説明

人形玩具

【課題】腰部の前方に延ばした大腿部を更に胸部側に向かって大きな角度範囲回転させることができる人形玩具を提供する。
【解決手段】回転リンク15,15´と第1の連結構造17,17´とストッパ19,19´と第2の連結構造21,21´とから股関節構造7,7´を構成する。第1の連結構造17,17´を、回転リンク15,15´を腰部5に対して所定の回転角度範囲内で回転できるように連結する構造にする。第2の連結構造21,21´を、回転リンク15,15´と大腿部8,8´との間に設けて、第1の回転中心線CL1と平行に延びる第2の回転中心線CL2を中心として、大腿部8,8´が回転するように大腿部の基部9,9´を回転リンク15,15´に連結する構造にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、股関節構造を有する人形玩具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2005−34398号公報[特許文献1]には、腰部の下面中央に形成された股間部の左右両側に球状の関節部材を介して大腿部が連結されている人形玩具の股関節構造が開示されている。この構造では、大腿部の上端部に、股間部側に開口する凹面部が形成され、凹面部に球状の関節部材が配置されている。そして、関節部材の股間部側が股間部の側部に前後に回動自在に連結され、関節部材の大腿部側が大腿部の上部に形成された凹面部の内部に回動自在に嵌めこまれている。このような関節構造により、腰部と大腿部とが上下方向に延びた状態から、大腿部を腰部の前方に約90度回動させることができるため、人形玩具を、立っている状態から大腿部を腰部の前方に直角に伸ばした状態、すなわち足を伸ばして座った状態に変形することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−34398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2005−34398号公報に開示された人形玩具の股関節構造では、腰部の股関節部に対して大腿部の上部を回動させるときに、大腿部の前方側面が腰部に当たり、それ以上は大腿部を回動させることができず、腰部に対する大腿部の回動可能範囲が制限される。そのため、人形玩具を、腰部と大腿部が上下方向に延びた状態から、大腿部を腰部の前方に約90度回動させることはできるものの、大腿部を腰部の前方に約90度回動させ更に大腿部を腰部よりも上側に向けて大きな角度で回動させることはできない。したがって、この股関節構造を採用しても、人形玩具を、立った状態から大腿部を腰部の前方に伸ばし、その後さらに大腿部を腰部よりも上側に向けて両膝を立てて座る姿勢または両膝を抱えて座る姿勢(いわゆる体育座りの姿勢)に変形させることはできない。
【0005】
本発明の目的は、腰部の前方に伸ばした大腿部を更に腰部よりも上側に向けて大きな角度で回動させることができる人形玩具を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、両膝を立てて座る姿勢または両膝を抱えて座る姿勢をとることができる人形玩具を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、人形が立っている状態で、股関節構造が簡単に変形することがない人形玩具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明が改良の対象とする人形玩具は、腰部の下部に股関節構造を介して大腿部が取り付けられている人形玩具である。この人形玩具において、股関節構造は、回転リンクと第1の連結構造とストッパと第2の連結構造とを有する。回転リンクは、人形玩具が立っている状態において腰部の中心を上下方向に延びる仮想中心線を含んで人形玩具の前後方向に伸びる仮想平面と直交する方向に延びる第1の回転中心線を中心として所定の回転角度範囲内を回転するように構成されている。ここで、仮想中心線および仮想平面は、第1の回転中心線及び後述の第2の回転中心線の位置を特定するために便宜上用いる仮想の中心線および平面である。また、第1の回転中心線は、回転リンクが腰部に対して回転する回転中心の位置を特定するために便宜上用いる仮想の中心線である。
