説明

人間の脳の電子的なエミュレーションに心理学的な気質を取り入れるための方法

【課題】人間のような思考、感情、振舞い、認識及び推測の過程をモデル化するための明確で簡単な方法と、人工知能(AI)のための従来のモデルの冷たく、非人格的な振舞いに代わるものとを提供する。
【解決手段】人間の脳の電子的エミュレーションの中に、心理学的なプロファイル、経験及び社会的地位を取り込むことができるようにすることにより、人間に対するエミュレーション及びその周囲にある相互に影響し合う環境によって、実際の人間のように反応できるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の技術分野]
本発明は包括的には人工知能に関し、より詳細には、気質(temperament)及び性格(personality)のモデル化に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
2005年1月6日に出願された「METHOD FOR INCLUSION OF PSYCHOLOGICAL TEMPERAMENT IN AN ELECTRONIC EMULATION OF THE HUMAN BRAIN」というタイトルの係属中の米国特許出願第11/030,452号(代理人整理番号第VISL−27,019号)であって、2004年1月6日に出願された仮特許出願第60/534,641号、第60/534,492号及び第60/534,659号の恩恵を主張する特許出願がある。本願はその継続出願である。
【0003】
[発明の利点]
本発明は、人間のような思考、感情、振舞い、認識及び推測の過程をモデル化するための明確で簡単な方法と、人工知能(AI)のための従来のモデルの冷たく、非人格的な振舞いに代わるものとを提供する。本発明の方法は、AIに対する数多くの従来の手法に適合するが、気質及び性格のモデルを基にする。総合的には、それらの方法は、人間の思考、意思決定及び振舞いを正確にエミュレートするための処理及びメモリを凝集したシステムである。
【0004】
[発明の背景]
過去数十年の間に、人間のような振舞いをエミュレートするための種々の方法が提案され、構成されており、それらの多くは生物を模倣するものであった。すなわち、それらの方法は、人間の脳の根底を成す(underlying)、人間の生物学的要素に基づいて提案された。これらの方法は、或る程度まで成功を収めてきたが、それらの方法は、大規模に脳の厳密なエミュレーションを達成できるまでには至っていない。ファジィ論理のような、いくつかの生物学を手掛かりにした概念は、商業市場への進出に関しては比較的わずかにすぎなかった。或る特定市場分野の中で、ファジィ論理は極めて大きな成果を挙げてきたが、ファジィ論理及びルールベースの応用分野はニッチ的であり、限定されていた。しかしながら、いずれも、脳のレベルの規模で実施するのに適していることは立証されていない。
【0005】
本明細書全体を通して、「脳エミュレーション」及び「脳モデル」は、その意図を最もわかりやすく表すために、必要に応じて入れ替えて用いられている。
【0006】
従来のシステムのいくつかの手法は、図1に示されるような、生物学的な概念を利用したニューラルネットワークに基づいている。
【0007】
たとえば、ニューラルネットワークにおいて、1組のニューロン1及び2が或る外部手段95によって刺激されるものと仮定する。各ニューロンは典型的には事実を表す。ニューロンは、その事実認識の現在の状態に応じて発火する。それらのニューロンは他のニューロン3及び4に接続されることもでき、それらの接続は、ニューロン間の特定の関係を暗示している。ニューロン間の接続には1組の重み5が挿入されることもあり、それらの重みは、「入力」ニューロン1及び2の、「出力」ニューロン3への影響を制御する。
【0008】
最後に、ニューロン4の場合のように、抑制手段のような種々の形態の制御を実施することができる。この場合、ニューロン2における発火は、抑制手段6によって示されるように、上側ニューロン13の出力ニューロン4への影響を抑制することができる。この実施は、ニューロン4内であっても、それより前であってもよい。そのネットワークの編成及び相互接続は、或る特定の現在の入力条件95が所望の出力結果96を生成することを指示する。
【0009】
従来のシステムの別の一般的な形態は、図2に示されるような、ルールから成るシステムを用いることを含む。この場合、1組の入力条件95に1組のルール7が作用して、1組の予め定義された所望の出力結果96が生成される。そのルールは、1組の入力条件を、所望の結果を表す1組の信号に翻訳する。さらに、1組のフィードバックパス97を入力95と比較して、ルール7を変更し、それにより出力96が所望の結果に収束できるようにする。これらは通常、「第一原理(first principles)」システムと呼ばれる。
【0010】
ルールベースシステムは、所望の結果を生成する傾向はあるが、それらのシステムは極めて複雑になる可能性があり、莫大な計算能力を必要とする。何十万ものルールが生成される場合もあるが、その結果は必ずしも正確であるとは限らない。ルールベース機構を用いる、テキストからの音声合成等の典型的な応用形態は、広範囲にわたる作業者固有のトレーニングが用いられない限り、精度は上がらない。結果が正確でないこと、及び計算能力が度を越していることによって、ルールベースシステムの応用形態の普及が妨げられてきた。
【0011】
[発明の概要]
本発明は、人間の思考及び意思決定過程を正確にエミュレートするために気質、感情、情緒、性格及びこれまでの経験を取り入れる。これらを用いない場合、いかなるシステム又はニューラルネットワークであっても、実際の人間を正確にエミュレートすることができることはほとんど考えられない。
【0012】
脳の機能を理解し、実現できるようにするために、又はそれを簡単にするために、本発明のモデルを含む、人間の脳の根底を成すモデルによって、或る仮定がなされる。そのようなモデルは、実現への具体的な手法を示唆することができる。しかしながら、脳の本来の生物学的要素に対する、そのモデルの精度、又は正確な心理学的振舞いに対する、そのモデルの精度は、必ずしも本発明の特許請求の範囲に影響を及ぼさない。
【0013】
人間の脳のエミュレーションを考える際に、生物学的に対応するものがない(又は、一時的にしか対応するのもがない)場合がある特定の構造又は要素を想像することができるが、そのような構造又は要素はエミュレーションを著しく簡単にする。そのような1組の要素は、本特許全体を通して用いられるような、脳パラメータ、すなわちパラメータである。パラメータは、脳の現在の感情的過程及び心的過程の状態を定義する制御要素である。そのようなパラメータは、本明細書において、状態、条件、気分及び他の重要な状態を定義するために用いられ、電子的なハードウエアではI/Oポートに類似し、又はソフトウエアでは状態変数に類似する。
【0014】
人間の思考のエミュレーションに対する他の手法とは異なり、本発明によれば、性格に固有である文化的、宗教的及び政治的な見方及び信念の影響を容易にエミュレートすることができるようになる。
【0015】
本発明は、新たな情報の学習及び解釈から成る概念が、その時点の文脈の中で生じるという点で生物模倣的である。人間の脳における記憶過程のこの機能及び他の機能を模倣するために、多数の特別な専用メモリ及びリストが用いられる。
【0016】
文脈プールメモリが現在の状況的文脈を保持するとともに、本発明の解析過程及び思考過程の中心になる。それは、その時点の文脈プールである。強化メモリが、まだ再確認されていない命題、「事実」及び経験に基づく関係を保持する。(通常)21日間かけて再確認された情報が永久メモリ、すなわち長期メモリに引き渡される。最後に、運動技能(motor skill)、特に時間に依存するか、又は反復的な作業に用いるための専用のリストメモリが保持される。
【0017】
本発明の残りの部分は、脳のいくつかの機能を実現する種々の作業ブロックから構成される。解析器/相関器は、基本的な思考過程を実現し、感情の気まぐれな変化を処理し、擬似的な人間を社会的、政治的及び宗教的な構造の文脈内に位置付ける服従(deference)システムを実現する。イベントキュー及びメモリを用いることにより、解析及び制御機能が簡単になる。
【0018】
実施態様の主な言語は英語であるが、同じ方法及び内部構造を用いて、大部分の任意の人間言語を選択して用いることができる。学習過程を「ブートストラップ」するために、本発明は、英文及び英文の断片のための文法的及び語彙的な構文解析器も含む。
【0019】
本発明は、英散文を用いてトレーニングされ、語彙、特定の複数組の経験、特定の専門分野のための知識、並びに気質及び性格の両方に作用する要因を確立することができる。
【0020】
本発明の複数のインスタンスを用いて、たとえば電子ネットワーク又は光ネットワークを通して通信する、エミュレートされた人々の集合体とすることができる。また、それは、外部の機械的な骨格構造又は他のロボット構造を制御するのにも適している。最後に、それは、たとえば、無人機(UAV)内のトレーニングされた乗組員を構成する、1組のトレーニングされた電子的な「人間」の1人として用いるのに適している。
【0021】
本発明及びその利点をさらに完全に理解してもらうために、ここで、添付の図面とともに取り上げられる、以下の詳細な説明が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来のニューラルネットワークを示す図である(従来技術)。
【図2】ルールベースシステムを示す図である(従来技術)。
【図3】影響を取り入れることを示す、重み付けされたランダムな影響の一例を示す図である。
【図4】脳エミュレーションの実施態様を示す、脳エミュレーションのブロック図である。
【図5】言語文法サンプルを示す、自然言語文法記述の一例を示す図である。
【図6】構文解析器診断トレースを示す、文法構文解析のトレース例を示す図である。
【図7】ニューロン間の関係例を示す図である。
【図8】ニューロンテーブルの編成を示し、ニューロンメモリリストの一般的な編成を示す図である。
【図9】ニューロンのテーブルを示し、ニューロンの内部編成を示す図である。
【図10】関係記録例であり、ニューロン間の関係記録の内容を示す図である。
【図11】イベントキュー及びメモリを示し、イベントプロセッサの編成を示す図である。
【図12】イベントの内容を示し、イベント記録の一般的な内容を示す図である。
【図13】服従テーブルを示し、服従順序のテーブル例を示す図である。
【図14】層構造の気質の性格を示す図である。
【図15】気質の特性を示す図である。
【図16】4つの複合気質モデルを示す図である。
【図17】典型的な気質を示し、パラメータの重み付けを示す図である。
【図18】プレッシャー又は外傷の実施態様を示す図である。
【図19】ネットワーク接続型の脳エミュレーションを示す図である。
【図20】戦闘部隊シミュレーションクラスタ例を示す図である。
【図21】統合戦闘部隊シミュレーションシステム例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[発明の詳細な説明]
本開示のシステムは、人間の気質(temperament)、性格(personality)及びその時点の状態を抽出して、一連の脳パラメータにする。これらの脳パラメータはそれぞれ、0〜100%まで変化する値を有し、単一のニューロンと概ね同等である。これらのパラメータは集合的に、人間の存在状態を定義し、気質及び性格に関する事柄を特定する。パラメータの中には、一定で、ほとんど変化しないものがある一方で、現在の条件とともに動的に変化するものもある。
【0024】
パラメータ間の関係は、存在する場合、予め確立される。パラメータは、それらのパラメータがその一部になる、根底を成す(underlying)モデルの意思決定過程、意思決定閾値及び暗示される個人的興味を変更するような方法で、脳モデルの残りの部分と関連付けられる。
【0025】
パラメータ及びそれらの定義の厳密なリストは、本開示のシステムに密接には関連せず、その任意の所与の実施態様に応じて、さらに多くの、又はさらに少ないパラメータを含むことができる。数多くのパラメータが、特定の気質に特有の傾向を定義する。いくつかのパラメータは、意思決定における確信感のような、現在の感情状態を定義する。他のパラメータは、会話の現在の話題、又は会話中の一人称、二人称又は三人称が誰であるかのような事柄を定義するプレースホルダである。さらに別のパラメータは、環境内の位置、方向感覚、タイミング等の物理的なパラメータを定義する。
【0026】
パラメータによっては階層的でないものあるが、いくつかの脳パラメータは概ね階層的に配列することができ、その場合、いずれか1つのパラメータを変更することにより、階層内の下方にある他のパラメータが影響を受けるようになる。この配列は、性格の実現を簡単にする。
【0027】
[パラメータ例]
表1は、例として、数百あるそのようなパラメータのうちのいくつかを示す。たとえば、「胆汁質(Choleric)」パラメータ202は、胆汁質気質のパーセンテージを変更することによって、数多くの他のパラメータの値が影響を受けるという点で、階層内の他のパラメータよりも「上位に」ある。たとえば、それは、決意する性向(Propensity to Decide)222に影響を及ぼす。各パラメータは、他の(非パラメータ)ニューロンと相互接続することができる1つのニューロンとして取り扱うことができる。パラメータニューロンは、デジタルコンピュータにおけるI/Oポートと同じような役割を果たすことができる。
【0028】
以下の表は完全な1組のパラメータではなく、以下に記述される説明のために有用である代表的なパラメータの組である。
【0029】
【表1】

【0030】
人間の脳の従来のモデルでは、事実は単一のニューロンとして単純化して表され、事実はそれぞれ、0...100%の或るレベルにおいて「発火する」ことができる。発火の度合いは、その事実の現在の認識を示すと解釈される。これらのニューロンは、接続されるニューロン間の関係及び経験に基づいて、重み付けされた連結によって相互接続される。
【0031】
[意思決定に関連する状態パラメータ例]
意思決定過程において用いられる重要な状態パラメータのいくつかが以下に詳述される。そのいくつかは性格特性によって設定され、またいくつかはその時点の文脈によって設定され、これらは他の箇所で説明される。いくつかは、パラメータへの性向によって確立される基準値を有する。
【0032】
活動閾値237は、短期メモリに収容するための候補と見なされる前に、ニューロンが発火しなければならないフルスケール値の最小パーセンテージである。
【0033】
基準意思決定閾値250は、意思決定閾値のための、性格に基づく開始基準である。長期トレーニング及び学習経験は、その基準値を増減することができる。
【0034】
相関事実235は、解析器の相関器部分が現在、事実を相関付けている場合には真である。これは通常、解析器の意思決定を助ける。
【0035】
最も活発なノード236は、文脈プール(短期メモリ)において最も活発に発火しているニューロンを指している。解析器は、意思決定閾値をスケーリングするために、それを用いる。
【0036】
行動の重要度215は、意思決定についての相対的な重要度である。それは最初に、行動の重要度の性向に基づき、最近の意思決定の結果として、解析器によってスケーリングされることができる。
【0037】
完全性要求260は、意思決定する前の、完全な(そして良質な)事実の相対的な必要性を指示する。事実が不完全であれば、推測器が適当な推測を行うことになるが、結果として生成される「事実」の質は低いであろう。
【0038】
行動の緊急度216は、意思決定についての緊急度(重要度ではない)を表す。緊急度が高くなると、質の低い情報(及び意思決定)を容認できるようになる。
【0039】
[気質に基づく性向パラメータ例]
気質に基づく種々の性向を指示する典型的な1組の基本的な脳パラメータが表2に与えられており、代表的な寄与率(パーセンテージとして与えられる)も含まれる。この1組の値は決して完全ではなく、本発明の仕組みを説明するために与えられる。本特許の方法及び特許請求の範囲を変更することなく、他の気質パラメータを特定して、このリストに取り入れることもできる。
