説明

付着物の除去装置及び付着物の除去方法

【課題】広告やポスター、宛名ラベルや送り状など、搬送箱や壁等に貼り付けた付着物を効率的に除去可能な付着物の除去装置及び付着物の除去方法を提供する。
【解決手段】付着面2から付着物1を剥がして除去する可搬式の付着物1の除去装置10であって、付着物1と付着面2間へ挿入可能な刃先14を有する刃物11と、刃物11の刃先14の運動方向に少なくとも左右方向への成分が含まれるように、刃物11を駆動する駆動手段12とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の壁面に貼った広告やポスターなどを除去したり、搬送箱の上面や側面に貼ったラベルや送り状などを除去したりするのに好適に利用可能な付着物の除去装置及び付着物の除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
床面に付着したチューインガムなどの付着物を掻取るための掻取り装置として、先端部に刃部を有する刃物を前後方向に往復運動させながら、付着物と床面間に刃先を挿入して、付着物を除去できるように構成したものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
一方、土木建築作業などで使用されているリース用工具では、リース店において金属製の搬送箱にリースする工具を入れて、搬送箱の側面や上面等に送り状を貼着し、客先へ工具を輸送することになるが、搬送箱は繰り返し使用する関係上、その都度、前回貼り付けた送り状を剥がして、新たな送り状を貼り付けている。
【0004】
【特許文献1】実開平4−52847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、搬送箱に貼着した送り状の剥離は、ヘラ等を用いて人手により行っているが、搬送箱が鉄系の金属材料で構成されている場合には、貼り付けた送り状がなかなか剥がれず、多くの作業時間を消費してしまうとともに、送り状の一部が搬送箱に付着したまま残って、搬送箱が汚れるという問題があった。そこで、送り状の除去作業の電動化を図るべく、本発明者は、特許文献1記載の発明と同様に、刃物を前後方向に移動させる除去装置を製作し、これを用いて搬送箱に貼着した送り状を機械的に剥離させる試験を行った。しかし、送り状などの紙製の付着物の除去作業は、チューインガムの除去作業場合とは異なり、刃物を前後方向に移動させただけでは効率的に付着物を除去することができず、結局は、ヘラを用いた人手による除去と同等の作業効率のものしか得られなかった。
【0006】
本発明の目的は、広告やポスター、宛名ラベルや送り状など、搬送箱や壁等に貼り付けた付着物を効率的に除去可能な付着物の除去装置及び付着物の除去方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、送り状の効率的な除去方法について、さらに鋭意検討した結果、包丁等の通常の刃物であれば、押し切りではなく、引き切りにより、容易に且つ鋭く対象物を切断できることに着目し、刃先の運動に左右方向の成分を持たせることによって、付着物と付着面間において刃先を引き操作し、送り状を格段に効率的に除去できるとの発想を得て本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明に係る付着物の除去装置は、付着面から付着物を剥がして除去する可搬式の付着物の除去装置であって、前記付着物と付着面間へ挿入可能な刃先を有する刃物と、前記刃物の刃先の運動方向に少なくとも左右方向への成分が含まれるように、前記刃物を駆動する駆動手段とを備えたものである。
【0009】
この除去装置では、刃先の運動方向に少なくとも左右方向への成分が含まれるように駆動手段により刃物を駆動しながら、付着物と付着面間に刃先を挿入して、付着部を付着面から剥離除去することになる。つまり、刃先を左右方向に移動させたときの刃物の引き操作により、付着物と付着面との境界部分を切り裂いて、付着物を除去することができるので、単に前後方に刃物を移動させて、押し切りにより付着物を剥離させる場合と比較して、付着物を効率的に剥離除去することが可能となる。
【0010】
