説明

介入実施による真の効果の評価方法及び装置

【課題】擬薬を投与する患者集団や健康増進活動を施さない対象者集団などのコントロールの集団の使用を不要にするか又は減少させることができる、介入による効果の評価方法を提供する。
【解決手段】介入前に、介入対象集団の各個人についてそれぞれその健康に関する事項を実測して、介入対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値と標準偏差を求め、前記標準偏差を使用して、介入対象集団の平均への回帰に相当する値である「平均への回帰分」を推定する。介入後に、介入対象集団の各個人について同様に実測して、介入対象集団の全体の平均値を求める。介入前後で平均値の差を求め、この値と「平均への回帰分」とを比較して、前記介入対象集団への介入による真の効果を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臨床での医薬品や職場や地域での健康増進活動などの様々な介入実施の効果を評価するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、新規薬剤の導入時には、医療機関において、新規薬剤の投与(介入)を受ける患者の集団と、外見上は新規薬剤と見分けがつかないが有用物質を含んでいない擬薬を擬薬と知らせられないまま投与される患者の集団(コントロール群)との2つの集団に分けて、それぞれの集団に対して所定期間投与を続けた後に、それぞれの集団について投与前と投与後の病気に関する事項の測定値を比較することにより、薬剤の摂取による効果が薬剤の効果として真に意味のあるものかどうかを判断するという治験を行っている。
【0003】
また、従来より、地域や産業現場(職場)において運動や食生活改善や禁煙運動などの新たな健康増進活動(介入)を導入するかどうかを決定する場合には、健康増進活動(介入)を行う対象者の集団と、健康増進活動(介入の実施)を施さない対象者の集団(コントロール群)とに分けて、所定の介入実施後に、それぞれの集団について介入実施後と介入実施前の高血圧や高脂血症などの健康に関する事項の測定値を比較することにより、健康増進活動(介入)の効果を評価することが必要だとされている。
【0004】
また、従来より、各患者の臨床データを各患者ごとにデータベースに蓄積し、それらを解析・評価して各患者への医療措置にフィードバックさせるシステムが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−95650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、新薬の効果を評価するために、新薬の治験において、擬薬を投与する(介入を施さない)コントロール群に擬薬と知らせないまま所定量の擬薬を投与することは、人道上の観点などから大きな問題があった。
【0006】
また、地域や産業現場での健康増進活動の効果を評価するために、地域や産業現場において、健康増進活動(介入)を施さない対象者の集団(コントロール群)すなわち従来と何も生活習慣を変えない対象者の集団を確保し、その集団に検査だけをしてもらい、数ヶ月後にもう一度同じ検査を行うことは、そのような検査に応じてくれる対象者は極めて少ないため、実際上、非常に困難であった。
【0007】
また、前記特許文献1に示すようなコンピュータシステムを活用して各患者の臨床データを活用することだけでは、前述のような新薬や健康増進活動の真の効果の評価を行うことはできなかった。
【0008】
本発明はこのような従来技術の問題点に着目してなされたものであって、擬薬を投与する患者集団や健康増進活動を施さない対象者集団などのコントロール群の使用を不要にするか又は減少させることができる、介入実施による真の効果を評価する方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述のような課題を解決するための本発明による介入実施による真の効果の評価装置は、「所定期間内における定期的な所定量の薬剤の投与、所定期間内における定期的な所定量の運動、所定期間内における摂取する栄養素の種類及び量の変更、及び、所定期間における定期的な喫煙量の減少、の中の少なくとも一つ」を実施する前の実施対象集団の各個人それぞれの健康に関する事項を実測した結果を入力するための第1入力手段と、前記第1入力手段により入力された実測結果に基づいて、前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値を求めるための第1演算手段と、前記第1演算手段により求められた前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値を記憶するための第1記憶手段と、前記第1入力手段により入力された実測結果に基づいて、前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差を求めるための第2演算手段と、前記第2演算手段により求められた前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差を記憶するための第2記憶手段と、前記第2記憶手段から読み出した前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差を使用して、前記実施前の実施対象集団の平均への回帰に相当する値である「平均への回帰分」を推定するための推定手段と、前記実施の後の前記実施対象集団の各個人それぞれの健康に関する事項を実測した結果を入力するための第2入力手段と、前記第2入力手段により入力された実測結果に基づいて前記実施後の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値を求めるための第3演算手段と、前記第3演算手段により求められた前記実施後の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値を記憶するための第3記憶手段と、前記第1記憶手段から前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値を読み出すと共に、前記第3記憶手段から前記実施後の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値を読み出して、両者の差を求めるための第4演算手段と、前記第4演算手段から出力された前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値と前記実施後の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値との差と、前記推定手段から出力された前記実施前の実施対象集団の「平均への回帰分」とを比較するための比較手段と、前記比較手段による比較結果を出力するための出力手段と、を備えた、コンピュータシステムにより実現される、実施対象集団への介入実施による真の効果の評価装置である。
【0010】
また、前述のような課題を解決するための本発明による介入実施による真の効果の評価方法は、第1入力手段により、「所定期間内における定期的な所定量の薬剤の投与、所定期間内における定期的な所定量の運動、所定期間内における摂取する栄養素の種類及び量の変更、及び、所定期間における定期的な喫煙量の減少、の中の少なくとも一つ」を実施する前の実施対象集団の各個人それぞれの健康に関する事項を実測した結果を入力する第1ステップと、第1演算手段が、前記第1入力手段により入力された実測結果に基づいて、前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値を求め、これを第1記憶手段に記憶する第2ステップと、前記第2ステップと同時又は相前後して、第2演算手段が、前記第1入力手段により入力された実測結果に基づいて、前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差を求め、これを第2記憶手段に記憶する第3ステップと、推定手段が、前記第2記憶手段から読み出した前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差を使用して、前記実施前の実施対象集団の平均への回帰に相当する値である「平均への回帰分」を推定する第4ステップと、前記ステップ2、ステップ3、及びステップ4の少なくともいずれか一つと同時に又は相前後して、第2入力手段により、前記実施の後の実施対象集団の各個人それぞれの健康に関する事項を実測した結果を入力する第5ステップと、前記ステップ2、ステップ3、及びステップ4の少なくともいずれか一つと同時に又は相前後して、第3演算手段が、前記第2入力手段により入力された前記実施の後の前記実施対象集団の各個人それぞれの健康に関する事項の実測結果に基づいて、前記実施後の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値を求め、これを第3記憶手段に記憶する第6ステップと、第4演算手段が、前記第1記憶手段から読み出した前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値と前記第3記憶手段から読み出した前記実施後の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値との差を求める第7ステップと、比較手段が、前記第4演算手段から出力された前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値と前記実施後の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値との差と、前記推定手段から出力された前記実施前の実施対象集団の「平均への回帰分」とを比較する第8ステップと、前記比較手段から出力された比較結果をディスプレイなどの出力手段により出力する第9ステップと、を含む、コンピュータシステムを使用した、実施対象集団への介入実施による真の効果の評価方法である。
【0011】