【0009】
第1の連結構造は、回転リンクを腰部に対して所定の回転角度範囲内で回転できるように連結する構造となっている。またストッパは、大腿部が上下方向に延びている状態において、回転リンクと当接し、回転リンクが第1の回転中心線を中心として上方向に回転しないように回転リンクの動きを規制するために腰部に設けられている。第2の連結構造は、回転リンクと大腿部との間に設けられて、回転リンクがストッパと当接している状態において、第1の回転中心線よりも下方に位置し且つ第1の回転中心線よりも人形玩具の背面側に位置し第1の回転中心線と平行に延びる第2の回転中心線を中心として、大腿部が回転するように大腿部の基部を回転リンクに連結する構造となっている。第2の回転中心線は、大腿部が回転リンクに対して回転する回転中心の位置を特定するために便宜上用いる仮想の中心線である。
【0010】
このような股関節構造を有する本発明の人形玩具では、第1の連結構造により回転リンクが腰部に対して第1の回転中心線を中心として所定の回転角度範囲内で回転した後、さらに第2の連結構造により大腿部が回転リンクに対して第2の回転中心線を中心として回転するため、腰部と大腿部が上下方向に延びた状態から、大腿部を腰部の前方に約90度回して延ばして、さらに腰部よりも上側(胸部側)に大きい角度範囲回動させることができる。その上、大腿部が上下方向に延びている状態において、ストッパが回転リンクと当接し、回転リンクが第1の回転中心線を中心として上方向に回転しないように回転リンクの動きを規制しているため、人形玩具が立っている状態でも、腰部と大腿部との結合部分を構成する股関節構造にぐらつきが発生して、股関節構造が変形するのを防止することができる。
【0011】
なお腰部、回転リンク及び大腿部は、回転リンクが第1の回転中心線を中心にしてストッパから離れる方向に最大限回転した後、大腿部が第2の連結構造の第2の回転中心線を中心にして更に上方に所定の角度回転し得るように、それぞれの形状を定めるのが好ましい。このようにすると、回転リンクが第1の回転中心線を中心にして最大限回転した後に、大腿部が第2の連結構造の第2の回転中心線を中心にして更に回転するため、大腿部の角度範囲を、大腿部を胸部に近付けることができる程度まで大きくすることができる。
【0012】
第1の連結構造としては、例えば、次のような構造を用いることができる。まず第1のタイプの第1の連結構造は、回転リンクに固定されて第1の回転中心線を軸線とする横軸と、腰部に設けられて横軸を回転可能に支持する軸受け部とから構成することができる。また、第2のタイプの第1の連結構造は、腰部に固定されて第1の回転中心線を軸線とする横軸と、回転リンクに設けられて横軸の回りを所定の回転角度範囲内で回転リンクが回転し得るように横軸に嵌合される貫通孔とから構成することができる。更に第3のタイプの第1の連結構造は、回転リンクの内側側面に設けられて第1の回転中心線が中心を通る球状部と、内面に球状部の外面に沿う曲面を備え且つ腰部に設けられて、球状部が枢軸運動可能に嵌合される凹部とからなるボールジョイント構造とすることができる。第4のタイプの第1の連結構造は、腰部に設けられた球状部と、内面に球状部の外面に沿う曲面を備え且つ回転リンクの内側側面における第1の回転中心線が通る位置に設けられて球状部が枢軸運動可能に嵌合される凹部とからなるボールジョイント構造とすることができる。これらのタイプの第1の連結構造によれば、腰部に対して回転リンクが第1の回転中心線を中心として回転可能な嵌合構造を、腰部と回転リンクとの間に形成することができる。特にボールジョイント構造を有する第1の連結構造を用いると、大腿部が腰部に対して枢軸運動を行うことができるため、ボールジョイント構造の回転範囲内で複雑な回転運動を行うことができる。なお、第1の連結構造は、上述の4つの構造に限られるものではなく、腰部と回転リンクとの間に腰部に対して回転リンクが回転可能な嵌合構造を形成することができる構造であれば、どのような構造を採用しても良いのはもちろんである。
