説明

仕切弁

【課題】仕切弁の分解点検時に弁棒を取外す場合、メンテナンスし易くし、弁座シート部のOリングの弁箱内への脱落を防止し、弁座シート部の取付け個所を減少して、窒素ガスがリークする可能性も低減する。
【解決手段】仕切弁の弁座シート部を弁箱と一体化し、シート部材であるOリングを削除することにより、分解点検時のメンテナンス性が向上する。また、定検時に仕切弁を弁箱から取外す際のOリング脱落の可能性も無くなり、ルースパーツ対策としても有効である。弁蓋と弁棒間にばねを設置することにより、弁閉時に弁棒をシート部に対して押付けることが可能となり、シート性能を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電プラント、火力発電プラント、水力発電プラント、化学プラント等の各種プラントにおける水圧制御ユニット(HCU)の仕切弁に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントおよび上記各プラントにおいては、制御棒駆動機構を作動させる制御棒水圧駆動水圧系の一つとして、窒素ガスを用いた計装ユニットである水圧制御ユニット(HCU)が設置されている。この水圧制御ユニットには、窒素容器内の窒素ガスの供給を制御する止弁として、仕切弁(カートリッジ弁)が設置されている。
【0003】
図2は、このような仕切弁の従来構成を示す縦断面図である。図2に示した仕切弁101は主要構成部材として、流路103,104を有する弁箱102と、この弁箱102に装着される弁蓋107と、弁蓋107を介して弁箱102内に挿入され弁シート部を構成する弁棒108と、この弁棒を操作するハンドホイール112等を備えている。
【0004】
弁箱102は例えば直方体状をなしており、この弁箱102内の下部には横向きの流路103,104が平面視で互いに交差する配置で、かつ上下に位置を異ならせて形成されている。上記流路103,104は、弁箱102内において互いに上下方向に沿う連通路105によって連絡されている。
【0005】
また、弁箱102には平面視円形状の凹穴からなる弁取付け穴106が形成されており、この弁取付け穴106は下側が順次に小径となる段付きの縦穴となっている(図2の例では上から第1段部106a、第2段部106b、第3段部106cを有する。)。この弁取付け穴106が、その内周面に対応する段付き筒状の弁蓋107によって塞がれている。そして、弁蓋107には弁棒108が挿入されており、この弁棒108に形成したねじ部108aにより、弁操作時に弁棒108が軸心回りに回転されて軸方向に進退移動する。これにより、弁棒108の挿入先端部(下端部)に設けたリング状部材からなるディスク109が弁取付け穴106の底面に着脱され、流路の開閉を行う構成としてある。
【0006】
この構成をさらに具体的に説明すると、弁箱102内の第1段部106aには上部Oリング110とバックアップリング111とが挿入してあり、弁蓋107の上部外周のシート部を構成している。
【0007】
弁蓋107の中心部には弁棒108が挿入され、弁棒108はその外周部に形成したねじ部108aを介して弁箱102に取付けられている。弁棒108の上端には、ハンドホイール112と銘板113とがハンドホイールナット114により取付けられており、ハンドホイール112を回転させることにより、弁蓋107に対して弁棒108が上下方向に動作する。また、弁蓋107の下端には弁座部材115が取付けてあり、この弁座部材115の下面に設けた上部Oリング110が弁箱102との間でシート面を構成している。
【0008】
弁棒108の下端に設置されたディスク109と弁座部材115の上面においても、シート面が構成されている。そして、ハンドホイール112を回転させて弁棒108を下方に移動させることにより、弁棒108の下端に設けられたディスク109と、弁座部材115の上面とがシート面を構成し、仕切弁としての機能を果たしている。
【0009】
また、弁棒108を上方に移動させると、弁棒108はディスク109と接触することによりシート面を構成し、仕切弁101の外部へのリークを防止することができる。この状態で上側流路103から下側の流路104側に、矢印f1で示すように弁開となって流体が流通することができる。
【0010】
なお、弁蓋107の上部には、上面が開口する縦向き円筒部107aが設けてあり、さらに内部にはグランドパッキン119、アダプタ120、およびパッキン押えとしてのグランド121が設けてある。
【0011】
さらに、アダプタ120とグランド121とが、グランドパッキン119を挟み込む形で設置されており、グランドナット122を締付けると、グランド121を介してグランドパッキン119が押し広がることにより、仕切弁101の内部から外部への流体のリークが防止される構成となっている。なお、この種の関連技術としては、比較的簡易な構成の仕切弁が開示されている(例えば特許文献1等参照)。
【特許文献1】特開平04−8874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述した従来の仕切弁において、弁蓋の下端部に設けられた弁棒と弁座との間、また弁座と弁箱との間に2個所で内部流体に対するシート面が構成されている。また、弁蓋と弁箱間に弁座を介してシート面が構成されている。仕切弁の先端には弁座が取付けられ、弁座にはシート部材としてOリングが設置されている。
【0013】
