説明

介護用パンツ、介護用マット、介護用システム

【課題】より簡単な構造を有し、パンツ内部を汚さない介護用パンツを提供すると共に、介護用パンツの着衣者の姿勢を排泄しやすい体勢にし、床づれ防止機能及び自動寝返り機能を有する介護用マット及び介護用システムを提供する。
【解決手段】着衣者Hの臀部が着座する着座部11と、着座部11により周囲が囲まれるように設けられた凹状の便器部15と、着座部11の底部に設けられ膨張及び収縮が可能な台座部16A及び16Bを有する着座体10を備え、この着座体10がパンツ地により覆われ、台座部16A及び16Bは、着衣者Hが排便する際に膨張することにより、便器部15が着座部11から底方向に拡がって便器空間FSを形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、病人、体の不自由な人、自力でトイレに行くことが困難な人のための介護用パンツ、介護用マット及び介護用システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、本願発明者が出願した発明として、パンツ内部の排泄物を排出パイプ内に吸引してパンツ外部に排出すると共に、パンツ内部を洗浄する介護用パンツを備えた装置において、排泄物を排出パイプ内に取込む際は、人体の排泄部を取り囲むように開いた状態となり、排泄物を外部に排出する際は、排出パイプ内に引き込まれる状態となる排泄物取込部を備えたものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−224616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の介護用パンツ装置は、排泄物を排出パイプ内に取込む際に人体の排泄部を取り囲み、排泄物を外部に排出する際に排出パイプ内に引き込まれる排泄物取込部を有するので、構造及び制御が複雑となり、装置全体として高価となる問題点があった。
【0005】
この発明は上記のような従来の課題を解消するためになされたものであり、上記従来の介護用パンツを改良し、より簡単な構造を成し、パンツ内部を汚さない介護用パンツ及び介護用システムを提供することを目的とする。
【0006】
また、介護用パンツの着衣者の姿勢を排泄しやすい体勢にすると共に、床づれ防止機能及び自動寝返り機能を有する介護用マット及び介護用システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、着衣者Hの臀部が着座する着座部と、着座部により周囲が囲まれるように設けられた凹状の便器部と、着座部の底部に設けられ膨張及び収縮が可能な台座部を有する着座体を含み、台座部は、着衣者Hが排便する際に膨張することにより、便器部が着座部から底方向に拡がって便器空間を形成することを特徴とする介護用パンツである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の介護用パンツにおいて、台座部は着衣者Hの臀部に対して左右対称に配設されており、左右対称に配置された台座部に対して交互に媒体を導入又は排出して膨張又は収縮するようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の介護用パンツにおいて、着座体には、排泄物を吸引するための排出口、温度を調節した水を送水する送水口、温度を調節した空気を送風する送風口、並びに排泄物を検知する排泄物検知センサが設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3に記載の介護用パンツにおいて、着座体には、排泄物を撹拌する撹拌器が設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の介護用パンツを着衣した着衣者Hが使用する介護用マットであって、介護用パンツの着座体が収まる凹部が設けられている。
【0012】
