説明

人間工学的4本レール装置および人間工学的な組立方法

【課題】部品を吊り下げて組み立てる際の作業者の安全性ならびに作業効率を高める。
【解決手段】天井等の静止構造物に取り付けられたレール12,14からなる第1搬送路11とレール16,18からなる第2搬送路13とを有し、これらのレールに計5つのキャリッジ20,22,24,26,28が案内される。各キャリッジは、ガスタービンエンジンのコアモジュール84等の部品を保持し、レールに沿って水平移動が可能であるとともに、調節可能アームにより、部品の高さ位置や回転方向の姿勢を可変調整することができる。各キャリッジによる部品の空間的位置の調整により、作業者は各部品を容易に組み立てることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、人間工学的な組立方法に関し、特に、4本レール装置を用いた人間工学的な組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
毎年、装置の作業中における作業者の安全が脅かされている。特に、ホイスト(クレーン)の作業者は、ホイスト自体の不安的な性質により、種々の怪我(致命的なものも致命的でないものもあるが)を負いやすい。最も一般的なホイストは、シングルポイント型オーバヘッドホイストであり、これは既存もしくは新設の静止構造物から吊り下げられる。作業者は、何本かのチェーンやケーブルを用いてワークをホイストに取付ないしぶら下げる必要があり、その後、十分な力を加えることで、ワークを持ち上げて空中に吊り下げることになる。この吊り下げた状態で、作業者は、部品の組立や取付のための種々の操作をワークに対し行うことができる。しかしながら、このように吊り下げられて揺れるワークは、その重心位置も不安定であり、落下したりして作業者の安全を脅かすことがしばしばあり、また、不注意による部品の取付ミスも発生しやすい。
【0003】
シングルポイント型オーバヘッドホイストによる方法は、広範な産業において用いられている。例えば、ガスタービンエンジンの製造は、エンジンを吊り下げるとともにその組立を行うために、ホイストによるこの方法を用いており、かつ、上下方向のレールや支持機構、固定ポスト、などのホイストを利用する他の機構を備えている。例えば、上記の上下方向のレールおよび支持機構は、最終的にエンジンを支持するが、エンジンをこのレールの上に効果的に配置するためには、ホイストが利用される。また、上記の固定ポストは、一般的に用いられるジャッキスタンドの上にエンジンを置く際に、同様の吊り下げ作業が必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなホイストが用いられる場面では、吊り下げられた不安定なワークが落下するかもしれないという潜在的な危険に作業者が晒されている。また作業者の安全が常に重要な事項であると同時に、エンジン自体の組立も正確かつ適切になされる必要がある。吊り下げられたエンジンは、潜在的に落下する可能性があり、あるいは不注意に他の部品や静止構造物などに衝突させたり、組み付けるべき部品を誤ってエンジン内に落下させて物理的な損傷を与えたりする虞がある。このような異物はエンジン内から取り除き、適切な組立を行う必要がある。しかしながら、異物がエンジン内に落下して内部部品に衝突すると、そのたびに、付加的な修復作業が必要となる。
【0005】
従って、組立や保守等の際にワークを吊り下げるための信頼性の高い方法および装置が求められている。
【0006】
また、作業者の安全を確保しつつ、吊り下げられたワークに作業者が必要な作業を行うことができる方法および装置が求められている。
【0007】
さらに、組立や保守等の際にワークを吊り下げる方法および装置として、よりコストが低くかつ作業効率が高いものが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る人間工学的4本レール装置は、ある表面より上方の静止物に取り付けられ、2つもしくはそれ以上の方向への動きを許容するように設計された2つ以上の搬送路と、上記の2つ以上の搬送路に配置され、2つ以上の方向に沿って動くように設計された1つあるいは複数のキャリッジと、を備え、各キャリッジは、上記搬送路から上記表面の上方に吊り下げられ、かつ、ワークを所定位置に保持するとともに、該ワークの少なくとも4方向への移動を許容することを特徴としている。
【0009】