なお、図1は、前記の本発明による真の効果の評価方法のために使用される真の効果の評価装置の一実施形態を示す概念ブロック図である。図1において、1は、「所定期間内における定期的な所定量の薬剤の投与、所定期間内における定期的な所定量の運動、所定期間内における摂取する栄養素の種類及び量の変更、及び、所定期間における定期的な喫煙量の減少、の中の少なくとも一つ」を実施する前の実施対象集団の各個人それぞれの健康に関する事項を実測した結果を入力するための第1入力部である。2は、前記第1入力部1により入力された実測結果に基づいて、前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値を求めるための第1演算部である。3は、前記第1演算部2により求められた平均値を記憶するための第1記憶部である。4は、前記第1入力部1により入力された実測結果に基づいて、前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差を求めるための第2演算部である。5は、前記第2演算部4により求められた前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差を記憶するための第2記憶部である。6は、前記第2記憶部5から読み出した前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差を使用して、前記実施対象集団の平均への回帰に相当する値である「平均への回帰分」を推定するための推定部である。7は、前記実施の後の実施対象集団の各個人それぞれの健康に関する事項を実測した結果を入力するための第2入力部である。8は、前記第2入力部7により入力された実測結果に基づいて前記実施後の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値を求めるための第3演算部である。9は、前記第3演算部8により求められた前記実施後の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値を記憶するための第3記憶部である。10は、前記第1記憶部3から前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値を読み出すと共に、前記第3記憶部9から前記実施後の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値を読み出して、両者の差を求めるための第4演算部である。11は、前記第4演算部10から出力された前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値と前記実施後の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値との差と、前記推定部6から出力された前記実施前の実施対象集団の「平均への回帰分」とを比較するための比較部である。12は、前記比較部11による比較結果を出力するためのディスプレイなどの出力部である。
【0012】
また、本発明の介入実施による真の効果の評価装置又は方法において、介入実施が個人の血圧や中性脂肪などのように「値が低下又は減少することに意義を持つ測定項目」の改善を目的とするものである場合は、前記推定手段は、次のような手順により前記実施前の実施対象集団の「平均への回帰分」を推定するものである、ことが望ましい。
(1)「全ての測定対象者が真の値よりも参加時の測定値が高い又は多いために参加した」という仮説を立てると共に、仮想の個人における測定値の真の値からの偏差(u)を次のように予め定義しておく。
=(Xi−μi)/σ
この式において、Xは仮想の個人の測定値、μは仮想の個人の真の値、σは前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差である。
(2)前記uは正規分布をとることから、平均=0,標準偏差=1の正規乱数1個を、仮想の個人が持つ測定値の真の値からの偏差uとして、発生させる。
(3)上記(2)の正規乱数1個を、「測定値が真の値よりも高い又は多い個人が集団へ参加する確率が高い」とする次の推定式のuに代入することにより、前記偏差uを持つ仮想の個人が上記(1)の仮説を満たす仮想の集団Rに参加する確率rateを求める。
参加する確率rate=1/(1+exp(−a×u))
この式において、expは指数関数、aは定数である。
(4)0〜1の乱数(rとする)1個を、前記偏差uを持つ仮想の個人を前記仮想の集団Rに参加させるかどうかを決めるためのカットオフ値として、発生させる。
(5)上記(3)で求めた前記参加する確率rateを、上記(4)で発生させたカットオフ値としてのrと比較し、rate>rのときだけ、前記偏差uを持つ仮想の個人を、仮想の集団Rを構成する仮想の個人として、採用する。
(6)上記(2)から(5)までの作業を、コンピュータを使用して複数回繰り返す。これにより、上記(1)の仮説を満たすような集団、すなわち測定値が真の値よりも高い又は多い仮想の個人が参加する仮想の集団Rを模擬的に作成する。
(7)上記(6)で模擬的に作成した上記仮想の集団Rに含まれる仮想の各個人の測定値Xの真の値μからの偏差uの、上記仮想の集団R全体の平均uaveを、求める。
(8)上記(1)の式に基づいて、上記の仮想の集団Rの「平均への回帰分」であるΔを、次式により求める。
Δ=仮想の各個人の測定値Xの仮想の集団R全体の平均Xave−仮想の各個人の真の値μの仮想の集団R全体の平均μave=仮想の各個人の測定値の真の値からの偏差uの仮想の集団R全体の平均uave×前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差σ
(9)上記(2)から(8)までの作業をコンピュータを使用して複数回実施し、それぞれの実施で求められた各Δの平均値を求め、このΔの平均値を、前記実施対象集団の「平均への回帰分」と推定する。
【0013】
また、本発明の介入実施による真の効果の評価装置又は方法において、実施が個人の血圧や中性脂肪などのように「値が低下又は減少することに意義を持つ測定項目」の改善を目的とするものである場合は、前記推定手段は、次のような手順により前記実施前の実施対象集団の「平均への回帰分」を推定するものである、ことが望ましい。
(1)「全ての測定対象者が真の値よりも参加時の測定値が高い又は多いために参加した」という仮説を立てると共に、仮想の個人における測定値の真の値からの偏差(u)を次のように予め定義しておく。
=(Xi−μi)/σ
この式において、Xは仮想の個人の測定値、μは仮想の個人の真の値、σは前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差である。
(2)演算手段Aが、前記uは正規分布をとることから、平均=0,標準偏差=1の正規乱数1個を、仮想の個人が持つ測定値の真の値からの偏差uとして、発生させ、これを記憶手段Aに記憶させる。
(3)演算手段Bが、上記(2)で発生した正規乱数1個を前記記憶手段Aから読み出して、この正規乱数1個を、「測定値が真の値よりも高い又は多い個人が集団へ参加する確率が高い」とする次の推定式のuに代入することにより、前記偏差uを持つ仮想の個人が上記(1)の仮説を満たす仮想の集団Rに参加する確率rateを求め、これを記憶手段Bに記憶させる。
参加する確率rate=1/(1+exp(−a×u))
この式において、expは指数関数、aは定数である。
(4)演算手段Cが、0〜1の乱数(rとする)1個を、前記偏差uを持つ仮想の個人を前記仮想の集団Rに参加させるかどうかを決めるためのカットオフ値として、発生させ、これを記憶手段Cに記憶させる。
(5)演算手段Dが、上記(3)で求めた前記参加する確率rateを前記記憶手段Bから読み出して、これを、上記(4)で発生させ前記記憶手段Cに記憶させておいたカットオフ値としてのrと比較し、rate>rのときだけ、前記偏差uを持つ仮想の個人を、仮想の集団Rを構成する仮想の個人として、採用し、これを記憶手段Dに記憶させる。
(6)制御手段が、前記演算手段A,B,C,及びDを制御して、上記(2)から(5)までの作業を複数回繰り返し、これにより、上記(1)の仮説を満たすような集団、すなわち測定値が真の値よりも高い又は多い仮想の個人が参加する仮想の集団Rを模擬的に作成し、これを記憶手段Eに記憶させる。
(7)演算手段Eが、上記(6)で模擬的に作成した上記仮想の集団Rに含まれる仮想の各個人の測定値Xの真の値μからの偏差uの、上記仮想の集団R全体の平均uaveを、求め、これを記憶手段Fに記憶させる。
(8)演算手段Fが、上記(1)の式に基づいて、且つ、前記記憶手段Fから読み出した仮想の各個人の測定値の真の値からの偏差uの仮想の集団R全体の平均uaveと前記第2記憶手段(請求項1参照)から読み出した標準偏差σとに基づいて、上記の仮想の集団Rの「平均への回帰分」であるΔを、次式により求め、これを記憶手段Gに記憶させる。
Δ=仮想の各個人の測定値Xの仮想の集団R全体の平均Xave−仮想の各個人の真の値μの仮想の集団R全体の平均μave=仮想の各個人の測定値の真の値からの偏差uの仮想の集団R全体の平均uave×前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差σ
(9)制御手段が、前記演算手段A,B,C,D,E,及びFを制御して、上記(2)から(8)までの作業を複数回実施し、それぞれの実施で求められた各Δの平均値を求め、このΔの平均値を、前記実施対象集団の「平均への回帰分」と推定し、これを記憶手段Hに記憶させる。
【0014】
また、本発明による介入による真の効果の評価装置又は方法において、介入実施が個人のHDLコレステロールや体力を表す指標である最大酸素摂取量などのように「値が上昇又は増加することに意義を持つ測定項目」の改善を目的とするものである場合は、前記推定手段は、次のような手順により前記実施前の実施対象集団の「平均への回帰分」を推定するものである、ことが望ましい。
(1)「全ての測定対象者が真の値よりも参加時の測定値が低い又は少ないために参加した」という仮説を立てると共に、仮想の個人における測定値の真の値からの偏差(u)を、次のように予め定義しておく。
=(Xi−μi)/σ
この式において、Xは仮想の個人の測定値、μは仮想の個人の真の値、σは前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差である。
(2)前記uは正規分布をとることから、平均=0,標準偏差=1の正規乱数1個を、仮想の個人が持つ測定値の真の値からの偏差uとして、発生させる。
(3)上記(2)の正規乱数1個を、「測定値が真の値よりも低い又は少ない個人が集団へ参加する確率が高い」とする次の推定式のuに代入することにより、前記偏差uを持つ仮想の個人が上記(1)の仮説を満たす仮想の集団Rに参加する確率rateを求める。
参加する確率rate=1/(1+exp(a×u))
この式において、expは指数関数、aは定数である。
(4)0〜1の乱数(rとする)1個を、前記偏差uを持つ仮想の個人を前記仮想の集団Rに参加させるかどうかを決めるためのカットオフ値として、発生させる。
(5)上記(3)で求めた前記参加する確率rateを、上記(4)で発生させたカットオフ値としてのrと比較し、rate>rのときだけ、前記偏差uを持つ仮想の個人を、仮想の集団Rを構成する仮想の個人として、採用する。
(6)上記(2)から(5)までの作業を、コンピュータを使用して複数回繰り返す。これにより、上記(1)の仮説を満たすような集団、すなわち測定値が真の値よりも低い又は少ない仮想の個人が参加する仮想の集団Rを模擬的に作成する。
(7)上記(6)で模擬的に作成した上記仮想の集団Rに含まれる仮想の各個人の測定値Xの真の値μからの偏差uの、上記仮想の集団R全体の平均uaveを、求める。
(8)上記(1)の式に基づいて、上記の仮想の集団Rの「平均への回帰分」であるΔを、次式により求める。
