、胸部側部分に前記内転・外転の枢支点となる枢支部と、該枢支部に回動可能に接続されて肩甲骨部材を上体部に回動可能に取り付ける肩甲骨取付部材と、が各々設けられ、
肩部取付凹部の内部の胸部側部分には、側面方向から差し込まれる肩甲骨取付部材を取り付ける肩甲骨取付孔部が設けられていること、を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人形玩具の肩関節構造及び人形玩具に関し、詳しくはよりリアルな立体的な関節動が可能な肩関節構造、及び該肩関節構造を備えた人形玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な姿勢や動きを再現可能な人形玩具の各関節部の内、腕部が取り付けられる肩関節構造は、よりリアルな腕及び肩の動きを再現するために、腕部付け根を回動可能に単に接続する構造ではなく、肩部と腕部とを繋ぐ肩甲骨部部材を介在させる構成が提案されている(例えば、特許文献1〜3等)。
【0003】
特許文献1又は2に記載の技術は、人形玩具の上体部の肩関節位置に肩甲骨部材が収まる凹部が設けられ、該凹部の底面の略中央に垂設する回動軸に肩甲骨部材を該凹部の上方から差し込むように前記回動軸に軸支させることで肩甲骨部材が内転・外転する構成となっている。
【0004】
特許文献3に記載の技術は、人形玩具の上体部が前後に分割可能な2分割体として構成され、該上体部の2分割された肩関節位置に凹部が設けられ、該上体部を2分割した状態で、この凹部内の上下に設けられている軸受け孔に肩甲骨部材の上下に設けられた回動軸を軸支させるように該肩甲骨部材を前記凹部内に嵌め込んだ後、該2分割された上体部を接合することで肩甲骨部材が内転・外転する構成となっている。
【0005】
肩関節位置に肩甲骨部材を介在させることによって、腕を単に回動させられるだけでなく、内転によって肩をすぼめる動作(例えば、バレーボールのレシーブの姿勢等)や、外転によって肩を広げる(胸を張る)動作(例えば、バレーボールのトスの姿勢や、頭の後ろで手を組む姿勢等)をとることができ、よりリアルな立体的な関節動が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−000803
【特許文献2】特許第4278747
【特許文献3】特許第3261369
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1又は2の技術では、肩甲骨部材が肩関節位置の凹部から露出した状態となるため、外観の点でリアルさを著しく損なうという問題点を有している。
【0008】
また、特許文献3の技術では、2分割構成の上体部の分割線の全周に亘って割線が生じるため、外観上のリアルさと美観を損なうという問題点を有している。
【0009】
そこで本発明の課題は、外観上のリアルさや美観を損なうことなく、よりリアルな立体的な肩関節動が可能な肩関節構造及び人形玩具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明は下記構成を有する。
【0011】
1.人形玩具の上体部の肩部に、内転・外転する肩甲骨部材を介して腕部を回動可能に接続する構成の人形玩具の肩関節構造において、
前記上体部には、該上体部の肩関節位置に前記肩甲骨部材が側面方向から入り込む空間となる肩部取付凹部が設けられ、
前記肩甲骨部材には、前記肩部取付凹部に入り込んだ際に露出する側面部分に前記腕部が回動可能に接続する腕部取付関節部と、胸部側部分に前記内転・外転の枢支点となる枢支部と、該枢支部に回動可能に接続されて肩甲骨部材を前記上体部に回動可能に取り付ける肩甲骨取付部材と、が各々設けられ、
前記肩部取付凹部の内部の胸部側部分には、側面方向から差し込まれる前記肩甲骨取付部材を取り付ける肩甲骨取付孔部が設けられていること、
を特徴とする人形玩具の肩関節構造。
【0012】
2.前記肩甲骨取付孔部が、前記肩甲骨取付部材の差込方向と略同軸方向に穿設された凹部、孔部又は溝部のいずれかであることを特徴とする上記1に記載の人形玩具の肩関節構造。
【0013】
3.前記上体部が、肩関節取付部分を縦方向乃至は横方向に分割する分割構造を有することなく該肩関節取付部分が一体構造の構成であることを特徴とする上記1又は2に記載の人形玩具の肩関節構造。
【0014】
4.上記1〜3のいずれかに記載の肩関節構造を有する構成であることを特徴とする人形玩具。
【発明の効果】
【0015】
請求項1又は4に示す発明によれば、外観上のリアルさや美観を損なうことなく、よりリアルな立体的な肩関節動が可能な肩関節構造及び人形玩具を提供することができる。
【0016】
特に、肩関節位置に配設した肩甲骨部材によって、腕を単に回動させられるだけでなく、内転によって肩をすぼめる動作(例えば、バレーボールのレシーブの姿勢等)や、外転によって肩を広げる(胸を張る)動作(例えば、バレーボールのトスの姿勢や、頭の後ろで手を組む姿勢等)をとることができ、よりリアルな立体的な関節動が可能である。
【0017】
