説明

付加硬化性シリコーンゴム組成物及びその硬化物

【課題】低硬度、高伸張性で、引張り強度及び引裂き強度が高く、しかも良好なゴム弾性、タック感のないゴム感触を有する硬化物(シリコーンゴム)を与える付加硬化性シリコーンゴム組成物及び該組成物を加熱硬化してなるシリコーンゴム硬化物、並びに該硬化物からなる哺乳瓶用乳首及び赤ちゃん用おしゃぶりを提供する。
【解決手段】室温で液状の分子鎖末端ケイ素原子結合アルケニル基含有短鎖オルガノポリシロキサンと、アルケニル基含有のシリカ表面処理剤により表面処理されたシリカとを組み合わせた付加硬化性シリコーンゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低硬度(デュロメーターAによる硬度が10〜30)の硬化物(シリコーンゴム)を与える付加硬化性シリコーンゴム組成物に関する。更に詳しくは、硬化後の硬度が低硬度であっても、引裂き強さが高く、表面のタック感がないシリコーンゴムを形成でき、特に哺乳瓶用乳首及び赤ちゃん用おしゃぶりを成形するために有用な付加硬化性シリコーンゴム組成物及び該組成物を加熱硬化してなるシリコーンゴム硬化物、並びに該硬化物からなる哺乳瓶用乳首及び赤ちゃん用おしゃぶりに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴムは、耐熱性、耐寒性、安全性、外観の良さ(透明性)、肌触りの良さ、更には耐久性の良さから、幼児用遊具や食器、歯ブラシなど、特に哺乳瓶用乳首や赤ちゃん用おしゃぶりを成形する材料として広く使用されている。特に、付加反応硬化タイプのシリコーンゴム組成物は、有機過酸化物硬化タイプのように有機過酸化物の分解による副生成物を生じないこと、特に安全面から、上記用途に好んで使用されている。しかしながら、シリコーンゴムをそれら哺乳瓶用乳首や赤ちゃん用おしゃぶりに適用できる強度にするためには、補強性シリカを配合することが必須であるが、補強性シリカを添加すると硬度が上がってしまうという問題があった。
【0003】
現在、広く使用されているシリコーン製の哺乳瓶用乳首の硬さ(デュロメーターA)は30〜50であるが、そのデザインの多様化を図るため、あるいは吸引力の弱い赤ちゃん用に、低硬度のものが望まれていた。ところが、シリコーンゴムで低硬度のものを作製しようとするために補強性シリカの量を減らすと、強度がなくなり成型後に金型から成型物を取り外す際にゴムに亀裂が入ったり、使用時に容易にゴムが切断されてしまう。また、補強性シリカを減らさず、付加架橋のバランスを崩して低硬度にしようとすると、へたりのあるゴムや表面がべたつくゴムになってしまい、哺乳瓶用乳首や赤ちゃん用おしゃぶりとしては、感触が不適なものとなってしまう。
なお、本発明に関連する従来技術として、下記文献が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−321609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情を改善するためになされたもので、低硬度、高伸張性で、引張り強度及び引裂き強度が高く、しかも良好なゴム弾性、タック感のないゴム感触を有する硬化物(シリコーンゴム)を与える付加硬化性シリコーンゴム組成物及び該組成物を加熱硬化してなるシリコーンゴム硬化物、並びに該硬化物からなる哺乳瓶用乳首及び赤ちゃん用おしゃぶりを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、室温で液状の分子鎖末端ケイ素原子結合アルケニル基含有短鎖オルガノポリシロキサンと、アルケニル基含有のシリカ表面処理剤により表面処理されたシリカとを組み合わせることにより、低硬度かつ高強度であり、ゴム弾性を有し、哺乳瓶用乳首及び赤ちゃん用おしゃぶりとして好適な感触をもつシリコーンゴムを与える付加硬化性シリコーンゴム組成物が得られることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0007】
従って、本発明は、下記に示す付加硬化性シリコーンゴム組成物及びその硬化物を提供する。
〔1〕
(A)分子鎖末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有し、かつ1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を有する平均重合度が1,500以下の、室温で液状のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)1分子中に0〜5個のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有し、平均重合度が2,000以上の室温で生ゴム状のオルガノポリシロキサン:0〜50質量部、
(C)付加反応性官能基を持たず、平均重合度が300以下のオルガノポリシロキサン:0〜50質量部、
(D)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)〜(C)成分の合計100質量部に対して0.2〜20質量部、
(E)BET法による比表面積が150m2/g以上であるヒュームドシリカ:(A)〜(C)成分の合計100質量部に対して10〜50質量部、
(F)アルケニル基を含有しないシリカ表面処理剤:ヒュームドシリカ100質量部に対して0〜50質量部、
(G)アルケニル基を含有するシリカ表面処理剤:ヒュームドシリカ100質量部に対して0.01〜5質量部、
(H)付加反応触媒:触媒量
を含有してなり、分子鎖末端にケイ素原子に結合したアルケニル基を有さず、分子鎖側鎖にケイ素原子に結合したアルケニル基を有する平均重合度が1,500以下の室温で液状のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンを含有しない、硬化してデュロメーターA硬度計による硬度が10〜30である硬化物を与える、付加硬化性シリコーンゴム組成物。
〔2〕
(G)成分が、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザンである〔1〕記載の付加硬化性シリコーンゴム組成物。
〔3〕
(F)成分の配合量がヒュームドシリカ100質量部に対して5〜50質量部である〔1〕又は〔2〕記載の付加硬化性シリコーンゴム組成物。
〔4〕
25℃での粘度が50〜5,000Pa・sの範囲であり、液状射出成形用である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の付加硬化性シリコーンゴム組成物。
〔5〕
硬化物の引張り強度が3.0MPa以上で、切断時伸びが400%以上である〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の付加硬化性シリコーンゴム組成物。
