説明

介護用浴槽

【課題】
本発明の目的は、載置される入浴用担架の位置ずれが防止される介護用浴槽を提供することにある。
【解決手段】
本発明の介護用浴槽1は、底部21と底部21から立設された側壁部22とで形成される空間に湯を貯めるように構成された平面視略長方形状の浴槽本体2と、浴槽本体2の側壁部22上端部から浴槽本体2の外側に延出するリム部3とを有し、リム部3の一部には、入浴用担架10の枠体11の少なくとも一部を収容するように構成された段差部311が形成されている。そして、入浴用担架10の枠体11がリム部3の段差部311に収容されることにより、介護用浴槽1に対する入浴用担架10の移動が防止された状態で入浴用担架10が介護用浴槽1に載置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介護が必要とされる人を入浴させるための介護用浴槽であって、より詳しくは、入浴者を乗せて入浴させるための入浴用担架が載置された状態で用いられる介護用浴槽に関する。
【背景技術】
【0002】
訪問入浴サービスは、在宅の身障者や寝たきり老人などの要介護者に対する介護サービスの一環として行われている。このような訪問入浴サービスに従事する介護従事者は、介護用浴槽を自動車(入浴車)に積載して要介護者の住居に訪問し、入浴車から要介護者のいる住居内等に介護用浴槽を運搬する。そして、運搬した浴槽内に湯をはり、要介護者を乗せた状態の入浴用担架を浴槽上部に載置して、要介護者を入浴させる。ここで、特許文献1を参照して、従来の介護用浴槽において、入浴用担架を浴槽上部に載置した状態を図1に示す。
【0003】
図1に示すように、介護用浴槽100は、内側に湯を貯める浴槽本体101と、浴槽本体101の側壁部上端から浴槽本体101の外側に延出し、その上面が平らに形成されたリム部102とを有している。入浴用担架200は、左右両側の長辺部201、201と、左右両側の長辺部201、201を入浴者の頭部側および脚部側でそれぞれ連結する短辺部202、203とからなる略長方形状の枠体210と、枠体210内に位置し、入浴者を乗せて入浴させるための担架シート220とを有している。また、枠体210の一方の長辺部201端部には、ハンドル204が設けられており、このハンドル204の回転によって、担架シート220の左右両側縁を固定する固定用ベルト221、221の牽引または弛緩させることが可能な構造となっている。このような入浴用担架200は、枠体210の左右両側の長辺部201、201および入浴者の脚部側の短辺部203が、それぞれ、介護用浴槽100のリム部102上面に当接するようにして、介護用浴槽100に載置される。そして、ハンドル204を回転させて、担架シート220の固定用ベルト221、221を弛緩させることにより、担架シート220が浴槽内に下降して担架シート220に乗った入浴者を浴槽内に入浴させることができる。
【0004】
しかしながら、このような介護用浴槽100では、入浴用担架200の枠体210が平らに形成されたリム部102上面に単に載っているだけであるため、介護従事者が入浴者に対して洗髪等の入浴サービスを行う際に、入浴用担架200は介護用浴槽100に対して位置ずれを起こすことがあった。また、介護用浴槽100のリム部102よりも高い位置に入浴用担架200の枠体210が載置されるため、介護従事者は介護用浴槽100(リム部102)よりも高い位置まで入浴者を持ち上げてから担架シート220に乗せなければならず、介護従事者の作業負担が大きかった。また、入浴者にとっても、担架シート220に運ばれる際に、枠体210に触れたり、乗ったりすると不快感があった。そのため、入浴用担架が介護用浴槽に対して位置ずれを起こすことなく、安定して載置できるとともに、介護従事者が入浴者を入浴させるのに作業負担が軽減される介護用浴槽が求められる。
【0005】
また、訪問入浴サービスに用いられる介護用浴槽として、分割浴槽を用いる場合、以下のような問題あった。
【0006】