しかも、内転・外転の関節動を可能とする肩甲骨部材は、上体部の肩部取付凹部に側面方向から入り込むように配設されるので、前記肩部取付凹部から露出した状態となって外観上のリアルさを損なうことがない。
【0018】
また、上体部の肩部取付凹部への取付けは側面方向から差し込む構成なので、上体部を2分割構成とすることなく取付けが可能となる。従って、上体部には分割に伴う割線が生じることがないため、外観上のリアルさと美観を損なうことがない。
【0019】
請求項2に示す発明によれば、肩甲骨部材を上体部の肩部取付凹部に側面方向から差し込む方向と該肩甲骨取付部材の肩甲骨取付凹部への取付方向とが一致しているので極めて容易に肩甲骨部材の取付けが可能となる。
【0020】
請求項3に示す発明によれば、人形玩具の主要構成部材である上体部に分割に伴う割線が生じることがないので、外観上のリアルさと美観を損なうことがない。従って、衣服等で割線部分を隠す必要が無く、また、パテ埋め等の後処理も不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る人形玩具の肩関節構造の一実施例を説明する拡散分解一部断面平面図
【図2】肩甲骨部材の関節動(内転・外転)を説明する一部切欠平面図(上体部の一部のみを断面で示す)
【図3】肩甲骨部材の関節動(内転・外転)を説明する側面図
【図4】肩甲骨部材の関節動(内転・外転)を説明する部分断面図(上体部のみ断面で示す)
【図5】肩甲骨部材の一例を示す6面図(正面図、背面図、平面図、底面図、左側面図、右側面図)
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、添付の図面に従って本発明を実施例に基づき詳細に説明する。
【0023】
本発明に係る人形玩具の肩関節構造(以下、単に肩関節構造という。)は、人形玩具の上体部1の肩部に、内転・外転する肩甲骨部材2を介して腕部(本実施例では上腕部材のみを示す)3を回動可能に接続することで、腕を単に回動させられるだけでなく、内転によって肩をすぼめる動作(例えば、バレーボールのレシーブの姿勢等)や、外転によって肩を広げる(胸を張る)動作(例えば、バレーボールのトスの姿勢や、頭の後ろで手を組む姿勢等)をとることができ、よりリアルな立体的な関節動が可能となるものであり、
その具体的構成としては、図1〜図5に示すように、
前記上体部1には、該上体部1の肩関節位置に前記肩甲骨部材2が側面方向から入り込む空間となる肩部取付凹部11が設けられ、
前記肩甲骨部材2には、前記肩部取付凹部11に入り込んだ際に露出する側面部分に前記腕部3が回動可能に接続する腕部取付関節部21と、胸部1A側部分に前記内転・外転の枢支点となる枢支部22と、該枢支部22に回動可能に接続されて肩甲骨部材2を前記上体部1に回動可能に取り付ける肩甲骨取付部材23と、が各々設けられ、
前記肩部取付凹部11の内部の胸部1A側部分には、側面方向から差し込まれる前記肩甲骨取付部材23を取り付ける肩甲骨取付孔部12が設けられている構成を有している。
【0024】
次に、各構成部材について更に詳説する。
【0025】
先ず、上体部1は、首・肩・肘・手首・腰・股関節・膝・足首等の関節部分が動くことで人体と同様の動きや姿勢をリアルに再現できるように構成された人形玩具の上半身を構成するパーツであり、該上体部1は首・頭部及び/又は腰部と一体的に構成されていてもよいし、関節部を介して別体に構成されたものであってもよい。尚、本実施例では、上体部1は人体の臍上方部分から首部分までを含む構成となっており、頭部及び腰部は関節部を介して関節動可能に接続される構成となっている。
【0026】
肩部取付凹部11は、前記したように肩甲骨部材2が入り込む空間であり、上体部1の肩部位置の側面方向から穿かれた凹部となっている。かかる構成により、人形玩具の主要構成部材である上体部1として、肩関節取付部分を縦方向乃至は横方向に縦断乃至は横断するように分割する分割構造を有する2以上のパーツ構成とする必要がなく、一体的に形成された一体構造の構成を採用することが可能である。従って、上体部1に、分割に伴う割線が生じることがないので、外観上のリアルさと美観を損なうことがないだけでなく、衣服等で割線部分を隠す必要が無く、また、パテ埋め等の後処理も不要となる。
【0027】
肩甲骨取付孔部12は、肩甲骨部材2が肩部取付凹部11内に入り込むように取り付けられる際に該肩甲骨部材2の肩甲骨取付部材23が差し込まれる部分であり、肩甲骨部材2及び肩甲骨取付部材23の差込方向と略同軸方向に穿設された凹部、孔部又は溝部のいずれかであることが好ましい。本実施例では、孔部構成が採られている。
【0028】
上体部1に設けられた肩部取付凹部11及び該肩部取付凹部11内に設けられた肩甲骨取付孔部12は、該上体部1の成形時に射出成形等に成形方法により一体的に形成されることが好ましい。
【0029】