本発明に係る人間工学的に装置を組み立てる方法は、ある表面の上方の静止物に取り付けられた2つ以上の搬送路に関連して配置された5つ以上のキャリッジを設け、上記の5つ以上のキャリッジの1つあるいは複数にワークを配置し、上記ワークを含んだ各キャリッジを空間位置の関係で互いに位置決めし、上記キャリッジを利用して上記ワークを互いに組み立て、上記装置を構成する、ことを特徴としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
通常はホイストの使用を必要とするような製品の組立に用いられる人間工学的4本レール装置を、以下説明する。この装置およびこれを用いた方法は、組み立てるべき製品の部品を保持するいくつかのキャリッジを吊り下げる複数のレールシステムを利用している。キャリッジは、製品を組み上げる部品の保持、操作、および姿勢の調整のために、複数の自由度の動きが可能である。従って、1人あるいは複数人の作業者は、部品同士の組立を行い、さらに、キャリッジ内に吊り下げられた部品の組立を行うことができる。水平位置に配置した状態で製品の組立を行うことが可能である。作業工程の全体に亘って、部品の垂直方向の位置、軸方向の位置、回転方向の向きを、個々にあるいは組み合わせた形で動かすことにより、吊り下げられた部品を囲む作業領域が人間工学的に最適化される。上記キャリッジの回転可能な特徴により、非対称のターボマシンの組立も容易に行うことができ、かつ、各部品とコアモジュールの高さを可変的に調整できるとともに、それぞれの中心線を自由に操作できることから、コアモジュールへ各部品を順次重ねていくことができる。この人間工学的4本レール装置を用いる本発明の方法は、部品やモジュールのレベルでの組立工程のみに限定されるものではなく、種々の製造やオーバホールなどに適用が可能である。
【0011】
各キャリッジは、ワーク、詳しくは組み立てるべき製品の部品を受け取るとともに保持する機能を基本的に有する。本出願において「保持する」とは、期間中、部品を所定位置に固定的に確保する機能、部品を所定位置に持っている機能、そして、部品の重量を支承ないし負担する機能、を意味するものと理解すべきである。各キャリッジは、上述した各々の方向に互いに独立して動作でき、例えば千分の数インチの精度で精密に動き、また、レールに沿って、個々に、あるいは互いに組み合わさった形で、種々異なる速度で動くことができる。各キャリッジは、約10000ポンドまでの重量物を保持することができる。キャリッジは、単独もしくは互いの組み合わせにおける整列関係を自己調整するとともにレールに沿った走行を行うために、論理システムおよび制御モジュールを備えることができる。この種の論理システムおよび制御モジュールとしては、ウィスコンシン州のミルウォーキーに本社があるロックウェル・オートメーション社の一部門であるアレン・ブラッドレー社から商業的に入手可能である。
【0012】
図1〜図9は、本発明に係る人間工学的4本レール装置10を示している。この人間工学的4本レール装置は、特に図1に示すように、基本的に、静止構造物(図示せず)つまり天井もしくはトラスのような静止構造物に取り付けられたレール12,14を含む第1搬送路11とレール16,18を含む第2搬送路13とを有し、各レール12,14,16,18は、1つあるいは複数のキャリッジ20,22,24,26,28を受けることができ、これらのキャリッジ20,22,24,26,28をある表面(図示せず)の上方に吊り下げている。各レール12,14,16,18は、各キャリッジ20,22,24,26,28に設けられた相補形状の係合構造を受ける係合構造を備えていてもよい。第1搬送路11と第2搬送路13とは互いに独立して動作し得る。
【0013】
図2〜図8に基づいてキャリッジ20,22,24,26,28をさらに詳細に説明すると、図6に示すように、第1キャリッジ20は、本体30と、この本体30に取り付けられ、かつレール16,18の係合構造に対し相補形状をなす1つあるいは複数の係合構造32と、部品34を上記表面の上方に吊り下げるとともに該部品34を4方向もしくはそれ以上の方向へ動かす手段と、を備えている。相補的な係合構造32はレール16,18内に配置され、レール16,18によって許容される方向および可動範囲で第1キャリッジ20が動くことができるようになっている。好ましくは、レール16,18により許容される方向および可動範囲では、第1キャリッジ20が水平に動く。