説明

人間の健康の監視のための多変量残差に基づく健康指標

患者の移動性または病院内監視に早期警告および優先順位決定を付与して、前進的な介入、ならびに保健医療のコストおよびリスクの両方の軽減を可能にする。正規変動を除去するために、経験的モデルによって多変量生理学的パラメータを推定する。多変量確率密度関数を使用して残差を試験して、医療活動の優先順位を決定するための多変量健康指標を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、あらゆる目的で全体が参照により本明細書に組み込まれている、2010年1月14日に出願された米国仮特許出願第61/295,072号明細書の米国特許法第119条(e)に基づく優先権の利益を主張するものである。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
本発明は、国立科学財団により授与された助成番号IIP−0810751の下で政府の支援によりなされた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、一般に、人間の健康の監視(human health monitoring)の分野に関し、より詳細には、人間の健康指標の残差に基づく評価(residual-based assessment of human health indicator)を提供するための生物学的パラメータの測定値の解析のための多変量モデル(multivariate model)の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
医療は、何世紀にもわたって、危機に至って講じられる受身的な処置として実施されてきた。残念なことに、それは今日まであまり変わっていない。慢性疾患は、保健医療の圧倒的な経済的コストの不相応な割合を占め、その多くは、悪化を早期に警告することによって回避することが可能であった。現在の保健医療の慣行は、間欠的かつ受身的で、診療所または病院の管理された環境の外部では患者の健康をほとんど視認できない。しかし、医療技術は、着用可能なデバイスからの外来患者の遠隔測定法を今になって探求し始めたばかりであり、これらのデータ一切を誰が観察するのか、または低い誤報率で早期に警告するためにそれをどのようにして解析するのかに対する回答は実質的に存在しない。さらに、外来患者の遠隔測定法は、移動性のモーションアーチファクト、および患者が鎮静化され、病院のベッドに横たわっている場合には通常対処されない毎日の活動の過程における正常な生理学的変動により大きな課題を提起する。
【0005】
他の業界(原子力、航空、製錬、コンピュータシステム)は、近年、目標のシステムから回収されたセンサデータに示される正規の変動および変遷に対応し、それを悪化の微妙な早期警告の徴候と区別する状態の監視のための高度インテリジェントアルゴリズムを採用している。一種の機械学習技術である類似性に基づくモデル化(Similarity-Based Modeling)(「SBM」)技術は、上記の用途を含む多くの用途で成功を実証した。SBMは、複雑なシステムからの多変量データから正常な挙動を学習し、それを監視されているシステムにおける有害な挙動の発生と区別するノンパラメトリックデータ駆動型モデル化技術である。
【0006】
SBMによる健康問題の視認性(visibility)は、多変量データの可用性に依存する。多数のセンサを備えた着用可能な感知デバイスからの連続的な遠隔測定法により、当該データを得ることが可能である。しかし、既存のデバイスは、データが不十分であり、たいていの場合は一変量であり、主として非常に狭い健康関連問題、例えば、糖尿病に対するグルコースの監視、または高血圧に対する血圧を標的とする。それらのデバイスは、通常、連続的な監視を意図するものでなく、実施される解析は、総人口統計を用いて行われる。すなわち、その個人に個人化されない。さらに、現行の市販のテレヘルスデバイスは、容易に着用可能でなく、最新のモバイル技術を利用していない。
【0007】
前記SBMのような機械学習技術を適用して、患者の健康が潜在的に悪化していることを示す初期変化の早期検出を自動化できるように、外来患者に基づく着用可能デバイスからであるか、病院における枕もとの装置からであるかにかかわらず、解析に利用可能な多変量連続データを作成する必要性がある。医療スタッフは、一般に過剰労働であり、特に大人数の在宅患者が含まれ得る場合、患者毎の解析結果を詳細に調査するのに費やす時間が不足するため、重要な問題は、実行可能なように、単純なメトリックで当該機械学習技術の結果をどのように要約するかということである。
【発明の概要】
【0008】
生命徴候センサデータを連続的に回収し、それを前処理のために基地局コンピュータ(または携帯電話/PDA)に(リアルタイム、または周期的なバーストで)送信する着用可能な無線感知デバイスで構成されるエンドツーエンドの人間の健康監視手段を開示する。次いで、前処理されたデータは、SBMなどの、人間の監視のために作られたカーネルに基づく機械学習解析方法を用いる分析のためにウェブを介してサーバに送信される。SBM技術は、各個人の正常な生命徴候特性に対して特異的になるように訓練される。人間毎の生命徴候データの変動により、この能力は、どの人間監視システムにとっても効果的にするために極めて重要である。
【0009】
サーバを患者から離れた場所に配置することができる。SBMまたは他の関連するカーネルに基づく方法を用いてサーバで実施される解析は、センサデータから求められた生命徴候の推定値(すなわち生理学的データ)を生成することによって役立つ。これらの推定値は、訓練されたSBMモデルが、監視データに対応する最も近い許容可能な正常な生理学的データとして求めることができるものを表す。生理学的データで構成された推定値は、訓練されたモデルによる予測値と、着用可能な感知デバイスによって測定されたものとの差を表す残差を生成するために、実際の監視生理学的データと差別化される。生命徴候を人口統計的に許容し得る範囲(例えば、血圧についての人口に基づく標準)と比較する従来の医学的方法を用いても得られない可能性が高い健康問題の微妙な警告を早期検出するさらなる解析のための基礎を形成する。
【0010】
正常な生理機能(既にモデル化された生理機能)に対する残差(residual)は、正常から偏向し始めた生理機能に対する残差と異なり、統計的に区別され得る。残差のさらにコンピュータ化された解析は、監視データの任意の所与の多変量入力観測値について導かれた残差が、「ガウス形の混合」密度推定値に基づいて、正常な生理機能に特徴的な残差のパターンを表す確率を求めるステップと、多変量健康指標を、その確率に基づいて、その確率の逆数の対数として生成するステップと、このようにして生成された指標に閾値を適用して、入力された生命徴候が正常な生理学的挙動に特徴的であるかどうかの判断を示すステップと、一連の当該判断を組み合わせて、患者の生理学的健康状態の正常からの偏向の早期の指示を与えるステップとの1つ以上を含む。多変量健康指標は、有利には、患者の優先リストの管理のために、多数の変数からの残差解析を1つの指標に要約する。
【0011】
健康監視手段を、病院にて枕もとのモニタから得られた多変量生理学的パラメータに適用することもできる。典型的な人間の生理機能のSBMモデルを使用して、入院患者、特に、敗血症または肺炎などの併発症を生じるリスクがある患者、ならびに特に鎮静化および/または人工呼吸され、初発の病気の不快感もしくは感覚を表現することができない患者についての推定値および残差を求めることができる。健康監視手段に対応可能な枕もとのデータ供給物としては、心電図、パルスオキシメータ、人工呼吸器データ、ならびに非侵襲的手段またはカテーテルによって測定される動脈および静脈血圧等が挙げられる。当該データを病棟用のサーバにストリーミングすることも、複数の病院施設を監視するための敷地外サーバにストリーミングすることもでき、SBMをこれらのデータストリームに適用することによって判断支援を提供し、患者の治療の優先順位を決めるために保健医療従事者に対して表示することができる。
【0012】
本発明の解析法を、ソフトウェアによって特別に構成された一般的なコンピューティングプラットホーム上で実施することができる。患者上のセンサから回収されたデータを、例えばブルートゥースまたは他の極めてローカルな無線プロトコルを介して、移動性または可搬性のデバイスに無線で送信することができる。可搬性のデバイスは、患者が保持する携帯電話、もしくは「携帯型情報端末」、PDA等、または病院のベッドの患者とともに移動する可搬性コンピューティングデバイスであり得る。このデバイスは、生のセンサ信号を受信し、前記前処理を実施して、センサ信号から生命徴候「特徴」(生理学的データ)を、例えばEKG/ECG信号から心拍数を抽出するか、または生のセンサ信号からセンサマイクロプロセッシング施設によって抽出された既に前処理された特徴を受信することができる。得られた生理学的「特徴」データを、デバイス上(携帯電話もしくはPDA)上、または当該生理学的データが送信されたコンピュータ/サーバ上でSBMによって解析することができる。コンピュータは、患者に連結されたホームコンピュータ、または解析データセンターのリモートサーバであり得る。デバイスからのデータの伝送は、有線オフロードまたは無線再送信によって行われ得る。
【0013】
新規の特徴と考えられる本発明の特徴は、添付の請求項に記載されている。しかし、本発明そのもの、ならびにその好適な使用形態、さらなる目的および利点は、添付の図面と併用して実施形態の以下の詳細な説明を参照することによって、最も良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施形態による一般的な構成を示す構成図である。
【図2】人間に対するセンサの配置の例を示す図である。