請求項6の発明は、請求項5に記載の介護用マットにおいて、介護用マットはマット部と下敷部の多層構造から成っており、少なくとも着衣者Hの頭部に当たる下敷部には上記マット部を持ち上げる膨張体が配設されていることを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明は、請求項5に記載の介護用マットにおいて、介護用マットはマット部と下敷部の多層構造から成っており、下敷部には着衣者Hの中心線H1の左右対称位置に複数の膨張体を配設し、左右対称に配置された膨張体のどちらか一方側に媒体を導入して膨張させ、どちらか他方側の媒体を排出して収縮するようにしたことを特徴とする。
【0014】
請求項8の発明は、請求項1又は請求項2に記載の介護用パンツと、介護用パンツの着座体の台座部に対して媒体を導入又は排出する導入・排出手段とを備えたことを特徴とする介護用システムである。
【0015】
請求項9の発明は、請求項3に記載の介護用パンツと、介護用パンツの着座体の台座部に対して媒体を導入又は排出する導入・排出手段と、介護用パンツの着座体の排出口に接続され排泄物を排出パイプを通して吸引する排泄物吸引装置と、介護用パンツの着座体の送水口に接続されて温度を調節した水を送出する送水タンクと、介護用パンツの着座体の送風口に接続されて温度を調節した空気を送風する送風機と、介護用パンツの着座体の排出物検知センサの信号を入力し、導入・排出手段の導入及び排出制御、排泄物吸引装置の吸引制御、送水タンクの送水制御、並びに送風機の送風制御を行う制御部を備えたことを特徴とする介護用システムである。
【0016】
請求項10の発明は、請求項4に記載の介護用パンツと、介護用パンツの着座体の台座部に対して媒体を導入又は排出する導入・排出手段と、介護用パンツの着座体の排出口に接続され排泄物を排出パイプを通して吸引する排泄物吸引装置と、介護用パンツの着座体の送水口に接続されて温度を調節した水を送出する送水タンクと、介護用パンツの着座体の送風口に接続されて温度を調節した空気を送風する送風機と、介護用パンツの着座体の排出物検知センサの信号を入力し、導入・排出手段の導入及び排出制御、排泄物吸引装置の吸引制御、送水タンクの送水制御、送風機の送風制御、並びに介護用パンツの着座体の撹拌器の駆動制御を行う制御部を備えたことを特徴とする介護用システムである。
【0017】
請求項11の発明は、請求項6又は請求項7に記載の介護用マットと、介護用マットの膨張体に対して媒体を導入又は排出する導入・排出手段とを備えたことを特徴とする介護用システムである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、介護用パンツの台座部が、着衣者Hが排便する際に膨張することにより、便器部が着座部から底方向に拡がって充分な排泄物空間である便器空間FSを形成することができ、排泄物によって着衣者Hが汚れることがない。また、着衣者Hの排便時の姿勢を安定的に保持することができる。さらに、台座部は普段はパンツ地の内部で嵩張ることのないように収縮した状態に保持することができる。
【0019】
その他、この発明によれば、介護用パンツの着衣者の姿勢を排泄しやすい体勢にすると共に、床づれ防止機能及び自動寝返り機能を有する介護用マット及び介護用システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図に基づいて説明する。
【0021】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による介護用システムを示す全体構成図である。本実施の形態の介護用システムは、介護等を必要とする着衣者Hが着衣する介護用パンツ1と、介護用パンツ1の着衣者Hが使用する介護用マット50と、介護用システム全体を制御する制御部100と、着衣者Hまたは介護者が制御部100を手動で操作するための操作盤101と、排泄物を吸引するための排泄物吸引装置110と、温度を調節した水を供給するための送水タンク120と、温度を調節した空気を供給するための送風機130を備えている。介護用パンツ1は、着衣者Hが排泄する時に充分な排泄物空間(便器空間)を形成する着座体10(後記に詳しく説明する)を備えており、この着座体10の外側にはパンツ形状のパンツ地2(例えば布地)が取り付けられている。
【0022】