このような構成において、仕切弁の分解点検時に弁棒を取外すために弁座を取外す必要がある。この場合、弁棒、弁座および弁箱の間に2個所でシート面が構成されており、また弁蓋と弁箱間に弁座を介してシート面が構成されているため、部材数が多くなり、弁棒を取外す際の作業に多くの際の手間、あるいは面倒な作業を要するため、メンテナンスし難いという問題がある。
【0014】
また、弁座下面にはOリングが設置されているため、点検時等に仕切弁を弁箱から取外す際に、このOリングが弁箱内に脱落してルースパーツとなる可能性もある。さらに、シート部が2個所あるため、窒素ガスがリークする可能性も高くなる。
【0015】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、メンテナンス性を向上することができるとともに、Oリング脱落等のルースパーツの発生防止対策を施すことができ、さらにシート性能を向上することができる仕切弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するため、本発明では、流路を有する弁箱の上面側に弁取付け穴を形成し、この弁取付け穴内に嵌着した弁蓋に縦長な弁棒を挿入し、この弁棒を上下方向に移動させることにより、前記弁棒の挿入先端部に設けたディスクを前記弁取付け穴の底面に着脱させて前記流路の開閉を行う仕切弁であって、前記弁箱に形成した前記弁取付け穴の底面を弁座シート部として構成し、この弁座シート部に前記弁棒の挿入先端部のディスクを押付けることにより、前記流路をシールする構成としたことを特徴とする仕切弁を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、弁座と弁箱とを一体構成とすることにより、従来構成における弁座シート部のOリングを削除する構成となっている。これにより、構成部品を減少することで部品数を減少して構成の簡素化が図れるとともに、メンテナンス性の向上が図れ、さらに下部Oリングを省略することによってルースパーツの発生防止を図ることができる。
【0018】
その結果、弁座部材およびOリングが削除されたことにより、仕切弁分解点検時のメンテナンス性が向上する。
【0019】
なお、弁蓋と弁棒との間にディスクを下向きに圧縮するばね部材を設置することにより、弁閉止時における加圧力を高めることができ、これによりシール性能を向上させることができる。
【0020】
また、分解点検のために仕切弁を弁箱から取外す際のOリング脱落の可能性が無くなり、ルースパーツ対策としても有効である。さらに、ばね力により、シール性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る仕切弁の一実施形態について、図1を参照して説明する。
【0022】
図1は本発明の一実施形態による仕切弁の実施形態を説明するための縦断面図である。この図1に示すように、本実施形態の仕切弁1は主要構成部材として、弁箱2と、この弁箱2に装着される弁蓋7と、弁蓋7を介して弁箱2内に挿入され弁シート部を構成する弁棒8と、この弁棒8を操作するハンドホイール12等を備えている。
【0023】
弁箱2は例えば直方体状をなしており、この弁箱2内の下部には横向きの流路3,4が平面視で互いに交差する配置で、かつ上下に位置を異ならせて形成されている。上記流路3,4は、弁箱2内において互いに上下方向に沿う連通路5によって連絡されている。
【0024】
また、弁箱2には平面視円形状の凹穴からなる弁取付け穴6が形成されている。この弁取付け穴6は下側が順次に小径となる段付きの縦穴であり、上から第1段部6a、第2段部6bのみが形成されており、穴構成の簡素化が図られている。
【0025】
弁取付け穴6は、その内周面に対応する段付き筒状の弁蓋7によって塞がれている。そして、弁蓋7には弁棒8が挿入されており、この弁棒8に形成したねじ部8aが弁蓋7のない周面のねじ部7aに螺合して、弁操作時に弁棒8が軸心回りに回転して軸方向(上下方向)に進退移動する。弁棒8の挿入先端部(下端部)には次第に下向きに拡径する傾斜状拡径部8bが形成してあり、さらにその下部が円柱ブロック部8cとなっている。この円柱状ブロック部8cの下端面部にリング状部材からなるディスク9が固着されて、これらの下面がシート部として面一に形成されている。ディスク9の下面には、弁棒8の傾斜状拡径部8bを下方に押圧するスプリングとして、圧縮コイルばね23が設けられている。
【0026】
一方、弁箱2内においては、流路3の上方において、ディスク9と対向する配置で上向き円筒状の弁座シート部15が弁箱2と一体に形成してある。そして、弁箱2と一体の弁座シート部15に対して、弁棒8の下端に設けられたディスク9が対向し、これらが直接接触するシート面が構成されている。弁座シート部15の周囲部には、弁座シート部15よりも低い円形の溝部15aが形成されている。
【0027】
なお、弁箱2内の第1段部7aには上部Oリング10とバックアップリング11とが挿入してあり、弁蓋7の上部外周のシート部を構成している。また、弁棒8の上端には、ハンドホイール12と銘板13とがハンドホイールナット14により取付けられており、ハンドホイール12を回転させることにより、弁蓋7に対して弁棒8が上下方向に動作するようにしてある。この状態で上側流路4側から下側の流路3側に、矢印f2で示すように弁開となって流体が流通することができる。
【0028】
すなわち、弁箱2に形成した凹部からなる弁取付け穴6の底面を弁座シート部15として構成し、この弁座シート部15に弁棒8の挿入先端部のディスク9を押付けることにより、流路5をシールする構成としてある。