〔6〕
硬化物の引裂き強度が10kN/m以上である〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の付加硬化性シリコーンゴム組成物。
〔7〕
哺乳瓶用乳首又は赤ちゃん用おしゃぶりの製造用である〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の付加硬化性シリコーンゴム組成物。
〔8〕
〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の組成物を加熱硬化してなるシリコーンゴム硬化物。
〔9〕
〔8〕記載のシリコーンゴム硬化物からなる哺乳瓶用乳首。
〔10〕
〔8〕記載のシリコーンゴム硬化物からなる赤ちゃん用おしゃぶり。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、上記(A)〜(H)成分の特定量の組み合わせにより、低硬度でかつ表面タックがほとんどなく、引裂き強度の高いシリコーンゴム硬化物を与える付加硬化性シリコーンゴム組成物を提供できる。また、該組成物の硬化物から、低硬度かつ高強度で、表面タックがほとんどなく、引裂き強度の高いシリコーンゴム性の哺乳瓶用乳首又は赤ちゃん用おしゃぶりを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
まず、(A)成分である室温(25℃、以下同じ。)で液状のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、本組成物の主剤(ベースポリマー)であって、分子鎖末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有し、かつ1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を有する平均重合度が1,500以下のオルガノポリシロキサンであって、室温で液状のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとしては、このオルガノポリシロキサンのみからなるものである。
【0010】
ここで、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとしては、下記平均組成式(I)で示される、室温で液状のものを用いることができる。
1aSiO(4-a)/2 ・・・(I)
(式中、R1は互いに同一又は異種の炭素数1〜10、好ましくは1〜8の非置換又は置換一価炭化水素基であり、aは1.5〜2.8、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.95〜2.05の範囲の正数である。)
【0011】
ここで、上記R1で示されるケイ素原子に結合した炭素数1〜10、好ましくは1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられるが、全R1の90モル%以上がメチル基であることが好ましい。
【0012】
また、R1のうち少なくとも2個はアルケニル基(炭素数2〜8のものが好ましく、更に好ましくは2〜6であり、特に好ましくはビニル基である。)であることが必要である。
なお、アルケニル基の含有量は、オルガノポリシロキサン中1.0×10-6mol/g〜5.0×10-4mol/g、特に1.0×10-5mol/g〜2.0×10-4mol/gとすることが好ましい。アルケニル基の量が1.0×10-6mol/gより少ないとゴム硬度が低すぎてゲル状になってしまう場合があり、また5.0×10-4mol/gより多いと架橋密度が高くなりすぎて、硬度の高いゴムになってしまう場合がある。
【0013】
このアルケニル基は、分子鎖末端のケイ素原子に結合していても、分子鎖途中(分子鎖非末端)のケイ素原子に結合していてもよいが、本発明の(A)成分においては、分子鎖末端のケイ素原子(即ち、トリオルガノシロキシ基中のケイ素原子)に結合したアルケニル基を分子中に少なくとも1個、好ましくは2個以上含有することが必要であり、分子鎖途中のケイ素原子(即ち、ジオルガノシロキサン単位又はモノオルガノシルセスキオキサン単位中のケイ素原子)に結合したアルケニル基は含有していても、していなくてもよい。分子鎖末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも1個、好ましくは2個以上含有しないと、低硬度でかつ高引裂き強度のゴム硬化物が得られない。
【0014】
なお、本発明においては、ベースポリマーとして、分子鎖途中のケイ素原子に結合したアルケニル基のみを含有する(即ち、分子鎖末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有しない)室温で液状のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンを単独で用いた場合、低硬度でかつ高引裂き強度のゴム硬化物は得られず、また(A)成分である分子鎖末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンに、アルケニル基として分子鎖途中のケイ素原子に結合したアルケニル基のみを含有する(即ち、分子鎖末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有しない)室温で液状のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンを併用した場合にも、やはり、低硬度でかつ高引裂き強度のゴム硬化物は得られないものである。
【0015】
従って、本発明において、(A)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとしては、分子鎖末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有し、かつ1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンのみを用いることが必要とされるものである。
なお、(A)成分としては、分子鎖末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンであれば、分子構造や重合度の異なる1種又は2種以上のものを併用することができる。
【0016】
このオルガノポリシロキサンの構造は、基本的には、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖され、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる直鎖状のジオルガノポリシロキサンであることが一般的であるが、部分的には分岐状の構造(モノオルガノシルセスキオキサン単位)を少量含むものであってもよい。