すなわち、従来の訪問入浴サービス用の分割浴槽は、第1半割槽と第2半割槽とから構成され、各半割槽は、槽部と槽部と結合されたフランジ部とを有しているとともに、各半割槽の長手方向のほぼ中央部に分割浴槽を訪問先の床に対して支持するための脚部を有している。そして、各半割槽のフランジ部同士を当接して、これらをクランプ機構等で結合して用いられる。しかしながら、従来の分割浴槽では、各槽部はFRP材料で形成されたものであるが、フランジ部はアルミ等の金属板を用いたものであった。各半割槽の構成部材として金属材料を使用しているため、分割浴槽全体としての軽量化に限界があった。また、従来の分割浴槽では、各半割槽を結合した(組み立てた)状態において、各フランジ部が着床しないように構成されている。これは、各半割槽のフランジ部間のシーリング性を保つため、また、アルミ板等で形成されたフランジ部が訪問先の床を傷付けないようにするためである。しかしながら、このような分割浴槽は、各半割槽の長手方向のほぼ中央部に設けられた2つの脚部のみで床に対して支持されているため、組み立てられた状態の分割浴槽のフランジ部周辺の底部に荷重がかかると、浴槽自体が中央で撓み易いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許4558972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の問題点を鑑みたものであり、その目的は、載置される入浴用担架の位置ずれが防止され、介護従事者の作業負担が軽減される介護用浴槽を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は以下の特徴(1)〜(7)を有する本発明により達成される。
(1) 入浴車に積載されて運搬され、使用時に、略長方形状の枠体と、該枠体内に位置し、入浴者を乗せて入浴させるための担架シートとを備えた入浴用担架が載置された状態で用いられる介護用浴槽であって、
底部と該底部から立設された側壁部とで形成される空間に湯を貯めるように構成された平面視略長方形状の浴槽本体と、該浴槽本体の前記側壁部上端部から前記浴槽本体の外側に延出するリム部とを有し、
前記リム部の一部には、前記入浴用担架の枠体の少なくとも一部を収容するように構成された段差部が形成されており、
前記入浴用担架の枠体が前記リム部の段差部に収容されることにより、介護用浴槽に対する前記入浴用担架の移動が防止された状態で該入浴用担架が載置されることを特徴とする介護用浴槽。
【0010】
(2) 前記入浴用担架の略長方形状の枠体は、左右両側の長辺部と、該左右両側の長辺部間を連結する入浴者の頭部側の短辺部と入浴者の脚部側の短辺部とを有するとともに、左右両側の各長辺部の入浴者の頭部側の端部が、前記左右両側の長辺部と連結する入浴者の頭部側の短辺部から突出しており、
前記リム部は、前記浴槽本体の長手方向の両方の前記側壁部上端部から前記浴槽本体の外側に延出する第1のリム部を有し、
前記段差部は、前記入浴用担架の左右両側の長辺部を収容するように、前記第1のリム部に形成されている上記(1)に記載の介護用浴槽。
【0011】
(3) 前記段差部は、前記第1のリム部の内側が略L字状に切り欠かれて形成されたものである上記(2)に記載の介護用浴槽。
【0012】
(4) 前記リム部は、さらに、前記浴槽本体の入浴者の頭部側の前記側壁部上端部から前記浴槽本体の外側に延出する第2のリム部と、前記浴槽本体の入浴者の脚部側の前記側壁部上端部から前記浴槽本体の外側に延出する第3のリム部とを有するとともに、前記リム部には、前記第2のリム部と該第2のリム部と隣接する前記第1のリム部との間の一部が切り欠かれて切欠き部が形成されており、
前記入浴用担架が介護用浴槽に載置される際に、前記入浴用担架の左右両側の長辺部が、前記左右両側の各長辺部の入浴者の頭部側の端部が前記切欠き部から前記浴槽本体の外側に延出した状態で、それぞれ前記第1のリム部に形成された段差部に収容されるとともに、前記入浴用担架の入浴者の頭部側の短辺部が、前記第2のリム部の内側に位置し、前記入浴用担架の入浴者の脚部側の短辺部が、前記第3のリム部の内側に位置する上記(3)に記載の介護用浴槽。
【0013】
(5) 前記入浴用担架が載置された状態で、前記リム部の上面が前記入浴用担架の枠体を構成する4つの辺部の上面とほぼ同じ高さになるように構成された上記(4)に記載の介護用浴槽。
【0014】
(6) 前記浴槽本体は、長手方向の略中央部で第1半割槽と第2半割槽とに分割可能である上記(5)に記載の介護用浴槽。
【0015】
(7) 略長方形状の枠体と、該枠体内に位置し、入浴者を乗せて入浴させるための担架シートとを備えた入浴用担架が載置された状態で用いられる介護用浴槽であって、