【0029】
そして、ハンドホイール12を回転させて弁棒8を下方に移動させることにより、弁棒8の下端に設けられたディスク9と、弁箱2と一体の弁座シート部15の上面とがシート面を構成し、仕切弁としての機能を果たすようにしている。
【0030】
また、弁棒8を上方に移動させると、弁棒8の傾斜状拡径部8bが内部ディスク9と接触することによりシート面を構成し、仕切弁1の外部へのリークを防止することができる。
【0031】
弁蓋7の上部には、上面が開口する縦向き円筒部7aが設けてあり、この縦向き円筒部7aの内部にはアダプタ16、パッキン押えとしてのグランド17、およびグランドパッキン19が設けてある。
【0032】
さらに、アダプタ16とグランド17とは、グランドパッキン19を挟み込む形で弁棒8の上部に設置されており、グランドナット22を締付けると、グランド17を介してグランドパッキン19が押し広がることにより、仕切弁1の内部から外部への流体のリークが防止される構成となっている。なお、弁棒8の上端には、ハンドホイール12と銘板13とがハンドホイールナット14により取付けられており、ハンドホイール12を回転させることにより、弁蓋7に対して弁棒8を上下方向に動作させることができる。
【0033】
以上の実施形態によれば、ハンドホイール12を回転させることにより弁蓋7に対して弁棒8が軸方向に移動して弁が開閉し、弁棒8の先端に設置されたディスク9を弁座シート部15に押付けることによりシールする仕切弁1において、弁座シート部15と弁箱2を一体構成とし、弁座シート部15のOリングを削除することにより、メンテナンス性の向上と、ルースパーツ対策を実現することができる。
【0034】
また、弁蓋7と弁棒8との間に圧縮コイルばね等のスプリング23を設置することにより、シール性能を従来に比して向上させることができる。
【0035】
さらに、本実施形態によれば、弁座シート部15と弁箱2を一体構成としたことにより、部品数を減少し、仕切弁構成を簡素化できるとともに、組立ておよび分解等の作業を容易とすることができる。
【0036】
そして、スプリング23により弁棒8を弁箱2に押付けることができ、その結果、従来の弁座部材、下部Oリング等を削除することにより、仕切弁分解点検時のメンテナンス性を向上することができる。
【0037】
また、分解点検のため、仕切弁構成部材を弁箱から取外す際にOリング脱落の可能性が無くなり、ルースパーツ発生防止の対策としても有効なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態による仕切弁の構成を示す縦断面図。
【図2】従来の仕切弁の構成を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0039】
1‥仕切弁、2‥弁箱、3,4‥流路、5‥連通路、6‥弁取付け穴、6a‥第1段部、6b‥第2段部、7‥弁蓋、7a‥縦向き円筒部、8‥弁棒、12‥ハンドホイール、8‥弁棒、7a‥ねじ部、7a‥弁箱2内の第1段部、8a‥ねじ部、8b‥傾斜状拡径部、8c‥円柱ブロック部、9‥ディスク、10‥上部Oリング、11‥バックアップリング、12‥ハンドホイール、13‥銘板、14‥ハンドホイールナット、15‥弁座シート部、15a‥溝部、16‥アダプタ、17‥グランド、19‥グランドパッキン、22‥グランドナット、23‥スプリング(圧縮コイルばね)、101‥仕切弁、102‥弁箱、103,104‥流路、105‥連通路、106‥弁取付け穴、106a‥第1段部、106b‥第2段部、106c‥第3段部、107‥弁蓋、107a‥縦向き円筒部、108‥弁棒、108a‥ねじ部、109‥ディスク、110‥上部Oリング、111‥バックアップリング、112‥ハンドホイール、113‥銘板、114‥ハンドホイールナット、15‥弁座部材、116‥アダプタ、117‥グランド、119‥グランドパッキン、120‥アダプタ、121‥グランド、122‥グランドナット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を有する弁箱の上面側に弁取付け穴を形成し、この弁取付け穴内に嵌着した弁蓋に縦長な弁棒を挿入し、この弁棒を上下方向に移動させることにより、前記弁棒の挿入先端部に設けたディスクを前記弁取付け穴の底面に着脱させて前記流路の開閉を行う仕切弁であって、前記弁箱に形成した前記弁取付け穴の底面を弁座シート部として構成し、この弁座シート部に前記弁棒の挿入先端部のディスクを押付けることにより、前記流路をシールする構成としたことを特徴とする仕切弁。
【請求項2】
前記弁箱と前記弁蓋との接合部をシールする手段として、Oリングを前記弁箱内の上部近傍の1箇所に設けた請求項1記載の仕切弁。
【請求項3】
前記弁蓋の下端に前記弁座部材を取付け、この弁座部材の下面に設けたOリングが前記弁箱との間でシート面を構成している請求項1記載の仕切弁。
【請求項4】
前記弁蓋と、前記弁棒との間にばねを設置し、前記弁棒を前記弁箱に対して押付ける構成とした請求項1記載の仕切弁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−117001(P2010−117001A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291993(P2008−291993)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】