次に、肩甲骨部材2は、前記肩部取付凹部11内に入り込むように、且つ枢支部22を枢支点として内転・外転する関節動が可能に上体部1の肩関節位置に接続されるものであり、図2(A)及び図3(A)では最も外転した状態となっており、図2(B)、図3(B)では最も内転した状態となっている。即ち、最も外転した状態では該肩甲骨部材2はその全体部分が肩部取付凹部11内に最も入り込んだ状態となり、最も内転した状態では該肩甲骨部材2はその背面側部分が肩部取付凹部11から突出した状態となる。
【0030】
肩甲骨部材2が内転した際に、肩部取付凹部11から突出する前記背面側部分の表面に上体部1の背中表面の肩甲骨相当位置と同様の皮膚凹凸模様や彩色等の表面加工を施しておくことで前記背面側部分が突出した場合の違和感が軽減されることになる。
【0031】
上記したように内転・外転の関節動を可能とする肩甲骨部材2は、上体部1の肩部取付凹部11に側面方向から入り込むように配設されることから、外転時には前記肩部取付凹部11から露出せず、内転した時であっても該肩甲骨部材2の背面側部分が露出する程度なので外観上のリアルさを損なうことがない。
【0032】
肩甲骨部材2の枢支部22と肩甲骨取付部材23との接続は本実施例に示すように回動軸・軸受孔の組み合わせから成る回動構成を採ることが好ましい。尚、枢支部22に肩甲骨取付部材23を回動可能に接続できる構成であれば、本実施例の構成に限定されず他の構成を採ってもよく、例えば、ボルト締結、ボルト・ナット締結、針金状部材や紐・糸締結等による接続構成であってよい。
【0033】
前記肩甲骨部材2の腕部関節取付部21への腕部3の接続は、本実施例では該腕部関節取付部21を孔部として形成し、腕部3に回動可能に接続されている腕関節軸部31を前記孔部である腕部関節取付部21に嵌入する構成となっている。尚、図3では肩甲骨部材2の内転・外転の関節動を明瞭化するために図面手前位置となってしまう腕部3を省略して示している。
【0034】
肩甲骨部材2と腕部3との接続構成は本実施例の構成に限定されず、上述の特許文献1〜3に示す先行技術文献に記載の構成や、その他の人形玩具の腕部の取付構成等、公知公用の関節構成を採ることもできる。
【0035】
以上説明した本発明の肩関節構造を構成する上体部1・肩甲骨部材2・腕部3の各構成部材の形成素材としては、この種の公知公用の人形玩具の構成素材、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂、ナイロン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、スチロール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、FRP樹脂等、又はその他の素材を挙げることができる。
【0036】
以上の構成を有する本発明の肩関節構造を、人形玩具の肩関節構造として採用することで、外観上のリアルさや美観を損なうことなく、よりリアルな立体的な肩関節動が可能な人形玩具を得ることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 上体部
1A 胸部
11 肩部取付凹部
12 肩甲骨取付孔部
2 肩甲骨部材
21 腕部取付関節部
22 枢支部
23 肩甲骨取付部材
3 腕部
31 腕関節軸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人形玩具の上体部の肩部に、内転・外転する肩甲骨部材を介して腕部を回動可能に接続する構成の人形玩具の肩関節構造において、
前記上体部には、該上体部の肩関節位置に前記肩甲骨部材が側面方向から入り込む空間となる肩部取付凹部が設けられ、
前記肩甲骨部材には、前記肩部取付凹部に入り込んだ際に露出する側面部分に前記腕部が回動可能に接続する腕部取付関節部と、胸部側部分に前記内転・外転の枢支点となる枢支部と、該枢支部に回動可能に接続されて肩甲骨部材を前記上体部に回動可能に取り付ける肩甲骨取付部材と、が各々設けられ、
前記肩部取付凹部の内部の胸部側部分には、側面方向から差し込まれる前記肩甲骨取付部材を取り付ける肩甲骨取付孔部が設けられていること、
を特徴とする人形玩具の肩関節構造。
【請求項2】
前記肩甲骨取付孔部が、前記肩甲骨取付部材の差込方向と略同軸方向に穿設された凹部、孔部又は溝部のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の人形玩具の肩関節構造。
【請求項3】
前記上体部が、肩関節取付部分を縦方向乃至は横方向に分割する分割構造を有することなく該肩関節取付部分が一体構造の構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載の人形玩具の肩関節構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の肩関節構造を有する構成であることを特徴とする人形玩具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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