しかしながら、この動きは、第1キャリッジ20に関する作業者の位置に応じて異なる特性となり得る。例えば、部品34(第1キャリッジ20に配置されている)のいずれかの側方に立っている作業者は、第1キャリッジ20が、レール16,18内で矢印36で示すような左から右への方向および右から左への方向へ水平に動き得るように透視する。一方、部品34(第1キャリッジ20に配置されている)の前面に立っている作業者は、第1キャリッジ20が、レール16,18内で同じく矢印36で示すような前後方向へ水平に動き得るように透視する。部品34を吊り下げて動かす手段としては、調節可能アーム38を含み、このアーム38は、本体30に関連して位置する第1端部40と部品34に関連して位置する第2端部42とを有する。調節可能アーム38は、部品34を下方の上記の表面との関係で矢印44で示すように垂直方向上方ならびに下方へ動かし得る。あるいは、調節可能アーム38は、ピボットマウント、スイベルマウント、回転マウント、ボールジョイント、などの360°の回転を許容する機構を介して本体30に配置され、矢印46で示すように、本体30に対し時計回り方向および反時計回り方向に回転する。
【0014】
図2に示すように、第2キャリッジ22は、本体50と、この本体50に取り付けられ、かつレール12,14の係合構造に対し相補形状をなす1つあるいは複数の係合構造52と、部品54を上記表面の上方に吊り下げるとともに該部品54を6方向もしくはそれ以上の方向へ動かす手段と、を備えている。第1キャリッジ20の係合構造32について上述したように、相補的な係合構造52はレール12,14内に配置され、レール12,14によって許容される方向および可動範囲で第2キャリッジ22が動くことができるようになっている。レール12,14によって許容される方向および可動範囲としては、上述した矢印36の方向や範囲を含む。部品54を吊り下げて動かす手段としては、本体50側の第1端部58および部品54側の第2端部60を有する第1調節可能アーム56と、本体50側の第1端部64および部品54側の第2端部66を有する第2調節可能アーム62と、部品54を受け入れることができる実質的に円環状のハーネス68と、を備えている。上記本体50は、U字形をなすクロスバー74を有し、このクロスバー74に上記の第1調節可能アーム56および第2調節可能アーム62が接続されている。実質的に円環状のハーネス68は、部品54を同心円状に保持し、中心線72を中心として、矢印70で示すように、時計回り方向および反時計回り方向への部品54の回転が許容される。当業者には理解できるように、この円環状のハーネス68は、ロールオーバリングとして知られているものである。部品54がこの実質的に円環状のハーネス68内に配置された状態で、部品54はその下面側を露出させるように中心線72の回りに回転することができ、これにより、作業者は、部品54の下方へ潜り込むことなしに、部品54の下部構造の作業を行うことができる。実質的に円環状のハーネス68は、さらに、下半部68Aおよび上半部68Bを備えていてもよく、キャリッジ22が部品54を所定位置に安全に保持しつつ、下半部68Aを部品54から分離することができる。キャリッジ22は、さらに、その動きが他のキャリッジに関連し、かつ各キャリッジの全ての動きの方向が互いに整合したものとなるように設計された電子装置を備えている。
【0015】
図3に示すように、第3キャリッジ24は、本体80と、この本体80に取り付けられ、かつレール16,18の係合構造に対し相補形状をなす1つあるいは複数の係合構造82と、部品84を上記表面の上方に吊り下げるとともに該部品84を4方向もしくはそれ以上の方向へ動かす手段と、を備えている。相補的な係合構造82はレール16,18内に配置され、レール16,18によって許容される方向および可動範囲で第3キャリッジ24が動くことができるようになっている。好ましくは、レール16,18により許容される方向および可動範囲では、矢印36で示すように、第3キャリッジ24が水平に動く。前述したように、この動きは、第3キャリッジ24に関する作業者の位置に応じて異なる特性となり得る。部品84を吊り下げて動かす手段としては、調節可能アーム88を含み、このアーム88は、本体80に関連して位置する第1端部90と部品84に関連して位置する第2端部92とを有する。調節可能アーム88は、部品84を下方の上記の表面との関係で矢印44で示すように垂直方向上方ならびに下方へ動かし得る。あるいは、調節可能アーム88は、ピボットマウント、スイベルマウント、回転マウント、ボールジョイント、などの360°の回転を許容する機構を介して本体80に配置され、矢印46で示すように、本体80に対し時計回り方向および反時計回り方向に回転する。