【図3】生の生理学的波形または信号の例示的なチャートを示す図である。
【図4】相加的に積み重ねられた光センサによって採取される光成分を表すものと理解することができる、SpO2(血中酸素飽和度)に関連する特徴を測定するのに使用されるフォトプレチスモグラフィ構成要素の信号増幅チャートを示す図である。
【図5】生の生理学的関連信号を上の4つのプロットに示し、それから導かれた関連する特徴データを下の5つのプロットに示す多重チャートの例示的プロットである。
【図6】精度および頑健性の計算に使用される時系列の摂動を示す例示的な生理学的特徴時系列のプロットである。
【図7A】多変量健康指標の一対の関連するプロットの1つであり、非摂動データおよび摂動データに対する指標を示す生の特徴データについてのみ導かれたものである。
【図7B】非摂動データおよび摂動データに対する指標を示す特徴データのカーネルに基づくモデルから生成された残差データについて導かれた多変量健康指標プロットである。
【図8】代替的な実施形態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
患者が罹っているが、患者を無期限に病院に入院させることができない慢性の疾病および病気が過多に存在する。患者は、明示的な警告がほとんどないままに、安定な管理された状態から危急の健康リスクへと悪化し得る心不全、慢性閉塞性肺疾患、腎不全、糖尿病、早期の段階の痴呆および他の状態を有し得る。早期の段階での医学的介入は、危急を防止し、コストを回避し、疾患の進行を防止し、転帰を改善することができるため、当該悪化を早期に検出することが望ましい。
【0016】
医療スタッフの介護下にいる入院患者であっても、早期には最も良好に検出される併発症を発生し得る。人工呼吸器に依存する患者は、肺炎の発生率が高い。感染症および敗血症は、病院が招く交差汚染感染症または手術後の併発症により生じ得る。従来の枕もとの監視は、典型的には、患者の悪化をスタッフに注意を喚起する生命徴候に対する閾値を採用しているが、これらの従来の警報方法は粗く、誤報が多いという問題を有するとともに、見落とされる背景ノイズに急速に消えてしまうか、または望ましいときより遅れて悪化を捉える。
【0017】
SBMは、今日の保健医療業界で使用されている多くの監視手法と異なり、生命徴候信号(例えば、心拍数(HR)、血中酸素飽和度(SpO2)、呼吸量、血圧)間の相互関係を利用した多変量手法である。当該手法は、正規の変動、すなわち代謝の必要性、活性、環境および日内周期等に応答する生理機能の正常な変化による生理学的データの変動の存在下での生理機能の解析にとって極めて重要である。1日の過程にわたって、典型的な人間は、広範な心拍数、呼吸量、血圧および血中酸素濃度等を示す。病院環境における鎮静化された患者と対照的に、移動状態は、当該変動によって著しく煩わされ、その結果として、極度に管理された状況を除いて、家庭で通常の生活をしている人間に対する従来の医学的監視はほとんど存在していなかった。病院での鎮静化された状態においても、正常な患者の生理機能は、実質的な変動を示す。当該変動は、健康の初発の悪化を明示する生理学的パラメータの早期の変化を隠す。単一パラメータに置かれた従来の警報では、当該変化が極端になるまで、当該変化を正規の変動の背景に対して見分けることができない。例えば、心拍数に置かれた閾値を、単に心拍数が毎分10打だけ上昇したからといって警報を発するように設定することができない。これは、正常な生理機能でも容易に起こり得るためである。しかし、閾値が160bpmに設定されると、患者の状態は、閾値を超えるときまでに、既に実質的に悪化している恐れがある。
【0018】
加えて、今日開発されている感知技術は、対象の生命徴候の正確に較正された読取り値を提供する必要性が負担になっている。対照的に、SBMは、対象の生命徴候の相対的近似のみを必要とすることによって、健康状態を測定するために生理学的パラメータの絶対的な較正を達成する問題を回避する。これは、初発の健康問題の検出がすべての生体信号間の相対的変化に基づき、人口に基づく生命徴候範囲からの超過に基づくものでないためである。
【0019】
SBMは、モデル(「学習」)で正規の変動を具体化することによってこれらの利点を達成する。次いで、それらのパラメータの多変量測定値が提示される場合は、学習された生理学的パラメータの多変量推定値を生成するためにこのモデルが使用される。これらの推定値は、提示された(測定された)値にできるだけ近い、正常に変動する生理機能に対する値の集合を表す。推定値を提示された値と差別化して残差を得る。解析は、有利には、正規の変動によって煩わされる生の生理学的値の試験から、単なる正規の変動を超える差を表す残差の試験へとシフトされる。実際、SBMは、測定された挙動から推定された挙動を引いて、偏差のみを残すことによって正規の変動を除去する。
【0020】
本明細書に記載されているように、残差は、多変量密度推定技術を用いて解析される。この新規の手法によれば、患者の正常な生理機能を表すデータに対する残差ベクトル(次元nのベクトル(nは、推定値が実際の測定値と異なった生理学的パラメータの数である))の多次元分布を用いて、多変量密度推定手段を形成する。密度推定手段は、ガウス混合モデルであり、任意の新たな入力残差ベクトル(すなわち新たに監視されたデータからのベクトル)が同じ分布の一部である確率を求めるために使用される。多次元密度推定手段から得られるこの確率は、生理学的パラメータの各々に対する個々の残差の挙動を、患者の優先順位を要約するのに使用できる1つの全体的な指標に効果的に統合する。この確率は、多変量健康指標(MHI)として使用することができ、続いて、監視されている多数の生理学的パラメータの時系列の観察により患者の優先順位を評価するためのいくつかの残存性規則を用いて試験することができる。
【0021】
有利には、モデルにより生成された残差のMHI解析は、生の生理学的データに対する従来の医学的一変量閾値と比較し、かつ生の生理学的データの多変量密度推定値と比較すると、初発の健康問題のより早期に警告する。
【0022】
図1を参照すると、全体的な手法を理解することができる。ステップ105において、多数の生体信号を患者の上または内部のセンサから取得する。適切な生体信号の例としては、心電図(ECG)、胸部バイオインピーダンス(バイオ−Z)、フォトプレチスモグラフ(PPG)、温度差、収縮期または拡張期血圧、加速度計で測定される運動、呼吸活動の圧電信号および呼吸による瞬間空気流入量測定値等々が挙げられる。ステップ110において、これらの生体信号を使用して、生理学的特徴データを導く。様々な生理学的特徴を当該生体信号から導くことができ、一般的に理解されている例は、ECG信号の標識から求められる心拍数である。同様に、胸部バイオインピーダンスは、呼吸の量および深さを与えることができ、PPGは、(ECGを相互参照した場合の)脈拍遷移時間および血中酸素飽和度等を与えることができる。様々な生理学的特徴が当該技術分野で知られており、それらがフィードバックループおよび人間の生理機能の制御機構を介して相関する限り、その方法は、(モデルが同じ種類のデータについて訓練されている限り)使用される信号に対して不可知的であるため、後続のステップにおけるSBMの適用には、新たな特徴の使用も容易に意図される。任意のステップ115において、導かれた特徴に、他の生理学的に関連するデータ、すなわち監視される人間の生理学的挙動または応答に影響を与えるデータを追加することができる。例は、FiO2、補給酸素の使用により室内空気と比較して増加させることができる吸気中の酸素の分率である。ステップ120において、これらの同じ生理学的特徴の正規の変動に関して訓練されたSBMなどのカーネルに基づくモデルは、特徴の入力観測値の推定値を生成する。典型的には、推定値は、同時にサンプリングされた生理学的パラメータの集合で構成される入力ベクトルにおけるすべての要素について導かれる。ステップ125において、瞬間的な監視観測値における測定された特徴と、それらの特徴の対応する推定値との間の残差を生成する。場合により、ステップ130において、閾値試験を一変量的に、または多変量パターンに対応づけて残差に適用することができる。このオプションと並行して、ステップ135において、「正常」残差から生じた混合モデルによって残差を処理し、ステップ140において入力観測値に対して多変量健康指標を求める。このMHIは、入力観測値からの残差が混合モデルの多変量分布に属する確率の指標である。MHIを閾値により試験して、入力観測値が、正常な生理機能に特徴的でない偏差を明示するように確率が不十分であるかどうかを判断することもできる。ステップ145において、残存性を時系列のMHI測定値に適用して、閾値超過の残存性を順次観察によってさらに試験して、患者の健康に偏差が生じており、単にデータにおける過渡的な現象でないというより大きな信頼度を提供することができる。ステップ150において、MHIおよびその試験からの警報を、個々の残差または残差パターンに対する任意の先の試験とともに、ユーザインターフェースを介する患者の介護の優先順位の決定のために管理する。警報管理は、ユーザが発した注意を、「解放」、「上昇」または「モニタ」の警報および他の作用に関する医学的な記録システムにすることを促進させることができる。
【0023】