図2は本実施の形態による介護用システムを示す制御系統図である。介護用パンツ1の着座体10には、排泄物吸引装置110により排泄物を吸引するための排出パイプ111と、送水タンク120から温度を調節した水を供給するための送水パイプ121と、送風機130から温度を調節した空気を供給するための送風パイプ121とが連結されている。排泄物吸引装置110は着座体10内の排泄物を排出パイプ111を通して吸引する役割を果たすもので、吸引ポンプを内蔵している。送水タンク120は送水パイプ121を通して適切な温度に調節した水を着座体10内に送出する役割を果たすもので、送出ポンプ及び温度調節器を内蔵している。送風機130は送風パイプ131を通して適切な温度に調節した空気を着座体10内に送出すると共に後述する着座体10の台座部16A及び16Bに空気を導入する役割を果たすものである。
【0023】
また、排出パイプ111は介護用パンツ1から分離し取り外し可能なように構成されており、着衣者の移動時には介護用パンツ1と排出パイプ111との連結を取り外した後、通気性の良い栓をするようになっている。また、送水パイプ121及び送風パイプ131も介護用パンツ1から切り離すことができるように構成されている。さらに、介護用パンツ1の着座体10には、肛門等の排泄部に近接した位置に、排泄物に多く含まれる化学物質(例えばアンモニア等)、排泄物の臭い、又は排泄物の重量を検出する排泄物検知センサ5が取付けられている。更に、介護用パンツ1の着座体には、排泄物を撹拌する撹拌器6(後述;図3参照)が取り付けられている。そして、排泄物検知センサ5、撹拌器6、及び操作盤101の信号線は制御部100に取り外し可能に接続されている。
【0024】
制御部100は、本実施の形態の介護用システムの中央演算処理的な機能を果たすものであり、操作盤101の手動操作または予め設定されたプログラムに従って、撹拌器6の駆動制御、排泄物吸引装置110の吸引制御、送水タンク120の温度制御及び送水制御、並びに送風機130の温度制御及び送風制御を行う。
【0025】
図3は本実施の形態の介護用パンツ1の着座体10を示す斜視図である。本実施の形態の着座体10は、着衣者Hの臀部が着座する着座部11と、着座部11により周囲が囲まれるように設けられた凹状の便器部15と、着座部11の一端側に設けられた飛散防止部12と、着座部11の底部に設けられ膨張及び収縮が可能な台座部16A及び16Bから構成されている。上記着座体10の構成部材は、それぞれ水や汚れに強く、かつ汚れ等がついても拭き取りやすい素材であることが好ましく、さらに肌に優しい柔軟性を有する素材であることが好ましい。
【0026】
着座部11は、排便や尿等の排泄物が外部に漏れないように着衣者Hの臀部に密着するとともに、着衣者Hの肌に触れても違和感の無い柔軟性を有する素材で構成される。本実施の形態では、空気を内部に充填したビニール製のチューブ部材を使用している。
【0027】
飛散防止部12は、同じく尿等の排泄物が外部に漏れないために設けたもので、着衣者Hの肌に密着する密着部13を有している。本実施の形態では、飛散防止部12をビニール製部材で構成し、同じく密着部13を空気を内部に充填したビニール製のチューブ部材で構成している。また、飛散防止部12には、送水パイプ121が接続される送水口122と、送風パイプ131が接続される送風口132が設けられている。更に、飛散防止部12には、排泄物を検出する排泄物検知センサ5が設置されている。
【0028】
便器部15は、特に水や汚れに強く、汚れ等がついても拭き取りやすい素材であることが好ましく、またパンツ地2の内部でゴアゴアしないようにある程度柔軟性を有する素材であることが好ましい。本実施の形態では、ビニール製の部材を使用している。また、便器部15には、排出パイプ111が接続される排出口112と、送水パイプ121が接続される送水口122と、送風パイプ131が接続される送風口132が設けられている。更に、便器部15には、排泄物を検出する排泄物検知センサ5と、排出口112付近に排泄されて排泄物を撹拌する撹拌器6(水圧により駆動されるプロペラ等)が設置されている。
【0029】