【0016】
図5に示すように、第4キャリッジ26は、本体100と、この本体100に取り付けられ、かつレール12,14の係合構造に対し相補形状をなす1つあるいは複数の係合構造102と、部品104を上記表面の上方に吊り下げるとともに該部品104を6方向もしくはそれ以上の方向へ動かす手段と、を備えている。相補的な係合構造102はレール12,14内に配置され、レール12,14によって許容される方向および可動範囲で第4キャリッジ26が動くことができるようになっている。レール12,14によって許容される方向および可動範囲としては、上述した矢印36の方向や範囲を含む。部品104を吊り下げて動かす手段としては、本体100側の第1端部108およびハーネスサポート120側の第2端部110を有する第1調節可能アーム106と、本体100側の第1端部114およびハーネスサポート120側の第2端部116を有する第2調節可能アーム112と、部品104を受け入れることができる実質的に円環状のハーネス118と、を備えている。前述したように、第1調節可能アーム106および第2調節可能アーム112は、上記表面に対し垂直方向上方および下方へ移動可能であるとともに、矢印36で示すように、レール12,14によって許容される方向に水平に動くことができる。
【0017】
上記ハーネスサポート120は、クロスバーを有し、このクロスバーの第1端部が上記第1調節可能アーム106の第2端部110に接続されているとともに、該クロスバーの第2端部が上記第2調節可能アーム112の第2端部116に接続され、両者間に、実質的に円環状のハーネス118用のマウント部が設けられている。前述したように、実質的に円環状のハーネス118は、部品を同心円状に保持し、中心線72を中心として、矢印122で示すように、時計回り方向および反時計回り方向への部品の回転が許容される。当業者には理解できるように、この円環状のハーネス118は、ロールオーバリングとして知られているものである。前述したように、部品がこの実質的に円環状のハーネス118内に配置された状態では、部品はその下面側を露出させるように中心線72の回りに回転することができ、これにより、作業者は、部品の下方へ潜り込むことなしに、部品の下部構造の作業を行うことができる。実質的に円環状のハーネス118は、さらに、下半部118Aおよび上半部118Bを備えていてもよく、キャリッジ26内に部品を所定位置に安全に保持しつつ、下半部118Aを部品から分離することができる。
【0018】
図8に示すように、第5キャリッジ28は、本体130と、この本体130に取り付けられ、かつレール16,18の係合構造に対し相補形状をなす1つあるいは複数の係合構造132と、部品134を上記表面の上方に吊り下げるとともに該部品134を6方向もしくはそれ以上の方向へ動かす手段と、を備えている。相補的な係合構造132はレール16,18内に配置され、レール16,18によって許容される方向および可動範囲で第5キャリッジ28が動くことができるようになっている。レール16,18によって許容される方向および可動範囲としては、上述した矢印36の方向や範囲を含む。部品134を吊り下げて動かす手段としては、第1調節可能アーム136および第2調節可能アーム146を含む。上記第1調節可能アーム136は、本体130側の第1端部138および部品134側の第2端部140を有するとともに、部品を上記表面と平行な中心線142の回りに回転させる手段を部品134側に有し、上記第2調節可能アーム146は、本体130側の第1端部148および部品134側の第2端部150を有するとともに、部品を上記表面と平行な中心線142の回りに回転させる手段を部品134側に有する。上記の回転手段によって、部品134は、矢印152で示すように、時計回り方向および反時計回り方向に回転可能である。前述したように、第1調節可能アーム136および第2調節可能アーム146は、矢印44で示すように、上記表面に対し垂直方向上方および下方へ移動可能であるとともに、矢印36で示すように、レール16,18によって許容される方向に水平に動くことができる。
【0019】