ステップ105の生体信号を枕もとのモニタおよび人工呼吸器などの典型的な病院の生命徴候装置、移動式生命徴候モニタ、移植可能な電気除細動器および計測器付きペースメーカなどの移植されたデバイス、ならびに着用可能な移動性モニタから取得することができる。どのデータ源デバイスを使用しても、多数の関連する生理学的変数または特徴を同時に、または連続的でなくても少なくとも定期的に提供することが可能な生体信号を回収しなければならない。一形態において、患者は、非侵襲的移動性感知デバイスを使用するか、または患者の通常の毎日の活動を通じて少なくとも反連続的に生体信号を取得するための移植可能なデバイスを有する。感知デバイスによって取得されたデータを定期的にデバイスメモリからオフロードした後、コンピュータで処理するか、またはセルラーネットワークもしくはWiFiによって連続的に送信して、受信するコンピュータもしくはサーバによって連続的もしくはバッチ方式で処理することができる。解析処理のコンピューティング要件も近代的な移動式デバイスの能力内にあるため、生理学的特徴を、患者が保持するスマートフォンまたはPDAに残差方法を用いてさらに解析することができる。次いで、得られた警報または健康状態条件を移動式デバイスで局部的に報告することができ、中央サーバにアップロードして、医療実務者と共有することもできる。
【0024】
本発明に使用できる非侵襲的な着用可能感知デバイスは、ECG、赤色および赤外(IR)フォトプレチスモグラフ(PPG)、バイオインピーダンスおよび3軸加速度計の4つのタイプの信号からデータを取得するように設計されている。これらのセンサは、そこから生理学的特徴を抽出することができる豊富な波形集合を提供する。(生の波形データと異なり)抽出された特徴は、SBMに基づく人間の健康を監視する手法を究極的に導くものである。例えば搭載型マイクロSDカード上への局部的記憶、または患者が保持する携帯電話もしくはPDAへの内蔵型ブルートゥース無線を介する送信のための関連生体信号を記録するようにデバイスを設計することができる。その電池を再充電するときにデバイスに電力を供給するのに使用することができ、生のリアルタイムセンサデータがデバイスのマイクロSDカード上に保存されている場合にデータを定期的にオフロードするためにPCを用いた高速通信のための機構を提供するUSBミニ−Bコネクタを有するようにデバイスを設計することができる。デバイスは、理想的にはその低電力消費特性が付与された周知のテキサスインスツルメンツMSP430ライン、内蔵型ADC、DAC、タイマーおよび複数のシリアル周辺インターフェース(SPI/UART/I2C)から選択されるマイクロプロセッサを使用してもよい。ブルートゥースインターフェースをBlueCore 3 Plug−n−Go IC、外部構成要素の要件が最小限のCSR,Incの96ピンBGAモジュール、および2.4GHzチップアンテナを介して提供することができる。
【0025】
いくつかの感知インターフェースを使用して、本発明のためのデータを提供することができる。2段階のアナログハイパスフィルタ(HPF)を使用した後に、高周波干渉(RFI)フィルタおよび微小電力計測増幅器を使用することによって心電図(ECG)を実施することができる。移動方式では、この高利得微分増幅器の前にRFIフィルタを採用することが重要である。それがなければ、微分増幅器ICにRF整流と呼ばれる現象が生じ得る。RF信号がIC内部で整流されると、出力にDCオフセット誤差が生じ、どんなローパスフィルタリングの量によっても誤差を除去することができなくなる。RFIが経時的に変化すると、DCオフセットも変化して、アーチファクトの影響を極めて受けやすいECG信号をもたらす。2つの取出電極を使用して、例えば胸のいずれかの側でその信号を取得することができる。ECGは、典型的には、マイクロプロセッサにより、12ビットおよび256Hzにてサンプリングされる。
【0026】
専用12ビットインピーダンス変換器ネットワーク解析装置IC(Analog Devices AD5933)を、電圧対電流段およびプログラム式利得計測増幅器と併用してバイオインピーダンス測定を行うことができる。左側腋窩に配置された電極を使用して、胴の反対側に見いだされる接地電極に50kHzにて425μAの電流を導入することができる。ECG信号を取り出すのに使用された同じ電極を使用して、5KHzのHPFおよびRFIフィルタを介して50KHzの信号を取り出すことができる。電圧の差は、V=IRの関係より体のインピーダンスに比例する。AD5933ICは、信号の複雑なインピーダンスを測定することが可能である。
【0027】
光生成のためのH−ブリッジを制限する電流を介して一対のLED(赤色および赤外)を制御することによってPPG信号を取得することができる。最初の利得のためにトランスインピーダンス増幅器に接続された、逆偏向されたPID光検出器を使用して、吸収されていない光を測定する。次いで、測定された値を、マイクロプロセッサのDACの出力からファームウェアで生成されたDCオフセット値とともに第2段階の微分増幅器に供給する。DCオフセット値は、信号利得を最大限に高めることができるように、信号を微分増幅器のレールの中に維持することを意図する。次いで、LEDが変化した状態を有してから488μSの待ち時間の後に、好ましくは、第2段階の増幅器の出力を(256Hzの最終サンプリング速度に対して)16384Hzにて8倍で過剰サンプリングする。過剰サンプリングは、雑音の影響を極めて受けやすいPPG信号の信号対雑音比を増加させるために適用される。
【0028】
加速度計データを、400Hz(8ビット毎軸)にてLIS302DL MEMSデジタル加速度計によって生成することができる。好ましくは、デジタル読取り値を100Hzの速度でマイクロプロセッサによって読み取る。
【0029】
取得したデータを2つのバッファ、すなわちファイルシステム(マイクロSD)に流し出されるバッファおよび送信のためにブルートゥースICに供給されるバッファに入れることができる。各値の前に識別のための1つのバイトIDが付し、周期的「Sync」ブロックをブルートゥースストリームに挿入して、データ整列を支援する。データの各パケットは、IDバイトと、その後のサンプル値を含む2つのバイトとからなる。32ビット秒のカウンタの高および低ワードを表す2つのパケットを利用することによって周期的32ビットのタイムスタンプをも送信する。
【0030】
一形態において、被験者に4つの電極および1つのパルス酸素測定センサを装着する。炭素−ゴム非接着性電極および炭素−ゴム接着性電極の2つのタイプの電極を使用することができるが、他の市販の電極も容易に実施形態での使用に考えられる。図2に示すように、電極を体の上に配置する。(A)は、バイオインピーダンス電流源電極に対応し、(C)は+ECG電極であり、(F)は−ECG電極であり、(H)はアナログ接地電極(AGND)である。また、ECG導線を使用して、バイオインピーダンス応答信号を同時に取り出す。非接着性電極を、Velcro(登録商標)を介して帯の内側に取りつけてデバイスを伸縮性の胸帯に配置するか、または導線を接着性電極に繋げて首の回りに装着したパウチにデバイスを配置することによってデバイスを装着することができる。前頭部に固定され、デバイスに接続されたディスポーザブルNellcor反射性パルス酸素測定センサを介してPPG信号を取得する。人間の被験者から上記の着用可能な感知デバイスによって取得される信号の典型的な例を図3に示す。信号は、(A)ECG、(B)x軸加速度計、(C)赤外フォトプレチスモグラフ(PPG)、(D)バイオインピーダンスの実成分および(E)バイオインピーダンスの虚成分である。いずれも同様に取得されるyおよびz軸加速度計信号ならびに赤色PPG信号は示されていない。
【0031】
次に生理学的特徴の生成について説明すると、着用可能なデバイスから回収された生のデータは、SBMで直接解析されない。その代わり、生理学的特徴の集合を生の波形データから導く。これらの導かれた特徴は、人間の心肺制御系、そして個人の全体的な健康状態への洞察を与えるものである。1つの例によれば、心臓から導かれたものと肺から導かれたものとの2つの範疇からのいくつかの特徴を使用することができる。心臓から導かれた特徴は、心拍数(HR)、脈拍遷移時間(PTT)、および赤色吸収とIR吸収とのPPG比(またはQ)である。1つの例において、ECG信号における連続的なQRSピーク間の間隔を測定することによってHR特徴を直接得ることができる。ピークは、多工程手順を用いて検出される。最初に、デジタルHPFをECG信号に適用する。次いで、濾波された信号を、データに対する直線適合を除去するためにトレンド除去される10秒データウインドウに分割する。次に、各ウインドウ内で、98番目のパーセンタイル値を計算し、98番目のパーセンタイル値の上のすべてのサンプルの位置を確認する。確認されたすべてのサンプルは、10秒ウインドウ内の局部ピークの集合上に存在する。最後のステップは、ウインドウ内の局部ピークの各々についての最大値のサンプル位置を確認することである。これらの位置は、ECG波形における個々のQRSピークである。次いで、心拍数は、各鼓動間の時間間隔の逆数である。
【0032】
PTTは、QRSピークとPPGパルスピークとの間の遅延時間である。この特徴は、血圧に反比例することが知られている。それを計算するために、ECG QRSピーク検出アルゴリズムの頑健性を第1の原理に利用する。人間では250msを超える通過時間が存在しにくいことが知られているため、各鼓動についてQRSピーク位置から出発する250msウインドウを使用して、対応するPPGピークを検索することができる。ウインドウ内の最大値は、PPGピークである。これは、赤色および赤外PPG信号の両方に対して行われる。PPG信号は、自然に雑音が多い傾向があるため、ピークの位置を突き止める前に、(スパイキングを除去するための)メジアンフィルタを使用した後に、低カットオフ周波数および高カットオフ周波数がそれぞれ0.5Hzおよび5Hzのバンドパスフィルタを使用してPPG信号を最初にデジタル濾波する。
【0033】
Q特徴は、赤色光と赤外光との血液吸収の比である。Qは、SpO2(血中酸素飽和度)に反比例することが知られている。Qの計算は、生のPPGデータを取得する前に生じるアナログおよびデジタル信号処理のためにより複雑になる。図4を参照すると、Qは、以下のように計算される。Qの基本的な式は、以下の式によって示される。
【0034】
【数1】