【0013】
回転リンクは、第1の回転中心線が通る第1の端部と、第2の回転中心線が通る第2の端部と、第1の端部と第2の端部との間に位置する連結部とを有し、腰部と大腿部が上下方向に並んでいる状態において連結部がストッパと当接するように構成するのが好ましい。このような構成にすると、腰部と大腿部が上下方向に並んでいる状態のときに腰部に対して回転リンクが固定されるため、人形玩具が立った状態でも腰部と大腿部の間で大きなぐらつきが発生するのを防止することができる。なお、回転リンクは、ストッパと当接する部分を有する板状リンクから構成しても良い。このようにすると、第1及び第2の端部、連結部の構成を簡単にすることができ、回転リンクの製造が容易になる。
【0014】
第2の連結構造としては、以下の構造のボールジョイント構造を用いることができる。例えば、第2の連結構造には、回転リンクの外側側面に設けられて第2の回転中心線が中心を通る球状部と、内面に球状部の外面に沿う曲面を備え且つ大腿部の基部に設けられて、球状部が枢軸運動可能に嵌合される凹部とからなるボールジョイント構造を用いることができる。また第2の連結構造には、大腿部の基部に設けられた球状部と、内面に球状部の外面に沿う曲面を備え且つ回転リンクの外側側面における第2の回転中心線が通る位置に設けられて球状部が枢軸運動可能に嵌合される凹部とからなるボールジョイント構造を用いることができる。このようなボールジョイント構造により第2の連結構造を構成すると、大腿部を腰部に対して枢軸運動させることができるため、ボールジョイント構造の回転範囲内で大腿部に複雑な回転運動を行わせることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の人形玩具によれば、股関節構造が、第1の連結構造により回転リンクが腰部に対して第1の回転中心線を中心として所定の回転角度範囲内で回転した後、さらに第2の連結構造により大腿部が回転リンクに対して第2の回転中心線を中心として回転するため、腰部と大腿部が上下方向に延びた状態から、大腿部を腰部の前方に約90度回して延ばして、さらに腰部よりも上側に大きい角度範囲回動させることができる。その結果、本発明の人形玩具では、両膝を立てて座る姿勢または両膝を抱えて座る姿勢をとることができる。また大腿部が上下方向に延びている状態において、ストッパが回転リンクと当接し、回転リンクが第1の回転中心線を中心として上方向に回転しないように回転リンクの動きを規制しているため、人形玩具が立っている状態でも、腰部と大腿部との結合部分を構成する股関節構造にぐらつきが発生して、股関節構造が変形するのを防止することができる利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(A)及び(B)は、本実施の形態の人形玩具が直立している状態の正面図及び右側面図を示す図である。
【図2】(A)は図1(A)において腰部と股関節構造と大腿部とを拡大し、これらの部材を透明なものとして示した図であり、(B)は(A)の右側面図であり、(C)は(A)の左側面図である。
【図3】一方の股関節構造の概略拡大断面図を示す図である。
【図4】一方の股関節構造で使用する回転リンクの斜視図である。
【図5】人形玩具の変形過程における回転リンクの回転状態と、人形玩具の形状の変化を示す図である。
【図6】(A)乃至(D)は、人形玩具の変形過程における回転リンクの回転状態と、人形玩具の形状の変化を示す図である。
【図7】(A)乃至(C)は、人形玩具の変形過程における外観の変化を示す図である。
【図8】(A)及び(B)は、それぞれ股関節構造の他の例を説明するために用いる図である。
【図9】(A)及び(B)は、それぞれ股関節構造の他の例を説明するために用いる図である。
【図10】(A)及び(B)は、それぞれ股関節構造の他の例を説明するために用いる図である。
【図11】(A)乃至(C)は、回転リンクの他の例の構成を示す図である。