台座部16A及び16Bは、送風機130から送風パイプ(図示せず)を通じて空気が導入されて膨張すると共に排気弁(図示せず)を介して排出パイプ(図示せず;例えば排泄物吸引装置110に接続)から空気を導出して収縮するように構成されている。つまり、台座部16A及び16Bは、着衣者Hが排便する際に膨張することにより、便器部15が着座部11から底方向に拡がって充分な排泄物空間である便器空間FSを形成するとともに、着衣者Hの排便時の姿勢を安定的に保持する役割を果たす。一方、台座部16A及び16Bは、普段はパンツ地の内部で嵩張ることのないように収縮した状態に保持される。本実施の形態では、台座部16A及び16Bは、便器部15を中心にして臀部の左右対称位置に一対配設されており、それぞれ空気を内部に充填できるビニール製のチューブ部材により構成されている。なお、上記説明では、台座部16A及び16Bに送風機130から空気を導入又は排出する例を示しているが、その他の媒体、例えば空気以外の気体やオイル等の液体でも良い。また、台座部16A及び16Bに空気等を導入又は排出する装置として、制御部100により制御される別個の装置を設けても良く、請求項ではそれらを総称して媒体を導入又は排出する導入・排出手段と呼んでいる。
【0030】
本実施の形態の介護用マット50は、図1に示すように、上層のマット部51と、下層の下敷部52、53及び54から構成されている。マット部51には、介護用パンツ1が収まる凹部55が設けられている。図4は介護用マット50の平面図を示したものである。図4(a)はマット部51の平面を示したものであり、介護用パンツ1の着衣者Hの中心線H1上であって臀部付近に凹部55が設けられている。図4(b)はマット部51を図示上方に垂直に持ち上げた際の下敷部52及び53の平面を示したものであり、下敷部52及び53の上面には、中心線H1を基準線としてその対称位置に膨張体B1〜B7が設けられている。なお、膨張体B1及びB2は着衣者Hの下半身付近に、膨張体B3及びB4は胴体部付近に、膨張体B5〜B7は頭部付近に配設されている。図4(c)はマット部51及び下敷部53を図示上方に垂直に持ち上げた際の下敷部52及び54の平面を示したものであり、下敷部54の上面には、中心線H1を基準線としてその対称位置に膨張体B8〜B10が設けられている。これらの膨張体B1〜B10は、送風機130から送風パイプ(図示せず)を通じて空気が導入され膨張すると共に、排気弁(図示せず)を介して排出パイプ(図示せず;例えば排泄物吸引装置110に接続)から空気が導出されて収縮するように構成されている。なお、膨張体B1〜B10は丈夫な風船等により構成すれば、安価でかつ構造が簡単になる。また、上記説明では、膨張体B1〜B10に送風機130から空気を導入又は排出する例を示しているが、その他の媒体、例えば空気以外の気体やオイル等の液体でも良い。また、膨張体B1〜B10に空気等を導入又は排出する装置として、制御部100により制御される別個の装置を設けても良く、請求項ではそれらを総称して媒体を導入又は排出する導入・排出手段と呼んでいる。
【0031】
次に、本実施の形態の介護用システムの動作について説明する。まず、介護用パンツ1を着衣者Hが着衣する。この場合、着座体10の着座部11が着衣者Hの臀部に密着するように、また飛散防止部12の密着部13が着衣者の肌に密着するように着衣する。そして、着衣者Hは介護用パンツ1を着たまま介護用マット50に横たわる。このとき、介護用パンツ1の着座体10はマット部51の凹部55に収まるようにする。そして、介護用パンツ1の着座体10の排出口112に排出パイプ111を連結すると共に、送水口122及び送風口132に送水パイプ121及び送風パイプ131を連結する。また、台座部16A及び16Bにも送風パイプ131を連結する。さらに、介護用パンツ1の着座体10の排泄物検知センサ5及び撹拌器6を制御部100の信号線に接続する。
【0032】
そして、介護用パンツ1の着衣者Hが排便等を始めると、着座体10の排泄物検知センサ5が臭いや排泄物を検知して、その検知信号が制御部100に送られる。制御部100は上記検知信号を受信すると同時に、送風機130に指令を出して、介護用マット50の下敷部53及び54に設置した膨張体B5〜B10に空気を導入して膨らませる。そうすると、図5に示すように、下敷部53が下敷部54の膨張体B8〜B10により持ち上げられ、マット部51が下敷部53の膨張体B5〜B7により持ち上げられて、マット部51に横になっている着衣者Hの上半身が起こされて排便がしやすい体勢にする。