【0035】
ここで、REDAC(IRAC)は、血液によって吸収された赤色(赤外)光の量であり、REDDC(IRDC)は、周囲の組織によって吸収された赤色(赤外)光の量である。PPGの実装は、LED駆動段、トランスインピーダンス増幅器を備えたPIDフォトダイオード、およびDCオフセット(図4の赤色出力オフセット)を差し引き、追加的な利得を加える第2の利得段を含む。あるレベルの背景光をセンサによって検出し、それを実測信号からも引く必要がある(オフ信号+オフ出力オフセット)。赤色DCトラックパラメータは、実取得信号の下方エンベロープである。次いで、Qを以下の式によって示すことができる(赤色のみについて示す)。
REDAC=αRED’AC (2)
REDAC=α(REDDCトラック)+β(RED出力オフセット)−β(OFF出力オフセット)−α(OFF信号) (3)
ここで、RED’ACは、実取得PPG信号の尖頭値であり、αおよびβは、アナログ−デジタルコンバータの関数である換算係数である。
【0036】
実施形態に使用することができる2つの呼吸から誘導された特徴、呼吸数(RR)および1回呼吸量(TV)(または呼吸の深さ)が存在する。いずれもバイオインピーダンス信号から計算される。デバイスは、バイオインピーダンスの実部および虚部を別々に取得する。これらを組み合わせて、RRおよびTVを抽出するのに使用される絶対値を形成する。バイオインピーダンスは、モーションアーチファクトに著しく影響されやすい。筋肉運動および器官運動は、人体のインピーダンスを変化させて、望ましくない取得信号の変動を引き起こす。同時に、信号は雑音が大きく、呼吸に関しては本質的に幾分非周期性である。これらの要因により、RRおよびTVを抽出するための合理的な結果を得るための1つの方法は、スペクトルに基づく手法である。バイオインピーダンス信号を、最初に、低カットオフ周波数および高カットオフ周波数が(毎分8から60の呼吸数のRR範囲に対応する)0.133Hzおよび1Hzの狭帯域デジタルフィルタでバンドパスフィルタリングする。次に、滑動ウインドウの離散フーリエ変換(DFT)を濾波されたデータに重複的に適用して、20秒毎に特徴値を生成する。呼吸数特徴は、DFTの絶対値の最大値が各ウインドウに存在する頻度に対応する。縁効果を低減するために、データの各ウインドウに、DFTを計算する前に終点を0に抑制するウインドウ関数を乗じる。TVは、RR周波数におけるDFTの絶対値の値であると定義され、定量的に実1回呼吸量に関するものであって、直接較正された1回呼吸量の測定値ではない。
【0037】
一形態において、最後の2つのステップは、特徴生成処理を仕上げるために講じられる。最初に、スパイクを除去すると同時に特徴データを円滑にする雑音濾波ステップにおいて、移動式ウインドウ仕上げ手段フィルタを50%のウインドウ重複率で適用する。デフォルトのウインドウサイズは40秒であり、50%の重複率では、得られた濾波特徴が、20秒毎に1サンプルの割合で発生する。第2のステップは、すべての特徴データを、SBMで解析できるように順次整列させることである。これは、形状を維持する区分的立方体補完器を使用して、濾波された特徴のすべてを動時点で補完することによって達成される。濾波された特徴の例を生の信号のいくつか、すなわち(A)ECG、(B)y軸加速度計、(C)赤色PPG、(D)バイオインピーダンス絶対値、(E)呼吸数、(F)1回呼吸量、(G)心拍数、(H)脈拍遷移時間および(I)赤色と赤外との比とともに図5に示す。1回呼吸量(F)が0になっていることから明らかなように、データ領域505は、被験者が呼吸を保持している間に生じていた。同じ時間を通じて、赤色対IRのPPG比(I)は、増加し始め、O2飽和度が低下していることを示している。被験者が活発に歩行している間に領域510が生じた。歩行してから約45秒後に、該被験者の呼吸数、1回呼吸量および心拍数(それぞれ(E)、(F)および(G))が増加する。脈拍遷移時間(H)が低下し、血圧の上昇を示しているのに対して、PPG比(I)は再び徐々に上昇し、O2飽和度の低下を示している。最後に、領域515は、間に短時間の休憩を挟んで3回階段を上り下りしている被験者を表す。予測された通り、領域510と類似の挙動が認められる。
【0038】
常に、センサ雑音、センサ移動によるアーチファクト、および他の予想外の干渉は、取得されたセンサデータのランダム時間を汚染する。汚染されたデータをSBMモデルに含めると、モデル性能が低下する可能性がある。SBMは、純粋にデータ駆動され、訓練データから正規性を学習する。訓練データが、健康に無関係なアーチファクトで汚染されていると、モデルによる正規性の数値が広げられて望ましくない。これは、一般的に、異常挙動の発生を予測する際のその感度に影響を与える。
【0039】
センサ雑音に対処するために、いくつかのデジタル濾波技術を生のデータ、または計算された特徴そのものに適用することができる。これらは、メジアンフィルタリング、無限インパルス応答型(IIR)フィルタおよび有限インパルス応答型(FIR)フィルタを含む。
【0040】
1つの手法によれば、生のセンサデータにおいてアーチファクトを検出するための手法は、いくつかの構成要素に基づく。最初に、加速度計データの各軸の1次階差を、その差の絶対値が所定の閾値を超えている場合に時間に対して監視する。これらの時間は、突然の移動が生じたときを示す。一般に、これらの突然の移動は、センサデータ、最も顕著にはPPGデータおよびバイオインピーダンスデータにおける過渡的な挙動をもたらす。次いで、差信号が再び閾値未満になった後で10秒が経過するまで、すべてのセンサからのデータを突然の移動の最初の示唆から無視する。この手法は、過渡現象を検出するのには良好に作用するが、センサの問題を検出しない。第2の構成要素は、発見的規則を第1の原理規則と組み合わせて、センサおよび/または特徴の生成の誤差を検出する。規則の集合を以下に要約する。
1.TV<Ttv(閾値定数)であれば、RRは信頼できず、使用されない。RRの計算は、狭帯域内のバイオインピーダンス信号の最大スペクトル成分の抽出に基づき、TVがTtvより小さいと、人は呼吸をしていないか、または呼吸が浅いために最大成分が無意味になる。それは、単に、この状態を通じての周波数帯域における最大雑音成分である。
2.HR>200またはQ(PPG赤色対IR比)>TQ(閾値定数)であれば、計算された特徴値を無視する。200を超えるHRの値は、人間に対する正常なHRを十分に超えているため、200を超える値はいずれも誤差である可能性が高い。同様に、SpO2に対する近似値であるQは、一定の範囲で現実的であるにすぎない。しかし、HRと異なり、その範囲は、センサの配置および皮膚の物理的特徴により人に応じて異なる。そのため、固有のTQを各個人に対して計算するのが好ましい。
3.PTT分散値がHR分散値より、その差が閾値定数Tvarを超えて大きい場合は、特徴データを無視する。これは、PPG信号の脈動ピークが正確に識別されておらず、PPGセンサが物理的に外れているか、または雑音に圧倒されていることを示していることを意味する。
【0041】
次に、残差を得ることができるように観測値を推定するための処理について説明すると、いくつかの異なるカーネルに基づく多変量推定方法を用いることができる。「カーネルに基づく」という用語によって一般的に意図されるものは、比較のためのカーネル関数を使用して、入力観測値上で例示的な観測値のライブラリ(学習データ)とともに作用する多変量推定手段である。カーネル関数は、一般に、入力観測値をライブラリからの例示的な観測値と比較する際のスカラー値(「類似性」)を与える。次いで、それらの見本の少なくとも一部の加重合計値として推定値を生成する上でスカラー類似性を使用することができる。例えば、ナダラヤ−ワトソンカーネル回帰を用いると、カーネル関数を使用して、以下の式に従って推定値を生成する。
【0042】
【数2】