【0040】
表2に与えられる具体的なパーセンテージは、用いられる代表的で、典型的な値であるが、心理モデルの精度を改善するために微調整される。実際の実施態様では、他の値が用いられることもある。さらに、このリストは代表的なものであり、完全ではなく、本開示のシステムを例示するために用いられる。
【0041】
一般的に、これらのパラメータの多くは、気質のうちの主に2つによって共有される特性を反映し、その2つのうちの一方の特性をより大きく反映することが観察されている(そして表2に含まれている)。その同じパラメータは、残りの2つの気質によっても最低限に共有されることができる。
【0042】
【表2】

【0043】
本開示のシステムは、根底を成す所望の気質を定義するノードと、4つの気質の所望のパーセンテージを定義する付加的なノードとの使用を仮定する。表2は、各気質について選択された典型的な傾向に関する表であり、各数値は、4つの気質によって示されることになる所与の特性の、おおよその可能性をパーセンテージとして与えている。
【0044】
所与のパーセンテージは例であるが、それらのパーセンテージは現実的な値を近似することができる。これらの値を変更しても、本特許の手段及び方法は決して変更されることはなく、それらの値を調整して、気質の特性をより良好に近似することができる。そのリストは決して完全ではなく、例示するための1組の代表的なパラメータとして与えられる。
【0045】
必ずではないが、多くの場合に、1つの気質の全体的な影響は、所望の性格を生み出すために予め選択されるような気質のパーセンテージと、表2からの性向毎に与えられる可能性のパーセンテージとの積によって与えられる。これが、図4及び図5に例示される。これらは、性別201パラメータに起因する変化を加えることによって補われ、男性又は女性による反応の差を明らかにすることができる。
【0046】
[いくつかの気質に基づく性向パラメータの詳細]
表2のパラメータのサンプリングが、そのようなパラメータがいかに指定され、適用されるかの例として、以下に説明される。これらのパラメータの記述される設定及び応用形態は主観的であることは避けられず、本明細書において記述されるこれらのパラメータ及び全ての他のパラメータの相対的な重み付けは近似であり、例示的である。本開示のシステムの手段を変更することなく、それらの重み付けを変更又は調整できることは当業者には理解されよう。
【0047】
面白おかしく感じる性向(Propensity for Amusement)210は、面白おかしいと感じる傾向である。この値が高くなると、面白おかしく感じることへの閾値が低くなり、面白おかしいと感じる気持ちがより早く誘発される。面白おかしいと感じる気持ちの誘発は、根底を成す脳モデル及び骨格機構(もしあるなら)において与えられるような、適当な表情に反映させることができる。
【0048】
完全を求める性向211は、意思決定する前に完全な事実を必要とする性格的な傾向の指標であり、気質選択だけを基にする。当然、憂鬱質の場合が最も高く、多血質又は胆汁質の場合が最も低い。それは通常は変更されないが、根底を成す脳モデル(解析器)は、トレーニング又は学習に基づいて、このパラメータを増減することができる。
【0049】
決定を求める性向212は、脳エミュレーションが決心することを求める傾向であり、決定感のための基準値を設定する。時間とともに、目的又は目標を達成することによって(又は達成し損なうことによって)、その性向を恒久的に変更することができる。
【0050】
満足感を感じる性向(Propensity for Enjoyment)213は、人生の問題において満足感を感じる性向の指標である。それは当然、多血質の場合にやや高くなり、目標を達成すること、計画を成就することによって、又は肯定的な関係を経験することによって、(いずれの方向にしても)非常に長い時定数(20日)で影響を受ける。
【0051】
快感を覚える性向(Propensity for Fun)214は、気質が快感(the sense of feel-good)に基づいて意思決定する性向を定義する。それは気質に依存し、多血質の場合に最も高い傾向があり、リズムの影響の受けやすさに大きな影響を及ぼす。
【0052】
行動することの重要度を重視する性向215は、意思決定のために必要とされる全ての事実が、高い確信度で入手可能であってもなくても、行動するのが重要であると感じる気質的な傾向の指標である。当然、多血質の場合に最も高くなり、憂鬱質及び粘液質の場合に最も低くなる。それは通常は変更されないが、根底を成す脳エミュレーションが、トレーニング又は学習に基づいて、このパラメータを増減することができる。
【0053】
行動することの緊急度を重視する性向216は、事実を深く考慮又は解析することを犠牲にして、行動するのが重要であると感じる性格的な傾向の指標である。当然、多血質の場合が最も高く、粘液質の場合が最も低い。これは通常は変更されないが、根底を成す脳エミュレーションが、トレーニング又は学習に基づいて、このパラメータを増減することができる。
【0054】
我慢強い性向217は、我慢強さの全体的な傾向の指標である。そのレベルは通常、粘液質の場合に高く、多血質の場合に低いが、(長期間の)過去の経歴によっても大きく影響を受ける。この特性パラメータの成長は非常に遅く、反復過程である。短期又は長期の目標を達成することに繰返し失敗しているうちに、我慢強さ217の度合いが高くなり、行動を早期に打ち切ることを抑えられるようになる。
【0055】
リズムの影響を受けやすい性向28は、気質に依存するパラメータであり、活動過多によって増減することがある。それは、意思決定過程へのリズムの相対的な影響を制御する。その基準値は、多血質の場合に比較的高い。
【0056】
安定を求める性向219は、安定状態に向かう性向を定義する、気質に依存するパラメータである。その値が高いとき、対応が遅いという意味で、結果として正味の変化が何も生じない意思決定が行われる傾向があるであろう。それは、ぐずぐずと引き延ばす(procrastinate)傾向も暗示しており、粘液質の性格の強さ(又は弱さ)である。安定を求める性向219の度合いが高くなると、文脈によって決まる権威への忠誠心が強くなる。
【0057】
解析する性向220(は気質によって決定され、外部からの命令を除いて、他の特性によって影響を受けない。その場合でも、その影響は短期であり、基本傾向に向かって迅速に戻される。非常に高いとき、意思決定する前に事実を解析し、相互に関連付ける傾向が高くなり、その結果を基にして生成される、確信度に基づく意思決定閾値が一般に高くなる。
【0058】
世話を焼く性向221は気質に依存するパラメータであり、粘液質及び多血質において最も高い傾向がある。その性向は、短期メモリに入れるための人間に関連する事実を獲得する際に興味を増す。このパラメータの影響は、たとえば、文脈プール又は短期メモリのためのクラッタフィルタのパラメータを変更することによって確立される。
【0059】
決意する性向(Propensity to Decide)222は、胆汁質及び多血質の場合に最も高いパラメータであり、最小限の事実で意思決定する意欲に影響を及ぼす(意欲を高める)。胆汁質の場合、後にその意思決定が良くないことがわかった場合には、その意思決定は変更される場合もあるが、多血質の場合には、その結果は無視される傾向がある。またパラメータ222は、より質の高い事実が入手可能であるとき、意思決定を覆す傾向を高め、且つ意思決定の安定性を、及び対応が遅い傾向を下げる。
【0060】
計画を遂行する性向223は、計画を遂行する傾向の(現在の)レベルを定義する。その中心的な値は性格特性に由来するが、ストレス、緊急度及び外部のプレッシャーのような変数によって変更される。プレッシャーが高い場合には、外傷パラメータ230のように、計画を無視し、性格プロファイルに基づく反応に逆戻りする傾向が高くなる。これは、たとえば、図5において例示されるようにして果たされる。
【0061】
計画を立てる性向224は、プロジェクト又は作業の前に立案するための傾向及び願望の指標であり、気質プロファイルの関数である。性向34が高い場合には、作業のステップが立案されるまで、その作業に取りかかるのが延期されるであろう。計画を立てる性向は、223による、計画を遂行する性向を暗示しない。
【0062】
ぐずぐずと引き延ばす性向225は、意思決定及び行動を遅らせる、ぐずぐずと引き延ばす性向の指標である。主な値は、表2による気質から導出され、その際、固定されたパラメータであるが、経験又はトレーニングによって徐々に変更することもできる。ぐずぐずと引き延ばすのは概ね粘液質の特徴であるが、それは、完全な事実が存在しない場合に、憂鬱質の意思決定過程においても生じ、通常、胆汁質の場合には非常に低い。
【0063】
結果がわかってから批判する性向226は、意思決定を、たとえ質の高い意思決定であったとしても再評価し、おそらくそれらの意思決定をさらに評価し直す傾向の指標である。表2に示されるような気質依存性によれば、憂鬱質において最も高く、典型的には胆汁質において最も低い。
【0064】
行動の安定を求める性向227は、現状を維持する性向の指標である。主に粘液質の特性であり、その性向は、対応が遅い傾向に影響を及ぼし(その傾向を高め)、計画を変更する意欲が少ないことによって実現される。それは、文脈プール、短期メモリ又は解析器の入力において、クラッタフィルタ又は興味フィルタの一部として、根底を成す脳エミュレーション又はモデルに関連付けられ、既存の又は進行中の計画を中断する新たな計画や提案を抑制する。
【0065】
手を腰に置く性向(propensity to rest hands on hips)228は概ね憂鬱質の特性であり、その正の値が大きくなると、関係のある骨格機構が、主に腰の上に手を置く、ポケットの中に手を入れる等の傾向が高くなる。このパラメータは、根底を成す脳エミュレーション又はモデルに制御値を与え、これは運動技能がこの傾向を果たすための役割を担う。実際には、エミュレーション又はモデルが、この傾向が果たされるか否かを決定する。
【0066】
再び、表2のパラメータは、4つの根底を成す気質選択パラメータのうちの1つ又は複数によって直に制御される。それらのパラメータは、同じく表2の例によって与えるようなパーセンテージによってスケーリングされる。その際、それらのパラメータは、脳モデルによって、根底を成す脳エミュレーション又はモデル内の適当な制御点、フィルタ及びセレクタに割り当てられる。
【0067】
[パラメータ影響の取入れ]
脳エミュレーション全体を通して、或るパラメータが意思決定の結果に影響を及ぼすこともあり、影響を及ぼさないこともある数多くの場所がある。いくつかの事例では、パラメータが意思決定に寄与する可能性は、多くの場合に統計に基づく。これを果たす1つの方法が図3に示される。0〜100%のランダム数が421によって生成され、422によって、該当するパラメータと比較される。そのパラメータ値が基準閾値パラメータ423とランダム数との和を超えている場合には、そのパラメータが取り入れられるようになる。
【0068】
このタイプの論理が、他の箇所で説明されるクラッタフィルタにおいて頻繁に用いられる。
【0069】
[導出される脳パラメータ]
数多くのパラメータが表2の基本気質パラメータから導出される。これらの値は、気質パラメータの組み合わせにすることができるが、学習、トレーニング、経験及び現在の状態によって調整される。他の脳ノード及びパラメータの場合と同様に、これらのパラメータの大部分は、実施態様の技術に適した単位において、0...100%の範囲内で表される。
【0070】
典型的な1組のこれらの導出されるパラメータが表3において与えられる。これらのパラメータはそれぞれ、そのパラメータに加えられるべき付加的な(符号付の)値を有し、その付加的な値はさらに、学習又はトレーニングに基づいて調整される。そのリストは決して完全ではないが、本発明の機構を説明するために与えられる。これらのパラメータの多くは、感情、その指標及び表現の問題に関連する。全てのパラメータと同様に、これらのパラメータを外部から監視して、エミュレートされた脳の感情的な状態を測定することができる。
【0071】
【表3】

【0072】
これらのパラメータは、たとえば、気質、文脈、環境及び現在の状態パラメータから導出することができるが、この説明中に他の手段も明らかになるであろう。表3のパラメータは例示的である。この表内の大部分のパラメータは、時間とともに右側に示される値まで減衰する。この減衰目標は名目値であり、事前の(preemptive)トレーニングを通して変更することができる。それらは、表2の場合と同じようにして、気質のパーセンテージから導出される。そのリストは決して網羅的又は完全ではなく、この説明中に他のものも明らかになるであろう。
【0073】
現時点で導出されるパラメータ値は、脳エミュレーション又はモデル内の適当な制御点、フィルタ及びセレクタに割り当てられる。いくつかの事例において、それらのパラメータ値は、意思決定又は安定性閾値を制御するか、又は図3の42等によって、エミュレートされた脳内の現在興味フィルタのための統計的な設定値、そして他のそのような脳エミュレーション機能に対する統計的な設定値を確立する。これらの気質及び気質によって導出されるパラメータの複合的な影響が、エミュレートされる脳の複合的な性格を決定する。
【0074】
基本決定閾値パラメータ250は、多くの意思決定のための開始基準である。それは典型的な開始意思決定閾値であり、意思決定される前に得られなければならない確信度又は情報の完全さの指標である。その閾値は、パーセンテージ0...100%として与えられ、その適用は、行われる意思決定のタイプに依存する。いくつかの場合に、それは絶対閾値として用いられるか、又は現在の事実の確信度、すなわち意思決定が行われる前に超えられなければならない数値を指定することができる。
【0075】
集中力パラメータ251は、集中する能力の指標である。正の値が大きくなると、外部からの気を散らすもの、すなわち根底を成す脳モデル又はエミュレーション内の短期(又は現在の文脈)メモリ内の問題には関連しないものに対する注意の閾値が上がる。それは、解析器30及びクラッタフィルタ40の両方によって用いられる。
【0076】
従順性252は、外部からの感情的なプレッシャーを受けている最中に安定を求める全体的な性向の指標である。それは、減衰して基準値に戻る長期フィルタを含む。正の従順性252は、感情的なトリガイベントに対する注意の閾値を大幅に増加させる。従順性252は、適度な時間にわたって変更されることができるが、その気質によって定義される固定値に戻る傾向がある。この値が、その平均設定値より低い値まで降下するとき、学習された反応を無視し、性格プロファイルに基づく反応に戻る傾向が高くなる。
【0077】
活動過多253は、当業者によって標準的に定義されるように、活動過多の現在のレベルの指標である。それは、プログラム可能な値によって確立され、その後、気質のパーセンテージによって補われる。活動過多は、従順性252及び現在の感情的なストレスによっても影響を受ける。これらの発生源が、活動過多の基本値のための主な決定要因であるが、長期トレーニング又は経験によって、その値を変更することができる。胆汁質及び多血質の気質は相対的に高い値を有し、一方、憂鬱質及び粘液質の値はかなり低い。
【0078】
活動過多253の影響は、たとえば、選択された意思決定閾値の大きさにランダムな(典型的には負の)変動を導入することによって実現される。それは、作業段階の能力及び現在のリズムパラメータの時定数も変更し、さらに最終的には運動作業の遂行に影響を及ぼす。
【0079】
フィルタ編成詳細255は、脳エミュレーションのための入力情報、文脈プール又は短期メモリからの編成に関する詳細のフィルタリングを指定する。100%より小さい値は、詳細の最大のパーセンテージを除去する。
【0080】
フィルタ人間興味256は、エミュレートされた脳内の入力情報、文脈プール又は短期メモリからの人間興味データのフィルタリングを指定する。100%は大部分の人間興味情報を除去する。その値は胆汁質モデルの場合に最も高く、多血質の場合に最も低いであろう。
【0081】
