付着性海生動物の培養
【課題】着生海洋生物から大量の医薬物質を採取することを可能にする。
【解決手段】本発明は、着生海洋生物の培養に関する。着生海洋生物は、多数の海洋医薬物質の供給源である。本発明は、このような海洋医薬物質の製造方法を提供し、この方法は、海水中に複数の基体様物質を配置し、これら複数の基体上で当該生物を増殖させ、増殖した生物を採集し、次いで採集した生物から、医薬物質を抽出することを包含する方法である。
【解決手段】本発明は、着生海洋生物の培養に関する。着生海洋生物は、多数の海洋医薬物質の供給源である。本発明は、このような海洋医薬物質の製造方法を提供し、この方法は、海水中に複数の基体様物質を配置し、これら複数の基体上で当該生物を増殖させ、増殖した生物を採集し、次いで採集した生物から、医薬物質を抽出することを包含する方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋薬剤抽出のための付着性(sessile)海生動物の培養に関する。特に、本発明は、被嚢類として知られた海洋生物の培養方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
過去何年にもわたって、薬理学的用途を有するであろう天然化合物を見つけるために、数多くの海洋生物の系統的スクリーニングがなされてきた。付着性海洋無脊椎動物は、試してみて価値のある有用な天然産物源と見なされてきた。無脊椎動物の中でも、被嚢類およびホヤ類(Tunicata、Ascidiacea)が、かかる天然産物源として特に興味を引くものとされている。様々な地域における調査によれば、被嚢類、主にecteinascidinおよびdidemninより単離された幾つかの化合物は人間の癌を治療する可能性があることが示されている。
【0003】
例えば、Ecteinascidia turbinataの抽出により、ecteinascidia 743およびその他の抗腫瘍ecteinascidin化合物が得られている。また、被嚢類Aplidium albicansの抽出により、デヒドロdidemnin Bおよびその他の抗腫瘍didemnin化合物が得られている。同様に、多くの活性化合物がその他の付着性海洋生物、特に海綿動物から単離されている。被嚢類、海綿動物およびかかる生物から抽出されたこれら化合物の多くは、化学合成が難しい複雑な構造を持っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】FR2617373
【特許文献2】EP0860111
【特許文献3】USP3779209
【特許文献4】USP5628280
【特許文献5】USP5089273
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ecteinascidia 743およびその他多くの当該化合物については、所望の活性化合物を後に単離するために天然物からバルクで生物を収集するという問題が残っている。Ectetnascidia turbinata(Herdman、1880、I Ascidiacea、Perophoridae)は透明な膜で通常明るいオレンジ色のコロニーホヤである。コロニーは、密集した群または細長いややダイヤ形の独立細胞からなっており、コロニーが成長する対象表面に接合するストロン網状組織により基部で連結されている。コロニーは、通常、浅海(0〜15m)およびラグーンに生息しており、赤色マングローブの根、色、貝、亀草、海底の砂、CaulerpaやPosidonia種のような植物において成長する。マングローブ領域が一般に広がっているのはカリブ海と地中海である。E. turbinataが両性周期により繁殖し、卵が育児嚢内で内部孵化し、独立細胞がストロンまたはベースから出芽することにより成熟、または無性生殖すると、幼生が放出される。Ecteinascidia turbinataは、現在、カリブ海においてコロニー中でこれが行われている水中のマングローブの根から集められている。潜水は困難なしには行えず、コロニーを絡まった根から見つけることも問題となっている。しかも、収集は継続して行わなければならない。
【0006】
従って、これら動物が天然に十分豊富でないこと、そして薬剤としての活性成分を製造するのに必要な量を与えるだけ十分な量を継続的に収集することは難しいということからこれらの源からの新薬の開発は妨げられている。
【0007】
発明の目的
本発明は、被嚢類およびその他付着性海洋生物の培養方法および装置の提供に関する。特に、本発明は、Ecteinascidia turbinataの飼養による生成に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本発明は、複数の同種の基質(基体)を海水中に配置し、生物を複数の基質(基体)上で成長させ、成長した生物を採取して、採取した生物から薬剤を抽出することにより、付着性海洋生物からの抽出による海洋薬剤の生成方法を提供するものである。
【0009】
関連の態様において、本発明は、複数の同種の基質を海水中に配置し、生物のコロニーからの幼生に基質に種苗させ(seed)、複数の基質上で生物を成長させて、成長した生物を採取することにより、海洋薬剤抽出用の付着性海洋生物を飼養する方法を提供する。
【0010】
他の関連の態様において、本発明は、複数の同種の基質を海水中に配置し、生物を基質に移植し、複数の基質上で生物を成長させて、成長した生物を採取することにより、海洋薬剤抽出用の付着性海洋生物を飼養する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、尾索類(tunicate)コロニー周囲の位置の本発明の幼虫コレクターの透視図である。
【図2】図2は、図1の幼虫コレクターに用いるためのサポートの上方からの図を、該サポートの横断面と共に示す。
【図3】図3は、本発明の幼虫コレクターのための他のサポートの上方からの図を、該サポートの横断面と共に示す。
【図4】図4は、地中海に用いるために適したメッシュワーク付着構造付きの成長デバイス(growth device)である。
【図5】図5は、幼虫捕捉のフレームを示す。
【図6】図6は、図5のフレームの拡大図である。
【図7】図7は、幼虫捕捉のフレームの水面下コレクターの細部である。
【図8】図8は、尾索類成長フレームである。
【図9】図9は、図8のフレームの細部である。
【図10】図10は、成長ユニットの細部である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
好ましい実施形態
好ましい海生生物はEcteinascidia turbinataであり、好ましい海洋薬剤は、ecteinascidin化合物、特にecteinascidia 743である。他の好ましい実施形態において、海洋生物は、Aplidium albicansであり、海洋薬剤はdidemnin化合物、特にデヒドロdidemnin Bである。
【0013】
本発明は、付着性海洋動物、特にE. turbinataのような被嚢類の原生地近辺または原生地からは離れた上水中での単一培養およびその抽出物からの薬剤の工業生産に十分な量での採取を可能とする装置および方法を提供する。場合によっては、本発明は、特に、地中海沿岸ラグーン領域、港湾領域または適正に構築された水槽または用水路に適用され、また場合によっては、カリブ海、特にカリブ海マングローブ湿地、要所(keys)、用水路、港湾領域または赤色マングローブの根、岩、貝殻、亀草、海底の砂や植物上で成長させるのに適正に構築された水槽に用いるのに特に好適である。
【0014】
本発明の飼養方法における一態様には、生物を基質上に移植して採取のために成長させることが含まれる。一実施形態において、個々の生物が基質上に移植される。あるいは、例えば、海綿動物については、生物の断片が基質上に移植される。
【0015】
移植組織による種苗については、幼体の成長しているコロニーから切り取った小片(約20グラム)を装置に移植して、好ましくは、支持バスケットまたは箱に配置、あるいはネットの穴または装置の個々のロープまたはロッド間の空間に固定する。必要であれば、コロニーのストロンと装置表面の間の接触を保つ長さの糸、ゴムまたはその他方法を用いて固定することができる。生物の無性成長により適正な水の条件下で被嚢類の量が正味で増大していく。
【0016】