底部と該底部から立設された側壁部とで形成される空間に湯を貯めるように構成された平面視略長方形状の浴槽本体と、該浴槽本体の前記側壁部上端部から前記浴槽本体の外側に延出するリム部とを有し、
前記リム部の一部には、前記入浴用担架の枠体の少なくとも一部を収容するように構成された段差部が形成されており、
前記入浴用担架の枠体が前記リム部の段差部に収容されることにより、介護用浴槽に対する前記入浴用担架の移動が防止された状態で該入浴用担架が載置されることを特徴とする介護用浴槽。
【0016】
また、本発明は、以下の(8)〜(11)の特徴を有する分割浴槽も対象とする。
(8) 第1半割槽と第2半割槽とに分割した状態で入浴車に搬入または該入浴車から搬出され、使用時に、前記第1半割槽と前記第2半割槽とを結合手段によって一体に結合してなる分割浴槽であって、
前記第1半割槽は、底部と該底部から立設された側壁部とから形成された第1の槽部と、該第1の槽部の左右両側の前記側壁部および前記底部と連なって前記第1の槽部と一体に形成された第1の脚部と、前記第1の槽部の左右両側の前記側壁部および前記底部の分割面側の端部に沿って形成された第1のフランジ部とを有し、
前記第2半割槽は、底部と該底部から立設された側壁部とから形成された第2の槽部と、該第2の槽部の左右両側の前記側壁部および前記底部と連なって前記第2の槽部と一体に形成された第2の脚部と、前記第2の槽部の左右両側の前記側壁部および前記底部の分割面側の端部に沿って形成された第2のフランジ部とを有し、
前記第1半割槽および前記第2半割槽を構成する各部材は、いずれもFRP材料で形成されたものであり、
使用時に、前記第1半割槽の第1のフランジ部と前記第2半割槽の第2のフランジ部とが当接した状態で、前記結合手段によって前記第1半割槽と前記第2半割槽とが一体に結合されるとともに、前記当接した状態の第1のフランジ部と第2のフランジ部とが分割浴槽を支持する第3の脚部をなすことを特徴とする分割浴槽。
【0017】
(9) 前記第1の槽部および該第1の槽部と一体に形成された前記第1の脚部と、前記第2の槽部および該第2の槽部と一体に形成された前記第2の脚部とは、いずれも、少なくとも2層以上のFRP層を積層して形成されたものであり、
前記第1のフランジ部および前記第2のフランジ部は、いずれも、FRP板で形成されたものであり、前記第1の槽部および前記第2の槽部を構成する各FRP層の積層体の最上層と、該最上層の分割面側の端部で一体に成型される上記(8)に記載の分割浴槽。
【0018】
(10) 前記第1のフランジ部または前記第2のフランジ部のいずれかのフランジ部表面には、該フランジ部に連結する第1の槽部または第2の槽部の左右両側の前記側壁部および前記底部の分割面側の端部に沿って溝が形成され、該溝には、シールパッキング材が嵌入されており、
前記結合手段は、前記第1のフランジ部および前記第2のフランジ部の側面部左右上側に設けられた2つのクランプ機構と、前記第1のフランジ部および前記第2のフランジ部の側面部左右下側に設けられた2つのクランプ機構とから構成されており、
前記第1のフランジ部と前記第2のフランジ部とが、前記4つのクランプ機構によって結合される際に、前記第1のフランジ部と前記第2のフランジ部との間が前記シールパッキング材によってシーリングされる上記(9)に記載の分割浴槽。
【0019】
(11) 前記第1の槽部および前記第2の槽部は、いずれも、2層のFRP層を積層して形成されたものであり、
各FPR層の積層体の上層を成形するための上層用成形型と下層を形成するための下層用成形型とが、上下から互いにほぼ嵌合するように構成されており、
各FRP層の積層体の上層は、その上面側が前記上層用成形型に接した状態で形成され、各FRP層の積層体の下層は、その下面側が前記下層用成形型に接した状態で形成されており、
前記上層用成形型と前記下層用成形型とを上下から押し合わせて、前記上層と前記下層とを積層することにより各FRP層の積層体が形成される上記(10)に記載の分割浴槽。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来の介護用浴槽に入浴用担架が載置された状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の介護用浴槽の好適な実施形態(第1実施形態)を示す斜視図である。