ここでは、人間工学的4本レール装置10の機能等の説明のために、航空機用ガスタービンエンジンの組立に利用する場合を例にして説明するが、これは、本発明をこれに限定する趣旨ではない。また、ガスタービンエンジンの組立は下記の1つあるいは複数の工程を含むが、ここで説明する人間工学的4本レール装置を用いた工程は代表的なものに過ぎず、これらの工程のみを含むものではない。組立工程の全体を通して、各部品の垂直高さ位置や水平位置および回転位置は、人間工学的な作業領域を維持するように連続的に調整され得る。
【0020】
図1に示すように、人間工学的4本レール装置10は、レール12,14,16,18が、ある表面(図示せず)の上方となるように静止構造物(図示せず)に取り付けられており、各キャリッジ20,22,24,26,28は、それぞれの係合構造を介してこれらのレールから吊り下げられる。コアつまり部品54は、キャリッジ24によって受け取られるように配置される。このコアは、少なくとも、タービンとコンプレッサと燃焼器とが既に組み立てられたものである。コアは、適宜な搬送装置、例えば、CAPTAMスタンド、搬送カート、サイド搬送カート、などの搬送装置(これらに限定されるものではない)によって、キャリッジ24の真下に配置される。例えば、この例では、コアを所定位置にするためにキャプタンスタンド160が利用される。キャリッジ24がコアを受け取ると、キャリッジ24は、コアが円環状のハーネス68によって同心状に収容されるようにコアをキャリッジ22に挿入する。キャリッジ24は、レール16,18を利用して、矢印36で示す方向に動きつつ、キャリッジ22と係合する位置となる。コアがキャリッジ22によって受け取られると、コアは、水平方向(矢印36)、垂直方向(矢印44)および中心線72を中心とした回転方向(矢印70)に動くことができ、作業者はコアの表面に完全にアクセスすることができる。
【0021】
そしてキャリッジ22は、各キャリッジが垂直方向および水平方向に互いに整列しているか判定し、適切な整列状態が達成されていることを示す信号を出力する。整列状態が確認されると、キャリッジ24は、他の部品、例えば低圧タービンモジュール(部品84)、上部ファンダクト(部品162)、下部ファンダクト(部品164)など(これらは必ずしも必要とは限らない)を、コアとの組立のために受け取る(図4参照)。前述したように、これらの部品は、上述した搬送装置の1つあるいは組み合わせ、例えばサイド搬送カート168などを用いて、キャリッジ24によって受け取られる位置に配置される。その後、キャリッジ24は、上述した搬送装置などを用いて配置されたオーグメンタダクト(部品104)を受け取る。キャリッジ24は、キャリッジ26と係合し、オーグメンタダクトが円環状のハーネス118内に同心状に配置されるように、オーグメンタダクトをキャリッジ24内に挿入する。そして、キャリッジ26はオーグメンタダクトを保持し、作業者は、オーグメンタダクトを、垂直方向および水平方向さらには矢印122で示す中心線72回りの回転方向に位置決めすることができる(図5参照)。
【0022】
ファンモジュール(部品34)は、上述した搬送装置の1つを用いて、キャリッジ20に受け取られるように配置される。キャリッジ20は、ファンモジュールをキャリッジ26に保持されたコア(部品54)と組み立てるために、矢印36で示す方向の少なくとも一方に沿ってキャリッジ22と係合する。
【0023】
ノズル(部品134)は、上述した搬送装置の1つを用いて、キャリッジ28に受け取られるように配置される。キャリッジ28は、ノズルをキャリッジ26に保持されたオーグメンタダクト(部品104)と組み立てるために、矢印36で示す方向の少なくとも一方に沿ってキャリッジ26と係合する。
【0024】
外部配管、制御装置、アクセサリギヤボックス166、さらには図示しないが前述した組立工程に含まれるような他の部品は、当業者に理解されるように、作業者の視野に対し人間工学的に”理想的な”角度および垂直位置でもって取り付けられる。
【0025】
上記に列挙した組立工程の間およびその後、ガスタービンエンジンの重量は、主にキャリッジ24,26によって支持され、これにより、キャリッジ22は、当業者により決定されるある点で離れることができる。実質的に円環状のハーネス118の下半部118Aは、ガスタービンエンジンから離れるようにキャリッジ26から取り除くことができる(図9)。ガスタービンエンジンは、未だキャリッジ24,26によって安全に保持される。そして、ガスタービンエンジンは、矢印44で示すように、所定の表面へ向けて降ろされ、前述した搬送装置の上に降ろされる。