本発明の他の飼養方法は、生物のコロニーからの幼生に基質に種苗させ、採取のために成長させることが含まれる。一実施形態において、基質はコロニーに近接配置される。あるいは、少なくとも1つのコレクターをコロニーに近接配置して幼生を収集して、続いてコレクターの幼生を用いて基質に種苗させる。この場合、幼生の入ったコレクターを局地で扱うことが必要であれば、基質はコロニーの一般産地にあってもよいし、あるいは、幼生の入ったコレクターを基質に近接して移植できるよう、基質はコロニーから離れていてもよい。
【0017】
コレクターを用いるこの態様については、本発明にはさらに、複数の幼生コレクターを被嚢類コロニー付近に配置して、コロニーから放出された幼生を幼生コレクターに集めることにより、被嚢類を採取する方法が含まれる。幼生の入ったコレクターは幼生を成熟させる場所に置くか、または幼生を成熟させる新鮮な領域に移す。
【0018】
本発明はまた、被嚢類コロニーから幼生を受けるための1つ以上の幼生基質のある被嚢類コロニーでマングローブの根に固定することのできる担体を有する幼生コレクターも提供する。本発明のコレクターは、幼生によるコロニー形成に好適な擬マングローブ根まで延びる細長いコードまたはその他の形態の基質を持つ担体を含むのが好ましい。この担体は、周囲に基質を備えた円状であるのが一般に好ましい。担体は、内側に延びている可撓性の固定用つめの内部端により画定される中央開口部がある。少なくとも1つのスロットが担体の周囲から開口部まで通じている。コレクターは、通常、1つの担体と4〜8個の細長い基質からできている。ただし、担体は、特に基質に剛性がなく、根が垂直でない場合には各端部に与えることができる。
【0019】
本方法には、このスロットに沿って担体を可撓させながら開いて、根を中央開口部に通すことが含まれる。固定用つめの内部端を調整して、必要であれば、損傷を与えることなく根に咬持させて、担体を定位置に保持することができる。幼生を受けるのにコードが自由に垂れ下がるよう注意する。
【0020】
本発明の変形例において、必要であればいくらか重りをつけて、幼生基質が水中に垂れ下がるようにして担体を浮かべる。担体は、マングローブの木またはその他好適な固定位置につなぐのが好ましい。
【0021】
幼生捕獲による種苗については、成体コロニーを装置に近接させる、あるいは装置を近接させて、これら生物の性周期の結果放出される浮遊する幼生を自身に固定させる。そこで付着性成体が得られこれが分化してより大きなコロニーへと成長する。
【0022】
移植または種苗後、移植組織または幼生を成長させてコロニーを形成させ、天然または人口の清浄な海水に沈める。これにより海水に含まれる天然プランクトンや微生物のような連続的に再生可能資源の栄養素となる。適正なサイズになれば、コロニーを採取することができる。
【0023】
最初の種苗コロニーまたは成長コロニーの一部を用いて、次の採取のための種子材料を与えてもよい。残りの成長部分は適宜収集して保管する。
【0024】
採取の際、水を流すことによりコロニーの堆積物を洗って、関係のない生物は手で取り除く。成長期後の被嚢類コロニーの採取は、ダイバーにより手で行うか、投錨地から装置を取り除いて好適な容器で船により運搬して、採取した被嚢類を担体ロッドまたはメッシュから分離する。その後直ちに、ビニール袋の中またはその他便利な手段で被嚢類を保管する。
【0025】
本発明はまた、好ましくは、垂直に延びる基質を含む複数の基質を含む付着性海洋生物を成長させるための装置も提供する。
【0026】
被嚢類を種苗し、成長させて大量に増やすことのできる本発明の特に好ましい装置は、付着装置、成長構造体および必要であれば支持システムから実質的になる。付着装置および成長構造体によって、培養している生物の種苗部分または移植組織を直接固定または付着させることができ、支持システムは付着構造体を定位置に保つ。被嚢類コロニーの部分(幼生で小さい)は、手で移植して、必要であれば弾性帯または同様のものを用いて支持構造体に固定して、採取するのに適正なサイズになるまで成長させる。装置は、海底投錨地と浮いている装置の間、または天然または人工海盆の両側間で保持される水中構造体として、直接固定基質を取り付けるための手段として用いることができる。浮遊する筏状の枠または台を用いて、直接固定基質を取り付けることもできる。
【0027】
本発明によればまた、投錨システムまたは係留システムに備わっている支持浮きシステムに固定された付着及び成長構造体を形成する複数の列の基質(基体)を含む基体上で、付着性海洋生物を成長させるための装置も提供される。
【0028】
成長装置は、以下のものより組み立てることのできる付着装置および成長構造体および支持システムを備えている。
【0029】
付着および生育(成長)構造体
(1) 無毒性プラスチックまたは腐蝕耐性金属、木材、または合成物質のような海水と相容性の物質から製造したロープ、ケーブル、メッシュ、ネット、ロッド、プランク、ストリップ、バー、フィレット、スチック、ケージ、またはバスケットの基体は投錨システムに取り付けることにより保持される。
(2) 砂の沿岸区域の底に平行の海水耐性ロープまたはストリップの平行ラインはしっかりセットした投錨支持体間に延びている。
(3) バスケット、ケージまたは孔を開けた箱上のロープ、ケーブルまたはチェーンの支持体ラインは間隔を置いて配置する。バスケット、ケージまたは孔を開けた箱は尾索類のコロニーまたは他の生物の種子断片を捕集するために閉鎖できる。
隣接するロッドまたはメッシュまたはネットのケーブル間の自由空間または孔は水を自由に通し、尾索類移植の付着および生育に対する空間である。バスケットまたは箱の孔は水を自由に通すことができ、しかし初めの種苗移植を含有する。
【0030】
支持体システム
付着および生育に使用する網細工(メッシュワーク)が十分な硬さである場合、底に横たわる重量物または培養タンクの側面に対する付加的投錨は支持体に対し十分である。海中培養におけるような、必要な場合、投錨システムは底に横たわる重量物と海の表面の高浮揚性フロート(浮き)間で引張るように仕組まれたロープ、ロッドまたはケーブルにより供される。海の表面に垂直に沈み、伸びた全体デバイスの維持は支持体構造の各端部の投錨ロッド、ロープ、ケーブルまたはチェーンに取付けることにより確保される。網細工(メッシュワーク)または網目が使用される場合、付加的の一層小さいフロート(浮き)またはブイはメッシュの上部側面で規則正しい間隔で使用していつも広げ、引張って保持する。規則的間隔を置いた底部重量部に対し間隔をあけた付加的投錨は付加的フロート(浮き)およびブイと反対に使用する。別法では、溝またはタンクが使用される場合、全体の支持体システムは金属、木材またはプラスチックの固い支持体フレームを使用することにより溝の側面またはタンクの壁に固定できる。バスケット、孔あき箱またはケージを使用する場合、支持体フレームは海底に、または生育タンクにしっかり付着した投錨ロッド間に引張られたロープ、ケーブルまたはチェーンの1つまたは2つの長いラインから成る
ことができる。
【0031】
好ましい態様では、高密度ポリエチレンのようなロープまたは他の物質のメッシュまたは厚いネットは付着および生育に対し使用され、その孔または空間は約2〜20mmである。このメッシュまたはネットは重い投錨重量物およびブイ間に張ったケーブルから成る投錨−固定システムにより集められ、広げて保持される。高浮揚力(適当には20〜50kg揚力)空気ブイは各ケーブルの1端に取付け、一方海の表面に本質的に垂直に全体構造を置くように他端は底の重量物(ブイの揚力より正味(tared)重い)に固定する。全体の付着網細工(メッシュワーク)は延びる滞留を確保する投錨システムに固着し、潮流により培養帯から流出しない。
【0032】
別の態様では、フレーム構造は自己支持するのに十分な固さにするためにロープ、スクリューまたは他の要素を使用して或る角度で相互にしっかり付着した、木材またはプラスチックロッドまたはストリップの2つの平行配列またはセットにより形成される長方形仕切りから成る。別法では、軽金属、木材またはプラスチックの固い枠組を使用して底に付着できる。
【0033】
好ましいデバイスは基質および支持体として例えば本質的に図4に記載され、約0.5〜4mの長さ、2〜8cmの孔を有する広いプラスチックメッシュを含み、狭い沿岸の潟の底に定着して完全に沈み、浮揚デバイスにより畧々垂直に保持されるデバイスを使用して基質に生物のコロニー断片を移植することによりEcteinascidia turbinataを生育させる方法で使用する。
【0034】