Δ=仮想の各個人の測定値Xの仮想の集団R全体の平均Xave−仮想の各個人の真の値μの仮想の集団R全体の平均μave=仮想の各個人の測定値の真の値からの偏差uの仮想の集団R全体の平均uave×前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差σ
(9)上記(2)から(8)までの作業をコンピュータを使用して複数回実施し、それぞれの実施で求められた各Δの平均値を求め、このΔの平均値を、前記実施対象集団の「平均への回帰分」と推定する。
【0015】
また、本発明による介入実施による真の効果の評価装置又は方法において、介入実施が個人のHDLコレステロールや体力を表す指標である最大酸素摂取量などのように「値が上昇又は増加することに意義を持つ測定項目」の改善を目的とするものである場合は、前記推定手段は、次のような手順により前記実施前の実施対象集団の「平均への回帰分」を推定するものである、ことが望ましい。
(1)「全ての測定対象者が真の値よりも参加時の測定値が低い又は少ないために参加した」という仮説を立てると共に、仮想の個人における測定値の真の値からの偏差(u)を、次のように予め定義しておく。
=(Xi−μi)/σ
この式において、Xは仮想の個人の測定値、μは仮想の個人の真の値、σは前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差である。
(2)演算手段Aが、前記uは正規分布をとることから、平均=0,標準偏差=1の正規乱数1個を、仮想の個人が持つ測定値の真の値からの偏差uとして、発生させ、これを記憶手段Aに記憶させる。
(3)演算手段Bが、上記(2)で発生した正規乱数1個を前記記憶手段Aから読み出して、この正規乱数1個を「測定値が真の値よりも低い又は少ない個人が集団へ参加する確率が高い」とする次の推定式のuに代入することにより、前記偏差uを持つ仮想の個人が上記(1)の仮説を満たす仮想の集団Rに参加する確率rateを求め、これを記憶手段Bに記憶させる。
参加する確率rate=1/(1+exp(a×u))
この式において、expは指数関数、aは定数である。
(4)演算手段Cが、0〜1の乱数(rとする)1個を、前記偏差uを持つ仮想の個人を前記仮想の集団Rに参加させるかどうかを決めるためのカットオフ値として、発生させ、これを記憶手段Cに記憶させる。
(5)演算手段Dが、上記(3)で求めた前記参加する確率rateを前記記憶手段Bから読み出して、これを、上記(4)で発生させ前記記憶手段Cに記憶させたカットオフ値としてのrと比較し、rate>rのときだけ、前記偏差uを持つ仮想の個人を、仮想の集団Rを構成する仮想の個人として、採用し、これを記憶手段Dに記憶させる。
(6)制御手段が、前記演算手段A,B,C,及びDを制御して、上記(2)から(5)までの作業を、複数回繰り返し、これにより、上記(1)の仮説を満たすような集団、すなわち測定値が真の値よりも低い又は少ない仮想の個人が参加する仮想の集団Rを模擬的に作成し、これを記憶手段Eに記憶させる。
(7)演算手段Eが、上記(6)で模擬的に作成し記憶した上記仮想の集団Rに含まれる仮想の各個人の測定値Xの真の値μからの偏差uの、上記仮想の集団R全体の平均uaveを、求め、これを記憶手段Fに記憶させる。
(8)演算手段Fが、上記(1)の式に基づいて、且つ、前記記憶手段Fから読み出した仮想の各個人の測定値の真の値からの偏差uの仮想の集団R全体の平均uaveと前記第2記憶手段(請求項1参照)から読み出した標準偏差σとに基づいて、上記の仮想の集団Rの「平均への回帰分」であるΔを、次式により求め、これを記憶手段Gに記憶させる。
Δ=仮想の各個人の測定値Xの仮想の集団R全体の平均Xave−仮想の各個人の真の値μの仮想の集団R全体の平均μave=仮想の各個人の測定値の真の値からの偏差uの仮想の集団R全体の平均uave×前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差σ
(9)制御手段が、前記演算手段A,B,C,D,E,及びFを制御して、上記(2)から(8)までの作業を複数回実施し、それぞれの実施で求められた各Δの平均値を求め、このΔの平均値を、前記実施対象集団の「平均への回帰分」と推定し、これを記憶手段Hに記憶させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、擬薬を投与する患者集団や健康増進活動を施さない対象者集団などのコントロール群の使用を不要にするか又は減少させることができるようになる。よって、従来のようにコントロール群の設定を不要にするか又はその必要を減少させることができるため、患者に擬薬を投与することに伴う倫理上の問題を解消できると共に、コントロール群の管理や検査などが不要になるため予算や手間の面で大きな節減効果が得られる。
【0017】
また、本発明においては、前述のように、上記(2)で正規乱数を発生させると共に上記(4)で0〜1の乱数rをカットオフ値として発生させるようにしている。よって、本発明においては、前記参加する確率rateをランダムに決めるだけでなく、前記偏差uを持つ仮想の個人を仮想の集団Rに組み入れるかどうかのカットオフ値をもランダムに決めるようにしているので、上記の「各測定対象者が真の値よりも参加時の測定値が高い又は多いために参加した」という仮説を満たす仮想の集団Rを、よりランダムに作れるようになる。よって、本発明によれば、上記の仮想の集団Rの「平均への回帰分」を求めるシミュレーション(上記(8)参照)の精度をより高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
前述のように、従来は、介入実施を施さない対照群(コントロール群)を用いて新薬や健康増進活動の真の効果を評価していた。このように新薬や健康増進活動の真の効果を評価するためにコントロール群を必要とするのは、「平均への回帰」の影響を無くすためである。
【0019】
「平均への回帰」(regression toward the mean)とは、ある標本集団にテストを行ったところ、そのテストの平均値が母集団の平均値から離れている場合に、2回目のテストでは標準集団の平均値が母集団の平均値に近づくこと、をいう。
【0020】
すなわち、平均への回帰とは、ある変数に関して極端なスコアをもつ対象が、再テストではそれほど極端ではなく平均に近い値を取るようになるという現象をいう。平均への回帰という現象が生じる理由は、観測スコア(observed score)が真のスコア(true score)と誤差スコア(error score)との2つの成分から構成されているからである(観測スコア=真のスコア+誤差スコア)。上記の誤差成分は、測定機器の差、対象者の生理的変動、動機付け、疲労、記録する際の誤差などの多くの原因により生まれる。この誤差成分は、確率的(ランダム)に変動する。すなわち、時に真の値より大きく、時に真の値より小さくなると仮定される。平均への回帰において、再テストで平均方向への回帰が行われるのは、誤差の分布が平均値から遠くなるほどそのような離れた値をもつ確率が小さくなるからである。なお、この段落の記載は、株式会社メディカル・サイエンス・インターナショナル(日本国東京都文京区本郷1−28−36)により2000年11月21に発行された「論文が読める 早分かり疫学 第1版第1刷」の第72−73頁より引用した。
【0021】
このような平均への回帰は、生物について一般的に見られる自然現象の一つである。特に、測定するときに変動がおきやすい事項について、平均への回帰という現象が出やすい。
【0022】
例えば、ある集団について、収縮期血圧を測定した結果が図2(a)のようになったとする。図2(a)の斜線で示す集団の平均値が例えば148mmHgだったとする。この場合に、その後、前記の斜線で示す集団について何らの介入も行わないまま再検査したとき、その結果の平均値は例えば144mmHgだった、という場合がある。この場合は、前記の斜線で示す集団について健康教育などの介入を行わなくても4mmHg(=148mmHg−144mmHg)の血圧低下が認められることになる(図2(b)参照)。よって、この場合、健康教育の真の効果を評価するためには、平均への回帰の影響を求めるための健康教育(介入)を施さない集団(コントロール群)が必要になる。
【0023】
すなわち、健康教育を施す前に、健康教育を施す集団とコントロール群との両者について収縮期血圧を測定し、その後、健康教育を施した後に、健康教育を施した集団とコントロール群との両者について同じ測定をする。すると、図3に示すように、コントロール群についても「平均への回帰」による血圧低下が測定される。図3において、健康教育を施された群については、コントロール群について測定された平均への回帰による血圧低下を取り除いたとしてもなお血圧低下の効果が存在しているので、この部分の効果が健康教育の真の効果だと評価することができる。なお、上記の図2及び図3は、篠原出版新社(日本国東京都文京区湯島2−4−9 MDビル)より2000年に発行された武藤孝史・福渡靖著「健康教育・ヘルスプロモーションの評価 第1版第3刷」から引用したものである。
【0024】
このように、平均への回帰の影響を取り除き、正味の(真の)介入効果を調べるために、コントロール群が必要だとされている。しかし、ある集団について健康増進活動の真の効果を評価するために、他の集団にコントロール群になってもらい、その集団には従来と何も生活習慣を変えずにそのままでいてもらい、検査と再検査だけを行うということは、そのような検査と再検査に協力してくれる人は少ないため、実際上極めて困難である。
【0025】
そこで、本発明者は、平均への回帰の影響を統計学的に推測することにより、コントロール群を使用しないで、健康増進活動などの介入の真の効果の評価する方法を発明した。本発明者は、平均への回帰の影響を統計学的に推測するために、モンテカルロ法によるシミュレーションを使用した。
【0026】
ここで、モンテカルロ法とは、十分に多数回のランダム抽出の操作又はランダム実験の結果を応用することによって、求めんとする問題の解や法則性の近似を得ようとする方法、である。すなわち、モンテカルロ法とは、乱数を用いた統計の実証的な研究のことである。モンテカルロ法とは、解こうとする問題のモデルを作り、これを用いて実際に起こりうる場合を多数回実行してみる方法、解析的な数学形式で捉えられた問題を確率過程の問題に翻訳して、統計実験により近似的にその数値解を得ようとする方法、である。
【0027】
モンテカルロ法により円周率πを推測する方法を、図4と次式に基づいて説明すると、次のとおりである。
【数1】

【0028】
上記のπをモンテカルロ法によって推定するプログラムは、次式のとおりである。このプログラムにおいては、数学ソフトの「Mathcad」(Mathsoft Engineering & Education, Inc. 101 Main Street Cambridge, MA 02142−1521 Greate Bretain Tel: 617−444−8000 Fax: 617−444−8001)を使用する。このプログラムにおいては、0−1の間のランダムなx,yを発生させ、上記のx+yが≦1か>1かの判定を、10,000回、繰り返し、1/4の円の中に含まれる数をカウントすることにより、上記の確率rを求める。