【0043】
【数3】

【0044】
式中、Xnewは、生理学的特徴の入力多変量観測値であり、Xiは、生理学的特徴の例示的な多変量観測値であり、Xestは、推定された多変量観測値であり、Kは、カーネル関数である。推測型の場合は、見本は、生理学的特徴の一部を含む部分Xiと、残りの特徴を含む部分Yiとを含み、Xnewは、Xiにそれらの特徴だけを有し、Yestは、それらのYiの特徴の推測的推定値である。自動連想型の場合は、すべての特徴がXnew、XiおよびXestに一緒に含まれるとともに、すべての推定値が入力に存在する。
【0045】
カーネル関数は、1つの手法によって、同次元化された2つの観測値の比較のための類似性スカラー結果を提供する。その類似性スカラー結果は、
1.あるスカラー範囲に存在し、その範囲は、各末端に境界線が引かれ;
2.2つのベクトルが同じであれば、境界線が引かれた末端の1つの値を有し;
3.スカラー範囲にわたって単調に変化し、かつ
4.2つのベクトルが同一値に近づくに従って増大する絶対値を有する。
1つの例において、カーネル関数は、以下の式から選択されてもよい。
【0046】
【数4】

【0047】
【数5】

【0048】
【数6】

【0049】
式中、XaおよびXbは、入力観測値(ベクトル)である。ベクトル差、または2つのベクトルの「ノルム」が使用される。一般に、これは2ノルムであるが、1ノルムまたはpノルムであることも可能である。パラメータhは、一般には、カーネルの「帯域幅」としばしば呼ばれる定数であり、各見本が有意な結果を戻す「フィールド」のサイズに影響を与える。指数λを使用してもよいが、1に等しく設定することができる。各見本Xiに対して異なるhおよびλを採用することが可能である。好ましくは、ベクトル差またはノルムを採用するカーネルを使用する場合は、最初に測定データを、例えばセンサデータ集合の最小読取り値の値をすべてのセンサ値に加えるか、もしくはすべてのセンサ値から引き、次いですべての結果をそのセンサに対する範囲で割ることによって、0から1の範囲(もしくは他の選択された範囲)に対して正規化するか、または標準偏差集合を1(または何らかの他の定数)に設定してデータを0中心平均値データに変換することによって正規化するべきである。また、本発明によるカーネル関数を観測値の要素の観点から定義づけることも可能である。すなわち、ベクトルの各次元において類似性を求め、それらの個々の基本的類似性を何らかの方法で組み合わせて、全体的なベクトル類似性を求める。典型的には、これは、任意の2つのベクトルxとyのカーネル比較のために基本的類似性を平均するのと同じくらい単純であり得る。
【0050】
【数7】

【0051】
次いで、本発明に従って使用することができる基本的カーネル関数としては、限定することなく、以下の式が挙げられる。
【0052】
【数8】

【0053】
【数9】

【0054】
【数10】

【0055】
帯域幅hは、以上に示したものなどの基本的カーネルの場合は、観測値ベクトルのm番目のパラメータの予測範囲のある種の測定値になるように選択されてもよい。これを、例えば、すべての見本についてのパラメータの最大値と最小値との差を見いだすことによって求めることが可能である。あるいは、例えば、心拍数パラメータの予測範囲を合理的な生理学的予測に基づいて毎秒40から180打に設定することによって、データが見本に存在するか基準ベクトルに存在するかにかかわらず、領域知識を用いてそれを設定することができるため、hは、心拍数であるモデルにおけるm番目のパラメータについて「140」に等しくなる。
【0056】
1つの手法によれば、類似性に基づくモデル化を、カーネルに基づく多変量推定手段として使用する。1)固定SBMモデル、2)境界制約条件を用いて位置特定する局在化SBMモデルおよび3)最近隣手法を用いて位置特定する局在化SBMモデルの3つのタイプのSBMモデルを人間のデータ解析作業に使用することができる。固定SBMモデル手法は、以下の式を用いて推定値を生成する。
【0057】
【数11】

【0058】
ここで、Dは、訓練期を通じて正規データから予め選択された、n個の訓練データベクトルとm個の生理学的特徴とからなるデータの統計的なm×n行列である。カーネル関数Kは、カーネル演算子
【0059】
【数12】

【0060】
として存在し、それにより、(Dのように行列であり得る)第1のオペランドからの各行のベクトルを、上記カーネル関数の1つを使用して、(行列であり得る)第2のオペランドの各列のベクトルと比較する。監視された入力観測値をここではxin(t)で示し、自動連想推定値を
【0061】
【数13】

【0062】
で示す。対照的に、局在化SBM(LSBM)は、以下の式で示される。
【0063】
【数14】

【0064】
形が固定SBMモデルと類似しているが、ここでは、現行の入力ベクトルxin(t)に基づく局在化関数F(・)および正規データ基準行列Hを使用して、D行列を各工程で順次再定義する。よって、行列Hは、正規データ観測値の見本の大きな集合を含み、関数Fは、各入力観測値を使用してより小さな集合Dを選択する。例として、Fは、「最近隣」手法を用いて、mが特徴の数であるm次元の空間における入力観測値の近隣内に含まれる見本として、現行の観測値に対するDを構成する見本の集合を識別することができる。別の例として、関数Fは、カーネルに基づく比較を用いて、類似性について入力観測値を見本と比較し、Dを構成する最も類似の見本の予め選択された部分を選択する。全部より少ない生理学的特徴に基づく選択、および周囲条件測定値などの、特徴に含まれないが各見本に対応づけられる異なるパラメータに基づく選択を含む他の局在化方法も本発明によって意図される。
【0065】
本発明における推定に用いられるモデルは、好ましくは、確定式によるパラメータに関する第1の原理のモデルではなく、データから求められる経験的モデルである。したがって、モデルを導く代わりに、モデルを経験的データで訓練しなければならない。生理機能のモデルの訓練は、モデル化する生理学的パラメータまたは特徴の例示的観測値を集めて、見本の基準ライブラリを構築することを含む。これらの特徴を範囲的に正規化することができるか、またはそれらの測定の固有の単位において、それらの測定値の固有の単位における予測範囲に比例する帯域幅を使用する、式10〜12に示されるものなどの基本的カーネル関数と併用することができる。個人化されたモデル化において、患者が医学的に正常であるか、または医学的に安定していると思われる条件を通じて、監視される患者から問題の特徴の観測値を得る。本発明の方法は、相対的変化を求めるため、患者は、本来の健康状態である必要がない。正規データは、好ましくは、モデル化されるあらゆる様式の活動からの数値を含み、それらがモデル化される唯一の条件でなければ、高度に不動的な条件、鎮静化された条件または「安定状態」の条件に限定される必要はない。見本は、典型的には、利用可能な正規観測値のより大きな集合から基準ライブラリに含めることについて選択された観測値である。代替において、見本を密集した正規データの計算された「中枢」として求めることもできる。
【0066】
モデルが、その基準ライブラリを構成し、推定値の生成のための類似性の計算として機能することになるカーネル関数を選択することによって訓練されると、そのモデルを使用して、監視された入力観測値に応答的な推定値を生成することができる。各入力観測値を用いて、以上の式4、5、13または14の実施形態の1つに従って生理学的特徴の少なくとも一部の推定値を生成する。次いで、推定された特徴を、瞬間的観察におけるそれらの特徴の実測値と差別化し、そのような各特徴についての残差を生成する。現実の信号は、固有の測定雑音および固有のシステム雑音を有し、経験的モデルは、何らかの固有の不正確さを有するため、低下する生理機能による偏向データばかりでなく、正常な生理機能によるデータについても残差が生じる。しかし、正規データに対する残差の統計的特性は、偏向データに対する残差よりはるかに良好な挙動を示す。閾値を含めて、生のデータを試験するためのいくつかの周知の方法を残差に適用することができる。小さな変動が、警報を誘発する、より大きな値によって許容されるように閾値を残差に適用することができる。個々の生理学的パラメータに対する残差に関する一連の決定は、例えば、観測値のウインドウにおける閾値超過の数を計数することによって、持続的な偏向する健康状態の真の存在に関する規則のための基礎になり得る。残差における偏差のパターンが識別される場合にのみ誘発される異なる生理学的特徴についての残差に対して規則パターンを適用することができる。一般に、正規の変動は、モデルによる推定された特徴と差別化することによって残差において除去されたため、残差に適用されるこれらの決定方法は、生のデータに適用される同じ手法より誤差に敏感であるとともに誤差の影響を受けにくい。基本的に、SBMは、実データにおける正規変動を除去し、残差の形の異常データ(訓練データによって定義される正規値)を残す。
【0067】
変則的な検出用途に使用されるモデル化技術を比較するのに特に良く適する非パラメトリックの摂動に基づく手法を用いて、モデルの性能を測定することができる。1)頑健性、2)溢流および3)誤差の3つの計量値を使用してモデルの性能を評価する。頑健性計量値は、モデルが、データに導入された摂動に従う(または過剰適合する)確率の測定値である。図6を参照すると、頑健性を測定するために、最初に、モデルにおける変数のすべてに対する推定値を、正規データ(図6における
【0068】
【数15】