【図3】図2に示す介護用浴槽に入浴用担架(担架シートは図示せず)が載置された状態を示す斜視図である。
【図4】図3に示す介護用浴槽および入浴用担架を図3中右側面側から見た斜視図である。
【図5】図3に示す介護用浴槽および入浴用担架の入浴者の頭部側から見た斜視図である。
【図6】図3に示す介護用浴槽および入浴用担架の入浴者の脚部側から見た斜視図である。
【図7】図2に示す介護用浴槽を構成する第1半割槽をフランジ部側から見た斜視図である。
【図8】図2に示す介護用浴槽を構成する第2半割槽をフランジ部側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の介護用浴槽を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて説明する。
本発明の介護用浴槽は、その上部に入浴者を乗せて入浴させるための入浴用担架が載置された状態で、入浴者を入浴させるために用いられるものである。このような介護用浴槽は、入浴車に積載されて運搬され、要介護者の住居に訪問した際に、介護従事者によって入浴車から要介護者の住居等まで搬出されて使用される訪問入浴サービス用に用いられる。
【0022】
図2は、本発明の介護用浴槽の好適な実施形態(第1実施形態)を示す斜視図、図3は、図2に示す介護用浴槽に入浴用担架が載置された状態を示す斜視図、図4は、図3に示す介護用浴槽および入浴用担架(担架シートは図示せず)を図3中右側面側から見た斜視図である。
【0023】
介護用浴槽1は、2分割可能な構成となっており、図2中、左手前側に配置された入浴者の洗髪が行われる第1半割槽4と、右奥側に配置された入浴者の胴部と脚部とを入浴させる第2半割槽5とを有している。このような介護用浴槽1は、第1半割槽4と第2半割槽5とに分割した状態で入浴車に搬入または入浴車から搬出され、使用時に、図2および図4に示すように第1半割槽4と第2半割槽5とを結合手段(クランプ機構6)によって一体に結合されて(組み立てられて)用いられるものである。まず、各半割槽4、5の詳細な説明をする前に、組み立てられた状態の介護用浴槽1の説明をする。
【0024】
図2に示すように、組み立てられた状態の介護用浴槽1は、底部21と底部21から立設された側壁部22とで形成される空間に湯を貯めるように構成された平面視略長方形状の浴槽本体2と、浴槽本体2の側壁部22上端部から浴槽本体2の外側に延出するリム部3とを有している。この介護用浴槽1は、図3に示すように、入浴者を乗せて入浴させるための入浴用担架10が載置された状態で用いられる。
【0025】
浴槽本体2は、図2中、左手前側の第1半割槽4部分の左右両側の側壁部22および底部21と連なって浴槽本体2と一体に形成された第1の脚部23、および右奥側の第2半割槽5部分の左右両側の側壁部22および底部21と連なって浴槽本体2と一体に形成された第2の脚部24を有している。さらに、浴槽本体2は、上記第1の脚部23および第2の脚部24に加え、第1半割槽4と第2半割槽5とが結合された部分の左右両側の側壁部22および底部21と連なって浴槽本体2と一体に形成された第3の脚部25を有している。組み立てられた状態の介護用浴槽1は、これらの各脚部23、24、25によって訪問先の床に支持される。
【0026】
リム部3は、その一部に、入浴用担架10の枠体11の少なくとも一部を収容するように構成された段差部が形成されている。このリム部3に形成された段差部に入浴用担架10の枠体11が収容されて、入浴用担架10が介護用浴槽1に載置される。以下、リム部3の段差部に収容される入浴用担架10の具体的な構成を説明してから、リム部3の具体的な構成および入浴用担架10が介護用浴槽1に載置された状態を説明する。
【0027】
図3に示すように、入浴用担架10は、略長方形状の枠体11と、枠体11内に位置し、入浴者を乗せて入浴させるための担架シート12とを備えている。この入浴用担架10の担架シート12に入浴者を乗せる際には、図3中、左手前側に入浴者の頭部が乗せられ、右奥側に入浴者の胴部および脚部が乗せられる。
【0028】