【数2】

【0029】
次に、本発明の実施形態による介入による真の効果の評価方法の一例を説明する。以下では、介入が、個人の血圧や中性脂肪などのように「値が低下又は減少することに意義を持つ測定項目」の改善を目的としている場合、すなわち対象集団への介入による効果の評価の方向性が“低下又は減少”を期待している場合における、モンテカルロ法を使用した平均への回帰を求める方法について説明する。
【0030】
まず、介入による効果の評価の方向性が“低下又は減少”を期待している場合を前提として、「全ての測定対象者が、真の値よりも参加時の測定値が高い又は多いために参加した」という仮説を立てる。すなわち、「測定値の個人内変動は、各測定対象者の真の値を中心とした正規分布をとると考えられ、全ての測定対象者が、その参加時の測定値が真の値からの隔たりが大きいために参加した」という仮説を立てる。こうすることにより、介入による評価の方向性が“低下又は減少”を期待している場合は、再度測定したとき、その測定値は低下する度合いが大きくなることが考えられる。よって、この仮説の下では、平均への回帰を過大に評価することにつながる。このように過大に評価した平均への回帰を差し引いてもなお有意な効果があるとすれば、それだけ意味のある介入であったということになる。逆にこのような仮説を立てることの欠点として、僅かな介入効果については評価できなくなる可能性がある。しかし、そのような僅かな介入効果はインパクト(影響力)が弱いものとして無視してもよいと本発明者は考える。
【0031】
次に、上記の仮説を満たすための式をたてて、平均への回帰分を推定するためのシミュレーションを行うときの手順を説明する。
【0032】
(1)まず、前述のように、「測定値の個人内変動は各測定対象者の真の値を中心とした正規分布をとり、全ての測定対象者が真の値よりも参加時の測定値が高い又は多いために参加した」という仮説を立てる。
【0033】
なお、介入が、例えば善玉コレステロール(HDLコレステロール)や体力を表す指標である最大酸素摂取量などのように「値が上昇又は増加することに意義を持つ測定項目」の改善を目的としている場合、すなわち、介入による効果の評価の方向性が“上昇又は増加”を期待している場合は、「測定値の個人内変動は各測定対象者の真の値を中心とした正規分布をとるから、全ての測定対象者が真の値よりも参加時の測定値が低い又は少ないために参加した」という仮説を立てればよい。
【0034】
また、上記の仮説を立てる作業と同時に又は相前後して、仮想の個人における測定値の真の値からの偏差(u)を、次のように定義する。
【0035】
=(Xi−μi)/σ
【0036】
この式において、Xは仮想の個人の測定値、μは仮想の個人の真の値、σは前記介入前の介入対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差である。前記介入対象集団とは、コントロール群ではない「介入を行う群」のことである。また、前記介入対象集団とは、仮想の集団ではない「実際に測定している集団」のことである。
【0037】
(2)前記uは正規分布をとることから、平均=0,標準偏差=1の正規乱数1個を、仮想の個人が持つ測定値の真の値からの偏差uとして、発生させる。
【0038】
(3)上記(2)の正規乱数1個を、「測定値が真の値よりも高い又は多い個人が集団へ参加する確率が高い」とする次の推定式のuに代入することにより、前記偏差uを持つ仮想の個人が上記(1)の仮説を満たす仮想の集団Rに参加する確率rateを求める。
【0039】
参加する確率rate=1/(1+exp(−a×u))
【0040】
この式において、expは指数関数、aは定数である。
【0041】
上記の推定式は、図5(b)に示すように、真の値からの偏差が大きいほど参加する確率が高くなるような式となっている。上記の推定式において、定数aの値によって図5(b)のS字のカーブが変化する。この値を決定する際の工夫として、これまで介入を行った研究において、コントロール群をきちんとたてて実施した過去の報告を下に、その結果に近くなるように、上記の定数aを決定する。このようにすることにより、シミュレーションの信頼性を高めることにつながる。
【0042】
なお、介入が、例えば善玉コレステロール(HDLコレステロール)や体力を表す指標である最大酸素摂取量などのように「値が上昇又は増加することに意義を持つ測定項目」の改善を目的としている場合、すなわち、介入による効果の評価の方向性が“上昇又は増加”を期待している場合は、「測定値が真の値よりも低い又は少ない個人が集団へ参加する確率が高い」とする推定式、すなわち、上記の(−a×u)を(a×u)に置き換えた推定式を使用するようにすればよい。
【0043】
(4)0〜1の乱数(rとする)1個を、前記偏差uを持つ仮想の個人を前記仮想の集団Rに参加させるかどうかを決めるためのカットオフ値として、発生させる。
【0044】
(5)上記(3)で求めた前記参加する確率rateを、上記(4)で発生させたカットオフ値としてのrと比較し、rate>rのときだけ、前記偏差uを持つ仮想の個人を、仮想の集団Rを構成する仮想の個人として、採用する。すなわち、rate>rならば、前記偏差uを持つ仮想の個人は、採用とし、仮想の集団Rへ組み入れる。また、rate=<rならば、前記偏差uを持つ仮想の個人は、不採用とし、仮想の集団Rへは組み入れない。
【0045】
(6)上記(2)から(5)までの作業を、コンピュータを使用して複数回、繰り返す。これにより、上記(1)の仮説を満たすような集団、すなわち測定値が真の値よりも高い又は多い仮想の個人が参加する仮想の集団Rを模擬的に作成する。なお、この(6)において、上記(2)から(5)までの作業をコンピュータを使用して繰り返す回数は、仮想の集団Rに組み入れられる前記仮想の個人の数が、前記介入対象集団の実際の人数と近似した数となるまで、とすることが望ましい。例えば、前記実際の介入対象集団の人数の倍の回数だけ前記作業を繰り返すことが望ましい。
【0046】
(7)上記(6)で模擬的に作成した上記仮想の集団Rに含まれる仮想の各個人の測定値Xの真の値μからの偏差uの、上記仮想の集団R全体の平均uaveを、求める。
【0047】
(8)上記(1)の式に基づいて、上記の仮想の集団Rの「平均への回帰分」であるΔを、次式により求める。
【0048】
Δ=仮想の各個人の測定値Xの仮想の集団R全体の平均Xave−仮想の各個人の真の値μの仮想の集団R全体の平均μave=仮想の各個人の測定値の真の値からの偏差uの仮想の集団R全体の平均uave×前記介入前の介入対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差σ
【0049】
(9)上記(2)から(8)までの作業をコンピュータを使用して複数回実施する。本発明者は、現在、Mathcadというコンピュータ・ソフトウェアを使用して試験的に実施している。この作業(コンピュータによるシュミレーション)を行う回数は、特に限定はないが、例えば数万回から数百万回など、なるべく多い方が望ましい。そして、それぞれの実施で求められた各Δの平均値を求める。
【0050】
上記(7)で求められた各Δの平均値を、前記介入対象集団の「平均への回帰分」と推定する。以上により、介入を行わなくても低下する分(平均への回帰分)がコンピュータによるシミュレーションにより求められた。実際の介入による改善値(例えば介入により実測値の血圧低下量)の平均と、前記シミュレーションにより求められたΔ(平均への回帰分)との差が、介入による真の効果と評価できる。
【0051】
以上のように、本実施形態では、上記(2)で正規乱数を発生させると共に上記(4)で0〜1の乱数rをカットオフ値として発生させることによって、前記参加する確率rateをランダムに決めるだけでなく、前記偏差uを持つ仮想の個人を仮想の集団Rに組み入れるかどうかのカットオフ値をもランダムに決めるようにしている。よって、本実施形態では、上記の「各測定対象者が真の値よりも参加時の測定値が高い又は多いために参加した」という仮説を満たす仮想の集団Rを、よりランダムに作れるようになる。よって、本実施形態によれば、上記の仮想の集団Rの「平均への回帰分」を求めるシミュレーション(上記(8)参照)の精度をより高めることができる。
【実施例1】
【0052】
次に、以上に述べた本発明の実施形態の方法を、本発明者が所定の個人の集団に対して施した具体的な健康増進活動の結果の評価について適用した例を説明する。本発明者は、94名の対象者に対して、12週間の運動・栄養指導による高血圧改善への効果の測定を行った。前記の94名中、高血圧者は32名であった。健康増進活動の中の運動指導の内容は、最大酸素摂取量の約50%強度の運動、例えば、自転車エルゴメーター、ウォーキング、軽度のエアロビクスなどの運動を1回1時間、週2回、12週間行う、というものであった。また、健康増進活動の中の栄養指導の内容は、栄養管理士による個別指導を前半と中盤に1回ずつ行いながら上記期間内に(実施対象者が)摂取すべき栄養素の種類及び量を変更する、というものであった。
【0053】
前記94名中、高血圧者32名について、指導の開始前と指導後とでそれぞれ血圧を測定した。その結果、各測定値の平均は、指導前は151.2±13.2mmHg、指導後は142.6±13.5mmHgとなり、指導により有意に血圧が低下した(Paired t test;p<0.01)。その指導による血圧低下の効果は、8.6mmHgとなった。
【0054】
しかし、上記の8.6mmHgという効果は、「健康増進活動による効果+平均への回帰」と考えられる。そこで、この「平均への回帰」分を推定する作業を次のように行った。
【0055】
まず、仮想の高血圧の個人の複数名(例えば32名)が「その人の真の値(血圧)よりも参加時の測定値の方が高いために前記健康増進活動のプログラムに参加した」という仮説を立てた。この仮説の下では、何ら介入を行わないままに再度測定したときは、血圧の測定値は低下することになる(図6参照)。
【0056】
次に、前記仮想の高血圧の個人の複数名から成る仮想の集団の中の各仮想の個人の持っている真の値からの偏差を次のように定義した(図5(a)参照)。
【0057】
=(Xi−μi)/σ
【0058】
この式において、Xは仮想の個人の測定値、μは仮想の個人の真の値、σは前記介入前の介入対象集団(現実の高血圧者32名)の各個人の実測値の集団全体の標準偏差である。
【0059】
次に、前記uは正規分布をとることから、平均=0,標準偏差=1の正規乱数1個を、仮想の個人が持つ測定値の真の値からの偏差uとして、発生させた(図8(a)参照)。
【0060】
そして、この正規乱数1個を、「測定値が真の値よりも高い個人が集団へ参加する確率が高い」とする次の推定式のuに代入し、前記偏差uを持つ仮想の個人が前記仮想の集団に参加する確率rateを求めた(図7参照)。
