説明

仕事風排気冷却機能を有する消音器を備えた集塵機

【課題】 簡単な構成により、安価に仕事風排気を冷却することができる集塵機を提供すること。
【解決手段】
冷却風導入型ブロワモーターを使用する集塵機であって、排気音を低減するための消音器を備え、該消音器内に冷却風排気と仕事風排気を取り込み、該消音器内において冷却風排気と仕事風排気を混合することにより仕事風排気の温度を低下させることを特徴とする集塵機を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仕事風排気冷却機能を有する消音器を備えた集塵機に関する。詳しくは、モーターの冷却風排気と仕事風排気とを混合することにより仕事風排気を冷却する消音器を備えた集塵機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダストを含んだ空気を集塵機内のフィルターでダストと空気の固気分離を行なう集塵機として、ダストを含んだ空気を吸引するためにブロワモーターを使用するものが知られている。このような集塵機においては、フィルターによりダストが除去された清浄な空気は、仕事風排気として、ブロワモーター内を通り集塵機外へ排出される。
【0003】
この種の集塵機に使用されるブロワモーターは、モーターの冷却方式により、主に2つの種類に分けられる。一つは、仕事風排気を直接モーターの冷却に使用するタイプで、いわゆるダイレクトタイプと呼ばれる種類である。もう一つは、仕事風とは別にモーター冷却用の空気を導入し、それによってモーターを冷却するタイプで、いわゆるバイパスタイプやタンジェンシャルタイプと呼ばれるものである。前者のタイプのブロワモーターは、一定の運転風量を確保しないとモーターを冷却するための仕事風排気が不足し、モーターが加熱してしまうおそれがある。そのため、低風量にて集塵機の運転を行なう可能性がある場合には、後者のタイプ(本明細書において、「冷却風導入型」と呼ぶ。)のブロワモーターが使用されることが多い。
【0004】
冷却風導入型のブロワモーターを使用する場合には、仕事風とは別に冷却風を取り込むため、低風量で連続運転を行なってもモーターが加熱する心配はない。ただしこの場合、モーターが仕事風による熱の影響を受けることを防ぐため、仕事風がモーターに触れないように隔壁を設ける必要がある。そのため、冷却風導入型ブロワモーターを使用する場合、冷却風排気と仕事風排気の2系統の排気が生じ、通常は別々に排気されている。ここで、集塵機の運転時間が長くなると、仕事風排気の温度が徐々に上昇し、作業者がそれに触れると熱くて非常に不快と感じるという問題があった。
【0005】
このような問題を解決するためには、集塵機の吸気温度や排気温度を下げればよいが、このように集塵機の吸気や排気を冷却する方法は、従来から種々知られている。
【0006】
例えば特許文献1の集塵機は、吸気部から排気部までの経路中に設けられており経路を流れる気体を冷却する冷却部を備えており、該冷却部は、集熱部と放熱部とで構成されている。該集熱部は、空気の流れ方向に長い複数の板状の部材(例えば、熱伝導率の良いアルミ板)から構成されており、該放熱部は、ラジエーターと接続されて水等の冷却用の液体が内部を循環することで集熱部から伝えられてきた熱を放熱するようになっている。
【0007】
また、特許文献2には、燃焼室と集塵機を接続するダクトにスプレー冷却機構を設け、該スプレー冷却機構により排ガスにスプレー水を噴霧し、それにより排ガスを冷却する方法が開示されている。
【0008】
しかしながら、上記の方法はいずれも、排気または吸気を冷却するための専用の装置を必要とし、さらに、その装置は複雑な構成のものである。そのため、それらの装置は高価で、例えば単価の安い小型の汎用集塵機などに採用することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−167502号公報
【特許文献2】特開2009−162408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、簡単な構成により、安価に仕事風排気を冷却することができる集塵機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、冷却風導入型ブロワモーターを使用する集塵機であって、排気音を低減するための消音器を備え、該消音器内に冷却風排気と仕事風排気を取り込み、該消音器内において冷却風排気と仕事風排気を混合することにより仕事風排気の温度を低下させることを特徴とする集塵機を提供する。このような構成とすることにより、簡単な構成で、安価に仕事風排気を冷却することができる。即ち、消音器に仕事風冷却装置としての機能を持たせることにより、仕事風冷却のためだけに使用する装置が不要であり、また当然ながら消音効果も有することから、極めて経済的である。
【0012】
また本発明は、前記消音器は箱型形状を成し、その内部に1枚または複数の仕切り板を有することを特徴とする集塵機としても良い。このような構成とすることにより、消音器内を通過する仕事風排気および冷却風排気に乱流が生じ、より効果的に仕事風排気と冷却風排気の混合を行うことができ、仕事風排気の冷却効率を高めることができる。また、このような構成によりダクト曲がり吸音効果が生じるため、より消音効果を高めることができる。
【0013】
また本発明は、前記仕切り板の高さが、前記箱型形状を形成する外箱の高さの50〜90%であることを特徴とする集塵機としても良い。このような構成とすることにより、より効率的に仕事風排気と冷却風排気の混合を行うことができ、なお且つ消音効果も高めることができる。
【0014】
また本発明は、前記仕切り板の枚数が、1〜5枚であることを特徴とする集塵機としても良い。このような構成とすることにより、消音器における抵抗が過大にならないため冷却風排気の流れを適切に保つことができ、前記ブロワモーターの冷却を効率よく行うことができる。
【0015】