【0017】
分子量については、平均重合度(重量平均重合度、以下、同じ。)が1,500以下、通常100〜1,500、好ましくは150〜1,100である。100未満では、十分なゴム感が得られない場合があり、1,500より高いと粘度が高くなり、成形が困難になってしまう。ここで、分子量又は重合度は、例えば、トルエンを展開溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算の重量平均分子量又は重量平均重合度等として求めることができる(以下、同じ。)。
【0018】
このようなオルガノポリシロキサンとして、具体的には、分子鎖両末端ジオルガノアルケニルシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサン、分子鎖両末端オルガノジアルケニルシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサン、分子鎖両末端トリアルケニルシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサン、分子鎖両末端ジオルガノアルケニルシロキシ基封鎖ジオルガノシロキサン・オルガノアルケニルシロキサン共重合体、分子鎖の片末端がジオルガノアルケニルシロキシ基封鎖で他方の片末端がトリオルガノシロキシ基封鎖ジオルガノシロキサン・オルガノアルケニルシロキサン共重合体などが挙げられるが、好ましくは、分子鎖両末端ジオルガノアルケニルシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサン及び/又は分子鎖両末端ジオルガノアルケニルシロキシ基封鎖ジオルガノシロキサン・オルガノアルケニルシロキサン共重合体である。なお、上記各シロキサン中の「オルガノ基」とは、式(I)中のR1のうち、アルケニル基を除く非置換又は置換の一価炭化水素基と同様のものを意味するものである。
【0019】
次に、(B)成分の1分子中に0〜5個のケイ素原子に結合したアルケニル基を有する平均重合度(重量平均重合度)が2,000以上で、室温(25℃)で生ゴム状(即ち、自己流動性のない非液状)のオルガノポリシロキサンとしては、下記平均組成式(II)で示されるものを用いることができる。
2bSiO(4-b)/2 ・・・(II)
(式中、R2は互いに同一又は異種の炭素数1〜10、好ましくは1〜8の非置換又は置換一価炭化水素基であり、bは1.8〜2.5、好ましくは1.9〜2.1、より好ましくは1.98〜2.01の範囲の正数である。)
【0020】
ここで、上記R2で示されるケイ素原子に結合した炭素数1〜10、好ましくは1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基としては、上記R1と同様であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられるが、全R2の90モル%以上がメチル基であることが好ましい。
【0021】
また、R2のうちにアルケニル基(炭素数2〜8のものが好ましく、更に好ましくは2〜6であり、特に好ましくはビニル基である。)は含まれても、含まれなくてもよいが、含まれる時、そのアルケニル基の含有量は、1分子中に5個以下であり、かつ、0.0002mol/g以下(0〜2×10-4mol/g)、特に0.00005mol/g以下(5×10-8〜5×10-5mol/g)とすることが好ましい。アルケニル基の量が0.0002mol/gより多いと、ゴム硬度が高くなってしまう場合がある。このアルケニル基は、分子鎖末端のケイ素原子に結合していても、分子鎖途中のケイ素原子に結合していても、両者に結合していてもよい。
【0022】
このオルガノポリシロキサンの構造は、基本的には、前記(A)成分と同様に、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖され、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる直鎖状構造を有するが、部分的には分岐状の構造、環状構造などであってもよい。分子量については、平均重合度が2,000以上(通常2,000〜100,000程度)で、室温(25℃)で生ゴム状(即ち、自己流動性のない非液状)のもの、好ましくは3,000以上(3,000〜80,000程度)のものである。平均重合度が2,000未満では、十分なゴム感が得られないばかりか、表面にベタツキを生じてしまう。
【0023】
(B)成分は、必要に応じて配合し得る任意成分であり、(A)成分100質量部に対し、0〜50質量部、好ましくは10〜40質量部、より好ましくは10〜35質量部の範囲である。この配合量が50質量部を超えると、組成物の粘度が高く、成形が困難になってしまう。
【0024】
(C)成分の付加反応性官能基(即ち、ビニル基等のアルケニル基及びケイ素原子結合水素原子(SiH基)からなる、ヒドロシリル化付加反応に関与し得る官能基)を持たず、平均重合度が300以下のオルガノポリシロキサンとしては、下記一般式(III)で示される、直鎖状の(好ましくは無官能性の)ジオルガノポリシロキサンを例示することができる。
【0025】
【化1】

(式中、R4は互いに同一又は異種の炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6の、非置換又はハロゲン置換の、アルキル基、アリール基を示し、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等が挙げられ、これらのうちメチル基、フェニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。R4は同一でも異なってもよいが、全R4の90モル%以上はメチル基であることが好ましい。nは300以下(即ち、0〜300)の整数、好ましくは2〜250の整数である。)
【0026】
(C)成分としては、上記の直鎖状の無官能性ジオルガノポリシロキサンの他にも、環状構造や分岐状構造の無官能性オルガノポリシロキサンが含まれていても問題ない。
なお、平均重合度(又は上記式のn)が300を超えると、少量の配合でもシリコーンゴム硬化物の表面にベタツキが生じてしまう。
【0027】
(C)成分は、必要に応じて配合し得る任意成分であり、その配合量は、(A)成分100質量部に対して0〜50質量部であり、好ましくは10〜40質量部であり、より好ましくは10〜30質量部である。この配合量が50質量部を超える場合には、硬化物のゴム物性が著しく低下してしまう。
【0028】