フィルタ関係詳細258は、入力情報、文脈プール又は短期メモリからの事実間の相互関係についての詳細のフィルタリングを指定する。100%は大部分の詳細を除去する。その値は粘液質及び多血質モデルの場合に最も高く、憂鬱質モデルの場合に最も低い。レベルが高くなると、関連を有しつつもその関係が薄い事実の相関が抑制される。レベルが低くなると、解析器30が、イベントメモリ14に対するイベントを生成するように促される。これは、同じ情報に繰返し立ち戻り、データをより良好に相関させるために短期メモリを解析するという効果がある。
【0082】
フィルタ技術的詳細259は、脳エミュレーションのための入力情報、文脈プール又は短期メモリからの技術的詳細のフィルタリングを指定する。100%は大部分の詳細を除去する。この値は、胆汁質及び多血質モデルの場合に最も高く、憂鬱質モデルの場合に最も低い。
【0083】
完全性要求パラメータ260は、意思決定する前に要求される、情報の完全性レベルを確立する。完全性の値が高くなると、全ての事実が入手できるまで意思決定を延期する可能性が高くなり、意思決定を挫折させるか、又は避けることがある。重要度及び緊急度に関連する他のパラメータが、このパラメータを変更することができる。完全性要求は、解析器30の意思決定によって、および、93を通るような脳エミュレーションへの外部コマンドに基づいて、変更することができる。
【0084】
文脈プール(短期メモリ)は、休息に起因して時間とともに小さくなるので、要求260は、完全を求める性向によって設定される値までいつの間にか戻される。その要求は、意思決定が行われた後にも性向値に戻る。100%は、最も高い完全性要求を暗示する。それは、憂鬱質の場合に最も高く、胆汁質及び多血質モデルの場合に最も低い。
【0085】
詳細に対する我慢(Patience With Detail)261は我慢の現在のレベルである。その基準値は、我慢強い性向から導出される。それは、現在の状態によって影響を受け、上昇するように指示されることができる。それは、意思決定閾値を大きく変更し、概ね100%の値が、詳細に対して快適であることを暗示する。その値は動的であり、憂鬱質の場合に最も高くなり、多血質及び胆汁質の場合に最も低くなる傾向がある。
【0086】
ぐずぐずと引き延ばすレベル262は、現在のぐずぐずと引き延ばすレベルの指標である。その基準値は、ぐずぐずと引き延ばす性向によって設定され、不確定性によって増加し、焦燥によって減少する。ぐずぐずと引き延ばすことは、他の状況によっては抑制されない意思決定を遅らせ、他の状況によっては抑制されない行動を延期する。意思決定選択は、図3の42と同じようにして実施される。このレベルの値が高くなると、確かな事実が存在する(高い確信感がある)場合であっても、意思決定が延期される。
【0087】
ぐずぐずと引き延ばすことは概ね粘液質の特徴であるが、完全な事実が存在しない場合には、憂鬱質意思決定過程においても生じる。それは通常、胆汁質の場合には非常に低い。
【0088】
先に言及されたように、上記の表において記述されるパラメータは決して、完全な1組の明らかなパラメータを構成するものではなく、パラメータは全部で数百にも及ぶ。選択されたパラメータは、本発明の脳エミュレーションのための内部過程及び考慮すべき事柄を例示するために与えられている。
【0089】
[脳エミュレーションの実施態様]
脳の根底を成す機能モデルの1つの実施態様が図4に図示される。モデルの3つの主な構成要素は、解析器/相関器30、文脈プールメモリ10及び英語意味解析器50である。
【0090】
この説明全体を通して、完全な文又は文の断片のいずれにおいても、外部とのコミュニケーションの処理が関連する場合には、常に英語が用いられる。内部的には、このシステムは、その言語において用いられる言語学、音声学、単語の綴り又は文字の形状が関連する場合を除いて、本質的には言語に依存しない。初期段階の実装を容易にするために英語が用いられたが、本質的に同一の過程を、任意の選択された人間言語に適用することができる。本特許の目的を果たす場合に、言語の選択は、本発明を決して限定しない。実際には、本特許の方法は、1つの人間言語から別の言語に自律的に翻訳するために適用することができる。
【0091】
図4を参照すると、以前に説明された状態パラメータによって、種々の構成要素が制御又は変更される。詳細には、どのタイプの情報が脳において実際に考えられるかを決定する際に、クラッタフィルタ40が中心的な役割を果たす。図中の大部分の他のブロックと同様に、解析器/相関器30の動作は、性格状態パラメータ22によって制御されるか、又は大きく影響を受ける。多くの場合に、このパラメータ自体が解析器30の結果であり得る。
【0092】
意味解析器50を通って、外部情報の流れが入力される。これは、英語の文及び文の断片の両方からの内容及び意図を抽出し、短期メモリ10に収容するために抽出物をフォーマットする。
【0093】
[本明細書において用いられるニューロンの概念]
本発明は、生物学的なニューロン、アキシオン及び樹状突起、それらの配列又は相互接続、又はそれらの重複性を複製するつもりはない。むしろ、本特許における用語「ニューロン」は、1つの事実又は経験を記憶にとどめるための手段を表す。生物を模倣することによって示唆されるように、1つの事実の存在は単一のニューロンによって単純化して表され、一方、その事実が暗示することは、ニューロン間の相互接続の配列に含まれる。
【0094】
生物学的なニューロンでは、関連する事実が認識されるときに、適所において1つのニューロンが「発火」する。たとえば、キツネの脳では、特定のニューロンがありふれたウサギを表し、生物学的なニューロンの発火は、そのウサギの認識を暗示する。発火(又は出力)の度合いは、そのウサギが認識される確信度を表す。
【0095】
本発明のエミュレーション又は脳モデルには、そのようにニューロンが適所で「発火」ことに対応するものはない。デジタルの実施態様では、長期メモリ12全体(このメモリには、事実、関係及び経験が格納される)は、認識がそのメモリ内のニューロンの状態の変化を含まないので、リードオンリーメモリ又は低速のフラッシュメモリから構成することができる。
【0096】
本明細書において用いられる代替の過程として、認識は、文脈プールメモリ10内のデータの存在、認識又は関係によって生じる。「発火するニューロン」への参照は、そのニューロンのための現在の発火レベルとともに、そのニューロンへの参照(そのニューロンのアドレス)を文脈プール10内に入れることと解釈されるべきである。
【0097】
[ニューロン及び参照インデックス]
どのニューロンも2つのタイプの情報を記録する。特定の事実の存在は、それを表すためのニューロンがとにかく定義されたという事実によって暗示される。経験は、ニューロン間に形成される関係及び連結によって暗示される。図9に示されるように、個々のニューロンは、決まった大きさの基本情報、及び可変の数の関係接続記録によってエミュレートされる。関係条件は条件付きであり、他のニューロンの状態に基づいて叙述(predicate)されることができ、そのターゲットニューロン及び条件トリガの両方のIDインデックスを参照する。
【0098】
全てのニューロンが固有のアドレスを有するが、それは、メモリが編成し直されるのに応じて、時間とともに変更される場合がある。さらに、いくつかのニューロンは、存在そのものが一時的である。それらのニューロンは、強化されない限り或る時間を経て消失することがあり、強化メモリ11内に入れられる。それらの正確な場所は不安定であるので、別のニューロンによってそのニューロンを参照することによって、問題を生じる可能性がある。さらに、1つのニューロンの相対的な大きさは、他のニューロンとの相互関係及び文脈に応じて、大きく異なる可能性がある。
【0099】
これらの問題を適切に取り扱うために、生成されるニューロン毎に固有で、変化しないインデックスが割り当てられる。ニューロン間の参照は、この永久インデックスを用いて、互いに相互に参照する。1つのニューロンが(強化メモリ11において)削除される場合には、そのインデックスは後に再利用するために回収される。インデックス値内の特定のビットは、それが、標準的な永久ニューロンを参照するか、強化メモリ11を参照するかを指示する。強化メモリの「一時的な」ニューロンに対するインデックスの決まった部分が予約され、文脈プール10内の情報ブロックタイプ及びフォーマットを示すために用いられる。
【0100】
或る時間にわたって強化されている、強化メモリ11内のニューロンは、解析器/相関器30によって永久化される。その後、解析器は、それらのニューロンを永久メモリ12に移し、そのニューロンがそのように移されたことを示すために、そのインデックスへの全ての参照を変更する。そのニューロン内の参照そのものは、強化過程を生き延びることができない可能性があり、転送中に削除される場合がある。個々のニューロンとともに格納されるデータに関しては、表4を参照されたい。
【0101】
[ニューロン参照構造の内容]
解析器/相関器は、未処理の情報、及び、或る特定のイベント又は条件が発生するのを待って一時中止されている活動の両方のために、文脈プールメモリ10を繰返し走査する。また解析器/相関器は、脳パラメータを現在の状態にしておくために、且つ内容の関連する変化を調べるために、脳パラメータを更新する。
【0102】
文脈プール内では、情報が可変サイズのブロックに編成され、その全てが、提示される前に予め分類又はタイプ分けされている。いくつかのブロックは、文から推測される意図を含む。他のブロックは、命令、命題、推測及び他の種々雑多の要素を含む。その縮退した形では、「ブロック」は単に、単一のニューロン、及びその発火レベルへの参照にすることができる。
【0103】
【表4】

【0104】
個々のニューロンは、或る決まったサイズの基本情報、及び可変の数の関係接続記録によってエミュレートされる。後者は条件付きであり、他のニューロンの状態に基づいて叙述されることができ、そのターゲット及び条件付きニューロンの両方のIDインデックスを参照する。
【0105】
[文脈プールメモリ10]
全てのエミュレーションの中心になる部分は、文脈プール(短期)メモリ10及び解析器/相関器30において生じる。エミュレータに対する即時的な認識の全ての情報は、その文脈プール内に存在する。ニューロンのような発火は、長期メモリ12からのニューロンへの参照が文脈プール内に存在することによって暗示される。情報(ブロック)は、言わば、逐次的に文脈プールに入るが、解析器30によって並列に処理される。
【0106】
図4の文脈プール10を参照すると、データは、言わば、右から左に流れる。強化されない限り、そのプール内の全てのニューロンデータは、その進行中に次第に「漏れて」又は消えていき、経時的に劣化する。文脈プールが一杯になる場合には、単に最も古い(すなわち最も左側にある)データが失われ、それは情報の詰め込みすぎの事例である。文脈プール内にとどまっているが、強化されることなく経時的に劣化しているデータは、徐々に0発火状態まで減衰し、その時点において、単にプールから除去される。
【0107】
データは、多数の発生源から文脈プール内に入れられる場合があり、そのうちの最初の1つは、多くの場合に意味解析器50である。解析器30からの入力を除いて、全ての文脈プール情報はクラッタフィルタ40によってフィルタリングされ、クラッタフィルタは、関連のない、又は興味のないデータが文脈プールに概ね到達しないようにする。
【0108】
文脈プール内のデータは、所定のフォーマットのブロック状構造の形をとる。たとえば、意味解析器50から到着するブロックは、文、独立節又は文の断片の意図を含む。或る質問への一語の返事は、そのような断片として十分に意味がある。そのような文ブロックは、話し手への参照、聞き手への参照、そしておそらく、話題にされている人又は物への参照を含むことができる。このデータ及び他の文データの数多くの組み合わせが実現可能である。
【0109】
解析器50からのブロックはたびたび、質問(及び予想されるタイプの回答)、命令、事実に基づく言明、観察等の文の目的を含む。このタイプのデータは離散的であり、意味論的な構文解析によって容易に識別可能である。
【0110】
他の暗示される感情的な情報は、最上級の使用、感嘆表現及び口調(聴覚解析器60から導出される場合)から推測することができる。聴覚音源が、話し手の名目的な基本周波数を生成し、音声に伴って生じる短期又は長期のピッチの偏差によって、ストレス又は感情的な興奮を推測する。
【0111】
文脈プールの長さは応用形態に応じて実験的に決定されるが、名目的には、数時間の熱心な研究を、又はほぼ一日の日常的なやりとりを取り扱うだけの十分な長さである。複数のサイズを文脈に入れるとすると、これは概ね1メガバイトの従来のデジタル記憶装置に相当するが、選択されたサイズによって、本特許の手段又は方法は変更されない。睡眠時間(又はエミュレートされる延長休息)中に、文脈プール10は徐々に枯渇し、ニューロンの発火は徐々に0まで小さくなる。ニューロンの参照が0まで小さくなるとき、生物を模倣することによって示唆されるように、それらの参照は文脈プールから除去される。
【0112】
ドリーマブロック75によって、睡眠中に新たな情報を導入することができる。深い睡眠中に生成される、ドリーマによって導出される情報は、目を覚ますときに、通常の文脈プールのデータ減衰とは異なる速度で、急速に減衰する。睡眠時間が不十分である場合には、まだ活動しているニューロンの発火が、後続の覚醒サイクルの中にとどまり、先に記述されたように取り扱われる。
【0113】
[言語構文解析器50]
言語意味解析器50は、実施態様の自然言語、たとえば英語のコミュニケーションを受け入れる。それは、文、節及び句を分解し、その文から意味及び目的を導出する。それは、解析器30、長期メモリ12及び強化メモリ11をポーリングすることによって、現在の会話又はやりとりの文脈を使用する。現在の文脈へのアクセスは、解析器30を介して、文脈プールから間接的に得られる。言語の単語解釈は文脈プール内の関連するニューロンの存在によって重み付けされ、文脈に沿って正確な解釈がもたらされる。
【0114】
言語意味解析器50はロジックでハードコード化することができるが、多くの応用形態の場合に、内蔵プロセッサとして実装されることが好都合である。この方法は、本発明を達成する上で必要ではないが、初期設計言語以外の言語の構文解析及び解釈の場合に好都合である。
【0115】
全ての人間は、その国語及びその文法又は意味論に関係なく概ね同じであるので、本明細書において記述されるパラメータは同じままであるが、意味解析器言語50の言語記述スクリプトは変化するであろう。
【0116】
便宜的に、インターフェース98を通して解析器30によって出力される陳述は解析器30において生成される。しかしながら、この機能は、言語の選択を英語から変更する際に、便宜的には個別のユニットに分離することができる。
【0117】
所与の言語の場合に、意味解析器50は、英語のwith又はforのような、その言語の概ね変化しない構成要素である1組の単語を認識する。これは、言語の文法を定義する際に大きな役割を果たす。名詞、動詞及び形容詞は時代とともに容易く変化するが、根底を成す文法を構成する根本的な構造語はめったに変化しない。
【0118】
これらの変化しない「文法」語に加えて、文、節及び句の構造が、文法の残りの部分を定義する。解析器50はこの文法全体を用いて、コミュニケーションの意図を解釈する。
【0119】
コンピュータ言語(非自然言語)は多くの場合に、Lex及びYaccのような市販のツールを用いて、個別の語彙及び文法パーサによって構文解析される。これらは、本開示のシステム内において構文解析する場合には煩わしく、扱いにくいと思われた。自然言語のために、別のパーサ(Lingua、市販のパーサであり、本発明の主題ではない)が開発された。Linguaを用いるとき、英文法の概ね完全な記述が定義され、言語意味解析器50のための中心的な役割を果たす。これに含まれる知的所有権は英文法そのものの定義であるが、それも本発明の主題ではない。
【0120】
従来技術では、単語の大きなコーパス又は辞書を用いるカスタム解析器が、英語テキストの構文解析のために用いられてきた。それらとは異なり、意味解析器50は、テキストからさらに正確に意図を解釈するために、文脈依存情報を利用する。
【0121】