枠体11は、左右両側の長辺部111、111と、左右両側の長辺部111、111を連結する入浴者の頭部側の短辺部112と入浴者の脚部側の短辺部113とを有している。各長辺部111、111は、入浴者の頭部側の端部が、各長辺部111、111と連結する入浴者の頭部側の短辺部112から突出している。また、各長辺部111、111には、それぞれ、両端部に取っ手14が設けられている。さらに、各長辺部111、111には、ほぼ中央部に折り畳み部114、114が設けられており、この折り畳み部114、114において枠体11がほぼ半分の長さになるように折り畳むことができるようになっている。そのため、未使用時には入浴用担架10を折り畳んだ状態にしておくことにより、入浴車の省スペース化を図ることができる。
【0029】
担架シート12は、その左右両側縁を固定する固定用ロープ13、13によって枠体11に支持されている。この固定用ロープ13、13は、図3中手前側の長辺部111の入浴者の頭部側の端部に設けられたハンドル15と連動している。ハンドル15の回転によって、固定用ロープ13、13の牽引または弛緩させることが可能であり、入浴用担架10の担架シート12に入浴者を乗せた状態で、ハンドル15を回転させて、担架シート12の固定用ロープ13、13を弛緩させることにより、担架シート12が浴槽本体2内に下降して担架シート12に乗った入浴者を浴槽本体2内に入浴させることができる。
【0030】
次に、リム部3の具体的な構成および入浴用担架10が介護用浴槽1に載置された状態について説明する。
【0031】
リム部3は、図2に示すように、浴槽本体2の長手方向の両方の側壁部22上端部から浴槽本体2の外側に延出する第1のリム部31と、浴槽本体2の入浴者の頭部側の側壁部22上端部から浴槽本体2の外側に延出する第2のリム部32と、浴槽本体2の入浴者の脚部側の側壁部22上端部から浴槽本体2の外側に延出する第3のリム部33とを有している。
【0032】
リム部3の第1のリム部31は、その内側が略L字状に切り欠かれて形成された段差部311を有している。介護用浴槽1では、図3に示すように、使用時に、入浴用担架10の左右両側の長辺部111、111が第1のリム部31の段差部311に収容されて、入浴用担架10が介護用浴槽1に載置される。このように、入浴用担架10の枠体11が第1のリム部31の段差部311に収容されることにより、介護用浴槽1に対する入浴用担架10の移動が防止される。すなわち、介護用浴槽1では、入浴用担架10が介護用浴槽1に対して位置ずれすることなく、安定して載置される。そのため、介護従事者は、入浴用担架10の位置ずれの心配をする必要なく、入浴者への入浴サービスに専念することができる。したがって、単に入浴用担架の枠体を浴槽の平らに形成されたリム部上面に載せただけの従来の介護用浴槽に比べて、本発明の介護用浴槽1は、介護従事者にとって負担を軽減させることができるものである。
【0033】
また、リム部3は、第2のリム部32と第2のリム部32と隣接する第1のリム部31との間の一部が切り欠かれて形成された切欠き部34を有している。
【0034】
次に、入浴用担架10が介護用浴槽1に載置された際の入浴者の頭部側および脚部側の状態について説明する。
【0035】
図5は、図3に示す介護用浴槽および入浴用担架の入浴者の頭部側から見た斜視図、図6は、図3に示す介護用浴槽および入浴用担架の入浴者の脚部側から見た斜視図である。
【0036】
介護用浴槽1の入浴者の頭部側では、図5に示すように、入浴用担架10の各長辺部111、111の入浴者の頭部側の端部が切欠き部34から浴槽本体2の外側に延出する。そして、入浴用担架10の入浴者の頭部側の短辺部112が、浴槽本体2の第2のリム部32の内側に位置するとともに、当接するようになっている。
【0037】
一方、介護用浴槽1の入浴者の脚部側では、図6に示すように、入浴用担架10の各長辺部111、111の入浴者の脚部側の端部が浴槽本体2の第3のリム部33に当接し、入浴用担架10の入浴者の脚部側の短辺部113は、浴槽本体2の第3のリム部33の内側に位置するようになっている。
【0038】
このように、入浴用担架10が介護用浴槽1に載置された状態では、入浴用担架10の左右両側の長辺部111、111が第1のリム部31の段差部311に収容されることによって、入浴用担架10の浴槽本体2の短手方向への位置ずれを防止することができる。さらに、入浴用担架10の両短辺部112、113が、それぞれ第2のリム部32、第3のリム部33の浴槽本体2内側に位置することによって、入浴用担架10の浴槽本体2の長手方向への位置ずれも防止することができる。