(D)成分は、ケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を1分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、分子中のSiH基が前記(A)成分、(B)成分及び(G)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基とヒドロシリル付加反応により架橋し、組成物を硬化させるための硬化剤として作用するものである。この(D)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、下記平均組成式(IV)で示され、1分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上、より好ましくは3〜100個、更に好ましくは3〜50個のケイ素原子結合水素原子(SiH基)を有するものが好適に用いられる。
【0029】
3cdSiO(4-c-d)/2 ・・・(IV)
(式中、R3は互いに同一又は異種の炭素数1〜10、好ましくは1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基である。また、cは0.7〜2.1、dは0.001〜1.0で、かつc+dは0.8〜3.0を満足する正数である。)
【0030】
ここで、R3の一価炭化水素基としては、R1で例示したものと同様のものを挙げることができるが、脂肪族不飽和基を有しないものが好ましい。また、cは好ましくは0.8〜2.0、dは好ましくは0.01〜1.0、c+dは好ましくは1.0〜2.5であり、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網目状のいずれの構造であってもよい。この場合、1分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は2〜300個、特に4〜150個程度の室温(25℃)で液状のものが好適に用いられる。なお、ケイ素原子に結合する水素原子は分子鎖末端、分子鎖の途中のいずれに位置していてもよく、両方に位置するものであってもよい。
【0031】
上記(D)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)フェニルシラン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位と(CH33SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C65)SiO3/2単位とからなる共重合体や、これら例示化合物においてメチル基の一部又は全部を他のアルキル基やフェニル基などで置換したものなどが挙げられる。
【0032】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)〜(C)成分の合計100質量部に対して0.2〜20質量部、好ましくは0.3〜10質量部であるが、上記オルガノポリシロキサンのケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)と、(A)成分、(B)成分及び(G)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基の総量とのモル比(SiH基/アルケニル基)が、0.8〜10.0、特に1.0〜5.0となる量が好ましい。この比が0.8より小さいと架橋が不十分になり、べたついたゴムになってしまう場合があり、10.0より大きいと、成形物に発泡が見られたり、金型からの離型が困難になったりしてしまうおそれがある。
【0033】
(E)成分のヒュームドシリカは、シリコーンゴムに十分な強度を与えるために必須なものである。ヒュームドシリカのBET法による比表面積は、150m2/g以上、通常、150〜400m2/g、好ましくは150〜350m2/gで、150m2/gより小さいと十分な強度が得られないばかりか、成形物の透明性も低下してしまい、400m2/gより大きいと配合が困難になったり、変色したりしてしまうおそれがある。
【0034】
ヒュームドシリカの配合量は、(A)〜(C)成分の合計100質量部に対し、10〜50質量部であり、15〜40質量部であることが好ましい。配合量が10質量部より少ないと十分なゴム強度が得られず、また50質量部より多いと硬度が高くなってしまう。
【0035】
上記(E)成分のヒュームドシリカは、後述する(G)アルケニル基を含有するシリカ表面処理剤、又はこの(G)成分と後述する(F)アルケニル基を含有しないシリカ表面処理剤とを用いて表面処理することにより用いられる。この場合、上記ヒュームドシリカは、組成物を調製する際に、シリコーンオイル(即ち、(A)成分のオルガノポリシロキサン)との混練時にこれら表面処理剤を添加して、必要により少量の水の存在下に混合して組成物中で表面処理することにより使用することが好ましい。
【0036】
(F)成分のアルケニル基を含有しないシリカ表面処理剤としては、アルケニル基を有さないアルキルアルコキシシラン、アルキルクロロシラン、アルキルシラザン、シランカップリング剤、チタネート系処理剤、脂肪酸エステルなど公知のいかなるものを1種で用いてもよく、また2種以上を同時に又は異なるタイミングで用いても構わない。
【0037】
これらアルケニル基を含有しないシリカ表面処理剤の配合量は、上記ヒュームドシリカ100質量部に対し、0〜50質量部、好ましくは5〜50質量部、特に5〜30質量部であることが好ましい。配合量が50質量部より多いと付加反応を阻害したり、ゴムの補強効果が低下してしまう。
【0038】
(G)成分のアルケニル基を含有するシリカ表面処理剤としては、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,1,3,3−テトラビニル−1,3−ジメチルジシラザン、1−ビニル−1,1,3,3,3−ペンタメチルジシラザン、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチル−3−ビニルトリシラザン等のビニル基含有のオルガノシラザン、N,N−ジメチルアミノジメチルビニルシラン等のビニル基含有のアミノシラン、また、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、メチルジメトキシビニルシラン、メトキシジメチルビニルシラン等のビニル基含有のアルコキシシランなどが挙げられ、特には1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザンやトリメトキシビニルシランが好ましい。
【0039】
アルケニル基を含有するシリカ表面処理剤の配合量は、上記ヒュームドシリカ100質量部に対し、0.01〜5質量部、特に0.1〜3質量部であることが好ましい。配合量が0.01質量部より少ないと十分な強度が得られず、5質量部より多いと硬度が高くなりすぎてしまう。