意味解析器50は、自然言語において文、節、句及び単語を取り込み、解読されたニューロン参照及び推測された意図のブロックを出力する。大きな尺度では、変化しない基本的な文法語は、それらが構文解析においてその目的を果たした後に捨てられる。同様に、文の中の構造的な構成語は、その暗示が探り出された後に、多くの場合に捨てられる。最後に、he及びitのような代名詞の参照が、「David Hempstead」又は「rabbit」のような変換ターゲットを表すニューロンへの参照によって置き換えられる。
【0122】
意味解析器は、長期メモリ12及び「21日」強化メモリ11の両方を間接的に参照し、いずれかから関係情報を抽出して、特定の単語の意味及び意図を求めることができる。それは、そのニューロン参照が文脈プール10内で既に発火している単語に、より大きな重みを置く。
【0123】
英語(又は他の自然言語)の文法の定義は、バッカス記法(Baccus-Nauer Format)(BNF)の変形形態における定義ファイル内に収容される。そのような定義の断片例については、図5を参照されたい。その例は、Neuric Technologies社から市販される製品である、Linguaコンパイラを用いて実施された。その文を構文解析することから得られた診断結果の一例、「The table failed」が図6に与えられており、市販のLingua製品において用いられるパーサの反復性が示される。
【0124】
本開示のシステムにおけるその配置及び有効性を損ねることなく、言語解析器50が様々に実現できることは、当業者には容易に明らかになるであろう。
【0125】
[文ブロック]
文を処理するために、文脈プール10のデータは、推測される事実及びデータへとブロック分けすることができる。意味解析器50における予備処理によって、既に、文の断片が完全な文に変換されているか、又は推測器で拡張するためにその断片にフラグが立てられているであろう。
【0126】
各文ブロックは通常、完全な文であり、主語及び述語を有する。暗示される主語youでは、主語が解決されており、適当なニューロン参照で置き換えられている。名詞節(たとえば、質問に対する回答)を完全な文に変化させる、暗示される接頭語It isも、必要に応じて追加されているであろう。全ての文ブロックが形式的に標準化され、推測される文情報がその形式に並べ替えられている。
【0127】
それらのブロックは可変の長さを有し、文データを指示するフラグが格納されている。この情報のうちのいくつかは、状態パラメータから探り出される。文タイプは、どの要素がオプションであるかを指示する。タイプは、宣言、疑問、感嘆、観察、非難、質問への回答等を含む。他の文データは、以下の(および他の)情報を含むことができる。
主語
主語 人称(一人称、二人称、または三人称)
主語 数(単数、複数)
主語 性別(男性、女性、物)
取るべき行動又は処置
動詞
目的語(人、数、性別を含む)
行動の目標(人、数、性別を含む)
【0128】
全ての名詞のような要素は人称フラグ、数フラグ及び性別フラグも含む。これらの文ブロックは、解釈するためのコマンドとして、解析器/相関器30及び推測器70によって解釈される。これらのブロックのうちのいくつかは、表7の内容についての説明において記述される。
【0129】
[文認識過程]
その文が、記述されたテキストから得られたか、聴覚的な音声から得られたかのいずれにしても、文の内容の認識及び理解は概ね同じである。最も大きな違いは、音声の場合に課せられる付加的な照合、妥当性確認及びフィルタである。文から意図を抽出するために、一般的なコミュニケーション三要素が定義される。その要素は、話し手、聞き手/物(たとえば、命令の受け手)及び話題にされる人、物又は主題である。この情報の大部分は、文の内容から、現在の文脈プール10から、並びに状態パラメータ20及び23から推測することができる。
【0130】
基本的な過程は以下の通りである。
1.構文解析する−図5に示されるように、言語文法規則を用いて文を構文解析する。
2.三要素の特徴を抽出する−もしあるなら、コミュニケーション三要素の変化(shifts)を特定する。変化が特定された場合、文脈プール10内の適当なコマンド通知子によって相関器30に通知する。
3.任意の修飾語を抽出する−修飾語節をコンパイルする。定型文(definitive sentence)がコンパイルしたものを含むが、単一のニューロンに対する節の確率を別の方法で評価する場合には、付加的な関係接続1252を生成するだけの十分なニューロン参照及びデータの両方を抽出する。
4.構造的要素を抽出する−手掛かりになる構造的要素を抽出し、意味情報を捨てる。相関器30及び75によって用いるのに適したブロック又はニューロン参照にデータを格納する。
5.定型文をコンパイルする−任意の定型文を関係及び修飾語要素にコンパイルし、(もしあるなら)関連する事実ニューロンとの関係連関を格納する。これは、文脈プール10に対して適当な指示を出すことによって間接的に行われる。
【0131】
上記の基本過程は、文を構文解析し、文脈プール10に収容するための情報ブロック又はコマンドブロックを生成するための典型的な活動の一部を例示する。
【0132】
[クラッタフィルタ40]
クラッタフィルタ40は、文脈プール10への特定のタイプの情報の入力を制限するための役割を果たす。文脈プールに入る情報は、解析器30によって出力されるものを除いて、クラッタフィルタを通過しなければならない。そのフィルタの目的は、言語又は文法上のトークン及び意味のないジェスチャ情報のような関係のないニューロンを除去することである。クラッタフィルタは、予め設定されたヒューリスティクスに従い、それは固定であっても、又は適応的であってもよい。
【0133】
そのフィルタの結果は、関連する情報について検討することを最重要視し、且つモデル化される性格の「心を乱すもの」及びその性格にとってほとんど関心のないものを最小限に抑えることである。たとえば、胆汁質は、多血質と違い、人間興味情報に価値を見出さない。現在のパラメータ条件を踏まえて、そのように特定されたデータは除去することができる。これは、会話のやりとりの過程において行うことができ、その過程において、意味解析器50又は他の発生源が、議論の話題に基づいて、データにフラグを立てる。
【0134】
クラッタフィルタは、右脳及び左脳による活動におけるエミュレーションの違いに大きく寄与するものであり、この点では、解析器/相関器30の働きを除いて、どの構成要素にもひけをとらない。
【0135】
外部世界とのやりとりの間に、解析のために、相関のために、推測のために、そして夢を見るために、メモリから多数のニューロンが参照され、文脈プール10に与えられる。フィルタは、与えられたニューロンのタイプ分け及びグループ分けとともに、抑制因子のうちのいくつかを考慮し、それらのニューロンを文脈プール10に転送する代わりに、捨てることを選択する場合もある。通常の(睡眠時でない)活動中に、ドリーマ75からの出力は、文脈プール10内のニューロンの発火の全体的なレベルが非常に低くない限りは、非常に低い優先度を与えられる。
【0136】
解析器30から生じるニューロンの句は常に、クラッタフィルタを迂回して、直に短期メモリに入る。必然的に、解析器/相関器は思考(及び記憶)過程全体を支配し、通常はクラッタを生成しない。
【0137】
そのフィルタは、到来する情報に優先順位もつける。質問に対する回答の全内容も通過される可能性が高いのに対して、同じ成分は通常は通過されないであろう。
【0138】
「クラッタ」を構成するものを求める際に主に基準になるのは、状態パラメータ22の一部である、性格パラメータ20である(図4において、そのパラメータは、強調し、且つ明確にするために、他のパラメータとは別に示されているが、基本的には同じである)。図3に示されるような論理は、クラッタを求めることができる1つの手段を例示する。本明細書において記述されるようなクラッタフィルタは、本特許の基本的な発明を変更することなく、付加的なルール及びヒューリスティクスで補うことができることは当業者には明らかであろう。
【0139】
[解析器/相関器30]
解析器/相関器30は、エミュレートされた脳の中心となる部分であり、思考過程のための活動の主な中心である。それは、全ての動的な脳パラメータを更新するための主な手段でもあり、情報の永久記憶を開始するための唯一の手段である。
【0140】
意思決定は通常、「揺るぎない」事実、高い確信度の情報又は発火に基づく。一般的に言うと、出所の情報の知覚される品質が高いほど、より質の高い意思決定がもたらされる。良好な情報が存在しない場合、解析器30は推測器70からの情報を用いるが、後者を用いる結果として、やはり質が低下する。
【0141】
思考及び意思決定過程は、推測器70ブロック及びドリーマ75ブロックからの刺激及び示唆による支援を受けて、解析器ブロックによって実行される。解析器の働きの中心となる部分は、全ての過程がその時点の文脈内で実行されるように、文脈プールメモリ10内で行われる。
【0142】
文脈プールメモリ10にニューロン参照を入力することによって、そのニューロン、及びその関連する関係(経験)連結、すなわち「関係」に固有の一連のイベントが開始される。後に詳述されるように、これらは多くの場合に、イベントキューメモリ14を利用して、それらの接続の暗示を取り扱う。
【0143】
[覚醒時の初期活動]
朝に目を覚ましたときに、休んだ心(すなわち、文脈プール10)は通常、全く空である。昨日の思考及び関心事はすっかり忘れ去られるか、又は容易には思い出せないほど弱められる。前日の文の断片、つかの間の観察及び不完全又は非論理的な概念は取り除かれており、心に乱れはない。これが、覚醒時の文脈である。
【0144】
この脳エミュレーションにおける日々の活動も同じようにして開始する。初期の傾向は、通常、イベントキュー14からのイベントを指定時刻に遂行することよって確立される日常の活動リストの助けを求めることである。活動は、人間の生活及びこの脳エミュレーションの両方において他の外部の手段によって開始することもできる。表5は、朝に活動を開始する態様のいくつかの例を列挙するが、そのリストは当然、決して包括的ではない。
【0145】
【表5】

【0146】
上記の条件はいずれも、文、イベントに基づくコマンド及び処理されるべき他の情報の形をとるニューロン参照のブロックを配置する。解析器/相関器10が、本発明の手段を変更することなく、ハードコード化されたロジックとして、コマンドインタープリタの一形態として、又は内蔵プロセッサとして実装できることは当業者には理解されよう。
【0147】
[解析器/相関器の活動結果]
その動作の結果として、解析器/相関器10は、表6の活動のいずれかを含むことができる。そのリストは、結果のタイプを指示しており、包括的ではなく、実施態様の都合によって拡張することができる。これによって、本特許の手段が変更されないことは当業者には理解される。
【0148】
【表6】

【0149】
表6の要素のほかに、解析器/相関器30は、現在の会話又は質問の主題、なされた質問に対する未完の回答の状態、運動技能活動の保守及び完了状態等の、多数のリストを保持し、更新する。情報及びコマンドの主な発生源は、文脈プール10の現在の内容に由来する。
【0150】
[文脈プールコマンド]
文脈プール10内には、情報及び事実が、ニューロン参照、すなわちニューロンのインデックスとして一般的な形で格納される。状態パラメータ20及び文脈プールコマンドはいずれも、ニューロンのインデックスの専用の下位の値(dedicated lower values)として符号化される。それらのコマンドの長さは可変であり、それらのインデックスの後に長さ及び補助的な情報が続く。
【0151】
数多くの合成されたコマンドが、言語解析器50による文の構文解析から導出される。文から、それぞれがニューロンの参照で補完された多数のコマンドを抽出することができる。暗示される主語、動詞又は目的語は、関連するニューロンへの参照で分解される。多数の主語、動詞又は目的語を有する文の場合、その文の内容が複製され、たとえば、主題リスト内の要素毎に1つずつ複製される。
【0152】
文脈プール10において見いだされるいくつかのコマンドが_Ref90637160〜に与えられる。そのリストは例示であり、包括的ではない。そのリストは、本開示のシステムの手段を変更することなく拡張できることは当業者には理解されよう。
【0153】
【表7】

【0154】
便宜上、文脈プール内の全てのデータ構造はニューロン参照のように見える。
【0155】
実行コマンドは常に、音声又は文法解析器、解析器/相関器、推測器、ドリーマ等のその発生源によってフラグを立てられる。解析器は後に、その思考又は意思決定過程においてコマンドを適用する際に、その発生源を考慮する。意味解析器50からの例示的なコマンドが以下に与えられており、これらの特定のコマンドは文タイプに基づいている。
【0156】
[平叙(declarative)231]
これは主題についての現在の条件を考慮するための命令である。それは、経験過程の一部にすることもでき、最終的には、ニューロン−ニューロン又はニューロン−状態パラメータ関係の生成で終了する。このコマンドは通常、文の構文解析によって生成されるが、解析器30内の思考過程によって生成されることもできる。
【0157】
平叙の結果として、いずれ確認し直した上で、且つ推測器70の動作を通して、関係を記憶にとどめることができる。すなわち、平叙は、「話半分に受け取られ」、意見の出所の信用を考慮する。定義233は既に事実の出所であるとみなされており、情報を記憶にとどめる前に、その情報の信頼性(確実性)だけを確認される必要があるという点で、平叙は定義233とは異なる。
【0158】
たとえば、「大きな納屋からねずみを駆除するのにねこが4匹いれば十分である("Four cats are sufficient to eliminate mice from large barns")」は平叙文であり、それは、仕事を成し遂げるのに何匹のねこを要するかを述べる。解析器30は、その陳述を事実であると仮定して記憶にとどめる前に、その所見の出所の信用を考慮し、その情報を確認し直すか否かを考慮するであろう。
【0159】
命令232は、脳エミュレーションに何かをさせるように、たとえば、提案を検討させる、注意を払わせる、何かを思い出させる、又は不十分な情報で問題に対する解決策を推測させるように、解析器30に指示する。それは、脳エミュレーションに向けられる、或るタイプの動作のためのコマンドである。
【0160】
「ここへ来なさい!('Come here!')」のようなコマンドは、現在の文脈において評価されなければならない。それは、運動技能リストを起動して物理的な動きを開始することを暗示し、話し手の場所を目標にする。後者は文脈プール内に存在しない場合があり、状態パラメータ内に保持される。この場合、解析器30は、タスクリスト13を介して、運動技能を誘導する。その際、たとえば、完了待ちイベント142を発行し、このコマンドをメモリから捨てることができる。後に、完了メッセージ(又は命令を実行する上での大きな壁又は他の障害に直面したことの記録)を受信し、そのコマンドを終了する。
【0161】
定義233は、(強化メモリ11内の)事実の定義を指示し、補助的な条件付き関係情報を含むことができる。例「ねこは4本の脚がある動物であり、その脚のうちの前の2本は一般的に前脚と呼ばれる("A cat is an animal with have four paws, of which the front two are commonly called forepaws")」は、複合的な陳述である。その陳述は共通の話題を共有し、個別の定義233(「ねこは4本の脚がある動物である」("A cat is an animal with four paws"))節及び平叙231(「前にあるねこの脚は一般的に前脚と呼ばれる」("The front cat paws are commonly called forepaws"))節を有する。意味解析器50は、その複合文を、節毎に別のコマンドに分離する。
【0162】