【0061】
参加する確率rate=1/(1+exp(−a×u))
【0062】
この式において、expは指数関数、aは定数である。
【0063】
次に、0〜1の乱数(rとする)を、前記偏差uを持つ仮想の個人を前記仮想の集団Rに組み入れるかどうかを決めるためのカットオフ値として、発生させた。そして、上記推定式で求めた前記参加する確率rateを、このカットオフ値としてのrと比較し、rate>rのときだけ、前記偏差uを持つ仮想の個人を、上記仮想の集団Rへ組み入れた。
【0064】
以上の前記正規乱数を1個発生させるという段階から前記参加する確率rateがrより大きいときだけ前記偏差uを持つ仮想の個人を仮想の集団Rへ組み入るという段階までの作業を、前記介入対象集団の人数の倍に近い回数だけ繰り返して、測定値が真の値よりも高い仮想の個人が参加する仮想の集団Rを、模擬的に作成した(図8(b)参照)。
【0065】
次に、上記の仮想の各個人の測定値Xの真の値μからの偏差uの仮想の集団R全体の平均uaveを求めた。そして、上記の式u=(Xi−μi)/σに基づいて、上記の仮想の集団Rの「平均への回帰分」であるΔを、次式により求めた。
【0066】
Δ=仮想の各個人の測定値Xの仮想の集団R全体の平均Xave−仮想の各個人の真の値μの仮想の集団R全体の平均μave=仮想の各個人の測定値の真の値からの偏差uの仮想の集団R全体の平均uave×前記介入前の介入対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差σ
【0067】
次に、以上の上記の仮想の集団Rの「平均への回帰分」であるΔを求めるためのシミュレーションを、多数回、繰り返し実施した。次に、前記各シミュレーションにより求められた各Δの平均値を求め、このΔの平均値を、前記現実の高血圧者32名の集団(介入対象集団)の「平均への回帰分」と推定した。以上より、前記現実の高血圧者32名の集団(介入対象集団)の各個人の実測値の血圧低下量の集団全体の平均と前記各Δの平均値(「平均への回帰分」)との差が、実質的な介入効果と考えた。
【0068】
実際に上記の例について本発明者がモンテカルロ法を実行してシミュレーションを行った結果、平均への回帰分は、2.9±2.4mmHgとなった。Mann−WhitneyのU検定(2群間の差を検定する統計学的手法の一つで、いわゆる「対応のないt検定」のノンパラメトリック版)の結果は、p=0.0336となった。よって、実際の実測値における介入前後の差と、シミュレーションにより求められたΔの平均との差を検定した結果、これらが互いに等しいという帰無仮説は棄却され、前記差に有意な差があることが証明された。以上により、本実施例における介入の結果は有意に実測値の低下量が大きい、と評価できた。また、本実施例における介入の真の効果は5.7mmHgである、と評価することができた。
【0069】
なお、上記の説明では、本発明者が実際に行った約12週間の期間内における所定の種類及び量の運動の実施、及び約12週間の期間内における所定の栄養指導の実施(食事により摂取する栄養素の種類及び量の変更の実施)による高血圧改善への真の効果の評価のために本実施例1を使用した例を説明したが、本発明は、上記のような運動・栄養指導の実施だけに限られることなく、例えば、「所定期間内における職場や家庭内での喫煙量の低減(喫煙量をゼロまで低減することも含む)の活動の実施」による健康改善への真の効果の評価、「所定期間内における患者への新薬の投与の実施」による病気・症状の改善への真の効果の評価などのためにも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明による真の効果の評価方法のために使用する評価装置を説明するための概念ブロック図。
【図2】本発明の実施形態による介入による真の効果の評価方法を説明するための図。
【図3】本実施形態を説明するための図。
【図4】本実施形態を説明するための図。
【図5】本実施形態を説明するための図。
【図6】健康増進活動による真の効果の評価を行うための本発明の実施例1を説明するための図。
【図7】本発明の実施例1を説明するための図。
【図8】本発明の実施例1を説明するための図。
【符号の説明】
【0071】
1 第1入力部
2 第1演算部
3 第1記憶部
4 第2演算部
5 第2記憶部
6 推定部
7 第2入力部
8 第3演算部
9 第3記憶部
10 第4演算部
11 比較部
12 出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
「所定期間内における定期的な所定量の薬剤の投与、所定期間内における定期的な所定量の運動、所定期間内における摂取する栄養素の種類及び量の変更、及び、所定期間における定期的な喫煙量の減少、の中の少なくとも一つ」を実施する前の実施対象集団の各個人それぞれの健康に関する事項を実測した結果を入力するための第1入力手段と、
前記第1入力手段により入力された実測結果に基づいて、前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値を求めるための第1演算手段と、
前記第1演算手段により求められた前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値を記憶するための第1記憶手段と、
前記第1入力手段により入力された実測結果に基づいて、前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差を求めるための第2演算手段と、
前記第2演算手段により求められた前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差を記憶するための第2記憶手段と、
前記第2記憶手段から読み出した前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差を使用して、前記実施前の実施対象集団の平均への回帰に相当する値である「平均への回帰分」を推定するための推定手段と、
前記実施の後の前記実施対象集団の各個人それぞれの健康に関する事項を実測した結果を入力するための第2入力手段と、
前記第2入力手段により入力された実測結果に基づいて前記実施後の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値を求めるための第3演算手段と、
前記第3演算手段により求められた前記実施後の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値を記憶するための第3記憶手段と、
前記第1記憶手段から前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値を読み出すと共に、前記第3記憶手段から前記実施後の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値を読み出して、両者の差を求めるための第4演算手段と、
前記第4演算手段から出力された前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値と前記実施後の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値との差と、前記推定手段から出力された前記実施前の実施対象集団の「平均への回帰分」とを比較するための比較手段と、
前記比較手段からの比較結果を出力するための出力手段と、を備えた、コンピュータシステムにより実現される、実施対象集団への介入実施による真の効果の評価装置。
【請求項2】
第1入力手段により、「所定期間内における定期的な所定量の薬剤の投与、所定期間内における定期的な所定量の運動、所定期間内における摂取する栄養素の種類及び量の変更、及び、所定期間における定期的な喫煙量の減少の中の少なくとも一つ」を実施する前の実施対象集団の各個人それぞれの健康に関する事項を実測した結果を入力する第1ステップと、
第1演算手段が、前記第1入力手段により入力された実測結果に基づいて、前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値を求め、これを第1記憶手段に記憶する第2ステップと、
前記第2ステップと同時又は相前後して、第2演算手段が、前記第1入力手段により入力された実測結果に基づいて、前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差を求め、これを第2記憶手段に記憶する第3ステップと、
推定手段が、前記第2記憶手段から読み出した前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差を使用して、前記実施前の実施対象集団の平均への回帰に相当する値である「平均への回帰分」を推定する第4ステップと、
前記ステップ2、ステップ3、及びステップ4の少なくともいずれか一つと同時に又は相前後して、第2入力手段により、前記実施の後の実施対象集団の各個人それぞれの健康に関する事項を実測した結果を入力する第5ステップと、
前記ステップ2、ステップ3、及びステップ4の少なくともいずれか一つと同時に又は相前後して、第3演算手段が、前記第2入力手段により入力された前記実施の後の前記実施対象集団の各個人それぞれの健康に関する事項の実測結果に基づいて、前記実施後の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値を求め、これを第3記憶手段に記憶する第6ステップと、
第4演算手段が、前記第1記憶手段から読み出した前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値と前記第3記憶手段から読み出した前記実施後の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値との差を求める第7ステップと、
比較手段が、前記第4演算手段から出力された前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値と前記実施後の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値との差と、前記推定手段から出力された前記実施前の実施対象集団の「平均への回帰分」とを比較する第8ステップと、
前記比較手段から出力された比較結果をディスプレイなどの出力手段により出力する第9ステップと、
を含む、コンピュータシステムを使用した、実施対象集団への介入実施による真の効果の評価方法。
【請求項3】
請求項2において、実施が個人の血圧や中性脂肪などのように「値が低下又は減少することに意義を持つ測定項目」の改善を目的とするものである場合は、前記第4ステップにおいて、前記推定手段は、次のような手順により前記実施前の実施対象集団の「平均への回帰分」を推定するものである、実施対象集団への介入実施による真の効果の評価方法。