【図12】(A)乃至(C)は、回転リンクの他の例の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係わる人形玩具の実施の形態の一例について図面を参照して説明する。図1(A)及び(B)は、本実施の形態の人形玩具1が直立している状態の正面図及び右側面図を示している。人形玩具1は、頭部2の下に、首部6を介して人形玩具1の胸部3と、胸部3の下に設けられて胸部3と共に胴部を構成する腰部5とを備えている。そして胸部3の両肩部3a,3a´には、腕部4,4´が取り付けられている。腕部4,4´は、それぞれ上腕部4a,4a´,上腕下部4b,4b´及び手部4c,4c´から構成されている。
【0018】
また、腰部5の下側には、後述する股関節構造7,7´を介して脚部14,14´の一部を構成する大腿部8,8´が取り付けられている。なお図1においては、股関節構造7,7´の図示は省略してある。大腿部8,8´は、上方側に基部9,9´を備え、基部9,9´の下に大腿下部10,10´を備えている。基部9,9´と大腿下部10,10´とは、上下方向に延びる図示しない軸を中心に大腿下部10,10´が基部9,9´に対して所定の角度回動するように、相互に連結されている。そして大腿下部10,10´の下側には、膝関節構造11,11´を介して人形玩具1の脚部14,14´の一部を構成する下腿部12,12´が取り付けられており、下腿部12,12´の下部には、足部13,13´が取り付けられている。股関節構造7,7´の構成を除いて、符号2乃至13が付された人形玩具1の各部位を構成する部品間を連結する関節構造は、回転軸構造やボールジョイント構造等の公知の関節構造により構成されている。回転軸構造とは、軸を中心にして軸の両側に位置する部材が回動する構造である。またボールジョイント構造とは、一方の部材にボール状の部分即ち球状部を備えており、他方の部材に球状部が枢軸運動可能に嵌合される凹部を備えている。
【0019】
つぎに本発明の実施の形態で用いる股関節構造の一例について説明する。図2(A)は、図1(A)において腰部と股関節構造と大腿部とを拡大し、これらの部材を透明なものとして示した図である。また、図2(B)は図2(A)の右側面図であり、図2(C)は図2(A)の左側面図である。なお股関節造は対称的な構造を有しているため、図3には一方の股関節構造の概略拡大断面図を示し、また図4には一方の股関節構造で使用する回転リンクの斜視図を示す。なお図3においては、理解を容易にするために、回転リンクは断面により図示していない。
【0020】
図2に示すように、股関節構造7,7´は、回転リンク15,15´と、第1の連結構造17,17´と、ストッパ19,19´と、第2の連結構造21,21´とから構成されている。回転リンク15,15´は、人形玩具1が直立姿勢をとっている状態において、腰部5の中心を上下方向に延びる仮想中心線CLを含んで人形玩具1の前後方向に伸びる仮想平面(図示せず)と直交する方向に延びる第1の回転中心線CL1を中心として約90度の回転角度範囲内を前後方向に回転するように構成されている。回転リンク15、15´は、第1の回転中心線CL1が通る第1の端部15a,15a´と、後述する第2の回転中心線CL2が通る第2の端部15b,15b´と、第1の端部15a,15a´と第2の端部15b,15b´との間に位置する連結部15c、15c´とを有している。腰部5と大腿部8,8´が上下方向に並んでいる状態において(即ち人形玩具が直立姿勢をとっている状態において)、連結部15c、15c´がストッパ19,19´と当接するように、回転リンク15,15´の形状が定められている。ストッパ部19,19´は、腰部5の両側の下面に設けられている。ストッパ部19,19´については後に詳しく説明する。
【0021】
本実施の形態で用いる回転リンク15,15´は、第1の回転中心線CL1が延びる方向から見た形状がアルファベットのJの文字に似た形状を有している。そして回転リンク15,15´の第1の端部15a、15a´には、第1の連結構造17,17´の一部を構成する第1の回転中心線CL1を軸線とする横軸15d,15d´が設けられている。また回転リンク15,15´の第2の端部15b,15b´には、第2の連結構造21の一部を構成する球状部15e,15e´を備えている。