【0033】
また、排泄物検知センサ5が臭いや排泄物を検知すると同時に、制御部100は送風機130に指令を出して台座部16A及び16Bに空気を導入して膨らませ、便器部15が着座部11から底方向に拡がって充分な排泄物空間である便器空間FSを形成する。この便器空間FSに排泄物が溜まることにより、着衣者Hの体が排泄物により汚れることがなくなり、不快な思いをしなくて済む。
【0034】
図6は本実施の形態の着座体10の台座部16A及び16Bが膨張又は収縮する様子を示す図である。図6(a)は着座体10の台座部16A及び16Bが膨張したときの図であり、台座部16A及び16Bが膨張することにより、便器部15は着座部11から底方向に拡がって充分な排泄物空間である便器空間FSを形成する。また、図6(b)は着座体10の台座部16A及び16Bが収縮したときの図であり、台座部16A及び16Bが収縮することにより、便器部15は着座部11から底斜め方向にへしゃげた形状になり、パンツ地2の内部で台座部16A及び16Bが嵩張ることのないような状態に保持される。なお、図6(c)は着座体10を裏面側から見た図であり、台座部16A及び16Bが着衣者Hの臀部に対して左右対称に配設されている。
【0035】
そして、排泄物検知センサ5が臭いや排泄物を検知している間、制御部100は、送水タンク120に指令を出して着座体10への温水の噴射を行う第1の動作と、排泄物吸引装置110に指令を出して着座体10の排泄物を吸引する第2の動作を、繰り返して行う。すなわち、送水タンク120の動作時には、便器部15の送水口122から着衣者Hの排泄部等に向かって温水が噴射されて排泄を促すと共に、便器部15に排泄された排泄物を温水噴射の水勢により浮上させる。次に、排泄物吸引装置110を動作させることにより、便器部15に溜まった排泄物や温水を真空排気して、排出口112及び排出パイプ111を通して排泄物吸引装置110内の排泄物タンク(図示せず)に吸引する。この排泄物の吸引動作の際に、排出口112付近に設けた撹拌器6が吸引時の水圧により回転することにより、堅い排泄物等を撹拌して柔らかくし排出口112からスムースに排出することができる。そして、上記第1及び第2の動作を、排泄物検知センサ5が臭いや排泄物を検知している間、繰り返す。なお、撹拌器6は、モータにより駆動されるプロペラ等であっても良く、その場合は、制御部100から駆動制御信号に基づき撹拌器6が撹拌動作を行うこととなる。
【0036】
次に、排泄物検知センサ5が臭いや排泄物を検知しなくなった場合、制御部100は送水タンク120に指令を出し、送水パイプ121から送水口122を通じて着衣者Hの肛門や着座体10の便器部15の内部に向かって温水を噴射し、人体及び介護用パンツ内部を洗浄する。一方、排泄物吸引装置110に取り込まれた排泄物は、携帯型の排泄物入れタンクに収納しても良いし、そのまま下水道施設に送り出しても良い。
【0037】
最後に、介護用パンツ1内の洗浄が終了すると、制御部100は送風機130に指令を出して、送風パイプ131及び送風口132を通して温風を介護用パンツ1の内部に供給して乾燥させる。
【0038】
上述の介護用システムの動作説明では、制御部100が予め設定されたプログラムに基づいて、排泄物吸引装置110の吸引制御、送水タンク120の温度制御及び送水制御、送風機130の温度制御及び送風制御等を行っていたが、操作盤101の手動操作により、排泄物吸引装置110の吸引制御、送水タンク120の温度制御及び送水制御、並びに送風機130の温度制御及び送風制御等を行っても良い。
【0039】
以上のように本実施の形態によれば、介護用パンツ1の台座部16A及び16Bが、着衣者Hが排便する際に膨張することにより、便器部15が着座部11から底方向に拡がって充分な排泄物空間である便器空間FSを形成することができ、排泄物によって着衣者Hが汚れることがない。また、着衣者Hの排便時の姿勢を安定的に保持することができる。さらに、台座部16A及び16Bは普段は介護用パンツ1のパンツ地2の内部で嵩張ることのないように収縮した状態に保持することができる。
【0040】
実施の形態2.