無柄(着生)の海洋生物、特にE.Turbinataのような尾索類生物を天然コロニーに接近し、または離れた位置で播種し、生育させるのに有用なデバイスも供される。このデバイスは支持−浮揚(浮き)フレーム内で付着および生育構造体から本質的に成る。これはいかり−固定システムにより保持され、それに付加する遮光器(光よけ)を有することができる。
【0035】
生育デバイスは本質的に、
支持体フレームおよび浮揚(浮き)構造、
付着ガイド
固定および投錨システム、および
通常、遮光器(光よけ)
から成る。
無柄(着生)海洋生物を基体に生育させるデバイスは投錨システムまたは係留システムを供された支持体浮揚(浮き)フレームにより固定され、支持される水平付着ガイドの配列の各1つに付着した垂直に延びる基質(基体)の配列を含み、場合により基質(基体)に投射する光を低減する遮光器(光よけ)を有する。
【0036】
支持フレームおよび浮揚(浮き)構造
この構造は付着ロッドを支える内部ペリメータ(内周)支持体、およびタンクの壁に全体構造を付着させ、または公海適用の為の浮揚(浮き)−投錨システムを供する外部ペリメータ(外周)から本質的に成る。双方のペリメータはそれから生育ロッドを支持できるだけの固さにするために、スクリューまたは他の要素を使用してしっかり相互に結合した1セットの木材またはプラスチックロッドにより形成される。内部フレームペリメータは外部のものと同じ平面に集められてもよいし、または浮揚(浮き)システムの配置および他の特別の培養要件により、外部フレームは表面に留まり、一方内部フレームは水中に沈むようにより低い平面に保持することができる。
【0037】
付着ガイド
支持体フレームの内部部分は「付着ガイド」に対し固定として働き、ジュート、木材、腐蝕耐性金属または合成物質のような海水と相容性の物質の数個の平行ロッド、ストリップ、フィレットまたはロープである。これらの「付着ガイド」はフックまたは同様の固定具によりフレームに結合するので、各端部はフレームから容易に分離でき、水平の平行配列を形成し、支持フレームの内部部分により水の表面近くに沈む。
【0038】
固定および投錨システム
海水培養適用では、全体の装置は水の表面に水平に浮くようにセットされる。これはフレーム構造の外部ペリメータ(外周)区域に低い平均密度構造を結合させることにより達成できる。この場合、全体の付着フレームは水の表面に浮揚するが、潮流により培養帯から流出しないようにロープ、チェーンまたはケーブルにより底に横たわる重量物に投錨する。
【0039】
デバイスは任意の十分にしっかりした軽金属、木材またプラスチックの固定枠組によりタンクまたは溝に使用し、底部または側面に固定するのに適応することもできる。本発明の好ましい態様では、膨化前のポリウレタンのような低い平均密度ポリマー物質の十分の大きさのピースは、全体構造が水に浮くように支持フレームの各横のペアを形成するロッド間のスペースに結合する。
【0040】
シェード(光よけ)
被覆材(covering material)を用いて、強い日光に暴露される領域の付着・ロッドの直接上方の水面上の全光入射を減ずることができる。本発明の好ましい実施態様では、成長する培養物(growing culture)に上方からアクセスするためにシェード(光よけ)の容易な除去を可能にするやり方で、ある長さの丈夫なクロス又は緻密なメッシュを各端部において木製ロッド又はプラスチック・ロッド(シェード・ロッド)に取り付けて用いる。
【0041】
0.2〜2m長さのロープ又は木製ロッド上にEcteinascidia turbinata幼虫を捕捉する方法に好ましいデバイスを用いる、例えば、本質的に図5、6及び7に示すような、シェード付きの約1〜2mx3〜6mのフローティング・フレームから成るデバイスを用いる、このフレームにロープ又は木製ロッドが固定され、生物のコロニー近くの水中に、それらに幼虫が取り付くまで、水平又は垂直に沈められて維持され、このように接種されたこれらのロープから成体コロニーが後に成長することができるようにする。
【0042】
0.2〜2m長さのロープ又は木製ロッド上にコロニーのフラグメントを移植することによってEcteinascidia turbinata幼虫を成長させる方法には他の好ましいデバイスを用いる、例えば、本質的に図8、9及び10に示すような、シェード付きの約1〜2mx3〜6mのフローティング・フレームから成るデバイスを用いる、このフレームからコロニーが付着したロープ又は木製ロッドが、生物を成長させるために水中に垂直に沈められるように吊るされることができる。
【0043】
本発明を添付図面に示す実施態様によって例示する。
最初に図1を参照すると、本発明の幼虫コレクター10は、尾索類コロニー16においてマングローブ根14に固定することができる2個のポリプロプレン・サポート12を有する。ポリプロピレン、ナイロン又はポリエチレンの長さ約60cmの6本のプラスチック・コード18が、コロニーから幼虫を受け取るための幼虫基板(larval substrate)を形成する。
【0044】
図1のコレクター10には、初期の経験は全体的に垂直な根14には上方サポートのみが必要であると示唆しているが、両端部にサポート12が存在する。各サポートは一般に円形であり、図2にも見ることができるように、内側に伸びるフレキシブル・フィンガー22の内部端部21によって画定される中央開口20が存在する。これらのフィンガーは曲げを容易にするために狭くなった区分23を有する。スロット24がサポートの周辺から開口20まで通ずる。
【0045】
使用時には、組み立てたコレクターを尾索類コロニー16が付着したマングローブ根14まで水面下に入れる。サポートをスロット24に沿って曲げて開き、根を中央開口まで通させる。フィンガー22の内部端部21は調節可能であり、必要に応じて、根と係合して、サポートを適所に維持するように強制することができる。
【0046】
幼虫がプラスチック・コード18に移行した後に、幼虫を成体させるために負荷したコレクター10をその場に放置することができる。或いは、負荷したコレクター10を新たな領域に移して、幼虫を他所で成体させることができる。特に、各負荷した基板は新しい領域で新しいコロニーの基礎を形成することができ、次に、この新しいコロニーに本発明を用いた幼虫回収を行うことができる。
図3は、幼虫コレクターのための異なるサポートを、該サポートの横断面と共に示す。図3のサポートの測定値は次の通りである:
【0047】
【表1】
【0048】
カリブ海尾索類Ecteinascidia turbinataの場合には、幼虫の放出が約4又は5回/年生じる。予想される放出時期を考慮してコレクターを配置し、次に規則的な間隔でコレクターをモニターすることが望ましい。
本発明を用いることによって、尾索類、特にEcteinascidia turbinataの大規模な養殖を計画することが可能になる。
【0049】
したがって、図1〜3の実施態様によって、天然生成資源を持続的に利用するための環境的に好ましい養殖方法、即ち、幼虫を基板上に回収して、幼虫を成体するまで成長させることを含むEcteinascidia turbinataの養殖方法を提供する。成体した尾索類から、又はそれらに続く子孫から、例えばエクテインアシジン(ecteinascidin)743のような望ましい化合物を単離することができる。この単離化合物も本発明の一部である。
【0050】
図4に関しては、地中海に用いるために適したメッシュワーク付着構造付き成長デバイスを示す。基板は、重い錘によって固定され、浮遊ブイによって浮かされるメッシュワークを含む。図4(上)は単独成長デバイスを示し、図4(下)は複数デバイスの配置を示す。
【0051】
カリブ海マングローブ沿岸領域における尾索類、特にE.turbinataの海中養殖のために有用な本発明の好ましい実施態様を図5〜9に示す。図5は幼虫捕捉フレームを示す。外周及び内周を図6に示す。図7には、幼虫捕捉コレクターのための木製ロッド又はロープを用いる代替え細部を示す。図8は尾索類成長フレームを示す。図9は、尾索類成長フレームの細部における代替え付着ロッド又は付着ロープを示す。図10は成長ユニットの細部におけるサポート・ロッドに固定された付着ロッドを示す。
【0052】