【0022】
第1の連結構造17,17´は、回転リンク15,15´を腰部5に対して、第1の回転中心線CL1を中心にして約90度の回転角度範囲内で回転できるように、連結する構造を有している。この例では、図3に示すように、第1の連結構造17は、回転リンク15に固定されて第1の回転中心線CL1を軸線とする横軸15dと、腰部5に設けられて横軸15dを回転可能に支持する凹部からなる軸受け部5aとから構成されている。他方の第1の連結構造17´も同様に構成されている。この例では、横軸15dと軸受け部5aを簡略化して示してあるが、実際の横軸15dと軸受け部5aは、嵌合された後は、簡単に抜けることがなく、しかも横軸15dが第1の回転中心線CL1を中心にして回動することを可能にする構造を有している。具体的には、横軸15dの外周部に環状の凸部を一体に形成し、凹部からなる軸受け部5aの内周面に、横軸15dに設けた環状の凸部が嵌合する環状の溝部を形成する。そして横軸15dに設けたこの環状の凸部を圧縮変形させながら、軸受け部5a内に横軸15dを挿入し、環状の凸部と環状の溝部とを嵌め合わせるようにする。このようにすると軸受け部5aから横軸15dが簡単に抜けることが無くなる。なお横軸15dを、回転リンク15の厚み方向両側に延びるように設け、横軸の両端を回転可能に支持するようにしてもよいのは勿論である。
【0023】
またストッパ19,19´は、腰部5と大腿部8,8´が上下方向に延びている状態において、回転リンク15,15´と当接し、回転リンク15,15´が第1の回転中心線CL1を中心として上方向に回転しないように回転リンク15,15´の動きを規制するように腰部5に設けられている。なお、ストッパ19,19´は、腰部5の一部として構成してもよいし、腰部5とは別の部材で構成してもよい。この例では、ストッパ19,19´は、腰部5とは別の部材で構成されている。
【0024】
第2の連結構造21,21´は、回転リンク15,15´と大腿部8,8´の基部9,9´との間に設けられている。第2の連結構造21,21´は、回転リンク15,15´がストッパ19,19´と当接している状態において、第1の回転中心線CL1よりも下方に位置し且つ第1の回転中心線CL1よりも人形玩具1の背面側に位置し第1の回転中心線CL1と平行に延びる第2の回転中心線CL2を中心として、大腿部8,8´が回転するように大腿部の基部9,9´を回転リンク15,15´に連結する構造となっている。この例では、図3に示すように、第2の連結構造21は、回転リンク15の外側側面に設けられて第2の回転中心線CL2が中心を通る球状部15eと、内面に球状部15eの外面に沿う曲面を備え且つ大腿部の基部9に設けられて、球状部15eが枢軸運動可能に嵌合される凹部9aとから構成されるボールジョイント構造となっている。第2の連結構造21,21´をこのようなボールジョイント構造にすると、大腿部8,8´を腰部5に対して枢軸運動させることができるため、ボールジョイント構造の回転範囲内で大腿部8,8´に複雑な回転運動を行わせることができる。その結果、大腿部8,8´を前後に回転させるだけでなく、左右に開くことも可能になる。
【0025】
上記のような股関節構造7,7´を有する本実施の形態の人形玩具を、両膝を立てた状態で座る姿勢(いわゆる体育座りの姿勢)に変形する場合には、次のように各部を変位させる。図5及び図6には、変形過程における回転リンク15,15´の回転状態を示してあり、図7には人形玩具1の変形過程における外観の変化を示してある。まず図5及び図6(B)に示すように、第1の連結構造17,17´により回転リンク15,15´を腰部5に対して第1の回転中心線CL1を中心として約90度の回転角度範囲内で回転させる。この状態では、回転リンク15,15´に設けた球状部15e,15e´は、第1の回転中心線CL1よりも下方の位置にあって、しかも人形玩具1の前方側に変位している。この位置は、腰部5よりも前方でしかも腰部5には近づいていない位置である。すなわちこの位置は、腰部5が大腿部8,8´に対する障害になり難い位置である。
【0026】