【0026】
以上、本発明の一実施例を説明したが、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、形態、大きさ、部品の配置、動作の詳細、などについて種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る人間工学的4本レール装置の斜視図。
【図2】第2キャリッジに保持されたコアモジュールの斜視図。
【図3】第3キャリッジに保持された低圧タービンモジュールの斜視図。
【図4】(A)は第3キャリッジとともにファンダクトを示す斜視図、(B)はこのファンダクトを第3キャリッジに対し位置決めする搬送カートの説明図。
【図5】オーグメンタダクトを収容した第4キャリッジの斜視図。
【図6】搬送カート上のファンを第1キャリッジが受け取る状態の斜視図。
【図7】ギヤボックスの斜視図。
【図8】ノズルを収容した第5キャリッジの斜視図。
【図9】図1の人間工学的4本レール装置からエンジンを取り外すときの状態を示す斜視図。
【符号の説明】
【0028】
12,14,16,18…レール
20,22,24,26,28…キャリッジ
38…調節可能アーム
56…第1調節可能アーム
62…第2調節可能アーム
68…実質的に円環状のハーネス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある表面より上方の静止物に取り付けられ、2つもしくはそれ以上の方向への動きを許容するように設計された2つ以上の搬送路と、
上記の2つ以上の搬送路に配置され、2つ以上の方向に沿って動くように設計された1つあるいは複数のキャリッジと、
を備え、各キャリッジは、上記搬送路から上記表面の上方に吊り下げられ、かつ、ワークを所定位置に保持するとともに、該ワークの少なくとも4方向への移動を許容することを特徴とする人間工学的4本レール装置。
【請求項2】
上記の2つ以上の搬送路は、上記表面の上方の静止構造物に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の人間工学的4本レール装置。
【請求項3】
上記の2つ以上の搬送路は、上記キャリッジの相補形状の係合構造を受けるとともに該搬送路に沿った移動を許容するように設計された係合構造を有することを特徴とする請求項1に記載の人間工学的4本レール装置。
【請求項4】
上記キャリッジとして、第1キャリッジ、第2キャリッジ、第3キャリッジ、第4キャリッジおよび第5キャリッジを含むことを特徴とする請求項1に記載の人間工学的4本レール装置。
【請求項5】
上記第1キャリッジは、
本体と、
上記本体に取り付けられ、上記搬送路の係合構造に対し相補形状をなす1つあるいは複数の係合構造と、
上記ワークを上記表面の上方に吊り下げるとともに該ワークを4方向もしくはそれ以上の方向へ動かす手段と、
を備えていることを特徴とする請求項4に記載の人間工学的4本レール装置。
【請求項6】
上記のワークを吊り下げるとともに動かす手段は、上記本体側に設けられた第1端部と上記ワーク側に設けられた第2端部とを有する調節可能アームを含むことを特徴とする請求項5に記載の人間工学的4本レール装置。
【請求項7】
上記調節可能アームは、上記表面に対し垂直方向上方および下方へ可動であるとともに、上記搬送路に対し水平方向に可動であり、かつ上記本体の軸線に対し時計回り方向および反時計回り方向に可動であることを特徴とする請求項6に記載の人間工学的4本レール装置。
【請求項8】
上記第2キャリッジは、
本体と、
上記本体に取り付けられ、上記搬送路の係合構造に対し相補形状をなす1つあるいは複数の係合構造と、
上記ワークを上記表面の上方に吊り下げるとともに該ワークを6方向もしくはそれ以上の方向へ動かす手段と、
を備えていることを特徴とする請求項4に記載の人間工学的4本レール装置。
【請求項9】
上記のワークを吊り下げるとともに動かす手段は、上記本体側に設けられた第1端部と上記ワーク側に設けられた第2端部とを有する第1調節可能アームと、上記本体側に設けられた第1端部と上記ワーク側に設けられた第2端部とを有する第2調節可能アームと、上記ワークを受けることができる実質的に円環状のハーネスと、を備えることを特徴とする請求項8に記載の人間工学的4本レール装置。
【請求項10】