本出願のために、図面に示すように、一緒にねじ止めされた(screwed)平行な4対の木製ロッド又はポリマー・プラスチック・ロッドの長方形列を含むフレーム構造を用いる。この方法では、長方形スペースが成長ロッドの取り付けのために自由に残される。幼虫捕捉の用途のために、取り付けロッドが水面下に適当に維持されることを保証するために内周が外周よりも0〜50cm低く配置されるフレームを用いることができる。取り付けロッドは木、プラスチックチューブ又はロープから端部の適当な取り付け具によって構成され、内部フレーム上のフックにフィットし、内部フレーム内に水平に配置される。取り付けガイド又は天然基板に付着した成長する尾索類コロニーをデバイスに近づけて、幼虫を放出させる。しばらく経ってから、幼虫が固定されたロッドを一端から取り外して、成長させるためにサポート・フレームに移す。予め移植した生物を成長させるために、内周は外周と同じ面内であることができ、水面に水平なサポート・ロッド上に存在して、内部フレームを横切る。付着幼虫又は移植尾索類コロニー・フラグメントを有する垂直取り付けロッド又はロープは、尾索類を成長させるために、水平ロッドから下方に吊るされて配置される。完全に成長した尾索類を回収するために、ロッド又はロープを両端部から取り出すことができる。浮遊のために予備発泡ポリウレタン・スラブをフレームの外周と内周の間のスペースに固定する。取り付けフレーム全体をロープを用いて重い錘に固定する。
【0053】
養殖のために従われるプロセスは初期接種、その後の成長段階及び回収を含む。
成体尾索類コロニーを該構造に近づけ、これらの生物の生殖サイクルの結果として放出される幼虫を捕捉する、又は構造が好ましくは水平状態にあるときに、構造のロッドにコロニー自体を固定させることができる。或いは、尾索類幼虫が同様に捕捉されているロープをサポート構造のロッドに取り付ける。そこで、これらの幼虫は保持され、無柄成体(sessile adult)に分化し、次に、大きいコロニーに成長する。
【0054】
或いは、移植片を接種するために、例えば海綿又は尾索類コロニーのような成長生物から切り取った小フラグメント(例えば、約20g)を付着構造に移し、コロニーの芽茎と付着面との間の接触を維持するゴムバンド又は他の方法を用いて、成長ロッドに固定する。或いは、尾索類コロニー又は海綿が同様に固定されたロープを付着構造のロッドに同様に取り付ける。生物の性的成長が正味の質量増加をもたらす。
【0055】
幼虫が付着した又は生存成体生物のフラグメントが付着したロッド又はロープに、幼虫が成長して、コロニーを形成することができる垂直状態をとらせる。生物の性的成長が尾索類の正味の質量増加をもたらす。最初に接種されたコロニーのほんの少量を用いて、次の回収のための接種材料(seed material)を得ることができ、成長体の残部を回収して、適当に貯蔵する。
回収のために、コロニーから水流によって沈降物を除去し、外来生物を手によって必要に応じて除去し、動物を付着ロッドから分離することによって回収し、適当ならば凍結保存する。
【符号の説明】
【0056】
10:コレクター、16:コロニー、14:マングローブ根、12:サポート、18:コード、20:中央開口、21:内部端部、22:フレキシブル・フィンガー、24:スロット
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋薬剤抽出のための付着性(sessile)海生動物の培養に関する。特に、本発明は、被嚢類として知られた海洋生物の培養方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
過去何年にもわたって、薬理学的用途を有するであろう天然化合物を見つけるために、数多くの海洋生物の系統的スクリーニングがなされてきた。付着性海洋無脊椎動物は、試してみて価値のある有用な天然産物源と見なされてきた。無脊椎動物の中でも、被嚢類およびホヤ類(Tunicata、Ascidiacea)が、かかる天然産物源として特に興味を引くものとされている。様々な地域における調査によれば、被嚢類、主にecteinascidinおよびdidemninより単離された幾つかの化合物は人間の癌を治療する可能性があることが示されている。
【0003】
例えば、Ecteinascidia turbinataの抽出により、ecteinascidia 743およびその他の抗腫瘍ecteinascidin化合物が得られている。また、被嚢類Aplidium albicansの抽出により、デヒドロdidemnin Bおよびその他の抗腫瘍didemnin化合物が得られている。同様に、多くの活性化合物がその他の付着性海洋生物、特に海綿動物から単離されている。被嚢類、海綿動物およびかかる生物から抽出されたこれら化合物の多くは、化学合成が難しい複雑な構造を持っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】FR2617373
【特許文献2】EP0860111
【特許文献3】USP3779209
【特許文献4】USP5628280
【特許文献5】USP5089273
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ecteinascidia 743およびその他多くの当該化合物については、所望の活性化合物を後に単離するために天然物からバルクで生物を収集するという問題が残っている。Ectetnascidia turbinata(Herdman、1880、I Ascidiacea、Perophoridae)は透明な膜で通常明るいオレンジ色のコロニーホヤである。コロニーは、密集した群または細長いややダイヤ形の独立細胞からなっており、コロニーが成長する対象表面に接合するストロン網状組織により基部で連結されている。コロニーは、通常、浅海(0〜15m)およびラグーンに生息しており、赤色マングローブの根、色、貝、亀草、海底の砂、CaulerpaやPosidonia種のような植物において成長する。マングローブ領域が一般に広がっているのはカリブ海と地中海である。E. turbinataが両性周期により繁殖し、卵が育児嚢内で内部孵化し、独立細胞がストロンまたはベースから出芽することにより成熟、または無性生殖すると、幼生が放出される。Ecteinascidia turbinataは、現在、カリブ海においてコロニー中でこれが行われている水中のマングローブの根から集められている。潜水は困難なしには行えず、コロニーを絡まった根から見つけることも問題となっている。しかも、収集は継続して行わなければならない。
【0006】
従って、これら動物が天然に十分豊富でないこと、そして薬剤としての活性成分を製造するのに必要な量を与えるだけ十分な量を継続的に収集することは難しいということからこれらの源からの新薬の開発は妨げられている。
【0007】
発明の目的
本発明は、被嚢類およびその他付着性海洋生物の培養方法および装置の提供に関する。特に、本発明は、Ecteinascidia turbinataの飼養による生成に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本発明は、複数の同種の基質(基体)を海水中に配置し、生物を複数の基質(基体)上で成長させ、成長した生物を採取して、採取した生物から薬剤を抽出することにより、付着性海洋生物からの抽出による海洋薬剤の生成方法を提供するものである。
【0009】
関連の態様において、本発明は、複数の同種の基質を海水中に配置し、生物のコロニーからの幼生に基質に種苗させ(seed)、複数の基質上で生物を成長させて、成長した生物を採取することにより、海洋薬剤抽出用の付着性海洋生物を飼養する方法を提供する。
【0010】
他の関連の態様において、本発明は、複数の同種の基質を海水中に配置し、生物を基質に移植し、複数の基質上で生物を成長させて、成長した生物を採取することにより、海洋薬剤抽出用の付着性海洋生物を飼養する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、尾索類(tunicate)コロニー周囲の位置の本発明の幼虫コレクターの透視図である。
【図2】図2は、図1の幼虫コレクターに用いるためのサポートの上方からの図を、該サポートの横断面と共に示す。
【図3】図3は、本発明の幼虫コレクターのための他のサポートの上方からの図を、該サポートの横断面と共に示す。
【図4】図4は、地中海に用いるために適したメッシュワーク付着構造付きの成長デバイス(growth device)である。
【図5】図5は、幼虫捕捉のフレームを示す。
【図6】図6は、図5のフレームの拡大図である。
【図7】図7は、幼虫捕捉のフレームの水面下コレクターの細部である。