つぎに第2の連結構造21,21´により、図6(C)に示すように、大腿部8,8´を回転リンク15,15´に対して第2の回転中心線CL2を中心として上方に回転する。その後、図6(D)に示すように、大腿部8,8´に対して、下腿部12,12´を回転させる。なお実際には、先に大腿部8,8´に対して下腿部12,12´を回転させておいてもよい。このように本実施の形態によれば、図6(A)に示すように、腰部5と大腿部8,8´が上下方向に延びた状態から、図6(B)に示すように、大腿部8,8´を腰部5の前方に約90度回して延ばして、さらに図6(C)に示すように、胸部3側に大腿部8,8´を大きい角度範囲回動させることができる。その結果、図7に示したように本実施の形態によれば、両膝を立てた状態で座る姿勢(いわゆる体育座りの姿勢)に、人形玩具1を変形することができる。
【0027】
特に、本実施の形態によれば、図5に示すように、人形玩具1が直立状態にあって、大腿部8,8´が上下方向に延びている状態において、ストッパ19,19´が回転リンク15,15´と当接し、回転リンク15,15´が第1の回転中心線CL1を中心として上方向に回転しないように(図5の例に示す状態は、時計回り方向に回転しないように)回転リンク15,15´の動きを規制している。その結果、人形玩具1が立っている状態でも、腰部5と大腿部8,8´との結合部分を構成する股関節構造7,7´にぐらつきが発生して、股関節構造が簡単に変形することがない。
【0028】
なお、この例では、腰部5、回転リンク15,15´及び大腿部8,8´は、回転リンク15,15´が第1の回転中心線CL1を中心にしてストッパ19,19´から離れる方向に約90度回転した後、大腿部8,8´が第2の連結構造21,21´の第2の回転中心線CL2を中心にして更に上方に約90度の角度回転し得るように、それぞれの形状が定められている。そのため、回転リンク15,15´が第1の回転中心線CL1を中心にして最大限回転した後に、大腿部8,8´が第2の連結構造21,21´の第2の回転中心線CL2を中心にして更に回転するため、大腿部8,8´の角度範囲を、大腿部8,8´を胸部に近付けることができる程度まで大きくすることができる。
【0029】
つぎに本発明で用いることができる股関節構造の変形例について説明する。図8(A)及び(B)に示した股関節構造には、図1乃至図4に示した上記実施の形態の股関節構造7と同様の部分に、図1乃至図4に付した符号の数に100の数を加えた数の符号を付して説明を省略する。図8に示す股関節構造107では、第1の連結構造117が、腰部105に固定されて第1の回転中心線CL101を軸線とする横軸105bと、回転リンク115に設けられて横軸105bの回りを約90度の回転角度範囲内で回転リンク115が回転し得るように横軸105bに嵌合される貫通孔115fとから構成されている。また第2の連結構造121は、大腿部の基部109に設けられた球状部109bと、内面に球状部109bの外面に沿う曲面を備え且つ回転リンク115の外側側面における第2の回転中心線CL102が通る位置に設けられて球状部109bが枢軸運動可能に嵌合される凹部115gとからなるボールジョイント構造を用いる。
【0030】
また図9(A)及び(B)に示した股関節構造には、図1乃至図4に示した上記実施の形態の股関節構造7と同様の部分に、図1乃至図4に付した符号の数に200の数を加えた数の符号を付して説明を省略する。図9(A)及び(B)に示した股関節構造207では、第1の連結構造217が、回転リンク215の内側側面に設けられて第1の回転中心線CL201が中心を通る球状部215hと、内面に球状部215hの外面に沿う曲面を備え且つ腰部205に設けられて、球状部215hが枢軸運動可能に嵌合される凹部205cとからなるボールジョイント構造とから構成されている。また第2の連結構造221は、大腿部の基部209に固定されて第2の回転中心線CL202を軸線とする横軸209cと、回転リンク215に設けられて横軸209cの回りを約90度の回転角度範囲内で回転リンク215が回転し得るように横軸209cに嵌合される貫通孔215iとから構成されている。
【0031】