【0039】
なお、リム部3は、入浴用担架10が介護用浴槽1に載置された状態で、その上面が入浴用担架10の枠体11を構成する各辺部(長辺部111、111および短辺部112、113)の上面とほぼ同じ高さとなるように構成されていることが好ましい。これにより、介護用浴槽1に安定的に入浴用担架10を載置することができ、また、介護用浴槽1に載置された状態の入浴用担架10が、リム部3から位置ずれするのが確実に防止される。また、枠体11を構成する各辺部の上面とリム部3の上面との間に段差がないので、介護従事者が入浴者に対して入浴サービスを行い易いというメリットがある。
【0040】
次に、介護用浴槽1を構成する各半割槽4、5の具体的な構成について説明する。
図7は、図2に示す介護用浴槽を構成する第1半割槽をフランジ部側から見た斜視図、図8は、図2に示す介護用浴槽を構成する第2半割槽をフランジ部側から見た斜視図である。
【0041】
第1半割槽4は、全体が強化プラスチック(FRP)材料で形成されており、図7に示すように、底部411と底部411から立設された側壁部412とから形成された第1の槽部41と、第1の槽部41と一体に形成された第1の脚部23(図2に示す)と、第1の槽部41の左右両側の側壁部412および底部411の分割面側の端部に沿って形成された第1のフランジ部42とを有している。また、第1のフランジ部42の側面部左右上下に、4つの止め具61が設けられている。
【0042】
また、第2半割槽5は、全体がFRP材料で形成されており、図8に示すように、底部511と底部511から立設された側壁部512とから形成された第2の槽部51と、第2の槽部51と一体に形成された第2の脚部24(図2に示す)と、第2の槽部51の左右両側の側壁部512および底部511の分割面側の端部に沿って形成された第2のフランジ部52とを有している。また、第2のフランジ部52の側面部左右上下に、第1半割槽4の4つの止め具61に対応した4つのクランプ62が設けられている。上述した第1半割槽4の4つの止め具61と第2半割槽5の4つのクランプ62とで4つのクランプ機構6を構成している。
【0043】
第1半割槽4の第1のフランジ部42表面には、連結する第2半割槽5の第2の槽部51の左右両側の側壁部512および底部511の分割面側の端部に沿って溝421が形成されており、溝421には、図示しないシールパッキング材が嵌入されている。そして、第1のフランジ部42と第2のフランジ部52とが、当接された状態で4つのクランプ機構6によって結合される際に、第1のフランジ部42と第2のフランジ部52との間がシールパッキング材によってシーリングされる。
【0044】
なお、従来の介護用の分割浴槽では、フランジ部にアルミ等の金属板を用いていたが、介護用浴槽1を構成する各半割槽4、5では、各フランジ部42、52の構成材料としてFRP材料を用いているため、軽量化されている。そのため、第1半割槽4と第2半割槽5とに分割した状態の介護用浴槽1の運搬をより楽に行うことができる。
【0045】
また、介護用浴槽1では、第1半割槽4と第2半割槽5とがクランプ機構6によって結合した状態で、互いに当接された第1のフランジ部42と第2のフランジ部52とが、図2に示す第3の脚部25をなしており、各半割槽4、5と一体に形成された第1の脚部23および第2の脚部24とともに、介護用浴槽1を床に対して支持している。介護用浴槽1では、各フランジ部42、52がFRP材料で形成されることから、アルミ板等に比べて適度な可撓性を有しており、そのため、各フランジ部42、52が着床した状態でも、フランジ部42、52間のシーリング性を十分に高いものとすることができる。介護用浴槽1では、第1の脚部23、第2の脚部24および第1の脚部23と第2の脚部24とのほぼ中央部に設けられた第3の脚部25の3つの脚部で均等に床に対して支持されるため、浴槽本体2の底部21のどの部位に荷重がかかっても、荷重分散されるので耐久性に優れたものとなる。
【0046】