また本発明は、前記ブロワモーターを冷却する冷却風の取り込み口と、前記ブロワモーターとの間に制御基盤を配置することにより、前記冷却風により制御基盤の冷却を行うことを特徴とする集塵機としても良い。このような構成とすることにより、制御基盤を冷却するための専用のファン等を設ける必要がなくなり、より一層経済的である。
【発明の効果】
【0016】
以上の通り本発明は、簡単な構成で安価に、確実に効率よく仕事風排気の温度を低下させることができ、なお且つ高い消音効果も発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の集塵機の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1に基づき本発明の仕事風排気冷却機能を有する消音器を備えた集塵機を詳細に説明する。図1に示すように、本発明の集塵機は、集塵用フィルター2と、モーター部3aおよびファン部3bからなる冷却風導入型ブロワモーター3と、放熱フィン4aを有する制御基盤4と、前記集塵用フィルター2、前記ブロワモーター3及び前記制御基盤4を収納するハウジング1と、ハウジング1に固着される消音器9とで構成さる。前記ハウジング1は、集塵用フィルター2が収納され、仕事風導入口5aより仕事風が導入される仕事風導入室5と、冷却風導入型ブロワモーター3のファン部3aが収納され、仕事風排気口6aより仕事風が排気される仕事風排気室6と、冷却風導入型ブロワモーター3のモーター部3bが収納され、冷却風排気口7aより冷却風が排気される冷却風排気室7と、制御基盤4が収納され、冷却風導入口8aより冷却風が導入される冷却風導入室8とに、それぞれ隔壁により区画される。
【0019】
次に消音器9について説明する。消音器9は、略直方体形状を成す外箱9aと、外箱9aの内部空間に垂設または立設される仕切り板9bとで構成され、外箱9aの内部空間が、前記仕事風排気口6aおよび前記冷却風排気口7aをそれぞれ介して、前記仕事風排気室6および前記冷却風排気室7と連通するようにハウジング1に固着されている。
【0020】
図1に示すように、本実施例において消音器9は2枚の仕切り板9bを使用しているが、これに限定されるものではなく、例えば1〜5枚の仕切り板を使用することができる。これは、仕切り板の枚数が多すぎると消音器内を冷却風排気および仕事風排気が通過する際の抵抗が過大となり、ブロワモーターの冷却が十分に行なえないためで、仕切り板の枚数を1〜5枚とすることにより、消音効果を発揮しつつブロワモーターの冷却を十分に行うことができる。なお、仕切り板9bを複数枚使用する場合には、それぞれの仕切り板は外箱9a内に垂設または立設され、垂設される仕切り板と立設される仕切り板は、それぞれ交互に配置される(図1に示すように本実施例においては、1枚目の仕切り板が垂設され、2枚目の仕切り板が立設されている)。
【0021】
また、本実施例の仕切り板9bは、幅は外箱9aと同じであり、高さは、外箱9aの高さの75%とされている。ただし、仕切り板の高さはこれに限定されるものではなく、外箱の高さの50〜90%の範囲に含まれていればよい。仕切り板の高さをこのようにすることにより、消音器9は十分な消音効果を発揮しつつ、なお且つ冷却風排気と仕事風排気との混合を十分に行うことができる。
【0022】
さらに本発明の消音器9には、消音効果をより高めるために吸音材を使用しても良い。ここで、吸音材とは、グラスウールやウレタンフォームなど一般的に使用されているものを使うことができ、特に限定されるものではない。本実施例では、厚さ5mmのウレタンフォームが、外箱9aの内側および仕切り板9bに貼着されている。
【0023】
次に、本発明の集塵機の動作について説明する。本発明の集塵機は、ブロワモーター3を作動させることにより、吸引パイプ10より仕事風導入口5aを介して、ダストを含んだ被集塵空気、即ち仕事風を、仕事風導入室5に導入する。
【0024】
仕事風導入室5に流入した仕事風は、集塵用フィルター2を通過する際、その中に含まれるダストが集塵用フィルター2により捕集され、清浄な空気となる。なお、本実施例では集塵用フィルターとしてプリーツ型のフィルターを使用している。清浄な空気となった仕事風は、ブロワモーター3のファン部3bを通過し、仕事風排気として仕事風排気口6aから消音器9a内に排気される。なお、仕事風排気がブロワモーター3のモーター部3aに触れないように、ファン部3bを収納する仕事風排気室6とモーター部3aを収納する冷却風排気室7は隔壁で仕切られている。これにより、モーター部3aが仕事風排気の熱の影響を受けることを防ぐことができる。
【0025】
一方、冷却風導入口8aより、ブロワモーター3のモーター部3aを冷却するための冷却風が集塵機外から導入される。導入された冷却風は、放熱フィン4aを有する制御基盤4を通過してモーター部3a内に導入され、モーター部3aを冷却した後冷却風排気口7aから消音器9a内に排気される。
【0026】
なお本実施例では、制御基盤4にはブロワモーター3を制御するための基盤および集塵機のその他の機能を制御するための基盤、並びに電源ユニットが含まれる。本実施例のように放熱フィン4aを有する制御基盤4を冷却風の通過経路に配置することにより、ブロワモーター用の冷却風で制御基盤4も冷却することができるため、制御基盤4専用の冷却装置を設ける必要がなく経済的である。
【0027】
消音器9内に排気された仕事風排気および冷却風排気は、消音器9内を通過する際に混ざり合い、それによって仕事風排気の温度は低下し、集塵機外へ排気される。先述の通り本実施例では消音器9内に仕切り板9bが設けられているため、気流を曲げることによって生じるダクト曲がり吸音効果による消音効果、および気流を曲げて乱流を発生させることによって生じるミキシング効果を発生させることができ、効果的に排気音の低減および仕事風排気と冷却風排気の混合を行うことができる。
【0028】
以下に、本実施例と、本実施例の集塵機から消音器9のみを外した集塵機(比較実施例)との比較データを示す(表1および表2)。表1は排気温度に関する比較データであり、表2は騒音値に関する比較データである。
【0029】