【0040】
(H)成分の付加反応触媒としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などが挙げられる。
なお、この付加反応触媒の配合量は触媒量とすることができ、通常、白金族金属として、(A),(B),(D)及び(G)成分の合計質量に対し、0.5〜1,000ppm、特に1〜500ppm程度である。
【0041】
本発明の付加硬化性シリコーンゴム組成物には、その他の成分として、必要に応じて、沈降シリカ、石英粉、珪藻土、炭酸カルシウムのような充填剤や、カーボンブラック、導電性亜鉛華、金属粉等の導電剤、窒素含有化合物やアセチレン化合物、リン化合物、ニトリル化合物、カルボキシレート、錫化合物、水銀化合物、硫黄化合物等のヒドロシリル化反応制御剤、酸化鉄、酸化セリウムのような耐熱剤、ジメチルシリコーンオイル等の内部離型剤、接着性付与剤、チクソ性付与剤等を配合することは任意とされる。
【0042】
本発明のシリコーンゴム組成物は、上記各成分を混合することにより製造することができ、得られた組成物は、室温(25℃)で液状のもの、特に25℃における粘度が50〜5,000Pa・s、特に100〜3,000Pa・sであることが好ましい。なお、本発明において、粘度は回転粘度計により測定することができる。
【0043】
このシリコーンゴム組成物の成形、硬化方法としては、常法を採用し得るが、成形法として液状射出成形法が好適に採用される。また、硬化条件としては、120〜230℃で3秒〜10分、好ましくは150〜210℃で5秒〜3分程度の加熱処理条件を採用し得る。
【0044】
本発明のシリコーンゴム組成物は、硬化して得られた硬化物(シリコーンゴム)のデュロメーターA硬度計による硬度が10〜30、特に15〜30のものである。上記硬度が低すぎると十分なゴム強度(引張り強度、引き裂き強度)が得られず、高すぎると哺乳瓶用乳首や赤ちゃん用おしゃぶりとして使用する際に咬合特性に支障がでてしまうものである。
【0045】
また、得られたシリコーンゴムは、引張り強度が3.0MPa以上、より好ましくは3.5MPa以上、特に4MPa以上、引裂き強度[クレセントタイプ]が10kN/m以上、より好ましくは12kN/m以上、特に14kN/m以上、切断時伸びが400%以上、より好ましくは450%以上、特に500%以上であることが好ましい。ここで、引張り強度、引裂き強度、切断時伸びは、JIS−K6249に準拠した方法により測定できる。
【0046】
このようなシリコーンゴムは、哺乳瓶用乳首、赤ちゃん用おしゃぶり等に好適に用いられる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例と比較例によりこの発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、下記例で部は質量部を示す。また、平均重合度は、重量平均重合度を示す。
【0048】
[実施例1]
両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された平均重合度が750であるジメチルポリシロキサン(1)60部、比表面積が300m2/gであるヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、アエロジル300)40部、ヘキサメチルジシラザン8部、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン0.2部、水2.0部を室温で30分混合後、150℃に昇温し、3時間撹拌を続け、冷却し、シリコーンゴムベースを得た。このシリコーンゴムベース100部に、上記ジメチルポリシロキサン(1)50部、両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された平均重合度が8,000であるジメチルポリシロキサン生ゴム(2)20部を入れ、30分撹拌を続けた後、更に両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された平均重合度が70であるジメチルポリシロキサン(3)20部、架橋剤として両末端及び側鎖にSiH基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(4)(重合度25、SiH基量0.0050mol/g)を1.8部[メチルハイドロジェンポリシロキサン(4)中のSiH基/ジメチルポリシロキサン(1)及び1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン中のアルケニル基の合計=1.5(モル/モル)]、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05部を添加し、15分撹拌を続けて、シリコーンゴム組成物[25℃でのBS型粘度計、ローター7番、10rpmでの測定結果が540Pa・s]を得た。
【0049】
このシリコーンゴム組成物中に、白金触媒(Pt濃度1質量%)0.1部を混合し、120℃/10分のプレスキュア後、オーブン内で150℃/1時間のポストキュアを行なった硬化物について、JIS−K6249に基づき、硬さ、引張り強度、切断時伸び、引裂き強度(クレセント)を測定した結果、及び指触によるゴム表面の判定結果を表1に示した。
【0050】
[実施例2]
両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された平均重合度が750であるジメチルポリシロキサン(1)70部、表面を疎水化処理したBET法による比表面積が230m2/gであるヒュームドシリカ(トクヤマ社製、レオロシールDS−30S)30部、ヘキサメチルジシラザン2.0部、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン0.1部、水1.0部を室温で30分混合後、150℃に昇温し、3時間撹拌を続け、冷却し、シリコーンゴムベースを得た。このシリコーンゴムベース100部に、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された平均重合度が500であるジメチルポリシロキサン(5)20部、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された平均重合度が8,000であるジメチルポリシロキサン生ゴム(6)30部を入れ、30分撹拌を続けた後、更に両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された平均重合度が90であるジメチルポリシロキサン(7)20部、架橋剤として側鎖及び末端にSiH基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(8)(重合度17、SiH基量0.0032mol/g)を3.3部[メチルハイドロジェンポリシロキサン(8)中のSiH基/ジメチルポリシロキサン(1)、ジメチルポリシロキサン(5)、ジメチルポリシロキサン生ゴム(6)及び1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン中のアルケニル基の合計=2.3(モル/モル)]、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05部を添加し、15分撹拌を続けて、シリコーンゴム組成物[25℃でのBS型粘度計、ローター7番、10rpmでの測定結果が840Pa・s]を得た。