また図10(A)及び(B)に示した股関節構造には、図1乃至図4に示した上記実施の形態の股関節構造7と同様の部分に、図1乃至図4に付した符号の数に300の数を加えた数の符号を付して説明を省略する。図10(A)及び(B)に示した股関節構造307では、第1の連結構造317が、腰部305に設けられた球状部305dと、内面に球状部305dの外面に沿う曲面を備え且つ回転リンク315の内側側面における第1の回転中心線CL301が通る位置に設けられて球状部305dが枢軸運動可能に嵌合される凹部315jとからなるボールジョイント構造で構成されている。また第2の連結構造321は、回転リンク315に固定されて第2の回転中心線CL302を軸線とする横軸315kと、大腿部の基部309に設けられて横軸を回転可能に支持する軸受け部309dとから構成されている。図9及び10のようにボールジョイント構造からなる第1の連結構造を用いると、大腿部が腰部に対して枢軸運動を行うことができるため、ボールジョイント構造の回転範囲内で複雑な回転運動を行うことができる。
【0032】
なお、第1の連結構造として、図8乃至図10に示した変形例の構造以外のものを用いることができる。即ち第1の連結構造としては、腰部と回転リンクとの間に腰部に対して回転リンクが回転可能な嵌合構造を形成することができる構造であれば、どのような構造を採用しても良いのはもちろんである。また、第2の連結構造も、回転リンクと大腿部の基部との間に回転リンクに対して大腿部の基部が回転可能な嵌合構造を形成することができる構造であれば、どのような構造を採用しても良いのはもちろんである。
【0033】
つぎに本発明の実施の形態における股関節構造で採用する回転リンクの他の一例について説明する。図11(A)乃至(C)及び図12(A)乃至(C)は、回転リンクの他の例を示す図である。これらの図において、図3及び図4に示した回転リンク15を構成する部分と同様の機能を果たす部分に、図3及び図4に付した符号の数に400または500の数を加えた数の符号を付して説明を省略する。図3及び図4に示した回転リンクでは第1の回転中心線CL1が通る第1の端部15aから、第2の回転中心線CL2が通る第2の端部15bまで延びる形状が略J字状に形成されているのに対して、図11に示した回転リンク415では、第1の端部415aから第2の端部415bまで延びる連結部415cの形状がL字状に形成されている。また図12に示す回転リンク515は、台形形状をなす板状に形成している。このような形状であって、図3及び図4に示した回転リンク15と同じ機能を果たす。
【0034】
なお、回転リンクを略J字状、L字状等の形状にした場合は、J字状の湾曲部またはL字状直角部を形成する分だけ、J字状の湾曲部またはL字状直角部の機械的強度が必ず弱くなる。これに対して図12に示すように板状にすると、J字状の湾曲部またはL字状の直角部のように細くなる部分がなくなるため、外部からの強い衝撃が加わっても回転リンクが破損しにくくなる。
【符号の説明】
【0035】
1 人形玩具
3 胸部
4 腕部
5 腰部
5a 軸受け部
7,7´ 股関節構造
8,8´ 大腿部
9,9´ 大腿部の基部
9a 凹部
15,15´ 回転リンク
15a 第1の端部
15b 第2の端部
15c 結合部
15d 横軸
15e 球状部
17、17´ 第1の連結構造
19,19´ ストッパ
21、21´ 第2の連結構造
CL 仮想中心線
CL1 第1の回転中心線
CL2 第2の回転中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腰部の下部に股関節構造を介して大腿部が取り付けられている人形玩具であって、
前記股関節構造は、
前記人形玩具が立っている状態において前記腰部の中心を上下方向に延びる仮想中心線を含んで前記人形玩具の前後方向に伸びる仮想平面と直交する方向に延びる第1の回転中心線を中心として所定の回転角度範囲内を回転する回転リンクと、
前記回転リンクを前記腰部に対して前記所定の回転角度範囲内で回転できるように連結する第1の連結構造と、