【0069】
)を含む試験データ集合に基づいて導く。次に、示されるように、モデルにおける各変数に摂動Δ(図6におけるxΔ)を同時に加える。最後に、摂動された変数(図6における
【0070】
【数16】

【0071】
)の各々に対する推定値を生成する。次いで、モデルにおける各変数に対する頑健性計量値は、以下の式で示される。
【0072】
【数17】

【0073】
ここで、頑健性が0に等しいとき、すなわち摂動されていない推定値と摂動された推定値が同一であるときに完璧な頑健性が達成される。大きな値ほど、過剰適合が強く、それ故にモデルの頑健性が低いことを示している。
【0074】
溢流計量値は、別の変数が摂動されると、モデルにおける変数が正規値から偏向する相対的な量を測定するものである。頑健性と異なり、溢流は、1つの変数が摂動された場合における他のすべての変数に関する頑健性を測定する。各変数に対する溢流測定値は、以下の式によって示される同様の計算を用いて計算される。
【0075】
【数18】

【0076】
式中、
【0077】
【数19】

【0078】
は、変数が摂動されない場合の変数iに対する推定値であり、
【0079】
【数20】

【0080】
は、変数jがΔjによって摂動された場合の変数iの推定値であり、Δiは、変数iそのものが摂動された場合に使用される摂動量である。
【0081】
最後に、誤差計量値は、単に、実値と、その推定値を実値の標準偏差で割った値、または同等に残差RMSを実値標準偏差で割った値との差の平均二乗根誤差である。
【0082】
【数21】

【0083】
以上に列挙した式は、モデルにおける各変数に対する計量値を定める。いずれの場合も、値が小さいほど良い。モデルについての全体的な性能計量値は、いずれの場合も各変数に対する結果を平均することによって計算される。
【0084】
残差試験の一形態について説明すると、多変量密度推定手法を残差データに適用することができる。データの正規挙動における近似された密度を使用して、新たなデータ点が正規挙動分布の一部である(多変量健康指標(MHI)の形の)確率を求める。密度推定値は、ガウスカーネルを用いたノンパラメトリックカーネル推定手段を使用して計算される。推定手段は、以下の式で示される。得られた密度関数は、基本的に、それぞれxiを中心とするN個の個々の多変量ガウス関数の混合物である。
【0085】
【数22】

【0086】
式中、Nは訓練ベクトルであり、hは帯域幅パラメータであり、dはベクトルの次元数であり、
【0087】
【数23】

【0088】
は、スカラー確率である。重要なことは、ここでのXおよびXiは、生理学的特徴の多変量観測値でなく、その代わり推定値と差別化することによって本来の観測値から導かれた多変量残差観測値である。また重要なことは、ここでの密度「推定」は、測定値に基づいて生理学的特徴値を推定するための上記推定法と同じでない。ここでの「推定」は、ガウス混合モデルとして、正規多変量残差見本を使用して、残差に対する確率分布を経験的に作成する。次いで、この推定された分布を用いて、生理学的特徴の入力観測値からの新たな多変量残差がその分布のメンバーであるか否かの確率を計算する。「正常」であるか、または所望の、もしくは安定した生理学的挙動を表すと考えられる試験データを使用して、SBMによって生成された正規データ残差の領域から見本Xiを選択することができる。密度推定値を導く前に、すべての残差を、単位分散値およびゼロ平均値を有するように調整するか、または少なくとも単位分散値を有するように調整する。この調整手順に使用される平均値および標準偏差は、既知の正規データ残差から計算される。一形態における多変量健康指標(MHI)は、
【0089】
【数24】