【0051】
このシリコーンゴム組成物中に、白金触媒(Pt濃度1質量%)0.1部を混合し、120℃/10分のプレスキュア後、オーブン内で150℃/1時間のポストキュアを行なった硬化物について、JIS−K6249に基づき、硬さ、引張り強度、切断時伸び、引裂き強度(クレセント)を測定した結果、及び指触によるゴム表面の判定結果を表1に示した。
【0052】
[実施例3]
両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された平均重合度が500であるジメチルポリシロキサン(5)60部、比表面積が300m2/gであるヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、アエロジル300)40部、ヘキサメチルジシラザン8部、トリメトキシビニルシラン0.5部、水2.0部を室温で30分混合後、150℃に昇温し、3時間撹拌を続け、冷却し、シリコーンゴムベースを得た。このシリコーンゴムベース100部に、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された平均重合度が1,100であるジメチルポリシロキサン(9)40部を入れ、30分撹拌を続けた後、更に架橋剤として両末端のみにSiH基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(10)(重合度15、SiH基量0.0018mol/g)を1.6部、両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、側鎖にSiH基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(11)(重合度82、SiH基量0.0051mol/g)を1.4部[メチルハイドロジェンポリシロキサン(10)及び(11)中のSiH基の合計/ジメチルポリシロキサン(5)、ジメチルポリシロキサン(9)及びトリメトキシビニルシラン中のアルケニル基の合計=1.5(モル/モル)]、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05部を添加し、15分撹拌を続けて、シリコーンゴム組成物[25℃でのBS型粘度計、ローター7番、10rpmでの測定結果が510Pa・s]を得た。
【0053】
このシリコーンゴム組成物中に、白金触媒(Pt濃度1質量%)0.1部を混合し、120℃/10分のプレスキュア後、オーブン内で150℃/1時間のポストキュアを行なった硬化物について、JIS−K6249に基づき、硬さ、引張り強度、切断時伸び、引裂き強度(クレセント)を測定した結果、及び指触によるゴム表面の判定結果を表1に示した。
【0054】
[比較例1]
両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された平均重合度が750であるジメチルポリシロキサン(1)60部、比表面積が300m2/gであるヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、アエロジル300)40部、ヘキサメチルジシラザン8部、水2.0部を室温で30分混合後、150℃に昇温し、3時間撹拌を続け、冷却し、シリコーンゴムベースを得た。このシリコーンゴムベース100部に、上記ジメチルポリシロキサン(1)50部、両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された平均重合度が8,000であるジメチルポリシロキサン生ゴム(2)20部を入れ、30分撹拌を続けた後、更に両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された平均重合度が70であるジメチルポリシロキサン(3)20部、架橋剤として両末端及び側鎖にSiH基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(4)(重合度25、SiH基量0.005mol/g)を1.2部[メチルハイドロジェンポリシロキサン(4)中のSiH基/ジメチルポリシロキサン(1)中のアルケニル基=1.5(モル/モル)]、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05部を添加し、15分撹拌を続けて、シリコーンゴム組成物[25℃でのBS型粘度計、ローター7番、10rpmでの測定結果が570Pa・s]を得た。
【0055】
このシリコーンゴム組成物中に、白金触媒(Pt濃度1質量%)0.1部を混合し、120℃/10分のプレスキュア後、オーブン内で150℃/1時間のポストキュアを行なった硬化物について、JIS−K6249に基づき、硬さ、引張り強度、切断時伸び、引裂き強度(クレセント)を測定した結果、及び指触によるゴム表面の判定結果を表1に示した。
【0056】
[比較例2]
両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された平均重合度が750であるジメチルポリシロキサン(1)70部、表面を疎水化処理したBET法による比表面積が230m2/gであるヒュームドシリカ(トクヤマ社製、レオロシールDS−30S)30部、ヘキサメチルジシラザン2部、水1.0部を室温で30分混合後、150℃に昇温し、3時間撹拌を続け、冷却し、シリコーンゴムベースを得た。このシリコーンゴムベース100部に、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された平均重合度が500であるジメチルポリシロキサン(5)20部、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された平均重合度が8,000であるジメチルポリシロキサン生ゴム(6)10部を入れ、30分撹拌を続けた後、架橋剤として側鎖及び末端にSiH基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(8)(重合度17、SiH基量0.0032mol/g)を2.5部[メチルハイドロジェンポリシロキサン(8)中のSiH基/ジメチルポリシロキサン(1)、ジメチルポリシロキサン(5)及びジメチルポリシロキサン生ゴム(6)中のアルケニル基の合計=2.3(モル/モル)]、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05部を添加し、15分撹拌を続けて、シリコーンゴム組成物[25℃でのBS型粘度計、ローター7番、10rpmでの測定結果が900Pa・s]を得た。