【図8】図8は、尾索類成長フレームである。
【図9】図9は、図8のフレームの細部である。
【図10】図10は、成長ユニットの細部である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
好ましい実施形態
好ましい海生生物はEcteinascidia turbinataであり、好ましい海洋薬剤は、ecteinascidin化合物、特にecteinascidia 743である。他の好ましい実施形態において、海洋生物は、Aplidium albicansであり、海洋薬剤はdidemnin化合物、特にデヒドロdidemnin Bである。
【0013】
本発明は、付着性海洋動物、特にE. turbinataのような被嚢類の原生地近辺または原生地からは離れた上水中での単一培養およびその抽出物からの薬剤の工業生産に十分な量での採取を可能とする装置および方法を提供する。場合によっては、本発明は、特に、地中海沿岸ラグーン領域、港湾領域または適正に構築された水槽または用水路に適用され、また場合によっては、カリブ海、特にカリブ海マングローブ湿地、要所(keys)、用水路、港湾領域または赤色マングローブの根、岩、貝殻、亀草、海底の砂や植物上で成長させるのに適正に構築された水槽に用いるのに特に好適である。
【0014】
本発明の飼養方法における一態様には、生物を基質上に移植して採取のために成長させることが含まれる。一実施形態において、個々の生物が基質上に移植される。あるいは、例えば、海綿動物については、生物の断片が基質上に移植される。
【0015】
移植組織による種苗については、幼体の成長しているコロニーから切り取った小片(約20グラム)を装置に移植して、好ましくは、支持バスケットまたは箱に配置、あるいはネットの穴または装置の個々のロープまたはロッド間の空間に固定する。必要であれば、コロニーのストロンと装置表面の間の接触を保つ長さの糸、ゴムまたはその他方法を用いて固定することができる。生物の無性成長により適正な水の条件下で被嚢類の量が正味で増大していく。
【0016】
本発明の他の飼養方法は、生物のコロニーからの幼生に基質に種苗させ、採取のために成長させることが含まれる。一実施形態において、基質はコロニーに近接配置される。あるいは、少なくとも1つのコレクターをコロニーに近接配置して幼生を収集して、続いてコレクターの幼生を用いて基質に種苗させる。この場合、幼生の入ったコレクターを局地で扱うことが必要であれば、基質はコロニーの一般産地にあってもよいし、あるいは、幼生の入ったコレクターを基質に近接して移植できるよう、基質はコロニーから離れていてもよい。
【0017】
コレクターを用いるこの態様については、本発明にはさらに、複数の幼生コレクターを被嚢類コロニー付近に配置して、コロニーから放出された幼生を幼生コレクターに集めることにより、被嚢類を採取する方法が含まれる。幼生の入ったコレクターは幼生を成熟させる場所に置くか、または幼生を成熟させる新鮮な領域に移す。
【0018】
本発明はまた、被嚢類コロニーから幼生を受けるための1つ以上の幼生基質のある被嚢類コロニーでマングローブの根に固定することのできる担体を有する幼生コレクターも提供する。本発明のコレクターは、幼生によるコロニー形成に好適な擬マングローブ根まで延びる細長いコードまたはその他の形態の基質を持つ担体を含むのが好ましい。この担体は、周囲に基質を備えた円状であるのが一般に好ましい。担体は、内側に延びている可撓性の固定用つめの内部端により画定される中央開口部がある。少なくとも1つのスロットが担体の周囲から開口部まで通じている。コレクターは、通常、1つの担体と4〜8個の細長い基質からできている。ただし、担体は、特に基質に剛性がなく、根が垂直でない場合には各端部に与えることができる。
【0019】
本方法には、このスロットに沿って担体を可撓させながら開いて、根を中央開口部に通すことが含まれる。固定用つめの内部端を調整して、必要であれば、損傷を与えることなく根に咬持させて、担体を定位置に保持することができる。幼生を受けるのにコードが自由に垂れ下がるよう注意する。
【0020】
本発明の変形例において、必要であればいくらか重りをつけて、幼生基質が水中に垂れ下がるようにして担体を浮かべる。担体は、マングローブの木またはその他好適な固定位置につなぐのが好ましい。
【0021】
幼生捕獲による種苗については、成体コロニーを装置に近接させる、あるいは装置を近接させて、これら生物の性周期の結果放出される浮遊する幼生を自身に固定させる。そこで付着性成体が得られこれが分化してより大きなコロニーへと成長する。
【0022】
移植または種苗後、移植組織または幼生を成長させてコロニーを形成させ、天然または人口の清浄な海水に沈める。これにより海水に含まれる天然プランクトンや微生物のような連続的に再生可能資源の栄養素となる。適正なサイズになれば、コロニーを採取することができる。
【0023】
最初の種苗コロニーまたは成長コロニーの一部を用いて、次の採取のための種子材料を与えてもよい。残りの成長部分は適宜収集して保管する。
【0024】
採取の際、水を流すことによりコロニーの堆積物を洗って、関係のない生物は手で取り除く。成長期後の被嚢類コロニーの採取は、ダイバーにより手で行うか、投錨地から装置を取り除いて好適な容器で船により運搬して、採取した被嚢類を担体ロッドまたはメッシュから分離する。その後直ちに、ビニール袋の中またはその他便利な手段で被嚢類を保管する。
【0025】
本発明はまた、好ましくは、垂直に延びる基質を含む複数の基質を含む付着性海洋生物を成長させるための装置も提供する。
【0026】
被嚢類を種苗し、成長させて大量に増やすことのできる本発明の特に好ましい装置は、付着装置、成長構造体および必要であれば支持システムから実質的になる。付着装置および成長構造体によって、培養している生物の種苗部分または移植組織を直接固定または付着させることができ、支持システムは付着構造体を定位置に保つ。被嚢類コロニーの部分(幼生で小さい)は、手で移植して、必要であれば弾性帯または同様のものを用いて支持構造体に固定して、採取するのに適正なサイズになるまで成長させる。装置は、海底投錨地と浮いている装置の間、または天然または人工海盆の両側間で保持される水中構造体として、直接固定基質を取り付けるための手段として用いることができる。浮遊する筏状の枠または台を用いて、直接固定基質を取り付けることもできる。
【0027】
本発明によればまた、投錨システムまたは係留システムに備わっている支持浮きシステムに固定された付着及び成長構造体を形成する複数の列の基質(基体)を含む基体上で、付着性海洋生物を成長させるための装置も提供される。
【0028】
成長装置は、以下のものより組み立てることのできる付着装置および成長構造体および支持システムを備えている。
【0029】
付着および生育(成長)構造体
(1) 無毒性プラスチックまたは腐蝕耐性金属、木材、または合成物質のような海水と相容性の物質から製造したロープ、ケーブル、メッシュ、ネット、ロッド、プランク、ストリップ、バー、フィレット、スチック、ケージ、またはバスケットの基体は投錨システムに取り付けることにより保持される。
(2) 砂の沿岸区域の底に平行の海水耐性ロープまたはストリップの平行ラインはしっかりセットした投錨支持体間に延びている。
(3) バスケット、ケージまたは孔を開けた箱上のロープ、ケーブルまたはチェーンの支持体ラインは間隔を置いて配置する。バスケット、ケージまたは孔を開けた箱は尾索類のコロニーまたは他の生物の種子断片を捕集するために閉鎖できる。
隣接するロッドまたはメッシュまたはネットのケーブル間の自由空間または孔は水を自由に通し、尾索類移植の付着および生育に対する空間である。バスケットまたは箱の孔は水を自由に通すことができ、しかし初めの種苗移植を含有する。
【0030】
支持体システム