前記大腿部が前記上下方向に延びている状態において、前記回転リンクと当接し、前記回転リンクが前記第1の回転中心線を中心として上方向に回転しないように前記回転リンクの動きを規制するために前記腰部に設けられたストッパと、
前記回転リンクと前記大腿部との間に設けられて、前記回転リンクが前記ストッパと当接している状態において、前記第1の回転中心線よりも下方に位置し且つ前記第1の回転中心線よりも前記人形玩具の背面側に位置し前記第1の回転中心線と平行に延びる第2の回転中心線を中心として、前記大腿部が回転するように前記大腿部の基部を前記回転リンクに連結する第2の連結構造とを有しており、
前記腰部、前記回転リンク及び前記大腿部は、前記回転リンクが前記第1の回転中心線を中心にして前記ストッパから離れる方向に最大限回転した後、前記第2の回転中心線が前記腰部の前方で且つ前記大腿部が前記第2の回転中心線を中心にして更に上方に所定の角度回転するときに前記腰部が前記大腿部の障害になり難い位置に位置するように、それぞれの形状が定められていることを特徴とする人形玩具。
【請求項2】
前記第1の連結構造は、前記回転リンクに固定されて前記第1の回転中心線を軸線とする横軸と、前記腰部に設けられて前記横軸を回転可能に支持する軸受け部とから構成されている請求項1に記載の人形玩具。
【請求項3】
前記第1の連結構造は、前記腰部に固定されて前記第1の回転中心線を軸線とする横軸と、前記回転リンクに設けられて前記横軸の回りを前記所定の回転角度範囲内で前記回転リンクが回転し得るように前記横軸に嵌合される貫通孔とから構成されている請求項1に記載の人形玩具。
【請求項4】
前記第1の連結構造は、前記回転リンクの内側側面に設けられて前記第1の回転中心線が中心を通る球状部と、内面に前記球状部の外面に沿う曲面を備え且つ前記腰部に設けられて、前記球状部が枢軸運動可能に嵌合される凹部とからなるボールジョイント構造である請求項1に記載の人形玩具。
【請求項5】
前記第1の連結構造は、前記腰部に設けられた球状部と、内面に前記球状部の外面に沿う曲面を備え且つ前記回転リンクの内側側面における前記第1の回転中心線が通る位置に設けられて前記球状部が枢軸運動可能に嵌合される凹部とからなるボールジョイント構造である請求項1に記載の人形玩具。
【請求項6】
前記回転リンクは、前記第1の回転中心線が通る第1の端部と、前記第2の回転中心線が通る第2の端部と、前記第1の端部と前記第2の端部との間に位置する連結部とを有しており、前記腰部と前記大腿部が前記上下方向に並んでいる状態において前記連結部が前記ストッパと当接するように構成されている請求項1,2,3,4または5に記載の人形玩具。
【請求項7】
前記回転リンクは、前記ストッパと当接する部分を有する板状リンクからなる請求項1,2,3,4または5に記載の人形玩具。
【請求項8】
前記第2の連結構造は、前記回転リンクの外側側面に設けられて前記第2の回転中心線が中心を通る球状部と、内面に前記球状部の外面に沿う曲面を備え且つ前記大腿部の基部に設けられて、前記球状部が枢軸運動可能に嵌合される凹部とからなるボールジョイント構造である請求項1,2,3,4,5,6または7に記載の人形玩具。
【請求項9】
前記第2の連結構造は、前記大腿部の基部に設けられた球状部と、内面に前記球状部の外面に沿う曲面を備え且つ前記回転リンクの外側側面における前記第2の回転中心線が通る位置に設けられて前記球状部が枢軸運動可能に嵌合される凹部とからなるボールジョイント構造である請求項1,2,3,4,5,6または7に記載の人形玩具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−210459(P2012−210459A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−150672(P2012−150672)
【出願日】平成24年7月4日(2012.7.4)
【分割の表示】特願2006−96087(P2006−96087)の分割
【原出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(506113602)株式会社コナミデジタルエンタテインメント (1,441)
【Fターム(参考)】