平叙231の部分「ねこは4本の脚がある動物である("A cat is an animal with four paws")」は、「ねこ」(Cat)、「動物」(Animal)及び「脚」(Paws)が未だ知られていない場合には、これらのニューロンを定義する。「動物」又は「脚」の意味が知られていない場合であっても、それらは依然として記憶にとどめられることができ、それらの間に後に適当な関係を形成することができる。これらは、まだ強化メモリ内に存在せず長期メモリにおいても知られていない場合には、全て強化メモリ11に記録される。
【0163】
既に強化メモリ11内にある場合には、永久に記憶できるようにするために、それらの存在が確認し直される。話し手が非常に正直な人である場合には、その事実を強化するのに時間はかからない。そのシステムがプリエンプティブトレーニングモードにある場合には、これらは、おそらく神から与えられる素朴な事実であると仮定され、直ちに、且つ永久に記憶にとどめられる。
【0164】
平叙231部分「前にある(ねこの)脚は一般的に前脚と呼ばれる("The front (cat) paws are commonly called forepaws")」も定義を形成するが、定義節の場合よりもさらに念入りに確認され直さなければならない(構文解析は既に実行されているので、文の冒頭において定義される明示的な主題は既に、意味解析器50によっても、後続の節に関連付けられている)。
【0165】
定冠詞('The')が存在しているので、その節は、定義233ではなく、平叙231である。これは、その参照が、一般的な「ねこ」という動物に対してではなく、特定のねこに対してなされているためである。当業者は英文法のこれらの緻密なところを承知しており、その文法を用いて、文の意図及びタイプをいかに決定できるかを承知している。
【0166】
疑問234は、質問及び要求を述べる。これらは通常、文法意味パーサ50によって文脈プール10内に入れられるが、他の出所からの疑問を用いることもできる。多くの(全てとは限らない)質問は単に、質問が指示されている平叙陳述であり、多くの場合に、簡単な平叙文を編成し直すことによって形成される。
【0167】
パーサ50は、それらの質問を、確認(はい/いいえ)を要求する質問又は特定の情報を求める質問に分類し、それらの質問を、妥当性を確認するように指示される平叙231として、又は情報を提供する応答を要求する命令234として、文脈メモリに与える。いずれの場合でも、解析器30は、後者の形式を得るために、質問に対する応答を形成することができるような質問として指示されたデータ構成体だけを見る。
【0168】
便宜上、他の内部コマンドも追加され、解析器30は概ねフォンノイマンプロセッサの形をとり、その場合、「プログラム」は英語パーサから、又は他のブロックからのコマンドストリームである。
【0169】
共通のメモリ12を共有する脳エミュレータと通信する際に、それらの解析器30は、「要約された」コマンドブロックを、このエミュレータの文脈プールに直に転送することができる。外部インターフェース98を介して外部世界と通信する場合には、解析器30はコマンドブロックを、そこで構文解析するための英文にフォーマットし直し、インターフェース93を介して英語を受け取る。
【0170】
[ニューロン及び文脈プール]
条件文は、特定のニューロン(又はニューロンの組み合わせ)が発火されることを期待する。状態パラメータ20及び23は擬似ニューロンであり、割り当てられた全てのニューロンより前に存在する。それらのパラメータはニューロンとして取り扱われ、最も小さなインデックスID番号を割り当てられるが、それらのパラメータのために生成される関係(経験)連結を持たない。全ての発火しているニューロンのID(状態パラメータを除く)は、発火の度合いを含む、そのニューロンに特有のいくつかの情報とともに、文脈プール内に保持される。
【0171】
もはや発火していない、文脈プール10内の経時変化したニューロンは、通常「睡眠」中に、プールメモリから削除される。依然として発火しているが、文脈プール内で再確認されていないか、又は再発火されていないニューロンは、その時点の文脈を確立すること以外に、影響しないであろう。たとえば、それらのニューロンは、条件付きテストの対象にすることができるか、又は構文解析される文の文脈上の意味を変更することができる。
【0172】
[単方向関係]
関係が単方向である場合、「原因となる」ニューロンに結び付けられる関係はイベントを発行するが、指定された条件が真である場合だけである。単方向関係の場合、AはBを暗示するが、BはAを暗示しない。いずれの場合でも、その関係は条件付きであり、同じく発火している他のニューロンにおいて叙述されることができる。図10を参照すると、関連連結1253は、関係によって影響を受けるニューロン内で生成される。
【0173】
[双方向関係]
関係が双方向である場合、関係の両側にあるニューロン又は状態パラメータがイベントを発行するであろう。指定されたいずれの条件も満たされない場合には、イベントは発火されない。双方向関係の場合、AはBを暗示し、BはAを暗示する。いずれの場合でも、その関係は条件付きであり、同じく発火している他のニューロンにおいて叙述されることができる。図10を参照すると、関係連結1253は、その関係内の両方のニューロン内に生成され、それぞれが他方を参照する。
【0174】
[イベントを発行する関係]
ニューロンが最初に発火する(又は再確認される)とき、解析器30は、結び付けられる関係のリストを走査する。それらの関係は、オプションでORマーカによって分離される、AND接続されるリストとして編成される。それらの関係のうちの1つが失敗するまで、又はORマーカに達するまで、連続した関係が評価される。1つの関係が失敗すると、後続の関係は、次のORマーカまで、又はそのリストの最後まで無視される。
【0175】
失敗時に、ORマーカに達すると、失敗条件がリセットされ、ORが無視され、ORの直後の関係においてテストが再開する。
【0176】
失敗後、最初にリストの終わりが見出される場合には、イベントは生成されない。ORを見つけること(又は、全ての先行するテストが成功している場合に、リストの終わりを見つけること)は、全てのAND接続される関係条件が満たされたことを暗示するので、イベントが生成される。条件付きの関係はNOTでフラグを立てられ、その関係が成功するためには、その条件の逆が真でなければならないことを暗示することができる。
【0177】
[他の内部リスト]
解析器/相関器30は、短期メモリ内に、状態パラメータ22のリストに類似の情報の他のリストを保持し、それらのリストも所定のニューロンのブロックとして取り扱われる。これらのリストは、本特許内の他の箇所で説明されており、以下のようなリストを含む。
議論の話題
進行中の運動活動
その完了が待たれているイベント
文に適用する複数の目的語
文に適用する複数の動詞
【0178】
上記のリストが決して包括的ではないこと、及び本発明の方法を変更することなく、上記のリストの論理的配置又は物理的配置を変更することができるか、又はリストを追加することができることは当業者には理解されよう。
【0179】
[ニューロン接続を渡り歩くこと]
新たなコマンドが文脈プール10に追加されるとき、それは通常、存在の事実又は条件を表すニューロンへの参照を含む。通常、そのコマンドは2つ以上のニューロンを参照するであろう。そのような各参照は、そのニューロンも「プール内に」持ち込むか、又は既に文脈プール内にあるニューロンを再確認する。
【0180】
単にニューロンを参照することによって、解析器30は、あまり強く発火していない場合であっても、そのニューロンを文脈プール内に持ち込む。定義節から等のいくつかのコマンドブロックは、発火のレベルを大幅に高める。比較的短い持続時間にわたって同じニューロンを何度も参照することによっても、100%レベルまで、発火レベルが高められる。
【0181】
たとえば、人の顔の認識は、その人のIDを文脈プールに持ち込み、その認識の確信度に応じて関連するニューロンを発火する(たとえば、「あそこにいるのはジャッキー『かもしれない』」)。その直後に、同じ人の声を聞くことによって、その識別の確信度が増す。それゆえ、その人のニューロン(ID)の発火は、もしかしたら65%から95%まで高まるかもしれない。その人とのやりとりが継続している間は、その人のIDは、文脈プール内に存在し続ける。
【0182】
[関係情報の相関]
プール内のニューロンが発火するとき、既知の関係によって、他のニューロンが暗示されることがある。たとえば、現時点で「鳥かご」又は「南米」のいずれかが文脈プール内にある場合には、「緑」及び「動物」は「オウム」を暗示するかもしれない。そうではなく、「沼地」が発火している場合には、「アリゲータ」が発火するかもしれない。解析器/相関器30は、開始された参照を文脈プール10の中に蓄積し、スケーリングされた接続重みによって指定されるようにニューロン発火を更新する。
【0183】
そのように関係によって開始された発火の場合に、発火レベルは、参照しているニューロンの値(たとえば、「緑」、「動物」又は「沼地」)、及び関係接続において与えられる重みによって制御される。すなわち、「フロリダ」(「沼地」を暗示するかもしれない)が弱く発火している場合には、他に「沼地」を直に活性化するものがなくとも、「アリゲータ」ニューロンが弱く発火するであろう。解析器30は実効的には、全ての発火しているニューロンの接続の中を渡り歩くことによって相関器としての役割を果たし、条件付き関係によって発火が抑制されない限り、他のニューロンを覚醒させる。
【0184】
図7を参照すると、「犬」121及び「興奮」122がいずれも発火している場合には(たとえば、構文解析された文から推測される情報)、それらへの参照が文脈プール10内に入れられる。図7の関係は、ニューロン123を介して、犬がほえるという予想を設定するであろう。互いに異なる場合もある重み124が、121及び122の発火レベルによってそれぞれ乗算される。結果として生成される発火がいずれも、或る最小意思決定閾値を超える場合には、AND演算125によって、一般的な犬−ほえ声ニューロン123が発火する。その際、ニューロン123への参照が文脈プール内に挿入され、おそらく運動技能イベントを開始し、たとえばほえ声を引き起こす。本発明の手段を変更することなく、図7の数多くの変形を実現できることは当業者には明らかであろう。
【0185】
再び、解析器10によって、経時的に再確認されていないか、又は再発火されていない任意のニューロンが、その発火レベルを徐々に下げられる。その後、そのニューロンが0に移行する場合には、文脈プールから除去される。そのニューロンがまだ発火しているが、長時間にわたってそこにあり、文脈プールが満杯である場合には、そのニューロンもメモリから捨てられる。
【0186】
[長期及び強化メモリ]
強化メモリは、物事を学習し、記憶にとどめる過程の中間点である。全ての新たな情報及び関係が強化メモリにおいて確立され、それは、後に思い出すだけの十分に重要な要素のためのフィルタとしての役割を果たす。解析器30がこの過程を処理する。
【0187】
強化メモリ11は、除去しなければ永久メモリを無益に混乱させることになる、本質的でない事実、関係及び出来事を除去する手段である。これによって、長期メモリ12が最終的に増大するのが緩和され、心的過程及び記憶がより効率的に保たれる。
【0188】
私たちが直面する情報及び経験の多くは偶発的であり、記憶するに値しない。たとえば、風に吹かれている紙が何かの拍子に認識されても、おそらく、その文脈が宣伝ビラの配布でもない限り、その出来事は取るに足らないので記憶にはとどめられない。もしそうであれば考えてみる価値があるかもしれない。強化メモリ11は、この情報が価値を再確認されるか、又は忘却される間の一時的な保管場所である。他の箇所で説明されたように、解析器30は、妥当性を確認された事実及び関係を長期メモリに永久に移す。
【0189】
長期メモリ12及び強化メモリ11は、多かれ少なかれ、共通のフォーマットを共有する。ニューロン及び関係の割当ては、完全に解析器30によって取り扱われ、永久保存を左右するポリシーは解析器30に属する。
【0190】
21日間にわたって繰返し参照されたか、又は強い感情又は外傷を受けている間に繰返し参照されたとき、情報が、解析器30によって「記憶可能である」ものと許可される。そのように妥当性を確認されると、解析器30はその情報を長期メモリ12に移す。図8を参照すると、関連する関係も、強化メモリ11から長期メモリ側に移される。いずれのメモリも、以下の要素から成る。
IDテーブル126
ニューロンのテーブル125
他のエミュレータ特有のテーブル
【0191】
「他の」テーブルは専用テーブルを含む。この専用テーブルは、単一のニューロンに関連付けられており、運動技能タスクリスト、聴覚的又は視覚的な人為産物、又は対象物等を思い出すために用いられる。それらのテーブルのフォーマットは、それらのテーブルを生成するエミュレータタイプ(たとえば、視覚、音声又は運動技能)に特有であるが、それらのテーブルは、通常のニューロンのための標準的な処理及び相関ルールに従う。
【0192】
ニューロンそのものは特別ではない。むしろ、それは、他のニューロンに対する位置及び相互接続から意味及び価値を獲得する。たとえば、「ラップトップ」ニューロンはそれだけでは意味はないが(綴り、発音及び視覚的な形状は除く)、「コンピュータ」、「ポータブル」及び「便利」に対する関係から重要性を有する。
【0193】
以下のセクションは、エミュレータ構造の1つの具体的な実施態様を説明する。実施態様の技術は本明細書において記述される手段に対する補助的なものであることは当業者には理解されよう。これらの要素の多くは、ソフトウエアエミュレーション、FPGA、ゲートアレイ、内蔵プロセッサ、アナログ関係アレイ又は光ロジックのように、実施態様の根底を成す技術が異なるのに応じて、小変更されるか、又は様々に実装されるであろう。
【0194】
[IDテーブル]
図8を参照すると、どのニューロンも、そのものには何の意味もないシリアル番号127を割り当てられる。別のニューロンへの各関係接続は、その不変のシリアル番号をIDとして用いる。そのIDから、綴り、発音及び他の関連する情報が得られる。
【0195】
メモリがデジタルメモリとして実装されるとき、IDテーブル126は、そのメモリの一番下(base)に配置され、所定の、且つ限定された論理空間を消費することが好ましい。そのテーブルは、考え得る全ニューロンについて1つの要素を有するような大きさにされる。実際には、メモリは、さらに多くのテーブルが物理的に利用できるようになるのに応じて、サイズを変更することができ、適当なオフセットがテーブル126内のID毎の解決(resolution)値に適用される。インデックス127毎に、IDテーブル126内への対応するオフセットは、ニューロンテーブル125内のニューロンのアドレスを含む。
【0196】
単語だけを考慮する場合、30,000語の語彙が許容できる作業サイズである。或る人々にとって、300,000語までの固有の単語が知られている。記憶にとどめられるべき各概念、たとえば「off the wall」は、それらの単語をもたらすような、その自らのインデックス、記憶にとどめられるイベント又は条件を有する。各単語は、ニューロンテーブル125内の固有のニューロン記録1250に対応する。
【0197】
経験は、その自らのインデックスを有する場合も、そうでない場合もあるが、それは経験が何であるか、及び経験がいかに形成されたかによる。そのために、たとえば、800万〜2000万、又はそれ以上の要素から成るインデックステーブル126を有することが現実的である。
【0198】
[ニューロンのテーブル]
図9を参照すると、ニューロン1250が、固定サイズの情報ブロック1251、及び可変の数の関係接続記録1252によってエミュレートされる。後者は条件付きであり、他のニューロンの状態において叙述されることができる。それらは、そのターゲット及び条件付きニューロンの両方のIDインデックス127を参照することができる。ニューロン間の関係連結を直に形成することができるような、さらに適したハードウエアメモリ技術を利用できる場合、これらの技術に依存する連結−ポインタ構造は不必要であるかもしれないので、なくすことができるか、又は置き換えることができる。
【0199】
基本情報1251は、明白な綴り(たとえば、単語のためのテキストツリーに対する逆探索インデックス)、発音例外、視覚物体記述子等への参照を含むことができる。語彙的な内容のための特定のフラグ及び開始インデックス等もここに含まれる。