本実施の形態は、上記実施の形態1の着座体10の台座部16A及び16Bを利用して、介護用パンツ1の着衣者Hの臀部の床づれを防止しようとするものである。なお、介護用パンツ1、介護用マット50、介護用システムの構成は実施の形態1(図1〜図6)と同様であるのでその説明は省略する。
【0041】
本実施の形態の着座体10の台座部16A及び16Bは、図6(c)に示すように、着衣者Hの臀部に対して左右対称に配設されている。そして、介護用パンツ1の着衣者Hが介護用マット50に寝ているとき又は介護用椅子に腰掛けているとき、図示しない送風パイプを通じて、左右対称に配置された台座部16A及び16Bに対して所定間隔で交互に空気を導入又は排出して膨張及び収縮するように制御する。このとき、台座部16A及び16Bの一方が膨張しているときは、台座部16A及び16Bの他方は完全に収縮するようにする。このように、台座部16A及び16Bの他方を完全に収縮するようにすれば、着衣者Hの片側の臀部が浮いた状態にならないので船酔い状態を防止するとこができる。
【0042】
以上のように、本実施の形態によれば、着衣者Hの臀部の左右対称位置に配置された台座部16A及び16Bを所定間隔で交互に膨張及び収縮するようにしたので、簡単な構造で介護用パンツ1の着衣者Hの臀部の床ずれを防止することができる。
【0043】
実施の形態3.
本実施の形態は、上記実施の形態1の介護用マット50の膨張体B1〜B10を利用して、介護用マット50で寝ている介護用パンツ1の着衣者Hの床づれを防止しようとするものである。なお、介護用パンツ1、介護用マット50、介護用システムの構成は実施の形態1(図1〜図6)と同様であるのでその説明は省略する。
【0044】
本実施の形態の介護用マット50の下敷部52,53,54の膨張体B1〜B10は、図4に示すように、着衣者Hの中心線H1に対して左右対称に配設されている。そして、介護用パンツ1の着衣者Hが介護用マット50に寝ているとき、図示しない送風パイプを通じて、左右対称に配置された膨張体B1〜B10のどちらか一方側に空気を導入して膨張させ、どちらか他方側の空気を排出して収縮するように制御する。つまり、一方側の膨張体B1、B3、B5を膨張しているときは、他方側の膨張体B2、B4、B7を収縮した状態にし、他方側の膨張体B2、B4、B7を膨張しているときには、一方側の膨張体B1、B3、B5を収縮した状態にする。このとき、一方側の膨張体B1、B3、B5が膨張しているときは、他方側の膨張体B2、B4、B7は完全に収縮するようにする。このように、他方側の膨張体B2、B4、B7を完全に収縮するようにすれば、着衣者Hの左右の一方側が浮いた状態にならず着地した状態になるので船酔い状態を防止することができる。
【0045】
以上のように、本実施の形態によれば、着衣者Hの中心線H1に対して左右対称位置に配置された膨張体B1〜B10を交互に膨張及び収縮するようにしたので、簡単な構造で介護用マットに寝ている介護用パンツ1の着衣者Hの床ずれを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】この発明の実施の形態1による介護用システムを示す全体構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による介護用システムを示す制御系統図である。
【図3】この発明の実施の形態1による介護用パンツの着座体を示す斜視図である。
【図4】この発明の実施の形態1による介護用マットを示す平面図である。
【図5】この発明の実施の形態1による介護用マットの動作を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1の着座体の台座部が膨張又は収縮する様子を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1 介護用パンツ、2 パンツ地、5 排泄物検知センサ、10 着座体、
11 着座部、12 飛散防止部、13 密着部、15 便器部、FS 便器空間、
16A,16B 台座部、50 介護用マット、51 マット部、
52,53,54 下敷部、B1〜B10 膨張体、100 制御部、101 操作盤、
110 排泄物吸引装置、120 送水タンク、130 送風機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着衣者Hの臀部が着座する着座部と、上記着座部により周囲が囲まれるように設けられた凹状の便器部と、上記着座部の底部に設けられ膨張及び収縮が可能な台座部を有する着座体を含み、