(1)「全ての測定対象者が真の値よりも参加時の測定値が高い又は多いために参加した」という仮説を立てると共に、仮想の個人における測定値の真の値からの偏差(u)を次のように定義する。
=(Xi−μi)/σ
この式において、Xは仮想の個人の測定値、μは仮想の個人の真の値、σは前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差である。
(2)前記uは正規分布をとることから、平均=0,標準偏差=1の正規乱数1個を、仮想の個人が持つ測定値の真の値からの偏差uとして、発生させる。
(3)上記(2)の正規乱数1個を、「測定値が真の値よりも高い又は多い個人が集団へ参加する確率が高い」とする次の推定式のuに代入することにより、前記偏差uを持つ仮想の個人が上記(1)の仮説を満たす仮想の集団Rに参加する確率rateを求める。
参加する確率rate=1/(1+exp(−a×u))
この式において、expは指数関数、aは定数である。
(4)0〜1の乱数(rとする)1個を、前記偏差uを持つ仮想の個人を前記仮想の集団Rに参加させるかどうかを決めるためのカットオフ値として、発生させる。
(5)上記(3)で求めた前記参加する確率rateを、上記(4)で発生させたカットオフ値としてのrと比較し、rate>rのときだけ、前記偏差uを持つ仮想の個人を、仮想の集団Rを構成する仮想の個人として、採用する。
(6)上記(2)から(5)までの作業を、コンピュータを使用して複数回繰り返す。これにより、上記(1)の仮説を満たすような集団、すなわち測定値が真の値よりも高い又は多い仮想の個人が参加する仮想の集団Rを模擬的に作成する。
(7)上記(6)で模擬的に作成した上記仮想の集団Rに含まれる仮想の各個人の測定値Xの真の値μからの偏差uの、上記仮想の集団R全体の平均uaveを、求める。
(8)上記(1)の式に基づいて、上記の仮想の集団Rの「平均への回帰分」であるΔを、次式により求める。
Δ=仮想の各個人の測定値Xの仮想の集団R全体の平均Xave−仮想の各個人の真の値μの仮想の集団R全体の平均μave=仮想の各個人の測定値の真の値からの偏差uの仮想の集団R全体の平均uave×前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差σ
(9)上記(2)から(8)までの作業をコンピュータを使用して複数回実施し、それぞれの実施で求められた各Δの平均値を求め、このΔの平均値を、前記実施対象集団の「平均への回帰分」と推定する。
【請求項4】
請求項2において、実施が個人のHDLコレステロールや体力を表す指標である最大酸素摂取量などのように「値が上昇又は増加することに意義を持つ測定項目」の改善を目的とするものである場合は、前記第4ステップにおいて、前記推定手段は、次のような手順により前記実施前の実施対象集団の「平均への回帰分」を推定するものである、実施対象集団への介入実施による真の効果の評価方法。
(1)「全ての測定対象者が真の値よりも参加時の測定値が低い又は少ないために参加した」という仮説を立てると共に、仮想の個人における測定値の真の値からの偏差(u)を、次のように定義する。
=(Xi−μi)/σ
この式において、Xは仮想の個人の測定値、μは仮想の個人の真の値、σは前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差である。
(2)前記uは正規分布をとることから、平均=0,標準偏差=1の正規乱数1個を、仮想の個人が持つ測定値の真の値からの偏差uとして、発生させる。
(3)上記(2)の正規乱数1個を、「測定値が真の値よりも低い又は少ない個人が集団へ参加する確率が高い」とする次の推定式のuに代入することにより、前記偏差uを持つ仮想の個人が上記(1)の仮説を満たす仮想の集団Rに参加する確率rateを求める。
参加する確率rate=1/(1+exp(a×u))
この式において、expは指数関数、aは定数である。
(4)0〜1の乱数(rとする)1個を、前記偏差uを持つ仮想の個人を前記仮想の集団Rに参加させるかどうかを決めるためのカットオフ値として、発生させる。
(5)上記(3)で求めた前記参加する確率rateを、上記(4)で発生させたカットオフ値としてのrと比較し、rate>rのときだけ、前記偏差uを持つ仮想の個人を、仮想の集団Rを構成する仮想の個人として、採用する。
(6)上記(2)から(5)までの作業を、コンピュータを使用して複数回繰り返す。これにより、上記(1)の仮説を満たすような集団、すなわち測定値が真の値よりも低い又は少ない仮想の個人が参加する仮想の集団Rを模擬的に作成する。
(7)上記(6)で模擬的に作成した上記仮想の集団Rに含まれる仮想の各個人の測定値Xの真の値μからの偏差uの、上記仮想の集団R全体の平均uaveを、求める。
(8)上記(1)の式に基づいて、上記の仮想の集団Rの「平均への回帰分」であるΔを、次式により求める。
Δ=仮想の各個人の測定値Xの仮想の集団R全体の平均Xave−仮想の各個人の真の値μの仮想の集団R全体の平均μave=仮想の各個人の測定値の真の値からの偏差uの仮想の集団R全体の平均uave×前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差σ
(9)上記(2)から(8)までの作業をコンピュータを使用して複数回実施し、それぞれの実施で求められた各Δの平均値を求め、このΔの平均値を、前記実施対象集団の「平均への回帰分」と推定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人の血圧や中性脂肪などのように「値が低下又は減少することに意義を持つ測定項目」の改善を目的として実施対象集団への介入実施を行うときの、その介入実施による真の効果を評価するための、コンピュータシステムを含む装置であって、
「所定期間内における定期的な所定量の薬剤の投与、所定期間内における定期的な所定量の運動、所定期間内における摂取する栄養素の種類及び量の変更、及び、所定期間における定期的な喫煙量の減少、の中の少なくとも一つ」を実施する前の実施対象集団の各個人それぞれの健康に関する事項を実測した結果を入力するための第1入力手段と、
前記第1入力手段により入力された実測結果に基づいて、前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値を求めるための第1演算手段と、
前記第1演算手段により求められた前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値を記憶するための第1記憶手段と、
前記第1入力手段により入力された実測結果に基づいて、前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差σを求めるための第2演算手段と、
前記第2演算手段により求められた前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差を記憶するための第2記憶手段と、
前記第2記憶手段から読み出した前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差を使用して、前記実施前の実施対象集団の平均への回帰に相当する値である「平均への回帰分」を推定するための推定手段と、
前記実施の後の前記実施対象集団の各個人それぞれの健康に関する事項を実測した結果を入力するための第2入力手段と、
前記第2入力手段により入力された実測結果に基づいて前記実施後の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値を求めるための第3演算手段と、
前記第3演算手段により求められた前記実施後の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値を記憶するための第3記憶手段と、
前記第1記憶手段から前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値を読み出すと共に、前記第3記憶手段から前記実施後の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値を読み出して、両者の差を求めるための第4演算手段と、
前記第4演算手段から出力された前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値と前記実施後の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値との差と、前記推定手段から出力された前記実施前の実施対象集団の「平均への回帰分」とを比較するための比較手段と、
前記比較手段からの比較結果を出力するための出力手段と、
を備えており、前記推定手段は、次の(1)から(8)までの手順により前記実施前の実施対象集団の「平均への回帰分」を推定するものである、ことを特徴とする、実施対象集団への介入実施による真の効果の評価装置。
(1)演算手段Aが、仮想の個人における測定値の真の値からの偏差(u)を定義する次式におけるuは正規分布をとることから、平均=0,標準偏差=1の正規乱数1個を、仮想の個人が持つ測定値の真の値からの偏差uとして、発生させ、これを記憶手段Aに記憶させる、
=(Xi−μi)/σ (この式において、Xは仮想の個人の測定値、μは仮想の個人の真の値、σは前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差である。)
(2)演算手段Bが、上記(1)で発生した正規乱数1個を前記記憶手段Aから読み出して、この正規乱数1個を、「測定値が真の値よりも高い又は多い個人が集団へ参加する確率が高い」とする次の推定式のuに代入することにより、前記偏差uを持つ仮想の個人が「全ての測定対象者が真の値よりも参加時の測定値が高い又は多いために参加した」という仮説を満たす仮想の集団Rに参加する確率rateを求め、これを記憶手段Bに記憶させる、
参加する確率rate=1/(1+exp(−a×u)) (この式において、expは指数関数、aは定数である。)
(3)演算手段Cが、0〜1の乱数(rとする)1個を、前記偏差uを持つ仮想の個人を前記仮想の集団Rに参加させるかどうかを決めるためのカットオフ値として、発生させ、これを記憶手段Cに記憶させる、
(4)演算手段Dが、上記(2)で求めた前記参加する確率rateを前記記憶手段Bから読み出して、これを、上記(3)で発生させ前記記憶手段Cに記憶させておいたカットオフ値としてのrと比較し、rate>rのときだけ、前記偏差uを持つ仮想の個人を、仮想の集団Rを構成する仮想の個人として、採用し、これを記憶手段Dに記憶させる、
(5)制御手段が、前記演算手段A,B,C,及びDを制御して、上記(1)から(4)までの作業を複数回繰り返し、これにより、上記「全ての測定対象者が真の値よりも参加時の測定値が高い又は多いために参加した」という仮説を満たすような集団、すなわち測定値が真の値よりも高い又は多い仮想の個人が参加する仮想の集団Rを模擬的に作成し、これを記憶手段Eに記憶させる、