【0200】
「関係」1252は、2つのニューロン間の連結である。それは、ニューロンと状態パラメータとの間の連結の場合もある。関係は本質的に単方向又は双方向の場合があり、指定された1組の条件が満たされた場合にのみ実行されることができる。関係は、生物学的な神経細胞の樹状突起によって概ね示唆される。
【0201】
デジタルメモリにおいて実装されるとき、関係はニューロン記録1251の固定長部分の直ぐ後の空間内に割り当てられることが好都合である。通常、そこには、関係記録挿入を見越して、空所が予約される。新たな関係を挿入する前に、解析器30は、十分な空間があるかを調べ、十分な空間がない場合には、より大きな空間でニューロン全体を割り当て直す。
【0202】
関係詳細ブロック1252の長さは可変であり、それは、他のニューロンに対してなされる関係接続のタイプ及び数による。全(デジタル)メモリが16メガバイト〜2又は3ギガバイトを消費する可能性があることは理屈に合わないことではない。
【0203】
関係1252はAND−OR編成を有する。AND接続される関係記録は、ニューロンの固定長部分の後に1つにまとめられる。
【0204】
図10を参照すると、特定のターゲットID1256が、一般的にOR条件を表すように定義され、その「関係」記録の残りの部分は無視される。この説明の他の箇所で述べられたように、特定のニューロンIDが、このような特別の目的のために予約される。同様に、重み1257の特定の値は、禁止条件を指示するために予約され、それらの重みそのものは負であり、認識のレベル、すなわち発火レベルを低減することができる。
【0205】
関係1253自体は単方向性である。その関係が一部を構成するニューロン1250は、ターゲットID1256によって参照されるニューロンが発火する程度まで発火される。しかしながら、このニューロン1250の発火は、これとは異なり、ターゲットID1256に影響を及ぼさない。たとえば、「草」は「緑」を暗示するかもしれないが、「緑」は「草」を暗示しない。
【0206】
関係が双方向性である条件の場合、解析器30は、2つのニューロンそれぞれに、お互いを指す適した関係を生成する。これは、ソフトウエアの二重連係リスト(doubly-linked list)に類似である。
【0207】
このニューロンの別のニューロンへの、重み付けされ、且つ条件付きの影響は、関係連結1252によって定義され、ニューロンによっては、それは1000まで、又はそれ以上存在する場合がある。学習される新たな経験及び関係はそれぞれ、そのために生成される新たな関係連結を有する。ニューロン関係メモリ空間のガーベージコレクション(garbage collection)及び管理は、本特許の他の箇所で説明される。
【0208】
最初に、新たなニューロン1250及び関係は、強化メモリにおいて生成され、それらは、後に妥当性が確認されて長期メモリに移されるまで、又は削除されるまで、そこに留まる。強化メモリ内の関係1252は、いずれかのメモリ内のニューロンを参照することができるが、長期メモリ内の関係は、長期メモリ12内の他のニューロンしか参照することができない。解析器30は、他の箇所で詳細に説明されるように、割当て、経時変化、妥当性確認及び「ガーベージコレクション」過程を追跡する。
【0209】
[他のテーブル]
純粋なニューロン又は関係1250のほかに、強化メモリ及び長期メモリはいずれも、他のカプセル化された情報を保持することができる。これらのデータブロックは、通常のニューロンのように取り扱われ、参照されるが、複合的で、複雑なエンティティを後に効率的に思い出すための拡張構造を含む。これらのデータブロックのそれぞれの詳細が、その関連するニューロンの記述と合わせて説明される。
【0210】
景色及び音を認識するためのニューロン過程は、再構成相関(reconstructive correlation)によって行われ、参照画像又は音を既知の対象物又は音と照合する。メモリの格納は、実際にサンプリングされた音又はピクセル化された画像が格納されないという点で「再構成的」である。むしろ、「参照対象物」(比較のための)を再構成するだけの十分な情報が記憶にとどめられる。その際、格納される画像及び音は、それに関する詳細な情報ではなく、対象物の人為産物のリストから成る。一致又は類似の度合いが、ニューロン発火レベルを決定する。
【0211】
いくつかの共通の支援テーブルのリストについて表8を参照されたい。このリストは決して完全ではなく、本発明の手段を変更することなく、そのような情報をテーブルに編成するための数多くの方法があることは当業者には理解されよう。
【0212】
【表8】

【0213】
視覚対象物の「認識」及び「再現」は異なる過程であり、個別に最適化されなければならない。生物学的機能は、人間がビットマップ画像のような細部を格納しないことを示唆する。それでも、人間は詳細な対象物を確実に認識することができ、それを目にするときに、正確に特定することができる。格納されたテーブル情報から相関テンプレートが再現され、適当な相関器に適用される。これには、たとえば、画像を特定するための視覚相関器によって用いるためのベクトル骨格構造(vector skeleton)を用いることができる。ニューロンは、一致の度合いに比例して発火する。
【0214】
[イベントキュー及びメモリ14]
「イベント」は、キュー14に発行される専用コマンドである。それらのイベントは、指定された遅延後に、又は指定された1組の条件が満たされた後に、特定の時刻において後に実行するための候補にされる。それらのイベントは、文脈プールメモリ10内の情報において望ましくないループ処理を回避する手段である。
【0215】
イベントは単に、指定された条件が満たされるときに何かをすることをシステムに思い出させるために指定されるマーカ又はフラグである。それは、互いに同期していない動作の処理を大幅に簡単にする。解析器30が文脈プール10において新たな情報を発見するとき、解析器はイベントプール14に対して1つ又は複数の「イベント」を発行することができる。たとえば、解析器は文脈プールに戻る新たな参照を加えるイベントを生成してもよい。また解析器は、憂鬱質のような解析的な気質の場合に行われることがあるような、後に解析器自身に文脈プールを繰返し走査し直すように強要するための条件付きイベントも発行することができる。
【0216】
同じ仕組みが、ニューロン間、又はニューロンと状態パラメータとの間に条件付きの関係を確立するためにも用いられる。状態パラメータ22を変更することによって、イベントを生成することができる。将来に実行するためのイベントを発行することによって、解析器30は、実行中のタスクから逸脱するのを避ける。
【0217】
図11及び図4を参照すると、イベントキュー14は、インタプリタ140及びイベントリスト141から成る。イベントを生成することによって、イベント142が、イベントリストに挿入される。リスト内のイベント142は、図12に示されるコマンドフィールド及び他のオプションのフィールドから成る。インタプリタは、処理することができるイベントを求めて、イベントリストを繰返し走査する。それらのイベントが処理されるか否かは、「条件」及び「タイミング」フィールドによって決定される。もし存在するなら、「補助データ」フィールドは、イベントタイプに固有の情報を含む。一旦イベントが処理されたなら、そのイベントはイベントキューから除去される。
【0218】
インタプリタ140は、イベントリスト141の終わりまで走査した後に、始めから走査を再開する。処理すべきイベントが残されていない場合には、インタプリタは新たなイベントの生成を待つ。イベントキュー14が、本発明の手段を変更することなく、ハードコード化されたロジック、マイクロコード化されたプロセッサ、ソフトウエアエミュレーション、内蔵プロセッサ、FPGA、ASIC、光技術又は他の最適な技術として実装できることは当業者には理解されよう。
【0219】
[推測器70]
推測器70は、不完全な、又は部分的な事実、或いは確信度の低い事実に基づく意思決定を提案する。エミュレータのための主な思考機能は解析器30であるが、解析器は、推測器及びドリーマ75の両方のブロックから助言及び提案を受ける。推測器からの提案は、気質及び性格に基づいて、クラッタフィルタ40によってフィルタリングされる。
【0220】
文脈プール内の文データの処理中に、解析器/相関器30は、適切な場合には、適当な行動計画を決定するために、文ブロックに基づいて動作する。「期待どおりにいかない」場合には、解析器は、有効な意味を示唆する推測器を呼び出す。結果として生成される推測器出力の質があまりにも低い場合には、解析器30は、通信インターフェース98を通して、説明を求めることができる。解析器は適当なパラメータフラグを設定して、説明を求める質問への回答を待つ。
【0221】
推測器出力は、その話題の場合に相対的に低いレベルで発火している通常のニューロン参照又は感覚神経に類似である。推測器に由来するものとしてフラグが立てられる以外は、推測器70の出力は、意味解析器50によって文から推測されるデータと本質的に同じである。
【0222】
推測器は解析器30と同じようにして動作するが、現在の文脈プール内の成分だけを見ることが異なる。推測器は、解析器と同じような厳然たる事実の要求によって制限されることはなく、考慮のために主観的な情報を効果的に提供する。その提案は、以下のような場合を除いて、解析器によって概ね無視される。
情報が不足しているか、又は不完全である。
通信インターフェース98を通して解析器によってなされる質問が、予想される時間内にまだ回答されていない。
文脈プール10内の情報の全体的な確信度(発火)レベルが低い。
実際には、既存の情報から解析器30が回答を入手できないとき、解析器は推測器に問い合わせて、空所を埋める。
【0223】
その動作のために、推測器70は、文脈プール、支援テーブル及び適当な状態パラメータ23において定義されるような、未解決の質問又は問題を検討し直す。いくつかの状態パラメータが、現在の話題の主題(複数可)、尋ねられている質問、及び解析器30によって現時点で求められている情報を追跡する。これらの要素に基づいて、推測器は、文脈プール10において、発火の低いニューロン参照及びコマンドまでも走査して、解析器が求める回答を提案(推測)する。
【0224】
解析器30によって推測が重視されるかは、その推測への重み付けによって暗示される。提案が他の情報と矛盾する場合、又はより良好な(強く発火している)情報が入手可能である場合には、それらの提案は無視される。推測は急速に経時変化し、影響を与えたか否かに関係なく、文脈プールから直ぐに忘れ去られる。解析器は、推測器の「情報」源及びその確信度(発火レベル)を考慮する。その後、解析器は、その提案が必要であるか、及びデータをどの程度まで信頼できるかをはっきりさせる。拒否された推測は直ちに消去される。
【0225】
推測器70が、本発明の手段を変更することなく、ハードコード化されたロジック、マイクロコード化されたプロセッサ、ソフトウエアエミュレーション、内蔵プロセッサ、FPGA、ASIC、光技術又は他の最適な技術として実装できることは当業者には理解されよう。
【0226】
[ドリーマ75]
ドリーマ75は、本発明の脳エミュレーションの「右側」としての役割を果たす。それは、文脈プール10内のニューロン参照を詳細に調べて、その入力及び意思決定過程のために解析器30によって用いられるのとは異なる、状態パラメータのための重みを用いる。
【0227】
ドリーマは、意味解析器50からのような、厳密に構造化されたコマンドとは異なり、主に発火されたニューロン参照を文脈プールに導入することによって、解析器に影響を及ぼす。文脈プール内に以前から存在する情報が視覚又は聴覚源60に、又は視覚的なニューロン相関に由来する場合、ドリーマは、コマンドブロックの形で提案を出力することができる。
【0228】
相関器−解析器30の処理方法と同様に、ドリーマは、存在するニューロン発火に基づいて、新たな参照及びコマンドを生成する。しかしながら、ニューロン関係連鎖を横断するとき、図9に示されるように、関係条件1252には低い評価が与えられる。結果として生成される出力は、その発生源及びその発火レベルの両方によって示されるように、信頼性が低い。解析器30が活動していないか、又は睡眠モードにあるとき、ドリーマは、イベントをイベントキュー14に発行することによって、話題の主題を間接的に変更することができる。関与する「雑音」レベルに起因して、ドリーマは、話題から話題に迅速に移ることができる。またドリーマは、脳エミュレーションが「睡眠」モードにあるとき、活動したままである。
【0229】
ドリーマによって生成される文脈プールデータを後に処理するとき、解析器30は、強化メモリ11内に新たなニューロン又は関係を生成しない。睡眠モードから目を覚ますと、解析器30も、文脈プール内に残される未処理のドリーマ生成「情報」を迅速に除去する。
【0230】
それゆえ、ドリーマは、関係論理によって制約を受けない種類の「映画制作者(movie-maker)」として挙動する。それは、その時点の文脈に弱く基づいて新たな概念を生成し、その概念の寿命も、非常に急速に減衰する。このニューロン発火は、論理的又はまとまりのある態様ではないが、それでも解析器によって行われる意思決定及び解析に影響を及ぼす。
【0231】
ドリーマ75はアルゴリズムに基づいており、強く発火しているニューロンを統計的に無視し、自らの過程の一部として、発火しているニューロンに対数の重みを適用する。このようにして、ドリーマは文脈プールを詳細に調べて、ほとんど発火していないニューロンに実効的に重みを与える。
【0232】
文脈プール10内の付加的なニューロン発火の影響は、ドリーマが、解析器が有する重みよりも、全体的に大きな重みをニューロンに与えることである。活動の過程において、いくつかのニューロンが何度も参照されることに起因して、そのニューロンの発火が高められるであろう。解析器30は、ドリーマに由来するものとしてフラグを立てられた情報を適当に重み付けし、そのデータに、その通常の論理を適用し続ける。解析器が新たなアイデアを探している場合、解析器は、ドリーマによって誘発された参照を、通常よりも大きく重み付けするであろう。
【0233】
ドリーマ75は、解析器30の場合に有用な閾値よりも低い実効的な閾値において動作するので、解析器よりも「雑音」及び誤りを生じる傾向がある。その出力は、意思決定が行われる限りにおいて信頼性は低いが、その目的は異なる。非睡眠動作中に、ドリーマ擬似情報は、クラッタフィルタ40を通過し、そこで性格及び気質フィルタによって除去されることができる。非睡眠動作中、クラッタフィルタは、否定フィルタ閾値を変更することによって、より多くのドリーマ出力を除去する。
【0234】
ドリーマ75は、本発明の手段を変更することなく、ハードコード化されたロジック、マイクロコード化されたプロセッサ、ソフトウエアエミュレーション、内蔵プロセッサ、FPGA、ASIC、光技術又は他の最適な技術として実装できることは当業者には理解されよう。
【0235】
[音声及び視覚解析器60]
本発明のエミュレートされる脳は、骨格又は車両のいずれにしても、機械システムに適用することができ、リストに基づく運動技能学習機能が用いられる。タスクリストハンドラ13、イベントハンドラ14又は解析器/相関器30からのインターフェースを用いて、外部ハードウエアを制御することができる。これらのインターフェースは、閉ループフィードバックとともに用いられるときに、又はフィードバックの有無にかかわらず、特定の機械的な位置で用いられるときに、特定のレベルの力を加えるために用いることができる。
【0236】
フィードバックシステムのために用いられるセンサは、応用形態によって決定される。たとえば、テーブルに手を置くには、テーブルの高さ及び位置を予め知る必要があるか、又は両眼から導出されるようなフィードバックを必要とする。鼻又は手に適したセンサは、圧力センサであるかもしれない(人は2度以上、壁にぶつからない)。聴覚センサは、音が適当に構成されていることを確認する、たとえば存在する楽曲を音程を外さずに歌うためのフィードバックを与える。
【0237】