【0057】
このシリコーンゴム組成物中に、白金触媒(Pt濃度1質量%)0.1部を混合し、120℃/10分のプレスキュア後、オーブン内で150℃/1時間のポストキュアを行なった硬化物について、JIS−K6249に基づき、硬さ、引張り強度、切断時伸び、引裂き強度(クレセント)を測定した結果、及び指触によるゴム表面の判定結果を表1に示した。
【0058】
[比較例3]
両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された平均重合度が500であるジメチルポリシロキサン(5)60部、比表面積が300m2/gであるヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、アエロジル300)40部、ヘキサメチルジシラザン8部、水2.0部を室温で30分混合後、150℃に昇温し、3時間撹拌を続け、冷却し、シリコーンゴムベースを得た。このシリコーンゴムベース100部に、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された平均重合度が1,100であるジメチルポリシロキサン(9)40部を入れ、30分撹拌を続けた後、更に架橋剤として両末端のみにSiH基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(10)(重合度15、SiH基量0.0018mol/g)を0.7部、両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、側鎖にSiH基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(11)(重合度82、SiH基量0.0051mol/g)を1.0部[メチルハイドロジェンポリシロキサン(10)及び(11)中のSiH基の合計/ジメチルポリシロキサン(5)及びジメチルポリシロキサン(9)中のアルケニル基の合計=1.5(モル/モル)]、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05部を添加し、15分撹拌を続けて、シリコーンゴム組成物[25℃でのBS型粘度計、ローター7番、10rpmでの測定結果が400Pa・s]を得た。
【0059】
このシリコーンゴム組成物中に、白金触媒(Pt濃度1質量%)0.1部を混合し、120℃/10分のプレスキュア後、オーブン内で150℃/1時間のポストキュアを行なった硬化物について、JIS−K6249に基づき、硬さ、引張り強度、切断時伸び、引裂き強度(クレセント)を測定した結果、及び指触によるゴム表面の判定結果を表1に示した。
【0060】
[比較例4]
両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された平均重合度が750であるジメチルポリシロキサン(1)60部、比表面積が300m2/gであるヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、アエロジル300)40部、ヘキサメチルジシラザン8部、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン0.2部、水2.0部を室温で30分混合後、150℃に昇温し、3時間撹拌を続け、冷却し、シリコーンゴムベースを得た。このシリコーンゴムベース100部に、上記ジメチルポリシロキサン(1)45部、両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、側鎖置換基であるメチル基の2.5モル%がビニル基に置き換わった平均重合度200のジメチルポリシロキサン(即ち、主鎖のジオルガノポリシロキサン単位全体の5モル%がビニルメチルシロキサン単位、95モル%がジメチルシロキサン単位からなる平均重合度200の両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ビニルメチルシロキサン共重合体)(11)5部、両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された平均重合度が8,000であるジメチルポリシロキサン生ゴム(2)20部を入れ、30分撹拌を続けた後、更に両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された平均重合度が70であるジメチルポリシロキサン(3)20部、架橋剤として両末端及び側鎖にSiH基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(4)(重合度25、SiH基量0.0050mol/g)を2.0部[メチルハイドロジェンポリシロキサン(4)中のSiH基/ジメチルポリシロキサン(1)、ジメチルポリシロキサン(11)及び1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン中のアルケニル基の合計=1.5(モル/モル)]、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05部を添加し、15分撹拌を続けて、シリコーンゴム組成物[25℃でのBS型粘度計、ローター7番、10rpmでの測定結果が500Pa・s]を得た。
【0061】
このシリコーンゴム組成物中に、白金触媒(Pt濃度1質量%)0.1部を混合し、120℃/10分のプレスキュア後、オーブン内で150℃/1時間のポストキュアを行なった硬化物について、JIS−K6249に基づき、硬さ、引張り強度、切断時伸び、引裂き強度(クレセント)を測定した結果、及び指触によるゴム表面の判定結果を表1に示した。
【0062】
[比較例5]
