説明

人形玩具

【課題】連結部分の摩擦抵抗を効果的に利用することができ、しかも互いに相対回転可能な連結パーツの材質やその組み合わせを問わず同様な効果を得ることができる人形玩具を提供する。
【解決手段】中心Gを含む断面上に外面よりも突出するOリング8が凸状球面7の外面に設けられ、その凸状球面7を凹状球面2bに嵌合するだけで一方のパーツとしての胸部2に対して他方のパーツとしての腕部5が所定の可動トルクで回動可能に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所謂ボールジョイント(自在継手)によって関節部を相対回転可能にした複数のパーツから構成される人形玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、胴体に対して手や足、或いは複数に分割された胴体同士等を接続した人形玩具が周知である。
また、このような人形玩具には、より自然的(例えば、人間的)な関節等の動きを実現するため、ボールジョイント(自在継手)方式により複数のパーツを連結した人形玩具も多数知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】 特開平7−185139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の如く構成された人形玩具にあっては、例えば、手の付根と胴体肩部分とを受け側とボール側とから構成されるボールジョイント方式で連結した場合に、その手を上方に向けた状態を維持させるには、ボールジョイント部分に、ある程度の摩擦抵抗が存在していないと、手が下がってしまう。一方、この摩擦抵抗が大きいと、手を動かすことが困難となるため、両者間の摩擦抵抗を適当な設定とすることが困難であるという問題が生じていた。例えば、ボール側と受け側との双方がダイキャストである場合は、成形後のパーツに弾性がないため、成形時の寸法誤差や硬化時の材質の伸縮特製等に起因する寸法次第で、両者間が必要以上に強固な嵌合となってしまったり、逆に緩やかな嵌合となってしまうという問題となっていた。
【0005】
このような問題を解決するためには、ボール側と受け側双方のパーツの材質が樹脂同士であれば、受け側、例えば、ボディの前面側と背面側とを合わせて両者間をねじにより結合する際、その締結力を調整することによって受け側とボール側間の可動トルクの調整を行っていた。また、受け側がダイキャストでボール側が樹脂の場合あるいはその逆の場合には、ダイキャストからなる側に全く弾性がないために、ねじ締めのトルク設定に頼りづらく、両者間が強固な嵌合となった固着現象が容易に起こり得ていた。さらにまた、嵌合部分の摩擦抵抗が高いと、経年的な使用(繰り返される関節可動動作)に伴って受け側の内壁面及びボール側の表面が削られてしまい、次第に摩擦抵抗が低くなり、ボールジョイント部分の所定トルクが得られないという問題も生じていた。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情を考慮し、連結部分の摩擦抵抗を効果的に利用することができ、しかも互いに相対回転可能な連結パーツの材質やその組み合わせを問わず同様な効果を得ることができる人形玩具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の人形玩具は、分割された一方のパーツに少なくとも半球面以上の内面積を有する凹状球面が形成され、分割された他方のパーツに少なくとも半球面以上の外面積を有する凸状球面が形成され、前記凹状球面に前記凸状球面を嵌合することにより前記一方のパーツに対して前記他方のパーツが所定範囲内で自在に回動可能に保持された人形玩具において、前記凸状球面の外面に中心を含む断面上に前記外面よりも突出するOリングを設けたことを特徴とする。請求項1に記載の人形玩具によれば、前記凸状球面の外面に中心を含む断面上に外面よりも突出するOリングが設けられ、その凸状球面を凹状球面に嵌合することにより、一方のパーツに対して他方のパーツが所定範囲内の可動トルクで自在に回動可能に保持されることにより、連結部分の摩擦抵抗を効果的に利用することができ、しかも互いに相対回転可能な連結パーツの材質やその組み合わせを問わず同様な効果を得ることができる。なおかつ経年的摩滅に伴う凹状球面2bの内径に対する追従性が向上される。
【0008】
請求項2に記載の人形玩具は、前記リングは、径方向に伸縮可能なCリングが用いられていることを特徴とする。請求項2に記載の人形玩具によれば、凸状球面の外面に中心を含む断面上に外面よりも突出するリングを径方向に伸縮可能なCリングが用いられていることにより、請求項一と同様の効果を得ることが可能となった。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ボールジョイントによって胴体に対して手や足、あるいは複数に分割された胴体同士等のパーツを連結した関節部を備える人形玩具の、連結されたパーツ双方の材質に拘らず、程良い可動トルクを確保することが可能となり、しかも、一定のトルクを長期にわたって維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の一実施形態に係る人形玩具について、図面を参照して説明する。図1に示すように、人形玩具1(頭部や脚部等の一部のパーツを除く)は、胸部2、腹部3、下腹部4、腕部5、脚部6の人体に相当するパーツに分割されている。尚、胸部2の首部2aには任意のキャラクター頭部が着脱可能に装着され、腕部5及び脚部6の各先端にキャラクターに合わせた手足が装着される。また、これら胸部2、腹部3、下腹部4、腕部5、脚部6は、必要に応じて人体の正面と背面とで2分割された合わせ構造が採用されているが、その構成は周知の雌雄の異なるインロー形式等で嵌めあわされている。さらに、胸部2、腹部3、下腹部4、腕部5、脚部6は、亜鉛ダイキャスト、ナイロン、ポリカーボネイトなどを材質とし、比較的硬質に形成されている。一方、胸部2、腹部3、下腹部4、腕部5、脚部6は、それぞれ人体の関節的な動きが可能となるように連結されている。このため、腕部5は上腕部5aと下腕部5bとに分割されており、それぞれが関節部5cによって少なくとも人体と同様に内側に対して屈曲が可能となっている。同様に、脚部6は大腿部6aと下腿部6bとに分割されており、それぞれが関節部6cによって少なくとも人体と同様に内側に対して屈曲が可能となっている。