本発明の方法は、相関テンプレート又は提案、すなわち視覚的な画像又は音に対して相関をとるために与えられる視覚的又は聴覚的な対象物を生成する。2分探索法を用いて、相関のために適したテンプレートが選択され、認識の度合いが迅速に決定される。その相関法は、「処理されたセンサ(processed sensor)」、すなわち認識の度合いを確認するための能力を内部に有するセンサを構成する。
【0238】
処理されていないセンサは、単なる温度、圧力、湿度又は光度測定デバイスであり、その出力は単に、インターフェースに入力するのに相応しいようにフォーマットされる。処理されたセンサは解釈及び見込まれる相関を必要とし、その後に、それらのセンサは意味のある信号を生成することができる。たとえば、任意の数のアルゴリズムを用いて、視覚センサはテンプレート画像を取り込み、現在の画像の相関の度合いを返す。同様に、処理された聴覚センサは、音素の場合のようなプロトタイプを取り込み、現在の相関の度合いを返す。一致する単語が文脈プール10においてニューロン発火を有する場合には、音素変化を提案することができる。
【0239】
音声及び視覚解析器60は、13のようなタスクリスト又は他のメモリを用いて、解析器30によって提案されるような、順番に並べられた相関用の次の画像テンプレートを検索する。これらは、関連する状態パラメータの現在の設定として伝達される。たとえば、いくつかの運動技能は、テーブル、その上側表面の位置、及びそこに置かれることになる手の部分の位置を認識するために視覚的なフィードバックを要求する。また、これらの運動技能は、視覚的な相関過程によって認識されなければならない物体を選別する。
【0240】
テーブル面が特定されるとき、その位置は、テーブル上にある適当な着地点の位置、すなわち解析器30の意図及び要望によって指示される適当なエリアであるように、文脈プール10に報告されなければならない。視覚的な相関の出力は便宜的には、骨格の目の場所に対して相対的に行われ、手の動きのための補正を行うことができるようにする。
【0241】
視覚的な認識過程の場合に特に、運動技能は、位置、進行速度、距離等を求めるためのフィードバックを必要とする。単一のセンサ(たとえば、一対のカメラの「目」)から、多数のフィードバックストリームを導出することができ、その情報は、コマンド又はイベントパケットとして文脈プール10に転送される。
【0242】
視覚的及び聴覚的な手掛かりが認識の確認を助け、必要とされる運動制御のためのフィードバックを供給する。これらの手掛かりは、たとえば、頭を適当に回転させ、且つ傾けて、その後、目の左右動及び上下動を指示して、中心視覚(foviated vision)の詳細な中心が、対象となるシーンの部分の中央に置かれるようにするために必要とされる。これらの事柄は、リストプロセッサ13及び視覚/聴覚解析器60によって、相互依存的に処理される。
【0243】
発言を実際に構文解析し、文脈プール10メモリのために適した要素にするために、音声解析器60は、その出力を意味解析器50に放出する。
【0244】
当業者には知られているように、そのような処理されたセンサのために数多くの技術があることは明らかである。本発明によれば、この脳エミュレーションの機能と合わせて、テンプレート情報をセンサでインタラクティブに表現できるようになる。視覚解析器60そのものが、本発明の手段を変更することなく、ハードコード化されたロジック、マイクロコード化されたプロセッサ、ソフトウエアエミュレーション、内蔵プロセッサ、FPGA、ASIC、光技術又は他の最適な技術として実装できることは当業者には理解されよう。
【0245】
[メモリガーベージクリーンアップ及びコレクション]
「ガーベージコレクション」は、メモリの未使用の断片の再生利用を指している。この過程において、断片が見つけ出され、周囲のメモリ内の対象物が上下に動かされ、未使用の断片が、より大きな1つのブロックに融合される。融合されたブロックは後に再利用するために記憶される。
【0246】
「クリーンアップ」は、メモリを最適化するために、メモリに対してなされる必要がある全ての事柄を含むために用いられる、包括的な(catch-all)フレーズである。後に言及されるように、それは、メモリの特定のエリアのサイズを変更して、使用法を最適化し、以前に予約された空間を回収して、他の場所でさらに良好に用いることができるようにするために用いられる。
【0247】
メモリガーベージコレクション及びクリーンアップ過程は通常、メモリ内の情報の移動を含み、その移動を適切に反映するために、インデックス及びポインタも適当に更新される。
【0248】
[関連連結ブロックの拡張]
1つのニューロンが当初に、解析器30によってIDを割り当てられ、与えられるとき、関係1252のための空エリアが、基本ニューロン情報ブロック1251の後に予約される。図9及び図10を参照されたい。新たな関係が形成されるとき、関係記録1253が、上記の連結リストの終わりに追加される。最終的には、この自由空間は使い果たされ、現在の連結ブロックの終わりと次のニューロンの始まりとの間に関係を追加するための空間がなくなる。これを解決するために、明らかに何かがなされなければならない。
【0249】
[「睡眠時間」クリーンアップ活動]
「睡眠」は、短期メモリからのクラッタ、思考の中途半端な断片、推測、及び特定の他の情報要素を除去するために用いられる。この過程によって、人間と同じように、翌日が新鮮に開始できるようになる。それは、メモリの最適化を実行するのに適した低リスクの時間である。「睡眠」時間中に、脳エミュレータの非活動状態を都合よく用いて、妥当性確認済みの事実の強化メモリから長期メモリへの移動を処理することができる。この過程は、強化メモリ11の中に未使用の穴を残すが、それもクリーンアップされる。
【0250】
長期メモリ内のニューロンの再割当て中に、又は強化メモリ11から長期メモリ12内の関連するニューロンに関係を移動するとき、その関係のための空間が残されていない可能性がある。このため、長期12内のニューロンの空間は拡張されなければならないこともしばしばである。
【0251】
このため、強化メモリ11を走査して、どのニューロンが転送するのに相応しいかを決定する。空間不足によって転送が妨げられる場合には、関連する長期ニューロンメモリ記録1251のサイズが拡大される。
【0252】
利用可能な強化又は長期メモリが閾値未満まで小さくなったとき、ニューロン空間を最適化するために、「睡眠」時間中に縮小することもできる。その背後に大きな空き領域があるニューロン1251から、その領域のうちの或る量を回収することができる。ヒューリスティックスによって、サイズを縮小するか否かを決定する。メモリ内でニューロンが疎であれば常に高速に動作するので、回収は必要な場合のみ行われる。
【0253】
[到来する情報93]
2つのモデル化された個人間の「服従」の実施が解析器30において行われる。個人的な構造、政治的な構造、又は制度的な構造の階層内でモデル化される、現在の個人の位置もパラメータ23内に保持される。
【0254】
解析器/相関器30からの情報を除く全ての情報は最初に、クラッタフィルタ40を通過し、そこでは、その情報は単に無視され、捨てられる場合もある。クラッタフィルタ40は、性格特有のパラメータ22を用いて、合成された性格が、予め分類されている情報を処理することに関心があるか否かも判定する。たとえば、胆汁質は、人間興味情報を完全に無視する可能性があるのに対して、多血質はそれを進んでむさぼるように取り込む。
【0255】
フィルタ40は、その発生源の判断を含む、データに関する予備的な判断を下すために、包括的に(catch-all)用いられるエリアである。フィルタは、我慢の現在の状態を含む、多数の動的に変化するパラメータによって制御される。文脈プール10が満杯であるとき、誰かが「精神的に過負荷」の状態にある場合と同じように、フィルタ40は情報を捨てる。
【0256】
[プリエンプティブトレーニング]
本発明の脳エミュレーションは経時的に学習し、根底を成す気質によって影響を受ける。標準的な人間学習過程が、エミュレートされる脳によって用いられる。メモリが約21日間にわたって強化されていない場合には、解析器30によって永久メモリ12内に何も保持されることはなく、「値打ちのない」事実及び関係の蓄積が避けられる。学習される事実は通常、根本を成す気質の影響下で解釈され、根底を成す気質は、その暗黙のフィルタ及び解析過程(又は、多血質の場合のように、限られた解析過程)を有する。
【0257】
脳エミュレーションは、事実、制御及び環境条件を迅速に吸収するために、通常の気質及び時間過程に対して先行する(preempt)方法によって「トレーニングされる」ことができる。それゆえ、その過程は、本明細書において「プリエンプティブトレーニング」と呼ばれる。この場合、与えられる「事実」及び関係は、真実であり、事実に基づくものと予め判断され、いわば「神から与えられる」ものと仮定される。
【0258】
プリエンプティブトレーニングは、エミュレータの外部から、思いのままにオン又はオフに切り替えることができる。これらの素朴な事実及び関係の迅速なトレーニングを達成するために、プリエンプティブトレーニングをオンに切り替えて、解析器30及びクラッタフィルタ40の気質関連の意思決定ステップ及びレベルを迂回することができる。このトレーニングモードでは、それ以外の場合には許可されない、状態パラメータ及び制御へのアクセスが与えられる。トレーニングが完了するとき、これらはオンに戻すことができる。その後、変更されたパラメータは直ちに性格に影響を及ぼす。
【0259】
プリエンプティブトレーニング(「設定」)モードでは、1つ又は全てのメモリの全内容、及び選択された、又は全ての状態パラメータを外部の記憶装置にコピーすることができる。これは、「知的所有権」のような情報の商業マーケティングのための、及び他の箇所で説明されるような軍事目的のための応用形態を有する。そのような「存在のスナップショット」は他の箇所で複製され、さらにトレーニングするための基礎として用いることができる。
【0260】
[事実及び関係]
プリエンプティブトレーニング下で、テキストファイル内の平叙的な独白を用いて、又は音声解析器60が存在する場合には口語による話を用いて、新たな事実及びその事実間の予備的な関係が定義される。これらは、英散文形式で記述される。文法は英語パーサによって解釈されるが、解析器30又は推測器70によってフィルタリングされないか、又はそれ以上解釈されない。文法解釈のための通常の過程は続いて行われるが、その情報は、それ以上の、気質に基づく解釈又はフィルタリングを受けない。この手法によれば、脳エミュレーションは、明らかでないか、又は理解していない情報をトレーナに問い合わせるので、そのトレーニング過程は、知識を渇望している人間と類似のトレーニング過程になる。
【0261】
[宗教的信仰及び個人的な信念]
宗教的信仰及び個人的な信念はプリエンプティブトレーニングによって確立することができる。全てのプリエンプティブトレーニングの場合と同様に、脳エミュレーションは、これらの信仰又は信念をどのようにして持つのか全くわからないであろう。その場合でも、深い(拡張され、且つ首尾一貫した)通常のトレーニングによって、それらの進行及び信念を覆すことができる。
【0262】
信仰は、テキストファイルにおいて散文形式の記述によって設定され、脳エミュレーションによって読み出される。脳エミュレーションが何かを理解しない場合、又は何かを非論理的だと考える場合には、脳エミュレーションは、トレーナによる説明を要求するであろう。その後、その散文を変更して、今後はその質問を除外することができる。
【0263】
宗教的信仰及び個人的な信念に関して、学習することができる他のタイプの事実1251及び関係1252との根本的な違いは何もない。しかしながら、プリエンプティブトレーニングの下でそれらを定義することによって、本来なら解析器30が行う、一貫性及び事実に基づく根拠を解析的に調べる過程は迂回され、それらは、エミュレートされる脳の理解の基準となる一体化した部分にされる。宗教的信仰又は個人的な信念は確立され、長い時間にわたって、(プリエンプティブではなく)トレーニングされることができる。
【0264】
[制御パラメータ値の指定]
多くの制御パラメータ23及びそれらのデフォルト値は、プリエンプティブトレーニングによって予め設定することもできる。これは、定義された条件が満たされるときに呼び起こされることになる特定の感情的な反応も含むことができる。その結果として、再び、脳エミュレーションは、なぜそのように反応するのかわかっているのではなく、単にそのように反応する。これは、人を正確にエミュレートするために、特定の事柄に対する人間のような好き嫌いを予め設定するのに有用である。プリエンプティブトレーニングは、基本気質タイプ、及び上位の複合気質を含む、脳エミュレーションの気質を指定する方法である。これらの設定は、このエミュレーションによってなされる反応及び意思決定の結果に直に影響を及ぼすであろう。
【0265】
脳エミュレーションの学習強化が行われる期間は通常は21日であるが、気質に基づいて多少異なる所要期間をデフォルトにする。表9は、いくつかの代表的なデフォルト強化期間を与える。「永久的な」学習は、心的なストレス又は外傷の時間にも行われるが、その時間中には、この表の期間は比例して減少する。
【0266】
【表9】

【0267】
その時間が減少するとき(それはプリエンプティブトレーニングに影響を及ぼさない)、脳エミュレーションは、ささいな事柄及び重要でない情報を保持する傾向が強い。エミュレーションが動作状態になった後に、これらの事前設定は、その反応の本来備わっている不可欠な要素になる。それらは、変更されるまで、現在時刻からの先の設定を定義する。
【0268】
プリエンプティブトレーニングモードでは、コマンドに基づいて、メモリ11、12及び13並びに他のテーブルを外部記憶装置にセーブすることができる。これは、事実1251及び関係1252、及び関連するパラメータ設定22、20、並びにそれらのデフォルト値を含む。要するに、トレーニングされたものはすべて、それが由来するメモリに戻すことができる。メモリ及びパラメータ状態をセーブする方法が実施態様の技術に依存すること、及び、これらの方法を変更しても本開示のシステムが実質的に変更されないことは、当業者には理解されよう。
【0269】
本発明の脳エミュレーションを用いて、具体的な人(たとえば、軍事目的の場合には外国人)をモデル化するとき、エミュレーションのメモリ及びパラメータ設定は「スナップショット」され、新たな条件又はパラメータ設定下でシミュレーションを実行し直すことができるようにする。スナップショットと、後にそれらをリロードする時刻との間に学習されることは、(同様にスナップショットされていない場合には)失われ、追加的に取り戻して適用し直すことができない場合もある。
【0270】
[段階的な服従]
人間関係において必要な役割を果たす概念は、別の誰かへの服従の概念である。服従は、「白黒はっきりした」ものではなく、段階を持って存在する。通常、人間は、現在の条件下で、他人を顧みることなく、自分自身に都合が良い意思決定を行う。しかしながら、その人は、或る人々、たとえば両親、上司、軍隊の指揮系統等に対して特別な敬意を払う(服従する)であろう。脳エミュレータは、「段階的な服従」を用いて、この暗示される関係をエミュレートする。図13を参照すると、現在の服従要求パラメータ229が重みを与える。
【0271】
メモリ12内に複数の服従テーブル128を作成することができ、それらのテーブルは特定の文脈1283(たとえば、軍事、政治、社会階層、階級)において適用される。全ての服従テーブルは、1284及び1285のような連結を用いて連鎖される。意思決定が、意味解析器50において命令文から推測されるような外部コマンドと対立する場合には、解析器30は服従テーブルを走査して、一時的な意思決定を変更する。
【0272】
解析器30は、服従テーブルを探索して、状態パラメータ23において保持されるような、その時点の1つ又は複数の活動中の文脈を照合する。それを見つけると、解析器は、階級同一性(rank self-identity)のためのパラメータを指定する。服従のために評価される対象が別の人間である場合には、その人間のID200が代わりに用いられる。関係コンパレータ1280が、服従出力1282として、その決定を行う。決定の重み1296は、現在の服従要求229によってさらに調整される。その後、信号1296を用いて、そもそも何らかの決定が行われるべきであるか否かが判定される。このようにして、解析器30は、自らが支配されている権威からの命令に服従するか、又は対立する命令が外部権威からの勧告にすぎない場合には、決定結果に重み付けする。