(6)演算手段Eが、上記(5)で模擬的に作成した上記仮想の集団Rに含まれる仮想の各個人の測定値Xの真の値μからの偏差uの、上記仮想の集団R全体の平均uaveを、求め、これを記憶手段Fに記憶させる、
(7)演算手段Fが、上記(1)の式に基づいて、且つ、前記記憶手段Fから読み出した仮想の各個人の測定値の真の値からの偏差uの仮想の集団R全体の平均uaveと前記第2記憶手段から読み出した標準偏差σとに基づいて、上記の仮想の集団Rの「平均への回帰分」であるΔを、次式により求め、これを記憶手段Gに記憶させる、
Δ=仮想の各個人の測定値Xの仮想の集団R全体の平均Xave−仮想の各個人の真の値μの仮想の集団R全体の平均μave=仮想の各個人の測定値の真の値からの偏差uの仮想の集団R全体の平均uave×前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差σ
(8)制御手段が、前記演算手段A,B,C,D,E,及びFを制御して、上記(1)から(7)までの作業を複数回実施し、それぞれの実施で求められた各Δの平均値を求め、このΔの平均値を、前記実施対象集団の「平均への回帰分」と推定し、これを記憶手段Hに記憶させる。
【請求項2】
個人のHDLコレステロールや体力を表す指標である最大酸素摂取量などのように「値が上昇又は増加することに意義を持つ測定項目」の改善を目的として実施対象集団への介入実施を行うときの、その介入実施による真の効果を評価するための、コンピュータシステムを含む装置であって、
「所定期間内における定期的な所定量の薬剤の投与、所定期間内における定期的な所定量の運動、所定期間内における摂取する栄養素の種類及び量の変更、及び、所定期間における定期的な喫煙量の減少、の中の少なくとも一つ」を実施する前の実施対象集団の各個人それぞれの健康に関する事項を実測した結果を入力するための第1入力手段と、
前記第1入力手段により入力された実測結果に基づいて、前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値を求めるための第1演算手段と、
前記第1演算手段により求められた前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値を記憶するための第1記憶手段と、
前記第1入力手段により入力された実測結果に基づいて、前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差σを求めるための第2演算手段と、
前記第2演算手段により求められた前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差を記憶するための第2記憶手段と、
前記第2記憶手段から読み出した前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差を使用して、前記実施前の実施対象集団の平均への回帰に相当する値である「平均への回帰分」を推定するための推定手段と、
前記実施の後の前記実施対象集団の各個人それぞれの健康に関する事項を実測した結果を入力するための第2入力手段と、
前記第2入力手段により入力された実測結果に基づいて前記実施後の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値を求めるための第3演算手段と、
前記第3演算手段により求められた前記実施後の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値を記憶するための第3記憶手段と、
前記第1記憶手段から前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値を読み出すと共に、前記第3記憶手段から前記実施後の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値を読み出して、両者の差を求めるための第4演算手段と、
前記第4演算手段から出力された前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値と前記実施後の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値との差と、前記推定手段から出力された前記実施前の実施対象集団の「平均への回帰分」とを比較するための比較手段と、
前記比較手段からの比較結果を出力するための出力手段と、
を備えており、前記推定手段は、次の(1)から(8)までの手順により前記実施前の実施対象集団の「平均への回帰分」を推定するものである、実施対象集団への介入実施による真の効果の評価装置。
(1)演算手段Aが、仮想の個人における測定値の真の値からの偏差(u)を定義する次式におけるuは正規分布をとることから、平均=0,標準偏差=1の正規乱数1個を、仮想の個人が持つ測定値の真の値からの偏差uとして、発生させ、これを記憶手段Aに記憶させる、
=(Xi−μi)/σ (この式において、Xは仮想の個人の測定値、μは仮想の個人の真の値、σは前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差である。)
(2)演算手段Bが、上記(1)で発生した正規乱数1個を前記記憶手段Aから読み出して、この正規乱数1個を「測定値が真の値よりも低い又は少ない個人が集団へ参加する確率が高い」とする次の推定式のuに代入することにより、前記偏差uを持つ仮想の個人が「全ての測定対象者が真の値よりも参加時の測定値が低い又は少ないために参加した」という仮説を満たす仮想の集団Rに参加する確率rateを求め、これを記憶手段Bに記憶させる、
参加する確率rate=1/(1+exp(a×u)) (この式において、expは指数関数、aは定数である。)
(3)演算手段Cが、0〜1の乱数(rとする)1個を、前記偏差uを持つ仮想の個人を前記仮想の集団Rに参加させるかどうかを決めるためのカットオフ値として、発生させ、これを記憶手段Cに記憶させる、
(4)演算手段Dが、上記(2)で求めた前記参加する確率rateを前記記憶手段Bから読み出して、これを、上記(3)で発生させ前記記憶手段Cに記憶させたカットオフ値としてのrと比較し、rate>rのときだけ、前記偏差uを持つ仮想の個人を、仮想の集団Rを構成する仮想の個人として、採用し、これを記憶手段Dに記憶させる、
(5)制御手段が、前記演算手段A,B,C,及びDを制御して、上記(1)から(4)までの作業を、複数回繰り返し、これにより、上記「全ての測定対象者が真の値よりも参加時の測定値が低い又は少ないために参加した」という仮説を満たすような集団、すなわち測定値が真の値よりも低い又は少ない仮想の個人が参加する仮想の集団Rを模擬的に作成し、これを記憶手段Eに記憶させる、
(6)演算手段Eが、上記(5)で模擬的に作成し記憶した上記仮想の集団Rに含まれる仮想の各個人の測定値Xの真の値μからの偏差uの、上記仮想の集団R全体の平均uaveを、求め、これを記憶手段Fに記憶させる、
(7)演算手段Fが、上記(2)の式に基づいて、且つ、前記記憶手段Fから読み出した仮想の各個人の測定値の真の値からの偏差uの仮想の集団R全体の平均uaveと前記第2記憶手段から読み出した標準偏差σとに基づいて、上記の仮想の集団Rの「平均への回帰分」であるΔを、次式により求め、これを記憶手段Gに記憶させる、
Δ=仮想の各個人の測定値Xの仮想の集団R全体の平均Xave−仮想の各個人の真の値μの仮想の集団R全体の平均μave=仮想の各個人の測定値の真の値からの偏差uの仮想の集団R全体の平均uave×前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差σ
(8)制御手段が、前記演算手段A,B,C,D,E,及びFを制御して、上記(1)から(7)までの作業を複数回実施し、それぞれの実施で求められた各Δの平均値を求め、このΔの平均値を、前記実施対象集団の「平均への回帰分」と推定し、これを記憶手段Hに記憶させる。
【請求項3】
個人の血圧や中性脂肪などのように「値が低下又は減少することに意義を持つ測定項目」の改善を目的として実施対象集団への介入実施を行うときの、その介入実施による真の効果を評価するための、コンピュータシステムを使用した方法であって、
第1入力手段により、「所定期間内における定期的な所定量の薬剤の投与、所定期間内における定期的な所定量の運動、所定期間内における摂取する栄養素の種類及び量の変更、及び、所定期間における定期的な喫煙量の減少の中の少なくとも一つ」を実施する前の実施対象集団の各個人それぞれの健康に関する事項を実測した結果を入力する第1ステップと、
第1演算手段が、前記第1入力手段により入力された実測結果に基づいて、前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値を求め、これを第1記憶手段に記憶する第2ステップと、
前記第2ステップと同時又は相前後して、第2演算手段が、前記第1入力手段により入力された実測結果に基づいて、前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差σを求め、これを第2記憶手段に記憶する第3ステップと、
推定手段が、前記第2記憶手段から読み出した前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差を使用して、前記実施前の実施対象集団の平均への回帰に相当する値である「平均への回帰分」を推定する第4ステップと、
前記ステップ2、ステップ3、及びステップ4の少なくともいずれか一つと同時に又は相前後して、第2入力手段により、前記実施の後の実施対象集団の各個人それぞれの健康に関する事項を実測した結果を入力する第5ステップと、
前記ステップ2、ステップ3、及びステップ4の少なくともいずれか一つと同時に又は相前後して、第3演算手段が、前記第2入力手段により入力された前記実施の後の前記実施対象集団の各個人それぞれの健康に関する事項の実測結果に基づいて、前記実施後の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値を求め、これを第3記憶手段に記憶する第6ステップと、
第4演算手段が、前記第1記憶手段から読み出した前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値と前記第3記憶手段から読み出した前記実施後の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値との差を求める第7ステップと、
比較手段が、前記第4演算手段から出力された前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値と前記実施後の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値との差と、前記推定手段から出力された前記実施前の実施対象集団の「平均への回帰分」とを比較する第8ステップと、