付着および生育に使用する網細工(メッシュワーク)が十分な硬さである場合、底に横たわる重量物または培養タンクの側面に対する付加的投錨は支持体に対し十分である。海中培養におけるような、必要な場合、投錨システムは底に横たわる重量物と海の表面の高浮揚性フロート(浮き)間で引張るように仕組まれたロープ、ロッドまたはケーブルにより供される。海の表面に垂直に沈み、伸びた全体デバイスの維持は支持体構造の各端部の投錨ロッド、ロープ、ケーブルまたはチェーンに取付けることにより確保される。網細工(メッシュワーク)または網目が使用される場合、付加的の一層小さいフロート(浮き)またはブイはメッシュの上部側面で規則正しい間隔で使用していつも広げ、引張って保持する。規則的間隔を置いた底部重量部に対し間隔をあけた付加的投錨は付加的フロート(浮き)およびブイと反対に使用する。別法では、溝またはタンクが使用される場合、全体の支持体システムは金属、木材またはプラスチックの固い支持体フレームを使用することにより溝の側面またはタンクの壁に固定できる。バスケット、孔あき箱またはケージを使用する場合、支持体フレームは海底に、または生育タンクにしっかり付着した投錨ロッド間に引張られたロープ、ケーブルまたはチェーンの1つまたは2つの長いラインから成る
ことができる。
【0031】
好ましい態様では、高密度ポリエチレンのようなロープまたは他の物質のメッシュまたは厚いネットは付着および生育に対し使用され、その孔または空間は約2〜20mmである。このメッシュまたはネットは重い投錨重量物およびブイ間に張ったケーブルから成る投錨−固定システムにより集められ、広げて保持される。高浮揚力(適当には20〜50kg揚力)空気ブイは各ケーブルの1端に取付け、一方海の表面に本質的に垂直に全体構造を置くように他端は底の重量物(ブイの揚力より正味(tared)重い)に固定する。全体の付着網細工(メッシュワーク)は延びる滞留を確保する投錨システムに固着し、潮流により培養帯から流出しない。
【0032】
別の態様では、フレーム構造は自己支持するのに十分な固さにするためにロープ、スクリューまたは他の要素を使用して或る角度で相互にしっかり付着した、木材またはプラスチックロッドまたはストリップの2つの平行配列またはセットにより形成される長方形仕切りから成る。別法では、軽金属、木材またはプラスチックの固い枠組を使用して底に付着できる。
【0033】
好ましいデバイスは基質および支持体として例えば本質的に図4に記載され、約0.5〜4mの長さ、2〜8cmの孔を有する広いプラスチックメッシュを含み、狭い沿岸の潟の底に定着して完全に沈み、浮揚デバイスにより畧々垂直に保持されるデバイスを使用して基質に生物のコロニー断片を移植することによりEcteinascidia turbinataを生育させる方法で使用する。
【0034】
無柄(着生)の海洋生物、特にE.Turbinataのような尾索類生物を天然コロニーに接近し、または離れた位置で播種し、生育させるのに有用なデバイスも供される。このデバイスは支持−浮揚(浮き)フレーム内で付着および生育構造体から本質的に成る。これはいかり−固定システムにより保持され、それに付加する遮光器(光よけ)を有することができる。
【0035】
生育デバイスは本質的に、
支持体フレームおよび浮揚(浮き)構造、
付着ガイド
固定および投錨システム、および
通常、遮光器(光よけ)
から成る。
無柄(着生)海洋生物を基体に生育させるデバイスは投錨システムまたは係留システムを供された支持体浮揚(浮き)フレームにより固定され、支持される水平付着ガイドの配列の各1つに付着した垂直に延びる基質(基体)の配列を含み、場合により基質(基体)に投射する光を低減する遮光器(光よけ)を有する。
【0036】
支持フレームおよび浮揚(浮き)構造
この構造は付着ロッドを支える内部ペリメータ(内周)支持体、およびタンクの壁に全体構造を付着させ、または公海適用の為の浮揚(浮き)−投錨システムを供する外部ペリメータ(外周)から本質的に成る。双方のペリメータはそれから生育ロッドを支持できるだけの固さにするために、スクリューまたは他の要素を使用してしっかり相互に結合した1セットの木材またはプラスチックロッドにより形成される。内部フレームペリメータは外部のものと同じ平面に集められてもよいし、または浮揚(浮き)システムの配置および他の特別の培養要件により、外部フレームは表面に留まり、一方内部フレームは水中に沈むようにより低い平面に保持することができる。
【0037】
付着ガイド
支持体フレームの内部部分は「付着ガイド」に対し固定として働き、ジュート、木材、腐蝕耐性金属または合成物質のような海水と相容性の物質の数個の平行ロッド、ストリップ、フィレットまたはロープである。これらの「付着ガイド」はフックまたは同様の固定具によりフレームに結合するので、各端部はフレームから容易に分離でき、水平の平行配列を形成し、支持フレームの内部部分により水の表面近くに沈む。
【0038】
固定および投錨システム
海水培養適用では、全体の装置は水の表面に水平に浮くようにセットされる。これはフレーム構造の外部ペリメータ(外周)区域に低い平均密度構造を結合させることにより達成できる。この場合、全体の付着フレームは水の表面に浮揚するが、潮流により培養帯から流出しないようにロープ、チェーンまたはケーブルにより底に横たわる重量物に投錨する。
【0039】
デバイスは任意の十分にしっかりした軽金属、木材またプラスチックの固定枠組によりタンクまたは溝に使用し、底部または側面に固定するのに適応することもできる。本発明の好ましい態様では、膨化前のポリウレタンのような低い平均密度ポリマー物質の十分の大きさのピースは、全体構造が水に浮くように支持フレームの各横のペアを形成するロッド間のスペースに結合する。
【0040】
シェード(光よけ)
被覆材(covering material)を用いて、強い日光に暴露される領域の付着・ロッドの直接上方の水面上の全光入射を減ずることができる。本発明の好ましい実施態様では、成長する培養物(growing culture)に上方からアクセスするためにシェード(光よけ)の容易な除去を可能にするやり方で、ある長さの丈夫なクロス又は緻密なメッシュを各端部において木製ロッド又はプラスチック・ロッド(シェード・ロッド)に取り付けて用いる。
【0041】
0.2〜2m長さのロープ又は木製ロッド上にEcteinascidia turbinata幼虫を捕捉する方法に好ましいデバイスを用いる、例えば、本質的に図5、6及び7に示すような、シェード付きの約1〜2mx3〜6mのフローティング・フレームから成るデバイスを用いる、このフレームにロープ又は木製ロッドが固定され、生物のコロニー近くの水中に、それらに幼虫が取り付くまで、水平又は垂直に沈められて維持され、このように接種されたこれらのロープから成体コロニーが後に成長することができるようにする。
【0042】
0.2〜2m長さのロープ又は木製ロッド上にコロニーのフラグメントを移植することによってEcteinascidia turbinata幼虫を成長させる方法には他の好ましいデバイスを用いる、例えば、本質的に図8、9及び10に示すような、シェード付きの約1〜2mx3〜6mのフローティング・フレームから成るデバイスを用いる、このフレームからコロニーが付着したロープ又は木製ロッドが、生物を成長させるために水中に垂直に沈められるように吊るされることができる。
【0043】
本発明を添付図面に示す実施態様によって例示する。
最初に図1を参照すると、本発明の幼虫コレクター10は、尾索類コロニー16においてマングローブ根14に固定することができる2個のポリプロプレン・サポート12を有する。ポリプロピレン、ナイロン又はポリエチレンの長さ約60cmの6本のプラスチック・コード18が、コロニーから幼虫を受け取るための幼虫基板(larval substrate)を形成する。
【0044】
図1のコレクター10には、初期の経験は全体的に垂直な根14には上方サポートのみが必要であると示唆しているが、両端部にサポート12が存在する。各サポートは一般に円形であり、図2にも見ることができるように、内側に伸びるフレキシブル・フィンガー22の内部端部21によって画定される中央開口20が存在する。これらのフィンガーは曲げを容易にするために狭くなった区分23を有する。スロット24がサポートの周辺から開口20まで通ずる。
【0045】
使用時には、組み立てたコレクターを尾索類コロニー16が付着したマングローブ根14まで水面下に入れる。サポートをスロット24に沿って曲げて開き、根を中央開口まで通させる。フィンガー22の内部端部21は調節可能であり、必要に応じて、根と係合して、サポートを適所に維持するように強制することができる。
【0046】
幼虫がプラスチック・コード18に移行した後に、幼虫を成体させるために負荷したコレクター10をその場に放置することができる。或いは、負荷したコレクター10を新たな領域に移して、幼虫を他所で成体させることができる。特に、各負荷した基板は新しい領域で新しいコロニーの基礎を形成することができ、次に、この新しいコロニーに本発明を用いた幼虫回収を行うことができる。