上記台座部は、着衣者Hが排便する際に膨張することにより、上記便器部が上記着座部から底方向に拡がって便器空間を形成することを特徴とする介護用パンツ。
【請求項2】
上記台座部は着衣者Hの臀部に対して左右対称に配設されており、上記左右対称に配置された台座部に対して交互に媒体を導入又は排出して膨張又は収縮するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の介護用パンツ。
【請求項3】
上記着座体には、排泄物を吸引するための排出口、温度を調節した水を送水する送水口、温度を調節した空気を送風する送風口、並びに排泄物を検知する排泄物検知センサが設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の介護用パンツ。
【請求項4】
上記着座体には、排泄物を撹拌する撹拌器が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の介護用パンツ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の介護用パンツを着衣した着衣者Hが使用する介護用マットであって、上記介護用パンツの着座体が収まる凹部が設けられている介護用マット。
【請求項6】
上記介護用マットはマット部と下敷部の多層構造から成っており、少なくとも着衣者Hの頭部に当たる上記下敷部には上記マット部を持ち上げる膨張体が配設されていることを特徴とする請求項5に記載の介護用マット。
【請求項7】
上記介護用マットはマット部と下敷部の多層構造から成っており、上記下敷部には着衣者Hの中心線H1の左右対称位置に複数の膨張体を配設し、上記左右対称に配置された膨張体のどちらか一方側に媒体を導入して膨張させ、どちらか他方側の媒体を排出して収縮するようにしたことを特徴とする請求項5に記載の介護用マット。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載の介護用パンツと、上記介護用パンツの上記着座体の上記台座部に対して媒体を導入又は排出する導入・排出手段とを備えたことを特徴とする介護用システム。
【請求項9】
請求項3に記載の介護用パンツと、上記介護用パンツの上記着座体の上記台座部に対して媒体を導入又は排出する導入・排出手段と、上記介護用パンツの上記着座体の上記排出口に接続され排泄物を排出パイプを通して吸引する排泄物吸引装置と、上記介護用パンツの上記着座体の上記送水口に接続されて温度を調節した水を送出する送水タンクと、上記介護用パンツの上記着座体の上記送風口に接続されて温度を調節した空気を送風する送風機と、上記介護用パンツの上記着座体の上記排出物検知センサの信号を入力し、上記導入・排出手段の導入及び排出制御、上記排泄物吸引装置の吸引制御、上記送水タンクの送水制御、並びに上記送風機の送風制御を行う制御部を備えたことを特徴とする介護用システム。
【請求項10】
請求項4に記載の介護用パンツと、上記介護用パンツの上記着座体の上記台座部に対して媒体を導入又は排出する導入・排出手段と、上記介護用パンツの上記着座体の上記排出口に接続され排泄物を排出パイプを通して吸引する排泄物吸引装置と、上記介護用パンツの上記着座体の上記送水口に接続されて温度を調節した水を送出する送水タンクと、上記介護用パンツの上記着座体の上記送風口に接続されて温度を調節した空気を送風する送風機と、上記介護用パンツの上記着座体の上記排出物検知センサの信号を入力し、上記導入・排出手段の導入及び排出制御、上記排泄物吸引装置の吸引制御、上記送水タンクの送水制御、上記送風機の送風制御、並びに上記介護用パンツの上記着座体の上記撹拌器の駆動制御を行う制御部を備えたことを特徴とする介護用システム。
【請求項11】
請求項6又は請求項7に記載の介護用マットと、上記介護用マットの上記膨張体に対して媒体を導入又は排出する導入・排出手段とを備えたことを特徴とする介護用システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−119172(P2008−119172A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304911(P2006−304911)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(597057243)
【Fターム(参考)】