前記比較手段から出力された比較結果をディスプレイなどの出力手段により出力する第9ステップと、
を含み、前記第4ステップにおける推定手段は、次のような手順により前記実施前の実施対象集団の「平均への回帰分」を推定するものである、ことを特徴とする、実施対象集団への介入実施による真の効果の評価方法。
(1)演算手段Aが、仮想の個人における測定値の真の値からの偏差(u)を定義する次式におけるuiは正規分布をとることから、平均=0,標準偏差=1の正規乱数1個を、仮想の個人が持つ測定値の真の値からの偏差uとして、発生させ、これを記憶手段Aに記憶させる、
=(Xi−μi)/σ (この式において、Xは仮想の個人の測定値、μは仮想の個人の真の値、σは前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差である。)
(2)演算手段Bが、上記(1)で発生した正規乱数1個を前記記憶手段Aから読み出して、この正規乱数1個を、「測定値が真の値よりも高い又は多い個人が集団へ参加する確率が高い」とする次の推定式のuに代入することにより、前記偏差uを持つ仮想の個人が「全ての測定対象者が真の値よりも参加時の測定値が高い又は多いために参加した」という仮説を満たす仮想の集団Rに参加する確率rateを求め、これを記憶手段Bに記憶させる、
参加する確率rate=1/(1+exp(−a×u)) (この式において、expは指数関数、aは定数である。)
(3)演算手段Cが、0〜1の乱数(rとする)1個を、前記偏差uを持つ仮想の個人を前記仮想の集団Rに参加させるかどうかを決めるためのカットオフ値として、発生させ、これを記憶手段Cに記憶させる、
(4)演算手段Dが、上記(2)で求めた前記参加する確率rateを前記記憶手段Bから読み出して、これを、上記(3)で発生させ前記記憶手段Cに記憶させておいたカットオフ値としてのrと比較し、rate>rのときだけ、前記偏差uを持つ仮想の個人を、仮想の集団Rを構成する仮想の個人として、採用し、これを記憶手段Dに記憶させる、
(5)制御手段が、前記演算手段A,B,C,及びDを制御して、上記(1)から(4)までの作業を複数回繰り返し、これにより、「全ての測定対象者が真の値よりも参加時の測定値が高い又は多いために参加した」という仮説を満たすような集団、すなわち測定値が真の値よりも高い又は多い仮想の個人が参加する仮想の集団Rを模擬的に作成し、これを記憶手段Eに記憶させる、
(6)演算手段Eが、上記(5)で模擬的に作成した上記仮想の集団Rに含まれる仮想の各個人の測定値Xの真の値μからの偏差uの、上記仮想の集団R全体の平均uaveを、求め、これを記憶手段Fに記憶させる、
(7)演算手段Fが、上記(1)の式に基づいて、且つ、前記記憶手段Fから読み出した仮想の各個人の測定値の真の値からの偏差uの仮想の集団R全体の平均uaveと前記第2記憶手段から読み出した標準偏差σとに基づいて、上記の仮想の集団Rの「平均への回帰分」であるΔを、次式により求め、これを記憶手段Gに記憶させる、
Δ=仮想の各個人の測定値Xの仮想の集団R全体の平均Xave−仮想の各個人の真の値μの仮想の集団R全体の平均μave=仮想の各個人の測定値の真の値からの偏差uの仮想の集団R全体の平均uave×前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差σ
(8)制御手段が、前記演算手段A,B,C,D,E,及びFを制御して、上記(1)から(7)までの作業を複数回実施し、それぞれの実施で求められた各Δの平均値を求め、このΔの平均値を、前記実施対象集団の「平均への回帰分」と推定し、これを記憶手段Hに記憶させる。
【請求項4】
個人のHDLコレステロールや体力を表す指標である最大酸素摂取量などのように「値が上昇又は増加することに意義を持つ測定項目」の改善を目的として実施対象集団への介入実施を行うときの、その介入実施による真の効果を評価するための、コンピュータシステムを使用した方法であって、
第1入力手段により、「所定期間内における定期的な所定量の薬剤の投与、所定期間内における定期的な所定量の運動、所定期間内における摂取する栄養素の種類及び量の変更、及び、所定期間における定期的な喫煙量の減少の中の少なくとも一つ」を実施する前の実施対象集団の各個人それぞれの健康に関する事項を実測した結果を入力する第1ステップと、
第1演算手段が、前記第1入力手段により入力された実測結果に基づいて、前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値を求め、これを第1記憶手段に記憶する第2ステップと、
前記第2ステップと同時又は相前後して、第2演算手段が、前記第1入力手段により入力された実測結果に基づいて、前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差σを求め、これを第2記憶手段に記憶する第3ステップと、
推定手段が、前記第2記憶手段から読み出した前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差を使用して、前記実施前の実施対象集団の平均への回帰に相当する値である「平均への回帰分」を推定する第4ステップと、
前記ステップ2、ステップ3、及びステップ4の少なくともいずれか一つと同時に又は相前後して、第2入力手段により、前記実施の後の実施対象集団の各個人それぞれの健康に関する事項を実測した結果を入力する第5ステップと、
前記ステップ2、ステップ3、及びステップ4の少なくともいずれか一つと同時に又は相前後して、第3演算手段が、前記第2入力手段により入力された前記実施の後の前記実施対象集団の各個人それぞれの健康に関する事項の実測結果に基づいて、前記実施後の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値を求め、これを第3記憶手段に記憶する第6ステップと、
第4演算手段が、前記第1記憶手段から読み出した前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値と前記第3記憶手段から読み出した前記実施後の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値との差を求める第7ステップと、
比較手段が、前記第4演算手段から出力された前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値と前記実施後の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の平均値との差と、前記推定手段から出力された前記実施前の実施対象集団の「平均への回帰分」とを比較する第8ステップと、
前記比較手段から出力された比較結果をディスプレイなどの出力手段により出力する第9ステップと、
を含み、前記第4ステップにおける推定手段は、次の(1)から(8)までの手順により前記実施前の実施対象集団の「平均への回帰分」を推定するものである、実施対象集団への介入実施による真の効果の評価方法。
(1)演算手段Aが、仮想の個人における測定値の真の値からの偏差(u)を定義する次式のuiは正規分布をとることから、平均=0,標準偏差=1の正規乱数1個を、仮想の個人が持つ測定値の真の値からの偏差uとして、発生させ、これを記憶手段Aに記憶させる、
=(Xi−μi)/σ (この式において、Xは仮想の個人の測定値、μは仮想の個人の真の値、σは前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差である。)
(2)演算手段Bが、上記(1)で発生した正規乱数1個を前記記憶手段Aから読み出して、この正規乱数1個を「測定値が真の値よりも低い又は少ない個人が集団へ参加する確率が高い」とする次の推定式のuに代入することにより、前記偏差uを持つ仮想の個人が「全ての測定対象者が真の値よりも参加時の測定値が低い又は少ないために参加した」という仮説を満たす仮想の集団Rに参加する確率rateを求め、これを記憶手段Bに記憶させる、
参加する確率rate=1/(1+exp(a×u)) (この式において、expは指数関数、aは定数である。)
(3)演算手段Cが、0〜1の乱数(rとする)1個を、前記偏差uを持つ仮想の個人を前記仮想の集団Rに参加させるかどうかを決めるためのカットオフ値として、発生させ、これを記憶手段Cに記憶させる、
(4)演算手段Dが、上記(2)で求めた前記参加する確率rateを前記記憶手段Bから読み出して、これを、上記(3)で発生させ前記記憶手段Cに記憶させたカットオフ値としてのrと比較し、rate>rのときだけ、前記偏差uを持つ仮想の個人を、仮想の集団Rを構成する仮想の個人として、採用し、これを記憶手段Dに記憶させる、
(5)制御手段が、前記演算手段A,B,C,及びDを制御して、上記(1)から(4)までの作業を、複数回繰り返し、これにより、「全ての測定対象者が真の値よりも参加時の測定値が低い又は少ないために参加した」という仮説を満たすような集団、すなわち測定値が真の値よりも低い又は少ない仮想の個人が参加する仮想の集団Rを模擬的に作成し、これを記憶手段Eに記憶させる、
(6)演算手段Eが、上記(5)で模擬的に作成し記憶した上記仮想の集団Rに含まれる仮想の各個人の測定値Xの真の値μからの偏差uの、上記仮想の集団R全体の平均uaveを、求め、これを記憶手段Fに記憶させる、
(7)演算手段Fが、上記(1)の式に基づいて、且つ、前記記憶手段Fから読み出した仮想の各個人の測定値の真の値からの偏差uの仮想の集団R全体の平均uaveと前記第2記憶手段から読み出した標準偏差σとに基づいて、上記の仮想の集団Rの「平均への回帰分」であるΔを、次式により求め、これを記憶手段Gに記憶させる、
Δ=仮想の各個人の測定値Xの仮想の集団R全体の平均Xave−仮想の各個人の真の値μの仮想の集団R全体の平均μave=仮想の各個人の測定値の真の値からの偏差uの仮想の集団R全体の平均uave×前記実施前の実施対象集団の各個人の実測値の集団全体の標準偏差σ
(8)制御手段が、前記演算手段A,B,C,D,E,及びFを制御して、上記(1)から(7)までの作業を複数回実施し、それぞれの実施で求められた各Δの平均値を求め、このΔの平均値を、前記実施対象集団の「平均への回帰分」と推定し、これを記憶手段Hに記憶させる。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−350992(P2006−350992A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−272996(P2005−272996)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【特許番号】特許第3787149号(P3787149)
【特許公報発行日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(505181790)
【Fターム(参考)】