上記第1調節可能アームおよび上記第2調節可能アームは、上記表面に対し垂直方向上方および下方へ可動であるとともに、上記搬送路に対し水平方向に可動であることを特徴とする請求項9に記載の人間工学的4本レール装置。
【請求項11】
上記の実質的に円環状のハーネスは、上記ワークを同心円状に受容するとともに保持することを特徴とする請求項9に記載の人間工学的4本レール装置。
【請求項12】
上記の実質的に円環状のハーネスは、エンジン中心線を中心にした時計回り方向および反時計回り方向の回転が可能であることを特徴とする請求項9に記載の人間工学的4本レール装置。
【請求項13】
上記第1調節可能アームおよび上記第2調節可能アームは、クロスバーを介して上記本体に接続されていることを特徴とする請求項9に記載の人間工学的4本レール装置。
【請求項14】
上記第3キャリッジは、
本体と、
上記本体に取り付けられ、上記搬送路の係合構造に対し相補形状をなす1つあるいは複数の係合構造と、
上記ワークを上記表面の上方に吊り下げるとともに該ワークを4方向もしくはそれ以上の方向へ動かす手段と、
を備えていることを特徴とする請求項4に記載の人間工学的4本レール装置。
【請求項15】
上記のワークを吊り下げるとともに動かす手段は、上記本体側に設けられた第1端部と上記ワーク側に設けられた第2端部とを有する調節可能アームを含むことを特徴とする請求項14に記載の人間工学的4本レール装置。
【請求項16】
上記調節可能アームは、上記表面に対し垂直方向上方および下方へ可動であるとともに、上記搬送路に対し水平方向に可動であり、かつ上記本体の軸線に対し時計回り方向および反時計回り方向に可動であることを特徴とする請求項14に記載の人間工学的4本レール装置。
【請求項17】
上記第4キャリッジは、
本体と、
上記本体に取り付けられ、上記搬送路の係合構造に対し相補形状をなす1つあるいは複数の係合構造と、
上記ワークを上記表面の上方に吊り下げるとともに該ワークを6方向もしくはそれ以上の方向へ動かす手段と、
を備えていることを特徴とする請求項4に記載の人間工学的4本レール装置。
【請求項18】
上記のワークを吊り下げるとともに動かす手段は、上記本体側に設けられた第1端部とハーネスサポート側に設けられた第2端部とを有する第1調節可能アームと、上記本体側に設けられた第1端部と上記ハーネスサポート側に設けられた第2端部とを有する第2調節可能アームと、上記ハーネスサポートと、上記ワークを受けることができる実質的に円環状のハーネスと、を備えることを特徴とする請求項17に記載の人間工学的4本レール装置。
【請求項19】
上記第1調節可能アームおよび上記第2調節可能アームは、上記表面に対し垂直方向上方および下方へ可動であるとともに、上記搬送路に対し水平方向に可動であることを特徴とする請求項18に記載の人間工学的4本レール装置。
【請求項20】
上記の実質的に円環状のハーネスは、上記ワークを同心円状に受容するとともに保持することを特徴とする請求項18に記載の人間工学的4本レール装置。
【請求項21】
上記の実質的に円環状のハーネスは、エンジン中心線を中心にした時計回り方向および反時計回り方向の回転が可能であることを特徴とする請求項18に記載の人間工学的4本レール装置。
【請求項22】
上記ハーネスサポートは、上記第1調節可能アーム側の第1端部と上記第2調節可能アーム側の第2端部とを有するクロスバーを備え、このクロスバーの両端部の間に、上記の実質的に円環状のハーネス用のマウントを有することを特徴とする請求項18に記載の人間工学的4本レール装置。
【請求項23】
上記第1調節可能アームおよび第2調節可能アームは、U字形クロスバーによって上記本体に接続されていることを特徴とする請求項17に記載の人間工学的4本レール装置。
【請求項24】
上記第5キャリッジは、
本体と、
上記本体に取り付けられ、上記搬送路の係合構造に対し相補形状をなす1つあるいは複数の係合構造と、
上記ワークを上記表面の上方に吊り下げるとともに該ワークを6方向もしくはそれ以上の方向へ動かす手段と、
を備えていることを特徴とする請求項4に記載の人間工学的4本レール装置。
【請求項25】
上記のワークを吊り下げるとともに動かす手段は、上記本体側に設けられた第1端部とワーク側に設けられた第2端部と上記表面と平行な軸を中心にワークを回転する手段を有する第1調節可能アームと、上記本体側に設けられた第1端部とワーク側に設けられた第2端部と上記表面と平行な軸を中心にワークを回転する手段を有する第2調節可能アームと、を備えることを特徴とする請求項24に記載の人間工学的4本レール装置。