ここで、前記刃先が楕円運動するように、前記刃物を駆動手段により駆動することが好ましい。つまり、刃先の運動には、少なくとも左右方向への成分が含まれておればよいのであるが、円運動や楕円運動であれば、左右方向への運動成分のみの直線運動と比較して、円滑に刃先を移動させることができるので好ましい。また、このような運動は、カム機構等を利用することにより、モータの回転運動を刃物の円運動や楕円運動に容易に変換して得ることができる。
【0011】
前記刃物として弾性変形可能な平板状の刃物を用い、前記刃物の基部上面に圧接される押圧板を設け、この押圧板により前記刃物を刃先側下がりの湾曲状に変形させることも好ましい実施の形態である。このように構成すると、刃物の刃先側を付着面に押し当てても、刃物が反り上がらないので、刃物の刃先側を付着面に押し当てながら、刃先を付着物と付着面間に挿入することが可能となり、付着物を効果的且つ綺麗に除去することができる。
【0012】
前記刃物に外装可能な下面開放のカバー部材を設けることもできる。このようなカバー部材を設けると、付着物を除去するときに発生する切粉や粉塵の飛散を防止できる。また、カバー部材により刃物を覆うことで、輸送時等における刃物の破損や刃物による他物の破損を防止することができる。
【0013】
前記駆動手段の駆動部を電動工具の駆動部で構成することも好ましい実施の形態である。駆動部を汎用の電動工具の駆動部で構成すると、除去装置の製作コストを格段に安くできる。
【0014】
本発明に係る付着物の除去方法は、刃先の運動方向に少なくとも左右方向への成分が含まれるように、駆動手段により刃物を駆動させながら、付着面と付着物間に刃物の刃先を挿入し、付着面に付着した付着物を剥がして除去するものである。
【0015】
この除去方法では、刃先の運動方向に少なくとも左右方向への成分が含まれるように、駆動手段により刃物を駆動させながら、付着物と付着面間に刃先を押し付けて、付着部を剥離除去することになる。つまり、刃先を左右方向に移動させたときの刃物の引き操作により、付着物と付着面との境界部分を切り裂いて、付着物を除去することができるので、単に前後方に刃物を移動させて、押し切りにより付着物を剥離させる場合と比較して、付着物を効率的に剥離除去することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る付着物の除去装置及び除去方法によれば、刃先の運動方向に少なくとも左右方向への成分が含まれるように駆動手段により刃物を駆動しながら、付着物と付着面間に刃先を挿入して、付着部を付着面から剥離除去することになる。つまり、刃先を左右方向に移動させたときの刃物の引き操作により、付着物と付着面との境界部分を切り裂いて、付着物を除去することができるので、単に前後方に刃物を移動させて、押し切りにより付着物を剥離させる場合と比較して、付着物を効率的に剥離除去することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1〜図3に示すように、付着物1の除去装置10は、付着物1を除去するための刃物11と、刃物11を駆動するための駆動手段12と、切粉や粉塵が飛散しないように刃物11を覆うカバー部材13とを備えている。
【0018】
駆動手段12は、一般的なディスクグラインダなどの電動工具と同様の構成の駆動部20と、刃先14の運動方向に少なくとも左右方向への成分が含まれるように、駆動部20の上下方向の出力軸21の回転運動を刃物11の運動に切換える切換部22とを備えている。
【0019】
駆動部20について説明すると、駆動部20のハウジング23内には図示外の電動モータが回転軸を前後方向にして内装されるとともに、電動モータよりも前側において駆動部20のハウジング23内には、電動モータの前後方向の回転軸の回転運動を、上下方向の出力軸21の回転運動に切換える図示外の歯車機構が設けられている。歯車機構は、回転軸の先端部に設けた傘歯車(図示略)と、出力軸21の途中部に設けたリングギア(図示略)とを介して回転力を伝達することで、電動モータの前後方向の回転軸の回転運動を、上下方向の出力軸21の回転運動に切り替えて伝達する周知の構成のものである。
【0020】
切換部22は、図4に示すように、刃物11の刃先14が楕円運動するように、駆動部20の出力軸21の回転運動を刃物11の往復運動に切換えるもので、図1〜図4に示すように、駆動部20のハウジング23の前部下面には前方へ延びる箱型のケーシング24が固定され、駆動部20の出力軸21はケーシング24の後部内に挿通され、ケーシング24内において出力軸21には出力軸21と一体的に回転する第1歯車25が設けられている。ケーシング24の前後方向の略中央部には上下方向の支軸26がベアリング27を介して回転自在に支持され、支軸26の途中部には第1歯車25に噛合する第2歯車28が一体的に設けられている。