【0011】
図2は、図1における胸部2の受け側と腕部5とのボール側とからなるボールジョイント部の拡大図である。胸部2はボディの前面側と背面側(図示せず)を合わせてその肩口に相当する部分に半球面以上の内面積を有する受け側である凹状球面2bが形成されており、該凹状球面2bの開放部2cは腕部5の人体上下及び前後方向に相当する回動範囲を規定する。また、腕部5の上端には、少なくとも半球面以上の外面積を有するボール側である凸状球面7が設けられ、該凸状球面7の外面には、球の中心Gを含む断面上の外周の全周にわたって突出するようにシリコン系エラストマー等の弾性素材からなるOリング8が設けられている。尚、凸状球面7には、腕部5に設けられた連結突起(図示せず)により腕部5に連結されるための嵌合穴7aが形成されている。
【0012】
このように構成されたボールジョイント部は、Oリング8が設けられた凸状球面7のボール側を、胸部2のボディの前面側と背面側(図示せず)を合わせたときに形成される受け側である凹状球面2bに嵌合して組み立てた際、ボール側の凸状球面7の表面に突出したOリング8が、受け側の凹状球面2bの内壁面に押圧された状態で当接する。これにより、Oリング8の弾性により凹状球面2bの内径寸法に誤差に対する追従注が向上し、製造誤差が生じたとしてもOリング8の弾性により吸収することが可能となり、常に所定の可動トルクで回動可能に保持することが可能となった。なおかつ、受け側の凹状球面2bに対するボール側の凸状球面7との接触面積はOリング8の接触部分となるために、接触面積が狭くなり凹状球面2bの経年的摩滅を軽減し、所定のトルクを長期にわたって維持することが可能となった。
【0013】
また、このように構成されたボールジョイント部の、ボール側の凸状球面7と、受け側である凹状球面2bの一方のパーツを樹脂で成型して他方を異なる材質で形成してもその効果は同様であり、なおかつ一方のパーツを亜鉛ダイキャストで成型して他方を異なる材質で形成してもその効果は同様である。
【0014】
このように本発明は、連結されたパーツ双方の材質に拘らず、人形玩具の関節部の程良い可動トルクを確保することが可能となり、しかも、一定のトルクを長期にわたって維持することが可能となったものである。尚、Oリング8は、凸状球面7の外面に球の中心Gを含む位置に全周にわたって凹状の溝を設けて、Oリング8を伸ばした状態で嵌め入れた構成としても良いし、同様の位置にOリング8が配置されるように凸状球面7とOリング8を二重成形として構成してもよい。また、Oリングのほか、径方向に伸縮可能なCリング(Eリングを含む)を用いることによっても同様な効果が得られるものである。尚、上述した球面以上の内面積を有する受け側である凹状球面2bと、少なくとも半球面以上の外面積を有するボール側であるOリング8が設けられた凸状球面7とは、胸部2と腕部5のほかに、例えば、胸部2と腹部3、腹部3と下腹部4、下腹部4と脚部5などの接続部分においても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の人形玩具の正面図である。
【図2】要部の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0016】
1…人形玩具
2…胸部
2b…凹状球面
3…腹部
4…下腹部
5…腕部
6…脚部
7…凸状球面
8…Oリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割された一方のパーツに少なくとも半球面以上の内面積を有する凹状球面が形成され、分割された他方のパーツに少なくとも半球面以上の外面積を有する凸状球面が形成され、前記凹状球面に前記凸状球面を嵌合することにより前記一方のパーツに対して前記他方のパーツが所定範囲内で自在に回動可能に保持された人形玩具において、
前記凸状球面の外面に中心を含む断面上に前記外面よりも突出するOリングを設けたことを特徴とする人形玩具。
【請求項2】
前記リングは、径方向に伸縮可能なCリングが用いられていることを特徴とする請求項1に記載の人形玩具。
【請求項3】
前記一方のパーツは、硬質樹脂から形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の人形玩具。
【請求項4】
前記一方のパーツは、亜鉛ダイキャストにより成形されていることを特徴とする請求項3に記載の人形玩具。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−334364(P2006−334364A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−192760(P2005−192760)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(599042658)有限会社オオツカ企画 (1)
【Fターム(参考)】