【0090】
の関数であり、
【0091】
【数25】

【0092】
で示される。勿論、式18から求められた確率を、有用にするために式19のように変換する必要はなく、式19は、主として、(大きくなるほど健康リスクが高くなるように)信号トレンドを逆転させるために使用される。試験を式18の結果に直接適用することができる。
【0093】
多変量密度推定手法を残差に適用する効果の比較が図7A〜7Bに強調されている。チャート705(図7A)は、生の生理学的特徴データ(心拍数、呼吸数等の実値)に適用することを除いて上記のものと同様である多変量密度推定値を示す。一方、チャート710(図7B)は、カーネルに基づくモデル(SBM)から生成された残差に適用される上記の多変量密度推定値を示す。MHIの結果は、非摂動生理学的データ(正規)および人工的に誘導された摂動を伴う生理学的データ(異常)の両方について示されている。摂動を、データの開始から、移動性の生理学的特徴の部分集合における緩慢な変動として導入し、データの終点で最大の変動が達成された。チャート705およびチャート710の両方において、「正規」非摂動データに対して計算されたMHIが実線で示され、「異常」摂動データに対して計算されたMHIが点線で示されている。検出閾値(717、720)を、正規データの試験集合に対する統計に基づいて各手法について求め、統計は、チャート705の場合は生のデータに対応し、チャート710の場合は残差に対応するものであった。決定アルゴリズムをMHIにさらに適用して、持続的な信頼性のある閾値超過警報を確認したが、この場合は、x個の連続MHI閾値超過が警報決定を与える。MHIに対する一連のy個の連続値が閾値を下回っていることが確認されるまで決定を保持することができ、その場合は警報を取り除く。あるいは、m個の観測値のウインドウにx個の閾値超過が存在していた場合は警報を保持することができ、b個の観測値のウインドウに閾値を下回るy個の観測値が存在していた場合は警報を取り除く。いずれの場合も、垂直線(730、735)は、データが正規挙動分布からのものでないため、異常な状態を示すと判断された点を示す。分かるように、検出は、残差で導かれるMHIではシミュレートされた外乱の開始から約3分の1で行われるのに対して、生のデータと多変量密度推定値を併用する検出は、データにおいてずっと後まで行われない。これは、正規変動を除去する正規性のモデルと、残差に適用される正規性の確率の多変量密度推定値とを組み合わせたことによる。残差に基づくMHI法は、健康の偏向の初発のパターンの実質的により早期の検出を与え、監視されている複数の生理学的特徴に対する個々の残差を要約するために患者の偏向の単一の指標を与えるという新規の利点を有する。
【0094】
1つの手法によれば、本明細書に記載のシステムを展開して、特に、予想外に悪化し得る慢性疾患を有する患者のために、移動性の家庭環境における患者の健康の予測的監視を提供することができる。複数の生理学的特徴を着用可能なデバイスもしくは移植されたデバイス(またはその両方)から取得した1つまたは複数の生体信号およびパラメータから導き、1つまたは複数のサーバが、経験的なカーネルに基づくモデルを使用して生理学的特徴を処理するように配置された解析データセンターに送信する。好ましくは、患者が正常な健康状態または許容可能に安定した健康状態にあると考えられる期間を通じて取得された患者からのデータに合わせてモデルを個人化して、その患者についての正常な生理機能のモデルを提供する。個人化されたモデルを使用して監視データを推定し、監視値を生理学的パラメータの推定値と差別化して残差を得る。次いで、残差を1つまたは複数の解析方法により処理して、患者の健康状態に関する警報を得る。1つの技術によれば、閾値などの規則を用いて残差を個々に試験することができる。これらの閾値を持続性についてさらに試験することができる。残差試験のパターンを認識することで、さらにより具体的な健康状態情報を得ることができる。別の技術によれば、経験的な多変量確率密度推定値を使用して、「正規」残差分布に属する確率について残差の多変量観測値を調べることができ、次いで、この確率を、典型的には確率の逆対数値として多変量健康指標に変換することができる。MHIは、患者の健康状態の瞬間的なランク付けを提供し、閾値ならびに持続性規則を使用してMHIを試験して、患者の健康状態に関する警報を得ることができる。すべての当該解析値を、ウェブに基づくユーザインターフェースまたはクライアントサーバに基づくユーザインターフェースを介して医療実務者に提示することができ、このようにして、大人数の患者を向上した効率で医療スタッフによりまとめて監視することができる。保健医療機関または実務グループのすべての当該監視された患者を、過程における健康悪化を早期に警告するために管理することができ、健康状態に基づく具体的な追跡について患者の優先順位を決定することができる。健康悪化が早期に指摘される患者に接触して、薬物療法に対するコンプライアンスを検証し、患者がどのように感じているかに関して質問し、慢性病を悪化させている恐れがある最近の患者の挙動を調べることができる。医療スタッフは、有利には、薬物療法に対して調整を行い、薬物療法に順応し、または検査および予防的介入に参加することを患者に指示することを含む効率的な介入により、患者にとってより高コストな健康緊急処置を避けることができる。
【0095】
SBMを、完全に個人化されたモデルの代わりに、交差被験者モデル化(cross subject modeling)で展開することもできる。そこで、モデルは、他の人間の被験者からのデータを含む。特徴データにおける人毎の変動により、各被験者のデータを調整する必要がある。個人の特徴データが適正に調整される限り、個人についての履歴データが利用できない場合に、人間を監視するための一時的な手段として一般的な交差人口モデルを使用することができる。監視デバイスを最初に投入するときに標準化された一連の活動を通じて計算された統計に基づいて調整を成し遂げることができる。(例えば、横たわること、座ること、立つこと、歩くことおよび階段を上ることを含み得る)標準的な活動中に取得されたデータを、典型的には、ゼロ平均一標準偏差範囲に合わせて調整する。監視は、個人化されたモデルに対する場合ほど高感度でないが、少なくとも、個人化されたモデルを生成するための好適なデータ集合を取得するために待機しながら最小限のレベルの健康監視を提供する。
【0096】
図8を参照すると、別の手法は、既知の病気、疾病または健康悪化を表す基準データから残差を得ることで、多変量確率密度推定手段を正常な健康状態または安定な健康状態に対して決定するのでなく、その健康悪化に対して決定することができる。したがって、このようにして1つまたは複数の確率密度推定手段810(正規データに対するものを含む)を生成し、監視データ830からの多変量残差観測値820に適用することができる。決定ステップ840において、監視残差観測値が分布の各々に属する確率を並行して比較することができ、正常からの偏向を検出するだけでなく、健康悪化の性質を分類することもできる。840において、確率を簡単に医療スタッフに表示することができ、または十分に高い確率を有する最も起こりそうなシナリオもしくはシナリオの集合を患者の見込まれる状態として示すことができる。決定840に対する別の手法において、複数の疾病の各々に対する確率またはMHI値を、モデル推定および残差生成を介して処理されたそれぞれの当該疾病の既知の例から生成された試験統計を用いて正規化することで、それらを、それぞれの当該範疇に適合する残差ベクトルについて予測される典型的な分散値の観点で表現することができる。次いで、正規化された値を比較して、どの範疇が実際に現行の監視データによって最も良く表されるかを判断する。例えば移動するウインドウ平均値または中央値を用いて、各疾病範疇に対する一連のMHIまたは確率を発見的に処理して、範疇をランク付けることもできる。
【0097】
別の形態によれば、従来の枕もとのモニタ、人工呼吸器および/または着用可能なデバイスもしくは移植されたデバイスを使用して、センサから導かれた多変量生理学的パラメータで入院患者を監視する。データは、イーサネット(登録商標)ネットワークまたはWiFiを介して、中央ステーション/ナーシングステーション、または医療スタッフがリアルタイムに監視するためのインターフェースに接続された病院の中央データセンターにストリーミングされる。また、データは、イーサネット(登録商標)ネットワークまたはWiFiを介して、本明細書に記載されている経験的なカーネルに基づくモデルを使用して処理するための解析値サーバにストリーミングされる。生理学的特徴を推定し、残差を生成する。患者が許容可能な生理学的健康状態にあった期間からのその患者についての個人データが利用できない場合があるため、モデルは、個人化されたものでなく一般的なものであってもよい。そのような場合は、モデルは、人間が許容可能な健康状態にあったときの同様の病院での状態において回収された他の人間からのデータを含み得る。当該モデルを、体重、性別、年齢および医学的状態(例えば、同様の心駆出力または同様の呼吸性能)などの、正規の生理学的変動に対する主な寄与要因に基づいて、監視されている患者に合わせてさらに調整することができる。残差を上記のように処理して、MHIおよび/または規則に基づく決定を生成する。病棟もしくは病院またはICUにおける監視されているすべての患者についての患者の健康状態を駐在医療スタッフまたは非駐在医療スタッフによって監視して、感染症、肺炎および敗血症などの健康問題の発生について早期に警告することができる。
【0098】
本発明により提供される早期警告の利点によって、患者の健康警報を、直ちに対応しなければならない危機ではなく、予防的に管理することができる。ユーザインターフェースは、いくつかのレベルの警報管理を提供する。すなわち、警報を解除することができる(医療スタッフによる調査によって警報が異常であることが示される)。警報を確認し、登用することができる(医療スタッフによる調査によって、介入を必要とする明確な健康問題が存在することが示される)。さらなる追跡および観察に向けて警報を注視することができる(調査により、厳密な監視が妥当であるが、直ちに介入することは必要でないか、または勧められない)。
【0099】
家庭生活の日常において、病院の外の人間から豊富な生理学的データストリームを取得するための着用可能な感知デバイスを使用して、医師の職場または病棟の範囲外で患者の生理学的状体の高い視認性を提供する、健康問題の高度な警告のためのシステムを提供する。初発の健康問題を示す異常の頑健で早期の検出を提供するために、移動性データに存在する正規変動を除去するアルゴリズムを使用するこのデータの自動化された処理は、新規性および進歩性を有する。デバイスとアルゴリズムのこの組合せが患者の介護を変革する可能性は、特に慢性病の患者集団にとって極めて大きい。このプラットホームは、まさしく、患者の転帰を改善し、不必要なコストを回避し、医療労働力のてこを大きく拡大するために医師が必要とする種類の手段である。
【0100】
様々な態様における、かつ特に添付の請求項の範囲に記載されている前述の好適な実施形態に修正を加えることができることを当業者なら理解するであろう。当業者であって、本出願の教示に熟知したものに明らかなように、本発明の主旨および範囲は、好適な実施形態に対する当該修正および変更を包含するものと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間の健康を監視するための方法であって、
人間からのセンサデータを受信するステップと、
プログラム化されたマイクロプロセッサを用いて、前記人間の生理学的健康状態に特徴的な前記センサデータからの複数の特徴を生成するステップと、
プログラム化されたマイクロプロセッサを用いて、前記生成された複数の特徴に基づいて、多変量モデルを使用して正常な人間の生理機能に特徴的な前記特徴に対する値を推定するステップと、
プログラム化されたマイクロプロセッサを用いて、前記推定された値と前記生成された特徴を差別化して、前記特徴に対する残差を得るステップと、
プログラム化されたマイクロプロセッサを用いて、正規残差基準パターンの集合に基づいて、ガウス混合モデルを使用して、前記残差が正規残差のパターンを表す確率を求めるステップと、
プログラム化されたマイクロプロセッサを用いて、試験を前記確率に適用して、前記生成された特徴が、前記人間の生理学的健康状態の正常からの変更を早期に示すための正常な生理学的挙動に特徴的であるかどうかの判断を行うステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
試験を適用する前記ステップは、前記確率の逆数の対数として前記確率の指標を導き、前記指標を閾値と比較するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
プログラム化されたマイクロプロセッサを用いて、前記特徴が正常な生理学的挙動に特徴的でないという判断の持続性について一連の前記行われた判断を試験するさらなるステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
値を推定する前記ステップは、前記特徴信号の値を含む特徴ベクトルと、それぞれが既知の健康状態における前記特徴信号を表す値を含む例示的なベクトルのライブラリの少なくとも一部とのカーネルに基づく比較を、前記比較に関して加重された前記例示的なベクトルの線形結合として前記推定値を生成するために行うステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記推定値を生成するために前記カーネルに基づく比較で使用する前記例示的なベクトルの部分集合を選択するために、前記特徴ベクトルを、前記ライブラリを含む前記例示的なベクトルと比較することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記推定値を、前記比較に関して加重された前記例示的なベクトルの線形結合として、
【数1】