【請求項26】
上記第1調節可能アームおよび第2調節可能アームの上記回転手段は、時計回り方向および反時計回り方向への回転が可能であることを特徴とする請求項25に記載の人間工学的4本レール装置。
【請求項27】
上記第1調節可能アームおよび上記第2調節可能アームは、上記表面に対し垂直方向上方および下方へ可動であるとともに、上記搬送路に対し水平方向に可動であることを特徴とする請求項25に記載の人間工学的4本レール装置。
【請求項28】
上記第1調節可能アームおよび上記第2調節可能アームは、クロスバーを介して上記本体に接続されていることを特徴とする請求項25に記載の人間工学的4本レール装置。
【請求項29】
上記ワークは、タービンエンジンの部品を含むことを特徴とする請求項1に記載の人間工学的4本レール装置。
【請求項30】
上記キャリッジは、互いに相互作用するように設計されていることを特徴とする請求項1に記載の人間工学的4本レール装置。
【請求項31】
上記キャリッジは、互いに相互作用するように人間工学的に設計されていることを特徴とする請求項1に記載の人間工学的4本レール装置。
【請求項32】
上記搬送路として、4本の搬送路を含むことを特徴とする請求項1に記載の人間工学的4本レール装置。
【請求項33】
装置を人間工学的に組み立てる方法であって、
ある表面の上方の静止物に取り付けられた2つ以上の搬送路に関連して配置された5つ以上のキャリッジを設け、
上記の5つ以上のキャリッジの1つあるいは複数にワークを配置し、
上記ワークを含んだ各キャリッジを空間位置の関係で互いに位置決めし、
上記キャリッジを利用して上記ワークを互いに組み立て、上記装置を構成する、ことを特徴とする組立方法。
【請求項34】
各キャリッジ内の各々のワークの向きを操作することを含むことを特徴とする請求項33に記載の組立方法。
【請求項35】
4つの搬送路に関連して5つのキャリッジを設けることを特徴とする請求項33に記載の組立方法。
【請求項36】
上記のワークの配置として、第1のワークを第1キャリッジに、第2のワークを第2キャリッジに、第3のワークを第3キャリッジに、第4のワークを第4キャリッジに、第5のワークを第5キャリッジに、配置することを特徴とする請求項33に記載の組立方法。
【請求項37】
上記の位置決めは、
上記第1キャリッジを上記第2キャリッジに関連した位置に動かし、
上記第2キャリッジを上記第1キャリッジおよび第3キャリッジに関連した位置に動かし、
上記第3キャリッジを上記第2キャリッジおよび第4キャリッジに関連した位置に動かし、
上記第4キャリッジを上記第3キャリッジおよび第5キャリッジに関連した位置に動かし、
上記第5キャリッジを上記第4キャリッジに関連した位置に動かす、ことを含むことを特徴とする請求項33に記載の組立方法。
【請求項38】
上記の各キャリッジの移動は、各キャリッジを互いにかつ搬送路に対して水平方向に動かすことを含むことを特徴とする請求項37に記載の組立方法。
【請求項39】
上記のワークの組立は、
上記第1キャリッジ内に配置された第1のワークの位置を、第2キャリッジ内に配置された第2のワークの位置に対して、1つあるいは複数の方向に位置決めし、
上記第2のワークの位置を、上記第1のワークの位置および上記第3キャリッジ内に配置された第3のワークの位置に対して、1つあるいは複数の方向に位置決めし、
上記第3のワークの位置を、上記第2のワークの位置および上記第4キャリッジ内に配置された第4のワークの位置に対して、1つあるいは複数の方向に位置決めし、
上記第4のワークの位置を、上記第3のワークの位置および上記第5キャリッジ内に配置された第5のワークの位置に対して、1つあるいは複数の方向に位置決めし、
上記ワークおよびキャリッジの各々を、互いに対応する位置へと動かし、装置を構成するようにワークを互いに組み立てることを特徴とする請求項33に記載の組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−51008(P2007−51008A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−171350(P2006−171350)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
【Fターム(参考)】