【0021】
ケーシング24の前部にはスペーサブロック29が設けられ、ケーシング24の下部内にはスペーサブロック29と下壁部間の隙間を通って前方へ延びる略平板状の出力板30が前後方向に移動自在に設けられている。第2歯車28とケーシング24間において支軸26には偏心軸31が一体的に設けられ、出力板30の後部には偏心軸31がベアリング32を介して回転自在に挿通される貫通孔33が形成されている。出力板30の前部には前後方向に細長いガイド孔34が形成され、ガイド孔34には前後方向に移動自在にベアリング35が組み付けられ、スペーサブロック29にはベアリング35を挿通するガイド軸部29aが上下方向に一体的に形成され、出力板30は、ガイド軸部29aに対して前後方向に移動自在で且つガイド軸部29aを中心として揺動自在に支持されている。
【0022】
ケーシング24よりも前側へ突出する出力板30の前端部には、前方へ延びる刃物11とその上側に重ね合わされた押圧板37とが着脱自在に固定されている。刃物11はステンレス鋼板などの薄肉な弾性金属板からなり、押圧板37よりも前側へ突出されている。押圧板37は前方下がりの緩やかな湾曲状に形成した板状部材からなり、刃物11は押圧板37の下面に沿って前方下がりの湾曲状に弾性変形した状態に出力板30に固定されている。このように刃物11を前方下がりの湾曲状に弾性変形させることで、刃物11の先端部を強く付着面2に押し当てても、刃物11が反り返ったりすることを防止できるように構成されている。
【0023】
刃物11の先端部には左右方向に略ストレート状に延びる刃先14が形成されている。但し、刃先14は、左右方向に対して傾斜状に形成することもできるし、図6に示す刃先14Aのように、途中部をストレート状に形成し、両端部にアールを形成したり、図6に示す刃先14Bのように、半円弧状に形成したり、図6に示す刃先14Cのように、サイン波状などの波形状に形成することも可能である。また、図7に示すように、円板状の刃物11Dの両側部を一点鎖線で示す位置で切除し、円弧状の1対の刃先14Eを有する刃物11Eを用いることも可能である。
【0024】
ケーシング24の上壁部の略中央部には上方へ延びる棒状のハンドル40が立設固定され、駆動部20のハウジング23を一方の手で保持し、ハンドル40を他方の手で保持しながら、除去装置10を操作して、付着物1を除去できるように構成されている。ただし、ハンドル40は、ケーシング24の側壁部に側方と突出状に設けるなど、操作し易い任意の位置に設けることができる。また、ハンドル40の形状に関しても、操作性を考慮した任意の形状のものを採用することができる。
【0025】
カバー部材13は、底面側と後面側を開放した、刃物11に外装可能な透明な箱状部材で構成され、ケーシング24の前端上部にヒンジ部材41を介して、図3に実線で図示の使用位置と、図3に仮想線で図示の開放位置とにわたって回動自在に支持されている。ケーシング24にはカバー部材13を使用位置と開放位置とに位置決めするストッパー部材42、43が設けられ、カバー部材13とケーシング24の両側部間にはバネ部材44が張設され、カバー部材13の回動により、図2に一点鎖線で示す中立線NLよりも上側にバネ部材44が回動すると、バネ部材44によりカバー部材13が仮想線で図示の開放位置へ付勢され、中立線NLよりも下側にバネ部材44が回動すると、バネ部材44によりカバー部材13が実線で図示の使用位置側へ付勢されるように構成されている。
【0026】
前述のように構成した除去装置10を用いて付着物1を除去する際には、カバー部材13を使用位置に回動させた状態で、駆動部20のハウジング23を一方の手で保持し、ハンドル40を他方の手で保持するなどして、除去装置10を両手で保持しながら、電動モータを駆動して、刃物11を往復運動させる。このとき、電動モータにより出力軸21が回転すると、第1歯車25及び第2歯車28を介して支軸26が減速回転し、図5に(a)〜(d)に示すように、偏心軸31が支軸26を中心にしに矢印の方向へ偏心回転して、出力板30がガイド軸部29aを中心に揺動しながらガイド孔34に沿って前後方向に往復運動し、図4に示すように、刃物11の刃先14が楕円運動する。
【0027】