【0273】
それゆえ、服従テーブル128は、脳エミュレーションに外部権威による現実的な影響を与える。たとえば、軍事環境において用いられるとき、脳エミュレータ(複数可)を管理するシミュレーションマネージャのIDが全ての服従テーブルの最上位に配置される場合には、そのマネージャはすべての脳エミュレーションにリアルタイムに制御を加えることができる。
【0274】
プリエンプティブトレーニングが、このエミュレータと他のもの(又は他の人々)との間の関係のための1組(又は複数組)の階層テーブル128を確立する。同じ散文形式の記述を用いて、「指揮系統」と、現在の脳エミュレーションがその中のどこに該当するかが記述される。
【0275】
ダウンラインの服従(すなわち、別のエミュレータ又は人がこの脳エミュレータに服従すべき条件)を確立することが許される。それは、そのエミュレータが他のエミュレータ又は人に期待することを設定する。そのような期待への違反に対する反応は、現在の脳エミュレータのために指定される基本気質に依存し、プリエンプティブトレーニング中に定義することもできる。
【0276】
[気質の実施態様]
本発明のモデルを含む、人間の心理学的な機能に関する任意のそのようなモデルによってなされる特定の仮定によって、脳機能を理解できるようになるか、又は理解するのを簡単にすることができる。適当に仮定されるとき、それらの仮定によって、そのモデルに基づいて合成される脳を迅速に生成し、実現できるようになる。それらは正しい場合も、間違っている場合も、又は誤りがある場合もあるが、そのような仮定によって、「基準」実施態様を迅速に生成できるようになる。そのような仮定は、本発明の全ての手段に影響を及ぼさない。
【0277】
図14は1つのそのような仮定、すなわち複合的な性格の構成を示す。その仮定は、人はそれぞれ、出生時に特定の1組の素質を「刷り込まれる(pre-wired)」というものであり、その素質は当業者によく知られている4つの基本タイプのうちの1つである。これらは、胆汁質、憂鬱質、多血質及び粘液質であり、古典心理学の基本的な特質の中で分類され、定義された。
【0278】
これらの基本的な素質(気質)には、個人が生きている環境から学習される1組の経験及びトレーニングが追加される。出生時素質は、本明細書において用いられるとき、まとめて「基本気質」と定義される。本発明では、その気質及び1組の経験の総体を用いて、複合的な性格が定義される。
【0279】
図15は、本発明、及びモデル、すなわち4つの古典的な気質によって表される近似的な特質によって用いられる別の仮定を示す。図2の上記の「刷り込まれる気質」201は、図15及び図16では、実際の古典的な気質名によって置き換えられる。
【0280】
図15は1つの気質タイプ、すなわち上記のような各気質に特有の典型的な特質を示す(概略であり、完全ではない)。図16は、4つの根底を成す素質気質のうちの1つにそれぞれ基づく、人々の複合的な性格を表す。
【0281】
所与の根底を成す1組の素質から成る性格は、経験及びトレーニングを通して、他の3つの気質の所望の特質を意図して取り入れようと「努力する」ことができる。その結果、複合的な性格はさらに広がる。ここで個人がモデル化されるとき、たとえば図16bの憂鬱質は、胆汁質によりよく代表される特質である決断力又は指導力を取り入れることができる。
【0282】
ここでなされる別の仮定は、人間の振舞いの理解と、この現実的な脳エミュレータの実施態様とを簡単にする。過去又は現在の経験又はトレーニングに関係なく、どの人も唯一無二の1つの基本的な根底を成す気質を有する。心的又は身体的な外傷を受けたとき、又は極端なプレッシャーを受けているとき、人(すなわちエミュレーション)によってなされる行動、振舞い、興味及び意思決定は、その人の基本気質の特徴である気質に戻る傾向がある。
【0283】
代わりに、気質及び性格の起源及び発達についての他の仮定を行うこともでき、それらが同様に有効な場合もあることは明らかである。代わりに、例示としてこれらを本明細書において用いることはできるが、しかしながら、それは本発明又はその実施形態に影響を及ぼさない。上記の仮定は、本発明の説明のための乗り物を提供し、他の方法では錯綜するであろう事柄を視覚化するための手段を提供する。
【0284】
[脳パラメータの重み付け]
図17は、先に言及された、決意する性向パラメータ222と関連付けて胆汁質パラメータ202を示す。パラメータ222の実際の値は、それぞれが自らの重みを有する、全ての4つの気質制御パラメータの現在の値の積和2421である。適用される重み2420の値は、エミュレーションにおいて選択され、固定されるが、制御気質パラメータそのものは、所望により調整することができる。
【0285】
1つの動作モードの場合、胆汁質202のような4つ全ての気質パラメータが0又は100%の値を有し、それらが互いに排他的であることが望ましい。他の動作モードの場合、4つ全ての気質パラメータのパーセンテージを0以外の値にし、合計されるときに100%になるようにすることが望ましい。これを実施するための手段の一例が、図17に示される。
【0286】
たとえば、4つの気質パラメータのパーセンテージの和が「合わせて」100%になるようにすることが好都合な場合もある。図17の例によって与えられる重み2420を用いるとき、決意する性向パラメータ222の設定は、以下の式によって与えられる。
決意する性向=50%*胆汁質+30%*多血質+15%*憂鬱質+3%*粘液質
【0287】
「擬似ニューロン」気質パラメータがいかに設定されるかを無視することによって、それらはニューラルネットワークにおける通常のニューロンとして取り扱うことができる。
【0288】
本発明によってなされる有用な仮定は、(エミュレートされる)人間が、出生時に、その人間の振舞いのための特定の気質を与える根本又は基本気質を有するというものである。経験、トレーニング及び成長によって、人間は、非基準(「刷り込まれた」)気質のうちの1つ又は複数において主に見いだされる選択された特性を獲得することができる。
【0289】
[外傷の実現]
本発明の一部には、心的なプレッシャー、或いは身体的又は心的な外傷への人間の反応の実現がある。そのような反応は、たとえば、性格が「刷り込まれた」気質によって一時的に支配されるように、そのような経験、トレーニング及び成長の影響が小さくなることとして、本明細書においてモデル化される。これは図18に示される。
【0290】
図18では、図17の要素がセレクタ241によって補われ、セレクタはその出力として、その2つの入力のうちのいずれか一方、すなわちそっくりそのまま一方又は他方を取るか、又は決定制御入力によって選択されるような各入力のパーセンテージを取る。この場合、図4によって示される標準的な動作及び記述は、パラメータ230によって示されるような心的若しくは身体的外傷又は極端なプレッシャーの下で変更される。
【0291】
この場合、セレクタ241が、気質の合計2421と決意する性向パラメータ222との間に存在し、外傷を受けているときに、その意思決定の振舞いが、代わりに、「刷り込まれた」根本気質201によって決定されるようにする。基本気質は、脳エミュレーションのための動作設定値のうちの1つとして予め選択され、おそらく「一生」変更されないが、そのような変化を妨げるものは何もない。
【0292】
外傷パラメータ230は、極端な心的プレッシャー又は外傷、或いは身体的外傷又はショックのレベルを指示する他のパラメータ又はニューロン条件を検出することによって誘発及び設定され、たとえば、外傷230は、線形、対数又は他の速度を用いて、名目上「オフ」(落ち着いた)状態又は値になるまで、時間とともに自動的に減衰するように構成される。それは標準的には、上記の条件の変化によって誘発され、その条件が持続されるか、又は再発する場合には再び誘発されることができ、その条件が取り除かれる場合には直ちに減衰するように設計することができる。
【0293】
外傷パラメータ230を誘発する条件は、図18には示されないが、実在し、パラメータ及び脳ノードの積和から成るものと仮定され、その値から外傷を検出することができる。
【0294】
[性別の取り扱い]
図18の基本的な方法は、男性と女性との間の活動の違いに拡張される。この場合、処理フローは、241及び242のような付加的なマルチプレクサ及び重み付けテーブルによって補われる。これらは、たとえば、外傷230の代わりに、性別パラメータ209によって駆動されるであろう。意思決定及び思考過程において相応しい場合、これらの付加されるものは、性別に関連する処理の違いを説明するように組み込まれる。
【0295】
[軍事又は政治シミュレーションでの使用]
本発明は人間の振舞いを正確にエミュレートすることができるので、その脳エミュレーションは、数多くの軍事的な応用形態において用途を見いだす。従来の手段を用いるとき、戦闘部隊意思決定、詳細には、宗教的信仰体系及び好戦的な政治イデオロギーによって刺激される意思決定の正確な予測モデル化を得るのは難しい。現在の非対称な戦争状態の環境では、実戦の意思決定を予測する能力は、決定的に重要性が増す。本発明の手段は、この能力を提供する。図19及び図20を参照されたい。
【0296】
これまでに記述されたような脳エミュレータ311は、テキストストリーム93の形で「話し言葉」の入力を受信し、且つ会話形式の出力テキスト98を出力するように構成することができる。TCP/IPインターフェース3112、又は1553バスの場合のような他のインターフェースを追加することによって、脳エミュレーション3110は、ローカル又はリモートネットワーク312にネットワーク接続されることができる。それは、ネットワーク接続型脳エミュレーション311になる。本開示のシステムを変更することなく、インターフェース3112の数多くの変更形態が実現可能であることは、当業者には明らかなはずである。
【0297】
ここで、これらのエミュレータのクラスタを共同で構成して、チームを形成することができる。図20では、これらのエミュレータが、戦闘部隊を予測的にモデル化するために用いることができるような、戦闘部隊シミュレーションクラスタ310として例示される。その同じ構成を、たとえば、従来の航空機搭乗員をエミュレートするために、無人機(UAV)「操縦室」において適用することもでき、それぞれが全搭乗員の中で自分の役割を果たすように具体的にトレーニングされる。同様に、それは、母船から切り離されたときに、自律的に任務を意思決定するために、無人水中機に適用することができる。
【0298】
戦闘部隊シミュレーションクラスタとして用いられるとき、作業者のシミュレーションチーム315を任命して、エミュレータ311に知能をアップロードし、モデル化された戦闘部隊において重要な人員を正確にエミュレートすることができる。モデル化された戦闘部隊が、新たな情報を入手できるようになるとき、プリエンプティブトレーニングを用いて、それらのモデルを更新することができる。
【0299】
シミュレーションクラスタにおいて用いられるエミュレーション311は、TCP/IPプロトコルの「ポート」概念を用いて、エミュレーションの中の会話を制限することができる。そのような特定のローカル通信ポートは、従来のインターネットゲートウエイ313を介して、他のそのようなクラスタによってアクセスされないようにすることができる。こうすることで、クラスタ310を用いて、互いに保護された、敵国戦闘部隊(たとえば、「赤」戦闘部隊)、未知の戦闘部隊、連合軍または友軍(たとえば、「白」又は「青」)戦闘部隊をエミュレートすることができる。
【0300】
図21に示されるように、複数のクラスタ310を相互接続して、統合戦闘部隊シミュレーションシステム31を形成することができる。シミュレーションは、シミュレーションディレクタ330の全般的な管理下にあるであろう。ディレクタ330は、ゲートウエイ313がローカルバス320を複製し且つ暗号化する専用の暗号化ポートによって、戦闘部隊クラスタ310内の内部の会話に安全にアクセスすることができる。この構成によって、ディレクタ330のシナリオ提案及び管理下にありながら、独立したシミュレーションチーム315が、互いに独立して作業できるようになる。
【0301】
シミュレーションディレクタ330は、システム31内の全ての脳エミュレーションのメモリ及び脳パラメータのスナップショットをリモートで取ることができる。そのような周期的なスナップショットを取ることによって、そのシミュレーションを、「巻き戻して」、種々のシナリオ、知能情報(intelligence information)又は更新された性格プロファイルで再開することができる。
【0302】
シミュレーションチーム315は、心理学者、及び自分たちがエミュレートする責任を担う人格、政治組織又は複合的な集団についての知識を有する人々から構成できることが好ましい。本発明によれば、宗教的信仰、道徳的信条(又はその欠如)、指揮系統及び権威、並びに人間システムを正確に予測モデル化するために必要とされる他の関連する人間情報を現実的に包含できるようになる。
【0303】
シミュレーションシステム31は、局所的な領域内に配置することができるか、又は世界中に分散して配置することができる。そのようなシミュレーションの結果は、C4ISRの一部として実際の戦闘員が利用できるようになる。
【0304】
[要約]
本発明は、電子的な形態をとり、その振舞いが人間の振舞いと容易には見分けがつかないような、人間の心理学に基づくエミュレーションのための手段を定義する。それは、気質、感情、感覚、性格及び以前の経験を取り込み、人間の思考及び意思決定過程を正確にエミュレートする。本発明は、1組の容易に定義されるパラメータとして、人間の心理学的な振舞いから気質、振舞い及び性格の要因を抽出する。こうすることで、これらのパラメータと、感情、思考及び意思決定過程との関係が、本発明の手段によって、脳エミュレーションシステムに組み込まれ、そのエミュレーションシステムは、ハードウエア(たとえばシリコン)で実装することができ、オプションで内蔵ソフトウエアによって補うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間の認識を、コンピュータが電子的な形態でエミュレートするための方法であって、
自然言語のテキスト入力又は音声入力の形で情報を受信することと、
構文解析プログラムを実行するコンピュータが、前記自然言語について格納される1組の文法ルールに基づいて、前記受信された情報を所定の語句へと構文解析することと、
前記構文解析された語句が、概念を定義するか否かを判定し、前記構文解析された語句が概念を定義する場合には、前記自然言語における他の概念に対する重み係数を、順序付けされたリストの形で生成し、ここで、前記生成された重み係数は、前記他の概念に対する重み付けされた関係を生成するために用いることができる、重み係数を生成することと、
前記構文解析された語句が質問を構成するか否かを判定することであって、そうである場合には、前記重み付けされた係数を用いて、前記質問に対する意思決定を行う、判定することと
を含む、人間の認識をコンピュータが電子的な形態でエミュレートするための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−47972(P2013−47972A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−231922(P2012−231922)
【出願日】平成24年10月19日(2012.10.19)
【分割の表示】特願2008−549459(P2008−549459)の分割
【原出願日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(507249188)
【氏名又は名称原語表記】VISEL,Thomas,A.
【住所又は居所原語表記】11250 Taylor Draper Lane #422, Austin, TX 78759, United States of America