【0030】







【0031】
表1における仕事風排気および冷却風排気は、それぞれブロワモーターから排気された直後の温度を示しており、実施例の「消音器通過後」は、消音器の出口における温度を示している。表1から分かるように、実施例では65℃で排気された仕事風が、消音器通過後、即ち集塵機外へ排気される際には45℃まで冷却されている。一方比較実施例では、63℃の仕事風排気がそのまま集塵機外へ排気される。この比較データから、本発明の集塵機が確実に仕事風排気を冷却できていることが分かる。
【0032】
表2の騒音値(dB)は、集塵機本体から1m離れた地点での騒音値を計測したものである。表2より、全ての場所において比較実施例より本実施例の方が騒音値が低く、本発明の集塵機が確実に排気音を低減できていることが分かる。
【0033】
以上の通り本発明は、簡単な構成で、仕事風排気の温度を作業者が不快に感じない程度にまで低下させることができ、なお且つ排気音も低減することができ、作業環境の改善に資するものである。
【0034】
以上、本発明による代表的実施例について説明したが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、当業者であれば、添付した特許請求の範囲を逸脱することなく、種々の代替実施例及び改変例を見出すことは可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 ハウジング
2 集塵用フィルター
3 冷却風導入型ブロワモーター
4 制御基盤
5a 仕事風導入口
6a 仕事風排気口
7a 冷却風排気口
8a 冷却風導入口
9 消音器
9b 仕切り板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却風導入型ブロワモーターを使用する集塵機であって、排気音を低減するための消音器を備え、該消音器内に冷却風排気と仕事風排気を取り込み、該消音器内において冷却風排気と仕事風排気を混合することにより仕事風排気の温度を低下させることを特徴とする集塵機。
【請求項2】
前記消音器は箱型形状を成し、その内部に1枚または複数の仕切り板を有することを特徴とする請求項1記載の集塵機。
【請求項3】
前記仕切り板の高さが、前記箱型形状を形成する外箱の高さの50〜90%であることを特徴とする請求項2記載の集塵機。
【請求項4】
前記仕切り板の枚数が、1〜5枚であることを特徴とする請求項2,3記載の集塵機。
【請求項5】
前記ブロワモーターを冷却する冷却風の取り込み口と、前記ブロワモーターとの間に制御基盤を配置することにより、前記冷却風により制御基盤の冷却を行うことを特徴とする請求項1乃至4記載の集塵機。


【図1】
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【公開番号】特開2012−115795(P2012−115795A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269838(P2010−269838)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000191009)新東工業株式会社 (474)
【Fターム(参考)】