こうして、刃先14を楕円運動させながら、付着物1の手前の付着面2に刃先14を押し当てて、刃先14を付着物1と付着面2間に挿入し、付着物1と付着面2間において楕円運動する刃先14により、付着面2と付着部との境界部を切り裂く方向への力を作用させながら付着物1を付着面2から剥離除去することになる。
【0028】
このように、この除去装置10では、刃先14を楕円運動させながら、つまり付着物1と付着面2との境界を切り裂く方向への力を作用させながら付着物1を除去するので、境界を押し切る場合と比較して格段に効率よく付着物1を除去することが可能となる。
【0029】
この除去装置10は、付着物1として、搬送箱に糊付けした送り状や、壁紙や、壁や電柱等に貼り付けたポスターなどの紙製品の除去に好適に利用できるが、紙以外に床面に貼り付いたチューインガムなどの除去や、塗装面にからの塗膜の除去のなどにも利用できる。
【0030】
尚、本実施の形態では、刃先14を楕円運動させたが、刃先14の運動方向に左右方向への成分が含まれていれば、境界に対して切り裂く方向への力を作用させることができるので、円運動でも左右方向への直線運動でも斜め方向への直線運動でも同様の作用効果が得られる。また、刃先14の左右方向への運動成分が大きいほど切り裂く力が大きくなるので、左右方向に長辺を有する楕円運動とすることが好ましい。
【0031】
尚、刃先14を楕円運動や円運動や左右方向への直線運動させるための構成としては、カムやリングなどを用いた任意の構成のものを採用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】付着物の除去装置の斜視図
【図2】付着物の除去装置の側面図
【図3】付着物の除去装置の要部の縦断面図
【図4】刃物付近を下側から見た状態での刃先の運動の説明図
【図5】(a)〜(d)は、ケーシングの底板を取り外した状態で切換部を下側から見た状態での刃物の運動の説明図
【図6】(a)〜(c)は他の構成の刃物の刃先の形状を示す平面図
【図7】(a)(b)は他の構成の刃物の説明図
【符号の説明】
【0033】
1 付着物 2 付着面
10 除去装置 11 刃物
12 駆動手段 13 カバー部材
14 刃先
20 駆動部 21 出力軸
22 切換部 23 ハウジング
24 ケーシング 25 第1歯車
26 支軸 27 ベアリング
28 第2歯車 29 スペーサブロック
29a ガイド軸部
30 出力板 31 偏心軸
32 ベアリング 33 貫通孔
34 ガイド孔 35 ベアリング
37 押圧板
40 ハンドル 41 ヒンジ部材
42 ストッパー部材 43 ストッパー部材
44 バネ部材
14A 刃先 14B 刃先
14C 刃先 11D 刃物
11E 刃物 14E 刃先


【特許請求の範囲】
【請求項1】
付着面から付着物を剥がして除去する可搬式の付着物の除去装置であって、
前記付着物と付着面間へ挿入可能な刃先を有する刃物と、
前記刃物の刃先の運動方向に少なくとも左右方向への成分が含まれるように、前記刃物を駆動する駆動手段と、
を備えたことを特徴とする付着物の除去装置。
【請求項2】
前記刃先が楕円運動するように、前記刃物を駆動手段により駆動する請求項1記載の付着物の除去装置。
【請求項3】
前記刃物として弾性変形可能な平板状の刃物を用い、前記刃物の基部上面に圧接される押圧板を設け、この押圧板により前記刃物を刃先側下がりの湾曲状に変形させた請求項1又は2記載の付着物の除去装置。
【請求項4】
前記刃物に外装可能な下面開放のカバー部材を設けた請求項1〜3のいずれか1項記載の付着物の除去装置。
【請求項5】
前記駆動手段の駆動部を電動工具の駆動部で構成した請求項1〜4のいずれか1項記載の付着物の除去装置。
【請求項6】
刃先の運動方向に少なくとも左右方向への成分が含まれるように、駆動手段により刃物を駆動させながら、付着面と付着物間に刃物の刃先を挿入し、付着面に付着した付着物を剥がして除去することを特徴とする付着物の除去方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−82863(P2009−82863A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258358(P2007−258358)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(398075781)ジロー株式會社 (16)
【Fターム(参考)】