また、このような半割槽4、5は、それぞれ、各槽部41、51および各槽部41、51と一体に形成された各脚部23、24が少なくとも2層以上のFRP層を積層して形成されたものである。また、各半割槽4、5のフランジ部42、52は、それぞれ、FRP板で形成されており、各槽部41、51を構成する各FRP層の積層体の最上層と、その最上層の分割面側の端部で一体に成型されるものである。このように、各槽部41、51および各脚部23、24をFRP層の積層体で形成し、浴槽の耐久性を高めている。また、各半割槽4、5のフランジ部42、52が各FRP層の積層体と接着剤で固着されるのではなく、各FRP層の最上層と一体に成型される。各フランジ部42、52と各FRP層の積層体との接合に接着剤を用いた場合、介護用浴槽を長期間使用し続けると、接着剤の経年劣化によって接合部分から水漏れする恐れがあるが、本件では、各FRP層の積層体の一部とフランジ部42、52との間に接合部分がないため、上記のような問題は発生しない。そのため、介護用浴槽1を長期間にわたって使用し続けることができる。
【0047】
各半割槽4、5の各槽部41、51および各脚部23、24を構成する各FRP層は、成形型に樹脂成分およびガラス繊維を含むFRP材料を充填した後、樹脂成分を硬化させて形成する公知の方法を用いて形成することができる。この各槽部41、51および各脚部23、24を2層のFRP層を積層して形成する場合、以下のようにして形成するのが好ましい。
【0048】
すなわち、上下から互いに嵌合するように構成されたFRP層の積層体の上層を形成するための上層用形成型と下層を形成するための下層用形成型とを準備する。そして、各FRP層の積層体の上層は、その上面側が上層用成形型に接した状態で形成するとともに、各FRP層の積層体の下層は、その下面側が下層用成形型に接した状態で形成する。その後、上層用成形型と下層用成形型とを上下から押し合わせて、上層と下層とを積層することにより各FRP層の積層体を形成する。
【0049】
成形型を用いてFRP層を形成する方法では、成形型に接する側の表面は、ざらつき感のない滑らかなものとなるが、成形型とは反対側に形成される側の表面は粗く、ざらついたものとなってしまう。成形型と反対側に形成される側の表面が浴槽の表面として露出していると、見た目にも美しくないし、入浴者が浴槽に触れた際にざらつき感から不快な思いをさせてしまう可能性がある。そのため、上記の形成方法では、2層のFRP層をなす各層の外表面側(上層の上面側および下層の下面側)が各成形型に接する側となるようにして形成することにより、形成された各槽部41、51および各脚部23、24の外表面が、ざらつき感のない滑らかなものとなる。
【0050】
なお、本実施形態では、介護用浴槽1が、第1半割槽4と第2半割槽5とに分割可能な分割浴槽であるものについて説明したが、分割しない一体型のものであってもよい。なお、このように介護用浴槽として一体型のものを用いた場合には、入浴用担架10を折り畳んだ状態で運搬する必要はない。例えば、図3に示すように介護用浴槽に入浴用担架10を載置した状態で入浴車に搬入、または入浴車から搬出すればよい。
【0051】
また、本実施形態では、訪問入浴サービス用に用いる介護用浴槽について説明したが、例えば、上述した構成の介護用浴槽1を、介護施設等に設置される設置型の介護用浴槽として用いることもできる。
【0052】
また、本実施形態では、介護用浴槽1は、リム部3に入浴用担架10の枠体11を収容する段差部311を有しているが、本発明はこれに限定されず、介護用浴槽として分割浴槽を用いる場合には、このような入浴用担架10の枠体11を収容するための段差部311を設けないものであってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…介護用浴槽 2…浴槽本体 21…底部 22…側壁部 23…第1の脚部 24…第2の脚部 25…第3の脚部 3…リム部 31…第1のリム部 311…段差部 32…第2のリム部 33…第3のリム部 34…切欠き部 4…第1半割槽 41…第1の槽部 411…底部 412…側壁部 42…第1のフランジ部 421…溝 5…第2半割槽 51…第2の槽部 511…底部 512…側壁部 52…第2のフランジ部 6…クランプ機構 61…止め具 62…クランプ 10…入浴用担架 11…枠体 111…長辺部 112…短辺部 113…短辺部 114…折り畳み部 12…担架シート 13…固定用ロープ 14…取っ手 15…ハンドル 100…介護用浴槽 101…浴槽本体 102…リム部 200…入浴用担架 201…長辺部 202…短辺部 203…短辺部 204…ハンドル 210…枠体 220…担架シート 221…固定用ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入浴車に積載されて運搬され、使用時に、略長方形状の枠体と、該枠体内に位置し、入浴者を乗せて入浴させるための担架シートとを備えた入浴用担架が載置された状態で用いられる介護用浴槽であって、