図3は、幼虫コレクターのための異なるサポートを、該サポートの横断面と共に示す。図3のサポートの測定値は次の通りである:
【0047】
【表1】
【0048】
カリブ海尾索類Ecteinascidia turbinataの場合には、幼虫の放出が約4又は5回/年生じる。予想される放出時期を考慮してコレクターを配置し、次に規則的な間隔でコレクターをモニターすることが望ましい。
本発明を用いることによって、尾索類、特にEcteinascidia turbinataの大規模な養殖を計画することが可能になる。
【0049】
したがって、図1〜3の実施態様によって、天然生成資源を持続的に利用するための環境的に好ましい養殖方法、即ち、幼虫を基板上に回収して、幼虫を成体するまで成長させることを含むEcteinascidia turbinataの養殖方法を提供する。成体した尾索類から、又はそれらに続く子孫から、例えばエクテインアシジン(ecteinascidin)743のような望ましい化合物を単離することができる。この単離化合物も本発明の一部である。
【0050】
図4に関しては、地中海に用いるために適したメッシュワーク付着構造付き成長デバイスを示す。基板は、重い錘によって固定され、浮遊ブイによって浮かされるメッシュワークを含む。図4(上)は単独成長デバイスを示し、図4(下)は複数デバイスの配置を示す。
【0051】
カリブ海マングローブ沿岸領域における尾索類、特にE.turbinataの海中養殖のために有用な本発明の好ましい実施態様を図5〜9に示す。図5は幼虫捕捉フレームを示す。外周及び内周を図6に示す。図7には、幼虫捕捉コレクターのための木製ロッド又はロープを用いる代替え細部を示す。図8は尾索類成長フレームを示す。図9は、尾索類成長フレームの細部における代替え付着ロッド又は付着ロープを示す。図10は成長ユニットの細部におけるサポート・ロッドに固定された付着ロッドを示す。
【0052】
本出願のために、図面に示すように、一緒にねじ止めされた(screwed)平行な4対の木製ロッド又はポリマー・プラスチック・ロッドの長方形列を含むフレーム構造を用いる。この方法では、長方形スペースが成長ロッドの取り付けのために自由に残される。幼虫捕捉の用途のために、取り付けロッドが水面下に適当に維持されることを保証するために内周が外周よりも0〜50cm低く配置されるフレームを用いることができる。取り付けロッドは木、プラスチックチューブ又はロープから端部の適当な取り付け具によって構成され、内部フレーム上のフックにフィットし、内部フレーム内に水平に配置される。取り付けガイド又は天然基板に付着した成長する尾索類コロニーをデバイスに近づけて、幼虫を放出させる。しばらく経ってから、幼虫が固定されたロッドを一端から取り外して、成長させるためにサポート・フレームに移す。予め移植した生物を成長させるために、内周は外周と同じ面内であることができ、水面に水平なサポート・ロッド上に存在して、内部フレームを横切る。付着幼虫又は移植尾索類コロニー・フラグメントを有する垂直取り付けロッド又はロープは、尾索類を成長させるために、水平ロッドから下方に吊るされて配置される。完全に成長した尾索類を回収するために、ロッド又はロープを両端部から取り出すことができる。浮遊のために予備発泡ポリウレタン・スラブをフレームの外周と内周の間のスペースに固定する。取り付けフレーム全体をロープを用いて重い錘に固定する。
【0053】
養殖のために従われるプロセスは初期接種、その後の成長段階及び回収を含む。
成体尾索類コロニーを該構造に近づけ、これらの生物の生殖サイクルの結果として放出される幼虫を捕捉する、又は構造が好ましくは水平状態にあるときに、構造のロッドにコロニー自体を固定させることができる。或いは、尾索類幼虫が同様に捕捉されているロープをサポート構造のロッドに取り付ける。そこで、これらの幼虫は保持され、無柄成体(sessile adult)に分化し、次に、大きいコロニーに成長する。
【0054】
或いは、移植片を接種するために、例えば海綿又は尾索類コロニーのような成長生物から切り取った小フラグメント(例えば、約20g)を付着構造に移し、コロニーの芽茎と付着面との間の接触を維持するゴムバンド又は他の方法を用いて、成長ロッドに固定する。或いは、尾索類コロニー又は海綿が同様に固定されたロープを付着構造のロッドに同様に取り付ける。生物の性的成長が正味の質量増加をもたらす。
【0055】
幼虫が付着した又は生存成体生物のフラグメントが付着したロッド又はロープに、幼虫が成長して、コロニーを形成することができる垂直状態をとらせる。生物の性的成長が尾索類の正味の質量増加をもたらす。最初に接種されたコロニーのほんの少量を用いて、次の回収のための接種材料(seed material)を得ることができ、成長体の残部を回収して、適当に貯蔵する。
回収のために、コロニーから水流によって沈降物を除去し、外来生物を手によって必要に応じて除去し、動物を付着ロッドから分離することによって回収し、適当ならば凍結保存する。
【符号の説明】
【0056】
10:コレクター、16:コロニー、14:マングローブ根、12:サポート、18:コード、20:中央開口、21:内部端部、22:フレキシブル・フィンガー、24:スロット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着生海洋生物からの抽出による海洋医薬物質の製造方法であって、海水中に複数の基体様物質を配置し、これら複数の基体上で着生海洋生物を増殖させ、増殖した生物を採集し、次いで採集した生物から医薬物質を抽出することを包含する、上記製造方法。
【請求項2】
海洋生物が、エクテイナシジア タルビナータ(Ecteinascidia turbinata)であり、および海洋医薬物質が、エクテイナシジン化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
海洋生物が、アプリジウム アルビカンス(Aplidium albicans)であり、および海洋医薬物質が、ジデムニン化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
海洋医薬物質を抽出するための着生海洋生物の養殖方法であって、海水中に複数の基体様物質を配置し、着生海洋生物のコロニイからの幼生を基体に接種し、これらの生物を複数の基体上で増殖させ、次いで増殖した生物を採集することを包含する、上記養殖方法。
【請求項5】
基体を、コロニイに隣接して配置する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
基体を備えた支持体を包含する少なくとも1個の採集器を、コロニイに隣接して配置し、幼生を採集する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
採集器を、別の場所に移し、生物を増殖させる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
海洋医薬物質を抽出するための着生海洋生物の養殖方法であって、海水中に複数の基体様物質を配置し、着生海洋生物を基体上に移植し、これらの生物を複数の基体上で増殖させ、次いで増殖した生物を採集することを包含する、上記養殖方法。
【請求項9】
個々の生物を基体上に移植する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
生物の断片を、基体上に移植する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
基体が、生物を直接に固定するためのカゴ、ならびにケーブル、ロープ、メッシュ、ネット、棒、厚板およびケージを備えている、請求項8〜10のいずれ一つに記載の方法。
【請求項12】
基体を含む海中の構造体を、底部投錨デバイスと浮きデバイスとの間に保持する、請求項8〜11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
基体を含む海中の構造体を、天然または人工の海盆の側面間に保持する、請求項8〜11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
着生海洋生物の培養用装置であって、支持枠および浮動構造体、付着ガイド、付着ガイドに確保するための基体、固定およびいかりシステム、ならびに任意に、光よけを備えている、上記培養用装置。
【請求項15】