両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された平均重合度が750であるジメチルポリシロキサン(1)60部、比表面積が300m2/gであるヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、アエロジル300)40部、ヘキサメチルジシラザン8部、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン0.2部、水2.0部を室温で30分混合後、150℃に昇温し、3時間撹拌を続け、冷却し、シリコーンゴムベースを得た。このシリコーンゴムベース100部に、上記ジメチルポリシロキサン(1)45部、両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、側鎖置換基であるメチル基の2.5モル%がビニル基に置き換わった平均重合度200のジメチルポリシロキサン(即ち、主鎖のジオルガノポリシロキサン単位全体の5モル%がビニルメチルシロキサン単位、95モル%がジメチルシロキサン単位からなる平均重合度200の両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ビニルメチルシロキサン共重合体)(11)5部、両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された平均重合度が8,000であるジメチルポリシロキサン生ゴム(2)20部を入れ、30分撹拌を続けた後、更に両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された平均重合度が70であるジメチルポリシロキサン(3)60部、架橋剤として両末端及び側鎖にSiH基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(4)(重合度25、SiH基量0.0050mol/g)を2.0部[メチルハイドロジェンポリシロキサン(4)中のSiH基/ジメチルポリシロキサン(1)、ジメチルポリシロキサン(11)及び1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン中のアルケニル基の合計=1.5(モル/モル)]、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05部を添加し、15分撹拌を続けて、シリコーンゴム組成物[25℃でのBH型粘度計、ローター7番、20rpmでの測定結果が210Pa・s]を得た。
【0063】
このシリコーンゴム組成物中に、白金触媒(Pt濃度1質量%)0.1部を混合し、120℃/10分のプレスキュア後、オーブン内で150℃/1時間のポストキュアを行なった硬化物について、JIS−K6249に基づき、硬さ、引張り強度、切断時伸び、引裂き強度(クレセント)を測定した結果、及び指触によるゴム表面の判定結果を表1に示した。
【0064】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子鎖末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有し、かつ1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を有する平均重合度が1,500以下の、室温で液状のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)1分子中に0〜5個のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有し、平均重合度が2,000以上の室温で生ゴム状のオルガノポリシロキサン:0〜50質量部、
(C)付加反応性官能基を持たず、平均重合度が300以下のオルガノポリシロキサン:0〜50質量部、
(D)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)〜(C)成分の合計100質量部に対して0.2〜20質量部、
(E)BET法による比表面積が150m2/g以上であるヒュームドシリカ:(A)〜(C)成分の合計100質量部に対して10〜50質量部、
(F)アルケニル基を含有しないシリカ表面処理剤:ヒュームドシリカ100質量部に対して0〜50質量部、
(G)アルケニル基を含有するシリカ表面処理剤:ヒュームドシリカ100質量部に対して0.01〜5質量部、
(H)付加反応触媒:触媒量
を含有してなり、分子鎖末端にケイ素原子に結合したアルケニル基を有さず、分子鎖側鎖にケイ素原子に結合したアルケニル基を有する平均重合度が1,500以下の室温で液状のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンを含有しない、硬化してデュロメーターA硬度計による硬度が10〜30である硬化物を与える、付加硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
(G)成分が、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザンである請求項1記載の付加硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
(F)成分の配合量がヒュームドシリカ100質量部に対して5〜50質量部である請求項1又は2記載の付加硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項4】
25℃での粘度が50〜5,000Pa・sの範囲であり、液状射出成形用である請求項1〜3のいずれか1項に記載の付加硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項5】
硬化物の引張り強度が3.0MPa以上で、切断時伸びが400%以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の付加硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項6】
硬化物の引裂き強度が10kN/m以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載の付加硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項7】
哺乳瓶用乳首又は赤ちゃん用おしゃぶりの製造用である請求項1〜6のいずれか1項に記載の付加硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物を加熱硬化してなるシリコーンゴム硬化物。
【請求項9】
請求項8記載のシリコーンゴム硬化物からなる哺乳瓶用乳首。
【請求項10】
請求項8記載のシリコーンゴム硬化物からなる赤ちゃん用おしゃぶり。

【公開番号】特開2013−64090(P2013−64090A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204666(P2011−204666)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】