底部と該底部から立設された側壁部とで形成される空間に湯を貯めるように構成された平面視略長方形状の浴槽本体と、該浴槽本体の前記側壁部上端部から前記浴槽本体の外側に延出するリム部とを有し、
前記リム部の一部には、前記入浴用担架の枠体の少なくとも一部を収容するように構成された段差部が形成されており、
前記入浴用担架の枠体が前記リム部の段差部に収容されることにより、介護用浴槽に対する前記入浴用担架の移動が防止された状態で該入浴用担架が載置されることを特徴とする介護用浴槽。
【請求項2】
前記入浴用担架の略長方形状の枠体は、左右両側の長辺部と、該左右両側の長辺部間を連結する入浴者の頭部側の短辺部と入浴者の脚部側の短辺部とを有するとともに、左右両側の各長辺部の入浴者の頭部側の端部が、前記左右両側の長辺部と連結する入浴者の頭部側の短辺部から突出しており、
前記リム部は、前記浴槽本体の長手方向の両方の前記側壁部上端部から前記浴槽本体の外側に延出する第1のリム部を有し、
前記段差部は、前記入浴用担架の左右両側の長辺部を収容するように、前記第1のリム部に形成されている請求項1に記載の介護用浴槽。
【請求項3】
前記段差部は、前記第1のリム部の内側が略L字状に切り欠かれて形成されたものである請求項2に記載の介護用浴槽。
【請求項4】
前記リム部は、さらに、前記浴槽本体の入浴者の頭部側の前記側壁部上端部から前記浴槽本体の外側に延出する第2のリム部と、前記浴槽本体の入浴者の脚部側の前記側壁部上端部から前記浴槽本体の外側に延出する第3のリム部とを有するとともに、前記リム部には、前記第2のリム部と該第2のリム部と隣接する前記第1のリム部との間の一部が切り欠かれて切欠き部が形成されており、
前記入浴用担架が介護用浴槽に載置される際に、前記入浴用担架の左右両側の長辺部が、前記左右両側の各長辺部の入浴者の頭部側の端部が前記切欠き部から前記浴槽本体の外側に延出した状態で、それぞれ前記第1のリム部に形成された段差部に収容されるとともに、前記入浴用担架の入浴者の頭部側の短辺部が、前記第2のリム部の内側に位置し、前記入浴用担架の入浴者の脚部側の短辺部が、前記第3のリム部の内側に位置する請求項3に記載の介護用浴槽。
【請求項5】
前記入浴用担架が載置された状態で、前記リム部の上面が前記入浴用担架の枠体を構成する4つの辺部の上面とほぼ同じ高さになるように構成された請求項4に記載の介護用浴槽。
【請求項6】
前記浴槽本体は、長手方向の略中央部で第1半割槽と第2半割槽とに分割可能である請求項5に記載の介護用浴槽。
【請求項7】
略長方形状の枠体と、該枠体内に位置し、入浴者を乗せて入浴させるための担架シートとを備えた入浴用担架が載置された状態で用いられる介護用浴槽であって、
底部と該底部から立設された側壁部とで形成される空間に湯を貯めるように構成された平面視略長方形状の浴槽本体と、該浴槽本体の前記側壁部上端部から前記浴槽本体の外側に延出するリム部とを有し、
前記リム部の一部には、前記入浴用担架の枠体の少なくとも一部を収容するように構成された段差部が形成されており、
前記入浴用担架の枠体が前記リム部の段差部に収容されることにより、介護用浴槽に対する前記入浴用担架の移動が防止された状態で該入浴用担架が載置されることを特徴とする介護用浴槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−78478(P2013−78478A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220108(P2011−220108)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000134121)株式会社デベロ (8)
【Fターム(参考)】