着生海洋生物を基体上で増殖させるための装置であって、垂直に伸びている基体配列および任意に、基体上に入射する光を減少させる光よけを包含し、上記基体配列はそれぞれ、いかりシステムまたはもやいシステムを備えた支持浮動枠に確保され、またこの枠により支持されている水平付着ガイド配列のそれぞれ一つに結合されている、上記増殖用装置。
【請求項16】
着生海洋生物を基体上で増殖させるための装置であって、いかりシステムまたはもやいシステムを備えた支持浮動システムに確保されている付着および増殖構造体を形成している基体配列を包含する、上記増殖装置。
【請求項17】
エクテイナシジア タルビナータ(Ecteinascidia turbinata)の増殖方法であって、浅瀬海岸ラグーンの底に、いかりで固定することにより完全に海中に保持されており、また浮動デバイスによりほぼ垂直に維持されている、2〜8cmのホールを有する長さ約0.5〜4mの幅の広いプラスチックメッシュを包含する装置を、基体および支持体として使用し、この基体に、上記生物のコロニイの断片を移植することを包含する、上記増殖方法。
【請求項18】
エクテイナシジア タルビナータ(Ecteinascidia turbinata)幼生を、0.2〜2m長さのロープまたは木製棒上に捕獲する方法であって、光よけを備えており、その上に上記ロープまたは木製棒が固定され、生物のコロニイ附近で、水中に水平または垂直に沈められ、保持されている、約1〜2mx3〜6mの浮動枠を包含する装置を使用し、このように接種された、これらのロープまたは棒から、後刻に、成熟したコロニイが増殖できるように、この装置に幼生を付着させる、上記捕獲方法。
【請求項19】
エクテイナシジア タルビナータ(Ecteinascidia turbinata)を、0.2〜2m長さのロープまたは木製棒上に、コロニイ断片を移植することによって、増殖させる方法であって、光よけを備えた、約1〜2mx3〜6mの浮動枠を包含し、この枠から、コロニイが付着したロープまたは木製棒が水中に垂直に沈められ、つり下げられ、これにより生物が増殖される装置
を使用する、上記増殖方法。
【請求項1】
着生海洋生物からの抽出による海洋医薬物質の製造方法であって、海水中に複数の基体様物質を配置し、これら複数の基体上で着生海洋生物を増殖させ、増殖した生物を採集し、次いで採集した生物から医薬物質を抽出することを包含する、上記製造方法。
【請求項2】
海洋生物が、エクテイナシジア タルビナータ(Ecteinascidia turbinata)であり、および海洋医薬物質が、エクテイナシジン化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
海洋生物が、アプリジウム アルビカンス(Aplidium albicans)であり、および海洋医薬物質が、ジデムニン化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
海洋医薬物質を抽出するための着生海洋生物の養殖方法であって、海水中に複数の基体様物質を配置し、着生海洋生物のコロニイからの幼生を基体に接種し、これらの生物を複数の基体上で増殖させ、次いで増殖した生物を採集することを包含する、上記養殖方法。
【請求項5】
基体を、コロニイに隣接して配置する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
基体を備えた支持体を包含する少なくとも1個の採集器を、コロニイに隣接して配置し、幼生を採集する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
採集器を、別の場所に移し、生物を増殖させる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
海洋医薬物質を抽出するための着生海洋生物の養殖方法であって、海水中に複数の基体様物質を配置し、着生海洋生物を基体上に移植し、これらの生物を複数の基体上で増殖させ、次いで増殖した生物を採集することを包含する、上記養殖方法。
【請求項9】
個々の生物を基体上に移植する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
生物の断片を、基体上に移植する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
基体が、生物を直接に固定するためのカゴ、ならびにケーブル、ロープ、メッシュ、ネット、棒、厚板およびケージを備えている、請求項8〜10のいずれ一つに記載の方法。
【請求項12】
基体を含む海中の構造体を、底部投錨デバイスと浮きデバイスとの間に保持する、請求項8〜11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
基体を含む海中の構造体を、天然または人工の海盆の側面間に保持する、請求項8〜11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
着生海洋生物の培養用装置であって、支持枠および浮動構造体、付着ガイド、付着ガイドに確保するための基体、固定およびいかりシステム、ならびに任意に、光よけを備えている、上記培養用装置。
【請求項15】
着生海洋生物を基体上で増殖させるための装置であって、垂直に伸びている基体配列および任意に、基体上に入射する光を減少させる光よけを包含し、上記基体配列はそれぞれ、いかりシステムまたはもやいシステムを備えた支持浮動枠に確保され、またこの枠により支持されている水平付着ガイド配列のそれぞれ一つに結合されている、上記増殖用装置。
【請求項16】
着生海洋生物を基体上で増殖させるための装置であって、いかりシステムまたはもやいシステムを備えた支持浮動システムに確保されている付着および増殖構造体を形成している基体配列を包含する、上記増殖装置。
【請求項17】
エクテイナシジア タルビナータ(Ecteinascidia turbinata)の増殖方法であって、浅瀬海岸ラグーンの底に、いかりで固定することにより完全に海中に保持されており、また浮動デバイスによりほぼ垂直に維持されている、2〜8cmのホールを有する長さ約0.5〜4mの幅の広いプラスチックメッシュを包含する装置を、基体および支持体として使用し、この基体に、上記生物のコロニイの断片を移植することを包含する、上記増殖方法。
【請求項18】
エクテイナシジア タルビナータ(Ecteinascidia turbinata)幼生を、0.2〜2m長さのロープまたは木製棒上に捕獲する方法であって、光よけを備えており、その上に上記ロープまたは木製棒が固定され、生物のコロニイ附近で、水中に水平または垂直に沈められ、保持されている、約1〜2mx3〜6mの浮動枠を包含する装置を使用し、このように接種された、これらのロープまたは棒から、後刻に、成熟したコロニイが増殖できるように、この装置に幼生を付着させる、上記捕獲方法。
【請求項19】
エクテイナシジア タルビナータ(Ecteinascidia turbinata)を、0.2〜2m長さのロープまたは木製棒上に、コロニイ断片を移植することによって、増殖させる方法であって、光よけを備えた、約1〜2mx3〜6mの浮動枠を包含し、この枠から、コロニイが付着したロープまたは木製棒が水中に垂直に沈められ、つり下げられ、これにより生物が増殖される装置
を使用する、上記増殖方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−167097(P2012−167097A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−91927(P2012−91927)
【出願日】平成24年4月13日(2012.4.13)
【分割の表示】特願2010−53454(P2010−53454)の分割
【原出願日】平成11年5月5日(1999.5.5)
【出願人】(501440835)ファルマ・マール・ソシエダード・アノニマ (30)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年4月13日(2012.4.13)
【分割の表示】特願2010−53454(P2010−53454)の分割
【原出願日】平成11年5月5日(1999.5.5)
【出願人】(501440835)ファルマ・マール・ソシエダード・アノニマ (30)
【Fターム(参考)】
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