に従って生成し、式中、Xnewは前記特徴ベクトルであり、Xiは前記例示的なベクトルであり、Xestは前記推定値であり、Kは、前記カーネルに基づく比較であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記推定値を、前記比較に関して加重された前記例示的なベクトルの線形結合として、
【数2】

に従って生成し、式中、Xnewは前記特徴ベクトルであり、Dは前記例示的なベクトルの少なくとも一部の行列であり、Xestは前記推定値であり、
【数3】

は、行列間の前記カーネルに基づく比較を行うための演算子であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記カーネルに基づく比較は、
【数4】

の形であり、式中、xaおよびxbは、比較されているベクトルであり、hは定数であり、pはノルムの次数であり、nは、ノルムを累乗する指数であり、Kは前記比較のスカラー結果であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記カーネルに基づく比較は、
【数5】

の形であり、式中、xaおよびxbは、比較されているベクトルであり、hは定数であり、pはノルムの次数であり、nは、ノルムを累乗する指数であり、Kは前記比較のスカラー結果であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記カーネルに基づく比較は、
【数6】

の形であり、式中、xaおよびxbは、比較されているベクトルであり、hは定数であり、pはノルムの次数であり、nは、ノルムを累乗する指数であり、Kは前記比較のスカラー結果であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記カーネルに基づく比較は、
【数7】

の形であり、式中、xおよびyは、比較されているベクトルであり、hmは定数であり、mは特徴の数であり、nは一定の指数であり、Kは前記比較のスカラー結果であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記カーネルに基づく比較は、
【数8】

の形であり、式中、xおよびyは、比較されているベクトルであり、hmは定数であり、mは特徴の数であり、nは一定の指数であり、Kは前記比較のスカラー結果であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項13】
前記カーネルに基づく比較は、
【数9】

の形であり、式中、xおよびyは、比較されているベクトルであり、hmは定数であり、mは特徴の数であり、nは一定の指数であり、Kは前記比較のスカラー結果であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項14】
移植された心臓デバイスと接続して監視される人間の内部に埋め込まれたセンサの測定を行うことによって、センサデータを得るステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
センサデータを受信する前記ステップは、前記監視される人間に装着されたセンサの測定値の極めて局部的な無線プロトコルを介して無線送信を受信するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
センサデータを受信する前記ステップは、人工呼吸器からデータを受信するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
人間の健康を監視するための方法であって、
人間からのセンサデータを受信するステップと、
プログラム化されたマイクロプロセッサを用いて、前記人間の生理学的健康状態に特徴的な前記センサデータからの複数の特徴を生成するステップと、
プログラム化されたマイクロプロセッサを用いて、前記生成された複数の特徴に基づいて、多変量モデルを使用して正常な人間の生理機能に特徴的な前記特徴に対する値を推定するステップと、
プログラム化されたマイクロプロセッサを用いて、前記推定された値と前記生成された特徴を差別化して、前記特徴に対する残差を得るステップと、
複数の既知の健康状態の各々に対してプログラム化されたマイクロプロセッサを用いて、前記既知の健康状態に対する残差基準パターンの集合に基づいて、ガウス混合モデルを使用して、前記残差が前記既知の健康状態に特徴的な残差のパターンを表す確率を求めるステップと、
プログラム化されたマイクロプロセッサを用いて、試験を前記確率に適用して、前記生成された特徴が最も特徴的な前記複数の基値の健康状態のランク付けを行うステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
値を推定する前記ステップは、前記特徴信号の値を含む特徴ベクトルと、それぞれが既知の健康状態における前記特徴信号を表す値を含む例示的なベクトルのライブラリの少なくとも一部とのカーネルに基づく比較を、前記比較に関して加重された前記例示的なベクトルの線形結合として前記推定値を生成するために行うステップをさらに含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記推定値を生成するために前記カーネルに基づく比較で使用する前記例示的なベクトルの部分集合を選択するために、前記特徴ベクトルを、前記ライブラリを含む前記例示的なベクトルと比較することを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記推定値を、前記比較に関して加重された前記例示的なベクトルの線形結合として、
【数10】

に従って生成し、式中、Xnewは前記特徴ベクトルであり、Xiは前記例示的なベクトルであり、Xestは前記推定値であり、Kは、前記カーネルに基づく比較であることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記推定値を、前記比較に関して加重された前記例示的なベクトルの線形結合として、
【数11】

に従って生成し、式中、Xnewは前記特徴ベクトルであり、Dは前記例示的なベクトルの少なくとも一部の行列であり、Xestは前記推定値であり、
【数12】

は、行列間の前記カーネルに基づく比較を行うための演算子であることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項22】
人間の健康を監視するためのシステムであって、
監視される人間から生理学的信号を取得するように配置された複数のセンサから多数の生理学的信号を受信するように構成され、前記信号から多数の生理学的特徴を導くようにプログラム化されたマイクロプロセッサハードウェアを有するデバイスと、
前記デバイスから前記多数の生理学的特徴の監視観測値を受信し、正常な健康状態の下での前記多数の生理学的特徴の挙動を具体化するモデルを使用して前記監視観測値における前記特徴の推定値を生成し、前記監視観測値とその推定値を差別化することによって前記特徴の残差を生成するように構成されたコンピュータと、
前記モデルを使用して生成された既知の健康状態に特徴的な前記多数の生理学的特徴の残差の例示的な観測値の集合を記憶するためのコンピュータ利用可能メモリと
を備え、
前記コンピュータは、残差の例示的な観測値の前記集合に基づいて、ガウス混合モデルを使用して、前記残差が前記既知の健康状態に対する残差のパターンを表す確率を求めるように特別に構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項23】
前記モデルは、カーネル回帰推定手段であることを特徴とする請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記特徴の監視観測値は、前記モデルを局在化させるために使用されることを特徴とする請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記モデルは、類似性に基づくモデルであることを特徴とする請求項22に記載のシステム。
【請求項26】
前記特徴の監視観測値は、前記モデルを局在化させるために使用されることを特徴とする請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記コンピュータは、前記確率を試験して、前記多数の特徴の前記監視観測値が前記既知の健康状態に特徴的であるかどうかの判断を行うようにさらに特別に構成されていることを特徴とする請求項22に記載のシステム。
【請求項28】
前記特徴が前記既知の健康状態に特徴的であるか否かに関する同様の判断の持続性について一連の前記行われた判断を試験するようにさらの特別に構成されていることを特徴とする請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記コンピュータは、前記確率の逆数の対数として前記確率の指標を生成し、前記指標を閾値と比較するようにさらに特別に構成されていることを特徴とする請求項22に記載のシステム。
【請求項30】
前記デバイスは、携帯電話であることを特徴とする請求項22に記載のシステム。
【請求項31】
前記デバイスは病院の枕もとの生命徴候モニタであることを特徴とする請求項22に記載のシステム。
【請求項32】
前記既知の健康状態は、前記監視される人間についての正常な健康の状態であることを特徴とする請求項22に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−517053(P2013−517053A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548966(P2012−548966)
【出願日】平成23年1月4日(2011.1.4)
【国際出願番号】PCT/US2011/020094
【国際公開番号】WO2011/087927
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(508160060)ベンチャー ゲイン リミテッド ライアビリティー カンパニー (3)
【Fターム(参考)】